――檀黎斗。
この殺し合いを開いた主催者は神を自称する人間だった。
不思議な力の数々は――大して気にならない。当然警戒はしているが……今はそれどころじゃない。
この殺し合いを開いた主催者は神を自称する人間だった。
不思議な力の数々は――大して気にならない。当然警戒はしているが……今はそれどころじゃない。
「マヤちゃん……!嘘だよね……?」
今、僕が最も優先すべきこと。それはココアちゃんのメンタルケアだ。
檀黎斗は――おそらくだが人を人として見ていない。まるで玩具で遊ぶかのように様々な人の命を奪い、その末路を映し出していた。
檀黎斗は――おそらくだが人を人として見ていない。まるで玩具で遊ぶかのように様々な人の命を奪い、その末路を映し出していた。
あまり良い趣味とは言えない。悪趣味極まりない男に苛立ちを覚えないと言えば、嘘になる。
だが幸か不幸か、僕はこういう輩はもう見慣れている。――姿形や性格こそ違うが、悪辣な輩という意味では聖餐杯と同じだ。
だが幸か不幸か、僕はこういう輩はもう見慣れている。――姿形や性格こそ違うが、悪辣な輩という意味では聖餐杯と同じだ。
だがココアちゃんは違う。
普通の日常を謳歌していたからこそ、こういう事態には弱い。
それにココアちゃんの友達が――あの犠牲者の中に含まれている。ココアちゃんの反応を見るに、そう考えて間違いなさそうだ。
普通の日常を謳歌していたからこそ、こういう事態には弱い。
それにココアちゃんの友達が――あの犠牲者の中に含まれている。ココアちゃんの反応を見るに、そう考えて間違いなさそうだ。
なによりチノちゃん以外の友達の名前は放送が始まるまでの間に聞いていた。マヤちゃんの存在も僕は知っている。
ココアちゃんが露骨に取り乱したタイミングはカード使いの女の子が殺された後。つまりあの子がマヤちゃんということになる。
ココアちゃんが露骨に取り乱したタイミングはカード使いの女の子が殺された後。つまりあの子がマヤちゃんということになる。
あの光景は日常を過ごしていた女の子には堪える。ただでさえそういう映像なのに、友達が殺されたとなれば取り乱すのも無理ない。
僕だってベアトリスや螢をあんなふうに殺されたら――自分がどうなるか、わからない。
名簿に霧咲さんを含めた三人の名前がなかったのは、本当に運が良かった。
それに安堵した反面、ココアちゃんの友達が何人も巻き込まれたことに対して同情と、強烈な違和感を覚える。
僕だってベアトリスや螢をあんなふうに殺されたら――自分がどうなるか、わからない。
名簿に霧咲さんを含めた三人の名前がなかったのは、本当に運が良かった。
それに安堵した反面、ココアちゃんの友達が何人も巻き込まれたことに対して同情と、強烈な違和感を覚える。
ココアちゃん達はただの女の子だ。
ベアトリスや霧咲さんならまだ納得が出来た。参加していないに越したことはないが、彼女達が参加させられている可能性は考慮していた。
だが無力な女の子を何人も集めて何を企んでいる……?
ベアトリスや霧咲さんならまだ納得が出来た。参加していないに越したことはないが、彼女達が参加させられている可能性は考慮していた。
だが無力な女の子を何人も集めて何を企んでいる……?
この殺し合いや檀黎斗については謎が多い。
考えれば考える程に、わからなくなる。
でも――これだけはココアちゃんに言わなければならない。
考えれば考える程に、わからなくなる。
でも――これだけはココアちゃんに言わなければならない。
「ココアちゃん。あの映像はきっと嘘じゃないよ」
ココアちゃんにとって厳しい現実を叩き付ける。
それはどうしようもなく心苦しいことだし、ココアちゃんを悲しませる結果になることは目に見えていた。
それでも「実は生きてる可能性がある」なんて都合の良い嘘を僕は吐けない。――辛いことになるだろうけど、殺し合いで生き抜くためにも。そしてチノちゃんを守る気概があるのなら、ココアちゃんには現実を受け止めてもらわなければならない。
それはどうしようもなく心苦しいことだし、ココアちゃんを悲しませる結果になることは目に見えていた。
それでも「実は生きてる可能性がある」なんて都合の良い嘘を僕は吐けない。――辛いことになるだろうけど、殺し合いで生き抜くためにも。そしてチノちゃんを守る気概があるのなら、ココアちゃんには現実を受け止めてもらわなければならない。
都合の良い言葉を並べること自体は簡単だ。
でもココアちゃんに生きて欲しいからこそ、厳しい現実を受け止めてもらう。
でもココアちゃんに生きて欲しいからこそ、厳しい現実を受け止めてもらう。
「嘘の映像を流しても檀黎斗にメリットはない。むしろ参加者――プレイヤー達から嘘つきのゲームマスターだと思われて願いを叶えたいプレイヤーを含めた全ての参加者からの信用が下がるだけだ」
檀黎斗の素性はあまり知らない。
それでもこれくらいのことは考えられる。バレやすい嘘をついても彼に何のメリットもないはずだ。
それでもこれくらいのことは考えられる。バレやすい嘘をついても彼に何のメリットもないはずだ。
「もしもマヤちゃんが殺されてなければ。あの映像が嘘なら、マヤちゃん本人やマヤちゃんと出会った人たちには嘘だとわかる。そんなことをあのゲームマスターがするとは思えないな」
「そんな……。じゃあマヤちゃんは……」
「そんな……。じゃあマヤちゃんは……」
ココアちゃんの表情が更に暗くなる。
まるで太陽が沈んでしまったかのように――ココアちゃんの明るい陽気な性格がなりを潜める。
……大切な人を殺されたココアちゃんの気持ちは痛いほどわかる。
僕は誰かに殺されたわけじゃなくて、この手を血に染めてしまったけど……その気持ちはすごくわかる。
まるで太陽が沈んでしまったかのように――ココアちゃんの明るい陽気な性格がなりを潜める。
……大切な人を殺されたココアちゃんの気持ちは痛いほどわかる。
僕は誰かに殺されたわけじゃなくて、この手を血に染めてしまったけど……その気持ちはすごくわかる。
それでも――大切な妹を守りたいなら、進むしかない。
チノちゃんを守る。自分も戦うというのはココアちゃんが言い始めたことだ。
僕は彼女がここで折れるなら、それで良いとも思う。無理してココアちゃんが戦う必要はない。
でもココアちゃんにはチノちゃんが居る。ココアちゃんが生き延びるためにも、殺し合いという現実は知ってほしい。
チノちゃんを守る。自分も戦うというのはココアちゃんが言い始めたことだ。
僕は彼女がここで折れるなら、それで良いとも思う。無理してココアちゃんが戦う必要はない。
でもココアちゃんにはチノちゃんが居る。ココアちゃんが生き延びるためにも、殺し合いという現実は知ってほしい。
「……あの映像は嘘じゃない。つまりそういうことだよ、ココアちゃん」
〇
条河麻耶の死。
それはココアにとって耐え切れないほど、辛いものだった。
戒から現実を突き付けられると、その瞳から大粒の涙を流して泣きじゃくる。
それはココアにとって耐え切れないほど、辛いものだった。
戒から現実を突き付けられると、その瞳から大粒の涙を流して泣きじゃくる。
――保登心愛は心優しい少女だ。
妹のように可愛がっていた友達のマヤが死んで、心の底から悲しい。
殺し合い。それはココアにとってこれ以上なく残酷なもので、挙句の果てにマヤ以外にも何人もの友達が巻き込まれている。
妹のように可愛がっていた友達のマヤが死んで、心の底から悲しい。
殺し合い。それはココアにとってこれ以上なく残酷なもので、挙句の果てにマヤ以外にも何人もの友達が巻き込まれている。
これはマヤの死という現実を突きつけられた後に戒から聞いたことだが――チノ、リゼ、メグの三人。そしてどういうわけか、保登心愛の名前が2つもある。まるでドッペルゲンガーだ。
(チノちゃん……。私はどうしたらいいのかな……)
マヤが死ぬなんて有り得ないと思っていた。
それが起こってしまって、他の友達の死も「有り得るかも」しれないと思うようになってしまった。
それに何故か自分の名前が二つもある謎。なにがなんだかわからない。
それが起こってしまって、他の友達の死も「有り得るかも」しれないと思うようになってしまった。
それに何故か自分の名前が二つもある謎。なにがなんだかわからない。
(私は――本物のココアだよね?)
空を見上げると、私が私を見つめてる。
あなたは偽物だよって言いたそうに、見つめてる。
名簿は自分でも確認した。ほんとに保登心愛って二つも書いてあった。
野獣先輩やマサツグ様っていう変な名前もいっぱいあったけど、今はそれより私の大切な友達やもう一人の私に目がいく。
あなたは偽物だよって言いたそうに、見つめてる。
名簿は自分でも確認した。ほんとに保登心愛って二つも書いてあった。
野獣先輩やマサツグ様っていう変な名前もいっぱいあったけど、今はそれより私の大切な友達やもう一人の私に目がいく。
(チノちゃん……私は……)
こんなに弱気になっちゃって、お姉ちゃん失格だよ。
ううん……そもそも私が本物のココアじゃないかもしれない。
それでもチノちゃんのことは大切な妹だと思ってるし、リゼちゃんやメグちゃんも大切な友達。
ううん……そもそも私が本物のココアじゃないかもしれない。
それでもチノちゃんのことは大切な妹だと思ってるし、リゼちゃんやメグちゃんも大切な友達。
それなのに――どうして私は私だと思えないのかな。
自分が偽物だって。ドッペルゲンガーだって思うだけで怖いよ
自分が偽物だって。ドッペルゲンガーだって思うだけで怖いよ
『私が本物のココアだよっ!』
もう一人の私が私を見つめて、そんなことまで言ってきた。
やっぱり私は偽物なのかな……。
チノちゃんのことだって本物の私が……。
やっぱり私は偽物なのかな……。
チノちゃんのことだって本物の私が……。
「戒さん。本物の私をよろしくね」
私は偽物。
だからチノちゃんのことは本物の私に任せた方がいいよね。
だからチノちゃんのことは本物の私に任せた方がいいよね。
どっちが本物なのかわからないけど……ずっと私が私を見つめてくる。怖いよ……。
「?」
それでも戒さんは、呆気に取られたような顔になって。
「本物も偽物もない。君は君だよ、ココアちゃん」
そんな優しい言葉をくれて。
「じゃあ、どうして私の名前が二つもあるの!?」
「……それは僕にもわからない。でも君のチノちゃんに対する想いは本物だと思うよ」
「私の想い……?」
「……それは僕にもわからない。でも君のチノちゃんに対する想いは本物だと思うよ」
「私の想い……?」
私の想い。
チノちゃんに対する想い。
チノちゃんに対する想い。
――――うん。
私はたしかにチノちゃんのことが大好きだよ。
大切な妹で、誰よりもなによりも大切で――。
でも……だからといって私が本物というわけじゃ……。
私はたしかにチノちゃんのことが大好きだよ。
大切な妹で、誰よりもなによりも大切で――。
でも……だからといって私が本物というわけじゃ……。
『そうだよ。私が本物だから――』
『ごちゃごちゃうるさいです……!』
『ごちゃごちゃうるさいです……!』
もう一人の私を、チノちゃんが強引に退かした。
え?あれ?ど、どういうことなのかな……!?
え?あれ?ど、どういうことなのかな……!?
『ココアさん。本当にお姉ちゃんなら――こんな幻影なんかに負けないでください!』
――幻影?
私が見てたのは、ただの幻だったのかな?
気付いた時にはいつの間にか、もう一人の私もチノちゃんも消えていた。
私が見てたのは、ただの幻だったのかな?
気付いた時にはいつの間にか、もう一人の私もチノちゃんも消えていた。
『そうだよ、ココア。こんなとこでへこたれるなんて、ココアらしくないじゃん!』
最期にマヤちゃんが見えて、そんなことを言ったような気がする。
これはただの幻で――私が見ただけの、都合の良い夢かもしれないけど。
これはただの幻で――私が見ただけの、都合の良い夢かもしれないけど。
「……うん。チノちゃんやみんなへの想いがある限り、私は私だよね!」
そうだ。
私は保登心愛。ココアなんだ。
たとえ私が二人居たとしても――この想いは、偽物なんかじゃないよ……!
私は保登心愛。ココアなんだ。
たとえ私が二人居たとしても――この想いは、偽物なんかじゃないよ……!
そしてマヤちゃん――守れなくて、ごめんね。
でもみんなのことは絶対に守るから。マヤちゃんの――私たちの大切な友達はみんな私が守るから!
でもみんなのことは絶対に守るから。マヤちゃんの――私たちの大切な友達はみんな私が守るから!
「――お姉ちゃんに、任せなさい!!」
〇
――一度沈んだ太陽は、こうして再び昇る。
たとえ自分が本物だろうが、偽物だろうが関係ない。
チノや大切な友達を守るという想い。かけがえのない日常を大切にするその在り方こそが、保登心愛なのだから。
だからこれからもう一人のココアに会っても、偽物や本物なんて関係なく接するだろう。
保登心愛は香風智乃が大好きだ。この姉妹愛は誰にも止められない。
たとえ自分が本物だろうが、偽物だろうが関係ない。
チノや大切な友達を守るという想い。かけがえのない日常を大切にするその在り方こそが、保登心愛なのだから。
だからこれからもう一人のココアに会っても、偽物や本物なんて関係なく接するだろう。
保登心愛は香風智乃が大好きだ。この姉妹愛は誰にも止められない。
輝きを取り戻した太陽に照らされて、櫻井戒は僅かに頬を緩めた。
【一日目/深夜/E-5】
【保登心愛@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:健康
[装備]: ココア専用ソード@きららファンタジア
[道具]:基本支給品、あんこ@ご注文はうさぎですか?、ランダム支給品0~1
[思考・状況]基本方針:チノちゃんや戒さんと一緒にバトルロワイヤルを終わらせるよ!
1:戒さんと一緒にチノちゃんやみんなを探す
2:もう迷わない。私は私――ココアだよ!
[備考]
※名簿を確認しました。もう一人『保登心愛』がいることを確認しました
【保登心愛@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:健康
[装備]: ココア専用ソード@きららファンタジア
[道具]:基本支給品、あんこ@ご注文はうさぎですか?、ランダム支給品0~1
[思考・状況]基本方針:チノちゃんや戒さんと一緒にバトルロワイヤルを終わらせるよ!
1:戒さんと一緒にチノちゃんやみんなを探す
2:もう迷わない。私は私――ココアだよ!
[備考]
※名簿を確認しました。もう一人『保登心愛』がいることを確認しました
【櫻井戒@Dies irae Verfaulen segen】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:ココアちゃんを守る
1:チノちゃんやココアちゃんの友達を探す
2:ココアちゃんを鍛える…?
[備考]
※終了後から参戦。
※聖遺物を本人支給されてない代わりに見知らぬ場所で聖遺物が破壊されても死にません。また攻撃も普通に通用します。これらの説明は戒に支給された説明書に記載されています
※ 名簿を確認しました。もう一人『保登心愛』がいることを確認しました
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:ココアちゃんを守る
1:チノちゃんやココアちゃんの友達を探す
2:ココアちゃんを鍛える…?
[備考]
※終了後から参戦。
※聖遺物を本人支給されてない代わりに見知らぬ場所で聖遺物が破壊されても死にません。また攻撃も普通に通用します。これらの説明は戒に支給された説明書に記載されています
※ 名簿を確認しました。もう一人『保登心愛』がいることを確認しました
029:ⅩⅩⅠ THE WORLD | 投下順 | 031:ご注文はココアですか?~Dear My Friend~ |
時系列順 | ||
01:Dear My Sister/死を喰らう者とココアの覚悟 | 保登心愛 | 051:■滅の刃(前編) |
櫻井戒 |