もし自分がココア達と共にいなければ。
襲撃者へ即座に対処出来る人間がこの場にいなかったら。
きっと数秒と経たずに、アパートの一室は凄惨な殺害現場と化しただろう。
IFの光景に戒は悪寒が走るのを抑えられない。
襲撃者へ即座に対処出来る人間がこの場にいなかったら。
きっと数秒と経たずに、アパートの一室は凄惨な殺害現場と化しただろう。
IFの光景に戒は悪寒が走るのを抑えられない。
「お前は…」
「……」
「……」
問い掛けに侍は沈黙を返すのみ。
向こうがどうかは知らないが、戒はこの男を知っている。
いや、戒のみならず全ての参加者が男の正体を把握しているだろう。
継国縁壱、檀黎斗直々に紹介された敵キャラクター。
主催撃破と優勝、異なる方針のプレイヤーにとって共通の避けては通れぬ難関。
マヤを殺したポセイドン同様、存在を大々的に知らされた以上は当然警戒の度合いも増す。
全プレイヤーから敵意を向けられても跳ね返せる程の力が無ければ、ただ単に不利にするだけだ。
とはいえ縁壱の実力の程は今しがたの襲撃で十分に分かった。
ほんの僅かにでも反応が遅れれば、ココア達と揃って輪切りにされただろう速さ。
対峙しているだけで嫌な汗が止まらないプレッシャー。
成程、これは間違いなく強い。
向こうがどうかは知らないが、戒はこの男を知っている。
いや、戒のみならず全ての参加者が男の正体を把握しているだろう。
継国縁壱、檀黎斗直々に紹介された敵キャラクター。
主催撃破と優勝、異なる方針のプレイヤーにとって共通の避けては通れぬ難関。
マヤを殺したポセイドン同様、存在を大々的に知らされた以上は当然警戒の度合いも増す。
全プレイヤーから敵意を向けられても跳ね返せる程の力が無ければ、ただ単に不利にするだけだ。
とはいえ縁壱の実力の程は今しがたの襲撃で十分に分かった。
ほんの僅かにでも反応が遅れれば、ココア達と揃って輪切りにされただろう速さ。
対峙しているだけで嫌な汗が止まらないプレッシャー。
成程、これは間違いなく強い。
場合によっては撤退も視野に入れるべきだろうがしかし、簡単に逃がしてはくれない。
聖遺物が失われている以上、創造は不可能。
尤もココア達が近くにいる状況で、アレを使う訳にはいかない。
なれば櫻井戒として鍛え上げた戦闘技術で打ち勝つ他ない。
幸い武器には恵まれている。
眩い刀身に蝙蝠が噛み付いた剣、聖槍無き今戒に与えられた唯一の武器。
名はザンバットソード、ファンガイアの王の為に作られた魔皇剣。
ずっしりとした重み、これより他者の命を奪うと考えれば余計に重さを感じる。
今更退く気は無い、退けば相手は自分のみならず守るべき少女達まで殺すのだろうから。
聖遺物が失われている以上、創造は不可能。
尤もココア達が近くにいる状況で、アレを使う訳にはいかない。
なれば櫻井戒として鍛え上げた戦闘技術で打ち勝つ他ない。
幸い武器には恵まれている。
眩い刀身に蝙蝠が噛み付いた剣、聖槍無き今戒に与えられた唯一の武器。
名はザンバットソード、ファンガイアの王の為に作られた魔皇剣。
ずっしりとした重み、これより他者の命を奪うと考えれば余計に重さを感じる。
今更退く気は無い、退けば相手は自分のみならず守るべき少女達まで殺すのだろうから。
先手必勝、真正面から斬り掛かる。
元々ファンガイア専用の為に作られた剣だ、人間が扱える重量に非ず。
されど此度の使い手は櫻井戒。
黒円卓所属、人外の如き能力を我が物とした青年。
ザンバットソードも己の手足を動かすと同じ感覚で振るう。
極限まで研磨された刀身の餌食となるは、異界の侍の首か。
元々ファンガイア専用の為に作られた剣だ、人間が扱える重量に非ず。
されど此度の使い手は櫻井戒。
黒円卓所属、人外の如き能力を我が物とした青年。
ザンバットソードも己の手足を動かすと同じ感覚で振るう。
極限まで研磨された刀身の餌食となるは、異界の侍の首か。
威力のみならず、速度も人外の領域へ足を踏み入れている。
だというのに当たらない、着物の端にすら掠めない。
攻撃の空振りを脳が完全に理解する前に、戒の両腕が跳ね上がった。
翳した剣へ走る衝撃、金属音が鼓膜を震わせる頃には次の動作へ移行。
ザンバットソードを突き出し、手応え無しと分かるや否や跳躍。
日輪刀の切っ先が切り裂くは衣服、皮一枚すらまだ無事。
だが動き続けねば刃が肉を抉るのも時間の問題。
心臓へと突き進む刃を弾く。
だというのに当たらない、着物の端にすら掠めない。
攻撃の空振りを脳が完全に理解する前に、戒の両腕が跳ね上がった。
翳した剣へ走る衝撃、金属音が鼓膜を震わせる頃には次の動作へ移行。
ザンバットソードを突き出し、手応え無しと分かるや否や跳躍。
日輪刀の切っ先が切り裂くは衣服、皮一枚すらまだ無事。
だが動き続けねば刃が肉を抉るのも時間の問題。
心臓へと突き進む刃を弾く。
両腕共々跳ね上げられた日輪刀。
がら空きの胴体へ剣を走らせるチャンス。
尤も己の隙は己自身が一番理解している。
ザンバットソードが振るわれた時にはもう、流れるように縁壱は回避を選択。
短距離ながら瞬間移動もかくやと言う速度。
真横から戒の頸を狙う。
がら空きの胴体へ剣を走らせるチャンス。
尤も己の隙は己自身が一番理解している。
ザンバットソードが振るわれた時にはもう、流れるように縁壱は回避を選択。
短距離ながら瞬間移動もかくやと言う速度。
真横から戒の頸を狙う。
「死んどけオラァアアアアアアアアアッ!!」
怒声をそのまま威力に変えた一撃。
襲い来るモーニングスターに攻撃を中断。
難なく躱されはしたが、戒が斬首される末路は無事回避に成功。
喜ぶ暇は無いが。
襲い来るモーニングスターに攻撃を中断。
難なく躱されはしたが、戒が斬首される末路は無事回避に成功。
喜ぶ暇は無いが。
縁壱へ迫る刃、正し戒の剣では無い。
二方向からの攻撃、片方は剣だがもう片方は巨大なフォーク。
挟み撃ちにも動じず、そればかりかどちらにも視線を寄越しすらせず躱す。
直後に殺到するは光弾。
命中の寸前で勝手に爆発、違う、目視不可能な速度で斬り落とされた。
顔色は変えず無言のままに現状を受け入れる。
斬るべき鬼が増えたと。
蝙蝠が噛み付いた剣を持つ鬼だけではない。
少女の姿をした鬼が三体、少年の鬼が一体。
計五体。問題無い、ただこれまで通りに斬るだけだ。
二方向からの攻撃、片方は剣だがもう片方は巨大なフォーク。
挟み撃ちにも動じず、そればかりかどちらにも視線を寄越しすらせず躱す。
直後に殺到するは光弾。
命中の寸前で勝手に爆発、違う、目視不可能な速度で斬り落とされた。
顔色は変えず無言のままに現状を受け入れる。
斬るべき鬼が増えたと。
蝙蝠が噛み付いた剣を持つ鬼だけではない。
少女の姿をした鬼が三体、少年の鬼が一体。
計五体。問題無い、ただこれまで通りに斬るだけだ。
「ココアちゃん…皆も…」
「私達も一緒に頑張るよ!戒さん!」
「私達も一緒に頑張るよ!戒さん!」
力強い言葉に、彼女ならそうするかと納得を抱く。
縁壱が現れすぐには動けなかったが、そのままじっとしているつもりはない。
戒だけが傷付き苦しい思いをしない為に、ココアは戦いへ加わった。
縁壱が現れすぐには動けなかったが、そのままじっとしているつもりはない。
戒だけが傷付き苦しい思いをしない為に、ココアは戦いへ加わった。
「こちとらまだ機嫌悪ぃんだ。ストレス発散させやがれぇ!」
女の子のみに戦わせ高みの見物は小鳩の趣味じゃない。
威勢よくモーニングスターを叩き付け、シャミ子と苺香も続く。
初の実戦でまだ訓練もしていないが、どちらも戦いを押し付けるのには抵抗がある。
皆で一緒に勝つ気概は十分だ。
威勢よくモーニングスターを叩き付け、シャミ子と苺香も続く。
初の実戦でまだ訓練もしていないが、どちらも戦いを押し付けるのには抵抗がある。
皆で一緒に勝つ気概は十分だ。
「……」
焦りも無ければ嘲りも皆無。
人形の如き無表情なれど、繰り出す剣に容赦は無し。
何でもないようにモーニングスターを避け、小鳩を襲う紅蓮の刃。
シャミ子が突き出す巨大フォークも空振り、反対に突き出された刀であわや心臓一突きの末路。
それを防ぐはザンバットソード、割って入った戒が仲間から脅威を遠ざける。
クリスタルより苺香が光弾を発射。
縁壱と言えども、肉体の強度は人間の域を出ない。
肉を削がれ骨を砕かれる弾幕にも、冷汗一つ掻かず対処。
邪魔な埃を掃うかのように霧散、ついでとばかりにココアの剣も回避。
頭上から迫るモーニングスターも当然の如く当たらない。
視線は最も強烈な一撃を繰り出す青年に固定、ザンバットソードを受け流し逆に斬り込む。
人形の如き無表情なれど、繰り出す剣に容赦は無し。
何でもないようにモーニングスターを避け、小鳩を襲う紅蓮の刃。
シャミ子が突き出す巨大フォークも空振り、反対に突き出された刀であわや心臓一突きの末路。
それを防ぐはザンバットソード、割って入った戒が仲間から脅威を遠ざける。
クリスタルより苺香が光弾を発射。
縁壱と言えども、肉体の強度は人間の域を出ない。
肉を削がれ骨を砕かれる弾幕にも、冷汗一つ掻かず対処。
邪魔な埃を掃うかのように霧散、ついでとばかりにココアの剣も回避。
頭上から迫るモーニングスターも当然の如く当たらない。
視線は最も強烈な一撃を繰り出す青年に固定、ザンバットソードを受け流し逆に斬り込む。
「っ!」
受けた被害は皮一枚。
数滴の血で済み、安堵するのはコンマ一秒のこと。
次こそはと頸を狙う日輪刀を防ぎ、押し返し体勢を崩しに掛かる。
だが遅い、両腕に力を籠める前にヒラリと木の葉を思わせる軽やかさで避けられた。
数滴の血で済み、安堵するのはコンマ一秒のこと。
次こそはと頸を狙う日輪刀を防ぎ、押し返し体勢を崩しに掛かる。
だが遅い、両腕に力を籠める前にヒラリと木の葉を思わせる軽やかさで避けられた。
「んのチョンマゲ野郎!」
苛立ちをたっぷりと籠めた一撃。
帰宅部の中でも特に破壊力に秀でた小鳩のカタルシスエフェクト。
おまけに装備した支給品の恩恵で、リドゥにいた頃よりも身軽なのだ。
ビジュアル面に目を瞑れば文句なしの効果。
デジヘッド程度なら一人でも蹴散らせる程の戦闘力を、今の小鳩は持つ。
にも関わらず、涼しい顔で平然と避けるこの侍は何なのだろうか。
楽士でさえ間近に棘付きの鉄球が迫れば、流石に顔色を変えたというのに。
帰宅部の中でも特に破壊力に秀でた小鳩のカタルシスエフェクト。
おまけに装備した支給品の恩恵で、リドゥにいた頃よりも身軽なのだ。
ビジュアル面に目を瞑れば文句なしの効果。
デジヘッド程度なら一人でも蹴散らせる程の戦闘力を、今の小鳩は持つ。
にも関わらず、涼しい顔で平然と避けるこの侍は何なのだろうか。
楽士でさえ間近に棘付きの鉄球が迫れば、流石に顔色を変えたというのに。
(あのクソ神ふざけんなよ!キノピオでクッパでも倒せってのかクソが!!!)
ポセイドンといい目の前の侍といい、参加させていいレベルの強さではない。
ラスボスとか裏ボスとか、最早そういう次元じゃないだろう。
違法改造したバグキャラを相手にしてる気分だ。
殺し合いをゲームと称するなら、当然縁壱にも何らかの攻略法がある筈。
というか無ければクソゲーどころか単なるガラクタも同然。
少なくとも、数の差によるごり押しだけでは勝利は拾えない。
それが分かっても現状はとにかく攻撃を続けるしかなく、気を逸らせばコンティニュー不可の終わりへ一直線。
腹の立つ事に敵は小鳩のみならず、ココアとシャミ子の攻撃にも一切目を向けない。
ただ気付けば避けられていて、刀を持つ手が動いたかと思えば戒と斬り結んでいる。
苺香の光弾も未だ一発も当たっていない。
無双ゲーの雑魚キャラ程度にしか見られていないようで、それがまたストレスを溜める原因だった。
ラスボスとか裏ボスとか、最早そういう次元じゃないだろう。
違法改造したバグキャラを相手にしてる気分だ。
殺し合いをゲームと称するなら、当然縁壱にも何らかの攻略法がある筈。
というか無ければクソゲーどころか単なるガラクタも同然。
少なくとも、数の差によるごり押しだけでは勝利は拾えない。
それが分かっても現状はとにかく攻撃を続けるしかなく、気を逸らせばコンティニュー不可の終わりへ一直線。
腹の立つ事に敵は小鳩のみならず、ココアとシャミ子の攻撃にも一切目を向けない。
ただ気付けば避けられていて、刀を持つ手が動いたかと思えば戒と斬り結んでいる。
苺香の光弾も未だ一発も当たっていない。
無双ゲーの雑魚キャラ程度にしか見られていないようで、それがまたストレスを溜める原因だった。
(……あ?何だこれ?)
いい加減苛立ちも限界に達するかとなった時、妙な感覚を覚えた。
爪の間に小石が挟まったような、大きくは無いが妙に気になる違和感。
今は呑気に考え事をしている場合ではない。
そんなのは小鳩とて十分承知、しかし気になるのだからしょうがない。
一体なんだと視線を動かし頭を働かせると、正体が徐々に判明し出す。
多対一という状況、帰宅部と楽士の戦闘の時と大体同じ。
だが決定的に違うものが存在する。
爪の間に小石が挟まったような、大きくは無いが妙に気になる違和感。
今は呑気に考え事をしている場合ではない。
そんなのは小鳩とて十分承知、しかし気になるのだからしょうがない。
一体なんだと視線を動かし頭を働かせると、正体が徐々に判明し出す。
多対一という状況、帰宅部と楽士の戦闘の時と大体同じ。
だが決定的に違うものが存在する。
「あっ…」
ようやく気付き、当たり前かと即座に納得。
自分一人でうんうん頷いてる余裕は無い。
自分一人でうんうん頷いてる余裕は無い。
「シャミちゃんマイマイココアちゃん!全員一旦下がれ!」
唐突に叫ばれてもココア達には意味が分からない。
今正に命懸けの戦いの真っ最中、それがどうして退く理由が生まれるのか。
彼女らの困惑も今はじれったく、急かすように怒声を上げる。
今正に命懸けの戦いの真っ最中、それがどうして退く理由が生まれるのか。
彼女らの困惑も今はじれったく、急かすように怒声を上げる。
「いいから一旦下がれ!俺ら全員サクラエビの足手纏いだ!このままじゃどうやったって勝てねぇんだよ!」
戒に付けた渾名はゴン太と命名した帰宅部の仲間とどっちがマシかはさておき。
多対一という見慣れた状況でも、帰宅部の時と決定的に違う点が一つ。
連携が全く出来ていない。
もしここにいるのが桃やミカンと言った経験豊富な魔法少女や、専用装備を手にした別の世界線のココア達ならともかく。
争いとは一切関りの無い世界に生きたココアと苺香、まぞくとはいえ直接的な戦闘は不得意のシャミ子。
戦闘自体も縁壱相手が初めてな以上、戒への的確のサポートなどまず不可能。
強化された身体能力による力任せでは、却って味方を不利にしてしまう。
多対一という見慣れた状況でも、帰宅部の時と決定的に違う点が一つ。
連携が全く出来ていない。
もしここにいるのが桃やミカンと言った経験豊富な魔法少女や、専用装備を手にした別の世界線のココア達ならともかく。
争いとは一切関りの無い世界に生きたココアと苺香、まぞくとはいえ直接的な戦闘は不得意のシャミ子。
戦闘自体も縁壱相手が初めてな以上、戒への的確のサポートなどまず不可能。
強化された身体能力による力任せでは、却って味方を不利にしてしまう。
(考えてみりゃそうだわな)
リドゥ内とてデジヘッドやマリオヘッドを倒し経験を積み、楽士に勝てるレベルにまで鍛えたのだ。
単にカタルシスエフェクトが使えるだけでは、きっとどこかで全員くたばっているのがオチ。
せめて戒から鍛えてもらい、最低限力を使いこなしていれば少しはこちらの旗色が良くなったかもしれない。
空気を読めよと侍に悪態を吐きたかった。
単にカタルシスエフェクトが使えるだけでは、きっとどこかで全員くたばっているのがオチ。
せめて戒から鍛えてもらい、最低限力を使いこなしていれば少しはこちらの旗色が良くなったかもしれない。
空気を読めよと侍に悪態を吐きたかった。
「う、うん…!」
有無を言わせぬ怒声に、戸惑いながらも言われた通りに退く。
苛立ちで怒られたのではない、小鳩の言葉には説得力があると感じたのだろう。
実際、我武者羅に武器を振るうだけで精一杯なのだから。
苛立ちで怒られたのではない、小鳩の言葉には説得力があると感じたのだろう。
実際、我武者羅に武器を振るうだけで精一杯なのだから。
小鳩の言葉は正しいと証明する光景が繰り広げられる。
戒の動きのキレが数段増した。
これまではココア達へのフォローを行っていたが、最早その必要も無い。
言い方は悪いが足手纏いが消えた以上、縁壱のみへ集中出来るのだ。
戒の動きのキレが数段増した。
これまではココア達へのフォローを行っていたが、最早その必要も無い。
言い方は悪いが足手纏いが消えた以上、縁壱のみへ集中出来るのだ。
――壱の型 円舞
それだけで勝てる相手でないとは分かっている。
真円を描く一閃。
文字にすれば単純なれど、異様な速さは凡百の剣士程度では決して出せない。
回避が一手遅れる。
赤く染まる胴体、両断はされていない。
真円を描く一閃。
文字にすれば単純なれど、異様な速さは凡百の剣士程度では決して出せない。
回避が一手遅れる。
赤く染まる胴体、両断はされていない。
ならば問題無し、死んでいないなら十分。
脳へ届く傷の痛みは無視、考えるべきは敵へ剣を届かせるその一つのみ。
聖遺物は無い、それでも尚破格の強さを持つのが戒だ。
意識を研ぎ澄ます、古今東西あらゆる名刀をも凌駕する程に。
日輪刀が肩を切り裂く、どうでもいい。
そんな些事には構っていられない。
脳へ届く傷の痛みは無視、考えるべきは敵へ剣を届かせるその一つのみ。
聖遺物は無い、それでも尚破格の強さを持つのが戒だ。
意識を研ぎ澄ます、古今東西あらゆる名刀をも凌駕する程に。
日輪刀が肩を切り裂く、どうでもいい。
そんな些事には構っていられない。
ザンバットソードを振るう。
振るわれたと認識出来たのは相対する侍ただ一人。
速さが増す、雷が剣へ形を変えたが如き異常な斬撃。
真正面から受け止める、その選択肢は真っ先に外した。
得物の強度が違い過ぎるのだ。
如何に刀鍛冶が悪鬼を斬り、使い手自身を守ってくれと願いを籠めた日輪刀だろうと。
結局は人が人の為に作った武器。
人を超越した種族の頂点に君臨する王に相応しき魔剣。
それこそがザンバットソード。
まして戒の膂力は縁壱以上、まともに打ち合えばへし折れるのがどちらかは言うまでもない。
故に躱し、受け流す。
合間を縫って反撃に移るのがセオリー、だがその隙が見当たらない。
下手に攻撃に移れば最後、何百という死した鬼狩りと同じ末路を迎えるのみ。
振るわれたと認識出来たのは相対する侍ただ一人。
速さが増す、雷が剣へ形を変えたが如き異常な斬撃。
真正面から受け止める、その選択肢は真っ先に外した。
得物の強度が違い過ぎるのだ。
如何に刀鍛冶が悪鬼を斬り、使い手自身を守ってくれと願いを籠めた日輪刀だろうと。
結局は人が人の為に作った武器。
人を超越した種族の頂点に君臨する王に相応しき魔剣。
それこそがザンバットソード。
まして戒の膂力は縁壱以上、まともに打ち合えばへし折れるのがどちらかは言うまでもない。
故に躱し、受け流す。
合間を縫って反撃に移るのがセオリー、だがその隙が見当たらない。
下手に攻撃に移れば最後、何百という死した鬼狩りと同じ末路を迎えるのみ。
継国縁壱を知っている者が見れば、有り得ぬ光景と腰を抜かすだろう。
彼の兄は勿論、鬼の始祖ですらまともな戦闘へ持ち込む事態が不可能だった。
そのような怪物よりも怪物らしい男と渡り合っている。
あまつさえ、防戦一方を作り出すとは。
彼の兄は勿論、鬼の始祖ですらまともな戦闘へ持ち込む事態が不可能だった。
そのような怪物よりも怪物らしい男と渡り合っている。
あまつさえ、防戦一方を作り出すとは。
確かに、聖遺物が無いなら弱体化していると言わざるを得ないだろう。
しかしそれでも、櫻井戒は強い。
参加者では間違いなく上位に名を連ねる強者。
揺るがぬ事実としてそう存在する。
しかしそれでも、櫻井戒は強い。
参加者では間違いなく上位に名を連ねる強者。
揺るがぬ事実としてそう存在する。
斬る、斬る、斬る。
一撃たりとも加減はせず、容赦はせず。
付け入る隙を見せれば瞬く間に天秤が傾く。
有利に持ち込んでも戒に縁壱を甘く見る気は毛頭ない。
警戒は常に最大限に、確実に命を奪い取るまで一瞬たりとも気は緩められない相手だ。
一撃たりとも加減はせず、容赦はせず。
付け入る隙を見せれば瞬く間に天秤が傾く。
有利に持ち込んでも戒に縁壱を甘く見る気は毛頭ない。
警戒は常に最大限に、確実に命を奪い取るまで一瞬たりとも気は緩められない相手だ。
このまま攻め続ければ戒の勝ち。
先に限界が来るのは防戦一方の侍の方。
誰もがそう思うだろう。
先に限界が来るのは防戦一方の侍の方。
誰もがそう思うだろう。
では、今起こっているこれは何なのか。
百に届くかといった一撃を縁壱が避けた。
それは別に良い、避けるしか出来ないならより苛烈に攻めれば良いだけ。
現実には違う。
ここに来て縁壱は攻撃に移った。
百に届くかといった一撃を縁壱が避けた。
それは別に良い、避けるしか出来ないならより苛烈に攻めれば良いだけ。
現実には違う。
ここに来て縁壱は攻撃に移った。
――弐の型 碧羅の天
隙を見せたつもりは全く無い。
剣を振るう動きを緩めるなど以ての外。
だというのに縁壱は戒へ刀を振るってみせたではないか。
縦方向に描く円、頭頂部から股まで真っ二つにせんと迫る刀。
剣を引くのは間に合わない、大振りな動作はそれだけで死に繋がる。
身を捩り直撃は回避、血が噴き出るも致命傷ではない。
向こうもこの程度の傷で喜ぶ性質に非ず。
頸を斬らねば鬼は死なぬ、故に死ぬまで刀を振るう。
剣を振るう動きを緩めるなど以ての外。
だというのに縁壱は戒へ刀を振るってみせたではないか。
縦方向に描く円、頭頂部から股まで真っ二つにせんと迫る刀。
剣を引くのは間に合わない、大振りな動作はそれだけで死に繋がる。
身を捩り直撃は回避、血が噴き出るも致命傷ではない。
向こうもこの程度の傷で喜ぶ性質に非ず。
頸を斬らねば鬼は死なぬ、故に死ぬまで刀を振るう。
攻守逆転はなるものかと、再度戒の攻撃。
先程と同じ、速さと威力のみならず手数にも優れた刃の嵐。
悪夢のような猛攻を行いながらも、戒の頬には冷汗が流れる。
縁壱の動きが明らかに違う。
躱し受け流す動作の一つ一つがより洗練されているのだ。
攻め続けるは自分の方、その筈なのにこちらが追い詰められている気がしてならない。
先程と同じ、速さと威力のみならず手数にも優れた刃の嵐。
悪夢のような猛攻を行いながらも、戒の頬には冷汗が流れる。
縁壱の動きが明らかに違う。
躱し受け流す動作の一つ一つがより洗練されているのだ。
攻め続けるは自分の方、その筈なのにこちらが追い詰められている気がしてならない。
(この男は…!)
信じられない、だが信じる他無い。
こちらの動きを覚え、とうに慣れた攻撃として容易く対処しているというのか。
初見ならばいざ知らず、見知った動きは恐れるに足らず。
隙は作らぬとの気概で繰り出した猛攻も、縁壱には隙だらけにしか見えない。
こちらの動きを覚え、とうに慣れた攻撃として容易く対処しているというのか。
初見ならばいざ知らず、見知った動きは恐れるに足らず。
隙は作らぬとの気概で繰り出した猛攻も、縁壱には隙だらけにしか見えない。
――壱の型 円舞
何故これ程までに接近を許してしまったのか。
何故縫える隙を見せじと振るった剣を、容易く見切られてしまったのか。
疑問を彼方へ追いやり防御。
円を描いた紅が、鮮やかな赤を飛び散らせる。
地面を汚す血は顔から滴るもの、切り裂かれたのは左目だ。
何故縫える隙を見せじと振るった剣を、容易く見切られてしまったのか。
疑問を彼方へ追いやり防御。
円を描いた紅が、鮮やかな赤を飛び散らせる。
地面を汚す血は顔から滴るもの、切り裂かれたのは左目だ。
失明。
人間ならば二つあって当然の部位の片方が永久に失われた。
歴戦の兵だろうと一切の動揺を抱かぬのは難しい。
戒もまた、両目の内片方の光の喪失に嘆きを露わにするのか?
違う、戒が思ったのは惨めったらしい泣き言では無い。
人間ならば二つあって当然の部位の片方が永久に失われた。
歴戦の兵だろうと一切の動揺を抱かぬのは難しい。
戒もまた、両目の内片方の光の喪失に嘆きを露わにするのか?
違う、戒が思ったのは惨めったらしい泣き言では無い。
(まだだ、まだ戦える)
目玉一つが何だと言う。
剣を握る腕はある、地に立ち動く足はある、敵を見据える瞳はまだ一つ残っている。
戦いを続けるのに、一体何の問題があるのだ。
それなら目の一つくらい構うものか。
剣を握る腕はある、地に立ち動く足はある、敵を見据える瞳はまだ一つ残っている。
戦いを続けるのに、一体何の問題があるのだ。
それなら目の一つくらい構うものか。
戦わねばならない、勝たねばならない。
負ければ奪われるのは自分の命だけではない。
太陽のような少女がいた。
こんな状況でも能天気なくらいに明るくて、どうして殺し合いに巻き込まれたのか分からないくらい優しい少女が。
傷付き、迷い、それでも諦めに打ち勝とうとする、力になりたいと思った少女が。
だから、負けてはやれない。
負ければ奪われるのは自分の命だけではない。
太陽のような少女がいた。
こんな状況でも能天気なくらいに明るくて、どうして殺し合いに巻き込まれたのか分からないくらい優しい少女が。
傷付き、迷い、それでも諦めに打ち勝とうとする、力になりたいと思った少女が。
だから、負けてはやれない。
「戒さん…!」
悲痛な声で彼の名を呼ぶも、こちらに気を回す余裕は無いのだろう。
剣を振るい、血を流す戒に自分は何も出来ない。
それが堪らなく嫌で、何とかしたいと思っても具体的にどうすれば良いかココアには分からなかった。
既に戒と縁壱の戦闘は自分達が介入できる範疇を超えている。
剣を構え突撃した所で、待っているのは何が起きたか分からず細切れの末路だ。
剣を振るい、血を流す戒に自分は何も出来ない。
それが堪らなく嫌で、何とかしたいと思っても具体的にどうすれば良いかココアには分からなかった。
既に戒と縁壱の戦闘は自分達が介入できる範疇を超えている。
剣を構え突撃した所で、待っているのは何が起きたか分からず細切れの末路だ。
「な、なにか、私達に出来ることはないんですか…!?」
特定の誰かに向けて言ったのではない。
悔しさを滲ませた問いはシャミ子自身に向けたものかもしれない。
普段のぽんこつな運動神経とは比べ物にならない、これぞ正にまぞくと言うに相応しい力を得た。
なのに結局はどうだ、何も出来ずに指を咥えて見ているしかできない。
これではラヴリカと遭遇した時と同じじゃないか。
あの時は小鳩に、今は戒に任せっきり。
自分への苛立ちは無限に湧く癖に、都合よく真なるまぞくパワーに目覚めたりはしない。
このままじっと立ち尽くすしかないのか。
悔しさを滲ませた問いはシャミ子自身に向けたものかもしれない。
普段のぽんこつな運動神経とは比べ物にならない、これぞ正にまぞくと言うに相応しい力を得た。
なのに結局はどうだ、何も出来ずに指を咥えて見ているしかできない。
これではラヴリカと遭遇した時と同じじゃないか。
あの時は小鳩に、今は戒に任せっきり。
自分への苛立ちは無限に湧く癖に、都合よく真なるまぞくパワーに目覚めたりはしない。
このままじっと立ち尽くすしかないのか。
「クソが…!」
小鳩もまた何も出来ない己へ悪態を吐く。
縁壱の強さはハッキリ言って、これまで倒して来た楽士を遥かに超える。
あれに単独で勝てる者など、直接の相対は無いがリドゥの支配者であるリグレットか、パツ金野郎ことポセイドンくらいだろう。
倒したいという気持ちは勿論あるが、気持ちだけで勝てるならこうもストレスを溜めていない。
ぶっちょやチビと呼ぶ帰宅部のメンバーなら、妙案が浮かぶかもしれない。
が、いない人間を頼ってどうするというのだ。
焦りからか思い浮かぶのは、何の役にも立たない考えばかり。
結局ここでも自分はモブのままだと言うのか。
遂にはそんな考えたくない事まで頭をよぎる始末。
縁壱の強さはハッキリ言って、これまで倒して来た楽士を遥かに超える。
あれに単独で勝てる者など、直接の相対は無いがリドゥの支配者であるリグレットか、パツ金野郎ことポセイドンくらいだろう。
倒したいという気持ちは勿論あるが、気持ちだけで勝てるならこうもストレスを溜めていない。
ぶっちょやチビと呼ぶ帰宅部のメンバーなら、妙案が浮かぶかもしれない。
が、いない人間を頼ってどうするというのだ。
焦りからか思い浮かぶのは、何の役にも立たない考えばかり。
結局ここでも自分はモブのままだと言うのか。
遂にはそんな考えたくない事まで頭をよぎる始末。
「…待ってください。もしかしたら…!」
悲観的なムードを壊す者がいた。
苺香だ、何かに気付きデイパックを漁り出す。
他の者も急にどうしたのかと見つめるが、説明は少しばかり後にさせてもらう。
自分の記憶が正しければ、絶望的な状況を引っ繰り返せる道具が支給されていた筈。
苺香だ、何かに気付きデイパックを漁り出す。
他の者も急にどうしたのかと見つめるが、説明は少しばかり後にさせてもらう。
自分の記憶が正しければ、絶望的な状況を引っ繰り返せる道具が支給されていた筈。
「ありました!」
苺香が取り出したのは一枚のカード。
ゲームが始まって直ぐ中身を確認し、この支給品の存在も把握した。
しかし同封した説明書によると、余りにも現実離れな内容だった為深く考えず仕舞いっ放しだったのだ。
今となってはクリスタルの効果が本物のように、カードの効果も真実であると願いたい。
というか、そうでなければとんだ詐欺である。
ゲームが始まって直ぐ中身を確認し、この支給品の存在も把握した。
しかし同封した説明書によると、余りにも現実離れな内容だった為深く考えず仕舞いっ放しだったのだ。
今となってはクリスタルの効果が本物のように、カードの効果も真実であると願いたい。
というか、そうでなければとんだ詐欺である。
「これってカード?」
「はい!えっと、ここに書いてある通りになるみたいで…」
「ええっと、どれどれ……」
「はい!えっと、ここに書いてある通りになるみたいで…」
「ええっと、どれどれ……」
苺香が見せたのはデュエルモンスターズの魔法カード。
武藤遊戯(アテム)のデッキにも投入されている、光の護封剣。
発動すれば一定の間のみ、あらゆる攻撃を一切受け付けないバリアを展開する、というのが効果らしい。
内容に嘘偽りが無いなら相当心強い支給品だ。
これを使えば戒のピンチを救う事だって出来る筈。
武藤遊戯(アテム)のデッキにも投入されている、光の護封剣。
発動すれば一定の間のみ、あらゆる攻撃を一切受け付けないバリアを展開する、というのが効果らしい。
内容に嘘偽りが無いなら相当心強い支給品だ。
これを使えば戒のピンチを救う事だって出来る筈。
「これなら戒さんも…!」
「多分、効果はモノホンだと思って良いだろうな」
「多分、効果はモノホンだと思って良いだろうな」
ゲームにおいてデュエルモンスターズはただの紙ではない。
牛尾がモンスターを召喚する場面を実際に見た小鳩は、光の護封剣も本物だろうと確信する。
第一小鳩自身、既に強制脱出装置という罠カードを使い九死に一生を得たのだ。
牛尾がモンスターを召喚する場面を実際に見た小鳩は、光の護封剣も本物だろうと確信する。
第一小鳩自身、既に強制脱出装置という罠カードを使い九死に一生を得たのだ。
流石に支給品の説明に嘘を交える程、ゲーマーとして見下げ果ててはいないだろう。
今回に限っては黎斗のゲーム開発者としてのプライドを信じるしかない。
今回に限っては黎斗のゲーム開発者としてのプライドを信じるしかない。
「それじゃあ…苺香さん!」
「はい!任せてください!」
「はい!任せてください!」
ようやく見えた希望に興奮するシャミ子に促され、カードを掲げる。
ご丁寧に使い方は説明書に記載されており、そう難しい工程は必要ない。
クリスタルで戦う力を得たけど、正直役には立てなかった。
でもこのカードを使えば戒の助けになれる。
大役を任された緊張からか、心臓がドラムのように音を鳴らす。
初めてスティーレで接客をした時とどっちが上かな。
なんてちょっぴり呑気な考えを抱くも、しっかりしないとと我に返った。
ご丁寧に使い方は説明書に記載されており、そう難しい工程は必要ない。
クリスタルで戦う力を得たけど、正直役には立てなかった。
でもこのカードを使えば戒の助けになれる。
大役を任された緊張からか、心臓がドラムのように音を鳴らす。
初めてスティーレで接客をした時とどっちが上かな。
なんてちょっぴり呑気な考えを抱くも、しっかりしないとと我に返った。
大丈夫だ、もうこれ以上戒が傷付いたりしない。
シャミ子達と、皆と一緒に生きて何とかなるんだ。
シャミ子達と、皆と一緒に生きて何とかなるんだ。
「光の護封剣を――」
「ンンンン!それはいけませぬなぁ」