RPGにおける戦闘とは、つまるところ数字の削りあいだ。しかしながら、よくできたゲームは、たとえ10ダメージであっても(精神的に)痛く感じるし、買物をするとなれば、貧乏のつらさも感じてしまうものだ。
さてそこで『真・女神転生デビルサマナー』である。いや、なにも今更デビルサマナーの戦闘バランスを、ああだこうだと語るつもりはない。「はっきり言ってヌルい」。この一言で片付くからだ。PSP版では、ある程度手が加えられ、ハードモードの追加など変更点はあるものの、それでも特別難しいとは思えない。
しかしここで誤解して欲しくないのは、何もそれが嫌いなわけではない。むしろ、「このバランスはどのようにして調整されているのだろう?」と、興味を持ったほどだ。そこで、今回はPSP版を使って、デビルサマナーの戦闘におけるダメージ計算式の解明に挑むことにした。
なおこのダメージ計算式は、“あくまでも仮説”であり、完全なものでは決してない。一応数値を当てはめてみたら、まぁこんなもんかな、という程度のシロモノでしかない。いきなり言い訳から入って申し訳ないのだが、絶対的な根拠を提示することができないため、これはご容赦願いたい。
さて実際に計算式を提示する前に、まずはこのページ内での用語説明・補足を書いておく。
まず計算式において導き出された攻撃側の計算値を便宜的に『総合攻撃力』と呼ぶことにする。また総合攻撃力を敵の防御力(あるいは魔法防御)で割った数字に、月齢修正と防御相性修正を加えたものを、これも便宜的に『基準ダメージ』と呼ぶ。この基準ダメージとは、いわば「これぐらいのダメージを与えられるだろう」という「予想値」とも言える。
この算出した基準ダメージ値と、実際にゲーム中で表示されたダメージ値を照らし合わせ、ダメージ計算式がどういったものであるかを考察していく。
なお月齢修正に関してだが、今回は計算の複雑化を少しでもおさえるために、月齢修正をする必要のない人間と悪魔のみを起用した。当サイトの月齢修正表でいうところの、記号『 I 』がそれに該当する。記号 I はどの月齢時であってもダメージ修正倍率が常に×1であるため、その分の計算を省くことができるからだ。
また防御相性についてだが、厄介なことにSS版とPSP版では少々異なる点がある。それは、「PSP版は悪魔の攻撃に対する耐性がSS版の数値に比べて2倍になっている」という点である。具体的には、相性ページの『魔攻(悪魔の通常攻撃の意)』『突撃』『技』『剣技』の数値が、(おそらく)すべて2倍になっている。つまり、SS版に比べ、PSP版の悪魔は2倍のダメージを与える、ということになる。なお人間の剣攻撃や火炎などの魔法相性に関しては変化がない。PSP版での計算のさいにはその点に注意していただきたい。
さらに付け加えるが、ダメージ値にはある程度の“幅”がある。どのタイミングで、どれだけの数値でダメージ値を増減しているのかよくわからないが、最大と最小は、平均値の約20%ほどといったところではないだろうか。これらの点を踏まえた上で、電卓を片手に、読み進めていっていただきたい。
最後になってしまったが、このページは2chの某スレッドを参考に、自分独自の予想を加えつつ構成している。解析してくれた人に感謝!
計算1:術者の魔法威力×魔法の威力値=総合攻撃力
計算2:総合攻撃力÷敵魔法防御力=A
計算3:A×月齢修正×敵防御相性=基準ダメージ(小数点切捨て)
術者:ヴィシュヌ 魔威77
→マハ・ブフーラ 威力90
悪魔:アーヴァンク 魔防17
→防御相性:氷結100%
総合攻撃力:6930
基準ダメージ:407
術者:ヴィシュヌ 魔威77
→メギドラ 威力210
悪魔:バー 魔防8
→防御相性:万能100%
総合攻撃力:16170
基準ダメージ:2021
術者:レイ 魔威83
→アギ 威力49
悪魔:マカーブル 魔防42
→防御相性:火炎70%
総合攻撃力:4069
基準ダメージ:67
396 424 462 423 477
371 430 478 485 437
2032 2189 2049 1966 1862
2402 2264 1909 2283 2331
64 50 63 58 57
50 57 54 49 62
ダメージ測定のサンプル数が少ないが、それでも基準値に近い結果が出たのでは、と思う。
しかしより正確な数値を算出する方法が、あるようにも感じる。例えば最初は、総合攻撃力を魔法防御だけで割るのではなく、「(魔法威力÷4)+魔法防御」という式も考えたのだが、どうやら怪しいので却下した。
また、ヴィクトルの台詞を思い出していただきたい。
「魔法についてだが、同じ魔法でも、その威力は、術者のレベルや魔力値などで違ってくるのだ」
だとするなら、レベルの影響とは、どこに関わっているものなのか。この計算式に、レベルが関わる可能性が捨てきれない。今後も、より細かな調査が必要と思われる。
計算1:攻撃力×(攻撃力÷4+4)=総合攻撃力
計算2:総合攻撃力÷敵防御力=A
計算3:A×月齢修正×敵防御相性=基準ダメージ(小数点切捨て)
攻撃:主人公 攻撃力74
→ランドールナイフ
悪魔:キキーモラ 防御力34
→防御相性:剣70%
総合攻撃力:1665
基準ダメージ:34
攻撃:主人公 攻撃力307
→陽皇覇剣
悪魔:ピクシー 防御力10
→防御相性:剣100%
総合攻撃力:24790
基準ダメージ:2479
攻撃:レイ 攻撃力190
→羂索
悪魔:ボーグル 防御力24
→防御相性:剣100%
総合攻撃力:9785
基準ダメージ:407
36 40 36 40 40
34 35 36 33 33
2577 2969 2805 2571 2551
2274 2548 2237 2745 2594
374 465 413 463
419 441 419
攻撃:主人公 攻撃力192
→バーストライザー+Bブリット
悪魔:アンズー 防御力130
→防御相性:銃150%
総合攻撃力:9984
基準ダメージ:115
攻撃:主人公 攻撃力192
→バーストライザー+Bブリット
悪魔:カトブレパス 防御力140
→防御相性:銃70%
総合攻撃力:9984
基準ダメージ:49
攻撃:レイ 攻撃力214
→火尖鎗
悪魔:ゲーデ 防御力138
→防御相性:槍10%
総合攻撃力:12305
基準ダメージ:8
121 124 125 132 133
132 115 126 135 123
47 47 55 51 48
56 59 48 46 45
攻撃:ヴィシュヌ 攻撃力248
→通常攻撃
悪魔:ムシュフシュ 防御力148
→防御相性:魔攻200%
総合攻撃力:16368
基準ダメージ:221
攻撃:ヨシツネ 攻撃力156
→通常攻撃
悪魔:オオミツヌ 防御力114
→防御相性:魔攻200%
総合攻撃力:6708
基準ダメージ:117
攻撃:関聖帝君 攻撃力178
→通常攻撃
悪魔:モト 防御力182
→防御相性:魔攻140%
総合攻撃力:8633
基準ダメージ:66
232 214 267 241 259
246 255 242 214 214
140 115 137 118 121
128 140 141 113 115
72 82 63 63 76
65 67 64 65 77
まず自分の攻撃力を4で割ったあと、4をたし、その数値に攻撃力をかける。そして最後に敵の防御力で割って、防御修正をかける。なんだか少しくどくどとした計算式であるが、不思議なことにこれでバランスを保っているのだから仕方がない。なお鞭の武器は剣相性であり、武器の種類に関わらず、計算式自体は人間と悪魔で共通のようだ。
また前述したが、ヴィシュヌ・ヨシツネ・カンセイテイクンが敵に攻撃するさい、防御相性の数値がやけに高いのは、PSP版での確認だからだ。SS版の場合はこの数値を半分にする(つまりSS版では、ここに記載された半分のダメージしか出ない)。この点を間違えないよう注意。
さてここでひとつ気になるのが、突如として出現した「+4」という数字である。なぜ、4なのか。4でなければならない理由とは?いやそもそも、4にはなんの意味が込められているのだ?…と、疑問がうまれてくる。
これは次の特技のダメージ計算式を見ればわかると思うが、この「+4」という数字、おそらく「通常攻撃の威力」という意味合いだろう。つまりアギやメギドに威力が設定されているように、通常攻撃にも威力が設定されているものと思われ、その数値が「4」なのである。
計算1:攻撃力×(攻撃力÷4+特技の威力)=総合攻撃力
計算2:総合攻撃力÷敵防御力=A
計算3:A×月齢修正×敵防御相性=基準ダメージ(小数点切捨て)
攻撃:ケルベロス 攻撃力148
→噛みちぎり 威力6
悪魔:カトブレパス 防御力140
→防御相性:突撃100%
総合攻撃力:6364
基準ダメージ:45
攻撃:オオミツヌ 攻撃力120
→飛び膝蹴り 威力12
悪魔:ムシュフシュ 防御力148
→防御相性:技200%
総合攻撃力:5040
基準ダメージ:68
攻撃:タケミカヅチ 攻撃力150
→回転斬り 威力17
悪魔:ムシュフシュ 防御力148
→防御相性:剣技200%
総合攻撃力:8175
基準ダメージ:110
57 55 56 55 54
47 52 48 51 49
60 62 68 71 74
76 66 62 70 74
122 107 108 94 103
94 119 118 115 121
攻撃:関聖帝君 攻撃力178
→マッハ突き 威力15
悪魔:カトブレパス 防御力140
→防御相性:槍攻140%
総合攻撃力:10591
基準ダメージ:105
攻撃:ナーガ 攻撃力106
→串刺し 威力36
悪魔:カトブレパス 防御力140
→防御相性:槍攻140%
総合攻撃力:6625
基準ダメージ:66
攻撃:ヨシツネ 攻撃力156
→八艘飛び 威力42
悪魔:カトブレパス 防御力140
→防御相性:剣技100%
総合攻撃力:12636
基準ダメージ:90
97 103 124 107 103
97 114 110 120 95
45 44 42 45 49
43 46 48 44 50
85 85 85 85 85
85 85 85 85 85
特技のダメージ計算式は、通常攻撃のダメージ計算式の「+4」の部分を特技の威力に置き換えることで算出可能。なお槍技は、防御相性『槍攻』が参照されるようで、PSP版では、悪魔が槍技で攻撃する場合、その耐性値は2倍になるようだ。
しかし、表を見てもらえばわかるが、この計算式に当てはまらない特技がある。それが『串刺し』と『八艘飛び』だ。
串刺しは算出されたダメージ値と実際のダメージ値を比較した場合、実際のダメージ値は予想していた数値の約70%ほどしか出ていない。同じ槍技であるマッハ突きとは異なる結果が出た。また八艘飛びの場合、他の特技と違い、ダメージに幅がない。その上、基準値に微妙に届いていない。
なぜこのふたつの特技は特殊なのか。その謎にせまってみたい。
まず串刺しについてだが、上で紹介した以外の実験結果を見てもらいたい。
攻撃:ナーガ 攻撃力106
→串刺し 威力36
悪魔:ムシュフシュ 防御力148
→防御相性:槍攻200%
総合攻撃力:6625
基準ダメージ:89
攻撃:ナーガ 攻撃力106
→串刺し 威力36
悪魔:カウ 防御力160
→防御相性:槍攻100%
総合攻撃力:6625
基準ダメージ:41
攻撃:ナーガ 攻撃力106
→串刺し 威力36
悪魔:ジュボッコ 防御力28
→防御相性:槍攻140%
総合攻撃力:6625
基準ダメージ:331
73 59 60 69 63
65 58 74 72 67
31 32 32 27 28
31 28 33 29 29
217 208 211 250 267
265 266 272 257 269
やはり、こちらが算出した基準値と、実際のダメージ値に大きなひらきがある。例えばジュボッコに対しての攻撃の場合、ダメージ値がどれも300にすら到達していない。やはり何か違うと見ていいだろう。
なぜ、ここまで大きな差が出てしまうのか。単純に考えて「串刺しは計算式が違うのではないか」と予想できるわけだが、だとしたら、どこがどう違うのか、ということになる。そこで、試しに特技ダメージ計算式を少し変えてみた。
計算1:106×{(106÷4)+(36÷2)}=4717
どこが変わったか、お気付きだろうか。そう、串刺しの威力を2分の1にしてみたのだ。結果、総合攻撃力は当然低くなったわけだが、さてこの数値をもとに、先ほどの表の基準ダメージを再計算してみると…
攻撃:ナーガ 攻撃力106
→串刺し 威力36
悪魔:ムシュフシュ 防御力148
→防御相性:槍攻200%
総合攻撃力:4717
基準ダメージ:63
攻撃:ナーガ 攻撃力106
→串刺し 威力36
悪魔:カウ 防御力160
→防御相性:槍攻100%
総合攻撃力:4717
基準ダメージ:29
攻撃:ナーガ 攻撃力106
→串刺し 威力36
悪魔:ジュボッコ 防御力28
→防御相性:槍攻140%
総合攻撃力:4717
基準ダメージ:235
73 59 60 69 63
65 58 74 72 67
31 32 32 27 28
31 28 33 29 29
217 208 211 250 267
265 266 272 257 269
算出した基準ダメージ値と、実際のダメージの平均値が、かなり近づいたことがわかる。しかしこれは当てずっぽうでやっていることなので、本当にこういう計算式なのかどうかはわからない。本当はもっと違う、フクザツな「何か」がからんだ計算式であるだろうし、最悪、まったく的外れな計算式である可能性もある。
しかし現時点で納得できる形を出せるとしたら、この方法しかない。なぜ串刺しの威力を2で割る必要があるのかと問われても、自分でも意味はわからない。ただ、そうすれば計算上はつじつまが合うことだけは確かだ。
また串刺し以外にも、ノーマルな計算式では基準値を算出できない特技があるかもしれない。これもまた、今後も調査が必要だろう。
さてデビルサマナー最強(最凶)との呼び声も高い特技・八艘飛びだが、調査では「ダメージは固定され、その数値は基準値に届かない」ということはわかった。実はこの八艘飛びについて、色々と興味深いデータがある。簡単にではあるが紹介する。
以上は八艘飛びを悪魔に食らわせてみた結果だが…実はこのダメージ、キジムナーを除いて、実際のダメージ値は基準値の94%であることがわかった(キジムナーは95%)。先に紹介した対カトブレパスのケースも、基準値90に対して実際85ダメージというのは、やはり94%の倍率である。なぜ、一律94%なのか。これは故意にかけられているとしか思えない。
そこで、この修正倍率は、たとえヨシツネの攻撃力が上がっていっても変わることがないのか、調べてみることにした。以下は、アラミタマをひとつ合体させるごとに特定の敵に八艘飛びで攻撃し、そのダメージ値の推移と、修正倍率を調べたものである。
※a…97%、b…95%
こうして見てみると、ヨシツネの攻撃力が上がるに従い、八艘飛びの基準値に対する修正倍率が、ゆるやかにではあるが、徐々に100%に近づいていっている、ということがわかった。
八艘飛びはほとんどの敵を簡単に倒すことができる特技である。敵全体を攻撃でき、ブレない安定したダメージ、そして連続8回攻撃という、まさに最強の特技。
であるからこそ、このような修正倍率がかかっているのだろうか?だとしたら、アラミタマで限界まで攻撃力を上げても、絶対に基準値に到達しない仕様というのは、開発陣の最後の抵抗、あるいは単なる「お遊び」なのか。
「こんなに便利な技なんだからさぁ、強制的に少し弱くなるくらいで、ちょうどいいでしょ?」
と、思って決められたのかどうか、真相は不明だが、それにしてもこれほどのバランスブレイカーを、ゲームクリア前に造れてしまう設定に落ち着かせたところに、デビルサマナーの妙味を感じずにはいられない。
まずは、ここまで読んでくれた方に、ありがとう。時間の都合もあって、サンプル数が少ない実験になってしまったのだが、それでも何か、改めてデビルサマナーに興味を持ってもらえたなら幸いだ。と同時に、改めて断っておくが、ここまで提示してきた計算式というのは、あくまで仮定である、ということを再認識してもらいたい。しかし、何らかの「目安」にはなったのではないだろうか。
もし自身でプレーしていて、ここに提示した計算式を当てはめた結果、何かしら新しい結論なり、推論を得られたのであれば、ぜひ、当サイトのBBSまで情報を寄せていただけるとありがたい。もちろん、他人任せなだけでなく、自分でも少しずつ調べていくつもりではあるが。
冒頭でも書いたが、RPGにおける戦闘とは、しょせん数字の削りあいである。キャラクターが死のうが、どうなろうが、精神的・感情的にはともかく、身体的には痛くも痒くもない。ましてダメージ計算式を知ったところで、デビルサマナーのプレイスタイルが大きく変わるということもないだろう。どんな敵であれ、わりと単純に、アバウトな戦法で、なんだかんだいって倒せてしまうのが、『真・女神転生デビルサマナー』というゲームである。言い方は悪いが、緻密な計算などする必要性がまったくないゲームなのである。
だがその大雑把さを否定する気はないし、むしろ、それがデビルサマナーのひとつの味と見てもいいのではないかと思っている。見方を変えてみれば、ヨシツネの存在というのは、プレイヤーに行き過ぎない程度の爽快感・無敵感を与えるために、意図的に作られたキャラクター像であるとも考えられないだろうか?「あまりにも強すぎてヨシツネは封印したよ」なんていう意見も、作り手の人たちにとってみれば、それこそ「思惑通り」のことなのかもしれない。
さて今後の課題だが、まずひとつは魔法ダメージ計算式の再考。レベルがどう関係しているのか、など、まだまだ調べる余地はありそう。
通常ダメージの計算は、もう特に調べることはないだろう。算出した基準値と、実際のダメージ値に大きな差はないと思う。
一番問題なのが特技で、串刺し・八艘飛びのような、特殊な計算でなりたっているものが他にもあるかどうか。また、攻略本に書かれている「最大HPで威力が変わる」の検証について。ここまで読んだ人ならわかると思うが、実は今回提示した計算式では、HP云々という要素は取り入れていない。だがそれでもある程度の答えは見えた。本当にHPが関係するのか、あるいは関係しないのか。するとしたらどうのように関係するのか、などなど。まだまだ調べる余地はありそうだ。
それでは今回はここまで。また何か面白いことでも発見したら、このページを更新しようと思う。