無題は、んぷとら(トランプ)による現代4コマ。通称に「・・・」など。2024年発表。
概要
縦長の画面に黒い丸を3つ並べ、4コマとしている作品。
作品は真っ白な背景と三つの大きな黒丸3点のみで構成されている。これは、4コマが「3つの区切りによって分割された空間」であることを踏まえて表現しているのである。彼はしばしば現代4コマの概念を分解して区切りなどに解釈を広げる試みをしている(4コンマなど)。その過程で作られた一作品とみられる。
4コマを「区切られて4つの空間を形作っているもの」と捉えた上で、その「区切り」のあり方に一石を投じるように抽象化を試みた作品であるとされる。水を用いず土砂や岩の配置によって山水を表現する試みをした、禅寺の庭園・枯山水のように、最低限の構成要素が代替して4コマを表している。
作者による主張
空間を区切るのに大仰な壁などは要らないんだよ。1つ柱を置くだけで、もう一方との間に境目ができる。その時点でその空間は二つに分割されるんだ。
その丸の間から空間に向かって抜けていくエネルギーみたいなものを見て欲しい。水が流れたり風が吹いて丸い面に当たると、決して止まらないで分たれて広がっていくでしょ?その重力、磁場みたいな黒いエネルギーのイメージを白の部分に見い出してくれると嬉しい。
類型モデル
本表題作品は4コマを「区切ることで4つの空間を生み出したもの」と捉えて、その区切りの単位に対して単純化の提案を行なっている。例えば鉄道駅の昇降バー型ホームドアは、従来の引き戸型に対して面積の少ないワイヤーによる区切りでホームと線路を区別している。
- ぷらりねの作品「一時停止」は、一時停止の標識を3つ提示した。動いている様子を3度止めて、4回の動きの側を想起・描写するという手法をとっているのは文脈的で面白い。
- 「田」のような4コマの形式(4コマ原理主義でいうところの曼荼羅型4コマ)に対し、いとととは十字の区切りの内包を指摘した(コマ十表現)。この事例は、表題作と同じ視座に立っている試みであるといえよう。ただし、これは十字という記号の特性上、表題作のような置き換えには至っていない。4コマは4つの空間、3本の区切りは3つの記号に分解できるのに対し、十字は一つの記号であるため置換は難しい。
- 中黒のような図形3つを注視している点では区切り4コマも該当するが、これはあくまでも介在する文字列が主体である。点そのものが肥大化されている表題作とは、視座が異なるものといえる。
評価
- なむさんは発表時の反応として「極めるとはこのこと」と述べた。のち自身のnote記事では省略に踏み切った勇気を讃えつつ、「4コマ認識の際への挑戦」などと詳解している。
- トウソクジンはソシュール記号論のシニフィアン(記号表現)とシニフィエ(記号意味)の二項になぞらえ、現代4コマにおける新たなシニフィアンのあり方の一つと激賞した。
関連リンク
関連項目
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