◆
NPCと正規プレイヤーの違いは何か。
支給品、首輪、願いを叶える権利。
それらの有無に加え、運営側によって課せられた縛りの存在。
即ち、殺害に至るレベルの攻撃の禁止。
デスゲームの主役はあくまでも、ゲームマスターに選ばれた参加者。
端役(モブ)に過ぎないNPCに殺される展開は、檀黎斗と茅場晶彦のどちらも望んでいない。
支給品、首輪、願いを叶える権利。
それらの有無に加え、運営側によって課せられた縛りの存在。
即ち、殺害に至るレベルの攻撃の禁止。
デスゲームの主役はあくまでも、ゲームマスターに選ばれた参加者。
端役(モブ)に過ぎないNPCに殺される展開は、檀黎斗と茅場晶彦のどちらも望んでいない。
だから仮にNPCとの戦闘に発展しても、命は奪われずに済む。
そう楽観視を抱くのは大間違いと、広がる光景が物語っていた。
そう楽観視を抱くのは大間違いと、広がる光景が物語っていた。
刃、刃、刃。
宙へ展開させた大量の刃、鋏と槍が激突しては砕けるの繰り返し。
片手に持って紙や紐を切る日用品のソレと、大きく異なる。
大の大人の腕を優に超えたサイズ、人体切断も可能な切れ味。
工作に用いるんじゃあない、生命を傷付け命を奪う。
武器、いいや凶器として魔法少女に相応の危機感を与える。
宙へ展開させた大量の刃、鋏と槍が激突しては砕けるの繰り返し。
片手に持って紙や紐を切る日用品のソレと、大きく異なる。
大の大人の腕を優に超えたサイズ、人体切断も可能な切れ味。
工作に用いるんじゃあない、生命を傷付け命を奪う。
武器、いいや凶器として魔法少女に相応の危機感を与える。
「……っ!」
もとより油断を持ち込む性質でないとはいえ、気を緩めれば串刺しは免れない状況に。
いろはも強張った表情のまま、魔力を消費し得物を生成。
ハルバードを思わせる形状の長槍を、自身の周囲へ複数展開。
手に持たずとも、意思一つで自在に操れる。
鋏の飛来に合わせて射出、無傷を維持しながら左腕を向けた。
いろはも強張った表情のまま、魔力を消費し得物を生成。
ハルバードを思わせる形状の長槍を、自身の周囲へ複数展開。
手に持たずとも、意思一つで自在に操れる。
鋏の飛来に合わせて射出、無傷を維持しながら左腕を向けた。
耐え凌ぐのを続けていても、戦闘は終わらない。
本来の固有装備たるクロスボウを構え、魔力を籠めた光矢を発射。
槍の操作に両手を必要としない為、空いた手で攻撃に出るのは当然の流れだ。
シザーズロストスマッシュも、文句を飛ばす気はない。
本来の固有装備たるクロスボウを構え、魔力を籠めた光矢を発射。
槍の操作に両手を必要としない為、空いた手で攻撃に出るのは当然の流れだ。
シザーズロストスマッシュも、文句を飛ばす気はない。
「あら、可愛い武器ね?兎ちゃんでも射殺す気だったの?」
何せ両手が自由なのは、敵もまた同じ。
腕部に装着した刃を展開、急所を狙った光矢を斬り落とす。
連射性能や発射速度は、軽機関銃にも引けを取らぬいろはの得物なれど。
ロストボトルを用いた変身により、スマッシュの中でも特に高い戦闘能力を有する怪人が相手では。
会場へ無数に放たれたNPCを蹴散らすような、呆気ない決着は不可能。
腕部に装着した刃を展開、急所を狙った光矢を斬り落とす。
連射性能や発射速度は、軽機関銃にも引けを取らぬいろはの得物なれど。
ロストボトルを用いた変身により、スマッシュの中でも特に高い戦闘能力を有する怪人が相手では。
会場へ無数に放たれたNPCを蹴散らすような、呆気ない決着は不可能。
光矢の連射を防ぎながら、シザーズロストスマッシュが疾走。
鋏と槍の衝突による破壊音をBGMに、近接戦闘の間合いへ到達。
近付かれたと分かれば、いろはも棒立ちになっていられない。
上半身を大きく捩って回避、肌を鋏に裂かれずに済んだ。
鋏と槍の衝突による破壊音をBGMに、近接戦闘の間合いへ到達。
近付かれたと分かれば、いろはも棒立ちになっていられない。
上半身を大きく捩って回避、肌を鋏に裂かれずに済んだ。
無論、一撃で終わるとは思っていない。
手元に新たな槍を生成し、続けて振るわれた刃を防ぐ。
重い、得物に掛かる負担で細腕に小さな痛みが来た。
反対の鋏が振り被られるのを確認、躊躇せず槍を手放し後方へ跳ぶ。
手元に新たな槍を生成し、続けて振るわれた刃を防ぐ。
重い、得物に掛かる負担で細腕に小さな痛みが来た。
反対の鋏が振り被られるのを確認、躊躇せず槍を手放し後方へ跳ぶ。
「もしかして狩るんじゃなく、狩られる方が好み?それなら良いわ、付き合ってあげる」
むざむざと距離を引き離すのを、シザーズロストスマッシュに指を咥えて眺める気は無し。
地を蹴り付け、いろはを追い越す高さで跳躍。
先回りして刃を突き刺せば、自ら地面に身を横たわらせて避ける。
起き上がり様にクロスボウを撃ちつつ、敵の間合いから離れた。
地を蹴り付け、いろはを追い越す高さで跳躍。
先回りして刃を突き刺せば、自ら地面に身を横たわらせて避ける。
起き上がり様にクロスボウを撃ちつつ、敵の間合いから離れた。
「ふふ……やっぱりあなたを相手にして正解だったわ。男なんかより、女の子を甚振る方が性に合うもの」
異形の貌に表面上の変化はなくとも、嗜虐的な笑みを浮かべてると分かった。
言葉で矛を収めると、微塵も期待出来ない悪意。
生憎だが、悪趣味に付き合ってやる義理はこっちにない。
使用可能な自身の手札を思い浮かべ、切るべき瞬間をいろはは見極める。
言葉で矛を収めると、微塵も期待出来ない悪意。
生憎だが、悪趣味に付き合ってやる義理はこっちにない。
使用可能な自身の手札を思い浮かべ、切るべき瞬間をいろはは見極める。
○
「いくでオラァアアアアアアアアアアアアッ!!!」
放たれた怒声は、剥き出しの肌が痺れる程の声量。
気の弱い人間ならばたちまち委縮、抵抗の意志が削ぎ落とされるだろう。
まして怒鳴った者が人に非ず、指先から頭の天辺まで。
どこを見ても怪物としか言いようのないと来たら、腰を抜かして震えるのが精一杯。
悲しいことに、ゼブラロストスマッシュは脅かすだけじゃあ満足しない。
獣の蹄と似た形状の打撃武器で、肉体を叩けば最後。
床へ落ちた陶器と同じように、骨も原形を留めず砕け散る。
気の弱い人間ならばたちまち委縮、抵抗の意志が削ぎ落とされるだろう。
まして怒鳴った者が人に非ず、指先から頭の天辺まで。
どこを見ても怪物としか言いようのないと来たら、腰を抜かして震えるのが精一杯。
悲しいことに、ゼブラロストスマッシュは脅かすだけじゃあ満足しない。
獣の蹄と似た形状の打撃武器で、肉体を叩けば最後。
床へ落ちた陶器と同じように、骨も原形を留めず砕け散る。
力強さだけに特化し、動きは鈍重の二文字を当て嵌めざるを得ない。
といった、儚い期待を抱いても無駄だ。
自然界を生き抜く生物さながらに、敏捷性も人の限界を嘲笑う速さ。
逃げようと足を動かした瞬間に追い付かれ、辿る末路は言うまでもない。
といった、儚い期待を抱いても無駄だ。
自然界を生き抜く生物さながらに、敏捷性も人の限界を嘲笑う速さ。
逃げようと足を動かした瞬間に追い付かれ、辿る末路は言うまでもない。
「……」
ゼブラロストスマッシュと反対に、黒死牟の反応は至って静かなもの。
眼前へと迫る脅威に慌てふためくでも、叫び返すでもない。
動かす脚、突き出される拳、一挙一動を正確に捉える。
成程、人に非ざるは見た目だけのこけおどしじゃあなく。
持ち得る能力も、人外の域へ達すると理解。
鉄塊の如き打撃武器が顔面を抉る寸前、数歩の移動で回避。
眼前へと迫る脅威に慌てふためくでも、叫び返すでもない。
動かす脚、突き出される拳、一挙一動を正確に捉える。
成程、人に非ざるは見た目だけのこけおどしじゃあなく。
持ち得る能力も、人外の域へ達すると理解。
鉄塊の如き打撃武器が顔面を抉る寸前、数歩の移動で回避。
一撃避けたからもう安心、などと能天気に考える馬鹿はここにいない。
伸ばしたままの腕を振るい、裏拳が叩き込まれた。
頬が引き千切れたとて、瞬き一つの間に再生は終わる。
だから軽く見ても問題無いと、そう断じる思考を黒死牟は持たない。
視界に映らずとも、肌で感じる悪寒。
敵が衣服のように纏った力の正体へ覚えがあるだけに、直撃を許すのは悪手と判断。
伸ばしたままの腕を振るい、裏拳が叩き込まれた。
頬が引き千切れたとて、瞬き一つの間に再生は終わる。
だから軽く見ても問題無いと、そう断じる思考を黒死牟は持たない。
視界に映らずとも、肌で感じる悪寒。
敵が衣服のように纏った力の正体へ覚えがあるだけに、直撃を許すのは悪手と判断。
取るべき行動が決まった瞬間、電光石火を実現させた動作で抜刀。
虚哭神去をナックルダスターに添えて、受け流す。
虚哭神去をナックルダスターに添えて、受け流す。
「けったいな趣味の刀やなぁ。もうちょいマシなモンを振り回すのを勧めるで?」
軽口と裏腹に、ゼブラロストスマッシュの殴打は容赦がない。
当たれば肉が弾け飛ぶ威力なのを、刀身へ走る振動で察知。
腕の一振り蹴りの一発の度に、空気が上げる悲鳴が鼓膜を叩く。
当たれば肉が弾け飛ぶ威力なのを、刀身へ走る振動で察知。
腕の一振り蹴りの一発の度に、空気が上げる悲鳴が鼓膜を叩く。
胸部へ突き出す拳を弾き、二歩真横へ移動。
数センチ隣を通過した腕には目を向けず、続けて三歩後退。
薙ぎ払うような蹴りは当たらず、着物が微かに揺れる。
黒い異形が踏み込むや殴り掛かれば、妖刀を防御に回し自身には触れさせない。
数センチ隣を通過した腕には目を向けず、続けて三歩後退。
薙ぎ払うような蹴りは当たらず、着物が微かに揺れる。
黒い異形が踏み込むや殴り掛かれば、妖刀を防御に回し自身には触れさせない。
(あの騎兵の一団とは……力の差も明確だな……)
漆黒の拳によって繰り出される乱打を、刀一本で凌ぐ中。
同じ『えぬぴいしい』であっても、ショッカーライダーとは比べ物にならない力と結論を下す。
膂力と走力、格闘技術の精度。
どれを取っても並以上、純粋な身体機能は鬼相手でも十分通用する。
同じ『えぬぴいしい』であっても、ショッカーライダーとは比べ物にならない力と結論を下す。
膂力と走力、格闘技術の精度。
どれを取っても並以上、純粋な身体機能は鬼相手でも十分通用する。
加えて、黒死牟が敵の殴打を避けるべきと見た原因。
ゼブラロストスマッシュは攻撃の度に、ブラッド族のエネルギーを纏わせている。
元となった存在が星狩りの一族であるのを考慮し、能力の再現も行われたのだ。
我が身で規格外の力を味わった強敵、エボルトよりは流石に下だが。
再生を阻害されると知り、あえて食らってやる理由もない。
ゼブラロストスマッシュは攻撃の度に、ブラッド族のエネルギーを纏わせている。
元となった存在が星狩りの一族であるのを考慮し、能力の再現も行われたのだ。
我が身で規格外の力を味わった強敵、エボルトよりは流石に下だが。
再生を阻害されると知り、あえて食らってやる理由もない。
更に黒死牟達は知らないが、投入された二体のロストスマッシュはジークやラブリカと違い。
オリジナルと同等の戦闘能力を発揮可能に、調整を受けた。
格闘戦に秀でたクローズやグリスと渡り合った力が、鬼相手に振るわれている。
元が一般人の智乃と異なり、戦闘経験豊富なプレイヤーにぶつける以上。
ある意味当然と言えば、そうなのだろう。
オリジナルと同等の戦闘能力を発揮可能に、調整を受けた。
格闘戦に秀でたクローズやグリスと渡り合った力が、鬼相手に振るわれている。
元が一般人の智乃と異なり、戦闘経験豊富なプレイヤーにぶつける以上。
ある意味当然と言えば、そうなのだろう。
「オラオラどうしたぁっ!ポン刀一本じゃそれが限界かいな!」
防戦一方に追い込んだと睨み、叩み掛けるべく自身が纏うエネルギーの出力を上昇。
長ったらしく凌げると思ったら大間違いだ、刀をへし折り澄まし面を肉片に変える。
敵キャラクター、若しくは地球外生命体としての加虐性を露わにし、
長ったらしく凌げると思ったら大間違いだ、刀をへし折り澄まし面を肉片に変える。
敵キャラクター、若しくは地球外生命体としての加虐性を露わにし、
黒死牟の腕が掻き消え、気付けば宙を待っていた。
「なっ――」
何が起きたと、瞬時の理解は叶わない。
殴りつけるべく拳を突き出し、刀をへし折り標的を殴り飛ばす。
思い描いた光景を、実現不可能の妄想に変えた原因は何か。
考え込む事数秒、地面への激突が起きる前に答えへ辿り着く。
別に難しいものじゃあない、失笑が浮かぶくらいに単純。
殴りつけるべく拳を突き出し、刀をへし折り標的を殴り飛ばす。
思い描いた光景を、実現不可能の妄想に変えた原因は何か。
考え込む事数秒、地面への激突が起きる前に答えへ辿り着く。
別に難しいものじゃあない、失笑が浮かぶくらいに単純。
「まさか僕が……!」
自分の目で捉えられない速度で振るわれた斬撃に、力負けして吹き飛ばされた。
弾き出した正解へ、愕然と屈辱に悶える。
などと悠長な真似をさせてやる、お優しい相手ではかった。
弾き出した正解へ、愕然と屈辱に悶える。
などと悠長な真似をさせてやる、お優しい相手ではかった。
「――ッ!?」
ついでに言うと、地に落ちるまでを待つ気もない。
数十歩分の距離を一跳びで詰め、六眼が獲物を冷たく見下ろす。
両腕を防御に回し、ダメージを最小限に留める。
或いはエネルギー波の放射で、近付いた事を後悔させる。
二つに一つの選択、どちらを取ろうと無意味だ。
数十歩分の距離を一跳びで詰め、六眼が獲物を冷たく見下ろす。
両腕を防御に回し、ダメージを最小限に留める。
或いはエネルギー波の放射で、近付いた事を後悔させる。
二つに一つの選択、どちらを取ろうと無意味だ。
「がぁっ!?」
鬼が刀を振るう方が速く、一刀をその身に刻み付けられた。
落ちた先で背から倒れ、蜘蛛の巣に似た亀裂が生まれる。
激突の衝撃は捨て置いて構わない痒さに等しい、だが斬られた箇所は別。
ライダーシステムの恩恵を受けた打撃を跳ね返せるレベルの、強固な耐久性を有するにもかかわらず。
常時灼熱で炙られるかの痛みが、胸部から消えない。
落ちた先で背から倒れ、蜘蛛の巣に似た亀裂が生まれる。
激突の衝撃は捨て置いて構わない痒さに等しい、だが斬られた箇所は別。
ライダーシステムの恩恵を受けた打撃を跳ね返せるレベルの、強固な耐久性を有するにもかかわらず。
常時灼熱で炙られるかの痛みが、胸部から消えない。
「甘く見られたものよ……」
地へ降り立ち、面白くもなさそうに独り言ちる。
頬に浮かぶは火炎の如き痣のみ、ステンドグラス状の模様は発現せず。
魔族の力による強化を用いない、生前より培った技術。
全集中の呼吸、それのみで十分に事足りる。
頬に浮かぶは火炎の如き痣のみ、ステンドグラス状の模様は発現せず。
魔族の力による強化を用いない、生前より培った技術。
全集中の呼吸、それのみで十分に事足りる。
この身は既に、屠り合いに招かれた直後とは異なる。
異界より集めた数多の強敵と鎬を削り、鬼殺隊との因縁だけでは得られなかった経験を積ませ。
始祖をも超える正真正銘の怪物、星狩りとの死闘で限界を踏み越えた。
生死の狭間で得物を振るう感覚が、呼吸の精度を生前以上に引き上げたのである。
ロストスマッシュ一体に梃子摺ると見なすのなら、舐められたものだ。
異界より集めた数多の強敵と鎬を削り、鬼殺隊との因縁だけでは得られなかった経験を積ませ。
始祖をも超える正真正銘の怪物、星狩りとの死闘で限界を踏み越えた。
生死の狭間で得物を振るう感覚が、呼吸の精度を生前以上に引き上げたのである。
ロストスマッシュ一体に梃子摺ると見なすのなら、舐められたものだ。
「中々、やるやないか……。けど、連れのお嬢ちゃんはそうやあらへんみたいやで?」
傷口を押さえつつ、チラと後方を見やれば案の定。
魔法少女はシザーズロストスマッシュ相手に、追い詰められる一方。
意識をそちらへ割かれれば、大なり小なり付け入る隙は発生するだろう。
真剣勝負に拘る理由を自分達は持たない、ゲームマスターの命令通りに動くだけ。
魔法少女はシザーズロストスマッシュ相手に、追い詰められる一方。
意識をそちらへ割かれれば、大なり小なり付け入る隙は発生するだろう。
真剣勝負に拘る理由を自分達は持たない、ゲームマスターの命令通りに動くだけ。
「逆に問うが……」
なのに予想に反し、黒死牟は視線をゼブラロストスマッシュに固定したまま。
背後を見向きもせず、気を割く素振りが全くない。
捨て置いて問題無い、痛め付けられたとてどうっだっていいから。
とは異なる理由を波立たぬ、しかしほんの僅かに軽蔑を含ませた声で告げる。
背後を見向きもせず、気を割く素振りが全くない。
捨て置いて問題無い、痛め付けられたとてどうっだっていいから。
とは異なる理由を波立たぬ、しかしほんの僅かに軽蔑を含ませた声で告げる。
「あの娘が……今更この程度の児戯も退けられぬと思っているのか……?」
○
双刃を巧みに操り襲い来る刃の嵐は、一向に止む気配がない。
槍を振るって防ぎ、両断された傍から新しく生成。
魔力を代償に生み出される得物故、一本一本に拘らずともいい消耗品。
今手に持つのが何本目か、一々数えていられる状況な筈がなく。
槍を振るって防ぎ、両断された傍から新しく生成。
魔力を代償に生み出される得物故、一本一本に拘らずともいい消耗品。
今手に持つのが何本目か、一々数えていられる状況な筈がなく。
「そんな細い腕で振り回しても、似合わないわよ!縮こまってパパとママの手でも握ってるのね!」
「うぅ……っ!」
「うぅ……っ!」
両腕を同時に叩き付け、槍の粉砕と共に殴り飛ばす。
小柄な体が宙で不格好に泳ぎ、冷えた地面に身を投げ出すまで残り僅か。
魔法少女の打たれ強さを考えれば、致命的な傷にはならないと言えども。
あえて傷を増やす真似には出ず、どうにか受け身を取った。
小柄な体が宙で不格好に泳ぎ、冷えた地面に身を投げ出すまで残り僅か。
魔法少女の打たれ強さを考えれば、致命的な傷にはならないと言えども。
あえて傷を増やす真似には出ず、どうにか受け身を取った。
「ハァイ、残念」
尤も、シザーズロストスマッシュもとうに動き出した後。
立ち上がりかけたいろはの首と片腕、両方に刃を添える。
抜け出そうとしても無駄だ、こっちは動作一つで解体出来るのだから。
立ち上がりかけたいろはの首と片腕、両方に刃を添える。
抜け出そうとしても無駄だ、こっちは動作一つで解体出来るのだから。
「心配しなくても殺しはしないわよ?でもあなたって魔法少女だし、大事な体がバラバラになるくらいじゃ死なないんでしょう?」
「……っ」
「……っ」
何をする気か、懇切丁寧に説明されなくとも分かる。
顔が強張り肩を震わせる姿を、向こうはどう思ったか。
感情の真似事で嘲笑う、はたまた命令に従う以上の何も感じず実行に出る。
どちらが正しいかを、いろはが知る機会は訪れない。
片手の指で数えるだけの時間も掛からず、アスファルトを鮮やかな赤が汚し。
胴体と別れを告げ、四肢が転がるのだろう。
顔が強張り肩を震わせる姿を、向こうはどう思ったか。
感情の真似事で嘲笑う、はたまた命令に従う以上の何も感じず実行に出る。
どちらが正しいかを、いろはが知る機会は訪れない。
片手の指で数えるだけの時間も掛からず、アスファルトを鮮やかな赤が汚し。
胴体と別れを告げ、四肢が転がるのだろう。
「魔法少女ちゃんが泣き叫べば、あっちの鬼も少しは顔色を変えるかもね?」
返答を待つ事なく、腕に添えた刃で挟み込む。
白いケープもシースルーのインナーも、紙切れ同然。
骨まで裁断し、欠損の激痛に悶えるプレイヤーの完成。
白いケープもシースルーのインナーも、紙切れ同然。
骨まで裁断し、欠損の激痛に悶えるプレイヤーの完成。
そんな光景は、いろはが魔力を迸らせて。
切断される以上の速さで危機を脱し、現実にはならない。
切断される以上の速さで危機を脱し、現実にはならない。
「なにっ!?」
手応えの無さと、何より視界から消え失せた標的に。
自身の失態を悟るも、戦闘はまだ続いている。
気配を察知し弾かれたように顔を動かすと、自ら宙へ身を躍らせたいろはが映った。
魔力を籠めた光矢を放つが、こっちの反応を侮ってもらっては困る。
自身の失態を悟るも、戦闘はまだ続いている。
気配を察知し弾かれたように顔を動かすと、自ら宙へ身を躍らせたいろはが映った。
魔力を籠めた光矢を放つが、こっちの反応を侮ってもらっては困る。
「所詮は――っ!?」
叩き落とし、無駄な抵抗と言い掛けた口を噤み凍り付く。
砕けた光矢が視界を遮った瞬間、無手であった筈の右手が跳ね上がった。
槍ではなくもっと短い、縦笛のような剣の柄。
マズいと背筋が粟立つも手遅れだ、これまでの攻防で敵の装備はクロスボウと槍の二つ。
そう考えた前提がここに来て、後れを生じさせた。
砕けた光矢が視界を遮った瞬間、無手であった筈の右手が跳ね上がった。
槍ではなくもっと短い、縦笛のような剣の柄。
マズいと背筋が粟立つも手遅れだ、これまでの攻防で敵の装備はクロスボウと槍の二つ。
そう考えた前提がここに来て、後れを生じさせた。
「ぎぃっ!?」
突き付けた武器、ジャコーダーが真紅の刀身を射出。
一直線に向かった先には、シザーズロストスマッシュの顔面。
人間で言えば鼻に当たるだろう箇所へ、突き刺さった。
抜群の耐久性を持つと言っても、顔付近は他に比べて脆い。
まして高純度の魔皇石が生み出すブレードだ、直撃すればタダでは済むまい。
一直線に向かった先には、シザーズロストスマッシュの顔面。
人間で言えば鼻に当たるだろう箇所へ、突き刺さった。
抜群の耐久性を持つと言っても、顔付近は他に比べて脆い。
まして高純度の魔皇石が生み出すブレードだ、直撃すればタダでは済むまい。
(上手くいった……)
ケープを靡かせて着地し、考え付いた案が失敗で終わらず密かに胸を撫で下ろす。
遊びへ興じるような言動と、見下す意図を隠さない態度。
それらを見ていれば、自分が防戦一方に追いやられ。
尚且つトドメを刺されそうになった時、必ず油断が生まれる筈。
デェムシュやマサツグ様など、自分以上の力を持つ参加者がそうだったように。
敵を下へ見る事を捨てられぬ者と、戦った経験が活きたと言えよう。
大した抵抗も出来ず、自分の勝ちは確定。
そう僅かでも気を緩めたら、後はこっちのものだ。
遊びへ興じるような言動と、見下す意図を隠さない態度。
それらを見ていれば、自分が防戦一方に追いやられ。
尚且つトドメを刺されそうになった時、必ず油断が生まれる筈。
デェムシュやマサツグ様など、自分以上の力を持つ参加者がそうだったように。
敵を下へ見る事を捨てられぬ者と、戦った経験が活きたと言えよう。
大した抵抗も出来ず、自分の勝ちは確定。
そう僅かでも気を緩めたら、後はこっちのものだ。
やちよの魔力を受け継いだ影響で使えるようになった、水魔法で瞬間的に敏捷力を強化。
切断を免れるや魔力を籠めた矢を放つ、それを防がれるのも承知で。
得物は間に合ってると黒死牟から譲渡され、ここまで隠し持ち存在を気取られなかった武器。
ジャコーダーを本命に持って行き、最もダメージを与えられるだろう箇所へ突き刺した。
切断を免れるや魔力を籠めた矢を放つ、それを防がれるのも承知で。
得物は間に合ってると黒死牟から譲渡され、ここまで隠し持ち存在を気取られなかった武器。
ジャコーダーを本命に持って行き、最もダメージを与えられるだろう箇所へ突き刺した。
「やちよさん……力を貸してください……!」
手繰り寄せた流れを、敵に返す訳にはいかない。
槍を生成し、まるで祈りを籠めるかのように魔力を付与。
ともすれば得物が自壊しかねない程に、密度を高める。
自分とやちよ、二人分の力を宿す必殺の魔槍が完成。
投擲の構えを取り、見据える先は勿論シザーズロストスマッシュ。
顔面を押さえ悶えていたが、膨大な力の収束現象は無視出来ない。
投げ付けられた槍が自身を正確に狙い、対処に動かねば貫通は確実だ。
槍を生成し、まるで祈りを籠めるかのように魔力を付与。
ともすれば得物が自壊しかねない程に、密度を高める。
自分とやちよ、二人分の力を宿す必殺の魔槍が完成。
投擲の構えを取り、見据える先は勿論シザーズロストスマッシュ。
顔面を押さえ悶えていたが、膨大な力の収束現象は無視出来ない。
投げ付けられた槍が自身を正確に狙い、対処に動かねば貫通は確実だ。
「このガキ……!」
両腕の装備とは別に、鋏を膨大な数作り出す。
射出に使った時と違い、全てを束ねて盾として使う。
一枚二枚、三枚四枚と重ねた防護が貫かれていく。
だが全部を破られる訳にはいかない、ブラッド族のエネルギーを流し込む。
どうにか押し留め、
射出に使った時と違い、全てを束ねて盾として使う。
一枚二枚、三枚四枚と重ねた防護が貫かれていく。
だが全部を破られる訳にはいかない、ブラッド族のエネルギーを流し込む。
どうにか押し留め、
「な、ぁっ!?」
抵抗が無駄と言うように、魔槍が突き進む。
槍の柄尻へいろはがクロスボウを連射、一点集中で押し出したのだ。
貫通力を上げる装備、ストライクマークの効果もあって最早止める術は無し。
最後の一枚を打ち砕き、黒々としたボディへ突き刺さる。
人ならざる肉体に穂先が侵入、内部を散々喰い破って後方へ顔を出す。
槍の柄尻へいろはがクロスボウを連射、一点集中で押し出したのだ。
貫通力を上げる装備、ストライクマークの効果もあって最早止める術は無し。
最後の一枚を打ち砕き、黒々としたボディへ突き刺さる。
人ならざる肉体に穂先が侵入、内部を散々喰い破って後方へ顔を出す。
「ま、だよ……!こんなものでぇ……!」
荒れ狂う魔力に細胞崩壊を引き起こすも、終わってたまるかと意識を繋ぎ止める。
腕はまだ動く、自分の力だって使えない訳じゃない。
小癪な真似に出た魔法少女を、調子付かせたままで終われるものか。
腕はまだ動く、自分の力だって使えない訳じゃない。
小癪な真似に出た魔法少女を、調子付かせたままで終われるものか。
「……これで、終わりです」
ブラッド族の最後の抵抗を、いろはの一言が完全否定。
手放したとはいえ、自身の魔力が元となる以上。
魔槍は未だ制御下にあり、王手(チェックメイト)を掛ける。
手放したとはいえ、自身の魔力が元となる以上。
魔槍は未だ制御下にあり、王手(チェックメイト)を掛ける。
「ぎゃばっ」
エボルト相手にも使った、遠隔の魔力操作。
槍が爆散し、刺さったままのシザーズロストスマッシュ諸共消し飛ばす。
細胞の一欠片も後には残らず、煙が晴れれば焦げた地面にボトルが転がるだけ。
オリジナル同様、人間を侮ったが故の敗北で幕を閉じた。
槍が爆散し、刺さったままのシザーズロストスマッシュ諸共消し飛ばす。
細胞の一欠片も後には残らず、煙が晴れれば焦げた地面にボトルが転がるだけ。
オリジナル同様、人間を侮ったが故の敗北で幕を閉じた。
「なんやて……!?阿保な!?俺らはモノホンと同じレベルで戦えるんやぞ!?」
同じ命令を下された相方の末路に、もう片方のブラッド族は動揺を隠せない。
殺害不可の縛りがあるにしろ、ロストスマッシュの強さは過去に仮面ライダー達を相手取った時と同じ。
ライダーシステムを用いず、ハザードレベルの上昇も起きない小娘に負けるなど。
如何に正規プレイヤーとはいえ、俄かには受け入れ難い。
殺害不可の縛りがあるにしろ、ロストスマッシュの強さは過去に仮面ライダー達を相手取った時と同じ。
ライダーシステムを用いず、ハザードレベルの上昇も起きない小娘に負けるなど。
如何に正規プレイヤーとはいえ、俄かには受け入れ難い。
「……」
慌てふためくゼブラロストスマッシュを、冷え切った六眼が射抜く。
上弦に並ぶ身体機能を持たず、戦闘技術が完成されてるとは言えまい。
されど屠り合いでいろはの戦う様を、最も近くで見て来たのが黒死牟だ。
力で及ばぬ相手に幾度となく食らい付き、足りぬ分は持ち得る手札と工夫を重ねてここまで生き延びた。
上弦に並ぶ身体機能を持たず、戦闘技術が完成されてるとは言えまい。
されど屠り合いでいろはの戦う様を、最も近くで見て来たのが黒死牟だ。
力で及ばぬ相手に幾度となく食らい付き、足りぬ分は持ち得る手札と工夫を重ねてここまで生き延びた。
脆くはあっても弱者に非ず、神の戯れ程度に今更足を取られる娘じゃあない。
信頼だとか、人間達が好む陳腐な理由ではない。
自分の目で見た事実を、そのまま受け入れただけのこと。
信頼だとか、人間達が好む陳腐な理由ではない。
自分の目で見た事実を、そのまま受け入れただけのこと。
そして黒死牟もまた、茶番(サブイベント)を長続きさせはしない。
「っのクソボケがぁぁぁーーーーーーーーっ!!!」
自暴自棄を引き起こしたか、NPCなりの意地があったかは定かでなく。
地球外のエネルギーを最大限に引き出し、頭部へ集中し付与。
ゼブラというより、バッファローを思わせる迫力で突撃。
平時でさえ拳や蹴り以上の破壊力を持つ頭突きは、正に一撃必殺の脅威へ昇華。
重機の激突すら生温い衝撃が、逃れる術は無しと迫り来る。
地球外のエネルギーを最大限に引き出し、頭部へ集中し付与。
ゼブラというより、バッファローを思わせる迫力で突撃。
平時でさえ拳や蹴り以上の破壊力を持つ頭突きは、正に一撃必殺の脅威へ昇華。
重機の激突すら生温い衝撃が、逃れる術は無しと迫り来る。
――月の呼吸 参ノ型 厭忌月・銷り
問題無い、向かって来るなら望み通りに相手をするまで。
魔皇剣は抜かず、妖刀を構え呼吸を練り上げる。
沸騰する血液は正に、灼熱の大海の如し。
己が往く道を遮れると、思い上がるなど片腹痛し。
魔皇剣は抜かず、妖刀を構え呼吸を練り上げる。
沸騰する血液は正に、灼熱の大海の如し。
己が往く道を遮れると、思い上がるなど片腹痛し。
拮抗は数秒と続かない、重なる二連の月輪が鮮血の輝きを打ち消す。
突き出した頭部は勿論、全身を斬撃波が削り取る。
陸に上がった魚のように跳ね、逃れんとのたうち回るも無駄だ。
突き出した頭部は勿論、全身を斬撃波が削り取る。
陸に上がった魚のように跳ね、逃れんとのたうち回るも無駄だ。
「ががががごごごがががぎゃぎぎゃがが――――っ!!!???!」
満ちては欠ける月と同じく、膨張と縮小を繰り返す無数の半月。
不規則に配置された悪辣な罠が、獲物の逃走を許さない。
怪魚の飼育槽へ放られた餌のように、余す事無く喰い荒らされる。
悲鳴すらも月に飲み込まれ、乾いた音を立てロストボトルが転がった。
不規則に配置された悪辣な罠が、獲物の逃走を許さない。
怪魚の飼育槽へ放られた餌のように、余す事無く喰い荒らされる。
悲鳴すらも月に飲み込まれ、乾いた音を立てロストボトルが転がった。
戦利品を拾い上げると、視界の端に映るは同じくボトルを回収した少女。
鬼の胸中に、勝利へ酔う感覚は爪の先程もなく。
こちらへ駆け寄るいろはを、ただじっと眺めていた。
鬼の胸中に、勝利へ酔う感覚は爪の先程もなく。
こちらへ駆け寄るいろはを、ただじっと眺めていた。