ふわり、軟らかい色の綺麗な髪。
きらり、燃えるような赤いリボン。
ひらり、エプロンドレスに身を包んで。
ちらり、可愛らしいニーソを履いて。
最後に、ぐっとあざといポーズを決めて。
これが、私。他でもない、私という存在。
なのに、否定しないで。私の大好きな私を。
ねえ、どうして。疑問の声なんて、届かない。
生まれてはならない『私』。斜め倒しの十字架を背負って生きる人格無き表象。
これはそんな私の、たった一つの願いの物語。
■
「……こんなことなら、最初から生まれたくなんてなかった。」
あの世界に、私の居場所は無かった。
『性的』であることを禁忌とする世界で、外見に情欲を掻き立てる要素を身に纏った私は受け入れられることは無かった。
私が選んだ生き方が結果的に受け入れられないのであれば、或いはこの結果とて己が業と見なしていたかもしれない。だが、現実はそうではなかった。忌避されるべきもののステレオタイプとして。模倣を許さぬ反面教師として。人格すら認められない藁人形として。私は、否定されるためだけに生み出されたのだ。
最初から、バツを与えられることの定められた生。それが私、『男女共同参画ちゃん』ことサンカクの運命だった。
人前に、出てはならない。日陰者として、誰とも関わらずに、隠れて。
最初からそうだったのだから、悲しみなんてありはしない――なんて、人格の無い人形みたいに単純でいられたら良かったのだけれど。残念なことに、私は私が好きだ。否定されるのは辛いし、悲しいし、何よりも誰かの愛がほしい。こんな私を、受け入れてほしいんだ。
だから。人の尊厳も命も貶めるかのごときこの世界に対しても。私は真っ先に、こう思った。
「――こんな世界なら。こんな私も、生きてていいよって言ってもらえるのかな。」
エロトラップダンジョン――忌避されてきた『性的』に特化した、まさに私のための世界。ここでなら、私は誰かに受け入れてもらえるだろうか。ここでなら、バツしか与えられなかった私も、マルをもらえるだろうか。
「だったら、私はここで……生きたい。」
殺し合いの世界でしか生きることを許されないのなら、この世界こそ真に私の居場所であると信じて、私は歩き始めた。エロトラップというのも怖いし、他の参加者に殺されるのももちろん、嫌だ。だけど、存在を否定されながら生きていく元の世界の方が、よっぽど怖いし辛い。
「……それに、殺し合いたくないのは私だけじゃない、よね。だったら仲良くできると……いいな。」
対象が世界であっても人であっても、私の心はずっと同じことを叫んでいる。
誰か、私を受け入れて――私にバツを、与えないで。
【サンカク(男女共同参画ちゃん)@男女共同参画社会の実現をめざす表現ガイドライン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本方針:この世界で生きていく
1:誰か、私を受け入れて
2:殺し合いには乗らない
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本方針:この世界で生きていく
1:誰か、私を受け入れて
2:殺し合いには乗らない