私は閃刀姫。
あの人も閃刀姫。
互いの信念を胸に何度も斬り合い、刃を通して通じ合った仲だけれど……きっとこの恋は、叶わない
あの人も閃刀姫。
互いの信念を胸に何度も斬り合い、刃を通して通じ合った仲だけれど……きっとこの恋は、叶わない
○
「惨い……」
ルール説明のために醜態を晒しながら逝った少女。まるで見せしめのような哀れな彼女に対して閃刀姫ロゼは同情する。
おそらく彼女には抵抗する手段があった。あの状況下でも途中まで反抗的な態度を取れていたのは武力か、或いは確固たる信念があったに違いない。
だがそんな力や意志すらも感度三千兆倍という快楽の前に為す術なく崩れ去った。
もしも彼女が自分のような戦士であったのなら……きっとその屈辱は、死んでも死に切れぬ程に辛いものだろう。
もしも彼女が自分のような戦士であったのなら……きっとその屈辱は、死んでも死に切れぬ程に辛いものだろう。
「あなたが何者なのかは、私にはわからない。所詮は赤の他人だから……」
ロゼは見せしめの少女について何も知らない。
彼女がどんな人生を歩み、どんな性格で、どんな人物なのか。そんなこと赤の他人であるロゼが知るわけもない。
彼女がどんな人生を歩み、どんな性格で、どんな人物なのか。そんなこと赤の他人であるロゼが知るわけもない。
「それでも一つだけわかることがある」
それは彼女が最期に感じたであろう気持ち。『屈辱』だ。
「一切の抵抗も許されず、快楽の沼に堕とされる。戦士としてこれ以上の地獄はないと思う……」
もしも自分があんな目に遭ったら……きっとその屈辱に耐え切れない。
あの死に様は戦士を侮辱しているとしか言えない。反抗の意思すら快楽の波が連れ攫ったあの最期は哀れという他ない。
あの死に様は戦士を侮辱しているとしか言えない。反抗の意思すら快楽の波が連れ攫ったあの最期は哀れという他ない。
ならば今のロゼには何が出来る?
死者の蘇生?
───生憎とそんな技術を私は知らない
死者の蘇生?
───生憎とそんな技術を私は知らない
優勝して見せしめの少女を復活させる?
───論外。あの少女は哀れだけれど、そのために誰かを犠牲にすることは剣士としての誇りに傷が付く
───論外。あの少女は哀れだけれど、そのために誰かを犠牲にすることは剣士としての誇りに傷が付く
「私に出来る事は、ただ1つ」
己に支給された剣を見据える。
哀れな末路を迎えた少女のために、剣士に出来ることはたった1つしかない。
哀れな末路を迎えた少女のために、剣士に出来ることはたった1つしかない。
「あなたの意志は、私が受け継ぐ」
───それだけが剣士の私に出来る最善だから。
ロゼには戦うしか能がない。
ただひたすらに訓練し、好敵手と戦いを繰り広げて生きてきた。
その人生を無駄とは思わないし、恥じるつもりもない。それが閃刀姫ロゼという少女だ。
ただひたすらに訓練し、好敵手と戦いを繰り広げて生きてきた。
その人生を無駄とは思わないし、恥じるつもりもない。それが閃刀姫ロゼという少女だ。
だから彼女は迷いなく見知らぬ少女の意志を継ぐという選択をした。
死体は見慣れている。何度もこの目で、様々な死に様を見届けてきた。
死体は見慣れている。何度もこの目で、様々な死に様を見届けてきた。
仲間が死ぬ度に意志を受け継ぎ、技術を継承し、ただひたすらに戦い続けた。
それはこの殺し合いでも変わらない。色々と特殊な状況のようだが、主催者を斬れば済む話。
それが閃刀姫という生き方なのだから。
「レイ……あなたもきっと、そうするはず」
ロゼは好敵手のレイを誰よりも信じている。
もしも彼女も参加しているならば、自分と同じく閃刀姫として殺し合いの破綻を狙うことだろう。
もしも彼女も参加しているならば、自分と同じく閃刀姫として殺し合いの破綻を狙うことだろう。
つまりこれは好敵手と共闘出来る数少ない機会でもある。
本来ならばこの状況でこんな感情は間違っているのかもしれないが……レイと共に戦えることは、少しだけ嬉しい。
本来ならばこの状況でこんな感情は間違っているのかもしれないが……レイと共に戦えることは、少しだけ嬉しい。
「私は何を……っ!」
自らの頬をパンパン、と2回程叩く。僅かに緩んでいた顔が再び引き締まった。
ロゼはレイを誰よりも愛している。
好敵手として何度も刃を交えているうちに、彼女が悪人でないことは理解出来た。
好敵手として何度も刃を交えているうちに、彼女が悪人でないことは理解出来た。
そもそも彼女が行っているのは戦争のようなものだ。互いの国を賭けて戦っているから、どちらも譲れないが……片方だけが悪であるなんて、そんなことは有り得ない。
それは正義と正義。信念と信念のぶつかり合いでしかないのだから。
だから何度も互いの想いをぶつけ合った結果として、いつの間にかロゼはレイに惹かれていた。
───好敵手に対して恋愛感情が芽生えるなんて異常だけれど、それでも私は彼女が好き
最初は悩んだ。うつ病になるほど、悩み果てた。
私とレイは敵同士。どちらかが死ぬまで、この戦争は終わらない。
だから私がこんな感情を覚えるなんて、許されないのに……それでもレイが気になる
私とレイは敵同士。どちらかが死ぬまで、この戦争は終わらない。
だから私がこんな感情を覚えるなんて、許されないのに……それでもレイが気になる
そもそも私は女性。レイと同じ性別。
女性同士が結ばれるなんて、そんなことは有り得ない。同性愛者なんて異端でしかないはずだから。
女性同士が結ばれるなんて、そんなことは有り得ない。同性愛者なんて異端でしかないはずだから。
異常な気持ちを整理しようとして、それでもなかなか上手く出来なくて。
剣の扱いなら慣れているのに、心の扱いは思った以上に難しい……。
剣の扱いなら慣れているのに、心の扱いは思った以上に難しい……。
いつもならこんなにも迷わないのに、恋愛感情というものは予想以上に苦しいものだった。
メンタルに支障が出て、寝不足が続くほどに悩んだ。それでも私はレイを諦め切れなかった。
だから私はこの気持ちを捨て去ることを諦めて、ずっと片想いする道を選んだ。
いずれどちらかが果てるまで、この戦争は終わらないのに。私達は戦うしかないのに……。
いずれどちらかが果てるまで、この戦争は終わらないのに。私達は戦うしかないのに……。
それでも私は、レイが好き。
あの少女はそういう意味でも哀れだったと思う。
もしも想い人が存在したならば、あんな末路は見せたくないだろうから。
戦士としても、女性としてもあの少女は尊厳を破壊された……。
あの少女はそういう意味でも哀れだったと思う。
もしも想い人が存在したならば、あんな末路は見せたくないだろうから。
戦士としても、女性としてもあの少女は尊厳を破壊された……。
その想いを。主催者に反抗しようとした気高き意志を継ぐことは私の役目。
○
女の子同士でこんなのはおかしいってわかっいてる……。
それでも私はココアさんに好きだって言いたい。
ココアさんの笑顔はいつも少しだけ眩しくて、とっても暖かくて……。
それでも嫌われたくないから……引かれたくないから……私は何も言い出せない。
それでも私はココアさんに好きだって言いたい。
ココアさんの笑顔はいつも少しだけ眩しくて、とっても暖かくて……。
それでも嫌われたくないから……引かれたくないから……私は何も言い出せない。
○
片想いの閃刀姫が誓いを立てているのと同時刻。
彼女と同じく、同性の相手に淡い恋心を抱く少女が居た。
彼女と同じく、同性の相手に淡い恋心を抱く少女が居た。
「これはいったい何が……」
少女の名は香風智乃(以下、チノと表記)。
チノは何の力もない普通の少女だ。ティッピーという喋る不思議なうさぎこそ存在するが、それ以外で特筆すべき点が特にないような平和な世界に住んでいる。
チノは何の力もない普通の少女だ。ティッピーという喋る不思議なうさぎこそ存在するが、それ以外で特筆すべき点が特にないような平和な世界に住んでいる。
だがこのチノは数ある可能性の世界(パラレルワールド)から呼び出された存在であり、普通の香風智乃とは少しばかり違う。
彼女はココアのことが恋愛的な意味で大好きだ。
それはココアのことを想像して自慰してしまう程の愛。そして好きだからこそ、してしまった後に罪悪感で涙を流してしまう。
それはココアのことを想像して自慰してしまう程の愛。そして好きだからこそ、してしまった後に罪悪感で涙を流してしまう。
他のことで頭をいっぱいにして、なんとかココアへの想いを消そうともした。
だがそんな簡単に愛は消えない。消せるわけがない。
だがそんな簡単に愛は消えない。消せるわけがない。
本当はココアに気持ちを伝えたいと思っているが、女の子同士の恋愛がおかしいという常識を知っているから伝えられない。
なによりこの世界のココアには兄がいて、彼と性交している声を聞いてしまった。これもまた、大きな原因だろう。
なによりこの世界のココアには兄がいて、彼と性交している声を聞いてしまった。これもまた、大きな原因だろう。
実際はココアもチノのことが好きで、兄妹のエッチはコミュニケーションという謎の刷り込みをされた結果なのだがそんなこと今のチノは知らない。
大好きなココアに嫌われたくないから。引かれたくないから、気持ちを隠してきた。
ずっと彼女の隣に居たい。特別になりたい。それがチノの願いだ。
ずっと彼女の隣に居たい。特別になりたい。それがチノの願いだ。
それなのにチノはココアの隣から離れてしまった。本来ならばそれは一時的な家出で終わり、迎えに来たココアと結ばれるはずだった。
しかし運の悪いことに、チノは家出直後。ココアが迎えに来るより前に、このバトルロワイアルに参加させられてしまった。
しかし運の悪いことに、チノは家出直後。ココアが迎えに来るより前に、このバトルロワイアルに参加させられてしまった。
チノには男の話す言葉の意味が理解出来なかった。
ずっと日常を謳歌していた人間が、非日常に適応することはあまりにも難しい。
ずっと日常を謳歌していた人間が、非日常に適応することはあまりにも難しい。
なにより同性愛に悩み、好きな相手のことばかり考えていた少女には男の言葉があまり頭に入ってこない。
それ以上にこのままココアとはなればなれになることをチノは危惧して、頭がいっぱいだった。
それ以上にこのままココアとはなればなれになることをチノは危惧して、頭がいっぱいだった。
だが見せしめにされた少女が尊厳すら破壊されたような死を迎えたその瞬間だけは、よく覚えている。
恋する乙女にとってあの死に様は悲惨極まりない。
好きでもない相手にあんなふうに弄ばれ、恋心を踏み躙られるような真似だけは絶対にされたくない。当たり前のことだ。
好きでもない相手にあんなふうに弄ばれ、恋心を踏み躙られるような真似だけは絶対にされたくない。当たり前のことだ。
「このままじゃ、ココアさんが……」
なによりもチノが気掛かりだったのはココアの存在だった。
もしもココアが巻き込まれていたら、あの少女と同じ目に遭う可能性がある。
それだけは嫌だ。大好きな人を、陽だまりを破壊されたくなんてないから。
もしもココアが巻き込まれていたら、あの少女と同じ目に遭う可能性がある。
それだけは嫌だ。大好きな人を、陽だまりを破壊されたくなんてないから。
そんな最悪の事態を防ぐには、この殺し合いを止めるしかない。
チノは普通の一般人だ。特殊な力や戦うための技術なんて何もないけど、それでも大好きなココアのために戦うしか道はない。
チノは普通の一般人だ。特殊な力や戦うための技術なんて何もないけど、それでも大好きなココアのために戦うしか道はない。
震える手で必死にデイバックから何かを取り出して……。
「そのココアというのは、あなたの大切な人?」
黒の閃刀姫が現れた。
○
見知らぬ少女に声を掛けられたチノはどうしようか戸惑ったが、素直に自分とココアの関係を語り始めた。
きっとこの女性は引くと考えるチノだが、それでも話せば少しは楽になると思った。
同性愛を真っ向から否定されたら、多少は諦めがつくのではないか……。そんな期待も多少はあった。
きっとこの女性は引くと考えるチノだが、それでも話せば少しは楽になると思った。
同性愛を真っ向から否定されたら、多少は諦めがつくのではないか……。そんな期待も多少はあった。
だが返ってきたのは意外な言葉。
「なるほど。私にも好きな女性がいる」
「えっ!?」
「何を驚いているの?あなたも私と、同じはず……」
「えっ!?」
「何を驚いているの?あなたも私と、同じはず……」
困惑するチノに対してロゼは迷いのない真剣な瞳で話す。
「すみません。でも女の子同士でこんなことは……」
しっかりと真っ直ぐ前自分を見てくるロゼの視線にチノの言葉が僅かに弱まる。
女の子同士の恋愛はおかしいことだが、それを口に出してしまえば自分だけではなく相手も傷付けてしまう。
女の子同士の恋愛はおかしいことだが、それを口に出してしまえば自分だけではなく相手も傷付けてしまう。
「たしかに世間的には異常かもしれない。でもそれだけの話」
しかし目の前の剣士はそれを異常と認めた上で「それだけの話」と切り捨てる。
「異常だから誰かを好きになってはいけないという法はない」
普通とか、異常とか。そんな世間の視線にロゼは囚われない。
もっともそれは既に彼女が世間から特殊な目で見られる『閃刀姫』であることも大きいのかもしれないが。
もっともそれは既に彼女が世間から特殊な目で見られる『閃刀姫』であることも大きいのかもしれないが。
「もしも存在するとしても……私は自分の心に嘘をつきたくない」
それがロゼの結論。
レイとは決して結ばれることがないと理解している彼女が、それでも好意を捨て切れない理由。
レイとは決して結ばれることがないと理解している彼女が、それでも好意を捨て切れない理由。
「好きなものは好き。好きだから好き。それの何が悪い?」
「それ、は……」
「それ、は……」
チノはロゼの言葉に何も言い返せない。
世間的に見ればおかしいことかもしれないが、誰かを好きになるのが悪いことだなんて思えないから。
世間的に見ればおかしいことかもしれないが、誰かを好きになるのが悪いことだなんて思えないから。
───ココアさんのことが、好きだから……。
「あなたの言う通りです……。女の子同士で恋愛したらダメな法律なんてありません」
「そう。己が気持ちを恥じる必要は何もない」
「そう。己が気持ちを恥じる必要は何もない」
閃刀姫として生きてきたロゼにも心がある。
幾度となくその刃を血に染めようとも、心の自由だけは誰にも奪われたくない。
幾度となくその刃を血に染めようとも、心の自由だけは誰にも奪われたくない。
数々の命を奪っているのに烏滸がましいと言われるかもしれないが、それが戦争というもの。そう割り切らなければ、やっていられない。
「もう一度聞く。あなたは誰が好き?」
「私はココアさんが大好きです……!」
「私はココアさんが大好きです……!」
先程までと違い、迷いを振り切ったように「好き」を口にするチノを見てロゼは微笑む。
人間には心がある。
誰が誰を愛そうが、それは個人の自由だ。
誰が誰を愛そうが、それは個人の自由だ。
「声に芯が通って安心した。私の名前はロゼ。……これからよろしく、我が同志」
「私はチノです。よろしくお願いします、ロゼさん」
「私はチノです。よろしくお願いします、ロゼさん」
ロゼとチノは同じ道を歩む仲間となった。
それぞれの想い人が殺し合いに参加しているのかわからないが、それでも2人には帰るべき場所がある。
それぞれの想い人が殺し合いに参加しているのかわからないが、それでも2人には帰るべき場所がある。
平和な世界に住んでいたチノは当然として、ロゼにだって愛すべき母国がある。
レイとは一生片思いで終わると覚悟しているが、それで良い。
レイとは一生片思いで終わると覚悟しているが、それで良い。
だが決着はこんな殺し合いではなく、互いの信念に従って赴いた戦場でこそ輝く。
なにより愛するレイをあの少女のように穢されたくはない。
新たに出来た同志も失いたくはない。自分が立場的に不可能な分までチノには頑張って欲しいという気持ちもある
新たに出来た同志も失いたくはない。自分が立場的に不可能な分までチノには頑張って欲しいという気持ちもある
そのためにもチノを守りつつ、戦わなければならない。
他にも力なき者が巻き込まれているならば、戦士として助けるべきだろう
他にも力なき者が巻き込まれているならば、戦士として助けるべきだろう
───やるべきことは山積み。それでもこれは私自身が選んだ道……。
閃刀姫の少女は静かな闘志を。心の刃を主催者に向ける
【閃刀姫-ロゼ@遊戯王OCG】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:主催者を斬る
1:チノを守る。
2:レイとココアを探す
3:力なき者は助ける
[備考]
ランダム支給品のうち1つはなんらかの剣です
遊戯王カードについての知識はありません
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:主催者を斬る
1:チノを守る。
2:レイとココアを探す
3:力なき者は助ける
[備考]
ランダム支給品のうち1つはなんらかの剣です
遊戯王カードについての知識はありません
【香風智乃@チノちゃんはご執心 ココア√】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ココアさんの居るキラキラ輝く日常に帰って「好き」を伝えたい
1:ロゼさんを信じて行動します
2:もしもココアさんも巻き込まれていたら……
[備考]
参戦時期はココア√1巻の終盤。ココアから離れた直後
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ココアさんの居るキラキラ輝く日常に帰って「好き」を伝えたい
1:ロゼさんを信じて行動します
2:もしもココアさんも巻き込まれていたら……
[備考]
参戦時期はココア√1巻の終盤。ココアから離れた直後