名前は名乗らない、目的も口にしない。
放つ気配は敵意に満ち、向ける瞳は黒に染まり切り。
こうも分かり易くされてはイリヤとて理解せざるを得ない。
言葉でどうこうできる段階にはいない、戦って切り抜ける以外にどうしようもないと。
放つ気配は敵意に満ち、向ける瞳は黒に染まり切り。
こうも分かり易くされてはイリヤとて理解せざるを得ない。
言葉でどうこうできる段階にはいない、戦って切り抜ける以外にどうしようもないと。
片手に魔力を収束し敵へ発射。
単純極まりない攻撃と侮るなかれ。
呼吸を行い、指先を動かし、一歩歩く。
健常な人間ならば苦も無く行える日常の動作と同じ感覚で、ルナは魔法を行使するのだ。
だらんと下げた片手を一体いつ跳ね上げたのか、優れた動体視力の持ち主であろうと視認不可能な速さ。
魔力に頭部を食い千切られる呆気ない末路を、魔法少女も力づくで跳ね除ける。
進んで戦いたがる性質ではなく、誰彼構わず喧嘩を売るなど以ての外。
しかし避けられぬ戦いを前に尻込みする一般人の感性とは、とうの昔に別れを告げている。
単純極まりない攻撃と侮るなかれ。
呼吸を行い、指先を動かし、一歩歩く。
健常な人間ならば苦も無く行える日常の動作と同じ感覚で、ルナは魔法を行使するのだ。
だらんと下げた片手を一体いつ跳ね上げたのか、優れた動体視力の持ち主であろうと視認不可能な速さ。
魔力に頭部を食い千切られる呆気ない末路を、魔法少女も力づくで跳ね除ける。
進んで戦いたがる性質ではなく、誰彼構わず喧嘩を売るなど以ての外。
しかし避けられぬ戦いを前に尻込みする一般人の感性とは、とうの昔に別れを告げている。
「砲射(フォイア)!」
魔力弾には魔力弾だ。
ステッキを振るいルナの攻撃へぶつけ相殺。
互いに傷を与えられぬまま塵と化し、宙へ溶けて消えた塊には目もくれない。
視線を固定するべき対象を間違えず、第二撃はイリヤが先に動く。
ステッキを振るいルナの攻撃へぶつけ相殺。
互いに傷を与えられぬまま塵と化し、宙へ溶けて消えた塊には目もくれない。
視線を固定するべき対象を間違えず、第二撃はイリヤが先に動く。
「散弾(ショット)!」
先と違い数十の弾を一振りでばら撒く。
一発一発の威力は劣る分、数に物を言わせた攻撃にルナは動じない。
片手に魔力を集め薙ぎ払うように振るえば、イリヤと同じ数だけ発射。
違うのは一発に籠められた密度は、ルナの方が上。
敵の散弾を食い破って尚勢いは衰えず、イリヤへと殺到。
一発一発の威力は劣る分、数に物を言わせた攻撃にルナは動じない。
片手に魔力を集め薙ぎ払うように振るえば、イリヤと同じ数だけ発射。
違うのは一発に籠められた密度は、ルナの方が上。
敵の散弾を食い破って尚勢いは衰えず、イリヤへと殺到。
回避か防御、選択は二つに一つ。
選ぶのに時間を掛ければ掛ける程、不利になるのは自分の方だ。
故に即決、回避を選択。
弾の数は多いが避けられない訳ではなく、防御にリソースを割くよりは魔力の節約にも繋がる。
地を這うように姿勢を低くし疾走、背後で吹き飛ぶ地面は無視。
脳内で組み立てた次の動きを実行するのに、雑念を取り入れる余裕は無い。
選ぶのに時間を掛ければ掛ける程、不利になるのは自分の方だ。
故に即決、回避を選択。
弾の数は多いが避けられない訳ではなく、防御にリソースを割くよりは魔力の節約にも繋がる。
地を這うように姿勢を低くし疾走、背後で吹き飛ぶ地面は無視。
脳内で組み立てた次の動きを実行するのに、雑念を取り入れる余裕は無い。
「速射(シュート)!」
足は止めず、自動小銃のように魔力弾を連射。
威力は散弾同様低いが、続けて放てる長所を持つ。
元は美遊が得意とする攻撃方法も、実戦を積んだ今ならイリヤにも再現可能だった。
威力は散弾同様低いが、続けて放てる長所を持つ。
元は美遊が得意とする攻撃方法も、実戦を積んだ今ならイリヤにも再現可能だった。
「私相手に魔法の撃ち合いをしようってわけ?笑えるわね」
的にされたルナが浮かべる表情は、焦りでなく笑み。
魔力の操作に多少は慣れているようだが、自分から見ればお遊戯も同然。
人差し指を向け、息をするように容易く力を集める。
そっちが連射で来るならこちらも同じ土俵に乗ってやろう。
但し、何もかもが同じだとは思わないことだ。
機関砲を思わせる轟音を立てて撃てば、たちまちイリヤの弾幕は掻き消される。
威力は当然、発射速度もイリヤの倍だ。
魔力の操作に多少は慣れているようだが、自分から見ればお遊戯も同然。
人差し指を向け、息をするように容易く力を集める。
そっちが連射で来るならこちらも同じ土俵に乗ってやろう。
但し、何もかもが同じだとは思わないことだ。
機関砲を思わせる轟音を立てて撃てば、たちまちイリヤの弾幕は掻き消される。
威力は当然、発射速度もイリヤの倍だ。
「斬撃(シュナイデン)!」
ならば放つは威力と速度の両方に優れ、尚且つ範囲も兼ね備えた攻撃。
魔力を刃状に変え弾幕を切り裂く。
弾を消し去っただけでは終わらせない、ルナを直接叩くべく飛来。
だが甘い、脅威どころか足止めにすらならない。
斬撃を避ける素振りは見せず、真正面から突っ込む。
目の前を綿埃が飛んでいるのと何ら変わらない、手刀で切り裂き呆気なく消滅。
次の魔法を撃たせるのを誰が待ってやるものか。
数十歩分の距離を5秒と掛らずに詰め、拳を叩き込む。
可愛らしい顔を元の容姿が判別不可能に変える、魔女の鉄拳の到達まで残り僅か。
魔力を刃状に変え弾幕を切り裂く。
弾を消し去っただけでは終わらせない、ルナを直接叩くべく飛来。
だが甘い、脅威どころか足止めにすらならない。
斬撃を避ける素振りは見せず、真正面から突っ込む。
目の前を綿埃が飛んでいるのと何ら変わらない、手刀で切り裂き呆気なく消滅。
次の魔法を撃たせるのを誰が待ってやるものか。
数十歩分の距離を5秒と掛らずに詰め、拳を叩き込む。
可愛らしい顔を元の容姿が判別不可能に変える、魔女の鉄拳の到達まで残り僅か。
「ルビー!」
『物理保護全開!』
『物理保護全開!』
ステッキを両手持ちに変え防御態勢を取る。
衝撃が襲い来るも痛みは最小限に抑え、歯を食い縛って耐えた。
とはいえルナの拳は超人類とも渡り合うだけの威力を秘めた、少女のものとは思えない凶器。
バゼットを思い起こさせる鉄拳に、剥き出しの背中を冷汗が伝う。
殴り飛ばされ距離こそ離れたが、ルナの移動速度なら追い付くのは簡単。
自身の体を弾丸に変え、イリヤ目掛けて再度拳を放つ。
衝撃が襲い来るも痛みは最小限に抑え、歯を食い縛って耐えた。
とはいえルナの拳は超人類とも渡り合うだけの威力を秘めた、少女のものとは思えない凶器。
バゼットを思い起こさせる鉄拳に、剥き出しの背中を冷汗が伝う。
殴り飛ばされ距離こそ離れたが、ルナの移動速度なら追い付くのは簡単。
自身の体を弾丸に変え、イリヤ目掛けて再度拳を放つ。
「せやあああああっ!」
白い少女への魔手を阻むは水色の風。
視界の端に映り込んだ煌めきは、自身を刈り取る死神の鎌か。
或いは少女の決意の証、守護者の剣か。
視界の端に映り込んだ煌めきは、自身を刈り取る死神の鎌か。
或いは少女の決意の証、守護者の剣か。
この場で戦える者はイリヤ一人だけではない。
多少遅れる形となったが、チノも専用ソード片手に参戦。
纏う衣装は彼女の魅力を引き立てる可愛さだけが全てでは無い。
人を超えた者達とも戦える力を授けてくれる。
多少遅れる形となったが、チノも専用ソード片手に参戦。
纏う衣装は彼女の魅力を引き立てる可愛さだけが全てでは無い。
人を超えた者達とも戦える力を授けてくれる。
気合を乗せ振り下ろした剣を鼻で笑い、数歩身を引き躱す。
速さはそこそこだが動きは素人、恐れる理由が何処にある。
とはいえ自ら戦場にしゃしゃり出たのなら、手心を加える必要も無いだろう。
速さはそこそこだが動きは素人、恐れる理由が何処にある。
とはいえ自ら戦場にしゃしゃり出たのなら、手心を加える必要も無いだろう。
「精々必死こいて防いでみなさい!」
両手を魔力で覆いコーティング。
肩に突き出された剣を素手で弾き、反対に殴り掛かる。
急ぎ得物を引き戻して防御、刀身が震え手が痺れる感覚に顔を歪ませながらも頭を働かせる。
丸眼鏡の男と戦った時を思い出せ。
ロゼと零は、自分よりもずっと戦い慣れている二人はどう動いていた。
肩に突き出された剣を素手で弾き、反対に殴り掛かる。
急ぎ得物を引き戻して防御、刀身が震え手が痺れる感覚に顔を歪ませながらも頭を働かせる。
丸眼鏡の男と戦った時を思い出せ。
ロゼと零は、自分よりもずっと戦い慣れている二人はどう動いていた。
(お二人ならこういう時…!)
警戒するのは片手のみに非ず。
打撃を与える四肢の全てが敵にとっての武器、こちらを殺せる威力を秘めている。
防いだばかりの右拳一つに意識を割くな、残る三つにも注意を払え。
強く言い聞かせ瞬きなど忘れたように目を剥き、次の攻撃に備える。
打撃を与える四肢の全てが敵にとっての武器、こちらを殺せる威力を秘めている。
防いだばかりの右拳一つに意識を割くな、残る三つにも注意を払え。
強く言い聞かせ瞬きなど忘れたように目を剥き、次の攻撃に備える。
(来た…!右足…!)
膝を持ち上げ靴底が顔面へと接近。
顔を叩き潰されるのは御免だ、上半身を捻って躱す。
少し大袈裟に動き過ぎたとの反省をする間も無く、左拳が腹部を叩く。
防御は間に合った、拳は刀身を振るわせるに終わりチノは無傷。
前回の戦闘で一発もらった時の二の舞にはさせない。
三度目はまたも右の拳、剣で防ぐが最初の時よりも重く両腕が痛む。
小柄な体が宙に浮き、踏ん張れずに後方へと吹き飛ぶ。
顔を叩き潰されるのは御免だ、上半身を捻って躱す。
少し大袈裟に動き過ぎたとの反省をする間も無く、左拳が腹部を叩く。
防御は間に合った、拳は刀身を振るわせるに終わりチノは無傷。
前回の戦闘で一発もらった時の二の舞にはさせない。
三度目はまたも右の拳、剣で防ぐが最初の時よりも重く両腕が痛む。
小柄な体が宙に浮き、踏ん張れずに後方へと吹き飛ぶ。
「収束放射(フォイア)!」
覚束ない足取りで着地したチノを追い掛けようとし、別方向からの砲撃を察知。
仲間が稼いだ時間を活用し魔力を充填、より強力な一撃に繋げたイリヤだ。
少女一人を飲み込む光を冷静に見据えて、つまらなそうに片手を翳す。
隙を見つけて行うのが『この程度』の威力とは、何という貧弱さか。
仲間が稼いだ時間を活用し魔力を充填、より強力な一撃に繋げたイリヤだ。
少女一人を飲み込む光を冷静に見据えて、つまらなそうに片手を翳す。
隙を見つけて行うのが『この程度』の威力とは、何という貧弱さか。
「邪魔よ!」
魔力を集めた片手で薙ぎ払い、ついでに斬撃に変えて飛ばす。
回避が僅かに遅れ白い肩が赤く染まった。
問題無しだ、この程度なら戦闘に支障はない。
回避が僅かに遅れ白い肩が赤く染まった。
問題無しだ、この程度なら戦闘に支障はない。
『イリヤさん、ここはクラスカードを…!』
「うん!」
「うん!」
撃ち合いでは向こうが圧倒的に上。
魔力の操作面はルナに分があり、このまま砲撃を続けたとて無駄に消耗するだけ。
キャスターのクラスカードならともかく、素のイリヤでは勝ち目は薄い。
故に別の手を使って打開に出る。
魔力の操作面はルナに分があり、このまま砲撃を続けたとて無駄に消耗するだけ。
キャスターのクラスカードならともかく、素のイリヤでは勝ち目は薄い。
故に別の手を使って打開に出る。
「夢幻召喚(インストール)!」
ルビー以外に支給された使い慣れた力。
セイバーのクラスカードを使用。
民の理想を一身に背負い戦った王の力を宿し、聖剣片手に斬り込む。
駆けるスピードを引き上げ、今度はイリヤが攻める番だ。
セイバーのクラスカードを使用。
民の理想を一身に背負い戦った王の力を宿し、聖剣片手に斬り込む。
駆けるスピードを引き上げ、今度はイリヤが攻める番だ。
「ちょっとはマシになったみたいだけど、甘いのよ!」
多少力を増して、だからどうしたという話だ。
魔力を拳に上乗せ、我が身を引き裂き兼ねない憎悪を宿す。
刃と拳、ぶつかり合い負けるのは常識で考えれば後者。
しかし元々の驚異的な身体能力に加え、膨大な魔力を味方に付ければ話は別。
二つの得物は弾かれ合い、間髪入れずに揃って腕を振るう。
素手を刃に叩きつけているとは思えない金属音が鳴り響く。
魔力を拳に上乗せ、我が身を引き裂き兼ねない憎悪を宿す。
刃と拳、ぶつかり合い負けるのは常識で考えれば後者。
しかし元々の驚異的な身体能力に加え、膨大な魔力を味方に付ければ話は別。
二つの得物は弾かれ合い、間髪入れずに揃って腕を振るう。
素手を刃に叩きつけているとは思えない金属音が鳴り響く。
「やああああああっ!!」
気合を叫び、剣を振るう動きを引き上げる。
カレイドライナーでは不得意な白兵戦を補う、アーサー王の力が殴打の嵐と渡り合う。
時折至近距離で魔力を暴発させられるも、対魔力スキルが機能し耐える。
正規の英霊召喚されたセイバーに劣るとはいえ、イリヤには有難い力だ。
カレイドライナーでは不得意な白兵戦を補う、アーサー王の力が殴打の嵐と渡り合う。
時折至近距離で魔力を暴発させられるも、対魔力スキルが機能し耐える。
正規の英霊召喚されたセイバーに劣るとはいえ、イリヤには有難い力だ。
だが倒せない、刃は一つ残らず防がれ決定打を与えられない。
デュエルモンスターズの上級モンスターを下し、超人類とも互角の戦闘に持ち込める。
おたすけを信条とする青年相手には動揺を引き摺り出されたが、当然あれが実力の全てな訳が無い。
オーバーロードや鬼の始祖など、各エリアで猛威を振るう怪物達にも引けを取らぬ魔女。
それがルナなのだから。
デュエルモンスターズの上級モンスターを下し、超人類とも互角の戦闘に持ち込める。
おたすけを信条とする青年相手には動揺を引き摺り出されたが、当然あれが実力の全てな訳が無い。
オーバーロードや鬼の始祖など、各エリアで猛威を振るう怪物達にも引けを取らぬ魔女。
それがルナなのだから。
「っ、ああああっ!」
打ち漏らした拳が腹部を抉り、痛みと同時に吐き気が込み上げるも耐える。
一瞬でも無防備を晒せばたちまち袋叩きは確実。
鈍痛を誤魔化すように声を張り上げ攻め立てるが、ルナ相手には数歩届かない。
剣の腹を裏拳が弾き、がら空きの部分へ手刀を捻じ込む。
一瞬でも無防備を晒せばたちまち袋叩きは確実。
鈍痛を誤魔化すように声を張り上げ攻め立てるが、ルナ相手には数歩届かない。
剣の腹を裏拳が弾き、がら空きの部分へ手刀を捻じ込む。
「私もまだ戦えますよ…!」
割って入った剣が腕を叩けば、両断はされなくても狙いは逸れる。
鬱陶し気に睨み蹴りを放つもイリヤが防御し、もう一人が斬り掛かった。
全く目障りだ、両腕を振り回し纏めて吹き飛ばす。
鬱陶し気に睨み蹴りを放つもイリヤが防御し、もう一人が斬り掛かった。
全く目障りだ、両腕を振り回し纏めて吹き飛ばす。
「チノさん!」
「大丈夫です…!私にもお手伝いさせてください!」
「大丈夫です…!私にもお手伝いさせてください!」
構え直す少女達へ、ルナもまた拳へ更に魔力を掻き集める。
何人来ようと結果は同じ、憎悪を以て人間どもは殺してやろう。
何人来ようと結果は同じ、憎悪を以て人間どもは殺してやろう。
「イリヤ…!香風さん…!」
三人の少女の激突を離れた位置から司は見ていた。
いや、見ているしかできないと言った方が正しい。
イリヤやルナのように魔力を操れるでもなく、チノのような別世界の専用武器も持っていない。
運動神経が良いだけの、只の女子中学生では介入不可能
誰に言われずとも、司自身が理解している。
いや、見ているしかできないと言った方が正しい。
イリヤやルナのように魔力を操れるでもなく、チノのような別世界の専用武器も持っていない。
運動神経が良いだけの、只の女子中学生では介入不可能
誰に言われずとも、司自身が理解している。
「クソッ…!」
分かっている、自分があの場にしゃしゃり出ても足手纏いになるだけだ。
むしろ余計な真似をしたせいで、イリヤ達が追い詰められるかもしれない。
頭では分かっているけど、見ているだけで何も出来ないのが恨めしい。
いきなり現れこっちの話を聞こうともせず、襲い掛かったあの少女に怒りを覚える。
むしろ余計な真似をしたせいで、イリヤ達が追い詰められるかもしれない。
頭では分かっているけど、見ているだけで何も出来ないのが恨めしい。
いきなり現れこっちの話を聞こうともせず、襲い掛かったあの少女に怒りを覚える。
弱いから、役に立たないから何もするな。
他の誰でもない、司自身の声が正論を嘯き鎖となって絡み付く。
正しいか間違っているかで言えば間違いなく前者。
他の誰でもない、司自身の声が正論を嘯き鎖となって絡み付く。
正しいか間違っているかで言えば間違いなく前者。
「だからって…納得できるかよ…!」
必死に戦っているのを、傷付いているのを、指を咥えて眺めるだけ。
何もしないで、取り返しの付かない事態になるまでオロオロ戸惑う。
そんな自分が堪らなく嫌だ、受け入れたくなんかない。
何もしないで、取り返しの付かない事態になるまでオロオロ戸惑う。
そんな自分が堪らなく嫌だ、受け入れたくなんかない。
あの時だってそうだ。
みかげと撫子が言い争うのを自分は強く止められず、その内撫子が叩かれて。
どうにか窘めようとしたが手遅れで、三人組はバラバラになってしまった。
みかげと撫子が言い争うのを自分は強く止められず、その内撫子が叩かれて。
どうにか窘めようとしたが手遅れで、三人組はバラバラになってしまった。
見ているだけで何も出来ないのはもうウンザリだ。
縛り付ける正論という名の鎖を振り払うように一歩前に踏み出し、
縛り付ける正論という名の鎖を振り払うように一歩前に踏み出し、
司は、一つの資格を得た。
「トンボ……?」
どこからか現れたのか、目の前を飛び回る一匹の昆虫。
青い腹部と尾を持ち、カメラのレンズに似た両目。
但し自然界に生息するのとは違う、機械のボディを持つトンボ。
それが鳴き声らしき音を発し羽を震わせる。
青い腹部と尾を持ち、カメラのレンズに似た両目。
但し自然界に生息するのとは違う、機械のボディを持つトンボ。
それが鳴き声らしき音を発し羽を震わせる。
「もしかして……」
はっと気付きデイパックを漁る。
説明書によれば自分でも戦えるらしいけど、それには資格がいるとのこと。
一体全体どんな条件を満たせば良いのか分からなかったが、今がそうだとしたら。
イリヤ達を助けられる一抹の可能性に賭けて、目当ての物を取り出した。
説明書によれば自分でも戦えるらしいけど、それには資格がいるとのこと。
一体全体どんな条件を満たせば良いのか分からなかったが、今がそうだとしたら。
イリヤ達を助けられる一抹の可能性に賭けて、目当ての物を取り出した。
「これで良いんだよな…?頼む、私に力を貸して欲しいんだ!」
資格者となった少女の頼みを断る理由は無い。
自由を愛する元の持ち主のように、正論による雁字搦めの束縛を抜け出したからか。
或いは花に譬える程の女性好きの『彼』に義理を果たそうと、司への協力を決めたのか。
真意を確かめる術は無く、確かなのは司が『ドレイクゼクター』に選ばれた一点。
自由を愛する元の持ち主のように、正論による雁字搦めの束縛を抜け出したからか。
或いは花に譬える程の女性好きの『彼』に義理を果たそうと、司への協力を決めたのか。
真意を確かめる術は無く、確かなのは司が『ドレイクゼクター』に選ばれた一点。
『HENSHIN』
トンボが木に止まるように、差し出されたグリップへ装着。
尾の部分をロックし安定、グリップを起点に変身システムが起動。
淡いスカイブルーの装甲はZECT製の戦士の例に漏れず、超金属ヒヒイロカネ。
トンボモチーフのマスクを被り、高濃度酸素を行き渡らせるチューブが各部に行き渡る。
尾の部分をロックし安定、グリップを起点に変身システムが起動。
淡いスカイブルーの装甲はZECT製の戦士の例に漏れず、超金属ヒヒイロカネ。
トンボモチーフのマスクを被り、高濃度酸素を行き渡らせるチューブが各部に行き渡る。
仮面ライダードレイク・マスクドフォーム。
マスクドライダーシステムの3号にして、遠距離戦と水中戦を得意とする姿。
マスクドライダーシステムの3号にして、遠距離戦と水中戦を得意とする姿。
「うわ…うわぁ~…マジかぁ……」
放送で銀色の武者になった人や、喧しいベルトを付けていた自称神。
彼らのような「変身」を自分がしたと弟が知ったら、どんな顔をされるのだろうか。
そういえば変身と口にしていなかったが、そこは今重要じゃない。
彼らのような「変身」を自分がしたと弟が知ったら、どんな顔をされるのだろうか。
そういえば変身と口にしていなかったが、そこは今重要じゃない。
「うっし、やるぞ…!」
遊びでも無ければ喧嘩でも無い。
命の懸かった本物の戦いに身を投じるべく、あえて声にして気合を入れ直す。
銃身がトンボという奇妙な形だが立派な武器だ、ルナの腕へ向けて引き金を引く。
命の懸かった本物の戦いに身を投じるべく、あえて声にして気合を入れ直す。
銃身がトンボという奇妙な形だが立派な武器だ、ルナの腕へ向けて引き金を引く。
「っ、また邪魔が…!」
二対一にも関わらず剣を捌き、カウンターで拳を叩き込み優勢を保つ。
そのまま殴り殺そうとするも光を弾に邪魔をされ、仕方なく攻撃を中断。
魔力を帯びた腕は矛にも盾にもなる、光弾を的確に叩き落とす。
そのまま殴り殺そうとするも光を弾に邪魔をされ、仕方なく攻撃を中断。
魔力を帯びた腕は矛にも盾にもなる、光弾を的確に叩き落とす。
当然ながら司に銃を撃った経験はゼロ、しかしドレイクの機能が補う。
照準を安定させ、使用者の挙動に最適な弾速や反動を実現。
シューティングゲームでハイスコアを叩き出す撫子のような余裕はないけど、初めてにしては上手く狙えてる気がする。
引き金に何度も力を籠め、イリヤ達へ攻撃させないよう連射し続ける。
照準を安定させ、使用者の挙動に最適な弾速や反動を実現。
シューティングゲームでハイスコアを叩き出す撫子のような余裕はないけど、初めてにしては上手く狙えてる気がする。
引き金に何度も力を籠め、イリヤ達へ攻撃させないよう連射し続ける。
「司さんも変身が出来たんですか!?」
「わ、わたしも初めて見たけど、それより今は…!」
「わ、わたしも初めて見たけど、それより今は…!」
援護に出てくれた司に内心感謝を告げ、少女達が再び剣を振るう。
横目で睨み舌打ちを一つ零し、片手で双剣に対処。
もう片方はドレイクの援護射撃を防御し、これで一撃も自らへ当てさせない。
手甲のように練り上げ纏わせた魔力ならば、素手でも武器持ちの相手が可能な防御力を発揮可能だ。
横目で睨み舌打ちを一つ零し、片手で双剣に対処。
もう片方はドレイクの援護射撃を防御し、これで一撃も自らへ当てさせない。
手甲のように練り上げ纏わせた魔力ならば、素手でも武器持ちの相手が可能な防御力を発揮可能だ。
だが片腕ずつでは先程よりも手数で劣り、攻撃よりも防御へ意識を割きがちになる。
腹部を狙った刃を弾き、肩に迫るもう一本は身を捩り躱す。
その間ドレイクの銃撃も一向に止む気配は無く、腕のみならず脚を狙って次々光弾が殺到。
機動力を奪う気か命を奪いたくないからか、どっちにしても非常に目障り。
腹部を狙った刃を弾き、肩に迫るもう一本は身を捩り躱す。
その間ドレイクの銃撃も一向に止む気配は無く、腕のみならず脚を狙って次々光弾が殺到。
機動力を奪う気か命を奪いたくないからか、どっちにしても非常に目障り。
片腕だけで足りないなら、足を使うまでだ。
右脚にも魔力を流し込んで強化、光弾を蹴り掃う。
とはいえ両手と片足をほぼ同時に動かし続けるのは、ルナと言えども流石に少々キツい。
この状態でも軸となる左足へ攻撃が来るのだから、鬱陶しいことこの上ない。
であれば律儀に格闘戦を継続してやらず、纏めて引き離すまで。
右脚にも魔力を流し込んで強化、光弾を蹴り掃う。
とはいえ両手と片足をほぼ同時に動かし続けるのは、ルナと言えども流石に少々キツい。
この状態でも軸となる左足へ攻撃が来るのだから、鬱陶しいことこの上ない。
であれば律儀に格闘戦を継続してやらず、纏めて引き離すまで。
『強いのが来ます!』
急激な魔力の収束を感知しマスターに警戒を促せば、イリヤも即座に回避へ移行。
対魔力スキルを持つ自分だけならまだしも、もう一人はそうもいかない。
短い断りと共にチノの腕を引いて跳び退き、直後ルナの全身から放たれる魔力の爆発。
初戦の相手にもやったセルフバーストを使い、至近距離から吹き飛ばす目論見は外れたが構わない。
対魔力スキルを持つ自分だけならまだしも、もう一人はそうもいかない。
短い断りと共にチノの腕を引いて跳び退き、直後ルナの全身から放たれる魔力の爆発。
初戦の相手にもやったセルフバーストを使い、至近距離から吹き飛ばす目論見は外れたが構わない。
距離が開けたのなら、埒が明かない殴り合いに興じる必要は無くなった。
まずはチマチマ豆鉄砲を撃つ人間からだ。
左手を翳し機関銃もかくやの勢いで魔力弾を発射、見た目通りの鈍重な鎧では回避もままならないだろう。
まずはチマチマ豆鉄砲を撃つ人間からだ。
左手を翳し機関銃もかくやの勢いで魔力弾を発射、見た目通りの鈍重な鎧では回避もままならないだろう。
「何ですって?」
予想に反して司は新たな手に出ていた。
ドレイクグリップ後部のスロットを引き、各部の装甲が着脱準備に入る。
事前に読んでいた説明書の内容をちゃんと覚えているのは、司自身にも驚きだ。
これも特撮好きだった名残だろうか。
ドレイクグリップ後部のスロットを引き、各部の装甲が着脱準備に入る。
事前に読んでいた説明書の内容をちゃんと覚えているのは、司自身にも驚きだ。
これも特撮好きだった名残だろうか。
「これ言わなきゃ駄目なのか…?キャストオフ…!」
『CAST OFF』
『CHANGE DRAGONFLY』
青い電気が駆け巡り、浮かび上がった装甲が弾け飛ぶ。
ヒヒイロカネ製のアーマーは敵への攻撃に変わり、ルナ目掛け飛来。
数十発の魔力弾を受けて尚も止まらない鉄の塊へ跳んで避け、その間にも司の方は第二の変身を終えた。
トンボをモチーフにしながらも、マスクドフォームとは異なる仮面。
羽状の胸部装甲が特徴的なライダーフォームだ。
ヒヒイロカネ製のアーマーは敵への攻撃に変わり、ルナ目掛け飛来。
数十発の魔力弾を受けて尚も止まらない鉄の塊へ跳んで避け、その間にも司の方は第二の変身を終えた。
トンボをモチーフにしながらも、マスクドフォームとは異なる仮面。
羽状の胸部装甲が特徴的なライダーフォームだ。
「さっきより動きやすい…ってか今の危ないだろ!?あんな脱げ方するなんて書いてなかったぞ!?」
耐久性とパワーこそ低下するが、代わりに瞬発力に長ける形態。
加えてボディースーツにニューロン細胞が組み込まれており、装甲を纏うマスクドフォームよりも自分の体のように動かせるのが特徴である。
加えてボディースーツにニューロン細胞が組み込まれており、装甲を纏うマスクドフォームよりも自分の体のように動かせるのが特徴である。
ライダーフォームのドレイクが銃を向け、イリヤとチノが構え直す。
三対一の不利な状況にもルナが慌てふためく様子は無い。
現れた時と同じ憎悪を宿し睨み付ける魔女へ、司から率直な疑問が飛ぶ。
三対一の不利な状況にもルナが慌てふためく様子は無い。
現れた時と同じ憎悪を宿し睨み付ける魔女へ、司から率直な疑問が飛ぶ。
「…何で私達を襲うんだよ。アンタと会ったのは今が初めてだろ。なのに何で、そんな風に怒った目で見て来るんだ?」
自分とイリヤは勿論、チノだってこのような少女に会った覚えはない。
なのに相手の雰囲気からは明確な怒りを感じ、不可解でならなかった。
恨みを買う真似をしたつもりはない。
つい失言や態度で相手を怒らせてしまった経験は司にだってあるけど、幾ら何でも初対面の少女にまで憎まれる謂れは無い筈。
それに理由を知らないまま暴力に晒されるなんて、どうしても納得がいかなかった。
なのに相手の雰囲気からは明確な怒りを感じ、不可解でならなかった。
恨みを買う真似をしたつもりはない。
つい失言や態度で相手を怒らせてしまった経験は司にだってあるけど、幾ら何でも初対面の少女にまで憎まれる謂れは無い筈。
それに理由を知らないまま暴力に晒されるなんて、どうしても納得がいかなかった。
「会ったかどうかなんて関係ないわ。人間は全員同罪よ」
吐き捨てた返答は、司のみならず全員にとって頷けないもの。
さっき会ったばかり、しかし人間だから殺す。
特定の個人ではなく人間という種全体への憎悪を言い放つ。
ルナの抱える事情が如何に根深いか、これだけで察しが付く。
さっき会ったばかり、しかし人間だから殺す。
特定の個人ではなく人間という種全体への憎悪を言い放つ。
ルナの抱える事情が如何に根深いか、これだけで察しが付く。
「何だよそれ…そんなの滅茶苦茶過ぎるだろ!」
だからと言って、はいそうですか殺されてあげますとはならない。
自分達が何かした訳でなく、ただ人間だからという理由で恨みを募らせ殺す。
そんなの最初に襲って来た女騎士と同じ、自分勝手なだけじゃあないか。
ルナの過去が自分の思う以上に壮絶で、絶対に許せない程の憎しみを燃やしたとしても。
無関係の人達まで巻き込むなんて、司には認められない。
自分達が何かした訳でなく、ただ人間だからという理由で恨みを募らせ殺す。
そんなの最初に襲って来た女騎士と同じ、自分勝手なだけじゃあないか。
ルナの過去が自分の思う以上に壮絶で、絶対に許せない程の憎しみを燃やしたとしても。
無関係の人達まで巻き込むなんて、司には認められない。
「アンタの痛みは否定しないよ。でも、それを他人にまで押し付けるな!自分が痛かったからって、関係無い人達まで痛くしようとすんなよ!」
「うるさい!」
「うるさい!」
お前は間違っているとキッパリ言われ、思わず言葉が口を突いて出る。
自分だって望んでこんな境遇になったんじゃない。
殺すのが、暴れるのが好きだから殺し合いに乗ったのでは断じて違う。
自分だって望んでこんな境遇になったんじゃない。
殺すのが、暴れるのが好きだから殺し合いに乗ったのでは断じて違う。
「全部…全部アンタ達人間のせいでしょ…!アンタ達が私をこうした癖に!私だって、本当はコローソと……」
争いたくなんてなかった。
恐いことや辛いことなんて一つも知らず、無邪気に草原を駆けた頃のように。
ずっと只の子供のままでいたかったのを壊したのは、村を焼いた人間共ではないか。
でなければ自分が復讐に走ることはなく、コローソだって敵に回ったりは…。
恐いことや辛いことなんて一つも知らず、無邪気に草原を駆けた頃のように。
ずっと只の子供のままでいたかったのを壊したのは、村を焼いた人間共ではないか。
でなければ自分が復讐に走ることはなく、コローソだって敵に回ったりは…。
「どいつもこいつも…本当に気に入らないわね…!」
自分の心を揺さぶった男のように、何故誰も彼もコローソと同じ言葉をぶつけるのか。
憎い、許せない、気に入らない、揃いも揃って心を踏み荒らす卑しいクズども。
そんなに死にたいか、殺されて二度と口を聞けなくして欲しいか。
いいだろう、いいだろう、いいだろう!
憎い、許せない、気に入らない、揃いも揃って心を踏み荒らす卑しいクズども。
そんなに死にたいか、殺されて二度と口を聞けなくして欲しいか。
いいだろう、いいだろう、いいだろう!
「全員死ねば、もう何も言えなくなるわよね…!!」
地獄がお望みならば見せてやる。
神を騙る外道から寄越されたのは腹立たしいが、この際知ったことか。
右手に握るソレは更なる力を自分に齎す物。
神を騙る外道から寄越されたのは腹立たしいが、この際知ったことか。
右手に握るソレは更なる力を自分に齎す物。
「黒い、板…?」
『っ!!いけません!アレを使わせてはマズいことが起きちゃいます!』
『っ!!いけません!アレを使わせてはマズいことが起きちゃいます!』
ソレの秘める力の大きさへ唯一気付けたルビーが叫ぶも、時既に遅し。
言葉の通り、黒い板と表現できるソレをルナは自身の胸に押し当てる。
すると板は胸に突き刺さった、否、肉体に吸収されたではないか。
目を見開くイリヤ達の前で、魔女は歓喜に身を震わせた。
言葉の通り、黒い板と表現できるソレをルナは自身の胸に押し当てる。
すると板は胸に突き刺さった、否、肉体に吸収されたではないか。
目を見開くイリヤ達の前で、魔女は歓喜に身を震わせた。
「ふふ…ふふふふふふはははははははは!!感じる…感じるわ…人間を一人残らず滅ぼす為の力を…!!!」
外見上の変化は見られないが、ルナの言葉が妄言の類でないとはイリヤ達にも分かる。
心臓を鷲掴みにされているに等しい恐怖、呼吸一つで喉が異様に乾くプレッシャー。
ルビーの言う通りだ、マズいことが起きてしまった。
心臓を鷲掴みにされているに等しい恐怖、呼吸一つで喉が異様に乾くプレッシャー。
ルビーの言う通りだ、マズいことが起きてしまった。
開戦の合図は言葉ではなく拳に乗せる。
イリヤの目の前で魔女が嗤っていた、足を動かす瞬間を見ていない。
なのにどうしてと答えを導き出す前に、何を置いてもやらねばならいのは攻撃への対処。
跳ね上げた両腕があらぬ方へとズレる、剣を弾かれた、そして敵の拳を弾いた証拠。
イリヤの目の前で魔女が嗤っていた、足を動かす瞬間を見ていない。
なのにどうしてと答えを導き出す前に、何を置いてもやらねばならいのは攻撃への対処。
跳ね上げた両腕があらぬ方へとズレる、剣を弾かれた、そして敵の拳を弾いた証拠。
「どこ見てるの?」
「っ!?」
「っ!?」
目と鼻の先にあった笑い顔が消え、聞こえた声は頭上から。
顔をそちらに向ける手間すら惜しく、感じる気配を頼りに剣を突き刺す。
貫いた手応えは無くとも、先程同様拳とぶつかる感触はあり。
上を取られたなら引き摺り落とすまで、跳躍し斬り掛かる。
顔をそちらに向ける手間すら惜しく、感じる気配を頼りに剣を突き刺す。
貫いた手応えは無くとも、先程同様拳とぶつかる感触はあり。
上を取られたなら引き摺り落とすまで、跳躍し斬り掛かる。
だが遅い、剣の間合いをルナはとうに脱していた。
飛行魔法で距離を取り、魔力を掻き集めた球体を複数生成。
パチンと指を鳴らし、光線が一斉に放たれる。
地を這う蟲を根こそぎ焼き払う熱線へ、三人の少女もその場に棒立ちではいられない。
強化済みの身体能力を駆使し、上空からの脅威から逃げ出した。
飛行魔法で距離を取り、魔力を掻き集めた球体を複数生成。
パチンと指を鳴らし、光線が一斉に放たれる。
地を這う蟲を根こそぎ焼き払う熱線へ、三人の少女もその場に棒立ちではいられない。
強化済みの身体能力を駆使し、上空からの脅威から逃げ出した。
「きゃああああああ!」
「ぐぁぁ…!」
「ぐぁぁ…!」
直撃こそ避けても、籠められた魔力の密度は薄くない。
余波だけでチノはおろか、ドレイクに変身中の司すら地面から引き離す。
風に弄ばれる木の葉のように遥か彼方へ吹き飛ぶ仲間へ、駆け付ける事すらイリヤには許されない。
余波だけでチノはおろか、ドレイクに変身中の司すら地面から引き離す。
風に弄ばれる木の葉のように遥か彼方へ吹き飛ぶ仲間へ、駆け付ける事すらイリヤには許されない。
「っ!?」
瞬く間に距離を詰めるや否や、視界全てを埋め尽くす拳。
気が付けば目の前にいた先程と違い、動きは見えたが速さはこれまで以上。
移動のみならず攻撃も当たり前のように速度強化され、数十本の腕が襲って来たかの異様な光景。
地面をしっかりと踏みしめ、負けじと剣を振り回す。
クラスカードの中でも最も安定した能力を誇るセイバーだからこそ、対処が可能となった。
気が付けば目の前にいた先程と違い、動きは見えたが速さはこれまで以上。
移動のみならず攻撃も当たり前のように速度強化され、数十本の腕が襲って来たかの異様な光景。
地面をしっかりと踏みしめ、負けじと剣を振り回す。
クラスカードの中でも最も安定した能力を誇るセイバーだからこそ、対処が可能となった。
「遅い遅い遅い!遅過ぎんのよ!」
「くっ…まだ…まだ…!!」
「くっ…まだ…まだ…!!」
決死の抵抗を鼻で笑い、ルナがギアを一段階上げる。
勢いを増す殴打の嵐にイリヤもまた歯を食いしばり弾き返す。
脅威となるのは速さだけではない、威力も上がり一撃が非常に重い。
痺れが両腕を襲い、剣を握る感覚が徐々に鈍くなり始めた。
勢いを増す殴打の嵐にイリヤもまた歯を食いしばり弾き返す。
脅威となるのは速さだけではない、威力も上がり一撃が非常に重い。
痺れが両腕を襲い、剣を握る感覚が徐々に鈍くなり始めた。
「がふっ!?」
一撃が腹部へ入り、内臓をプレス機に掛けられたと錯覚。
立て直せ、呻いてる場合じゃないと言い聞かせるも手遅れ。
たかが一撃されど一撃。
複数個所へほぼ同時に鉄拳が叩き込まれ、小さな騎士は為す術なく吹き飛ぶ。
地面か壁に激突を待たず、魔女は追撃に出る。
立て直せ、呻いてる場合じゃないと言い聞かせるも手遅れ。
たかが一撃されど一撃。
複数個所へほぼ同時に鉄拳が叩き込まれ、小さな騎士は為す術なく吹き飛ぶ。
地面か壁に激突を待たず、魔女は追撃に出る。
殴り飛ばされた先でイリヤを待っていたのは民家の壁ではなく、構えを取ったルナだ。
いつそこへ移動したのかを教えてやらない、くれてやるのは憎悪を籠めた暴力のみ。
雪のように輝く銀髪を靡かせた頭部へ、狙いを定める。
騎士に似た姿になり随分打たれ強くなったが、そこを潰されて尚も無事でいられるか見物である。
純白は赤に汚れ、後に残るのは見るに堪えない人間の死体一つ。
いつそこへ移動したのかを教えてやらない、くれてやるのは憎悪を籠めた暴力のみ。
雪のように輝く銀髪を靡かせた頭部へ、狙いを定める。
騎士に似た姿になり随分打たれ強くなったが、そこを潰されて尚も無事でいられるか見物である。
純白は赤に汚れ、後に残るのは見るに堪えない人間の死体一つ。
「く…ああああっ!」
しかし、イリヤとて敗北と死の危機を幾度も乗り越えて来た少女。
強者を前に身を竦ませ、終わりを待つだけの段階はとっくに乗り越えた。
筋肉の激痛を意思一つで黙らせ、拳目掛け聖剣を叩きつける。
無茶な体勢もあってか力は向こうが上、これでいい。
直撃を防ぎ尚且つ反動を利用して、反対方向に着地。
立ち上がろうとするもダメージの大きさで膝を付き、荒い呼吸を繰り返す。
強者を前に身を竦ませ、終わりを待つだけの段階はとっくに乗り越えた。
筋肉の激痛を意思一つで黙らせ、拳目掛け聖剣を叩きつける。
無茶な体勢もあってか力は向こうが上、これでいい。
直撃を防ぎ尚且つ反動を利用して、反対方向に着地。
立ち上がろうとするもダメージの大きさで膝を付き、荒い呼吸を繰り返す。
「まだ…終わってない…!」
なれど倒れはしない、選ぶのは諦めに非ず戦闘続行。
剣を杖代わりにして支え、己の足で草花の抉れた地面を踏みしめる。
腕は動く、足も動く、体のどこも失われていない。
剣を杖代わりにして支え、己の足で草花の抉れた地面を踏みしめる。
腕は動く、足も動く、体のどこも失われていない。
「まだ…あの女の子を……救えてない……!」
何よりも、負けられない理由が一つ増えたから。
イリヤはルナの過去に何があったかを知らない。
何が好きで何が嫌いで、どんな風に生きて来たかも知らない。
そもそも名前すら聞いていない。
分からないこと尽くしで、それでも知る事が出来た。
何が好きで何が嫌いで、どんな風に生きて来たかも知らない。
そもそも名前すら聞いていない。
分からないこと尽くしで、それでも知る事が出来た。
司へ言い返した時の彼女に怒りを見た。
自分がこうなったのはお前達が悪いと、責めているようだった。
何もかも全部お前達のせいだと、憎んでいるようだった。
自分がこうなったのはお前達が悪いと、責めているようだった。
何もかも全部お前達のせいだと、憎んでいるようだった。
でもそれだけじゃない。
どうしてこんな風になってしまったんだろうというやるせなさ。
好きで手を汚しているんじゃないのにという悔しさ。
コローソという名前を出した時の、愛憎入り交じった一言で言い表せない顔。
どうしてこんな風になってしまったんだろうというやるせなさ。
好きで手を汚しているんじゃないのにという悔しさ。
コローソという名前を出した時の、愛憎入り交じった一言で言い表せない顔。
どんな理由があれ、殺し合いに乗った選択は許されない。
だけど、他者を傷付ける当人ですら心の奥底で藻掻き苦しんでいるのならば。
だけど、他者を傷付ける当人ですら心の奥底で藻掻き苦しんでいるのならば。
イリヤを戦いへと駆り立てるのに十分な理由となる。
何度罵倒され、否定されようと曲げられない我儘(ねがい)を貫く。
何度罵倒され、否定されようと曲げられない我儘(ねがい)を貫く。
あの時と同じだ。
記憶を代償に戦い続け、想いすらも雷に変えた『彼女』。
痛かろうが関係無い、苦しかろうが構ってられるか。
大切な全てを取り零してしまう前に、この手を届かせる。
記憶を代償に戦い続け、想いすらも雷に変えた『彼女』。
痛かろうが関係無い、苦しかろうが構ってられるか。
大切な全てを取り零してしまう前に、この手を届かせる。
『退くな』『止まるな』『突き進め』
その言葉が、決意をより強靭なものへと変え――
――『ったく、筋金入りにも程があんだろ。ここまでいくと逆に感心するわ、ムカつくけど』
――『でもまぁ…あたしに勝った癖に、どっかのクソチビに負けそうになってるのが一番ムカつくんだよ』
声が聞こえた。
親友を攫って、記憶喪失の変わった人を痛め付けて、圧倒的な強さに一度は敗けて。
恋心を喪って、もう一度同じ人を好きになった『彼女』の声。
親友を攫って、記憶喪失の変わった人を痛め付けて、圧倒的な強さに一度は敗けて。
恋心を喪って、もう一度同じ人を好きになった『彼女』の声。
それが果たして幻聴だったのか、そうでないのかイリヤには分からない。
ゲームマスターにより設定されたシステムが、イリヤの場合はこういった形で反映されただけの話かもしれない。
ゲームマスターにより設定されたシステムが、イリヤの場合はこういった形で反映されただけの話かもしれない。
『イリヤさんこれは……』
「うん……」
「うん……」
けど今は、小難しい理屈など必要ない。
戦う為の力がここにある。
戦う為の力がここにある。
「夢幻召喚(インストール)――」
自分を支えてくれるモノが、手の中にあるのなら。
「バーサーカー!!」
何度だって立ち上がってみせる。
○
光が晴れた時、そこに騎士王の姿は無かった。
甲冑を脱ぎ大胆に素肌を晒した上半身には、毛皮の衣を新たに纏う。
輝く聖剣を今の彼女は必要としない。
代わりの得物は既に持っている、或いは宿ったと言うべきか。
手甲と帯で覆い隠した右腕は肥大化し、小柄な体躯とは酷くアンバランス。
だが不思議とそこに気味の悪さは無い、これが正しき姿と思わせるナニカがある。
女児の胴より太い五指が掴むは、人の身では振るうことの叶わない鉄塊。
無骨ながらも神聖さを兼ね備えた大槌を手に、神話の再現は成った。
甲冑を脱ぎ大胆に素肌を晒した上半身には、毛皮の衣を新たに纏う。
輝く聖剣を今の彼女は必要としない。
代わりの得物は既に持っている、或いは宿ったと言うべきか。
手甲と帯で覆い隠した右腕は肥大化し、小柄な体躯とは酷くアンバランス。
だが不思議とそこに気味の悪さは無い、これが正しき姿と思わせるナニカがある。
女児の胴より太い五指が掴むは、人の身では振るうことの叶わない鉄塊。
無骨ながらも神聖さを兼ね備えた大槌を手に、神話の再現は成った。
クラスカード・バーサーカー、真名【マグニ】。
北欧神話の雷神トールの息子にして、怪力無双の半神半巨人。
エインズワース陣営の人形、ベアトリス・フラワーチャイルドが使用し幾度となく追い詰められた神域の力。
異なる世界線のイリヤと絆を結んだ狂戦士ではない、正史においては使わなかったカードだ。
北欧神話の雷神トールの息子にして、怪力無双の半神半巨人。
エインズワース陣営の人形、ベアトリス・フラワーチャイルドが使用し幾度となく追い詰められた神域の力。
異なる世界線のイリヤと絆を結んだ狂戦士ではない、正史においては使わなかったカードだ。
「あれ?もしかして…」
『そのまさかみたいです。トールの神核が破壊されていません。まぁだからルビーちゃんもこれ使うのに同意した訳ですが』
『そのまさかみたいです。トールの神核が破壊されていません。まぁだからルビーちゃんもこれ使うのに同意した訳ですが』
嘗ての戦いで、バゼットのフラガラックが撃ち抜いた神核(しんぞう)。
それがどういう訳か元に戻っている。
まるで最初から、破壊されたという事実など無かったかのように。
そもそもこのカード自体、支給品でもないのに突然現れたりと不可解なのだが。
それがどういう訳か元に戻っている。
まるで最初から、破壊されたという事実など無かったかのように。
そもそもこのカード自体、支給品でもないのに突然現れたりと不可解なのだが。
色々と説明の付かない点が見受けられるものの、イリヤには好都合。
少なくともこの状態なら自我を保って戦える。
同じ狂戦士のカードでも、ギリシャの大英雄とは幾分勝手が違う。
正真正銘、マグニを使う初の実戦だ。
少なくともこの状態なら自我を保って戦える。
同じ狂戦士のカードでも、ギリシャの大英雄とは幾分勝手が違う。
正真正銘、マグニを使う初の実戦だ。
「……そう、まだ足掻くのね」
イリヤの変化を目の当たりにしながらも、ルナは動じない。
先程以上に力を増したと理解して尚焦りを顔に出さず、代わりに憤怒で染まる。
救う、救うと言ったのか。
村を焼き家族を奪った連中の同族が、自分を復讐鬼に変えた元凶である人間が。
一体どの口で救うなどとほざいた。
先程以上に力を増したと理解して尚焦りを顔に出さず、代わりに憤怒で染まる。
救う、救うと言ったのか。
村を焼き家族を奪った連中の同族が、自分を復讐鬼に変えた元凶である人間が。
一体どの口で救うなどとほざいた。
「誰が誰を救うですって?眠たいこと…言ってんじゃないわよ!!」
怒りを燃料に変え魔法を発動。
両手に収束させた光球から熱線を放ち、二度とふざけた口を聞けないよう消し炭にしてやる。
両手に収束させた光球から熱線を放ち、二度とふざけた口を聞けないよう消し炭にしてやる。
「本気だよ…本気であなたを、救いたいって思ってる!」
対するイリヤは避けない、正面突破あるのみ。
バーサーカーのカードは絶大な力の代償として、使用者の理性を徐々に奪う。
加えてヘラクレスと違い、これにはアンジェリカが施してくれた強制排出のコードも無い。
故に狙うは早期決着、チマチマ回避に動いてはいられない。
バーサーカーのカードは絶大な力の代償として、使用者の理性を徐々に奪う。
加えてヘラクレスと違い、これにはアンジェリカが施してくれた強制排出のコードも無い。
故に狙うは早期決着、チマチマ回避に動いてはいられない。
巨大化した右腕は見掛け倒しに非ず。
人知を超え神域に君臨する腕を振るい、真っ向から熱線を薙ぎ払う。
被害は帯に多少の焦げ目を付けるに留まり、腕自体には火傷一つ見当たらない。
熱を霧散させた勢いを殺さずに叩きつける。
空気の震えのみで地面が捲れ上がる威力だ。
人知を超え神域に君臨する腕を振るい、真っ向から熱線を薙ぎ払う。
被害は帯に多少の焦げ目を付けるに留まり、腕自体には火傷一つ見当たらない。
熱を霧散させた勢いを殺さずに叩きつける。
空気の震えのみで地面が捲れ上がる威力だ。
間近に迫る神腕へ、ルナもまた己の腕をぶつけ相殺。
コレを相手に生半可な強化は無意味と察し、魔力を何重にも練り上げた拳だ。
支給品を使い地力を引き上げた影響もあってか、イリヤ相手に一歩も引かない。
拮抗が続けば続く程、互いの踏み込む力が増していき地面が絶叫を上げる。
コレを相手に生半可な強化は無意味と察し、魔力を何重にも練り上げた拳だ。
支給品を使い地力を引き上げた影響もあってか、イリヤ相手に一歩も引かない。
拮抗が続けば続く程、互いの踏み込む力が増していき地面が絶叫を上げる。
「ぜ…りゃああああああああああっ!!!」
腹の底から怒号を上げ、イリヤが一歩前に進む。
押し負けたルナが吹き飛び、次の行動に出る前に大槌を投擲。
大型トラックすらもスクラップへ変える鉄塊の直撃は御免だ。
黒い板を取り込んでから使えるようになり、既に二回ほど見せた転移を使用。
扱うには少々コツがいる為連続ではまだ使えないが、大槌の範囲内からイリヤの背後へと瞬時に跳ぶ。
がら空きの背中へ拳を突き出し、寸前でイリヤもまた跳躍。
押し負けたルナが吹き飛び、次の行動に出る前に大槌を投擲。
大型トラックすらもスクラップへ変える鉄塊の直撃は御免だ。
黒い板を取り込んでから使えるようになり、既に二回ほど見せた転移を使用。
扱うには少々コツがいる為連続ではまだ使えないが、大槌の範囲内からイリヤの背後へと瞬時に跳ぶ。
がら空きの背中へ拳を突き出し、寸前でイリヤもまた跳躍。
「ぐぎっ!?」
更には避けた筈の大槌がブーメランのように戻って来た為、盛大に殴り飛ばされる羽目になる。
咄嗟の防御は間に合ったが、それでも強烈な痛みが襲う。
地面へ叩きつけられる前に拳を振り下ろし、強引に着地。
顔を上げる前から急接近する気配を察知、魔力を両腕だけでなく両脚にも付与。
咄嗟の防御は間に合ったが、それでも強烈な痛みが襲う。
地面へ叩きつけられる前に拳を振り下ろし、強引に着地。
顔を上げる前から急接近する気配を察知、魔力を両腕だけでなく両脚にも付与。
顔面スレスレで神腕を躱し懐へと潜り込む。
強化中の蹴りがイリヤの腹部に捻じ込まれ、嘔吐感がせり上がるも知ったことかと捨て置く。
退いてはやらない、逃げ回る暇などない。
こうも近付いて来たなら好都合、至近距離のルナの額へ自分の頭部を叩きつける。
頭突きという原始的な戦法によろけ、視界が数秒不安定と化す。
隙を逃す手は無い、大砲を思わせる勢いの拳がルナを殴り付けた。
両腕を交差し防御したにも関わらず、骨の髄まで痺れが駆け巡る。
強化中の蹴りがイリヤの腹部に捻じ込まれ、嘔吐感がせり上がるも知ったことかと捨て置く。
退いてはやらない、逃げ回る暇などない。
こうも近付いて来たなら好都合、至近距離のルナの額へ自分の頭部を叩きつける。
頭突きという原始的な戦法によろけ、視界が数秒不安定と化す。
隙を逃す手は無い、大砲を思わせる勢いの拳がルナを殴り付けた。
両腕を交差し防御したにも関わらず、骨の髄まで痺れが駆け巡る。
「やああああああああああああああああっ!!!」
「舐めるなあああああああああああああっ!!!」
「舐めるなあああああああああああああっ!!!」
魔力を操作し両腕の強化を数段階引き上げる。
神腕の二撃目へ左拳をぶつけて弾き、顔面狙いで右拳のストレートが炸裂。
頭を下げ回避、目の前の敵からは僅かたりとも視線を逸らさない。
アッパーカットをルナが避けるも、余波で皮膚が切り裂かれた。
首と顎を伝う赤い線に構わず、イリヤを殴り殺すことのみに集中。
神腕の二撃目へ左拳をぶつけて弾き、顔面狙いで右拳のストレートが炸裂。
頭を下げ回避、目の前の敵からは僅かたりとも視線を逸らさない。
アッパーカットをルナが避けるも、余波で皮膚が切り裂かれた。
首と顎を伝う赤い線に構わず、イリヤを殴り殺すことのみに集中。
地面が右脚で抉られ、草花や土が舞いイリヤの視界を覆い隠す。
長続きはしないが一瞬でも隙は作れた、唸る左脚が脇腹を叩く。
軋みを立て痛みを訴えられるが構うことなく、足首を掴んで引き寄せる。
神腕が振り下ろされるがルナもタダではやられず、イリヤへと拳を突き上げた。
長続きはしないが一瞬でも隙は作れた、唸る左脚が脇腹を叩く。
軋みを立て痛みを訴えられるが構うことなく、足首を掴んで引き寄せる。
神腕が振り下ろされるがルナもタダではやられず、イリヤへと拳を突き上げた。
「…っ!!ま…だ…まだ…!!」
「こい、つ…!」
「こい、つ…!」
悲鳴すらも噛み砕き、両足を一歩も後ろには下がらせない。
大槌を引き寄せ豪快に振り回されては、ルナも堪ったものじゃあない。
痛む体に鞭を打って地面を転がり、範囲内から脱した所で立ち上がる。
尤も相手が逃がしてくれる筈が無く、瞬く間に距離を詰められた。
大槌と四肢で殴り合う最中も、余りのしつこさに苛立ちが募る。
何度殴っても倒れない、怯まない、正気を疑うタフさだ。
大槌を引き寄せ豪快に振り回されては、ルナも堪ったものじゃあない。
痛む体に鞭を打って地面を転がり、範囲内から脱した所で立ち上がる。
尤も相手が逃がしてくれる筈が無く、瞬く間に距離を詰められた。
大槌と四肢で殴り合う最中も、余りのしつこさに苛立ちが募る。
何度殴っても倒れない、怯まない、正気を疑うタフさだ。
殴打の嵐を掻い潜り、時には痛みが襲っても止まらない。
マグニは時間経過だけでなく、もう一つの条件を満たしても狂化が加速する。
戦闘中に9歩の後退、トールの死の再現により一段と正気を失う。
マグニは時間経過だけでなく、もう一つの条件を満たしても狂化が加速する。
戦闘中に9歩の後退、トールの死の再現により一段と正気を失う。
『退くな』『止まるな』『突き進め』。
ベアトリスと同じく、イリヤにもトールの神核が放つ言葉が聞こえた。
上等だ。救うべき相手が目の前にいる、守るべき仲間が後ろにいる。
退く理由も止まる理由もない、突き進む以外に何をしろと言うのだ。
ベアトリスと同じく、イリヤにもトールの神核が放つ言葉が聞こえた。
上等だ。救うべき相手が目の前にいる、守るべき仲間が後ろにいる。
退く理由も止まる理由もない、突き進む以外に何をしろと言うのだ。
「いい加減……しつこいのよアンタは!!!」
イリヤとは反対に、大きく後退させられたルナの苛立ちが頂点に達する。
何度殴っても止まらないなら、一撃で髪の毛一本残さず消し飛ばせば良い。
頭上へ両手を掲げ、魔力を最大限に掻き集める。
光などまるで見えない、暗黒に染まった太陽の如き塊が徐々に形成。
何度殴っても止まらないなら、一撃で髪の毛一本残さず消し飛ばせば良い。
頭上へ両手を掲げ、魔力を最大限に掻き集める。
光などまるで見えない、暗黒に染まった太陽の如き塊が徐々に形成。
対するイリヤも大槌を掲げ、雷雲を発生。
雷を落とすもルナ目掛けてではない、自分が持つ得物を帯電させる為だ。
空の見えるフィールドのみで使用可能な招雷スキルである。
破壊力は倍となったが、ルナの最大魔法を破れるかはまだ怪しい。
対抗手段が無い訳では無い、しかし
雷を落とすもルナ目掛けてではない、自分が持つ得物を帯電させる為だ。
空の見えるフィールドのみで使用可能な招雷スキルである。
破壊力は倍となったが、ルナの最大魔法を破れるかはまだ怪しい。
対抗手段が無い訳では無い、しかし
『宝具を使えば代償を払うことになります。ですがそれは……』
「っ……」
「っ……」
大槌…ミョルニルを宝具として振るえばどうなるかを、イリヤも知っている。
真名解放の度に使用者の記憶を消費するのだ。
誰に関する記憶を失うのかは分からない。
家族か、学友か、仲間達か、もういない姉か、神に囚われた親友か。
一つとして忘れたくない大事な記憶が抜け落ち、頭の中が虫食いになる。
一瞬の躊躇、だが自分がやらねばと唇を噛み締め、
真名解放の度に使用者の記憶を消費するのだ。
誰に関する記憶を失うのかは分からない。
家族か、学友か、仲間達か、もういない姉か、神に囚われた親友か。
一つとして忘れたくない大事な記憶が抜け落ち、頭の中が虫食いになる。
一瞬の躊躇、だが自分がやらねばと唇を噛み締め、
「イリヤ……!」
その選択を止める仲間の声が届いた。
「これ…!もしかしたら力になるかもしんない…!」
司が投げ渡したのは金色に輝く石。
ルナの魔法で遠くまで吹き飛ばされるも、ドレイクに変身中なのもあってどうにか無事。
痛む体を引き摺り戻る最中にデイパック内から異変を感じ、開けてみると支給品の一つが光を放ち熱を帯びていたのだ。
ルナの魔法で遠くまで吹き飛ばされるも、ドレイクに変身中なのもあってどうにか無事。
痛む体を引き摺り戻る最中にデイパック内から異変を感じ、開けてみると支給品の一つが光を放ち熱を帯びていたのだ。
同エリア内にて風の力を引き出した聖女が原因だとは知らず、石はイリヤへと託された。
「!!司さんありがとう…!」
受け取ったイリヤも石が何なのか詳細は知らない。
けれど分かる、夢幻召喚を行った今なら頭では無く心で理解できる。
この石と『父の神器』があれば、絶対に負けはしないと。
けれど分かる、夢幻召喚を行った今なら頭では無く心で理解できる。
この石と『父の神器』があれば、絶対に負けはしないと。
「天光満つる処に我は在り」
暗黒の太陽はより巨大となり、逆らう愚物達を見下ろす。
死以外に何も与えない。
死以外に何も与えない。
「黄泉の門開く処に汝在り」
怯え、届く筈の無い命乞いに出るか。
自らに訪れる終焉から目を逸らし、夢現の世界に迷い込んだと逃避に走るか。
人間達に出来ることなんて、それしかない。
自らに訪れる終焉から目を逸らし、夢現の世界に迷い込んだと逃避に走るか。
人間達に出来ることなんて、それしかない。
「出でよ神の雷――」
なのにどうして
「インディグネイション!!!」
彼女は諦めないのか。
太陽が全てを飲み込まんとし、闇を切り裂く雷が咆える。
光の主霊石(マスターコア)により引き起こされる星霊術すらも、ミョルニルへ落とし帯電の工程を挟んで放つ。
宝具の真名解放時にも劣らない絶大な威力、だがルナの魔法もまた生半可な力では無い。
願いと憎悪、抱く信念は異なれど折れぬ強さは両者共通。
光の主霊石(マスターコア)により引き起こされる星霊術すらも、ミョルニルへ落とし帯電の工程を挟んで放つ。
宝具の真名解放時にも劣らない絶大な威力、だがルナの魔法もまた生半可な力では無い。
願いと憎悪、抱く信念は異なれど折れぬ強さは両者共通。
『RIDER SHOOTING』
「いっけえぇぇぇっ!」
であるのなら、勝敗を分けるのはイリヤにあってルナには無いもの。
即ち、共に戦う仲間の存在。
即ち、共に戦う仲間の存在。
ドレイクゼクターの羽を畳みエネルギーを銃口に収束。
成体ワームを仕留める威力の光弾も、今のルナを倒すには至らない。
それでも、ほんの少しでも気を逸らしイリヤの力になれるなら構わない。
成体ワームを仕留める威力の光弾も、今のルナを倒すには至らない。
それでも、ほんの少しでも気を逸らしイリヤの力になれるなら構わない。
ルナの妨害に出たのは司のみならず、水色の剣士もだ。
遠く吹き飛ばされ戻って来るのが遅れたが、チノだって戦いを放り出す気は無い。
とっておきの技を使い氷の剣山を生成、超人類を一度は怯ませた力が此度も仲間の為に使われた。
遠く吹き飛ばされ戻って来るのが遅れたが、チノだって戦いを放り出す気は無い。
とっておきの技を使い氷の剣山を生成、超人類を一度は怯ませた力が此度も仲間の為に使われた。
「ありがとう二人とも…!」
仲間の支援はイリヤの心を熱くさせ、黒い太陽を押し返す。
光が暗黒を消し、徐々にルナの視界も輝きに染まる。
人間にとっては希望溢れる光景も、ルナから見れば受け入れ難い悪夢に他ならない。
光が暗黒を消し、徐々にルナの視界も輝きに染まる。
人間にとっては希望溢れる光景も、ルナから見れば受け入れ難い悪夢に他ならない。
負けるのか、憎悪を燃やした自分の力は届かなかったのか。
悪い魔女は正義の魔法使いと仲間達に倒され、ハッピーエンドを迎える。
如何にも人間達が好みそうな結末が、復讐の果てだというのか。
悪い魔女は正義の魔法使いと仲間達に倒され、ハッピーエンドを迎える。
如何にも人間達が好みそうな結末が、復讐の果てだというのか。
「ふ……ざけるなぁああああああああああああああああああああっ!!!」
村を焼かれた絶望は、正義の踏み台にあるんじゃない。
家族を奪われた怒りは、陳腐な脚本を彩る為の悲劇なんかじゃあない。
家族を奪われた怒りは、陳腐な脚本を彩る為の悲劇なんかじゃあない。
全てを奪われたあの日と同じ、或いはそれ以上の憎悪が宿る。
殺す、こいつらは殺す、人間どもは一人残らず殺す。
優勝の為の礎だけではない、憎悪を以て殺してやる。
己が身さえも滅ぼし兼ねない炎を心に灯し、ふと浮かんだのは一人の男。
コローソではない、殺し合いの地で唯一共感を抱いた復讐鬼。
殺す、こいつらは殺す、人間どもは一人残らず殺す。
優勝の為の礎だけではない、憎悪を以て殺してやる。
己が身さえも滅ぼし兼ねない炎を心に灯し、ふと浮かんだのは一人の男。
コローソではない、殺し合いの地で唯一共感を抱いた復讐鬼。
そして、ルナもまた限界を超えた。
心意システムは微笑む相手を選ばない。
条件さえ満たせば善悪関係なしに、一つ上の段階へと押し上げ不可能を可能にする。
心意システムは微笑む相手を選ばない。
条件さえ満たせば善悪関係なしに、一つ上の段階へと押し上げ不可能を可能にする。
「波ぁああああああああああああ!!」
急上昇した魔力、若しくは異なる力が雷と激突。
勝敗が傾きかけた筈が再び拮抗を見せた後、少女達は二つの力に覆い隠された。
勝敗が傾きかけた筈が再び拮抗を見せた後、少女達は二つの力に覆い隠された。
○
何が起きたのかを即座に理解するのに視界は朧気で、頭もちゃんと働かない。
瞼をこじ開けるのはこんなにも難しかっただろうか。
平日に早起きするよりも重たい、なんて呑気なことを少し思いつつイリヤは目を開けた。
瞼をこじ開けるのはこんなにも難しかっただろうか。
平日に早起きするよりも重たい、なんて呑気なことを少し思いつつイリヤは目を開けた。
「……っ。わた、し……」
『動かないで下さいイリヤさん!全速力で治療を行ってますので!』
「ルビー……?」
『動かないで下さいイリヤさん!全速力で治療を行ってますので!』
「ルビー……?」
普段のおちゃらけた口調ではない、焦燥感の宿る声はフヨフヨ浮かぶ相棒から。
億劫ながら顔を動かすと、そこかしこに焼ける痛みが走った。
短く悲鳴を出しつつ見れたのは、転身が解除された自分の体。
セイバーとバーサーカーのクラスカードは強力な分、魔力の燃費もすこぶる悪い。
二枚連続で使えばこうなって当然だ。
億劫ながら顔を動かすと、そこかしこに焼ける痛みが走った。
短く悲鳴を出しつつ見れたのは、転身が解除された自分の体。
セイバーとバーサーカーのクラスカードは強力な分、魔力の燃費もすこぶる悪い。
二枚連続で使えばこうなって当然だ。
諫めてくれたルビーには申し訳ないが、戦いの結果を知らなくては。
顔を真横に向けると、ほんの数センチ先に黒い板が落ちている。
確かあの子が体に突き刺した正体不明の道具。
これが外に出ているということは、彼女の体内から排出されたと見て良いのだろうか。
肝心の本人は、そして仲間達はどうなったのだろう。
喉を震わせるだけでも痛むが少しずつマシになり、ルビーへ直接聞こうとし、
顔を真横に向けると、ほんの数センチ先に黒い板が落ちている。
確かあの子が体に突き刺した正体不明の道具。
これが外に出ているということは、彼女の体内から排出されたと見て良いのだろうか。
肝心の本人は、そして仲間達はどうなったのだろう。
喉を震わせるだけでも痛むが少しずつマシになり、ルビーへ直接聞こうとし、
「まさか、コローソ以外でここまで私を追い詰める奴がいるなんてね」
自身の敗北を伝える声が聞こえた。
引き千切られるような激痛が駆け巡る体を無理やり動かし、彼女を見る。
体中に傷を付け、元からあった火傷の範囲をさらに広げ。
栗色の髪を揺らす魔女が、勝ち誇ったように立っていた。
体中に傷を付け、元からあった火傷の範囲をさらに広げ。
栗色の髪を揺らす魔女が、勝ち誇ったように立っていた。
顔も髪の色もついさっきまでと同じ、だが変化は確実に見て取れる。
少女らしい華奢な体付きから一変、四肢と胴体を覆う分厚い筋肉。
ボディービルダー程では無いが、齢とは不釣り合いの屈強さ。
何よりも全身から放たれる金色のオーラこそ、別次元の存在になった証。
殺し合いの参加者の中で唯一、敵意や苛立ち以外の感情を向けた者。
自分と同じく友に裏切られた復讐鬼、野比のび太を思わせる姿だった。
少女らしい華奢な体付きから一変、四肢と胴体を覆う分厚い筋肉。
ボディービルダー程では無いが、齢とは不釣り合いの屈強さ。
何よりも全身から放たれる金色のオーラこそ、別次元の存在になった証。
殺し合いの参加者の中で唯一、敵意や苛立ち以外の感情を向けた者。
自分と同じく友に裏切られた復讐鬼、野比のび太を思わせる姿だった。
土壇場で心意システムの恩恵を受け、爆発的に能力を上昇。
直撃を受ける筈だった雷を押し返すも、敵の攻撃も容易く破れる代物ではなく。
結果相討ちの形でダメージを受け、衝撃で黒い板も排出されたが無問題。
まだ戦える自分と違い、相手は地に伏せ悪足掻きすらも不可能なのだから。
直撃を受ける筈だった雷を押し返すも、敵の攻撃も容易く破れる代物ではなく。
結果相討ちの形でダメージを受け、衝撃で黒い板も排出されたが無問題。
まだ戦える自分と違い、相手は地に伏せ悪足掻きすらも不可能なのだから。
右手に魔力を集中、これまで何度も行った強化。
今回は刃状に形成し貫通力を上昇。
散々梃子摺らされたが結局は自分の勝ち、この有様でよくも救うなどと抜かせたものだ。
薄い胸を貫き、二度と声を発せられない肉人形に変えてやる。
今回は刃状に形成し貫通力を上昇。
散々梃子摺らされたが結局は自分の勝ち、この有様でよくも救うなどと抜かせたものだ。
薄い胸を貫き、二度と声を発せられない肉人形に変えてやる。
「まだ…わたしは……!」
『イリヤさんには指一本触れさせませんよ!このゴリマッチョガール!』
『イリヤさんには指一本触れさせませんよ!このゴリマッチョガール!』
何を言おうともう遅い。
一人と一本、纏めて壊してあの世で負け惜しみでもほざいてれば良い。
一人と一本、纏めて壊してあの世で負け惜しみでもほざいてれば良い。
「さよなら、少しは歯応えのあった人間」
今更何の躊躇も抱かずに突き刺す。
『CLOCK OVER』
そして、一つの命が散った。
○○○
全部をハッキリ覚えてるわけじゃない。
イリヤに光る石を渡して、そしたら魔法とか全然分かんない私にも分かるくらい凄いことになって。
でも他にも何かやれることがあるんじゃないかって思って、銃を撃った。
ちゃんと思い出せるのはそこまで、後はもうあやふやだ。
イリヤに光る石を渡して、そしたら魔法とか全然分かんない私にも分かるくらい凄いことになって。
でも他にも何かやれることがあるんじゃないかって思って、銃を撃った。
ちゃんと思い出せるのはそこまで、後はもうあやふやだ。
イリヤと相手の女の子が光ったと思ったら、気が付くと私はまた倒れてた。
吹き飛ばされた時も、いつ叩きつけられたのかもよく分かってない。
ただこの仮面ライダーとかなんとかいうのになってなかったら、2~3回はとっくに死んでたろ。
そう呆れてフラフラになって立ったら、イリヤが殺されそうになってるのが見えた。
吹き飛ばされた時も、いつ叩きつけられたのかもよく分かってない。
ただこの仮面ライダーとかなんとかいうのになってなかったら、2~3回はとっくに死んでたろ。
そう呆れてフラフラになって立ったら、イリヤが殺されそうになってるのが見えた。
そっからは無我夢中だ。
説明書に載ってた小難しい説明はピンと来ないけど、早く動けるらしい力を使って猛ダッシュ。
サッカーの試合やってても、こんだけ速く走れたこと無かったぞ。
説明書に載ってた小難しい説明はピンと来ないけど、早く動けるらしい力を使って猛ダッシュ。
サッカーの試合やってても、こんだけ速く走れたこと無かったぞ。
イリヤのとこへ辿り着いた丁度そのタイミングで元に戻って、私は咄嗟に前に出たんだ。
痛い、っていうか熱い。
訳分かんねー内にぶっ倒れて、目だけ動かしてすぐに見なきゃ良かったって後悔する羽目になった。
お腹からいっぱい、出ちゃ駄目なモンが出ちゃってる。
ああこれ駄目なやつだとか、ヒーローのスーツもあんまり当てにならないなとか、
そういうのも思ったけど、でもイリヤは助かったんだなって分かったら安心した。
痛い、っていうか熱い。
訳分かんねー内にぶっ倒れて、目だけ動かしてすぐに見なきゃ良かったって後悔する羽目になった。
お腹からいっぱい、出ちゃ駄目なモンが出ちゃってる。
ああこれ駄目なやつだとか、ヒーローのスーツもあんまり当てにならないなとか、
そういうのも思ったけど、でもイリヤは助かったんだなって分かったら安心した。
だけどさ、すぐに良くねえだろって思い直した。
イリヤが泣いてる、グズグズの声で私の名前を呼んでる。
私が勝手に飛び出して、助かろうとしないせいでイリヤを悲しませてる、傷付けてる。
そんなの全然良くないだろ、自分だけ達成感得た気になってイリヤを泣かせてたら良い訳ないんだよ。
イリヤが泣いてる、グズグズの声で私の名前を呼んでる。
私が勝手に飛び出して、助かろうとしないせいでイリヤを悲しませてる、傷付けてる。
そんなの全然良くないだろ、自分だけ達成感得た気になってイリヤを泣かせてたら良い訳ないんだよ。
それに、ああそうだ、そうだよな。
琴岡の奴にちゃんと謝れてないし、アイツと鷲尾を仲直りさせてない。
どんな事情があったにしても、お前の言葉で傷付いた人はいるんだぞって教えられてない。
琴岡の奴にちゃんと謝れてないし、アイツと鷲尾を仲直りさせてない。
どんな事情があったにしても、お前の言葉で傷付いた人はいるんだぞって教えられてない。
昴だって私が死んだら泣くかな、まぁ泣くよな。
あいつが背中を押してくれたから、琴岡に会いに行けたんだ。
ちゃんと仲直りさせて、それでもう一回「お前のお陰だよ」ってお礼を言いたい。
じゃあ余計に、死んでなんかいられないじゃん。
あいつが背中を押してくれたから、琴岡に会いに行けたんだ。
ちゃんと仲直りさせて、それでもう一回「お前のお陰だよ」ってお礼を言いたい。
じゃあ余計に、死んでなんかいられないじゃん。
なのに、体は全然動いてくれない。
小さい体でずっと頑張ってくれた女の子を、傷付けたくない。
私のせいで三人組が、ずっと離れ離れなんて嫌だ。
鷲尾の…一番好きになった人の顔を二度と見れないのも辛いのに。
小さい体でずっと頑張ってくれた女の子を、傷付けたくない。
私のせいで三人組が、ずっと離れ離れなんて嫌だ。
鷲尾の…一番好きになった人の顔を二度と見れないのも辛いのに。
あーくそ、こんな時に鷲尾のこと考えるから、泣きたくなってきたじゃねえかよ
くそっ…頼むよ…動いてくれよ…
なあ…頼むからさ……
○
「司さん…!何で…何で……!」
どれだけ揺さぶっても、光を失った瞳は二度と何も映さない。
血を垂らした口から言葉は紡がれない。
大事な友だちも参加してると言ったのに、二度と会えなくなってしまった。
血を垂らした口から言葉は紡がれない。
大事な友だちも参加してると言ったのに、二度と会えなくなってしまった。
マスクドフォームですら防げるか怪しいルナの刃を、耐久性の劣るライダーフォームで受けたのだ。
ヒヒイロカネ製の装甲も、決して万能ではない
ヒヒイロカネ製の装甲も、決して万能ではない
「余計な…まあいいか。殺す順番が入れ替わっただけだし」
自分を苛立たせた一人ではあったが、殺してしまえば感慨が起きる筈もない。
縋り付いて涙を流すイリヤを今度こそ仕留めるまで。
縋り付いて涙を流すイリヤを今度こそ仕留めるまで。
そのつもりだったが、邪魔する者はまだいるらしい。
「と、止まってください!」
怯えを隠せない声を出し、イリヤを背に庇う水色の剣士。
チノが武器を構え、行かせまいと立ち塞がった。
グロテスクな司の姿に恐怖を感じ、自分がもっと早く駆け付けられればと後悔を抱く。
一緒にいた時間は短いけど、殺し合いを良しとしない仲間だった。
マヤの死を見ているしか出来なかった自分と違い、大事な友達に再会できる筈だったのに。
その機会は彼女の命と共に失われた。
チノが武器を構え、行かせまいと立ち塞がった。
グロテスクな司の姿に恐怖を感じ、自分がもっと早く駆け付けられればと後悔を抱く。
一緒にいた時間は短いけど、殺し合いを良しとしない仲間だった。
マヤの死を見ているしか出来なかった自分と違い、大事な友達に再会できる筈だったのに。
その機会は彼女の命と共に失われた。
「イリヤさんは逃げてください…!ここは、私が何とかしますから…」
「ビビってるのが丸分かりね。全然カッコ付かないわ」
「うるさいですね…!何と言われようと、イリヤさんには手出しさせません…!」
「ビビってるのが丸分かりね。全然カッコ付かないわ」
「うるさいですね…!何と言われようと、イリヤさんには手出しさせません…!」
本当は恐い、魔女の言う通り恐くて仕方ない。
自分よりずっと強いイリヤでも勝てない相手に、ロゼや零の助けも借りられず立ち向かう。
ココア達に会えず死ぬかもしれないと思うと、逃げ出したくなる。
でも、イリヤには自分や司と同じ苦しみを味合わせたくない。
親友と二度と会えなくなるという、心を打ち砕かれる痛みを知っているから。
だからチノは恐怖を必死に押し殺してでも、立ち向かう道を選んだ。
自分よりずっと強いイリヤでも勝てない相手に、ロゼや零の助けも借りられず立ち向かう。
ココア達に会えず死ぬかもしれないと思うと、逃げ出したくなる。
でも、イリヤには自分や司と同じ苦しみを味合わせたくない。
親友と二度と会えなくなるという、心を打ち砕かれる痛みを知っているから。
だからチノは恐怖を必死に押し殺してでも、立ち向かう道を選んだ。
「あっそ。じゃあアンタから死んでよ」
美しき友情と嘲る気にもならず、魔女が手を伸ばす。
剣士の勇気も、やめてと叫ぶ魔法少女の声も。
等しく塵と化す憎悪が溢れ――
剣士の勇気も、やめてと叫ぶ魔法少女の声も。
等しく塵と化す憎悪が溢れ――
『お~っと、はしゃぐのはその辺にしてもらわないとなァ?』
最後の役者の到着を以て、物語は佳境を迎える。