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LIVE FOR YOU (舞台) 8

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LIVE FOR YOU (舞台) 8



 ・◆・◆・◆・


「兄上っ!」

親しみの感情がこもった声に、神崎は司令室の入り口へと顔を向ける。
そこには彼の妹であり、この組織の中で唯一打算なく感情を向けられる美袋命と、彼女のお目付け役であるエルザの姿があった。

「また、基地の中を歩き回っていたのかい?」

獣のように跳ねて駆け寄ってきた命に神崎は優しく声をかける。
命は兄の問いに悪びれることもなく面白かったぞと返答し、満面の笑みを浮かべた。

「おみやげだ。兄上もいっしょに食べようっ!」

近くから椅子を引いてくると、命はそれを兄の隣に置きちょこんと腰かけ、抱きかかえていた紙袋を机の上に置いた。
ガサガサと乱暴な手つきで袋の口に手をつっこむと、すぐに大きな肉まんがその中から出てくる。
さてこれはどういうことかと、神崎はエルザへと視線で尋ねてみるが、しかしエルザはただ横に首を振るだけであった。

「知らないロボ。エルザが見つけた時には、もう持ってたロボよ。大方、勝手に食堂まで行って盗んできたに違いないロボ」
「私は欲しがったりはするが、人のものを勝手に食べたりはしないぞっ!」

エルザの適当な答えに命は剣幕を見せる。
だが、肉まんを手にしていることを思い出すと、それをふたつに割って片方を兄へと差し出した。

「さぁ、兄上も。まだあたたかくておいしいぞ」

神崎は肉まんの片割れを受け取り、妹にならって大口で齧りつく。確かに、その肉まんはあたたかくておいしかった。



「下働きは辛いロボ。エルザはシンデレラガールロボね」

ひとり、エルザは基地内の通路を歩いている。
朝から行方不明だった命の捜索を終えたと思ったら、またしてもお茶くみの仕事であった。
それぐらいなら誰でもいいと言えるし、なんなら司令室に給湯セットを置いておけばいいのにとも言える。
実際、他の職員は適当にそれでコーヒーなんかを飲んでいるのだが、しかし神埼の紅茶へのこだわりだけは別だった。
だとしても、ならば何故エルザがするロボか?
と言ってみても、この非常時に基地内を出歩ける者は案外多くはないのだ。お茶くみでとなるとなおさらである。

「エルザを迎えに来てくれる王子様はどこにいるロボか……?」

ぽつりと呟き、エルザは通路の端々にできた水溜りを器用によけ、ただ歩いてゆく。


 ・◆・◆・◆・


闇に閉ざされた洞窟を仄かに照らすオレンジ色の炎。
その炎に照らされ、三人分の影が冷たい岩肌に長く伸びている。

「ほんと不思議だよねー、何にも燃やすものないのに焚火できるなんて」

と、相変わらず呑気な声で桂は濡れた衣服を乾かしている。
柚明は桂に相槌を打ちながら自らも濡れた衣服を乾かしていた。

「んー……わたしのほうはもう乾いた感じだけど……柚明お姉ちゃんはどう?」
「ごめんなさい……もうちょっとかかりそうね」

比較的軽装な桂の服と違って柚明は何枚も重ね着した和服である。
当然のことながら水をたっぷりと吸った和服は中々乾きづらく、また水を吸った着物はひどく重かった。
本当なら二人とも濡れた服を脱いで乾かしたいのだが――

「僕にお構いなく~、物干し竿に使えそうな物はそこにあるからねー」

那岐は笑いながら壁に立てかけている金属製の棒状の物体にウインクした。

「……もう那岐君の冗談はスルーしてもいいかしら?」
「あはは……でも、確かにそれなら物干し竿として十分使えそうだね」

と、桂は立ち上がり立てかけたそれを持ち上げた。
九七式自動砲――かつて旧日本陸軍によって製造された対戦車ライフルである。
製造されてから半世紀以上経過しているのにも関わらずそれは新品同様の光沢を放っていた。

現代の主力戦車の装甲を打ち抜くには心もとないが、
装甲車程度の物なら安々と打ち抜くそれはその威力と射程にふさわしい重量と長さを誇っていた。

――『全長2.06m 重量59.0kg』

まさに鉄塊ともいえるそれは銃架に備え付けて撃つ物であり、
ましてそれを抱えて移動しながら撃つなどということは本来不可能である。
だが桂はそれを片手でいとも容易く持ち上げる。
浅間サクヤの鬼の血は60kg近くある鉄塊を苦にすることなく持ち上げる膂力を桂に与えていた。

「さっすが桂ちゃん。それを君に渡して正解だね」
「うん……」

桂の顔に陰りが見える。
それもそうだろう、本来これは堅い装甲を撃ち抜く物であって人に向けて撃つ代物ではない。
人に向けた場合あまりにもオーバーキルすぎるのだ。
そして、今までは運よく戦いから逃れてこれていたが、今後もそうだという保証はない。
自らの身を守るためのに、仲間を守るためにその手を汚す。
そして、そのための力がそこにあった。



――お前は戦えるのか?
   相手は神崎や言峰だけじゃない、一番地とシアーズという組織が相手だ。
   当然組織に忠誠を誓う人間達もいるだろう。
   それを殺せるのか?


――才能を、力を持ってる癖に何もしようとしない事よ。あなた戦える力を持ってるんでしょ?
   誰よりも銃弾を物とせず、ただの人間をボロ布のように引き裂く力を持ちながらなぜ戦おうとしないの。
   例え敵であっても誰かを傷つけるのが嫌だから?
   自分が汚れるのが嫌だから?



いつかの玲二とファルの言葉が思い起こされる。
たった数日前のことがすごく遠い昔のことに思えた。

「桂ちゃん……」

柚明は桂の不安を痛いほど理解していた。
自分や那岐はある種戦いに関しては割り切った感情で臨める。
危害を加えようとする者に対し、無慈悲に断頭台の刃を振り降ろせる邪な覚悟ができてしまっていた。
願わくは桂にその業を背負わせたくないが――

「きっともうすぐ――君の得た力の代償を支払う時がやって来る。大切な人達を守るための業を――だけど迷わないで、桂ちゃん」

いつも人前では飄々とした態度の那岐がいつになく神妙な口調で言った。
だが那岐に見つめられる桂は黙ったままであった。
重苦しい空気が三人の間に流れる。
誰も言葉を発しようとはしない。忍び寄る戦火の気配が、桂と柚明の口を閉ざさせる。
その空気に見かねた那岐がいつものような軽い口調で、重たい空気を振り払うように言った。

「すっかり忘れられてる感じなんだけどね、二人とも服乾かすのまだー? いつまでも火を維持するの疲れるんですけどー?」
「あっ……ごめん那岐君。わたしはもう大丈夫だよ」
「私のほうもすっかり乾いたわ」

二人の声を聞いた那岐はパチンと指を鳴らす。
すると赤々と燃え盛っていた炎がふっとかき消え、洞窟の中は再びわずかな明かりがあるだけの暗闇に閉ざされた。

「ふいーっ疲れた疲れたっと……それじゃあ桂ちゃん、約束通り贄の血を――」
「ん……ちょっと待ってね……」

約束通り贄の血を飲ませるため、桂は自らの荷物の中を漁る。
いつものように手首をちょっぴり切って、滲んだ血を直接啜ってもらえばいいのだが、
そうすると柚明が必死になって止めようとするのでコップを探してた。
確かに、言われて見れば男性相手に血を与えるのはどうも気恥ずかしい。

「(えっ? 女の子同士のほうがよっぽど恥ずかしくない?)」

ややあって桂は紙コップを取り出した。
時間がかかったのは、その上にわんさとホテルから持ち出したお菓子や飲み物があったからだ。

「あっ、お菓子もあるけど食べるー?」
「んー、遠慮しておくよ」
「はーい」

桂はナイフの代わりに武器として持ってきていた日本刀を鞘から抜き、切っ先を手首の静脈に軽くあてがった。
刃がごく浅く皮膚を裂くはずだったが……

「痛っ……ちょっと深くやっちゃった」
「大丈夫……?」
「大丈夫大丈夫っ」

ぼたぼたと流れ落ちる血。桂はそれを急いで紙コップで受け止める。
白い紙コップに赤い血がとくとくと注がれてゆき、
四分の一ほど入ったところで、桂は贄の血を那岐に差し出した。

「はい、搾りたての新鮮贄の血だよー」
「し、搾り立て……桂ちゃんの搾り立ての……」
「サンキュー♪ (柚明ちゃんが何か妄想してるようだけど敢えてスルースルー)」
「柚明お姉ちゃん……もしもしー?」
「……(妄想中)」
「柚明お姉ちゃーーん!?」
「ふっふぇ!?」

贄の血の香り気に当てられ、明後日の方向に意識が飛んでいた柚明。
思わず間抜けな声を出してしまっていた。

「柚明お姉ちゃんも私の血いるよね?」
「桂……ちゃん」



にっこりと微笑む桂の笑顔が眩しい。
いつもそうだ。彼女の血を目の当たりにしてしまうと理性が保てなくなる。
愛おしい桂を、それが叶わぬ愛であったとしても。
その身体にむしゃぶりついて隅々まで味わいたい。
熟れた果実の薄皮を裂くように桂の白い肌からあふれ出る赤い果汁を嘗め回したい。

「柚明お姉ちゃん……? あっ――」

とさっと桂は地面に尻餅をつく。反転した視界が洞窟の闇を映す。
その上に覆い被さる柚明の姿。押し倒された桂の小さな身体。

「あの、血が出てるのはわたしの手首――」

桂の声も柚明の耳に届かない。
柚明は桂の白く細い首筋しか目に入っていない。
彼女はゆっくりと上気した顔を桂の首元に近づけて噛み付いた。

「あ……んっ、わざわざそ……んなところ……っ」

ぞわりとするような感覚が桂を駆け巡る。
重なり合った二つの影が洞窟の仄かな照明に照らされて岩壁に揺らめいている。

絡み合うアカイイト、いつも血を吸われるときに感じるあの感覚。
自分と他人の意識が混ざり合って自己の境界が一時的に失われてゆく恐怖と快感。
そしてその恐怖ですらも赤く溶け合った意識の中で快感に変じてゆく。
身体の奥底から湧き上がるような快感と浮遊感に桂は身悶えする。
久々に体験する深いトリップだった。

「駄目、だよ……那岐君が見て、んんっ……はずか、しいよ……」
「そんなの……んっ……別にいいじゃない……私は気にしてないから……ね?」
「柚明お姉ちゃんがよくても……わたしが恥ずかしいの……っ」

他人に見られてる。
それも見た目には同い年くらいの少年に己の痴態を見られている。
その背徳感がより一層、桂と柚明の快楽に火を灯す。
桂の位置からは那岐の姿は見えない。
だが見えないが『見られている』という状況が桂の不安をさらに快感へと転化させてゆく。

「お願い……那岐君……見ないで……」

桂の弱々しい声が闇の中に静かに木霊する。
そんな桂の訴えもやがて快楽の大きなうねりの中にかき消されていった。



一方、那岐はというと……、
二人から少し離れた位置で紙コップを片手に重なる二つの影を見つめていた。

「……確かに贄の血は最高においしいんだけど……おいしいけど何この差? シチュエーションの違いってやつ?」

そう言って那岐は最後の一口を飲み干した。
少し物悲しさを感じながら、那岐は二人の嬌声が治まるのを待ち続けていた。


 ・◆・◆・◆・


 キャットウォーク上からどうにか這い上がり、元居た通路まで戻ってはみたものの、仲間の姿はない。
 耳に装着しているインカムは、依然として沈黙の状態を継続。
 誰とも連絡がつかず、突入メンバーの安否は一向にわからないままだった。

「仮に、仮にですよ? このままみんなとはぐれたままだったら……」
「そんときゃ、俺たちがラスボスのところに一番乗りだな」
「そ、そんなぁ~! 私ひとりじゃ、なにもできないですよぉ……」
「てけり・り」
「うっ……一人じゃなくて、三人ですけど……でもでもっ」
「やよいにだって、いろいろ言いたいことはあるだろ? あの神崎ってヤローや……古書店の店主さんによ」
「あうぅ……」

 誰もいない廊下を、おそるおそる歩いていく高槻やよい、その右手にはまるプッチャン、後ろに付き従うダンセイニ
 普段は一番地職員が――やよいにとっての“敵”が歩いているだろう通路は、無機質な壁と床がただ延々と続く。
 歩きながらに思い浮かべるのは、病院だ。物静かで清潔的な空間。ここが敵地のど真ん中だとは、到底思えない。

「誰もいません……」
「敵さんの数も無尽蔵ってわけじゃねーからな。たぶん、他に回ってるんだろうよ」
「他って?」
「玲二や九郎たちのほうさ。奴らにとって、本当に食い止めておきたいのはそっちだろうからな。俺たちなんて後回しってことだよ」

 プッチャンの言葉の意味は、やよいにもわかる。
 相手側の立場になって考えてみるならば、警戒すべきはやよいのような弱者よりも九郎たちのような強者。
 人員を割くとしたら当然、そちらのほうになる。状況を見るなら、やよいはただ単に捨て置かれているだけとも取れるのだ。

「ありがたいっちゃありがたいけどな。このプッチャン様がついている高槻やよいの存在を軽んじるなんざ、愚かにもほどがあるぜ」

 プッチャンは大胆不敵にこの状況を受け入れる。
 対して、やよいは悲観的だった。

 自分が弱いことは十分に理解している。できれば誰に襲われることもなく進みたいと、そう願ってもいる。
 だが、やよいに敵兵があてがわれないということはつまり、その分だけ他の仲間が苦境に置かれているということでもある。
 仲間の危険と自分の安全は両天秤に置かれている。そう考えてしまうと、通路を進む足も重くなる一方だった。

 もし、このまま自分たちだけで神崎黎人のもとまで辿り着いてしまったとして――はたしてなにができるだろう?
 吾妻玲二は神崎黎人を殺すと豪語していた。それは殺し屋、“ファントム”である彼だからこその道だ。
 一介のアイドルであるやよいには、逆立ちしたって真似できない。真似をしたくもない。

 たくさんの人を死に追いやった神崎黎人は許せない。
 だけど、その『許せない』という感情は決して、殺意には昇華しえない。
 他の人間なら露知らず、少なくとも、高槻やよいにとっては。

 だからこそ――進む道の先にある、到着点。そこまで行くのが、怖い。
 視線は、前ではなく足下に向いてしまっていた。

「……――やよいっ! 前! 前見ろっ!」

 その、数秒。
 やよいの意識は『戦場』から外れ、プッチャンの声を耳にしてようやく戻る。
 一本道の通路、進みゆくその先に、人が複数名、現れていた。

 ある意味では仲間の証たる首輪、それにインカムもつけてはいない。
 代わりにベストのようなもの――防弾チョッキだろうか――を身につけ、各々が銃器で武装している。
 数えてみると、人数は五。一人が大声を出して他四人に行動を促し、一人、また一人と、携えていた銃器をこちらに構える。

 銃口はすべて、やよいのほうへと向いていた。

「てけり・り!」

 叫んだのはダンセイニだった。軟体の体を素早く床に這わせ、やよいの足を絡め取る。
 バランスが取れなくなったやよいはそのまま後ろに倒れ、ダンセイニの体内に取り込まれた。
 ねばねばとした感触を覚え――その次の瞬間、銃声。

 乾いた一発ではない。弾雨と称すべき音の波涛が、実際に無数の銃弾という形でやよいの身に降りかかった。
 侵入者、高槻やよいを発見した一番地戦闘員は男性五人。武装はマシンガンだった。

「うっ、わ、わっ!?」

 突然の窮地にまともなリアクションを取ることもできず、やよいの頭はパニックに陥った。
 ダンセイニに守られ、運ばれるがまま、元来た通路を引き返していく。
 後方からは絶え間ない銃撃が押し寄せ、何発かはダンセイニに命中する。
 だが、それらは中のやよいに到達するよりも先に軟体に威力を吸収されてしまっていた。

 黄色いボディの中に、困惑する少女の身と、いくつかの銃弾、そして一つ目が浮かんでいる。
 ダンセイニ自身にダメージはない。床を這う速度も、その形状からは想像もつかない獣のそれだった。

 通路の曲がり角を左に折れ、敵兵の射程範囲から逃れる。
 銃声がやむと、バックミュージックは靴が床を叩く音に切り替わった。敵兵が追ってきているのだ。

「ちっ……応戦するぞやよい! ダンセイニ、コンビネーションAだ!」
「てけり・り!」
「ふぇ、えぇ~っ!?」

 プッチャンの思わぬ発言に気が動転するやよい。
 追ってくる敵兵の足音は徐々に大きくなっていき、身の危険を按じさせる。

「きゅ、急にそんなこと言われても~っ!」
「腑抜けてんじゃねー! 俺たちゃ遊びに来たわけじゃねーんだぞ!」
「てけり・り!」

 言い合う内、『食堂』と書かれたプレートが下げられた部屋を通り過ぎる。
 廊下側の窓ガラスから、テーブルや椅子が並べられた内部の様子が見て取れた。
 ああ、一昨昨日の今頃はみんなで楽しくお昼の準備をしていたなぁ……とやよいは現実逃避に走る。

 それも一瞬。
 床を這って進んでいたダンセイニが不意に停止し、敵兵が迫ってくるほうへと向き直る。
 やよいの体をがっちりと固定したまま、軟体をそれぞれ右上、右下、左上、左下の四方向に突出させた。
 通路の四隅に粘度抜群の液体を付着させ、ダンセイニ自体もここに固定。バッテン印のような形状に変化を遂げた。
 その中心に、一つ目とやよいの身が置かれている。

 迫る敵兵たちはダンセイニの奇行に対し怪訝な面持ちを浮かべていたが、臆することなくこちらに向かってくる。
 『食堂』の辺りにまで差し掛かったところで立ち止まり、銃を構えた。そこが射程距離なのだろう。
 ダンセイニは彼らが立ち止まり、銃を構える――その一連の動作の際に生じた隙に付け込み、体の中心部をやよいごと後方へと仰け反らせる。

「やよい! 俺を――右手を前に突き出しておけ!」

 今にも銃弾を放とうとしている敵兵を正面に置きながら、やよいは予感した。
 プッチャンとダンセイニが、いつの間にか編み出していたコンビネーション。
 単体での破壊力、一方の軟質さや粘着力を活かした、つまりはゴム鉄砲の要領。
 それはさながら、通路全体を利用した巨大スリングショットのようだった。

「受けてみやがれ! これが俺とやよいとダンセイニの合体攻撃――『弾丸プッチャン弾』だ!」

 引っ張られていたダンセイニの中心部が、ふっ、と消える。
 通路の四隅に接着していた部分が支点となり、中心部には戻る力が加えられたのだ。
 ショゴス――それはウォーターベッドのような柔らかさと、スライムのような粘度、そしてゴムのような性質を併せ持つ謎の生物。
 それがスリングショットのように体を働かせた結果、そこに反動が生まれ、
 やよいの身体は人間大砲もびっくりの勢いで敵兵らに向かって射出された。

「こいつはおまけだ! プッチャン――」

 言われたとおり右手を突き出していたやよいは、プッチャンを先端とした矢のようなものだ。
 掛け声と共にプッチャンの体が赤く燃え上がり、やよいごと一つの大きな炎弾と化す。
 それは五人程度の戦闘員など一撃で全部巻き込めてしまえる規模で、結果、

「――バーニング!」

 五人が五人とも、高槻やよいの突進に蹴散らされることとなった。

「ぶっ!? わっ、ひゃっ、ぎゃ~!」

 甲高い悲鳴は、敵兵のものではない。ダンセイニに撃ち出されたやよいのものだった。
 勢い衰えることのない弾丸はそのまま向こう側の壁際にまで届き、衝突してやっと停止。
 バーニングの威力で壁が陥没したが、幸いにもやよい自身に外傷はなかった。

「よっしゃあ! 一網打尽だぜ!」
「うぅ……が、がくっ」

 外傷がないのはプッチャンが上手く力をコントロールしていたからだが、その身にかかる負担までは軽減しきれない。
 自身が弾丸として撃ち出されるという衝撃に、やよいの脳は揺れ、内臓はひっくり返り、過度の車酔いにも似た症状に襲われる。

「てけり・り……」

 ダンセイニが申し訳なさそうな瞳を浮かべながら、やよいの足下に這い寄ってきた。

「おーい、大丈夫か? これくらいでへばってちゃ、先が思いやられるぜ」
「……き、今日のプッチャンは激しすぎ……ますぅ」
「なに言ってんだ。あの特訓の日々を思い出せ! 俺はおまえをそんな軟弱者に育てた覚えはねぇ!」
「育てられた覚えもありませーん!」

 緊張は一瞬だけ。
 危難が過ぎ去った後はもう、いつものやよいとプッチャンだった。

「ああいうことするんなら、ちゃんと事前に言ってください!」
「にゃにおう! 事前に言っちまったら、やよいは嫌がるだろうが!」
「あたりまえですっ!」
「てけり・り」

 怖くなかったわけではない。むしろすごく怖かった。だがその怖さを埋め尽くすほどに、安心感があったのも確かだ。
 プッチャンと、ダンセイニ。みんなと離れ離れになってしまったやよいを、身を挺してでも守ってくれる心強い二人。
 一人ぼっちだったらきっと、敵兵と顔を合わせたところですぐに撃たれて死んでしまっていただろう。
 一人じゃないから戦える。二人が一緒だから前に進める。不安感と安心感が混在する、曖昧な気構え。

 それが――高槻やよいの内包する『危うさ』。

「さて、もたもたしてると次の敵が来ちまうからな。とっとと先に進むぞ」
「む、むぅ~……は、はい……」

 錯覚などではない。今日のプッチャンはやよいに対して一際厳しかった。
 しかしその厳しさの裏には、確かな甘さ、そして優しさがある。
 おまえのことは俺が守るから、気にせず先に進め――と、そんなメッセージが感じられる。
 だから頑張れる。プッチャンがくれる安心感に、応えることができる。

 それが――高槻やよいとプッチャンが共有する『危うさ』。

 ここは、決戦の地なのだ。
 誰もが皆、命を危険に晒す場。
 絶対の安心など、絶対にありえない。

「てけり・」

 元居た通路に戻ろうと、一歩目を歩みだして、二歩目は踏み止まらざるを得なかった。
 耳慣れした、ダンセイニが放つ独特の音が、不意にそこで途切れたから。
 定位置となっていた自らの背後を振り返り、やよいは見る。

 ダンセイニの透き通った体に、一本の剣が突き刺さっている。
 先端から柄までを目で追っていくと、それは見知らぬ女性の腕に直結していた。
 剣は握られているのではなく、腕とじかに繋がっている。そこが、見知らぬ女性の正体を察知するポイントとなった。

 女性の顔を探る。無表情。見ているのではない。ただやよいに己が双眸を向けているだけ。機械的な所作。
 その姿はどことなく、深優・グリーアの第一印象に酷似していた。否、まったくの同一と言ってしまってもいい。
 女性のすぐ傍には、先ほどやよいが視界に捉えた『食堂』の入り口がある。中から出てきたらしい。

 伏兵だ――どうしてこんなところに――思い、数秒。
 これは人間じゃない――深優さんが言ってたアンドロイド――思い、数瞬。
 女性型アンドロイドはブレードアームに突き刺さったダンセイニを乱暴に振って剥がし――そして。

「あっ――」

 やよいがようやくの声を上げた頃――その凶刃を、殺意の矛先を、無垢な色の顔面へと差し向けた。

 銀の光沢が視界を埋め尽くす。
 両の脚は棒と貸し、床に植えられた。
 表情を変える方法を忘れてしまう。
 ただ、右手だけが動いた。

「やよいには――指一本触れさせねぇ!」

 既視感。
 これは何度目のことだろうか。
 やよいの右手に嵌っていたプッチャンが、アンドロイドの繰り出す刃を受け止めていた。
 指も持たない、その小さな両腕で刀身を挟み込む、白羽取りの形。
 押す力と押さえる力、双方に差はなく、生まれたのは均衡。

 やよいにはまだ、なにが起こったのか認知できない。
 目に映る光景を、ただの映像として捉えているだけで、現況という形では理解できていない。
 まるで、他人の夢を外枠から覗き見しているような心持ちだった。

 見えているのは、三つ。

 やよいに剣を突き立てんとするアンドロイドと、それを受けるプッチャン。
 壁際の辺りに黄色い半透明の物質を撒き散らし、目を回すダンセイニ。
 倒れ伏す四人の敵兵と、瀕死と窺える動作でこちらになにかを投げようとしている一人。

 新たに見えたものが、一つ。

 気絶には至らなかった敵兵が一人、懐から取り出した小さなそれを、投擲してくる様。
 宙を舞うそれは、昨日さんざん投げたり打ったりした白球に似た大きさ。
 形状はどちらかというと、オレンジよりもパイナップルに近かった。

(――あ、そっか)

 刹那の瞬間に、やよいは教訓としてそれを受け入れた。

 ここでは、一瞬が勝負なんだ。

 片時も気を緩めてはならない、安心なんてしちゃいけない。

 緊張と集中の継続が肝心と言える、ステージにも似た場所。

 駆け出しの自分なんかが上がるべき舞台ではなかったのだと、

 手榴弾が爆発するのを最後に確認して、


 痛感した。


 ・◆・◆・◆・


少年は走る。背にかけられた言葉を力とするように、決して振り向くことはせず、ひたむきに、まっすぐな道をただ進む。

クリス・ヴェルティンは決して強い人間ではない。
硬い床を叩く足はすぐにおぼつかなくなり、筋肉は悲鳴をあげ、息はあがり、額にはいくつもの汗の玉が浮かんでいる。
それらの現実を凌駕する堅固な心の強さがあるわけでもない。
彼の心はいつだって這い寄る影に怯え蝕まれている。
しかし、それでも彼は走る。ただまっすぐに。愚直なまでに。それを自覚してもなお、ただ前へと走る。

彼女と会わなくてはいけない。交わす言葉があるはずで、伝えたい気持ちがあるはずだから。
これまでの全てを嘘にしない為。彼女のこれまでを嘘にしない為。自分のこれまでを嘘にしない為。

クリス・ヴェルティンはまっすぐな道をただ進む。



見通しのいいまっすぐな通路を駆けているクリスの目の前に、不意に黒い影が射した。
何か? そう思う間はなかった。
天井より染み出すように現れた黒い影は物言わずクリスを強く打ち据え、彼のか細い身体を辿ってきた道へと押し返す。

「――――っ!」

少しの滞空の後、背中から床へと叩きつけられたクリスの口から声にならない悲鳴が吐き出された。
まるで糸の切れた人形のように床の上を転がり、そしてそれのようにクリスは床の上から立ち上がることができない。
たったの一撃で身体のそこらじゅうが痛みと痺れを訴え、心臓が不吉な音を立て、意識は白く朦朧としている。
その、朦朧とした意識の中で彼が見たのは、通路の先からこちらを冷たい目で見ている巨大な黒猫だった。

「もう…………」

遠回りはしていられないんだ。と、クリスは全身を苛む苦痛に抗い、弱々しくもその身体を起こす。
目の前にいるのは話に聞くオーファンというものだろう。
禍々しくはあるが、なつきのデュランや碧の愕天王とどこか似ている。きっと、同じように強いに違いない。
そこまで思って、しかしクリスは逃げようとも引き返そうともしない。
この先に、この先をまっすぐ行けばそこに彼女がいるのだ。だから――。

「……ロイガー。……ツァール」

2本の短剣をクリスは両手の中に現した。
そして、風の神性を持つ一対のそれを胸の前で交差させると、全て追い切り裂く渦巻き――手裏剣と変化させる。
次の瞬間。クリスの手を離れた手裏剣が風きり音だけを残しながら黒猫のオーファンへと肉薄し、黒毛を通路の中にばら撒いた。

「あ――!」

クリスの口から驚きの声が漏れる。
通路一杯の大きさがあった黒猫は、猫のようにしなやかに身をかがめるとそれを容易く避けたのだ。
切り裂いたのは体毛の一部だけ。
それは派手に散らばったものの黒猫そのものは無傷で、かがんだ状態から身体を伸ばすとクリスへと飛び掛ってくる。
見誤ったと後悔するも遅く、

「――がぁっ!」

再びクリスの身体がボールのように転がり通路を戻ってゆく。
なんとか立ち上がろうとするものの痺れる身体は先ほどよりもなお言うことを聞かず、なすすべなくクリスは黒猫に踏みつけられる。
足裏の感触は柔らかいが、黒猫は大きくそして重たい。どこかで何かが折れる音が鳴り、潰れた悲鳴が漏れ聞こえた。
たったこれだけで終わりなのだろうか?
しかしそれも正しいことだとも思える。何かを成すというには彼は弱く、現実とは決して誰かを贔屓するものではないのだから。

「…………でも、まだなんだ。……まだ……死ねない」

その時、黒猫がビリビリと通路を震えさせるような悲鳴をあげて仰け反った。
押さえつける脚から力が抜けて、クリスはその隙に床を転がってその場を逃れる。
これは奇跡ではない。クリスの意志が齎した順当な結果。ブーメランとして戻ってきた手裏剣が黒猫の背中に突き刺さったのだ。



「ここじゃないんだ――」

クリスは口元をべったりと濡らす血を拭い、また再び立ち上がる。

「僕の命は――」

約束された勝利の剣を取り出し、針金のような毛と血を振りまく黒猫へとその切っ先を向けた。

「君たちなんかには絶対に――」

それが黒猫のオーファンが持つ能力なのだろうか、宙に舞っていた毛が突如として矢のように飛びクリスを傷つける。

「あげられないんだ――」

身を切り刻むそれを無視してか、それともすでに痛覚はないのか、クリスは懐に手を差し込むと、ジャラと一握りの宝石を取り出した。

「だから――」

宝石を握り締める拳の内から光が漏れ溢れ、炎のようなそれはクリスの全身を包み、熱と力を循環させてゆく。

「もう――」

光があったのは一瞬で、それはすぐに失われた。なのに黒猫はクリスへとは近づかない。まるで、まだそこに火があるかのように。

「邪魔をしないでくれ――」

ただの石となったそれが床の上でバラバラと音を立て、灰となって散った。


クリスは両手で聖剣を掴むとそれを天の方へと掲げた。


そして振り下ろされる。


それは最強の幻想。


想いを囚われし者を導く道標。


人々が追い求める理想を実現する為の輝き。


悲しみの連鎖を断ち切る剣――が、全てを白く埋め尽くした。




 ・◆・◆・◆・


「クリス……」

彼女以外の誰もいない冷たい通路に響く寂しそうな呟き。
玖我なつきは先程まで感じていた手のぬくもりを懐かしそうに思いながら、単身奥へと向かって進んでいた。
あの後、何体かのアンドロイドを蹴散らしてからは特に一番地からの追撃にも会ってはいない。
多少の面倒や不可解なことがあったりはしたが、進行は順調だ。
心配事といえばやはりクリスの事だった。
図らずして、彼を単独にしてしまった。
いくら、魔法の武器があろうとクリスはただの音楽少年で。
オーファンとの戦いに明け暮れたなつきの様に戦いになれているわけじゃない。
そんな彼がオーファンやアンドロイドなんかに襲われたら……?

「……大丈夫、クリスは大丈夫」

不意に浮かんだ最悪な結末を頭を大きく振ってかき消す。
そんな結末は有り得ない、あってはいけない。
それになつきは信じている。
クリスがちゃんと目的を果たせる事を。
クリスが自身の望みを叶える事を。

信じて、願っているのだから。

「だから……行こう」

だから、なつきは進む。
一歩ずつ、一歩ずつ。
だけど、確実に。
なつき自身の目的の為に。

もう、クリスの目的はクリスのだけものではないのだから。
それは、玖我なつきの目的にもなっているのだから。

何故、そうなつき自身で思えたかは本人でもよくわかっていない。
来ヶ谷唯湖の事を棗恭介に託されたから?
なつきの為に手を汚して、そしてなつきだけの為に散った藤乃静留の生き方の為に?
心の底から愛しているクリス・ヴェルティンを支える為に?

「……知るか、そんなもの」

そんなもの、知らない。
難しい事、ごちゃごちゃ考えたくない。
とりあえず決まっている事。
ただ、

「やりたい事をするだけだ」

なつきがやりたい事をするだけ。
自分がしたい、ただ、そう思ったから。
理屈とか、理由とかどうでもいい。

素直に、やりたいそう思ったことをやるだけ。

それがきっと自分の為に。
結果として、それが皆の為になるんだろうと思いながら。



「…………おや、伴侶はいないんだな」



―――そして、ついに出会う。



一人の少年を心の底から愛している少女達が。

その少年の為に全てを懸けている少女達が。

「……来ヶ谷……唯湖」
「……初めまして……と言いたい所だが、そんな気がしないよ。玖我なつき君」



この地獄の島においてついに出会ってしまった。



一方はその目に強い意志を宿らせ、相手を見つめている。
一方はその目に底の見えない深い諦観を宿らせ、薄い笑みを浮かべていた。

「こっちもだ……色々話したい事もあるしな」
「ほう……さて、どんな事を話してくれるのかな? 泥棒猫君?」
「……なっ!?」

蒼い髪の少女は両手に銃を握り。
黒い髪の少女は右手に銃を、左手には剣を。


そして、


「まぁ尤も……聞く必要性もないがな!」
「……っ!?」



一人の少女を愛し続けている故の衝突が


始まりを告げたのだった。


 ・◆・◆・◆・


「おはようございます。ゆうべはおたのしみでしたね」

開口一番、那岐は秘密の花園から舞い戻った桂と柚明に皮肉を込めて言った。

「えっと……どういう意味……?」
「さあ……?」

顔を見合す桂と柚明。
せっかくの皮肉も二人には通用しなかった。

「いいですよーっだ。男なんて基本ハブられて当然の存在だもん」
「えっと……なんだかよくわかんないけど、ごめん」
「ま、別にいいけど。さてと……気を取り直してそろそろ出発しよう。準備のほうはOK?」
「あ、うん。大丈夫だよ」
「柚明ちゃんは?」
「ええ、私も準備はOKよ」
「なら、出発だね。あまりぐずぐずしてはいられない。行こう」
「うんっ!」

頷く桂と柚明。三人はさらに洞窟の奥へ向かって歩を進めた。



三人は緩やかに傾斜した坂道を登ってゆく。
右手に見える地下水脈はいつしか崖下を流れており、左手の岩壁にはオレンジ色の照明が所々に点在し、淡い光を放っていた。
壁から崖まではおよそ三メートル。普通に歩く分には何ら危険なことはない。
しかし、いざここで戦闘となると狭く、戦いには不向きな地形だった。

「もうどれくらい歩いたんだろう……」
「小一時間は歩いてるかな。方角もほぼ真南に向かってる」

いつしか会話も少なくなり無言になってゆく。
さらに数十分歩いたところで洞窟はその様相を変貌させた。
崖下を流れる地下水脈は広大な湖になり、傾斜した坂道はまるで野球場のように広大な広場に繋がっていた。

そして広場の最奥に、複数の篝火と注連縄に囲われた区画がある。何らかの祭壇のようだった。
祭壇の中心には数人の烏帽子を被った狩衣姿の男達が輪になっている。
三人が様子を伺う岩陰からは遠すぎて詳しくはよくわからないものの、何らかの儀式を執り行っているようだった。

「へぇ……あれ一番地お抱えの陰陽師じゃないか……そしてあそこが『力』の中心」
「あそこを押さえるのがわたし達の目的だね、でも警備がすごいね……」

祭壇の周りには陰陽師を守るように女性型のアンドロイドが大量に配備されている。
まるで蟻の一匹通さないと言った風であった。

「それだけあの祭壇が連中にとって重要な施設であることの証明さ」
「私の『蝶』でもう少し詳しく探りましょうか?」
「いや、あの陰陽師はそれなりに術に長けている。柚明ちゃんの『蝶』は逆に感づかれる危険性がある」
「そうですか……」
「でも……このまま正面突破するのは――」

と、その時だった。
バサバサとまるで鳥が羽ばたくような音がした。

「白い鳩……ううん、白い鴉……?」

見上げた桂の視線の先の岩に白い鴉が留まっていた。
鴉はじっと桂達を見つめていたが、ほどなくして翼を広げ飛び去って行く。
飛び去る瞬間、那岐は見る。
鴉の両翼に赤く刻まれた五芒星を――

「しまった! あれは奴らの哨戒用式神――」

その瞬間、洞窟全体に警報が鳴り響き、薄暗かった洞窟全体に次々と白色の蛍光灯が点灯してゆく。
あっというまに洞窟は昼間のように白い光で覆われた。
そして祭壇に変化が訪れる。
何もない空間に光の粒子が現れ、異形の獣の姿を次々と象ってゆく。

「そうか……! ここの地脈を利用してオーファンを……」
「なら……あの祭壇を何とかすれば」
「うん、施設内に召喚されるオーファンを抑えることができる! 行くよみんなッ!」


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