失い続けた。
友を、家族を、師を、右腕を、ありふれた夢を。
友を、家族を、師を、右腕を、ありふれた夢を。
殺し続けた。
友を、家族を、仲間を、化け物どもを、立ち塞がる全てを。
友を、家族を、仲間を、化け物どもを、立ち塞がる全てを。
きっとこの先も変わらないのだろう。
失って、殺して、振り返る暇すら無く進み続けて。
全ての元凶であるあの男を殺すまで。
失って、殺して、振り返る暇すら無く進み続けて。
全ての元凶であるあの男を殺すまで。
戻るには余りにも多くを失い過ぎ、立ち止まるには多くを背負い過ぎた。
だから俺は進み続ける。
奴を殺さなければ、死んでいった者全てが無駄になるのだから。
奴を殺さなければ、死んでいった者全てが無駄になるのだから。
◆
ギリ ギリ ギリ ギリ
怖気が走るような、不快な音がする。
硬い何かを擦り合わせたかのようなソレは、歯軋り。
この世の如何なる猛獣よりも鋭利な牙が、砕けんばかりに擦り合わさり音を立てていた。
硬い何かを擦り合わせたかのようなソレは、歯軋り。
この世の如何なる猛獣よりも鋭利な牙が、砕けんばかりに擦り合わさり音を立てていた。
「おのれぇ…!!」
憤怒一色の表情。破裂しそうな程に青筋を浮かび上がらせたのは、人間とはかけ離れた存在。
見上げる程の青黒い巨体。
筋骨隆々の肉体を惜しげも無く晒した、異形。
額に生えているのは、刃のように鋭い二本の角。
名はオーガ。四方世界に住まう、祈り持たぬ者。
見上げる程の青黒い巨体。
筋骨隆々の肉体を惜しげも無く晒した、異形。
額に生えているのは、刃のように鋭い二本の角。
名はオーガ。四方世界に住まう、祈り持たぬ者。
数多の冒険者から恐れられている人喰い鬼。
それもこの場においては、ヒエール・ジョコマンの用意した一参加者に過ぎなかった。
それもこの場においては、ヒエール・ジョコマンの用意した一参加者に過ぎなかった。
「人間風情が、ふざけおって…!」
魔神将より軍を預かるこの自分が、あんな人間なんぞに首輪を填められた。
その事実が、オーガのプライドを刺激し、耐え難い屈辱を味わっている。
殺し合いなんぞ馬鹿な人間同士でやらせておけばいいものを、何故自分までこんな茶番に巻き込まれねばならない。
もし目の前にあの細長い人間がいたならば、すぐさま磨り潰して鬱憤を晴らしただろう。
だが現実にはどれだけ怒りの声を上げようと、あの男は姿を見せない。
その事実が、オーガのプライドを刺激し、耐え難い屈辱を味わっている。
殺し合いなんぞ馬鹿な人間同士でやらせておけばいいものを、何故自分までこんな茶番に巻き込まれねばならない。
もし目の前にあの細長い人間がいたならば、すぐさま磨り潰して鬱憤を晴らしただろう。
だが現実にはどれだけ怒りの声を上げようと、あの男は姿を見せない。
「良いだろう!すぐに全員殺して、貴様も後を追わせてやる!!」
元より命を奪うのに一切の躊躇を抱かぬ存在。
それ故に、己の怒りのままに皆殺しを決断するのに時間はかからなかった。
巨大な戦槌を担ぎ、力強い足取りで進む。
頭に浮かぶのは、得物によって叩き潰される哀れな参加者やヒエールの姿だけだった。
それ故に、己の怒りのままに皆殺しを決断するのに時間はかからなかった。
巨大な戦槌を担ぎ、力強い足取りで進む。
頭に浮かぶのは、得物によって叩き潰される哀れな参加者やヒエールの姿だけだった。
暫く進んだ先で、オーガはとうとう最初の獲物を見つけた。
人間の男だ。自分と同じく首輪を填められた男が、真っ直ぐこちらへ歩いて来る。
見たところ武器は何も持っておらず、衣服も軽装。
冒険者のような武装はしていない。
人間の男だ。自分と同じく首輪を填められた男が、真っ直ぐこちらへ歩いて来る。
見たところ武器は何も持っておらず、衣服も軽装。
冒険者のような武装はしていない。
(フン、雑魚か)
つまらなそうに鼻を鳴らす。
尤も相手が冒険者でないからといって、見逃す気は無い。
オーガに気付き向こうが足を止めた瞬間、一気に仕留めんと男へ迫る。
人間一人を殺すのに、オーガのパワーならば一撃で十分。
哀れにも男は戦槌の染みと化す。
尤も相手が冒険者でないからといって、見逃す気は無い。
オーガに気付き向こうが足を止めた瞬間、一気に仕留めんと男へ迫る。
人間一人を殺すのに、オーガのパワーならば一撃で十分。
哀れにも男は戦槌の染みと化す。
ヒョイッ
そのはずだった。
男が軽やかに跳躍し、躱さなければ。
男が軽やかに跳躍し、躱さなければ。
轟音を立て戦槌が地面に沈む。
狙った獲物にはまんまと避けられた。
見ると男の顔には微塵も怯えは浮かんでおらず、ただじっとオーガを睨みつけている。
その目が気に入らない。冒険者共に恐れられて来た自分を、ただの障害程度にしか見ていないだろうその目が。
狙った獲物にはまんまと避けられた。
見ると男の顔には微塵も怯えは浮かんでおらず、ただじっとオーガを睨みつけている。
その目が気に入らない。冒険者共に恐れられて来た自分を、ただの障害程度にしか見ていないだろうその目が。
「舐めるな人間っ!」
戦槌を横薙ぎに振るう。
男は背後へと跳んで躱す。またもや外れ。
だがオーガの力は武器を振るうだけにあらず。
男は背後へと跳んで躱す。またもや外れ。
だがオーガの力は武器を振るうだけにあらず。
「《カリブンクルス……クレスクント……》」
戦槌を持つのとは反対の、巨大な左手を男へ向ける。
呪文を唱えると掌に光が生まれ、一瞬の内に炎へと変化した。
炎は赤から橙、次いで白、最後は蒼へと色を変えその度に巨大になっていく。
呪文を唱えると掌に光が生まれ、一瞬の内に炎へと変化した。
炎は赤から橙、次いで白、最後は蒼へと色を変えその度に巨大になっていく。
「《――――ヤクタ!》」
呪文を投じた直後、男目掛けて火の玉が尾を引いて放たれた。
火球(ファイアーボール)の呪文。
魔術に通じた冒険者には馴染み深い呪文も、オーガが扱えば威力と範囲は数段上となる。
先の戦槌を大人しく受けていれば一瞬で死ねたものを、愚かにも避けた代償を支払う時だ。
生きたまま焼かれる苦痛を味わえと、邪悪な笑みを浮かべる。
火球(ファイアーボール)の呪文。
魔術に通じた冒険者には馴染み深い呪文も、オーガが扱えば威力と範囲は数段上となる。
先の戦槌を大人しく受けていれば一瞬で死ねたものを、愚かにも避けた代償を支払う時だ。
生きたまま焼かれる苦痛を味わえと、邪悪な笑みを浮かべる。
迫り来る火球に、男は焦る事無くじっと前を見据え、
タッ
勢い良く跳び上がった。
それもただ上空へ避けたのではない。
火球を大きく飛び越え、オーガへと迫った。
それもただ上空へ避けたのではない。
火球を大きく飛び越え、オーガへと迫った。
「ヌ!?」
予想外の身体能力に目を見開く。
それも束の間、馬鹿正直に突っ込んでくる男を嘲笑う。
そっちからわざわざ首を差し出しに来るとは、実に結構。
それも束の間、馬鹿正直に突っ込んでくる男を嘲笑う。
そっちからわざわざ首を差し出しに来るとは、実に結構。
「望み通り、我が戦槌の餌食にしてくれるわ!!」
男目掛けて振るわれる戦槌。
勝利を確信したオーガの笑み。
避けられない死を眼前にし、男は――
勝利を確信したオーガの笑み。
避けられない死を眼前にし、男は――
「叩っ斬る」
ザ ン ッ
「あ……な……」
オークがまず最初に感じたのは、右手への違和感。
戦槌を強く握り締めていたはずが、どういう訳か力が入らない。
自分は人間の男を殺そうとしたのに、何かがおかしい。
視線を動かすと、そこには自分を見上げる男。
戦槌を強く握り締めていたはずが、どういう訳か力が入らない。
自分は人間の男を殺そうとしたのに、何かがおかしい。
視線を動かすと、そこには自分を見上げる男。
そして、親指と人差し指を残し、戦槌ごと斬り落とされた己の右手。
「が…が…ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!?!」
理解と同時に痛みが追い付いた。
切断箇所から溢れる血、鼻孔に侵入する鉄の臭い。
何が起きた、何をされたと疑問が浮かぶ。
答えはすぐに分かった。眼前へと跳躍した男の姿を目の当たりにした為に。
切断箇所から溢れる血、鼻孔に侵入する鉄の臭い。
何が起きた、何をされたと疑問が浮かぶ。
答えはすぐに分かった。眼前へと跳躍した男の姿を目の当たりにした為に。
――こ、こいつは…!?
先程までは無手だった男は、今一つの武器を手にしている。
否、正確には右手が武器と化している。とでも言うべきか。
肘から下の部分。そこにあるのはギラつく刃。
先端が上向きな形状のソレは、義手刀と言う代物だ。
否、正確には右手が武器と化している。とでも言うべきか。
肘から下の部分。そこにあるのはギラつく刃。
先端が上向きな形状のソレは、義手刀と言う代物だ。
信じられない、されど信じるしかない現実に頭が追い付かない。
まさかあんなちっぽけな剣で、自分の武器を、手を斬り落としたなど。
有り得ないはずなのに、今目の前で右腕を振り落とさんとする姿は、絶対的な終わりを与える死神のようだと錯覚した。
まさかあんなちっぽけな剣で、自分の武器を、手を斬り落としたなど。
有り得ないはずなのに、今目の前で右腕を振り落とさんとする姿は、絶対的な終わりを与える死神のようだと錯覚した。
――し、死ぬ?死ぬ!?我が、我がまた…!?
呪文も、防御も、回避も、何もかもが間に合わない。
想起されるのは殺し合いの直前に味わった、一度目の死。
ゴブリン退治に来た冒険者一党、その中でも粗末な装備をした男によって齎された終わり。
想起されるのは殺し合いの直前に味わった、一度目の死。
ゴブリン退治に来た冒険者一党、その中でも粗末な装備をした男によって齎された終わり。
――『お前なぞよりも、ゴブリンの方が、よほど手強い』
同じだ。
あの時と同じ、激痛と屈辱、恐怖と絶望の中で自分は――
あの時と同じ、激痛と屈辱、恐怖と絶望の中で自分は――
「貴様ァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
ザンッ
【オーガ@ゴブリンスレイヤー 死亡】
◆◆◆
失敗した。
そう思った時には既に化け物は事切れており、今更どうにもならない。
己のミスに軽く舌打ちををすると、宮本明は慣れた動作で義手刀を仕舞った。
そう思った時には既に化け物は事切れており、今更どうにもならない。
己のミスに軽く舌打ちををすると、宮本明は慣れた動作で義手刀を仕舞った。
(一体どうなってやがる…。これは雅が仕組んだ事なのか?)
宿敵である吸血鬼の首領。
あの男ならば、こんな悪趣味極まりない催しを開催しても何ら不思議はない。
雅にとって人間など家畜以下。感度3千兆倍とかいうクソみてェな首輪で殺された褐色肌の少女のように、
徹底的に退屈しのぎの玩具として弄ぶつもりで殺し合いを開いたのだろうか。
だがもし本当に雅が黒幕ならば、あんな人間に司会進行などさせず、明を挑発する為にも自分から姿を現すだろう。
それにあの雅が人間と手を組んでいるなど、俄かには信じられない。
あの男ならば、こんな悪趣味極まりない催しを開催しても何ら不思議はない。
雅にとって人間など家畜以下。感度3千兆倍とかいうクソみてェな首輪で殺された褐色肌の少女のように、
徹底的に退屈しのぎの玩具として弄ぶつもりで殺し合いを開いたのだろうか。
だがもし本当に雅が黒幕ならば、あんな人間に司会進行などさせず、明を挑発する為にも自分から姿を現すだろう。
それにあの雅が人間と手を組んでいるなど、俄かには信じられない。
(もし雅と関係ないなら、あの男は何者だ?ここには俺だけじゃなく、鮫島達も巻き込まれてるのか?)
今殺した化け物を尋問して、少しでも情報を引き出した方が良かったと少しばかり後悔する。
百戦錬磨の明とて、こうも唐突に巻き込まれた殺し合いには少なからず動揺していたのかもしれない。
とはいえ過ぎた事を引き摺り続けてどうにかなる訳でもなく、すぐに切り替えた。
百戦錬磨の明とて、こうも唐突に巻き込まれた殺し合いには少なからず動揺していたのかもしれない。
とはいえ過ぎた事を引き摺り続けてどうにかなる訳でもなく、すぐに切り替えた。
「まずはあいつらを探すか」
鮫島や勝次達は何だかんだでタフな連中だ。
そう簡単に死んだりはしないだろうが、それはそれとして合流しておきたい。
仲間がここにはいないなら、長居する理由は無い。
殺し合いをする気は無いが、何とか脱出する方法を見つける。
そう簡単に死んだりはしないだろうが、それはそれとして合流しておきたい。
仲間がここにはいないなら、長居する理由は無い。
殺し合いをする気は無いが、何とか脱出する方法を見つける。
そしてもしあの男が、雅がここにいるのなら。
ここで全てを終わらせる。
ここで全てを終わらせる。
デイバックを拾い、オーガの死体には目もくれずに歩き出した。
【宮本明@彼岸島シリーズ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品1〜5
[思考・状況]
基本方針:殺し合いに乗る気は無い
1:鮫島達がいないか探す
2:もし雅がいるなら必ず殺す
3:吸血鬼や化け物も殺す
[備考]
※参戦時期は48日後でユカポンが仲間になって以降のどこか。
[状態]:疲労(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品1〜5
[思考・状況]
基本方針:殺し合いに乗る気は無い
1:鮫島達がいないか探す
2:もし雅がいるなら必ず殺す
3:吸血鬼や化け物も殺す
[備考]
※参戦時期は48日後でユカポンが仲間になって以降のどこか。