ギャルゲ・ロワイアル2nd@ ウィキ

Servantたちへ

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Servantたちへ ◆PELOaKeBfU


信号待ちの無人電車がゆっくりと動き出す。
「お疲れのようですよ?少しお眠りになったほうがよろしいかと」
「ううん…大丈夫」
言葉こそ気丈だが、疲労の色を濃くしている刹那を横目でみるウィンフィールド
さらにそのまま車窓から明かり一つない街を眺めると、
彼といえども心の中に僅かな不安のようなものが頭をもたげる。

(私としたことが…)
自嘲気味に溜息をつくウィンフィールド…いくら空港から離れることが肝要だったとはいえ、
信号停止中の電車に強引に乗り込むとは、我ながらいささか短慮が過ぎる気がする。
しかし…うとうとと船を漕ぎ始めた刹那を見て思う、これ以上の強行軍は彼女には酷なはず…。
(まったく私としたことが…)
自分でも言った筈だ、自分には本来守らねばならぬ者たちがいると、彼女を守るのはそのついでに過ぎないと。
だから解答としては、彼女の身など案じずあのまま強行軍を貫けばよかったのだ。
が、しかし結果はこうして彼女の身を第一に考えている自分がいる、それが妙におかしかったし。
その一方ではそれで当然と思う自分もいたりするので余計に分からない。

そこに対向列車が通過する…と、
それを境にリラックスしたその表情がすかさず怜悧な物へと変わる。
何かが今屋根にいた。
周囲の気配を探るウィンフィールド…殺気は感じないが、何か妙な感じがする。
刹那の頬を軽く叩いて、覚醒を促そうとしたその時だった。
彼の耳には確かに届いた、電車の駆動音の中に混じったトリガーの音を…

と、同時に荒れ狂う暴風のような銃弾の乱舞が車内を洗う。
「む?」
刹那を抱えて転がるように避けるウィンフィールド、ただし大げさな回避とは裏腹に心の中は余裕だったが。
そのまま彼女を庇うように起き上がる、しかしその表情はやや怪訝である。
(気配が読めない…やはり妙…)
「何っ!何なんですか。何なんですか」
寝入り最初に凄まじい目覚ましをお見舞いされ目を白黒させる刹那。
「落ち着いてください…御免!」
と、言うなりウィンフィールドは刹那を思い切り突き飛ばす。
ウィンフィールドの目の前、すなわち刹那の頭があった箇所を銀色の刃が通過していく。
間髪入れず反撃の一撃を見舞うウィンフィールドだが、無理な体勢から放ったとはいえその一撃は空を切る。
(速い!何者)
外された一撃などにもはや興味などない、身を低くし刹那を庇える位置まで素早く走る。
最後尾のドアを切り裂き車内に襲撃者の影が入るのと、彼の背中に刹那が入るのはほぼ同時。
「隣の車両へ逃げてください、え、私なら大丈夫です…ほら」
ウィンフィールドが自分の背中にしがみつこうとした刹那に声を掛けるのと、
その襲撃者、深優・グリーアが2人もろとも切り裂こうと刃を振るうのとはほぼ同時、だが
「ご覧の通りです」
深優の刃はウィンフィールドの眼前で止まっていた、無論深優が止めたのではない。
間合いを完全に見切った彼の技量のなせる業だ。

「さぁ早く」
促され、隣の車両へと逃れる刹那、それを確認して初めてファイティングポーズを取る、
ウィンフィールド、その表情はあくまでも余裕、先ほどの邂逅で相手の実力は確認した。
そこそこできるようだが、あのサムライに比べれば遙かに落ちる。
「次はこちらの番です…それ相応の報いは覚悟してください」
というなり電光石火のジャブを放つ…しかし今度は彼の方が驚く番だった。
「!?」
確実に少女の顎を捉えるであろうジャブは何故か空を切り、そして耳元を掠めるように刃の音が通り過ぎた。
「なんの!」
刃を払いのけるように追撃の拳を振るうが、またそれらも全て空を切る。
(速さだけならば…ということですか、厄介な)


(こんなところでまた)
計算違いを感じているのは深優も同じだった。
奇襲は完全に成句していたはず、先制のバルカン斉射、そしてダメを押すべく斬撃…すべて避けられるとは、
しかもこの男の身体能力ときたら規格外そのものだ…この目の前の男ならば素手で、
オーファンはおろかチャイルドとも渡り合えるだろう。
だが、何故だろうか…この男からは何故か妙な親近感にも似た何かを感じる。
(今は考えないことにしましょう)
ともかく…、
(全動力を駆動部分にシフト)
剣の輝きがやや薄れる…攻撃力を犠牲にしてでも速度を上げねばこの男には勝てない。
代償は大きいが、今はそれに構うつもりもない。
「行きます」

一端間合いを取ると再びウィンフィールドへと突撃する深優。
表情一つ変えず迎撃するウィンフィールド、その両者の挙動はもはや常人には捉えることは出来ない。
が、時折ストップモーションのように動きを垣間見ることが出来るのは彼らの身体に課せられた制限ゆえか?
深優の刃がウィンフィールドの脇を掠め通過する、反対にウィンフィールドのショートアッパーが深優の前髪を掠める。
深優の反撃の貫手が喉を狙うがそれはかすりもしない、が、
カウンター気味にウィンフィールドが放ったテンプルへの一撃もやはり空を切る。
両者の攻防はまったくの互角に見えたが…。

(エネルギー残量僅か…このままでは)
ぼろぼろになった己の衣服を見て舌打ちする深優、
一方のウィンフィールドはといえば、端正な横顔には汗一つなく、自慢の執事服にはほつれすら存在なく、
ヘアスタイルには微塵の乱れもない。
つまりこれが現実、深優にしてみれば死力を尽くした感があったが、
ウィンフィールドにしてみれば多少厄介だった程度、それくらい両者の力量は歴然としていたのだ。

「よくやりましたよ、貴方は」
軽快にステップを踏みながら深優に話しかけるウィンフィールド。
「降伏していただけませんか?むやみに拳を振るうつもりはありませんので」
口にしてから考える、なんて甘いのだと…だが何故か深優の瞳を見ると、
かすかだが相通じる何かがあるように思えてしまうからだろうか?
(これであきらめてくれれば…)
ただし、もしもあきらめないのならば後顧の憂いをなくすべく完膚なきまでに叩き潰すつもりであったが。

一方の深優もまたウィンフィールドと同じく妙な感慨を覚えていた。
ただし違うのはこちらにはそういう甘さが一切ないところだろうか?
(出会いが違えば分かり合えた気がしないでもないですが)
ウィンフィールドの言葉はあえて聞こえないふりをする、エネルギーの残りを考えると、
有効な攻撃はあと2回が限度、そして…。
(こんなに早く使うことになるとは)
深優の片手の剣がまた輝きを取り戻す…気合と同時に戦闘に回せる残り僅かなエネルギー全てをこめた一撃を繰り出す、
しかしウィンフィールドは表情すら変えない…確かに鋭いがそれだけだ、避けるなど造作もない。
「失望いたしまし!?」

が、この戦闘で初めてウィンフィールドの表情が変わる、
確かに避けたはずの刃が予想外の軌道を描いて彼の背中を薙ごうとしたのだ。
その目に映るのはありえない方向に曲がった深優の片腕。
「逆関節とは味な真似ですね、ですが後悔しても遅いですよ!」
一端車両の端まで下がり拳を握りなおすや、深優に突進するウィンフィールド、それはこの戦いで初めての光景。
勝敗が決してなお、このような児戯をもってあがくそのやり口は彼にとって許せるものではなかった。
一方の深優はまだ動かない、ただしいつの間にかもう片方の腕も剣へと変じていたが。
剣を構える深優、その動きはとてもゆっくりに見えて仕方がなかった、
そしてウィンフィールドが車両のちょうど真ん中に差し掛かった時。
深優もまたウィンフィールドへと突進する、狙いはただ一つ彼の心臓、しかし普通に突撃したところで、
万に一つの勝ち目もない、ならば。
「こうするのです」


呟きと同時に深優の腕からワイヤーで繋がれた剣が勢いよく射出される、
深優の速度+射出速度+ウィンフィールドの速度=回避不可?が、それすらも。
「子供だましは止めていただきたいと言った筈ですが」
深優の放った剣はウィンフィールドの首の皮一枚の所で止まっていた、みしみしと彼の両の拳で挟み込まれて。
「おおおっ!」
が、それでも勢いそのものは減退できなかったらしく、彼といえども数歩後ずさりしなければならない。
一瞬視線が深優から離れる、そのスキに彼女は先ほど切り裂いた最後尾の大穴から外へと身を躍らせる。
「逃がしませんよ」
後を追うウィンフィールド…もう彼女を許すつもりなどなかった、むしろ。
(今ここで彼女を討たねば大十字様やアル様の前に必ず立ち塞がることになるはず)
が、ウィンフィールドの視界に入ったものは…。
(図られましたか)
深優は逃げたのではなかった、空中に身を躍らせながらも視線は決して離してはいない。

そして彼女の太股が奇妙な形に折れ曲がって、そこから覗くものは…。
(ミサイルか、しかし甘い)
至近距離とはいえど避けることなど造作もない、そして自分はここからでも深優の身体を砕ける技術がある。
この戦い貰った…しかし。
(清浦様!)
深優の視線の先、そして自分の背後の視線に驚愕するウィンフィールド、
深優の狙いは隣の車両にて祈るような仕草を見せている刹那だったのだ。
このままだと自分が避ければミサイルは彼女を直撃する…どうする?
自分の言葉が不意に甦る。

『私にはやるべきことがあります』
深優の太股からついにミサイルが発射される。
『なので、申し訳ありませんが、万が一の時には』
爆音に混じって刹那の声が聞こえる。
『私は清浦様を…』


「できない話はするものではないですね」
苦笑するウィンフィールド、もう少し器用に生きてみたいと思いながらも結局はこうなる。
目を閉じ…両手をだらりと下げて呼吸を整え、再び目を開く
「お嬢様…」
全ての光景がまるで止まったかのように見える…これこそが修練の果てに彼の辿りついた境地…。
それを以ってしてなお、ミサイルはもう目の前だった。
「申し訳ありません」
ウィンフィールドは迎え撃つように己の拳をミサイルの下っ腹へとぶつける。
が、足りない…片腕だけではミサイルの軌道を変えるには至らない、ならば。
「片腕では足りませんか?ならば!」
ウィンフィールドは挟み込むようにさらに拳を繰り出す…そして爆発音が車内に響いた。

そして高架から地上へと離脱した深優。
直撃したかどうかの確証は持てない、が、彼女には何故か分かった。
ああすればあの男は決して避けることが出来ないと。
「エネルギー残り20%…」
苦しい息の中確認するように呟く…もうこれ以上は戦えない、まとまった休息が必要だ。
「あの…林まで…」
たどり着くことは出来そうにない、だから茂みで妥協することにした。
再び動けるようになるまであと数時間、さらに戦闘が可能になるまではさらに数時間必要…
正午までには何とかなるだろうが…。
「お嬢様…」
深優は草むらに身を横たえた。
「申し訳ありません」
それだけを呟いて。

【D-7 草原/1日目 早朝】
【深優・グリーア@舞-HiME 運命の系統樹】
【装備】:遠坂家十年分の魔力入り宝石
【所持品】:支給品一式、乙女のデイパック(確認済み支給品1~2)
【状態】:消耗大につき休息、自身の能力での戦闘は正午まで不可
【思考・行動】
 0:アリッサを救うために行動する
 1:“優勝を目指し積極的に殺す”
 2:必要に応じて“殺し合いが加速するように他の参加者を扇動する”
 3:ここにいるHiME(玖我なつき、杉浦碧、藤乃静留)を殺す
【備考】
 ※参加時期は深優ルート中盤、アリッサ死亡以降です
 ※場合によってはHiME能力に覚醒する可能性があります
 ※アリッサが本物かどうかは不明です
 ※ミサイルの残弾数については基本はゼロ、あっても残り1発


「…たの…か」
よく耳が聞こえない、確か自分はどうしたのですかと清浦様に言ったはずなのだが。
鉄サビの臭いがしてならない、自分の身体から…かつて嗅ぎ慣れた臭い、
だが自分の身体からそういう臭いがするのは初めてだ。
ああ、泣いている…清浦様が泣いていらっしゃるようだ?だが片方しか視界がないので確証が持てない。
「ぱ…なの…りま」
上手く顔が動かない、通じただろうか?今自分は、ご心配なく、こんなのすぐに直りますよと言ったつもりだが?
電車のスピードが落ちる、どうやら駅が近いようだ。
降りねば…降りなければ。
電車が止まる、ふらりとたどたどしい足取りでホームへと降りる。
すこしトイレに行くだけです、長くなりますから先に行っててください、通じただろうか?
何かを叫んでいるのが見えたので頷くことにした、内容は聞こえなかったが。

僅かな停車時間の後、電車がゆっくりとホームから離れる…それを確認してからようやくウィンフィールドは倒れた。
そう、見事にミサイルを己の拳圧で相殺したウィンフィールドだったが、その代償は腕だけには留まらず、
生命にも及んでいた、彼の身体は生きているのが不思議なまでに破壊されつくしていた。
不思議な気分だったが…それでも後悔だけはなかった。
あの時思ったのだ…もしあそこで逃げればきっともう、自分は生涯誇りを持てずに生きることになると…。

「大旦那様…私は間違ってないですよね?」
果たして彼に答えは届いたのだろうか?
それは誰にも分からない…が、永久の眠りについた彼のそれはやり遂げた男の顔だった。

【G-7 駅構内/1日目 早朝】
【ウィンフィールド@機神咆哮デモンベイン:死亡】

そして終着駅…ゆっくりと帰路に発つ列車が去り、刹那だけが1人ホームに残る。
「ウィンフィールドさん…」
ベンチに腰掛けた刹那は涙を拭くこともなく祈るように両手を己の胸で重ねる、その瞳には決意。
あの人は私を守ってくれた、万が一には見捨てると言ったにも関わらず、その万が一が起こって尚。
だから私も応じなければならない。
そうあの時…終着駅で待っていますと言ったらあの人は頷いた…だから。

でも本当は分かっている、もう多分彼は帰ってこないと、それにほんの数時間の邂逅に過ぎぬ相手のためにどうして、
そこまでしなければならないのか全く以って疑問だと自分でも思うが、それについてはもう考えない。
それ以外に応じる術が、交わした約束を守ること以外自分にはないのだから。
だから待つ、彼が、トイレを済ませたウィンフィールドが再びここにやってくるまで、
縋りたい自分の心の弱さを晒しているだけだと人に笑われようとも。
「必ず…でも」
北風が吹きすさぶ中、たまらず自分で自分を抱き締める。
「助けて…世界」
刹那は蜘蛛の糸を待ち望む罪人のような心境で、唯一無二の親友の名を口にする。
その親友がまさか卑劣極まりない裏切りを犯していようとは露ほどにも思わず。

【F-2 駅構内/1日目 早朝】
清浦刹那@School Days L×H】
【装備:トンプソンコンテンダー(弾数1/1)】
【所持品:支給品一式、コンテンダーの弾48発、不明支給品×2(未確認)】
【状態:精神疲労(大)、スチュワーデスの制服着用、下着は着用せず】
【思考・行動】
基本:人は殺さない。
0:とにかくウィンフィールドを待つ
1:世界…助けて
【備考】
※制服(牛乳まみれ)と下着(濡れている)はデイパックにしまいました。
※黒髪に刀を持った裸の男(九郎)を変態だと思っています。
※放送を聞いてもウィンフィールドの死を認めない可能性があります。


057:First Battle(後編) 投下順に読む 059:参加する事に意義がある
057:First Battle(後編) 時系列順に読む 059:参加する事に意義がある
053:Destiny Panic! 清浦刹那 078:地獄デ少女ハ魔人ト駆ケル
052:鬼神楽 深優・グリーア 101:it(それ)と呼ばれた少年少女
053:Destiny Panic! ウィンフィールド



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