みんなで無念まとめ wiki

クロス第26話

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
ユーゼスは、市街地にある民家の一つに身を隠していた。
携帯電話を握りしめるその手は、怒りに震えている。
携帯電話に届いたメールには、死者として彼の親友であるギャバンの名が記されていたのである。

(おのれ相羽シンヤァァァァァ!!)

ギャバンを殺したであろう男の名を、ユーゼスは心の中で叫ぶ。
だが、怒りに任せて行動するような愚は犯さない。それでは、自分を犠牲にしてユーゼスを逃がしたギャバンの行動を無駄にしてしまう。

(感情に流されるのは、この場では悪手……。今は私がやるべきことに集中すべきだ。
 だが相羽、貴様への恨みは忘れぬぞ! 絶対に貴様だけは生きて帰さん!)

ユーゼスの中でふくれあがる憎悪。それを抑え込むべく、彼は大きく息を吐く。

(落ち着け……。まずは落ち着くのだ、私よ。今やるべきことをもう一度思い出せ。
 私がやるべきことは、この首輪の解除方法を見つけること。そしてこの島からの脱出方法を見つけることだ。
 さいわい、最低限の工具はこの民家で見つけた。しかし……)

忌々しげに眉間へしわを寄せながら、ユーゼスは自分の首に手を当てる。

(さすがに調べるべきものが自分の体に張り付いていては、調べるのは困難……。となれば……)

思考にふけるユーゼス。だがその思考は、直後に中断を余儀なくされる。
静まりかえった民家の中にかすかに、だが確かに、ドアが開く音が響いたからだ。

(誰か他の参加者が来たか? まずいな……)

軽く舌打ちをしながら、ユーゼスは窓に手をかける。
仮にここにやってきたのがプログラムに消極的な参加者なら、これは仲間に引き込むチャンスだ。
だが逆にプログラムに積極的な参加者だった場合、武器もなく身体能力も低い自分はなすすべもなく殺されてしまうだろう。
メリットに比べて、デメリットがあまりに大きい。ユーゼスの頭脳は即座にそう判断を下し、逃走という手段を選択したのだ。
だが彼が窓から逃げ出すより速く、訪問者はやってきてしまった。

(バカな! 足音もろくに立てずに、これほどのスピードで玄関からここまでやってきただと?)

驚愕するユーゼスの前で、訪問者……朝倉涼子はおもむろに口を開いた。

「見~つけた」

笑顔で放たれた朝倉の宣告に、ユーゼスは背中をおぞましいものが駆け上がる感覚を覚える。
急いで窓を開けて外に出ようとするのだが、どうしても動きがもたついてしまう。

「ああ、慌てなくて大丈夫よ、ユーゼス先輩。私はあなたに危害を加えるつもりはないから」

朝倉はユーゼスの動きをまじまじと見つめながら、そう告げる。

「信用できるわけがないだろう」
「でも本当のことだもの」
「危害を加えるつもりがないのなら、なぜ私を捜し出すような真似をした?」
「決まってるじゃない。このプログラムから脱出するための仲間を集めるためよ」
「それを証明できるか?」
「それは、悪魔の証明ってやつじゃないかしら? 先輩ぐらい頭のいい人なら、この状況で敵意がないことを完璧に証明することの難しさぐらい解ると思うけど?」
「……」

ユーゼスからの反応は返ってこない。それに対し朝倉は溜め息を漏らすと、自分の荷物を床に投げ捨てた。

「とりあえず、今の私にできることはこれくらいかしらね」
「いいだろう、話ぐらいは聞いてやる」
「本当に疑り深いんだから……」

話を聞くといいつつも窓から離れようとしないユーゼスに、朝倉は今一度溜め息を漏らす。
続けて咳払いをすると、彼女は本題について語り始めた。

「とにかく、私はプログラムで優勝することなんて考えてないわ。
 だって考えてもみてよ。優勝したって、結局のところ自分一人しか生き残れないのよ?
 愛する有希を犠牲にして生き残るなんて、私が考えるわけないじゃない」
「確かに……。お前の長門有希に対する愛情は、私もよく知っている」
「でしょ?」

ユーゼスから期待通りの反応が返ってきたことに、朝倉は頬をゆるめる。

「それで、脱出するためには他の人の協力を仰ぐ必要もあるかな、って思ってたんだけど……。
 それが先輩となれば文句なしだわ。先輩の頭脳はうちの学校一だものね。どうにかしてもらえるかしら?」

そう言いながら、朝倉は自然な仕草で首輪を撫でる。それは暗に、首輪を外せるかどうかという問いになっていた。

(なるほど、監視を警戒しての策か。こいつもバカではないということだな)

朝倉の意図を瞬時に察知したユーゼスは、携帯電話のメモ帳機能を立ち上げ素早く文字を打ち込む。

「あまり買いかぶってもらっては困る。私の知識など、しょせんは高校生の域を出ていない」
『まだ手をつけてはいないが、いずれは首輪を外すつもりだ』

口で当たり障りのないことを言いつつ、ユーゼスは携帯電話に打ち込んだメッセージを朝倉に見せた。
それを受けて朝倉も携帯電話を取り出し、文字を打ち込み始める。

「あら、予想外の頼りない答えねえ」
『それで、何か当てはあるの?』
「仕方あるまい。何せ政府の行っているプログラムだぞ? 我々ごときの力でそう簡単に脱出できるはずがない」
『とりあえず、サンプルがなければどうにもならん。まさか自分の首についているものをいじるわけにいかないからな』
「まあそれはそうね。困難な道だってことは私も理解しているわ」
『で、どうするの? サンプルなんてその辺に転がっているものじゃないでしょうに』
「だったらどうするべきか、もっと具体的に考えるべきだな」
『いや、転がっている。死体と一緒にな』
「それを先輩に考えてもらおうと思ってたんだけど」
『なるほど、死体の首輪を引きはがすわけね。それなら心当たりがあるわ』
「ふん、そんな他人任せでは貴様が脱出などできる可能性は低そうだな」
『それは好都合。では、その首輪を取ってきてもらおうか』
「手厳しいわねえ。ここはいったん引き下がらせてもらうわ」
『了解。それじゃあ行ってくるわ』
「二度と来なくていいぞ。お前と組むメリットなど私にはないからな」
『ああ、私はここで待っていることにする。私のような弱者は、何かあった時足手まといになるからな』
「じゃあね、ユーゼス先輩」
「ああ、ちょっと待て」

偽りの会話を終え、部屋から出て行こうとする朝倉。だがその背中に、ユーゼスが呼びかける。

「何?」
「お前はこの家に人がいると確信して入ってきたような節があるが……。なぜわかった?
 ここに入る時、痕跡は可能な限り消したはずだが」
「そうねえ……。逆に、あまりに人の痕跡がなさすぎたから、かしら?」
「なるほどな……」

朝倉からの返答に、ユーゼスは苦笑いを浮かべた。


◇ ◇ ◇


数分後、朝倉は玄関に立っていた。目的地は、先程自分が殺した阿部のところ。
彼の首輪を回収するのが目的だ。

(ユーゼス先輩と会えたのはラッキーだったわね……。あの人が味方になってくれれば、脱出も現実味を帯びてくる。
 待ってて、有希。すぐに迎えに行って、ここから脱出するから!)

愛しい人のことを考えながら、意気揚々と朝倉は扉を開ける。その瞬間、彼女の顔を激痛が襲った。

「え?」

それを最後に、朝倉は意識を失う。そして、二度と戻ることはなかった。


◇ ◇ ◇


(くっ、これは予想外だったな……)

物陰から一部始終を見ていたユーゼスは、忌々しげに顔を歪める。
彼が見たのは、玄関の扉を開けたとたんルイージに鉈で顔面を割られる朝倉の姿であった。
ルイージは朝倉がこの家に入っていくのを見て待ち伏せしていたのだが、そんなことはユーゼスにとってどうでもいい。
問題は、ルイージが自分を狙ってくるかどうかだ。
緊張を高めるユーゼスだが、彼にとって幸いなことにルイージはそのまま立ち去った。

「ふう……」

完全にルイージの気配が消えたのを確認すると、ユーゼスは安堵の溜め息を漏らす。
そして、ゆっくりと無惨な姿に成り果てた朝倉に歩み寄った。

「運が悪かったな……。別に貴様に思い入れはないが、短いとはいえ手を組んだ仲だ。
 貴様の無念は晴らしてやるさ。長門有希は、優先的に助けてやる」

朝倉の亡骸に向かって語りかけると、ユーゼスは慎重な足取りで民家を出て行った。

(さて、新しい拠点を見つけなければいけないな。さすがに死体の近くにいるわけにはいかん。
 後は……死体の首から首輪を外すために刃物も必要か)

冷静に考えを巡らしながら、彼は歩き続ける。その目に、確かな意志を宿して。

【04番 朝倉涼子 死亡】
残り19人


【37番 ユーゼス・ゴッツォ】
【学年】高3
【状態】健康
【所持品】防弾繊維の服、工具(現地調達)
【能力】知力:S 体力:D 機械知識:A

【39番 ルイージ】
【学年】高3
【状態】精神崩壊
【所持品】リボルバー、鉈、バールのようなもの、アイスピック
【能力】知力:B 体力:A ジャンプ力:S



【04番 朝倉涼子】

Former

Next

死亡



【37番 ユーゼス・ゴッツォ】

Former

Next




【39番 ルイージ】

Former

Next


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー