バスター博物館の音声案内ROM

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バスター博物館の音声案内ROM - (2019/09/29 (日) 19:57:30) のソース

<p>ようこそバスター博物館へ。</p>
<p>とは言ってみたものの、そろそろお別れの時間が来てしまったようです。</p>
<p>残るは、バスター博物館の目玉、オートウォークです。</p>
<p> </p>
<p>以前は、この博物館もパラドメッド研究所のような施設だったことはお話したかと思います。</p>
<p>旧文明の遺跡を改装して作られた研究所というのは、当時としては珍しいことではありませんでした。</p>
<p>なぜなら、旧文明の技術というものは神秘的なものであり、とても地上に持ち出すということなどはできなかったからです。</p>
<p>少しでも動かせば壊れてしまうものから、搬出方法がないものまで、地上に持ち出せない技術が多々あったのです。</p>
<p>もちろん、宗教的な禁忌に触れるものもあったのでしょう。</p>
<p>反旧文明組織の襲撃を恐れたのかもしれません。</p>
<p>そういったものにたいして、どのように彼らは取り組んだのでしょうか。</p>
<p>もうお分かりですね。</p>
<p>遺跡を研究所として再利用する方法を選択したのです。</p>
<p>バスター研究所も、そのような経緯で研究所として生まれ変わりました。</p>
<p> </p>
<p>時代の変化とともに、統廃合が繰り返された結果、バスター研究所は研究所としての役割を終えました。</p>
<p>しかし、多くの研究所がそうであったように、バスター研究所もまた、科学博物館として整備されるようになりました。</p>
<p>平和の訪れによって、人が科学に触れられるようになったということは、非常に喜ばしいことですね。</p>
<p>いつかは、パラドメッド研究所も、バスター博物館と同様に、びっくり箱の博物館になっているかもしれません。</p>
<p>あそこでは、どのような技術が、発見があるのでしょう。</p>
<p>私も、パラドメッド研究所で働いているミューイという知性機械を一度は見てみたいと思っているのですよ。</p>
<p> </p>
<p>バスター博物館のシンボルマークである浮遊機関の配管図は、幾何学模様が綺麗でしたね。</p>
<p>研究所時代から引き継がれ、額に飾られていたのは皆さまもご覧になったでしょう。</p>
<p>目を引くように展示されていた、輪切りになった浮遊機関を解明するために、ここは研究所として認可されたのです。</p>
<p>配管図は、その成果の一端としてバスター研究所のシンボルになっているのです。</p>
<p>ほとんど解体されたといってもいい造形であるにもかかわらず、それは動き続けていました。</p>
<p>いえ、今でもあの浮遊機関は稼働しています。</p>
<p>ここが研究所だったとき、研究者たちはあの浮遊機関を解明することに心血を注いだことでしょう。</p>
<p>その成果が、皆さまが今ご覧になっているオートウォークなのです。</p>
<p>オートウォークこそ、バスター博物館のなかで、浮遊機関の理論体系の最先端だったなごりを感じさせるものです。</p>
<p>数あるバスター研究所の成果物のうち、一番大きなものであるというのは、初めて聞いた方は驚かれるかもしれません。</p>
<p>それもそのはず、皆さまがご覧になっている場所だけを見れば、置かれた物体が左から右へ流れていくだけの装置に思えるでしょう。</p>
<p>それが、それだけではないということを、今から体験していただこうかと思います。</p>
<p>どうぞ、係員の指示に従って、オートウォークの入り口へ。</p>
<p>私は出口でお待ちしております。</p>
<p>ひとときの神秘的な体験をお楽しみください。</p>
<p> </p>
<p>どうでしたか、驚いていただけましたでしょうか。</p>
<p>皆さんはお目にかかったことはないと思います。</p>
<p>しかし、現在の工業分野では、この技術は非常に重宝されている技術なのです。</p>
<p>物体を所定の場所に運ぶ。</p>
<p>これは以前からベルトコンベアーなどで行われてきました。</p>
<p>皆さまの誰もが経験しているであろう、空港などで乗るオートウォーク。</p>
<p>こちらは、いわばその発展形といえるでしょう。</p>
<p>ただし、このオートウォークは物体を浮かせることができるのです。</p>
<p>また、コンベアのようなものを使うということすら必要としません。</p>
<p>実際は浮いているという言葉では言い表すことはできないのですが、難しいので、今はそういうことにしておきましょう。</p>
<p> </p>
<p>みなさんがこういったオートウォークを経験されたことがないのには理由があります。</p>
<p>また、先ほど工業分野で重宝されているということも一緒に説明しましょう。</p>
<p>動物には素晴らしい姿勢制御機能が備わっています。</p>
<p>人間も例外ではなく、背中を押されれば足を一歩踏み出して、倒れる体を支えることができます</p>
<p>そういった動作を無意識にできるのであれば、このような技術は必要とされませんでした。</p>
<p>逆にいえば、そういった機能がついていないものにたいしては非常に有効に働くということでもあります。</p>
<p>当たり前といえば当たり前ですが、ただの物体に自身を制御する機能はないのです。</p>
<p>このせいで、人は物を運ぶという点においてひどい失敗を繰り返してきました。</p>
<p>トラックに入れて運んでは壊れ、ベルトコンベアーに乗せて運んでは壊れる。</p>
<p>国際航空便が発達したときにも、物を運ぶ際に大きな事件がいくつも起こりました。</p>
<p>この話をしているときにも、どこかで荷崩れ事故は起きているでしょう。</p>
<p>バスター研究所の発明は、工業化と流通が発展していく情勢において、このようなオートウォークの導入を促しました。</p>
<p>また、それに限らず、輸送機関への技術供与が行われた結果、輸送を安全で安心できるものにしていったのです。</p>
<p>
そして、浮遊機関の理論体系の確立の一助となることで、航空貨物便や海運貨物便、果ては無重力の宇宙船内まで、陰ながら幅広い分野で人々の生活を発展させているのですね。</p>
<p> </p>
<p>さて、このオートウォークの種明かしをしましょう。</p>
<p>現代では、なんということもない技術なのですが、当時のそれはまったく強引なものだったのだと、彼らの努力を笑顔で迎えていただければ幸いです。</p>
<p>皆さまのなかには、オートウォークに乗っている間に気がついた方もいらっしゃったかと思います。</p>
<p>バスター博物館の地図と比較していただければわかりますが、このオートウォークは円形の博物館のふちを沿うように走っています。</p>
<p>ここが遺跡だったころ、この施設の壁を沿うように、浮遊機関を利用した交通機関の輸送機関が走っていたそうです。</p>
<p>つまり、この施設をぐるりと一周する環状線があったのです。</p>
<p>そこは施設の床よりも一段深く掘られており、その溝のなかを交通機関が通っていました。</p>
<p>研究所が設立され、浮遊機関の研究が行われる過程で、この溝は埋め立てられてしまいました。</p>
<p>ただし、それは浮遊機関の謎を解明するために行われたものでした。</p>
<p>皆さまがオートウォークを体験されていたとき、その下では浮遊機関が常に皆さまのそばにありました。</p>
<p>驚くべきことに、埋め立てられたのは表面だけであり、なかは中空になっています。</p>
<p>危険性の観点から皆さまに内部をお見せすることはできませんが、係員から渡されたパンフレットの最後のページに断面図が載っています。</p>
<p>
このように、溝のなかに路線を引き、そこへ稼働状態の浮遊機関を台車とともに通すことで、表面上での物体にたいする浮遊エネルギーの作用を観測していたのですね。</p>
<p>
最初は錘などを置いて作用の検証をしていたようですが、次第に様々なものを乗せるようになり、現在ではどのようなものを乗せても、同じ動作ができるように改良が重ねられました。</p>
<p>それは、つまるところ、科学が浮遊機関の制御を可能な状態にしたということなのです。</p>
<p>科学への知見が深まるとともに、浮遊機関は科学の世界で浮遊機関という名称を失っていくことになります。</p>
<p>物体にたいして多角的に干渉する能力の存在が、確かな事実として観測されたためでした。</p>
<p>この技術は浮遊機関と呼ばれず、皆さまの知らないところで、しかし生活の近くに寄り添う時代が訪れているのですね。</p>
<p>ちなみに、この溝を走っていた交通機関の一部も展示品として公開されていますので、見逃した方はぜひご覧になってください。</p>
<p> </p>
<p>さて、施設の歴史、展示、そして体験、楽しんでいただけましたでしょうか。</p>
<p>施設の案内は、これで一回りしていただけたと思います。</p>
<p>終わりの言葉とともに、音声案内を終了いたします。</p>
<p>皆さまとの素晴らしい出会いをもたらした、古のパンドーラ隊の皆さま、バスター研究所の皆さま、博物館職員の皆さまに感謝を。</p>
<p>そして、この施設に名を冠している、レモー・スモーク・バスターに敬意を表して。</p>
<p>有名な雑草煙草の話とともに、パンドーラ隊は大々的な部隊へと組織されていきました。</p>
<p>彼の名前は、歴史書に書かれるような大きいものではないのでしょう。</p>
<p>しかし、彼らの発見が私を皆さまと引き合わせたことに変わりはありません。</p>
<p>皆さまの楽しい体験にお付き合いできて、本当に嬉しく思います。</p>
<p>ご来館、ありがとうございました。</p>