百雲龍之介(以下、もぐも)は男でも女でもない。
世間的には『男の娘』と呼ばれる存在に限りなく近いのだが、その呼び方を本人は好まない。
もぐもの性自認は男性でも女性でもない──Xジェンダーというものだ。
世間的には『男の娘』と呼ばれる存在に限りなく近いのだが、その呼び方を本人は好まない。
もぐもの性自認は男性でも女性でもない──Xジェンダーというものだ。
非常にややこしい性自認。更に見た目がどれだけ可愛くても『男』という性別だけで何度も、もぐもはからかわれてきた。
ゆえにもぐもは自分を理解してくれる友達を求め、短冊に願う。
やがて願いは叶い、もぐもの周りには男の身でありながら悩みを持つ様々な友人が出来たのだが──いつの間にかよくわからない殺し合いに巻き込まれていた。
「哲くん……」
もぐもは自分が好意を向ける男の名を呼ぶが、返事はない。
めいも、鈴も、てんちゃん、琴ちゃんも、さっちゃんも居ない。
めいも、鈴も、てんちゃん、琴ちゃんも、さっちゃんも居ない。
完全に孤立した状況。否が応でも先程の光景を……少女が情けなく惨めに死ぬ姿を思い出してしまう。
もぐもは性自認が他とは違うだけの一般人だ。あんなものに対する耐性なんて一切ない
もぐもは性自認が他とは違うだけの一般人だ。あんなものに対する耐性なんて一切ない
「やだ……」
あんな姿を晒したくない。
「ぼくはあんなふうになりたくない……。めい達だって……」
自分だけじゃなくて、女の子になりたがってるめいのこともあんな目に遭わせたくない。
めいだけじゃない。鈴も、てんちゃんも、琴ちゃんも、さっちゃんも……。
めいだけじゃない。鈴も、てんちゃんも、琴ちゃんも、さっちゃんも……。
「ぼく達のことを勝手に巻き込むな!!」
もぐもの感情が爆発する
理不尽に対して嘆き、怒り、哀しみ……様々な感情がごちゃごちゃに入り交じる。
理不尽に対して嘆き、怒り、哀しみ……様々な感情がごちゃごちゃに入り交じる。
「酷いよなー、やっぱ」
いきなり少年の声が聞こえて、もぐもの肩がピクリと跳ね上がる。
緊張やストレスによってもぐもが気付いていなかっただけで、この場にはもう1人参加者が存在したのだ。
緊張やストレスによってもぐもが気付いていなかっただけで、この場にはもう1人参加者が存在したのだ。
心臓の鼓動がバクバクと早まる。これは命懸けの殺し合いで、なんとかしなければ生き残れない。
脳裏に少女の惨めな姿が思い浮かぶ。
脳裏に少女の惨めな姿が思い浮かぶ。
──僕たち、友達になれるかもね
不思議とめいの言葉が思い浮かぶ。
めいがあんなふうにされる姿が……思い浮かんだ
めいがあんなふうにされる姿が……思い浮かんだ
──君がわがまま言ってくれたおかげで……。僕……ううん、私もわがまま言えちゃった。ありがと
やだ。
めいをあんな目に遭わせたくない。
めいは……ぼく達は見世物なんかじゃない……っ
めいをあんな目に遭わせたくない。
めいは……ぼく達は見世物なんかじゃない……っ
────なんとかしなきゃ……!
もぐもは緊張して震える手でデイバックから何かを取り出そうとして……少年は両手を上にあげた。
「一応言うけど……俺、これでも殺し合いをする気はありませんよ?」
戦意がないと語る少年を、もぐもは注意深く見つめる。
じーっと見つめるもぐもに対して少し照れ臭そうな表情をした後、少年はニッコリと笑った
じーっと見つめるもぐもに対して少し照れ臭そうな表情をした後、少年はニッコリと笑った
「こんな可愛い子を狙うなんて、キリトはしないしなw」
黒の剣士キリト──それは少年にとって憧れの存在だ
彼に憧れ過ぎたがゆえに『自分はキリトに似てる』という趣旨の痛々しいツイート……後にイキリト構文と呼ばれるモノを投下してしまったが、それは純粋に憧れていたがゆえの行為でもある。
今やイキリトとして名を馳せてしまった彼は此度の殺し合いでも『イキリト』という名前で参加させられていた。
彼に憧れ過ぎたがゆえに『自分はキリトに似てる』という趣旨の痛々しいツイート……後にイキリト構文と呼ばれるモノを投下してしまったが、それは純粋に憧れていたがゆえの行為でもある。
今やイキリトとして名を馳せてしまった彼は此度の殺し合いでも『イキリト』という名前で参加させられていた。
イキリトは妙に痛々しい部分さえ除けばただの一般人だ。しかし彼は決してこの状況に屈していない。
そもそもイキリトは元々がポジティブな性格である。ポジティブであるがゆえに憧れのキリトが自分と似ているという痛々しいツイートを恥ずかしげもなく投下出来た
悪く言えばイキリに見えるかもしれないが、良く言えば非常にポジティブなのだ。
そもそもイキリトは元々がポジティブな性格である。ポジティブであるがゆえに憧れのキリトが自分と似ているという痛々しいツイートを恥ずかしげもなく投下出来た
悪く言えばイキリに見えるかもしれないが、良く言えば非常にポジティブなのだ。
ちなみにあのツイート自体は妄想が多大に含まれているのだが、それを披露出来てしまうのはもうポジティブとしか言えないだろう。
周りからキリトに似てると言われるのは事実だが、ただの皮肉である。だがイキリトはポジティブに考えることでそのイジメを耐え切っていた
周りからキリトに似てると言われるのは事実だが、ただの皮肉である。だがイキリトはポジティブに考えることでそのイジメを耐え切っていた
自分のツイートがイキリト構文としてネットに根付いたことも、色々と複雑な気分ではあるがみんなが楽しいならそれはそれで良し!としている
だから弁明したり、怒ることもなくイキリト構文を放置していた
だから弁明したり、怒ることもなくイキリト構文を放置していた
まさか自分がイキリトとして殺し合いに参加するという事態になるとは思わなかったし、見せしめの少女の姿も脳裏に焼き付いている。
それでもなんだか不安そうにしている少女(?)を見て、持ち前のポジティブさで元気付けようとした
それでもなんだか不安そうにしている少女(?)を見て、持ち前のポジティブさで元気付けようとした
ちなみにもぐもは少女としては高い声ではなく低い声で、少年のような声にも聞こえるのでもぐもが普通の少女でないことはイキリトもなんとなく察していた。胸の平ペったさも、貧乳というには明らかに無理がある。骨格だって身長が低いだけで、女の子のソレではない。
だが女の子の格好をしている可愛い子であることに違いはなく、偏見の目で見るつもりはない。イキリトはそこら辺、DQN以外には差別意識がなくピュアなのだ
「……ぼくのこと、女の子だとおもってる?」
何か誤解されているように感じたもぐもがイキリトに質問を投げ掛ける
「男の娘かなー、やっぱw」
イキリトの回答は堂々としたものだったが、もぐもの表情が少しだけ暗くなる。
男の娘という呼び方をもぐもは嫌う。もぐもは男でも女でもないのだから。
それでもわざわざ女の子だと思っているか聞いたのは、なんだか誤解されていると感じたから。
性自認が他と全く違うというだけあって、もぐもの心は複雑だ。
男の娘という呼び方をもぐもは嫌う。もぐもは男でも女でもないのだから。
それでもわざわざ女の子だと思っているか聞いたのは、なんだか誤解されていると感じたから。
性自認が他と全く違うというだけあって、もぐもの心は複雑だ。
「男の娘って呼び方、嫌だったか?」
「うん。ぼくは男でも女でもないから……」
「うん。ぼくは男でも女でもないから……」
男女どちらにも該当しない複雑な性自認。
それがもぐもの抱えている悩みであり、普通の人にはなかなか理解されない部分でもある。
イキリトは少し考えて……それでも励まし方がイマイチ思い浮かばないから自分の言葉でもぐもに気持ちを伝えた
それがもぐもの抱えている悩みであり、普通の人にはなかなか理解されない部分でもある。
イキリトは少し考えて……それでも励まし方がイマイチ思い浮かばないから自分の言葉でもぐもに気持ちを伝えた
「……誰がなんて言っても、お前はお前だしなw」
性別なんて関係ない。目の前の可愛い子が男でも女でもないというのなら、ありのままを受け入れるだけだ。
「……ぼくのこと、男や女って決めつけないの?」
初対面の相手。それも今までそういう知り合いすらいなさそうな少年に予想外の事を言われて、もぐもは困惑気味に質問した。まさか自分のことをこんなにスムーズに受け入れてくれる人が、この殺し合いの場に存在するとは思わなかったから。
「性別なんてどうでもいいだろww」
イキリトはオタクだから男の娘という存在には慣れている。もぐものような性自認の人は初めて見たが……どんな性別だろうが関係ない。
というかイキリトとしても、もぐもの気持ちはなんとなくわかる
今ではここまでポジティブになれた彼だが、昔は「お前キリトみたいだなw」と馬鹿にされるイジメを受けていた。
今ではここまでポジティブになれた彼だが、昔は「お前キリトみたいだなw」と馬鹿にされるイジメを受けていた。
だからもぐもが『男の娘』と呼ばれて表情が少しだけ暗くなった時……その姿がかつての自分と重なった。
「───俺は俺で、お前はお前だ」
だからその一言だけは戯けることなく、ハッキリとした声で口にする。
イキリトとして参加した彼だが、自分が自分で在ることは捨て去っていない。……イキリトは周りからネタにされてばかりのスラングと化しているが、それでも彼は彼だ。どれだけ馬鹿にされようが、イキリトにとってはそれこそが自分なのだ。
イキリトとして参加した彼だが、自分が自分で在ることは捨て去っていない。……イキリトは周りからネタにされてばかりのスラングと化しているが、それでも彼は彼だ。どれだけ馬鹿にされようが、イキリトにとってはそれこそが自分なのだ。
───私が私でいることに許可なんていらなくない?ねっ、もぐも
「うん……」
めい達と問題を乗り越えた時のことを思い出して、もぐもの表情が柔らかくなる。
イキリトは性別なんて気にせず、もぐもという人間自体を見ている……それは殺し合いの場には似つかわしくないくらい、もぐもにとって恵まれた出会いだった。
イキリトは性別なんて気にせず、もぐもという人間自体を見ている……それは殺し合いの場には似つかわしくないくらい、もぐもにとって恵まれた出会いだった。
「そういえばまだお互いの名前を言ってなかったなw 俺は……」
どう名乗ろうか暫し迷うが、こんなふうに呼ばれたのだからやはりこれしかないだろうとイキリトは笑う。
「イキリトかなー、やっぱw」
わざわざ自分がキリトの姿で呼ばれた理由は、そういうことだろう。
この殺し合いを観戦している『客人』を笑わせるために彼はイキリトとして参加することになった
この殺し合いを観戦している『客人』を笑わせるために彼はイキリトとして参加することになった
「イキリトくんはそれが本名なの?」
「うーん……本名じゃないけど、これも立派な俺の名前だなw」
「うーん……本名じゃないけど、これも立派な俺の名前だなw」
本名は別にあるが、イキリトもまた彼の名前。
メイドカフェのみんなが本名じゃなくても立派な名前を名乗っているように、イキリトもそうしている。もぐもはそう認識した
メイドカフェのみんなが本名じゃなくても立派な名前を名乗っているように、イキリトもそうしている。もぐもはそう認識した
「ぼくはもぐもだよ。よろしくね、イキリトくん」
その後デイバックを見たらエリュシデータが支給されていることに気付き、イキリトは狂喜乱舞したという
【百雲龍之介@不可解なぼくのすべてを】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生きて帰りたい
1:めい、鈴、てんちゃん、琴ちゃん、さっちゃんが心配。哲くんは男だから大丈夫だよね
2:イキリトくんを信じて一緒に行動する
[備考]
参戦時期はめいと和解して友達になった後〜哲と付き合う前です
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生きて帰りたい
1:めい、鈴、てんちゃん、琴ちゃん、さっちゃんが心配。哲くんは男だから大丈夫だよね
2:イキリトくんを信じて一緒に行動する
[備考]
参戦時期はめいと和解して友達になった後〜哲と付き合う前です
【イキリト@Twitter】
[状態]:健康
[装備]:エリュシデータ@ソードアート・オンライン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:対主催かなーやっぱw
1:もぐもを守る。昔の俺と少し似てるしなw
[備考]
キリトの姿で参戦しています。キリトのソードスキルが使えますが、本物のキリトより劣ります
この姿がアバターか生身かは後続の書き手にお任せします
[状態]:健康
[装備]:エリュシデータ@ソードアート・オンライン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:対主催かなーやっぱw
1:もぐもを守る。昔の俺と少し似てるしなw
[備考]
キリトの姿で参戦しています。キリトのソードスキルが使えますが、本物のキリトより劣ります
この姿がアバターか生身かは後続の書き手にお任せします
【エリュシデータ@ソードアート・オンライン】
作中初期よりキリトが所持している片手剣。
アインクラッド第50層のボスからラストアタックボーナスで入手した魔剣クラスの代物であり、以来キリトの愛剣として活躍している。鍛冶屋のリズベットもその桁外れの性能を認めた一振りである。
作中初期よりキリトが所持している片手剣。
アインクラッド第50層のボスからラストアタックボーナスで入手した魔剣クラスの代物であり、以来キリトの愛剣として活躍している。鍛冶屋のリズベットもその桁外れの性能を認めた一振りである。