零と士郎、二人の得物は奇しくも双剣。
片や陰我を断ち切る刃。
片や外道を葬る刃。
人の世を乱す悪しき魔を祓う力は今宵、敵同士として相俟みえる。
片や陰我を断ち切る刃。
片や外道を葬る刃。
人の世を乱す悪しき魔を祓う力は今宵、敵同士として相俟みえる。
片手持ちに変え斬り込む零には、余分な動作というものが一つも無い。
狙いは的確、防御は最小限、付け入る隙を決して見せない。
大袈裟な動きに出れば出る程、自ら死ぬ確率を引き上げるのに繋がる。
戦闘に伊達や酔狂を持ち込む性質に非ず、まして今は仲間の安否を一刻も早く確かめねばならない状況。
敵の早急な無力化が求められるのなら、応えない理由は無かった。
狙いは的確、防御は最小限、付け入る隙を決して見せない。
大袈裟な動きに出れば出る程、自ら死ぬ確率を引き上げるのに繋がる。
戦闘に伊達や酔狂を持ち込む性質に非ず、まして今は仲間の安否を一刻も早く確かめねばならない状況。
敵の早急な無力化が求められるのなら、応えない理由は無かった。
右の剣が防がれても左がある。
左の剣が弾かれても右がある。
片方の剣のみの操作に意識を割き、もう片方はお粗末な剣筋しか描けない。
といった素人丸出しの拙さとは程遠い、巧みな剣術で追い詰める。
左の剣が弾かれても右がある。
片方の剣のみの操作に意識を割き、もう片方はお粗末な剣筋しか描けない。
といった素人丸出しの拙さとは程遠い、巧みな剣術で追い詰める。
肩へ迫る切っ先を弾き、ほぼ同時に反対のシンケンマルを脚部の防御に回す。
腕を貫かれれば刀を落とし、脚を斬られれば機動力が低下。
戦闘を不利にする傷を優先して対処。
時折掠め付けられる赤い一本線など、僅かに思考を割く価値すら無い。
魔戒剣の猛攻を前に、士郎もまた常人ならざる速さで双剣を振るう。
腕を貫かれれば刀を落とし、脚を斬られれば機動力が低下。
戦闘を不利にする傷を優先して対処。
時折掠め付けられる赤い一本線など、僅かに思考を割く価値すら無い。
魔戒剣の猛攻を前に、士郎もまた常人ならざる速さで双剣を振るう。
凄腕の鍛冶職人が魂を籠めた刀だろうと、ソウルメタル製の剣と打ち合うのは悪手。
度重なるホラーや暗黒騎士との死闘を経て尚も、僅かな亀裂すら生まれない強度だ。
却って自分の武器をお釈迦にするだけだが、シンケンマルには未だ破壊の予兆が見られない。
アヤカシの強固な皮膚を切り裂き、血も涙もない外道共が苦悶の声を出さざるを得ない刃。
かの御大将、血祭ドウコクとも剣戟を演じた名刀なれば渡り合うのも不可能ではない。
度重なるホラーや暗黒騎士との死闘を経て尚も、僅かな亀裂すら生まれない強度だ。
却って自分の武器をお釈迦にするだけだが、シンケンマルには未だ破壊の予兆が見られない。
アヤカシの強固な皮膚を切り裂き、血も涙もない外道共が苦悶の声を出さざるを得ない刃。
かの御大将、血祭ドウコクとも剣戟を演じた名刀なれば渡り合うのも不可能ではない。
斬り掛かり弾き、斬り掛かり防ぐ。
変わり映えのしない攻防を繰り返した所で、体力の無駄遣いである。
動きを変えに出たのは士郎、攻撃の対処を防ぐから受け流すに変更。
魔戒剣の刀身へ反発するのではなく、逆らわずにシンケンマルを添えあらぬ方へと誘導。
己の意思とは無関係に空振りを作らされた零へ、ようやく生まれた隙を見逃さない。
針の穴一つ分すらあるかも妖しい箇所を、強引にこじ開ける。
変わり映えのしない攻防を繰り返した所で、体力の無駄遣いである。
動きを変えに出たのは士郎、攻撃の対処を防ぐから受け流すに変更。
魔戒剣の刀身へ反発するのではなく、逆らわずにシンケンマルを添えあらぬ方へと誘導。
己の意思とは無関係に空振りを作らされた零へ、ようやく生まれた隙を見逃さない。
針の穴一つ分すらあるかも妖しい箇所を、強引にこじ開ける。
「やるねぇ!」
「くっ…!」
「くっ…!」
自身が敵へ攻撃の機会を作ってしまったと、零本人が気付かぬ筈がない。
相手がソコを突くと分かったのなら、後はどれだけ速くその穴を塞げるか。
何の問題にもならない、この程度を余裕でやってのけれないようでは絶狼の称号は返上確定。
逆手持ちの剣を振り下ろし、切っ先がシンケンマルを真上から突く。
手首の震える感覚に耐え切らねば、武器を落とし兼ねなかった。
相手がソコを突くと分かったのなら、後はどれだけ速くその穴を塞げるか。
何の問題にもならない、この程度を余裕でやってのけれないようでは絶狼の称号は返上確定。
逆手持ちの剣を振り下ろし、切っ先がシンケンマルを真上から突く。
手首の震える感覚に耐え切らねば、武器を落とし兼ねなかった。
刀は握ったまま、腕を走る衝撃に一瞬の硬直。
自由に攻撃してくださいと言わんばかりの士郎へ、許可を得るまでも無く蹴りが飛ぶ。
腹部を叩き意識を遠ざける一撃が迫る中、後退では無く前進を選択。
姿勢をより低くし蹴りを回避、頭上で空気が裂かれた音が聞こえた。
切っ先が地面をなぞりながらの斬り上げに、魔戒剣を交差させ防御。
攻撃の構えを再び取らせはしない、士郎が攻めに移る。
自由に攻撃してくださいと言わんばかりの士郎へ、許可を得るまでも無く蹴りが飛ぶ。
腹部を叩き意識を遠ざける一撃が迫る中、後退では無く前進を選択。
姿勢をより低くし蹴りを回避、頭上で空気が裂かれた音が聞こえた。
切っ先が地面をなぞりながらの斬り上げに、魔戒剣を交差させ防御。
攻撃の構えを再び取らせはしない、士郎が攻めに移る。
シンケンマルを振るう腕が休むことは無く、剣と剣の語らいが終わる気配は一向に訪れない。
馬鹿正直に急所を狙うだけで勝てる相手でないとは、とっくに理解した。
剣の位置を細かにズラし、あえて自ら隙を晒し敵を誘い込む。
待っていても勝機は見えず、己の手で作り出さねば敗北へまっしぐらだ。
馬鹿正直に急所を狙うだけで勝てる相手でないとは、とっくに理解した。
剣の位置を細かにズラし、あえて自ら隙を晒し敵を誘い込む。
待っていても勝機は見えず、己の手で作り出さねば敗北へまっしぐらだ。
強い男だと素直に思う、剣の腕には畏敬の念を抱かざるを得ない。
聖杯戦争で打ち破って来た人形達とは、根本的な強さからして違う。
確固たる意志を宿し、今日に至るまでに培ってきた技。
本人の才能と重ねた修練が足を引っ張る事無く互いを高め、脅威となり士郎を襲う。
サーヴァントカードを使った戦いとの違いを噛み締める。
聖杯戦争で打ち破って来た人形達とは、根本的な強さからして違う。
確固たる意志を宿し、今日に至るまでに培ってきた技。
本人の才能と重ねた修練が足を引っ張る事無く互いを高め、脅威となり士郎を襲う。
サーヴァントカードを使った戦いとの違いを噛み締める。
「不意打ちかました卑怯な奴の割りには、良い腕してるな」
「…どうも、って言うべきか?アンタに言われても、嫌味にしか聞こえないぞ」
「褒めてるのは本心からだよ。ま、女の子の扱いは最悪だけど」
「…どうも、って言うべきか?アンタに言われても、嫌味にしか聞こえないぞ」
「褒めてるのは本心からだよ。ま、女の子の扱いは最悪だけど」
嘘偽りを混ぜたつもりはない。
零から見た士郎に、おおよそ剣の才能というものはまるで感じられなかった。
だが一つの道を究めた技は無くとも、戦い方が巧い。
自身の武器と肉体のみならず、時には零の攻撃すらも利用し勝利へ繋げんとする貪欲さ。
魔戒騎士とは異なる形の強さを否定はしない。
だからこそ残念に思う。
零から見た士郎に、おおよそ剣の才能というものはまるで感じられなかった。
だが一つの道を究めた技は無くとも、戦い方が巧い。
自身の武器と肉体のみならず、時には零の攻撃すらも利用し勝利へ繋げんとする貪欲さ。
魔戒騎士とは異なる形の強さを否定はしない。
だからこそ残念に思う。
「俺らよりもずっと年下の女の子が大事な人を守りたいって頑張ってる時にさ、別の女の子唆して殺し合いに乗るなんざダサいと思わないのかよ?」
言葉では無く剣を交わし分かる事実もある。
赤銅色の少年には、他者を甚振り殺す下衆な性根は無い。
己に取って譲れないものの為に、愚直なまでに突き進む。
融通の利かなさとも取れる部分は友を思わせ、個人的には嫌いじゃない。
チノ達すらも容赦なく殺すという、誤った決意さえなければ。
赤銅色の少年には、他者を甚振り殺す下衆な性根は無い。
己に取って譲れないものの為に、愚直なまでに突き進む。
融通の利かなさとも取れる部分は友を思わせ、個人的には嫌いじゃない。
チノ達すらも容赦なく殺すという、誤った決意さえなければ。
「そうだな、ロクでもない奴ってのは自覚してる」
辛辣な言葉を反論せず肯定。
誰に一々指摘されるまでもなく、己の行いが悪に分類されるとは十分理解している。
もし何かが違えば、殺し合いを止める為に奔走した可能性とてあったのだろう。
所詮はIFの話に過ぎない、たらればを口にしても何一つ変わらないし救えない。
誰に一々指摘されるまでもなく、己の行いが悪に分類されるとは十分理解している。
もし何かが違えば、殺し合いを止める為に奔走した可能性とてあったのだろう。
所詮はIFの話に過ぎない、たらればを口にしても何一つ変わらないし救えない。
こんな時に、いつだったかあの神父に言われた言葉が蘇る。
自分はもう選択を終えているのだ。
振り返って考え込む段階はとうに昔に過ぎ、進む以外の道を望まない。
自分はもう選択を終えているのだ。
振り返って考え込む段階はとうに昔に過ぎ、進む以外の道を望まない。
「けど悪いな、こればっかりはどうしても譲れないんだ」
言い切った姿を見てしまえば、零でなくとも分かる。
言葉で止まる相手ではなく、どうしても邪魔をしたくば力以外に方法はないのだろう。
これ以上の会話は最早不要と、口の代わりに剣を振るい訴える。
なれば守りし者として応えるまで。
その間違った決意が他の者に牙を剥く前に、ここで折らせてもらう。
言葉で止まる相手ではなく、どうしても邪魔をしたくば力以外に方法はないのだろう。
これ以上の会話は最早不要と、口の代わりに剣を振るい訴える。
なれば守りし者として応えるまで。
その間違った決意が他の者に牙を剥く前に、ここで折らせてもらう。
○
豪快な一撃を真っ向から受け止める。
どちらの剣も破壊の予兆は一切無し、叩きつけ合った音が鼓膜を震わす。
耳鳴りを掻き消す威勢の良い声は、閃刀姫の背後から。
僕の名を呼び掛ける決闘王の名に従い、刃が夜明け前の戦場に煌めく。
どちらの剣も破壊の予兆は一切無し、叩きつけ合った音が鼓膜を震わす。
耳鳴りを掻き消す威勢の良い声は、閃刀姫の背後から。
僕の名を呼び掛ける決闘王の名に従い、刃が夜明け前の戦場に煌めく。
閃刀姫との鍔迫り合いを続ければ、もう一本の剣を我が身に受ける他ない。
生憎わざと傷を負って、苦痛に喜びを見出す性癖は持ち合わせてはいない。
篭手に覆われた両手が張り、閃刀姫を力任せに押し返した。
綿毛のように軽やかに宙へ浮く少女から、視線は間近に迫る別の脅威へ。
守護者(ガーディアン)の名を冠した女剣士が、主の危険を排除すべく剣を振り下ろす。
一撃で命を刈り取るつもりだろうがお断りだ、こちらも剣を駆使し対処。
生憎わざと傷を負って、苦痛に喜びを見出す性癖は持ち合わせてはいない。
篭手に覆われた両手が張り、閃刀姫を力任せに押し返した。
綿毛のように軽やかに宙へ浮く少女から、視線は間近に迫る別の脅威へ。
守護者(ガーディアン)の名を冠した女剣士が、主の危険を排除すべく剣を振り下ろす。
一撃で命を刈り取るつもりだろうがお断りだ、こちらも剣を駆使し対処。
「押し切れ!エアトス!」
「無駄な命令してんじゃないわよ!」
「無駄な命令してんじゃないわよ!」
命令を拒否する素振りは見せず、言われた通り剣を押し込む。
が、行動に移ったからと言って思い通りの光景になるとは限らない。
得物に掛かる重さが多少は増したようだが、後退させるには力不足も良いところ。
たった数ミリ後退りもさせられない女剣士の儚い努力を、一刀の元に終わらせてやる。
が、行動に移ったからと言って思い通りの光景になるとは限らない。
得物に掛かる重さが多少は増したようだが、後退させるには力不足も良いところ。
たった数ミリ後退りもさせられない女剣士の儚い努力を、一刀の元に終わらせてやる。
長剣諸共叩っ斬ろうとし、させじともう一人が距離を詰めた。
血よりも濃い赤がバイザー奥の瞳を焼き、吸い込まれるように首へ一直線。
攻撃を諦め真横へ跳躍、喉を貫く筈だった切っ先から遠ざかる。
血よりも濃い赤がバイザー奥の瞳を焼き、吸い込まれるように首へ一直線。
攻撃を諦め真横へ跳躍、喉を貫く筈だった切っ先から遠ざかる。
「じゃ、先にアンタを仕留めれば良いだけの話!」
着地と同時に地面を蹴り、一跳びで遊戯の元まで辿り着く。
片足にどれ程の力が籠められたのか、手入れの行き届いた庭は哀れ陥没。
草花の悲惨な末路には目もくれず、奇抜な髪を血と脳症で汚す剣を叩きつける。
女剣士は正規の参加者ではなく、この少年が操るNPCのようなもの。
命令を下す本人が死ねば手間が省けて一石二鳥だ。
片足にどれ程の力が籠められたのか、手入れの行き届いた庭は哀れ陥没。
草花の悲惨な末路には目もくれず、奇抜な髪を血と脳症で汚す剣を叩きつける。
女剣士は正規の参加者ではなく、この少年が操るNPCのようなもの。
命令を下す本人が死ねば手間が省けて一石二鳥だ。
「そうさせない為に私がいるのを忘れた?」
自身の突きが皮一枚すら裂けなかった時点で、既に閃刀姫は次の動きへ切り替えた。
敵の機動力は目を見張るものがある、けれどこちらを侮ってもらっては困る。
伊達に列強国の戦力として前線に立ち続けた訳ではない。
今となっては自慢に思うどころか、愛しいもう一人の閃刀姫との旅を邪魔する祖国に忌々しさを向けているが。
それはともかく、突風に背を押されたと見紛うスピードを発揮。
黒騎士が齎す死を己が剣で払い除け、背後を見ぬまま「離れて」と一言。
言われた通りに動く気配を感じつつ、数度目となる黒騎士との剣戟へ持ち込んだ。
敵の機動力は目を見張るものがある、けれどこちらを侮ってもらっては困る。
伊達に列強国の戦力として前線に立ち続けた訳ではない。
今となっては自慢に思うどころか、愛しいもう一人の閃刀姫との旅を邪魔する祖国に忌々しさを向けているが。
それはともかく、突風に背を押されたと見紛うスピードを発揮。
黒騎士が齎す死を己が剣で払い除け、背後を見ぬまま「離れて」と一言。
言われた通りに動く気配を感じつつ、数度目となる黒騎士との剣戟へ持ち込んだ。
咆哮一閃の刃に獰猛な竜を幻視しつつ、心は掻き乱されずに防御。
痺れる両手と後退を余儀なくされる衝撃、やはり力は向こうが上か。
分かった上で受け止めたのだ、よろけたロゼを食い千切らんと刃が唸る。
予想通り、わざと体勢を崩したのをチャンスと睨んだらしい。
黒い刀身に愛剣を添え受け流せば、反対に向こうへ隙が生まれた。
横薙ぎに振るった剣を危うい体勢から防御、身体能力に物を言わせれば無茶も通るか。
そうする事も読んでいる、向こうが力を籠めるより早く跳躍。
頭上からの襲来すら防ぐも、鎧越しの腕を蹴り着地。
黒剣が仕留めに来るも一手遅い、真紅が駆け抜け枷を填められた首に牙を突き立てた。
痺れる両手と後退を余儀なくされる衝撃、やはり力は向こうが上か。
分かった上で受け止めたのだ、よろけたロゼを食い千切らんと刃が唸る。
予想通り、わざと体勢を崩したのをチャンスと睨んだらしい。
黒い刀身に愛剣を添え受け流せば、反対に向こうへ隙が生まれた。
横薙ぎに振るった剣を危うい体勢から防御、身体能力に物を言わせれば無茶も通るか。
そうする事も読んでいる、向こうが力を籠めるより早く跳躍。
頭上からの襲来すら防ぐも、鎧越しの腕を蹴り着地。
黒剣が仕留めに来るも一手遅い、真紅が駆け抜け枷を填められた首に牙を突き立てた。
「ああもう!しつこく首狙い過ぎじゃない!?」
首輪の下にも寒気が走り、危機感に急かされ剣を翳す。
鎧に覆われた肌は未だ無傷、白さを保ったまま。
文句を言われようと襲って来た輩と会話を行う気は無い、返答は殺意を十全に乗せた剣だ。
鎧に覆われた肌は未だ無傷、白さを保ったまま。
文句を言われようと襲って来た輩と会話を行う気は無い、返答は殺意を十全に乗せた剣だ。
(何だろう、この変な感じ……)
斬り合いを通じロゼが敵から感じたのは、何とも奇妙な力量。
強いか弱いかで言えば間違いなく前者。
純粋な身体能力は確実に自分やエアトスを超える。
打ち合いを続け先に腕が使い物にならなくなるのは自分の方。
鎧を着込んでいるにも関わらず、敏捷性も油断ならない。
強いか弱いかで言えば間違いなく前者。
純粋な身体能力は確実に自分やエアトスを超える。
打ち合いを続け先に腕が使い物にならなくなるのは自分の方。
鎧を着込んでいるにも関わらず、敏捷性も油断ならない。
しかし勝ち目の無い相手でもない。
確かに敵は強いが、不意を突かれる場面も少なくない。
こちらの攻撃は全て防がれたとはいえ、危う気な場面もチラホラ見られた。
優れた動体視力が余裕の対処を可能にしたと言えば聞こえはいいものの、どこかアンバランス。
何と言うか、戦い自体には慣れているが同じ剣士相手には不慣れな面が多々見られる。
ロゼから見た黒騎士はそういう印象だった。
こちらの攻撃は全て防がれたとはいえ、危う気な場面もチラホラ見られた。
優れた動体視力が余裕の対処を可能にしたと言えば聞こえはいいものの、どこかアンバランス。
何と言うか、戦い自体には慣れているが同じ剣士相手には不慣れな面が多々見られる。
ロゼから見た黒騎士はそういう印象だった。
(やり辛いな…バーテックスの時とは全然違う……)
ロゼの考えは間違っていない。
風にとって戦いとは殺し合いが最初ではなく、元の世界の四国にいた頃から剣を振るって来た。
初の夢幻召喚で得物のサイズは違えど動きに支障は見られず、NPCの群れも傷を負わずに蹴散らす程。
だが風がこれまで相手取ったのは、人間以上のサイズを誇るバーテックス。
巨大な異形の相手こそ慣れているが、等身大の人間と戦うのは大赦襲撃を夏凛に止められた時くらいのもの。
士郎とも一撃を防がれたのみ、よって本格的な戦闘はロゼが初めてとなる。
風にとって戦いとは殺し合いが最初ではなく、元の世界の四国にいた頃から剣を振るって来た。
初の夢幻召喚で得物のサイズは違えど動きに支障は見られず、NPCの群れも傷を負わずに蹴散らす程。
だが風がこれまで相手取ったのは、人間以上のサイズを誇るバーテックス。
巨大な異形の相手こそ慣れているが、等身大の人間と戦うのは大赦襲撃を夏凛に止められた時くらいのもの。
士郎とも一撃を防がれたのみ、よって本格的な戦闘はロゼが初めてとなる。
忘れるなかれ、ロゼは外見こそ少女でも列強国の閃刀姫。
常に全方位を死に取り囲まれる戦場を、身一つで駆け生き延びて来た猛者。
今でこそ最愛のレイとも、出会えば殺し合う以外を許されなかった地獄に身を置き続けたのがロゼだ。
単純なパワーやタフネスだけ見れば、倒したNPCの中にロゼ以上のモンスターがいたかもしれない。
しかし培った戦闘技能と、戦場で極限まで磨かれた感覚はNPCと一線を画す強さの証。
バーテックスとの戦い以外はあくまで一般女子中学生の風では、埋められない差があった。
常に全方位を死に取り囲まれる戦場を、身一つで駆け生き延びて来た猛者。
今でこそ最愛のレイとも、出会えば殺し合う以外を許されなかった地獄に身を置き続けたのがロゼだ。
単純なパワーやタフネスだけ見れば、倒したNPCの中にロゼ以上のモンスターがいたかもしれない。
しかし培った戦闘技能と、戦場で極限まで磨かれた感覚はNPCと一線を画す強さの証。
バーテックスとの戦い以外はあくまで一般女子中学生の風では、埋められない差があった。
「だったら纏めて薙ぎ払ってやるわよ!」
尤も、その差を補うだけの力をサーヴァントカードは秘めている。
エインズワースの人形ではない、生きた人間が使えば脅威は当然増す。
横薙ぎに振り回すだけで空気は大きく震え、かまいたちとなって生身の肌を切り裂く。
エインズワースの人形ではない、生きた人間が使えば脅威は当然増す。
横薙ぎに振り回すだけで空気は大きく震え、かまいたちとなって生身の肌を切り裂く。
「面倒な攻撃…!」
「防げエアトス!」
「防げエアトス!」
愛剣で弾こうにも腕へ負担を掛け過ぎれば、後々自分の首を絞めるだけだ。
ここは回避を選択、軍服の端を斬られ布が落ちる。
遊戯もまたエアトスに指示を出し防ぐ。
ここは回避を選択、軍服の端を斬られ布が落ちる。
遊戯もまたエアトスに指示を出し防ぐ。
戦況は拮抗、襲撃者達は攻め切れず守護者達も一手足りない。
仲間の元へ駆け付ける為にも、これ以上時間を掛ける訳にもいかない。
流れを変えるべく、各々が次なる手札を切り――
仲間の元へ駆け付ける為にも、これ以上時間を掛ける訳にもいかない。
流れを変えるべく、各々が次なる手札を切り――
「問おう。お前達は穢れた血の流れる日本人か?」
金色の悪夢が舞い降りた。
◆◆◆
森の中に身を隠しながらの逃走もここまでだ。
大木の影に背を預け暫し様子を窺うも、人の気配はおろかNPCすらやって来ない。
黒い乱入者、日本人を庇う愚かな子供、キングを名乗る決闘者、忌まわしき存在を思い起こさせる異形。
先の戦闘で見た顔は待てども一向に現れず、どうやら追跡には出なかったと判断。
大方あの軍人をどうにか治療しようと模索中だろうが、無駄な努力と言わざるを得ない。
大木の影に背を預け暫し様子を窺うも、人の気配はおろかNPCすらやって来ない。
黒い乱入者、日本人を庇う愚かな子供、キングを名乗る決闘者、忌まわしき存在を思い起こさせる異形。
先の戦闘で見た顔は待てども一向に現れず、どうやら追跡には出なかったと判断。
大方あの軍人をどうにか治療しようと模索中だろうが、無駄な努力と言わざるを得ない。
「無駄、か……」
敵対者達への呆れが自分自身へ返って来る。
忘れたくとも、忘却は許さぬと脳裏へ刻み付けられた先の光景。
外国人を勝手な思い込みで虐げた許し難き連中同様、殺戮の渦を引き起こす魔人。
野比のび太はよりにもよって神の武器にまで手を伸ばした。
あれは見せかけだけのハリボテではない、正真正銘神の手が加わった神器に間違いない。
忘れたくとも、忘却は許さぬと脳裏へ刻み付けられた先の光景。
外国人を勝手な思い込みで虐げた許し難き連中同様、殺戮の渦を引き起こす魔人。
野比のび太はよりにもよって神の武器にまで手を伸ばした。
あれは見せかけだけのハリボテではない、正真正銘神の手が加わった神器に間違いない。
何故、あのような愚物の手に神器が渡ったのか。
のび太が神器を手に入れたのは檀黎斗などという偽物ではない、本物の神のご意思なのか。
もしそうなら、神は自分を見限り日本人に味方するのか。
のび太が神器を手に入れたのは檀黎斗などという偽物ではない、本物の神のご意思なのか。
もしそうなら、神は自分を見限り日本人に味方するのか。
ホーリーフレイムを率いてやって来たことは全て、無駄だったと言うのだろうか。
思考がマズい方へ向かっていると自分でも分かり、一度大きく深呼吸。
今は頭を落ち着かせ、今後の動きを考える方にシフトせねば。
日本人、日本人に味方する異端者、何より神を騙る大罪人。
死を以て浄化せねばならない者を放置し、負のスパイラルに陥る訳にはいかない。
何よりこの地でも日本人に虐げられた外国人が、自分の助けを待っているかもしれないのだ。
同胞に救いの手を差し伸べずして、何がホーリーフレイムの総長か。
今は頭を落ち着かせ、今後の動きを考える方にシフトせねば。
日本人、日本人に味方する異端者、何より神を騙る大罪人。
死を以て浄化せねばならない者を放置し、負のスパイラルに陥る訳にはいかない。
何よりこの地でも日本人に虐げられた外国人が、自分の助けを待っているかもしれないのだ。
同胞に救いの手を差し伸べずして、何がホーリーフレイムの総長か。
いっそ完全に心が折れてしまった方が楽ではある。
しかしあと一歩の所で再起不能を許さないのは、決して消えぬ迫害の記憶と憎悪。
加えて彼女は盲信者であれど、同胞を想う気持ちは本物だ。
本来辿る筈だった未来における狼牙軍団との敗北後、ホーリーフレイム最後の生き残りとなった側近のジョドー。
彼は忠誠を誓った聖女以外の下に着く気は無いと、自ら命を絶った。
他者には歪に見えようとも、幹部達との間には断ち切れない彼女達なりの絆が存在する。
しかしあと一歩の所で再起不能を許さないのは、決して消えぬ迫害の記憶と憎悪。
加えて彼女は盲信者であれど、同胞を想う気持ちは本物だ。
本来辿る筈だった未来における狼牙軍団との敗北後、ホーリーフレイム最後の生き残りとなった側近のジョドー。
彼は忠誠を誓った聖女以外の下に着く気は無いと、自ら命を絶った。
他者には歪に見えようとも、幹部達との間には断ち切れない彼女達なりの絆が存在する。
だからこそ折れない、折れる末路を彼女は受け入れない。
動揺を鎮めなければと奪ったデイパックを開き、支給品の確認を始める。
元々自分に支給された道具も強力だが、使える物は一つでも多い方が困らない。
受け入れたくない現実から目を逸らすように手を伸ばし、
動揺を鎮めなければと奪ったデイパックを開き、支給品の確認を始める。
元々自分に支給された道具も強力だが、使える物は一つでも多い方が困らない。
受け入れたくない現実から目を逸らすように手を伸ばし、
「これ、は……」
神はまだ、彼女を見捨ててはいなかったらしい。
見た瞬間に確信を抱いた。
コレは神の手が加わっている、神の加護が授けられている。
同封された説明書に目を通す必要は無い。
そんな手間を掛けなくても、神の存在を確かに感じ取れるのだから。
コレは神の手が加わっている、神の加護が授けられている。
同封された説明書に目を通す必要は無い。
そんな手間を掛けなくても、神の存在を確かに感じ取れるのだから。
「そうか…神よ、あなたのご意思を一瞬でも疑った私をお許しください…」
膝を付き、己が信ずる絶対神へ首を垂れる。
穢れた日本人の軍人の手を離れ、己が元へと渡った。
果たしてこれは偶然か?否、神のお導きに他ならない。
天からの恵みを受け取り試練を果たしてみよという、神託以外の何だと言うのか。
穢れた日本人の軍人の手を離れ、己が元へと渡った。
果たしてこれは偶然か?否、神のお導きに他ならない。
天からの恵みを受け取り試練を果たしてみよという、神託以外の何だと言うのか。
のび太が神器を持っていたのも、断じて自分の死を望んでいるのに非ず。
不当に奪われた神の所有物を振るう愚者を滅せよという、己への使命だったのだ。
なのに自分は愚かにも神に見捨てられただのと悲観し、ご加護と祝福へ疑念を抱く始末。
穴があったら入りたいどころじゃない、数分前の自分の首を撥ねてやりたい。
不当に奪われた神の所有物を振るう愚者を滅せよという、己への使命だったのだ。
なのに自分は愚かにも神に見捨てられただのと悲観し、ご加護と祝福へ疑念を抱く始末。
穴があったら入りたいどころじゃない、数分前の自分の首を撥ねてやりたい。
しかしまだ死ぬ訳にはいかない。
罰は全てが終わった後で幾らでも受けよう。
今はただ、神のご意思に従い己が使命を果たさねば。
罰は全てが終わった後で幾らでも受けよう。
今はただ、神のご意思に従い己が使命を果たさねば。
神の恵みと信じて疑わない、白い外套を身に纏う。
するとどうした事か、翼を得たように体が宙へ浮いたではないか。
奇跡染みた現象も神のお力を以てすれば不思議は無く、有難き力と感謝し辺りを見回す。
するとどうした事か、翼を得たように体が宙へ浮いたではないか。
奇跡染みた現象も神のお力を以てすれば不思議は無く、有難き力と感謝し辺りを見回す。
そこで目にしたのは、市街地と思しき場所で起きた爆発。
周囲の民家の倍の大きさがある建造物だからだろう、ここからでも異変は捉えた。
周囲の民家の倍の大きさがある建造物だからだろう、ここからでも異変は捉えた。
闘争の気配が漂う場へ行かない選択肢は無い。
同胞には救いを、日本人と異端者には死を。
同胞には救いを、日本人と異端者には死を。
聖戦と信じてやまない大虐殺を繰り広げる聖女が、新たな火種となり混乱を加速させる。