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お前は落ちこぼれじゃないんだから

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匿名ユーザー

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かはっ。
そんな短い呼吸と共に桃色の髪の少女は、地面に膝をついた。
幼く何を考えているか測りづらい顔立ちとは裏腹に、豊満な体の少女だった。
実年齢不相応な豊かな胸を純白のスクール水着に包み、幼いながら整った顔立ち。
平凡な少年なら目を奪われてしまうかもしれない程の美少女だった。
その手に、物騒な長槍を有していなければ。
その少女の名は本名を坂凪綾名、現在の姿では、魔法少女・スイムスイムと言った。


「無駄だ、その術は俺には通じない」


膝をつくスイムスイムに、冷淡な声が投げかけられる。


「水分身の応用か。全身にチャクラを巡らせて、物質を透過し、物理攻撃を無効化する」


冷厳な態度で目の前にそう告げる少年の名を、木ノ葉隠れの里の忍者、日向ネジと言った。
白を基調とした中華服の様な服に袖を通し、腰まで伸ばし先の方で纏めた長髪と、
白い眼差しとその周囲に浮き上がった血管が特徴的な少年だった。


「お前の術は強力だが無敵じゃない。俺の白眼はお前の全身の点欠を見切る。
そしてチャクラを直接流し込み破壊する柔拳の前には、物理的な絶対性は意味をなさない」


少年の言っている事は殆ど分からなかったが。
自分にとってとても不都合な事実を孕んでいる事だけは、スイムスイムにも理解できた。
先ほど交錯した時は、自分の魔法である『どんなものにも水みたいに潜れるよ』は確かに発動していた。
物質を透過し、物理攻撃を無効化する、一つの絶対防御。
事実、自分の槍の一撃を躱してカウンターで入れられた少年の指先自体はすり抜けていた筈なのだ。
にも拘らず、自分は思わず膝をつくほどのダメージを追っている。
ほんの一合の、短い交錯によって。



「……!」


スイムスイムは握る長槍──ルーラを視点に立ちあがり、ぴたりと少年に狙いをつけた。
先ほど自分の魔法を少年がどんな絡繰りで破ったのかは分からない。
だが、魔法少女と身体能力で渡り合う少年はそもそもが異常だ。
例えプロの格闘家であっても、膂力や速度で魔法少女に敵う筈もないのに。
本人の言っている事が真実かは確証がないが。
あの目で此方の自分の動きを見切り、そして魔法を破るからくりもやはりあの目にあるのだろう。


「………ッ!!」


そんな少年の目に対して、スイムスイムが選んだのは直線での吶喊だった。
やけになったのではない。実に単純だが槍のリーチ差がある故に有効な一手だった。
先ほど自分が不覚を取ったのはルーラの穂先で斬撃を選んだからだ。
刀身を相手に合わせ、振りあげ、振り下ろすという三工程が必要だったために懐に入られた。
これならば、既に照準を合わせている以上一手で済む。
そして、反応速度と体捌きでは相手の方が上でも、膂力と耐久力なら此方の方が上の筈。
反撃を受けたとしても、無手の相手とルーラを持つ自分では攻撃力は比べ物にならない。
肉を切らせても骨を断つ。そう言う心算だった。


「無駄だ」


そんなスイムスイムに対し、少年は全てを見透かす様な声と双眸で。
上体を沈め、構えを取る。
激突までの時間は瞬きよりも短いほんの一瞬。
その僅かな時間で、彼の防御術は始動する。


「………ッ!?」


驚愕が、スイムスイムを包む。
何故なら突撃の直後、ルーラを握っていた自分が、無手の敵に弾き飛ばされたからだ。
風車に騎乗突撃を仕掛けたドン・キホーテの様に。
まるで、小型の竜巻に突撃したような手ごたえだった。
刃が届こうという瞬間、少年の全身から何かが放出され…彼女が分かったのはそこまでだった。
気が付けばこうして突撃ははじき返され、ルーラも取り落としてしまった。



「日向は木ノ葉にて最強……覚えておけ」


少女がとり落としたルーラを拾い上げながら、ネジは厳然とした態度でそう宣言した。
彼が行ったのは、日向一族に伝わる防御術だった。
接敵の瞬間に全身のチャクラ穴からチャクラを放出し、体を独楽のように回転させる。
そして放出されたチャクラの防御壁と回転の遠心力による運動エネルギーによってルーラの一撃をいなしてはじき返したのだ。
本来チャクラ穴から放出されるチャクラはコントロールが難しく、上忍でも手や足などの体の一部から放出するのがやっとだ。
それ故に、この『八卦掌回転』は柔拳を極めた日向一族の者のみが可能となる戦技だった。


「………!」


防御を破られ、武器も奪われた以上、最早勝ち目は乏しい。
そう判断したスイムスイムが次に行おうとしたのは、撤退だった。
魔法を用いて地面に潜航し、撤退する。彼女の常套手段。
だが──この時、彼女の魔法は発動できなかった。
腹部から下が、液体化できないのだ。
それは先ほど少年から攻撃を受けた場所だった。


「止めておけ…点欠をついた以上、そこのチャクラは暫く練れない。
無理に術を使って地面に潜れば抜け出せなくなるぞ」


スイムスイムの次なる一手は、ネジにとっては予測するのはそう難しくない事だった。
防御と武器を奪われた以上、これ以上の戦闘は困難と判断するはず。
となれば、体を水分身のように液状化させることができる相手の逃走手段は一つしかない。
それを読んだがゆえに、腹部から下腹部に連なる丁度中継点となる点欠を突いたのだ。



「さて……何故こんなバカげたゲームに乗ったのか教えてもらおうか。
突然拉致して爆弾付きの首輪を嵌めてくるような相手が、
優勝したからと言って素直に元の居場所に帰してくれると思うのか?」
「……………」
「だんまりだと直ぐに続きを始める事になるが…その方がお前にとっては都合が悪いんじゃないのか」


僅かな沈黙の後、スイムスイムは口を開いた。
素直に命令に従ったのではない、反撃の手段を考える時間が欲しかったからだ。
何しろ、ファヴというマスコットが仕組んだマジカルキャンディー争奪戦においても。
魔法を用いた逃走すら封じられるのは彼女にとって完全に想定外の話だったからだ。
隠しておくメリットも現時点ではないに等しい。
故に彼女はゆっくりと語り出した。仲間にもほとんど話していない、彼女の目標…夢の話を。
ルーラに…彼女が考える、一番のお姫様になるという幼い夢の話を。


「そうか」


態々聞き出したというのに、当のネジの反応は実に淡白な物だった。
時間稼ぎが目的なので仕方ないとは言え、スイムスイムはほんの少しだけムッとした。
彼女は、目の前の少年の見透かす様な瞳があまり好きになれなかった。


「二つ、聞いていいか」


腕を組み、その実隙のない所作と距離を保ちながら、ネジは短く尋ねる。


「この殺し合いに優勝して、本当にお前の言うルーラになれると思っているのか」
「…………?」
「お前のいうお姫様になるという最終目標に、この殺し合いに優勝する道が続いていると本気で思うのか、と聞いているんだ」


質問の意味が、よく分からなかった。
だって、ルーラもこうしていた。
こうして、スノーホワイトやラ・ピュセルの様な他の魔法少女を蹴落としていくのが賢いやり口だと、常々言っていた。
だから、自分もそれに倣った。それに倣って、他の魔法少女を蹴落としていった。
自分のチームの魔法少女、自分の命を救ってくれた子ですら手にかけた。
だから、このやり方が間違っているはずなんて、ない。



「もう一つ、重ねて聞くが…お前、ルーラとやらをどうした」
「…………」
「………殺したんだな」


無言で頷くスイムスイムを見て、ネジは心中でやはりか、と思った。
彼の白眼はルーラという人物を語る際のスイムスイムの瞳に込められた濁った狂気を見逃していなかった。
そして殺し合いに招かれてから、この僅かな時間で優勝を狙うというスタンスを定め、実際に行動に移した歪んだ行動力から類推するのは難しい事ではなかった。


「…成程な。それじゃあさっきの問いの聞き方を変えよう。
お前の言うルーラは、言いなりになって座った一人きりの玉座を良しとする女だったのか」
「……………」
「お前の目指しているお姫様は、爆弾付きの首輪に繋がれて、
あの海馬乃亜に従って奴隷のように殺しをする者の事を言うのか、と言っているんだ」
「────!」


ネジの問いかけは、本当に珍しい事に、スイムスイムの感情を引き出した。
尤も、それは怒りに近い物だったが。
だがそれでも、スイムスイムは元来素直な子供だった。
素直さ故に、凶行に手を染めたともいえる少女だった。
その為、想像してしまったのだ。
ルーラの変わりに玉座に座ったのに、首輪を嵌められて、命を握られている自分の姿を。
何だかそれは、自身の想像するお姫様とはとてもかけ離れている気がした。
首輪が似合うのはルーラではなく、たまの方だ。
…たま。その二文字を想起すると、彼女を殺した日の事が同時に浮かび上がってくる。
お姫様に近づいたのに、なぜかその日は達成感と言う物は欠片も無くて。
自分以外一人だけとなり、荒涼とした仲間との寄合所であった廃寺。
それを見て、こめかみが疼くような、仄かな痛みを覚えたのは覚えている。
あぁ、あれは、思えば。
とても、嫌だったかもしれない。
けれど、それでも。



「………私にとって、この道は」


それでも、ルーラはこうしていた。
彼女は、誰かを蹴落として、女王になる道を選んだ。
だから、自分もそれに従おう。
そうしなければ、ルーラから遠ざかってしまうから。
俯き、屈んで。
一拍の呼吸を置いてから、彼女は宣言した。


「ルーラに続いている」


それは明確な拒絶の言葉だった。
だから、殺し合いを辞めるつもりは無い。彼女はそうはっきりと言ったのだ。
対するネジの返答は、相も変わらず「そうか」と淡白な物だった。


「ナルトなら…お前に何て言ったのかな」


そう続けて、彼は皮肉気にふっと笑って。
そして、構えを取った。
一度腹を決めれば、相手を殺すことに躊躇は無い。
それが忍の世界だった。


「お前の目標について是非を問うつもりは無い…だが、俺も背負ってるものがあるんだよ」


───運命がどーとか、何時までも下らねぇ事でめそめそ言ってんじゃねーよ。
───お前は、俺とは違って落ちこぼれじゃねーんだから。


蘇るのは、自分が初めて敗北した日のこと。
天才と呼ばれていた自分を破った、落ちこぼれの言葉だった。
きっと、あの頃の自分なら目の前の少女と同じく、殺し合いに乗っていただろう。
そういう運命だったのだと、従っただろう。
だが、あの男からあの言葉を掛けられたあの日から、簡単に運命に従う日々は終わったのだ。



「来い」


ゆらりと立ち上がるスイムスイムの姿を睨み、あくまで冷徹な態度でネジは言う。
この白眼はある限り、スイムスイムは逃げられない。
そして、液状化能力を用いた逃走ももう暫くは使えない。
となれば、自分を倒して逃げ延びる以外に、彼女に道はなく。


「───!」


スイムスイムが駆けだすと同時に。
三度目の衝突が幕を開ける。
ネジはまずスイムスイムの手元を確認し、武器を隠し持っていない事を確認した。
無手ならば何も問題は無い。
白眼の動体視力と幼少期からの鍛練で身に着けた体捌きであれば、目の前の少女の先手を確実に取れる。
冷静に、客観的な事実としてそう判断した。
彼我の距離が三メートルを切り、スイムスイムがネジの制空圏に入る。


「何───!」


その瞬間の事だった。
スイムスイムはお互いの手が届こうかと言う至近距離で突然飛びのいたのだ。
その際彼女のたわわに実った胸が大きく揺れるが、気にしている暇はなかった。
何故なら──ネジの眼前に、突然手りゅう弾が現れたからだ。


(そうか、こいつ上半身に格納して──!)


魔法は使用者の認識に合わせて変化する。
スイムスイムが問答をしている間に思いついたのは、『どんなものにも水みたいに潜れるよ』の応用だ。
点欠を突かれた(といっても点欠が何かを彼女は知らないが)魔法が使えない下半身。
それはつまり、上半身ならば魔法の行使が可能という事だ。
その為、普通に投げてはあの回転で弾かれてしまう爆弾を、突撃の前に俯いた際液状化した体内に格納した。
ルーラの様な長ものでは無理だっただろう。だが、掌サイズの爆弾であればすっぽりとおさまった。
それを今、突撃に合わせて体外へ排出したのである。
そんな魔法の使用方法今迄殆ど経験がなかったし、体内に格納した爆弾が透けてしまうのではという懸念もあったが、透明人間は臓物までも透明という事らしい。
もし失敗すれば体内で爆弾が爆発するという文字通りの自爆になってしまう非常にリスキーな一手であったが、結果は見事虚をつく一手となった。
少年は回転を行おうとするが既に間に合わない。
今迄此方の全てを見透かす様な目をしていた彼の瞳に浮かんだ焦りを眺めながら──スイムスイムは全力で身を翻す。
その直後、背後で爆発音が響いた。






「……逃げられたか」


白眼に驕り、最後はあの少女に出し抜かれる結末となった。
やはり自分は天才に程遠い事を認識させられる。
そんな凡小な自分が、未知の力を持つ乃亜に何処まで抗えるものか。
考えざるを得なかった。


──フン。捕まった鳥だって、賢くなりゃ自分で籠の蓋を開けようとするモンだ。
──もう一度空を飛びたいと、諦めずにな。


「……そうだな」


きっとナルトであれば、運命に抗う道を選ぶのだろう、そう考えた。
可能かどうか、どれだけ困難かなんて問題にせずに。
だから自分も、少しだけ火影を目指すあの騒がしい男の道をなぞってみようと思った。
運命なんて誰かが決める物じゃない。
それだけはきっと、この世界でも確かな事だと信じて。


【日向ネジ@NARUTO-少年編-】
[状態]:ダメージ(小)、チャクラ消費(小)
[装備]:ルーラ@魔法少女育成計画
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いを止める。
1:協力できる人間を探す。首輪のサンプルを手に入れ、白眼で確認してみたい。
2: スイムスイムは次に会ったら確実に止める。殺害も辞さない。
[備考]
参戦時期は原作二十巻。サスケ奪還編直前より参戦です。




はぁ、はぁと豊かな胸を上下させて、一息つく。
手ごわい少年だった。正面から戦うべき相手ではなかった。
最後の一手も、殆ど大博打のそれだった。
ルーラ…武器も失ってしまったのは痛手だった。
これからは、積極的に他の参加者を襲うのは控えた方がいいかもしれない。
例えそれが魔法少女でもない男の子が相手でも、だ。


──お前の目指しているお姫様は、爆弾付きの首輪に繋がれて、
──あの海馬乃亜に従って奴隷のように殺しをする者の事を言うのか、と言っているんだ。


もう姿は見えなくなったはずなのに。
あの少年の声が、頭の中で木霊する。
考えない。考えはしない。思考の無駄だ。
この道は、ルーラへの道に続いているはずなのだから。
でなければ、自分はとんでもない間違いをしてしまったのではないか。
ルーラは間違いなんてしないのに。そう考えてしまいそうだったから。
無理やりに思考を打ち切って、とぼとぼとまた歩き始める。


──ナルトなら…お前に何て言ったのかな。


もう一つ、脳裏によみがえる声。
あの少年の仲間らしいナルト、という名前。
彼と同じくらいの年齢なら、この会場にいるかもしれない。
会いたい、と言うわけではないが。
スイムスイムは無意識のうちにその名前を小さく口ずさんだ。


【スイムスイム@魔法少女育成計画】
[状態]:ダメージ(小)、点欠被弾
[装備]:マジカルフォン
[道具]:基本支給品、M26手榴弾×3、ランダム支給品0~1
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いに優勝してルーラになる
1:優勝する為に動く。今は武器が無いので、慎重に。
2:本当に優勝すればお姫様になれる…?
[備考]
原作一巻、たま殺害後から参戦です。
点欠を突かれたため小一時間程魔法の行使の影響がありますが、時間経過で自然に影響は解除されます。

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