工房実験室にて、前時代の浮遊機関を用いた実験が行われる。 今回担当する技官は、機関の作成、及び修復を行っているアーストラさんだ。 「今回浮遊機関工学の講座を受けてくれた諸君、 前回ガイダンスで言った通り、作業服での作業だ。 では参ろうか。」 講師に付いて行くと、前時代で発掘された小型の浮遊機関が、 クレーンに繋がれて配置されていた。 「今の時代、浮遊機関と言うと生体複合式のスマートな機関を思い浮かぶだろうが、 この機関は[[旧文明]]時代のバイクに使われた機関だ。まぁ、パレタ社製だな。」 講師が指で示しながら説明する。 「この部品は反重力機関。前時代、自由パンノニアで巨大で劣化したものが制作された。 記録資料などではその国の旗艦、イシュトヴァーンで採用されたそうだ。 そして光が漏れ出ているが、これは空気排入口だ。 ここに微量の水蒸気が入ることで、中の発光体が機能して、 反重力機関にエネルギーが伝達される。 この発光体の有無が重要だ。ここテストでも出るからな。」 そしてハッチの前に立つ。 「これから発光体を見るため、作業服に付属している遮光メガネを装着せよ。 でなければ眩しさで見れんぞ?」 遮光メガネを掛けると、案外暗くなる。 「では開けよう。」 専用のドライバーでハッチが開けられると、 光が溢れだし、遮光メガネで白い丸が見える。 「そしてこれが浮遊機関の心臓部、発光体だ。 発光体自体、大変な高エネルギーの塊なので、 直接触れると暴発するぞ。我々の体にも水分が含まれているからな。 発光体自体大変危険な物で、周りの制御装置によって、 その塊を直接見れるようになる。でなければすぐに揮発してしまうので注意だ。 今度は発光体の生成実験も行うので、遮光メガネは必須だ。付属品だからな。 使ったら元の場所に入れておくように。」 曲状の部品を指差す。 「これが発光体制御プレートだ。 曲状になっているのは、発光体を球状にして安定させるためだと判明している。 太陽があるだろう。そのほうが安定するからという、至極単純な理由だろう。」 そして講師がハッチを閉じる。 「遮光メガネを外そう。今度は制御プレートの構造についてだ。」 そう言うと、横の棚からそのプレートを取って説明する。 「この制御プレート自体、片方からは磁力があるが、 もう片方からは磁力が無い。このことは、 磁気単極子、モノポールと呼ばれる物だ。 磁気というのは磁北、磁南と存在するが、 このモノポールでは、発光体と同じ磁性を持つ。 この反発によって発光体を制御するのだ。 磁石で遊んだ人は、同じ磁性を近づけると反発した経験があると思う。 あれの延長で制御されていると思うと理解しやすいだろう。」 そして、プレートを制御する端子を指差して説明する。 「この端子自体は至極単純で、2つの接続ポイントになっている。 大変単純だ。ここに電力が流れ、モノポールで制御するのだ。」 そして、プレートを棚に戻し、 電子回路基盤を棚から取り出す。 「これが浮遊機関に使われる制御回路基盤だ。 発光体からのエネルギーを利用し、省電力で動く旧文明の叡智と言ってもいい。 これはメインフレーム実験等で詳しく説明されるとは思うが、 これによって電子的技術を得ることが出来たのだ。 もっと詳しく知ることになるのは二柱様のリゼイ様によって教えられるまでは、 人力で電気信号を送り、それによるマッピングをしていたのだ。 これによって基礎的な動き以外はあまり使われなかったようだが。」 そして棚に戻し、 「以上で浮遊機関の実物を用いた実験は終了である。 後でレポート、今回は浮遊機関の制御だ。 紙一枚程度なので、実物で出すように。 無論電子情報で作ったのを印刷機で出力して出すように。 電子情報では駄目なので注意だ。 作業服は今後も使うので、大切に保管するように。 では解散。」