デッドマンズ・ギャラクシー・デイズ ◆yMsVbZ1/Ak
キャタピラが音を立てながら戦車を運び、アリアハンの大地に似合わぬ跡をつける。
研究所がずっと隠していた新型の戦車を手に入れた米倉京太郎はとても上機嫌だった。
彼が知る戦車と言う物は一人では動かせない。
車を操るもの、機銃を放つもの、指示を出すもの。
それぞれがそれぞれの役割を果たさないと戦車というものは役に立たない。
もし、一人でも怠ければ戦車は即座に鉄の戦車と化すだろう。
研究所がずっと隠していた新型の戦車を手に入れた米倉京太郎はとても上機嫌だった。
彼が知る戦車と言う物は一人では動かせない。
車を操るもの、機銃を放つもの、指示を出すもの。
それぞれがそれぞれの役割を果たさないと戦車というものは役に立たない。
もし、一人でも怠ければ戦車は即座に鉄の戦車と化すだろう。
しかし、この新型戦車は違う。
たった一人、たった一人でいい。
操縦席にたった一人座るだけで全てのことが出来てしまう。
彼の知る戦車からは到底考えもつかない快適な環境。
目の前に広がるのは画面に映し出された辺りの景色。
空調設備も整い、主砲も副砲もこちらの指示一つで発射することが出来る。
試しに撃ってみた副砲からは弾丸が飛び出し、一本の木をあっという間に蜂の巣にしてしまった。
照準だけは自前で合わせる必要があるが、戦場を生き抜いてきた彼にとっては造作も無いことだ。
一つだけ怪しいスイッチがあることが気になったが、触らぬ神にたたり無しということで触らないことにした。
「全く歪みねえ戦車だな、あぁん?」
戦車の性能をたっぷりと満喫していた頃に、レーダーに反応が現れる。
ざっと数えて五つ……と言った所だろうか。
反応を見つけてからすぐ後に、画面には複数の人影が映る。
ちょうどいい、と米倉は口を歪める。
見えてきた人影にゆっくりと照準を合わせ――――
たった一人、たった一人でいい。
操縦席にたった一人座るだけで全てのことが出来てしまう。
彼の知る戦車からは到底考えもつかない快適な環境。
目の前に広がるのは画面に映し出された辺りの景色。
空調設備も整い、主砲も副砲もこちらの指示一つで発射することが出来る。
試しに撃ってみた副砲からは弾丸が飛び出し、一本の木をあっという間に蜂の巣にしてしまった。
照準だけは自前で合わせる必要があるが、戦場を生き抜いてきた彼にとっては造作も無いことだ。
一つだけ怪しいスイッチがあることが気になったが、触らぬ神にたたり無しということで触らないことにした。
「全く歪みねえ戦車だな、あぁん?」
戦車の性能をたっぷりと満喫していた頃に、レーダーに反応が現れる。
ざっと数えて五つ……と言った所だろうか。
反応を見つけてからすぐ後に、画面には複数の人影が映る。
ちょうどいい、と米倉は口を歪める。
見えてきた人影にゆっくりと照準を合わせ――――
世界には必ず悪が"ツキ"ものだって、忘れかけてる頃に奴はフラッと来て言うんだ。
オレは"ツイ"てないがな。
畜生が。
「一体何を考えてらっしゃるんですか?!」
姫みたいなドレスに身を包んだ女に、オレは両肩を掴まれて前後へと揺さぶられる。
問い詰められているのはオレの背後で血に塗れてくたばってる男に関してだろう。
姫みたいなドレスに身を包んだ女に、オレは両肩を掴まれて前後へと揺さぶられる。
問い詰められているのはオレの背後で血に塗れてくたばってる男に関してだろう。
少し、前の話になる。
「よう、反吐が出るほどの曇り空だな!」
片手にナイフを持った男はそう言って俺に近づいてきた。
ムカつくぐらい晴れ渡った空だというのに何を考えているだろうか。
こういう頭のネジがぶっ飛んだクレイジー野郎に関わるとロクな事が起こらない。
あのクレイジー野郎神代でさんざん噛み締めた経験だ。
だから、最初は無視しようと思っていた。
「おいおい、無視しないなんていい奴だな!
俺の話を聞かないでほしいんだが、どうだ?」
男はオレを引きとめるように肩を掴んでくる。
言ってることとやってることが違う男に苛立ちながらオレは多少乱暴に腕を振り払う。
そのままバッくれてどっかに行こうと思ってたんだが、男はそれでも食い下がってきた。
「まあゆっくりするなよ、俺は殺し合いなんてやってられないと思ってる。
だから、殺し合いなんてしないで皆で助け合って行こうぜ!!」
男の接し方にウンザリしきっていた俺は男の話を殆ど聞いてなかった。
それが命取りになるとは、俺自身思っていなかった。
俺が男の言葉の本当の意味に気がついた時。
「よう、反吐が出るほどの曇り空だな!」
片手にナイフを持った男はそう言って俺に近づいてきた。
ムカつくぐらい晴れ渡った空だというのに何を考えているだろうか。
こういう頭のネジがぶっ飛んだクレイジー野郎に関わるとロクな事が起こらない。
あのクレイジー野郎神代でさんざん噛み締めた経験だ。
だから、最初は無視しようと思っていた。
「おいおい、無視しないなんていい奴だな!
俺の話を聞かないでほしいんだが、どうだ?」
男はオレを引きとめるように肩を掴んでくる。
言ってることとやってることが違う男に苛立ちながらオレは多少乱暴に腕を振り払う。
そのままバッくれてどっかに行こうと思ってたんだが、男はそれでも食い下がってきた。
「まあゆっくりするなよ、俺は殺し合いなんてやってられないと思ってる。
だから、殺し合いなんてしないで皆で助け合って行こうぜ!!」
男の接し方にウンザリしきっていた俺は男の話を殆ど聞いてなかった。
それが命取りになるとは、俺自身思っていなかった。
俺が男の言葉の本当の意味に気がついた時。
一本のナイフが俺の目の前を横切った。
「そうだ、人を殺さなくても生き残れないはずが無いぜ!」
俺の頬から血が流れるのを感じ取り、デイパックから急いで唯一の武器であるヒノカグヅチを取り出した。
俺に憑いているラーの力を借りて振り回すのがやっとのこの剣だが、今はどうこう言っているじゃねえ。
この嘘つかしけない男を追っ払うには、今はコイツに頼るしかないからな。
俺の頬から血が流れるのを感じ取り、デイパックから急いで唯一の武器であるヒノカグヅチを取り出した。
俺に憑いているラーの力を借りて振り回すのがやっとのこの剣だが、今はどうこう言っているじゃねえ。
この嘘つかしけない男を追っ払うには、今はコイツに頼るしかないからな。
とはいえ、男の太刀筋は大したことはない。
これなら塔の悪魔達の方がもう少しマシな攻撃するぜ。
ひょいひょいと攻撃を避けて俺は男を黙らせるチャンスを伺う。
「へへっ、全然強くねえじゃねえか!」
裏返しの男の言葉は聞き流す、真意は分かってるからだ。
男の息が上がってるのは分かるし、何より襲ってきたときより余裕が無い。
恐らく不意打ちが失敗したんでハラを決めて襲い掛かったものの、思っていたより強かったってートコだろ。
見え見えの攻撃がひたすら繰り返される現状に、俺はだんだんとウンザリしてきた。
これなら塔の悪魔達の方がもう少しマシな攻撃するぜ。
ひょいひょいと攻撃を避けて俺は男を黙らせるチャンスを伺う。
「へへっ、全然強くねえじゃねえか!」
裏返しの男の言葉は聞き流す、真意は分かってるからだ。
男の息が上がってるのは分かるし、何より襲ってきたときより余裕が無い。
恐らく不意打ちが失敗したんでハラを決めて襲い掛かったものの、思っていたより強かったってートコだろ。
見え見えの攻撃がひたすら繰り返される現状に、俺はだんだんとウンザリしてきた。
そんなときだ、男が俺から距離をとったのは。
そろそろ逃げるつもりになったんだろう、と俺は男の方を見ていた。
すると男は懐から一本のビンを取り出して俺の方へと投げつけてきた。
「ビール……瓶?」
投げられたのは俺も何度か見たことのあるビール瓶だった。
フケまくっていた物理の授業で習ったような軌道を描き、俺の元へと向かってくる。
鉛直投げ上げ運動だったかなんだったかは忘れたが、瓶が頂点に達したとき異様な違和感を感じ取る。
中に詰まっているのはよく見る黄金の光り輝くビールじゃなくて、異彩を放つ緑色の液体。
それに気がついて引き下がろうとしたときには、ビール瓶は地へと落ちる寸前だった。
そろそろ逃げるつもりになったんだろう、と俺は男の方を見ていた。
すると男は懐から一本のビンを取り出して俺の方へと投げつけてきた。
「ビール……瓶?」
投げられたのは俺も何度か見たことのあるビール瓶だった。
フケまくっていた物理の授業で習ったような軌道を描き、俺の元へと向かってくる。
鉛直投げ上げ運動だったかなんだったかは忘れたが、瓶が頂点に達したとき異様な違和感を感じ取る。
中に詰まっているのはよく見る黄金の光り輝くビールじゃなくて、異彩を放つ緑色の液体。
それに気がついて引き下がろうとしたときには、ビール瓶は地へと落ちる寸前だった。
俺の目を突き刺す閃光と抉れて行く地面。
ギリギリで避けられたものの、爆風で体勢が崩れちまった。
光一色に染まった視界がだんだんとあたりの景色を映して来たとき。
ギリギリで避けられたものの、爆風で体勢が崩れちまった。
光一色に染まった視界がだんだんとあたりの景色を映して来たとき。
当然、目の前にはナイフを持った男が今にも斬りつけんとした姿勢で俺の目の前にいた。
反応自体はごく普通だった。無意識に力が込めてヒノカグヅチを横一直線に薙ぐ。
悪魔に囲まれてすごしていたあの塔ではこれぐらいしないと生き残れない。
もちろん、あの時は向こうも殺る気だったから俺だってそれ相応の反応が必要だ。
悪魔に囲まれてすごしていたあの塔ではこれぐらいしないと生き残れない。
もちろん、あの時は向こうも殺る気だったから俺だってそれ相応の反応が必要だ。
ただ、今回は人間が相手だ。
俺自身が無力化できればいいだなんて甘っちょろいことを考えていた所為かも知れない。
悪魔相手のいつもと同じように反応し、全力で剣を振るえば普通の人間が耐え切れるわけがない。
ましてや、振るった剣がヒノカグヅチなら当然のこと。
俺自身が無力化できればいいだなんて甘っちょろいことを考えていた所為かも知れない。
悪魔相手のいつもと同じように反応し、全力で剣を振るえば普通の人間が耐え切れるわけがない。
ましてや、振るった剣がヒノカグヅチなら当然のこと。
ヒノカグヅチは切り傷からあっという間に男を炎で包み込んでしまった。
消し炭と化していく男を、俺は止めることが出来なかった。
男は炭となった後でもその体から火を立てている。
火が消えるまで俺は男の体をずっと見ていたのだ。
消し炭と化していく男を、俺は止めることが出来なかった。
男は炭となった後でもその体から火を立てている。
火が消えるまで俺は男の体をずっと見ていたのだ。
「ねえ、あなた……ッ!!」
そんな時だ、女の二人組がここに来たのは。
そんな時だ、女の二人組がここに来たのは。
「一体何を考えてらっしゃるんですか?!」
学生服の男に詰め寄り、両肩を掴んで揺さぶるローラ。
「やめなさいよ、ローラ」
「サクヤさんは黙っててください!
……あなたはあの目玉の言う通りに、人を殺して回ろうというのですか?!」
後ろにいる女竜騎士、サクヤを一喝して学生服の男を揺さぶり続けるローラ。
学生服の男はローラの揺さぶりにも動じず、俯いて黙ったままである。
「それが……それがどれだけ愚かしいことなのか分かっているんですか?!」
「ローラ、いいからちょっと落ち着きなさいよ」
一向に引き下がる気配のないローラを力尽くで男から引き剥がし、ローラと男の間に割り込むサクヤ。
「ちょ、サクヤさん?!」
「いいからあたしに任せときなって」
暴れているローラを宥め、後ろでじっとしている様に指示をする。
ローラが不満を顔に浮かべながら引き下がったのを確認し、サクヤは学生服の男に話を持ちかける。
「いきなり悪かったわね、私は竜騎士サクヤ。こっちがラダトーム国のローラ姫よ」
「……明、宮本明だ」
「ま、本題に入ると……そこの消し炭になってる男は貴方の仕業ね?」
明は制服の皺を直しながら、サクヤはもう一度ローラを宥めてから軽い自己紹介をお互い行う。
間髪いれずにサクヤは男へ問いかける。
「……ああ、まあそうなるな」
明は頭を掻きつつ、バツが悪そうに答える。
「正当防衛だった、っつっても信用してくれないだろうな」
「まあアンタがもし積極的に殺して回ってる人間だったら、さっきローラが掴みかかって行った時にもう消し炭になってるでしょうね。
だとすれば、正当防衛っていう可能性も考えられるんじゃない?」
少しずつ、男との会話のキャッチボールが成り立ってくる。
これをチャンスと見たサクヤは一つ提案を持ちかけることにした。
「で、もし貴方さえ良ければあたし達と一緒に行動して欲しいんだけど……」
「な、何言ってるんですかサクヤさん!!」
人殺しを犯した人間と共に行動する。もちろん、その提案にローラが黙っている訳が無い。
やれやれと呟き、頭を抱えながらサクヤはゆっくりと振向きながら話しかける。
「……あのねえ、今までのやり取りを聞いてたら――」
サクヤは振向く途中で驚くべきものを目にする。
おそらく、サクヤの方を向いていたアキラも同じものを見ていたに違いない。
学生服の男に詰め寄り、両肩を掴んで揺さぶるローラ。
「やめなさいよ、ローラ」
「サクヤさんは黙っててください!
……あなたはあの目玉の言う通りに、人を殺して回ろうというのですか?!」
後ろにいる女竜騎士、サクヤを一喝して学生服の男を揺さぶり続けるローラ。
学生服の男はローラの揺さぶりにも動じず、俯いて黙ったままである。
「それが……それがどれだけ愚かしいことなのか分かっているんですか?!」
「ローラ、いいからちょっと落ち着きなさいよ」
一向に引き下がる気配のないローラを力尽くで男から引き剥がし、ローラと男の間に割り込むサクヤ。
「ちょ、サクヤさん?!」
「いいからあたしに任せときなって」
暴れているローラを宥め、後ろでじっとしている様に指示をする。
ローラが不満を顔に浮かべながら引き下がったのを確認し、サクヤは学生服の男に話を持ちかける。
「いきなり悪かったわね、私は竜騎士サクヤ。こっちがラダトーム国のローラ姫よ」
「……明、宮本明だ」
「ま、本題に入ると……そこの消し炭になってる男は貴方の仕業ね?」
明は制服の皺を直しながら、サクヤはもう一度ローラを宥めてから軽い自己紹介をお互い行う。
間髪いれずにサクヤは男へ問いかける。
「……ああ、まあそうなるな」
明は頭を掻きつつ、バツが悪そうに答える。
「正当防衛だった、っつっても信用してくれないだろうな」
「まあアンタがもし積極的に殺して回ってる人間だったら、さっきローラが掴みかかって行った時にもう消し炭になってるでしょうね。
だとすれば、正当防衛っていう可能性も考えられるんじゃない?」
少しずつ、男との会話のキャッチボールが成り立ってくる。
これをチャンスと見たサクヤは一つ提案を持ちかけることにした。
「で、もし貴方さえ良ければあたし達と一緒に行動して欲しいんだけど……」
「な、何言ってるんですかサクヤさん!!」
人殺しを犯した人間と共に行動する。もちろん、その提案にローラが黙っている訳が無い。
やれやれと呟き、頭を抱えながらサクヤはゆっくりと振向きながら話しかける。
「……あのねえ、今までのやり取りを聞いてたら――」
サクヤは振向く途中で驚くべきものを目にする。
おそらく、サクヤの方を向いていたアキラも同じものを見ていたに違いない。
巨大な砲弾に攫われて行くローラの姿を。
砲弾はローラの胴を切り裂いた後に海中へと落ち、小さな水柱を立てる。
遠くに見えるのは腰から上と下で切り裂かれたローラの体のみ。
何が起こったのかを理解するまでサクヤは時間がかかってしまった。
「マジかよ……」
明が砲弾が飛んできた向きを見つめ、絶望の表情を浮かべながら呟く。
その方向からやって来たのは、自身の車体を血で染めたような紅い、赤い悪魔だった。
遠くに見えるのは腰から上と下で切り裂かれたローラの体のみ。
何が起こったのかを理解するまでサクヤは時間がかかってしまった。
「マジかよ……」
明が砲弾が飛んできた向きを見つめ、絶望の表情を浮かべながら呟く。
その方向からやって来たのは、自身の車体を血で染めたような紅い、赤い悪魔だった。
目の前に広がる白い宇宙の中、吸い込まれてくのさアイツの重力に。
じゃあな、ボウズ……つ、い、て、た、な…………。
なぜ、自分は今ここにいるのだろう?
ゴメスの策にハマって命を落としたはずの自分が何故ここに居るのだろう?
ここが死後の世界なのだとすればブラックすぎるジョークだ。
死んだ後に人を殺せと言うのだから、悪趣味以外のなんでもない。
しかし、殺し合いを強制するあのノアという機械に関しては心当たりがある。
噂に聞いていた程度だったが、確か世界に核を打ち込み大破壊を引き起こした張本人のはずだ。
実在していることに関しては別に驚きはしない。
問題は、死んだはずの自分をどうやってここに呼び寄せたのか?
どこかのサイエンティストが死体を蘇らせる発明をしていると言うのを聞いたことがあるが、ノアがその技術を使うのは納得が行かない。
人類を破滅させるのが奴の目的なら、なぜ死んでいる自分を蘇らせるのか?
「……考えていても仕方が無い、な」
次々に湧き上がる疑問に対し、いちいち考えていてもキリが無い。
とにかく、もう一度生を受けてしまった以上は今後と言うものが付きまとってくる。
「ニーナ」
思い出したように恋人の名前を呟く。
生前、世界中を駆けずり回って捜し求めたたった一人の恋人。
その所為で自分は命を落とすことになったのだが、それに関して後悔は無い。
「居なきゃいい、がな」
彼がただ願うのは恋人の無事。
こんなふざけた殺し合いに参加させられていないことをただ、祈るだけである。
ゴメスの策にハマって命を落としたはずの自分が何故ここに居るのだろう?
ここが死後の世界なのだとすればブラックすぎるジョークだ。
死んだ後に人を殺せと言うのだから、悪趣味以外のなんでもない。
しかし、殺し合いを強制するあのノアという機械に関しては心当たりがある。
噂に聞いていた程度だったが、確か世界に核を打ち込み大破壊を引き起こした張本人のはずだ。
実在していることに関しては別に驚きはしない。
問題は、死んだはずの自分をどうやってここに呼び寄せたのか?
どこかのサイエンティストが死体を蘇らせる発明をしていると言うのを聞いたことがあるが、ノアがその技術を使うのは納得が行かない。
人類を破滅させるのが奴の目的なら、なぜ死んでいる自分を蘇らせるのか?
「……考えていても仕方が無い、な」
次々に湧き上がる疑問に対し、いちいち考えていてもキリが無い。
とにかく、もう一度生を受けてしまった以上は今後と言うものが付きまとってくる。
「ニーナ」
思い出したように恋人の名前を呟く。
生前、世界中を駆けずり回って捜し求めたたった一人の恋人。
その所為で自分は命を落とすことになったのだが、それに関して後悔は無い。
「居なきゃいい、がな」
彼がただ願うのは恋人の無事。
こんなふざけた殺し合いに参加させられていないことをただ、祈るだけである。
ああ、ニーナ。ドコに居るんだ?
ふと、気がつけば辺りの景色は森林から平野に変わっていた。
どれだけ長い間歩いていたのだろうか?
そんなことを考える間もなく、彼の耳に小さな破裂音が入ってくる。
破裂音の方へ素早く振向くと、一本の水柱が聳え立っているのが分かった。
恐らくダイナマイトか何かの類が爆発したのだろうと彼は頭の中で決め付ける。
「なん……だと?!」
水柱よりももう少し左の光景。
彼はその光景に驚かざるを得なかった。いや、彼だからこそ驚いたのだ。
そこには見慣れた頼もしき相棒、レッドウルフの姿があったのだから。
「……武装が少し違うとはいえ、あのシャシーは間違いない。レッドウルフ……!!」
武装は多少劣化しているとはいえ、自分の戦車がどれだけ強力なものなのかは自分が一番知っている。
その戦車の主砲の先には人間が二人、武器を構えて戦車へと立ち向かおうとしていた。
どれだけ長い間歩いていたのだろうか?
そんなことを考える間もなく、彼の耳に小さな破裂音が入ってくる。
破裂音の方へ素早く振向くと、一本の水柱が聳え立っているのが分かった。
恐らくダイナマイトか何かの類が爆発したのだろうと彼は頭の中で決め付ける。
「なん……だと?!」
水柱よりももう少し左の光景。
彼はその光景に驚かざるを得なかった。いや、彼だからこそ驚いたのだ。
そこには見慣れた頼もしき相棒、レッドウルフの姿があったのだから。
「……武装が少し違うとはいえ、あのシャシーは間違いない。レッドウルフ……!!」
武装は多少劣化しているとはいえ、自分の戦車がどれだけ強力なものなのかは自分が一番知っている。
その戦車の主砲の先には人間が二人、武器を構えて戦車へと立ち向かおうとしていた。
戦車の標的になってしまった人間が助かる確率は少ない。
生身で立ち向かえばどうなるか、それも生身で戦車に立ち向かった自分が一番知っている。
装備が身軽であれば機銃の餌食になる。逆に重装備ならば主砲の餌食になる。
どう足掻こうと助かる確率は低い、そんな人間は放っておけばいいのに。
生身で立ち向かえばどうなるか、それも生身で戦車に立ち向かった自分が一番知っている。
装備が身軽であれば機銃の餌食になる。逆に重装備ならば主砲の餌食になる。
どう足掻こうと助かる確率は低い、そんな人間は放っておけばいいのに。
自分は走り出していた。
何故かはわからない。
ただ、あの時レッドウルフを託したあの少年なら。
あの少年ならこうするだろうと、思ったからかもしれない。
ただ、あの時レッドウルフを託したあの少年なら。
あの少年ならこうするだろうと、思ったからかもしれない。
「畜生! 埒あかねえぞ!」
血混じりの唾を吐き捨てながらアキラは叫ぶ。
ローラの体を真っ二つに引き裂いた戦車は留まることなく次の標的を二人へと変えてきた。
無尽蔵に吐き出される22mmの銃弾がアキラたちを襲い続ける。
明の唱えたテトラカーンにより今銃弾が彼等を貫くことは出来ないが、明の魔力もそこまで多いわけではない。
テトラカーンを唱えながら逃げることも出来ないことはないが、村に逃げ込んだところで民家ごと吹き飛ばされるだろう。
森に逃げ込んでも樹木を薙ぎ倒しながらあの戦車は迫ってくるだろう。
どの道、逃げ場なんてモノはない。具体的な打開策が無い限りは魔力を絞られるだけ絞られて蜂の巣にされるのがオチだ。
どういったわけか今は機銃から銃弾が吐き出され続けているだけである。
だからこそテトラカーンでなんとか応対できるものの、主砲を打たれてはどうなるかもわからない。
流石に爆風をも跳ね返す、と都合のいいことは起こってくれないのだ。
「おい、サクヤ。てめぇなんとか出来ねえのか?!」
「無茶言わないでよ! 槍が通用するとも思えないし、黒魔法でどうにかなる相手でもないでしょう?!」
自分の持っている細い槍であの鉄の固まり相手に何とかなるとも思えない。
マクスウェルやナイトウのように術の心得がある人間ならまだ何とかなるかもしれないが、生憎自分は魔法の類の知識を持ち合わせていない。
大空に舞い上がった所でずっと滞空できる訳も無い。地面に落ちたところを狙われて蜂の巣にされるのがオチだ。
今の自分にあの鉄の塊に対抗する術は……ない。
「魔法か……だったら俺に考えがある。空飛べるっつってたな、何秒ぐらい飛べる?」
「……いいところ15秒かしらね」
「上等だ、俺が合図したら思い切り飛び跳ねてくれ」
サクヤは明が魔法を使うことが出来るということが最初は信じられなかった。
しかし、銃弾を弾き飛ばすと言う未知の魔法を目の前で繰り広げた瞬間にそのイメージは払拭された。
今の明なら、本当に何とかできるかもしれない。
そんな確信を胸に、サクヤは明が指を鳴らした瞬間に広い大空へと舞った。
「食らえクソ野郎……メギドラァッ!!」
野球選手がボールを投げるように振りかぶったアキラの右手から紫色の炎が飛び出る。
炎は瞬く間に銃弾を突き抜け、機銃を目掛けて一直線に飛んでいく。
しかしアキラ自身の魔力があまり高くないことが原因してか、炎が戦車の強靭な装甲を突き破り機銃を破壊することは叶わなかった。
テトラカーンが時間切れを起こし、銃弾が明の肉を引き裂いていく。
急いでテトラカーンを詠唱するも、血に染まった制服はボロボロになりかけていた。
「ちょっと! 大丈夫?!」
詠唱が終わると同時にサクヤが着地し、明の下へと駆け寄る。
「……メギドラであのザマかよ、洒落になんねーな」
血の混じった唾を吐き捨て、ヨロヨロと立ち上がる明。
「テトラカーンもあと数回だ、持って30分……か。サクヤ、お前はどうすんだ?
俺がぶっ放した魔法も一発でアレだ、銃弾が切れる気配もねーからテトラカーンは切れねえ。
かといって俺がくたばりゃ銃弾を避ける術は無いだろうな、空中に逃げ続けることが出来れば……話は別だが。
アンタが空に長く居れば居るほど、ヤツは着地地点を見極めてくるだろうな」
具体的な打開策は無い。
そのことを改めて突きつけられた二人の顔に絶望の表情が浮かぶ。
戦車がいつ主砲を撃ってくるか分からない、戦車に近づけば何か変わるかもしれないが一定の距離を保ったまま近づこうとしない。
「万事休すね……ん?」
全てに絶望しきったとき、一人の男がサクヤの視界に映る。
「おい! こっちだ!!」
男の声が聞こえたのと同時に、一瞬で辺り一面が煙幕花火による煙で包み込まれる。
瞬時に明を抱え、サクヤは声の聞こえた方へ飛んだ。
血混じりの唾を吐き捨てながらアキラは叫ぶ。
ローラの体を真っ二つに引き裂いた戦車は留まることなく次の標的を二人へと変えてきた。
無尽蔵に吐き出される22mmの銃弾がアキラたちを襲い続ける。
明の唱えたテトラカーンにより今銃弾が彼等を貫くことは出来ないが、明の魔力もそこまで多いわけではない。
テトラカーンを唱えながら逃げることも出来ないことはないが、村に逃げ込んだところで民家ごと吹き飛ばされるだろう。
森に逃げ込んでも樹木を薙ぎ倒しながらあの戦車は迫ってくるだろう。
どの道、逃げ場なんてモノはない。具体的な打開策が無い限りは魔力を絞られるだけ絞られて蜂の巣にされるのがオチだ。
どういったわけか今は機銃から銃弾が吐き出され続けているだけである。
だからこそテトラカーンでなんとか応対できるものの、主砲を打たれてはどうなるかもわからない。
流石に爆風をも跳ね返す、と都合のいいことは起こってくれないのだ。
「おい、サクヤ。てめぇなんとか出来ねえのか?!」
「無茶言わないでよ! 槍が通用するとも思えないし、黒魔法でどうにかなる相手でもないでしょう?!」
自分の持っている細い槍であの鉄の固まり相手に何とかなるとも思えない。
マクスウェルやナイトウのように術の心得がある人間ならまだ何とかなるかもしれないが、生憎自分は魔法の類の知識を持ち合わせていない。
大空に舞い上がった所でずっと滞空できる訳も無い。地面に落ちたところを狙われて蜂の巣にされるのがオチだ。
今の自分にあの鉄の塊に対抗する術は……ない。
「魔法か……だったら俺に考えがある。空飛べるっつってたな、何秒ぐらい飛べる?」
「……いいところ15秒かしらね」
「上等だ、俺が合図したら思い切り飛び跳ねてくれ」
サクヤは明が魔法を使うことが出来るということが最初は信じられなかった。
しかし、銃弾を弾き飛ばすと言う未知の魔法を目の前で繰り広げた瞬間にそのイメージは払拭された。
今の明なら、本当に何とかできるかもしれない。
そんな確信を胸に、サクヤは明が指を鳴らした瞬間に広い大空へと舞った。
「食らえクソ野郎……メギドラァッ!!」
野球選手がボールを投げるように振りかぶったアキラの右手から紫色の炎が飛び出る。
炎は瞬く間に銃弾を突き抜け、機銃を目掛けて一直線に飛んでいく。
しかしアキラ自身の魔力があまり高くないことが原因してか、炎が戦車の強靭な装甲を突き破り機銃を破壊することは叶わなかった。
テトラカーンが時間切れを起こし、銃弾が明の肉を引き裂いていく。
急いでテトラカーンを詠唱するも、血に染まった制服はボロボロになりかけていた。
「ちょっと! 大丈夫?!」
詠唱が終わると同時にサクヤが着地し、明の下へと駆け寄る。
「……メギドラであのザマかよ、洒落になんねーな」
血の混じった唾を吐き捨て、ヨロヨロと立ち上がる明。
「テトラカーンもあと数回だ、持って30分……か。サクヤ、お前はどうすんだ?
俺がぶっ放した魔法も一発でアレだ、銃弾が切れる気配もねーからテトラカーンは切れねえ。
かといって俺がくたばりゃ銃弾を避ける術は無いだろうな、空中に逃げ続けることが出来れば……話は別だが。
アンタが空に長く居れば居るほど、ヤツは着地地点を見極めてくるだろうな」
具体的な打開策は無い。
そのことを改めて突きつけられた二人の顔に絶望の表情が浮かぶ。
戦車がいつ主砲を撃ってくるか分からない、戦車に近づけば何か変わるかもしれないが一定の距離を保ったまま近づこうとしない。
「万事休すね……ん?」
全てに絶望しきったとき、一人の男がサクヤの視界に映る。
「おい! こっちだ!!」
男の声が聞こえたのと同時に、一瞬で辺り一面が煙幕花火による煙で包み込まれる。
瞬時に明を抱え、サクヤは声の聞こえた方へ飛んだ。
「……梃子摺ってるようだな」
そこには派手な黒い服に身を包んだ赤髪の男が立っていた。
「見りゃ分かんだろ、オッサン」
「フッ、良く吠える負け犬だな」
男の対応に怒りを表すアキラだが、サクヤがそれをギリギリで止める。
「ともかく、あの戦車を何とかしないと俺らは蜂の巣だ。
煙幕花火で目くらまししてる間に何か打開策を見つけなきゃいけない、違うか?」
正確に今の問題点を指摘された二人はぐうの音も出ず、黙り込んでしまう。
「……あの戦車は元々俺のだ、どこが強くてどこがダメなのかぐらいは分かる。
アレをぶっ潰すなら俺の指示通りにしろ、いいか?」
そこには派手な黒い服に身を包んだ赤髪の男が立っていた。
「見りゃ分かんだろ、オッサン」
「フッ、良く吠える負け犬だな」
男の対応に怒りを表すアキラだが、サクヤがそれをギリギリで止める。
「ともかく、あの戦車を何とかしないと俺らは蜂の巣だ。
煙幕花火で目くらまししてる間に何か打開策を見つけなきゃいけない、違うか?」
正確に今の問題点を指摘された二人はぐうの音も出ず、黙り込んでしまう。
「……あの戦車は元々俺のだ、どこが強くてどこがダメなのかぐらいは分かる。
アレをぶっ潰すなら俺の指示通りにしろ、いいか?」
米倉京太郎の顔には焦りと怒りが浮かんでいた。
主砲の試し撃ちを兼ねて、メルヘンやファンタジーに出てきそうなドレスを身に纏った女性を吹っ飛ばした所までは良かった。
学生服の男がこちらに気がついてからは状況が一変したのだ。
どれだけ銃弾を打ち込んでも学生服の男と奇抜な格好をした女を蜂の巣にすることが出来ないのだ。
一時だけ銃弾が学生服の男を貫いたようだがそれでも命を奪うには至らなかった。
主砲を打ち込めば良かったのだが、ほぼ無尽蔵に弾丸が用意されている機銃とは違って主砲は弾数に限りがある。
試し撃ちした一発を除いて、あと四発。
これから先どれだけの戦闘が待ち受けているかもわからない、ここで貴重な主砲の弾を無駄遣いするわけには行かない。
米倉が我武者羅に機銃を打ち続けていた理由はそこにあった。
主砲の試し撃ちを兼ねて、メルヘンやファンタジーに出てきそうなドレスを身に纏った女性を吹っ飛ばした所までは良かった。
学生服の男がこちらに気がついてからは状況が一変したのだ。
どれだけ銃弾を打ち込んでも学生服の男と奇抜な格好をした女を蜂の巣にすることが出来ないのだ。
一時だけ銃弾が学生服の男を貫いたようだがそれでも命を奪うには至らなかった。
主砲を打ち込めば良かったのだが、ほぼ無尽蔵に弾丸が用意されている機銃とは違って主砲は弾数に限りがある。
試し撃ちした一発を除いて、あと四発。
これから先どれだけの戦闘が待ち受けているかもわからない、ここで貴重な主砲の弾を無駄遣いするわけには行かない。
米倉が我武者羅に機銃を打ち続けていた理由はそこにあった。
しばらく機銃を撃ち続けた辺りで、辺りの景色を映し出す画面が灰色に包まれた。
それと同時に戦車内にも煙が入り込んできたのだ。
稼動していたオートエアコンのお陰で操縦席が煙に塗れる事は無かったが、視界が一瞬でも塞がれたのは事実。
煙が晴れた頃には学生服の男と奇抜な格好の女は居なくなっていた。
それと同時に戦車内にも煙が入り込んできたのだ。
稼動していたオートエアコンのお陰で操縦席が煙に塗れる事は無かったが、視界が一瞬でも塞がれたのは事実。
煙が晴れた頃には学生服の男と奇抜な格好の女は居なくなっていた。
米倉は急いで戦車を動かし、忽然と消えた二人の姿を探す。
辺りの景色からしても姿を消す場所の大体の見当はついている。
時間はそこまで経っていない。女の方が空高く舞い上がれるとしてもそこまで遠くには行っていないだろう。
辺りの景色からしても姿を消す場所の大体の見当はついている。
時間はそこまで経っていない。女の方が空高く舞い上がれるとしてもそこまで遠くには行っていないだろう。
米倉の予想通り、森林から先ほどの学生服の男が出てきた。
ありったけの銃弾を放つが、先ほどと同じように学生服の男を切り裂くことはない。
主砲を撃つべきか? 撃たないか?
そんなことを悩んでいるうちに画面に映るもう一人の人影に気がつく。
あの奇抜な格好をした女性が一本の槍を持ち、空へと飛び立っていた。
機銃で迎撃してもいいのだが、機銃の手を緩めれば学生服の男が先ほどの紫の炎を放ってくる。
炎が装甲を引き裂いていった事実はコンピュータが告げている。
しかしここであの女性を打ち落とさないと、操縦席の中に入り込まれかねない。
やむを得ないと判断した米倉は、素早く主砲のスイッチへと手を伸ばす。
ありったけの銃弾を放つが、先ほどと同じように学生服の男を切り裂くことはない。
主砲を撃つべきか? 撃たないか?
そんなことを悩んでいるうちに画面に映るもう一人の人影に気がつく。
あの奇抜な格好をした女性が一本の槍を持ち、空へと飛び立っていた。
機銃で迎撃してもいいのだが、機銃の手を緩めれば学生服の男が先ほどの紫の炎を放ってくる。
炎が装甲を引き裂いていった事実はコンピュータが告げている。
しかしここであの女性を打ち落とさないと、操縦席の中に入り込まれかねない。
やむを得ないと判断した米倉は、素早く主砲のスイッチへと手を伸ばす。
その時、女の口元が歪んで見えたのはきっと錯覚ではなかったのだろう。
主砲のスイッチを押し込んだその時、女は手に持っていた槍を手放したのだ。
やがて、コンピュータが移しこめる範囲の外へと女性はフェードアウトしていく。
その姿が丁度見えなくなったとき、何かが爆発する音と同時に米倉の体が大きく揺れる。
それとほぼ同時に、操縦席に一筋の光が差し込んできたのだ。
本来光が遮断されているはずの操縦席。そこに光が差し込んでいる……ということは。
主砲のスイッチを押し込んだその時、女は手に持っていた槍を手放したのだ。
やがて、コンピュータが移しこめる範囲の外へと女性はフェードアウトしていく。
その姿が丁度見えなくなったとき、何かが爆発する音と同時に米倉の体が大きく揺れる。
それとほぼ同時に、操縦席に一筋の光が差し込んできたのだ。
本来光が遮断されているはずの操縦席。そこに光が差し込んでいる……ということは。
入り口となるハッチが空いているのだ。
そう、米倉は知らない第三の人物。ウルフが中へと入り込んできていたのだ。
「よう、俺の戦車で好き勝手やってくれてるな」
機銃の囮を明が担当し、主砲の囮をサクヤが担当する。
サクヤが主砲に槍を投げ入れたのは危機を感じ取った彼女が咄嗟に取った行動であり作戦外のことだったが、ウルフの作戦に支障はない。
機銃、主砲の的に自分がならないことが目的なのだから。
戦車の内部から映りこまない角度から回り込み、見事操縦席の入り口へとたどり着いて見せた。
中で操縦していた米倉と対面し、静かに刀を構える。
「話は全部聞いてる、お前を救うコトは俺はできねーな」
光を感じ取った米倉がデイパックから武器を出すよりも先に、ウルフの刀が突きつけられる。
「あばよ、負け犬」
米倉には、自身の首へと迫るウルフの刀がやけにゆっくりに見えた。
「あああああああああああああああああ!!!」
彼は叫ぶことしか、出来なかった。
「よう、俺の戦車で好き勝手やってくれてるな」
機銃の囮を明が担当し、主砲の囮をサクヤが担当する。
サクヤが主砲に槍を投げ入れたのは危機を感じ取った彼女が咄嗟に取った行動であり作戦外のことだったが、ウルフの作戦に支障はない。
機銃、主砲の的に自分がならないことが目的なのだから。
戦車の内部から映りこまない角度から回り込み、見事操縦席の入り口へとたどり着いて見せた。
中で操縦していた米倉と対面し、静かに刀を構える。
「話は全部聞いてる、お前を救うコトは俺はできねーな」
光を感じ取った米倉がデイパックから武器を出すよりも先に、ウルフの刀が突きつけられる。
「あばよ、負け犬」
米倉には、自身の首へと迫るウルフの刀がやけにゆっくりに見えた。
「あああああああああああああああああ!!!」
彼は叫ぶことしか、出来なかった。
ズブリ。
ウルフが米倉の首をはねたと同時に感じ取ったのは、自分の心臓が貫かれる感触だった。
「チッ、手間かけさせやがって……」
銃弾の雨が止んだのはテトラカーンを使う魔力が切れる寸前のことだった。
しかし一度メギドラを撃つために受けた傷から流れ出た血が、明自身が思ったよりも多かった。
攻撃が来ないことを悟ると、明はヒノカグヅチを手放してその場に倒れ伏した。
そして空を見上げ、ゆっくりと拳を掲げて笑う。
「……ザマぁ見やがれ」
そう呟いた後に戦車の方へと向くと、サクヤが車体から降りこちらへ向かってくるのが見えた。
「終わったのか……ウルフは?」
「戦車の調子が悪いからって言うんでメンテナンスしてから来るそうよ」
主砲を壊した上にメギドラを機銃目掛けて放ったのだ、ダメージが無い方がおかしい。
これから戦車を運用していく上ではメンテナンスの一つも必要なのだろう。
「コレからどうするんだ」
「そうね……」
銃弾の雨が止んだのはテトラカーンを使う魔力が切れる寸前のことだった。
しかし一度メギドラを撃つために受けた傷から流れ出た血が、明自身が思ったよりも多かった。
攻撃が来ないことを悟ると、明はヒノカグヅチを手放してその場に倒れ伏した。
そして空を見上げ、ゆっくりと拳を掲げて笑う。
「……ザマぁ見やがれ」
そう呟いた後に戦車の方へと向くと、サクヤが車体から降りこちらへ向かってくるのが見えた。
「終わったのか……ウルフは?」
「戦車の調子が悪いからって言うんでメンテナンスしてから来るそうよ」
主砲を壊した上にメギドラを機銃目掛けて放ったのだ、ダメージが無い方がおかしい。
これから戦車を運用していく上ではメンテナンスの一つも必要なのだろう。
「コレからどうするんだ」
「そうね……」
明は倒れたままサクヤに今後どうして行くかを問いかける。
明がその時のサクヤの表情がおかしかったことに気がついた。
返事は、彼女がもう一本持っていた竜槍を心臓に突き立てることで代えられた。
「……私はなんとしてでも生き残るわ」
サクヤは竜槍を引き抜く。
肉を引き裂く音と共に明の心臓から血液が溢れ出す。
「使えるべき人がいるの、こんなところで死ねる訳ないじゃない」
何かを言おうとしている明の喉を目掛けて槍をもう一度刺す。
ご丁寧に突き刺した後に抉り込む様に竜槍を回した。
「もっとラムザ様に尽くして、尽くして、尽くしきって死ななきゃいけないのよ」
弱弱しく伸ばされた明の腕をあらぬ方向へと蹴り飛ばす。
普通の人間なら叫び声を上げるような痛みが走るのだろうが、喉を潰されている所為で明は声が出ない。
「ローラと行動してたのは彼女を盾として使うつもりだった。ま、事実盾にはなってくれたけどね」
最後にもう一度、脳みそを目掛けて槍を突き刺す。
竜の鱗すら貫く槍にとって、人間の頭蓋骨を貫くことなど容易い。
「って、言っても聞こえてないでしょうね」
最後に明の死体を足で転がす。
首と胴体がほぼ離れかけていた所為か。明の体だけが動き、顔はサクヤを見つめたまま硬直していた。
「じゃあね、バイバイ」
脳髄、血液、肉。
全てを自身から零している明だったものに一瞥し、彼女は歩き出す。
サクヤは竜槍を引き抜く。
肉を引き裂く音と共に明の心臓から血液が溢れ出す。
「使えるべき人がいるの、こんなところで死ねる訳ないじゃない」
何かを言おうとしている明の喉を目掛けて槍をもう一度刺す。
ご丁寧に突き刺した後に抉り込む様に竜槍を回した。
「もっとラムザ様に尽くして、尽くして、尽くしきって死ななきゃいけないのよ」
弱弱しく伸ばされた明の腕をあらぬ方向へと蹴り飛ばす。
普通の人間なら叫び声を上げるような痛みが走るのだろうが、喉を潰されている所為で明は声が出ない。
「ローラと行動してたのは彼女を盾として使うつもりだった。ま、事実盾にはなってくれたけどね」
最後にもう一度、脳みそを目掛けて槍を突き刺す。
竜の鱗すら貫く槍にとって、人間の頭蓋骨を貫くことなど容易い。
「って、言っても聞こえてないでしょうね」
最後に明の死体を足で転がす。
首と胴体がほぼ離れかけていた所為か。明の体だけが動き、顔はサクヤを見つめたまま硬直していた。
「じゃあね、バイバイ」
脳髄、血液、肉。
全てを自身から零している明だったものに一瞥し、彼女は歩き出す。
ズガガガガガガガガガガッ。
【ゾゾ街の人@FINAL FANTASY VI 死亡】
【ローラ@DRAGON QUEST 死亡】
【米倉京太郎@スーパーファミコンウォーズ 死亡】
【ウルフ@METAL MAX RETURNS 死亡】
【宮本明@真・女神転生if... 死亡】
【サクヤ(女竜騎士)@FINAL FANTASY TACTICS 死亡】
【ローラ@DRAGON QUEST 死亡】
【米倉京太郎@スーパーファミコンウォーズ 死亡】
【ウルフ@METAL MAX RETURNS 死亡】
【宮本明@真・女神転生if... 死亡】
【サクヤ(女竜騎士)@FINAL FANTASY TACTICS 死亡】
※A-3の平野にゾゾ街の人の死体の傍にナイフ@FINAL FANTASYIII、基本支給品、不明支給品(0~1)
ローラの死体の傍に基本支給品、不明支給品(0~3)
アキラの死体の傍にヒノカグヅチ@真・女神転生if...、基本支給品、不明支給品(0~2、武器ではない)
サクヤの死体の傍にピースメーカー@真女神転生if...、竜槍ゲイボルグ@Romancing Sa・Gaが放置されています。
ローラの死体の傍に基本支給品、不明支給品(0~3)
アキラの死体の傍にヒノカグヅチ@真・女神転生if...、基本支給品、不明支給品(0~2、武器ではない)
サクヤの死体の傍にピースメーカー@真女神転生if...、竜槍ゲイボルグ@Romancing Sa・Gaが放置されています。
こうして、この場に生きている人間は存在しなくなった。
明を襲った男は死んだ。
ローラも死んだ。
米倉も死んだ。
ウルフも死んだ。
明も死んだ。
明を襲った男は死んだ。
ローラも死んだ。
米倉も死んだ。
ウルフも死んだ。
明も死んだ。
そして、勝利を確信したサクヤも死んだ。
ここで問題なのは誰がサクヤを殺したのか? ということだ。
消し炭になった明を襲った男が蘇るとも思えない。
体を真っ二つにされたローラが生きている訳もない。
米倉はウルフに首をはねられている。
ウルフはサクヤに心臓をやりで貫かれている。
明もサクヤに心臓を貫かれている。
消し炭になった明を襲った男が蘇るとも思えない。
体を真っ二つにされたローラが生きている訳もない。
米倉はウルフに首をはねられている。
ウルフはサクヤに心臓をやりで貫かれている。
明もサクヤに心臓を貫かれている。
そう、明を殺した時点で生きている人間はサクヤしかいなかったのだ。
では、誰がサクヤを殺したのか?
簡単なことである。
レッドウルフだ。
では、何故レッドウルフはサクヤの命を奪うことが出来たのか?
その理由は、レッドウルフに搭載されていたコンピュータユニットにあった。
――ノアシステムNo.R
ノアの名を持つ理由は分からない。
あのノアと同じシステムが使われているのか、あのノアが自分で生み出したシステムなのかは分からない。
ただ、コンピュータユニットにはあるものが組み込まれている。
「抹殺プログラム」
一度起動すれば辺りの機械、人間問わず全てを抹殺するまで止まらなくなる地獄のプログラム。
起動すれば最後、元に戻す手段は無い。
少し前の話になる。
米倉の首が飛んだ後。
倒れこむ米倉の体は操縦席のある部分を押し込んだ。
それこそが、抹殺プログラムの起動スイッチ。
サクヤが明にとどめを刺し、今から動き出さんとしたその時。
プログラムが完全に起動し、サクヤを蜂の巣にしたのだ。
こうして、アリアハンの大地に「赤い悪魔」は生まれた。
戦車……別名、鉄の棺桶が齎すのは唯一つ。
死。
【A-3 平野 一日目 午後】
【レッドウルフ(新型戦車)@METAL MAX RETURNS(スーパーファミコンウォーズ)】
[状態]:主砲大破、副砲破損、装甲??%、抹殺システムON
[装備]:主砲:165mmゴースト(残弾:3/5)
副砲:22mmバルカン
特殊砲A:なし
特殊砲B:なし
Cユニット:ノアシステムNo.R
エンジン:V48ハルク
[道具]:電磁バリア、レーダースコープ、オートエアコン
[思考]
基本:抹殺
※ノアシステムNo.Rの抹殺システムが作動しました。破壊されるまで辺り構わず攻撃を繰り返します。
止めるにはCユニット、もしくはシャシーの破壊しかありません。
エンジンを破壊すれば自走は不可能になりますが、攻撃は繰り返されます。
※どこに向かっているかは不明です。参加者を発見次第攻撃します。
※Rウルフの操縦席にはウルフの死体と米倉の死体があります。
※操縦席にウルフ(基本支給品、塵地螺鈿飾剣@FINAL FANTASY TACTICS)と米倉(基本支給品、不明支給品0~2)の死体があります
【レッドウルフ(新型戦車)@METAL MAX RETURNS(スーパーファミコンウォーズ)】
[状態]:主砲大破、副砲破損、装甲??%、抹殺システムON
[装備]:主砲:165mmゴースト(残弾:3/5)
副砲:22mmバルカン
特殊砲A:なし
特殊砲B:なし
Cユニット:ノアシステムNo.R
エンジン:V48ハルク
[道具]:電磁バリア、レーダースコープ、オートエアコン
[思考]
基本:抹殺
※ノアシステムNo.Rの抹殺システムが作動しました。破壊されるまで辺り構わず攻撃を繰り返します。
止めるにはCユニット、もしくはシャシーの破壊しかありません。
エンジンを破壊すれば自走は不可能になりますが、攻撃は繰り返されます。
※どこに向かっているかは不明です。参加者を発見次第攻撃します。
※Rウルフの操縦席にはウルフの死体と米倉の死体があります。
※操縦席にウルフ(基本支給品、塵地螺鈿飾剣@FINAL FANTASY TACTICS)と米倉(基本支給品、不明支給品0~2)の死体があります
甲高い叫び声が楽しそうに響いて。
ヤツは首をつりながらそれでも、笑っていたんだ。
051:剣客、吐血に斃れる。 | 投下順に読む | 053:キックOFF |
051:剣客、吐血に斃れる。 | 時系列順に読む | 038:気まぐれサイケデリック(――――後遺症) |
008:Live Better | 米倉京太郎 | GAME OVER |
誕生! | レッドウルフ(新型戦車) | 058:Red fraction |