公務員制度の抜本改革の実施
【政策目的】
○公務員に対する信頼を回復する。
○行政コストを適正化する。
○労働者としての公務員の権利を認め、優秀な人材を確保する。
【具体策】
○2008年に成立した「国家公務員制度改革基本法」に基づき、内閣の一元管理による新たな幹部職制度や能力・実績に応じた処遇などを着実に実施する。
○定年まで働ける環境をつくり、国家公務員の天下りのあっせんは全面的に禁止する。
○地方分権推進に伴う地方移管、国家公務員の手当・退職金などの水準、定員の見直しなどにより、国家公務員の総人件費を2割削減する。
○公務員の労働基本権を回復し、民間と同様、労使交渉によって給与を決定する仕組みを作る。
国家公務員 vs. 地方公務員
民主党の公務員改革の大きな穴は、その対象を国家公務員にのみに絞っている点。上記の統計をみれば一目瞭然であるが、日本の公務員全体に占める国家公務員の割合は10%にも満たない。その国家公務員の総人件費を2割削減した所で、残り9割を占める地方公務員に手を付けなくては公務員制度の「抜本的」改革とは言い難い。
そもそも、地方公務員の給与水準は地域の民間給与と比べて非常に高いことで知られる。地方公務員と域内民間の給与比較した公/民比率が最も高いのが青森県であり、実に地域民間平均の2.15倍もの優遇された給与を地方公務員が受けている。全国の公/民間の給与差は平均すると1.7倍にも及ぶ。実は、地方公務員改革の中で「本丸」として切り込まなければならないのはこの部分なのだ。
地方公務員と地域民間企業の平均給与(単位:万円)
| |
公務員給与 |
民間給与 |
公/民 |
|
|
公務員給与 |
民間給与 |
公/民 |
| 青森 |
721 |
335 |
2.15 |
|
愛媛 |
714 |
419 |
1.7 |
| 沖縄 |
690 |
343 |
2.01 |
|
宮城 |
731 |
435 |
1.68 |
| 岩手 |
725 |
365 |
1.99 |
|
岡山 |
706 |
425 |
1.66 |
| 秋田 |
719 |
361 |
1.99 |
|
岐阜 |
718 |
444 |
1.63 |
| 山形 |
735 |
373 |
1.97 |
|
京都 |
787 |
485 |
1.62 |
| 宮崎 |
710 |
368 |
1.93 |
|
埼玉 |
774 |
478 |
1.62 |
| 大分 |
732 |
386 |
1.9 |
|
愛知 |
824 |
513 |
1.61 |
| 鹿児島 |
713 |
382 |
1.87 |
|
兵庫 |
797 |
498 |
1.6 |
| 佐賀 |
709 |
381 |
1.86 |
|
静岡 |
761 |
476 |
1.6 |
| 熊本 |
714 |
388 |
1.84 |
|
奈良 |
737 |
463 |
1.6 |
| 高知 |
709 |
388 |
1.83 |
|
香川 |
691 |
438 |
1.58 |
| 長崎 |
729 |
402 |
1.81 |
|
長野 |
697 |
445 |
1.57 |
| 新潟 |
727 |
401 |
1.81 |
|
群馬 |
721 |
461 |
1.56 |
| 鳥取 |
668 |
373 |
1.8 |
|
広島 |
729 |
471 |
1.55 |
| 北海道 |
728 |
410 |
1.78 |
|
三重 |
722 |
471 |
1.53 |
| 島根 |
692 |
394 |
1.76 |
|
栃木 |
719 |
471 |
1.53 |
| 福井 |
728 |
415 |
1.75 |
|
滋賀 |
727 |
478 |
1.52 |
| 山口 |
735 |
423 |
1.74 |
|
神奈川 |
818 |
543 |
1.51 |
| 福島 |
721 |
413 |
1.74 |
|
大阪 |
799 |
529 |
1.51 |
| 福岡 |
754 |
439 |
1.72 |
|
茨城 |
737 |
494 |
1.49 |
| 徳島 |
734 |
427 |
1.72 |
|
山梨 |
701 |
472 |
1.49 |
| 石川 |
744 |
434 |
1.71 |
|
千葉 |
747 |
513 |
1.46 |
| 富山 |
721 |
421 |
1.71 |
|
東京 |
821 |
601 |
1.37 |
| 和歌山 |
750 |
442 |
1.7 |
|
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今回、民主党が地方公務員を改革の対象として掲げていない以上、もし単純に数値目標である国家公務員人件費の「2割削減」を実現するだけならば、国家公務員から地方公務員へと予算や人員を置き換えるだけという簡易な手法で達成が可能となる。民主党公約である「公務員制度の抜本改革」が小手先の数字合わせだけで終わらせないように、施策の中身とその結果までをしっかりと吟味した総合的な政策評価を行なう必要だ。
官僚幹部人事:「局長以上は辞表」公約はどうなった?
選挙前から不安視されていた「フタを開けてみれば、やっぱり出来ませんでした」が各所で続出しつつある民主党。鳩山氏自身が「民主党政権では局長以上の幹部官僚に辞表を提出させ、民主党政策に同意する者のみを改めて採用する」としていた新しい幹部人事制度の撤回を示した。報道では少しマイルドに「軌道修正」となっているが、これは明らかな公約違反となる。
最終更新:2009年10月18日 08:11