我が名は絶狼 ◆gry038wOvE
不意に、零の胸元でピキッ、と音がした。
「いいえ、零……残念だけど」
そして、シルヴァの苦しげな声や、駆け寄る
冴島鋼牙の表情に、零は初めて異変に気づく。
零の体が、がくっと、崩れ落ちる。胸に締め付けられるような痛みが残っていた。
零は、はっとして、シルヴァを手に取った。
「シルヴァ……!」
シルヴァは、半分が砕けていた。
それが、どういうことなのか、零が知るのは前方のキバを見たときだった。
彼は何事もなかったように、零に背を向けて歩き出したのである。
逆に、彼はあの一瞬でゼロの胸の魔導具を突き刺していたのだ。
ある意味では心臓よりも痛烈に零に痛みを与える箇所への攻撃だった。それが意図したものなのか、それとも単純にダメージを与えやすい場所だったからなのかは結局のところ、わからない。
「バラゴぉぉぉっ!!」
魔戒騎士の姿になれない状態ではあるが、零はバラゴの背を追い始めた。
既に心滅獣身を経験し、鎧の制限時間に縛られることのない暗黒騎士は、こちらにマントを向けている。振り向こうとさえもしない。
バラゴが背を向け去っていく理由は単純だった。
零という男が、自分と同じく心滅獣身を試みる可能性が高いと思ったからだ。
執拗にキバを狙う姿は、もはや魔戒騎士本来の姿とは大きくかけ離れていた。悪への憎しみではなく、個人的な憎しみによる斬撃。
魔戒騎士である以前に、人間らし弱さに満ちている。
そして、この数日のリミットの中で手っ取り早く強くなる手段を、彼は探すだろう。
心滅獣身しかない。
敵になるのは目に見えているが、ホラーや魔戒騎士を喰らい強くなったキバとは差がありすぎる。
(どうやって、僕を殺す? 答えはひとつしかない……闇に堕ちるといいさ、無名の魔戒騎士)
零が駆けてくるときに、バラゴは鎧の中で笑う。
鎧を召還せずにどうやって戦うのだろう。大河の息子も、鎧を召還できない。
強いて言えば、仮面ライダーという厄介な相手がいるが、それもこの二名では敵ではない。
赤と銀のライダーの蹴りは、多少バラゴの首を痛めてくれたが、もう片方はダメージと呼べるものさえ感じなかった。
そして、零がここでこれ以上追うことはないのだろうと、バラゴは思っていた。
というのも、破壊したはずの魔導具にまだ少し余力が残っているからだ。
彼女の崩壊を見届けるドラマが、まだ零には残っている。
他の三名が見入るほどのドラマになる。彼らがそれに見入らないような性格であるとしても、バラゴには片手落ちで勝利できるような相手だ。
それ、ドラマが始まった。バラゴはそのドラマを見ようとはせずに、まっすぐ歩いていった。彼は自分自身がこのドラマの出演者であり、ここで去る役なのだと知っているのだ。
「零、駄目っ……! あれは今のあなたの敵う相手じゃない……」
零が声をかけられてシルヴァを見ると、彼女は右半分が欠損しかけ、今にも重力に引かれて崩れ去ってしまいそうな体になっていた。
魔戒法師もおらず、この崩壊を止める術を知らない零は、あわてふためく。
バラゴを襲おうとする体を止める。しかし、バラゴを殺したい。
二つの感情に惑わされるが、その間立ち止まっているのだから、バラゴを追う選択肢は小さなものとなっていた。
「……憎しみにとらわれないで、零。……そのまま戦っても、本当の強さは得……ら、れな……」
言い終える前に、シルヴァの半身が、零の足元に落ちた。
拾い上げると、それはたちまち消えてしまう。胸から下げていたシルヴァのもう半身も崩れ落ちていく。壊れた機械のように、まだ小さな火花を散らして微動しているが、それはシルヴァの魂によるものではなく、ただ、ソウルメタルという無機質が懸命に働こうとしているだけの動作である。
シルヴァ──魔戒語で「家族」という意味の相棒。
父を喪い、婚約者も喪った彼の最後の砦だった魔導具であった。
「クソォォォッ!!!」
零は、泣いてはおらず、ただシルヴァを奪った者への怒りに慟哭していた。彼の涙は、とうの昔にかれてしまったのだ。
彼はもう、辛いとき、泣くことさえ出来ない。それが更に自分の胸を締め付けるのだと、零はこのとき初めて悟った。
また、強い怒りに身を任せながらも、どこか自分を制止していたから、ストレスも溜まっていた。
本当なら、怒りに任せてこの手に握った物体を投げたり、叩き落したりするのだろうが、それがシルヴァの残骸である以上、彼は強く握り締めるしかできなかった。
「零!」
鋼牙の一喝が零の背後で響く。
それが、零の当たる相手だった。
零は、ただ怒りに任せてその男を殴るための拳を繰り出した。
まっすぐ正面に、顔狙いのパンチだ。ボクサーでさえ一撃で焦点するような魔戒騎士のパンチである。
しかし、受ける相手も魔戒騎士。鋼牙のパーが、零のグーを受け止めていた。
「鋼牙、お前の父親が、あの男の師匠なんだろう……!?」
「ああ、そうだ」
「なら、お前の父親があいつを止めていれば! お前の父親があいつに何も教えなければ! お前の父親があいつを殺していれば、静香や、父さんやシルヴァは死なずに済んだんだ!!」
零は、八つ当たりとしか思えない言動をするが、心が弱くなっていくのを抑えられなかった。
彼は、ただひたすらにこの世界が憎かった。
たった一人の男によって、家族を次々と奪われる。
しかし、元をたどれば、その男を産んだ両親がおり、その男を育てた師がある。
その全てさえ、今の彼には憎かったのである。
鋼牙も、実はバラゴが生きながらえるのに一役買ってしまったゆえ、それに関しては反論もできない。
大河とバラゴの決着の夜。あの日、鋼牙が現れなければ、大河はバラゴを倒せたかもしれないのだ。
鋼牙にのしかかるのは、父の死の責任だけではない。その先にバラゴに倒された全ての命は、鋼牙の些細な行動によって奪われたと言ってもいい。
だが、それは既に悩み抜いた。
そして、鋼牙がすべきは悩むことではなく、零を本当の零に戻すことだと、既に理解していた。
「シルヴァの最後の言葉を忘れたのか、零! 憎しみにとらわれるな!」
「いや、俺はもう何もいらない! あいつを倒せればそれでいい! こうなったら、もう一度鎧を召還して、心滅獣身を……」
バラゴが鎧に魂を喰われた魔戒騎士ならば、同じ手で対抗すればいいのだ。
零は、この島内で、この場所のごく近くにいる男を、ただ殺したかった。
もはや、自分が得られる幸せもないし、守る者もない。
零は、自分だけのために生きるだけの欲を持っていないのだ。ずっと静香を守るために戦ってきたし、それを喪ってからも、黄金騎士を倒す目標を持って生きてきた。
シルヴァがいたから、闇に堕ちることも避けた。
しかし、もう喪う者が何一つとしてない自分が、どこまで堕ちようが、悲しむ者もいなければ、止める者もいない。
どう生きようが自由なはずだった。
すると、零の右腕を握ったまま、鋼牙は零の腹を蹴飛ばした。
足を高く上げ、零に避ける暇さえ与えず、何より強い一撃を鋼牙は繰り出したのだ。
零の右腕がすぐに離され、一瞬空中に浮いてから、地面に落ちた。
零が苛立ったまま見上げると、そこでは鋼牙が零以上に顔を歪めて零を見下ろしていた。
「何するんだよ……鋼牙ぁっ!」
鋼牙は魔戒剣を抜き、零の首元へと差し出す。零は一瞬だけ、そこに映った自分の顔を見た。
毎朝、鏡で見ている顔と比べると、醜い顔だ。今までにこんな顔の自分を見たことがない。この醜い顔は何かの間違いなのではないかと思った。
「お前が魔戒騎士の禁忌を犯すというのなら、俺はお前を斬る!」
鋼牙の宣言は、重たく響く。
彼にとって、ホラーでない誰かを斬るということは、唯一果たしきれない覚悟でもあった。
御月カオル。魔戒騎士としての使命に反して、「斬らなかった」女性。
あるいは、鋼牙が「シロ」と呼ばれていた遠い昔に仲間に誓った「もし誰かがホラーとなったら斬る」という約束も思い出す。
死んでしまった彼らは、親友だった。
そして、
涼邑零も親友だった。
それを斬るというのに、どれだけの覚悟がいるだろう。
しかし、鋼牙は本気だった。斬りたくなかったとしても、こうして道を外すのなら、冴島鋼牙は涼邑零を斬る。
「忘れたのか、零。俺とは違い、正当な魔戒騎士の系譜でもなかった……お前の今までの血のにじむような努力を」
「俺が魔戒騎士になったのは、静香を守るためだった! ……だから、俺は静香を殺したアイツを殺す! それが今の俺の魔戒騎士としての使命だ……そのためなら何にでもなる!」
「黄金騎士に憧れていたんじゃないのか」
「……なんでそれを……っ!! クッ…………だがっ! 俺にはなれなかった……っ!!」
黄金騎士に言われると、少し嫌味っぽい気もするが、無論彼にそんな気は一切なかった。
ただ、道を忘れた魔戒騎士を正すために、かつて零に言われた言葉をかけた。
「なら、銀牙騎士・絶狼──その名に誇りはないのか」
しかし、何も最高位だけが魔戒騎士ではない。
一人前の魔戒騎士には、誇り高い異名がつく。銀牙騎士になることなど、並みの魔戒騎士では不可能だ。
人間らしい娯楽にも怠けず、気を常に張り巡らせ、常に襲われる覚悟を持ち、休日など忘れ、人の姿をした敵を殺す覚悟を持ち、常に鍛錬を行う。そんな、己の生さえも半ば捨てたような努力と苦渋の果てに成り立つ魔戒騎士の仕事の中でも、特にその技能と経験に優れた者だ。
それが、この若さ、それも魔戒騎士の家に生まれでもない人間にできたというのは、奇跡的なことなのである。
「あるさ、あるに決まってる! 今の俺には黄金騎士なんかよりも、ずっと誇らしい名前だ。だけど……」
「心滅獣身を行えば、お前は第二のバラゴになる。そして、またお前が誰かを殺し、第二第三の涼邑零を生む、静香を生む、道寺を生む、シルヴァを生む、冴島鋼牙を生む、冴島大河を生む。そんな悲劇を……繰り返していいのか?」
「……」
「俺たちは、その悲劇を断ち切るために戦う魔戒騎士じゃないのか!!」
はっ、と零の心臓に何かが突き刺さったような刺激を受けた。外的でなく、内的に、何かが零の胸の中で動いた。
魔戒騎士。
この会話の中で、鋼牙は何度も使った言葉だが、こう問いかけられた瞬間、なぜだか胸を抉った。
その問いかけに自信を持って答えられなくなりそうな自分が怖いのだ。
このまま、心滅獣身を行えば、魔戒騎士でなくなる。
静香も、父も、シルヴァさえ喪って、もう魔戒騎士なんてどうでもいいはずなのに、なぜか魔戒騎士の名を捨てることが怖い。
いやなのだ、魔戒騎士でなくなることが。
「そうだ、俺は……」
鋼牙の言葉が、闇に片足を乗せようとしていた零を掬い上げた。
憎いはずのバラゴの後姿が、零の中で浮かび上がる。
無論、その背中を突き刺したい気持ちは変わらない。
だが、そこに伴う感情が、何を憎むものなのか……それが少し違っていた。
仇を憎む感情か、敵を憎む感情か、
否、悪を……人の命を脅かす者を憎む感情だ。
「……俺は、魔戒騎士──銀牙騎士・絶狼だ!!」
銀牙騎士・絶狼が今、その使命を取り戻した。
「ああ、知っている!」
剣を仕舞った鋼牙は少し笑ったように見える。
零を斬らずに済んだ安堵、零を喪わずに済んだ安堵、零が本来の零になった安堵。
その全てが、鋼牙から緊張感を取り外したのだ。
「だが、鋼牙……何故俺が黄金騎士を目指していたことを知っていたんだ?」
「お前が言ったことだ。……まあ、今のお前より、ずっと未来の涼邑零の話だ」
「そうか。なら、俺はお前の未来の──」
友、なんだな。そういいかけて、やめた。
この男に、それを言ってしまうのはなんだか癪だった。
鬱積した感情が、晴らされていくなか、どうもこの男と打ち解けきれない部分があった。
それは、やはりこれまで散々敵として戦ってきたせいもあるだろう。
そう簡単に和解を認められる関係ではないと、零もわかっていた。
何より、彼はクールなのである。自分からこういうことを言うのは、余程のことだ。
鋼牙も、そんな零の心情や性格を察していたので、そこから先の言葉を聞こうとはしなかった。
第一、彼はその先の言葉を既に知っていた。
「零。再びバラゴと戦うときは、お前の力が必要になる」
「そうか。じゃあ、協力してやってもいいかな」
そのずっと後ろで、
結城丈二は、「少しは素直になれんのか」と小突いてやりたい気分になっていたが、こちらはこちらでそんな状態ではなかった。
零ら二人の召還制限時間が厄介で、キバに対して勝算のある戦いが望みがたかったこともあって、ライダーマンとゼクロスの二名はキバを追跡していない。
いや、これ以上の犠牲者を出す可能性を考えれば、間違いなくキバはここで仕留めるべき相手だったはずだ。たとえここが、特殊能力者ばかりだとしても、現実に死者は出ている。
(とはいえ、確実に自分の身を守らなければな……)
そう、
本郷猛でさえ死亡している現状では、無茶な行動は絶対に避けなければならない。
ましてや、結城は自分がこのゲームにおける要の一人であると自負していた。少なくとも、首輪の解除を行うことが脱出に近づく手段ならば、結城は死んではならない。
それも、敗北はもちろん、同士討ちさえも望まれない。
自分を守るための手段を正当化しているのでなく、結城自身も苦渋の決断だった。
より多くの命を守るためには、普段通りの無茶は厳禁である。自分の才能を自覚することも、正義を果たすうえでは要される。
「……で、結城さん」
「……村雨」
「「なぜ変身したままなんだ?」」
魔戒騎士二人が、それぞれ問うた。結城や良の様子が不自然だったのだ。
ライダーマンとゼクロス。二人は、まだキバを警戒しているかのように、変身状態を保っていた。
彼らは魔戒騎士二名の会話を見ていたようだが、その間、何かを気にしているようだった。
二人の言葉をきっかけに、口数の少ないゼクロスが、ライダーマンに向けて一言言い放つ。
「……そうだな。早いところ、片付けて変身を解こう」
「ああ、そうだな。早くお前を、解放してやらねばなるまい」
ライダーマンのロープアームが、ゼクロスのマイクロチェーンが、同時に敵に向けて放たれる。
もはや、それらは彼らの腕だった。任意の方向に、1ミリの狂いもなく飛んでいく。
しかし、ライダーマンはゼクロスが自分と同じように的確に狙ってくるのを予測し、反射的に避けていた。
一方、ロープアームの先は、確かにゼクロスの右脚の衝撃集中爆弾を狙っていた。
ドン!
ロープアームによる刺激でゼクロスの右脚の爆弾が爆ぜる。
実質、それは自爆だった。体に武器を詰めすぎたがゆえの、自爆。
更に、そこに装備された爆弾たちが次々に誘爆していく。
しかし、自分の武装に対する耐性がないわけがなく、爆ぜた脚も煙を発するだけで、痛みなど感じさせなかった。
「結城さん、何を!?」
「村雨ッ!」
ライダーマンはロープアームを引くと、煙の中から飛んでくるいくつもの手裏剣をロープではじいた。本当にこのロープが右腕のような綺麗な扱いをする。
鞭のように伸びたロープアームが、手裏剣を次々とはじいていた。
「仮面ライダー10号、ゼクロス……相変わらず、君は頑なに仮面ライダーを拒むな」
「俺を仮面ライダーと呼ぶな」
「……やはりその時期か。加頭め、厄介な時期から人を呼んでくる……とはいえ、まあ、【最悪】の中ではまだマシな部類か」
万が一、JUDOに心を支配された状態や、BADANの尖兵だった時期ならば、彼は殺人に躊躇はない。命の概念さえ、おそらくわからない。
それならば、ライダーになるのを待たずに殺さなければならない可能性もあっただろう。
衝撃集中爆弾と、その誘爆による煙が晴れていく。
十字手裏剣が飛んできたはずの煙の中には、ゼクロスがいない。
どこにいるか。
ライダーマンは、すぐに周囲を見渡した。
「ゼクロス……っ!!」
上だ。
非常時ではないので、ゼクロスはきりもみシュートを使わず、例の「制限ゼクロスキック」を放とうとしていた。
ゼクロスの脚は光らないが、ゼクロスキックと同じ角度で飛んでいく。
ライダーマンは、それを回避するために後方へ跳んだ。
……しかし、
「何ッ!?」
その上空からゼクロスキックを放とうとしたゼクロスが、まるで幻だったように消えてしまう。
ホログラフ……つまり、あれは虚像投影装置による囮だったのだ。
それに気がついたライダーマンが、前に駆け出そうとしたが、もう遅い。
ゼクロスは、ライダーマンが反射的に避けるであろう場所を計算して、電磁ナイフを構えていた。
「村雨、やめろッ!!」
斬──。
鋼牙の叫びさえ聞き入れることなく、ゼクロスがライダーマンの体を斬った。
鋼牙や零が仲介する前に、ゼクロスの刃がライダーマンに到達してしまったのである。
「結城さん!」
零は声を上げる。
また、大切な仲間を失ってしまったのか。
何故、自分の大切な人は次々といなくなるのか。
そう思いながら、ゼクロスを見た。
しかし──
「私を狙うのならば、まず右腕をどうにかしなければな」
ライダーマンは、自分の体の後ろに回したパワーアームの先で、電磁ナイフを器用に挟んでいる。
その様子に、零は安堵した。鋼牙もまた、ゼクロスの行動が殺人を犯さなかったことに安堵する。
「……ゼクロス。君もいずれ、仮面ライダーとなる。人類の自由と平和を守る戦士になる日がきっと来るだろう」
「……」
ゼクロスは黙ってライダーマンの姿を見つめる。
攻撃していいのかわからないほど、ライダーマンは穏やかだった。
「見たところ、仮面ライダーに対する憎しみは強いが、それ以外を攻撃する気もない。ましてや、あれだけ立派な戦士と行動しているんだ。悪の道に走ることは、まずないだろう」
「何が言いたい」
「『それならば、何故仮面ライダーになることを拒むんだ』」
「……」
ゼクロスはその先を言いたくは無かった。
敵だったから──というのが、単純な理由だろう。
「まあいいさ。……冴島鋼牙、彼は君に任せる」
「何?」
「私はどこかで
村雨良が変わるのを待つだけだ。共に行けば、また無駄な争いになる」
これまで、結城丈二は彼が仮面ライダーとなる日を待とうとしていたが、ここに来てまた新たな可能性が見えてきた。
魔戒騎士やテッカマン。さまざまな存在がこの場に存在することが確認できた以上、彼の持つ可能性は『仮面ライダー』だけではないということだ。
彼は仮面ライダーだけを名乗る必要もない。さまざまな出会いとともに、正義の自覚は芽生えるだろう。ゆえに、この場で彼を刺激するようなワードを連発するのも如何なものかと思った。
「ゼクロス、君もこの殺し合いには乗らないだろう?」
「……」
「私は首輪を外そうと考えている。君たちとは別のルートを使う。そして、いずれまた会い、協力しよう。零、君はどちらと行く?」
結城丈二、または冴島鋼牙と村雨良。
零は、そのどちらと行くのか。それを彼は訊いたのである。
少し待った後、零が答える。
「鋼牙、また会おう。俺はまたしばらく結城さんと行動する。バラゴと戦うための仲間も増やしておくさ」
「わかった。行くぞ、村雨。この場でこれ以上消耗する必要はない」
ゼクロス──いや、村雨良と冴島鋼牙は、バラゴが向かった方向に向けて歩き出した。バラゴを追うような足取りではない。
なぜなら、すぐにバラゴとは違った方向に歩き出したからだ。彼らは、良牙を追いに行ったのである。数分ばかり遅れる結果になったが。
結城も、当面の目的を果たしたのでそちらに向かおうとしたのだが、二人が行くならばそちらにはいけない。
バラゴの向かった側は避けたい。
「さて、俺たちはどこへ行く? 結城さん」
「そうだな。一度、森を出よう。教会側に下山して、森の周囲を回る形で街側へ向かう。禁止エリアの心配もなく街に向かえるぞ。他の参加者にも会えるかもしれない」
結城はそう提案する。
無難なルートだった。森エリアにいると、バラゴ等の強敵からの襲撃を感知しにくい。
平原エリアの方が、周囲を見渡しやすく、結城としても行動がしやすかった。
このまま、最短ルートで行くよりも他の参加者との遭遇もしやすいと思ったのだ。
「わかった」
零は、やはり少しだけ心に靄が残っているようだった。
目の前で家族を殺した張本人とは、正反対の道を行くことになったこの展開を、少し惜しんでいるのかもしれない。
だが、今の彼は何より自分の力不足も承知している。
このまま何人も犠牲者がでるかもしれない──それでも、少し割り切る必要があった。
残った参加者だけで、何とかバラゴを倒す方法を考えなければならない。
(シルヴァ……俺があの時、もっと強ければお前は──)
そう思いながらも、手っ取り早く悪と戦う術──即ち、悪へと堕ちることを彼は拒んだ。
だが、本当の強さを解し、結城という仲間とともにバラゴを、そして加頭を倒す方法を考えるべく、彼は結城よりも先に森を下りる道を歩いた。
シルヴァの残骸を握りながら、零は歩く。
あわよくば、元の世界で魔戒法師にシルヴァを修復してもらえるかもしれない、と少し望んでもいる。
ゆえに、絶対に生きて帰ろうという意思だけは手放そうとしなかった。
【魔導具シルヴァ@牙狼 破壊】
【1日目/昼】
【D-6/森】
【冴島鋼牙@牙狼─GARO─】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)
[装備]:魔戒剣、魔導火のライター
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:護りし者としての使命を果たす
1:首輪とホラーに対し、疑問を抱く。
2:加頭を倒し、殺し合いを終わらせ、生還する
3:いずれ零とともにバラゴを倒す。
4:良を守りながら良牙達を追いかける。
5:未確認生命体であろうと人間として守る
6:
相羽タカヤに会った時は、彼にシンヤのことを伝える
[備考]
※参戦時期は最終回後(SP、劇場版などを経験しているかは不明)。
※魔導輪ザルバは没収されています。他の参加者の支給品になっているか、加頭が所持していると思われます。
※
ズ・ゴオマ・グと
ゴ・ガドル・バの人間態と怪人態の外見を知りました。
※殺し合いの参加者は異世界から集められていると考えています。
※この殺し合いは、何らかの目的がある『儀式』の様なものだと推測しています。
※首輪には、参加者を弱体化させる制限をかける仕組みがあると知りました。
また、首輪にはモラックスか或いはそれに類似したホラーが憑依しているのではないかと考えています
※零の参戦時期を知りました。
【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:負傷(右肩に切り傷、左胸から右わき腹までの深い切り傷、全身に切り傷、全身に軽い火傷、いずれも回復中)、疲労(極大)
[装備]:電磁ナイフ、衝撃集中爆弾、十字手裏剣、虚像投影装置、煙幕発射装置
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0~1個
[思考]
基本:カメンライダーを倒す。主催の言葉に従い殺し合いに乗るつもりは無い。
0:鋼牙と共に良牙達を追いかける。
1:18時に市街地で一文字と出会い、倒す
2:『守る』……か。
3:エターナルを倒す。
4:特訓……か。
5:ミカゲや本郷の死に対する『悲しみ』
6:結城丈二は特に相手にする予定はない。
[備考]
※参戦時期は第二部第四話冒頭(バダンから脱走中)です。
※衝撃集中爆弾と十字手裏剣は体内で精製されます。
※能力制限は一瞬しかゼクロスキックが出来ない状態と、治癒能力の低下です(後の書き手によって、加わる可能性はあります)。
※本人は制限ではなく、調整不足のせいだと思っています。
※名簿を確認しました。三影についてはBADANが再生させたものと考えている一方、共に戦う事は出来ないと考えています。
※不明支給品の一つは魔導具シルヴァ@牙狼─GARO─です。
【結城丈二@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:健康
[装備]:ライダーマンヘルメット、カセットアーム
[道具]:支給品一式、カセットアーム用アタッチメント六本(パワーアーム、マシンガンアーム、ロープアーム、オペレーションアーム、ドリルアーム、ネットアーム) 、
パンスト太郎の首輪
[思考]
基本:この殺し合いを止め、加頭を倒す。
1:殺し合いに乗っていない者を保護する
2:零と共に移動する。
3:一文字、沖、村雨と合流する。その為に18時には市街地へ戻る。
4:加頭についての情報を集める
5:首輪を解除する手掛かりを探す。
その為に、異世界の技術を持つ技術者と時間操作の術を持つ人物に接触したい。
6:タカヤや石堀たちとはまた合流したい。
7:また、特殊能力を持たない民間人がソウルメタルを持てるか確認したい。
[備考]
※参戦時期は12巻~13巻の間、風見の救援に高地へ向かっている最中になります。
※この殺し合いには、バダンが絡んでいる可能性もあると見ています。
※加頭の発言から、この会場には「時間を止める能力者」をはじめとする、人知を超えた能力の持ち主が複数人いると考えています。
※NEVER、砂漠の使徒、テッカマン、外道衆は、何らかの称号・部隊名だと推測しています。
※ソウルジェムは、ライダーでいうベルトの様なものではないかと推測しています。
※首輪を解除するには、オペレーションアームだけでは不十分と判断しています。
何か他の道具か、または条件かを揃える事で、解体が可能になると考えています。
※NEVERやテッカマンの情報を得ました。また、それによって時間軸、世界観の違いに気づいています。
※首輪には確実に良世界の技術が使われている・首輪からは盗聴が行われていると判断しています。
※零から魔戒騎士についての説明を詳しく受けました。
※首輪を解除した場合、ソウルメタルが操れないなどのデメリットが生じると思っています。
※彼にとっての現在のソウルメタルの重さは、「普通の剣よりやや重い」です。感情の一時的な高ぶりなどでは、もっと軽く扱えるかもしれません。
※村雨良の参戦時期を知りました。ただし、現在彼を仮面ライダーにすることに対して強い執着はありません(仮面ライダー以外の戦士の存在を知ったため)。
【涼邑零@牙狼─GARO─】
[状態]:健康
[装備]:魔戒剣、魔導火のライター
[道具]:支給品一式、スーパーヒーローセット(ヒーローマニュアル、30話での暁の服装セット)@超光戦士シャンゼリオン、薄皮太夫の三味線@侍戦隊シンケンジャー、シルヴァの残骸
[思考]
基本:加頭を倒して殺し合いを止め、元の世界に戻りシルヴァを復元する。
0:教会側の平原から街へ向かう。
1:魔戒騎士としてバラゴを倒す。
2:結城と共にバラゴを倒す仲間を探す。
3:殺し合いに乗っている者は倒し、そうじゃない者は保護する。
4:会場内にあるだろう、ホラーに関係する何かを見つけ出す。
5:結城に対する更なる信頼感。
6:また、特殊能力を持たない民間人がソウルメタルを持てるか確認したい。
7:
涼村暁とはまた会ってみたい。
[備考]
※参戦時期は一期十八話、三神官より鋼牙が仇であると教えられた直後になります。
※シルヴァが没収されたことから、ホラーに関係する何かが会場内にはあり、加頭はそれを隠したいのではないかと推察しています。
実際にそうなのかどうかは、現時点では不明です。
※NEVER、仮面ライダーの情報を得ました。また、それによって時間軸、世界観の違いに気づいています。
仮面ライダーに関しては、結城からさらに詳しく説明を受けました。
※首輪には確実に異世界の技術が使われている・首輪からは盗聴が行われていると判断しています。
※首輪を解除した場合、(常人が)ソウルメタルが操れないなどのデメリットが生じると思っています。
また、結城がソウルメタルを操れた理由はもしかすれば彼自身の精神力が強いからとも考えています。
※実際は、ソウルメタルは誰でも持つことができるように制限されています。
ただし、重量自体は通常の剣より重く、魔戒騎士や強靭な精神の持主でなければ、扱い辛いものになります。
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最終更新:2013年08月01日 23:47