死神の祭典(第3楽章 超光の祝福) ◆7pf62HiyTE
Paragraph.07 大戦─バドライド・ウォー─
その後の過程を簡単に説明しておこう。
ガドルは視界が晴れる前に感覚に優れた射撃体へと変化し森の中を駆けるスカル達の位置を捕捉。だが、狙い撃とうとした時には既に3人は移動を開始していた。
無論、ガドルはそのまま追撃を開始、先程と同様にガドルロッドとガドルソードの投擲を駆使し3人を追い詰めていく。
結論から述べれば、ガドルを振り切る事は不可能だった。
先程よりも消耗した状態に加え、今度はガウザーをも乗せた2人乗りの状態なのだ。スピードも落ちる故に振り切れる道理は全く無い。
この状況に対し、スカルこと凪はガドルを迎え討つ事を決意した。
何かしらの方法でガドルを無力化しこの場を切り抜ける。
無論、それについてはアクセルこと石堀、そしてガウザーこと黒岩も了承した。
そして――場所にしてG-5とH-5の境界にて、
「……ようやくその気になったか、リントの変身戦士達」
ガドルの前方に、3人の戦士が待ち構えていた。
骸骨の記憶を宿した戦士仮面ライダースカル、
加速の記憶を宿した戦士仮面ライダーアクセル、
ダークザイドの戦士暗黒騎士ガウザー、
「ふん……リントというのは人間の事か?」
そう問いかけるガウザー、それに対し無言で頷くガドルである。
「ここは貴様達の世界とは違う、人間共の世界だ。貴様達が人間界を脅かすというのならば人間界の
ルールに従い侵略しろ」
「この怪物にそんな言葉通じるわけがないでしょう!!」
ガウザーの的外れの言葉にツッコミをいれる凪であった。
というか人間界のルールの従い侵略ってどうやるというのだ? まさか政治家になって総理大臣にでもなるというのか(注.実際、それに近い事をやっています)。
「その骸骨の戦士、貴様が俺を撃った女か?」
スカルの声を聞き、ガドルは自分を撃った女がスカルに変身しているのを確認した。
ちなみにいえば、戦っている段階でスカルの立ち回り等から立ち回り等から自分を撃った女の戦士ではないかという推測は立っていた。(注.暁がスカルに変身する前に神経断裂弾を撃たれた為、暁がスカルに変身していたのは見ていない)
故にこれは只の確認作業に他ならない。
「それがどうかしたのかしら?」
「ならば、貴様は俺が倒そう」
「……私からも1つだけ質問させてもらうわ。お前はクウガと同じ力を持っている……クウガとは一体何だ?」
「貴様……クウガ……ゴダイの仲間か?」
「一時的に行動を共にしていた。それで、クウガとは?」
「クウガ……リントを守ろうとする戦士、そして俺は一度は奴に敗れた……故に出来るならばこの手で奴を倒したかった……」
ガドルは本当に無念そうに口にする。
スカルこと凪は何故、クウガの事をガドルに問いかけたのだろう?
それは五代と行動を共にした時に見た、一瞬見えた漆黒のクウガの事が頭から離れなかったからだろう。
それ故にクウガの事を同一の力を持つガドルに聞いたのである。
ちなみに――自身の力について概ね説明した五代ではあったが、漆黒のクウガこと凄まじき戦士の事については一切語っていない。
五代にとって、それは決してなってはならない姿、忌むべき姿、それ故余計な心配事をさせない為に語らなかったのである。
「そう、彼の力が失われず誰かに受け継がれている事もあるかもしれないけれど……」
そうスカルは呟いた。銀色の巨人ことウルトラマンの光が受け継がれる様に、クウガの力も同じ事が言えるのではという意味合いの言葉だ。
「? どういう意味だ?」
だが、その言葉の意味をガドルは理解出来ないでいる。
「貴方が知る必要はないわ」
しかしそれに答えるつもりは無い。ガドルが抹殺すべき相手である事に変わりは無いのだ、故にこれ以上奴に対し語る言葉など無い。
「俺からも一つ聞きたい事がある。白いクワガタの姿をした貴様に似た奴に心当たりはあるか?」
スカルに代わり今度はガウザーが問いかける。
「………………ダグバのことか?」
「やはりか……」
「貴様はそいつの仲間なのか?」
「……いや、ダグバ、奴もまたこのゲゲルの先で俺が倒す相手……言っておくがダグバは俺よりも強い。それにしても……貴様達、ダグバと戦って生き延びたのか?」
そうガドルが逆に問いかけてきた。
ダグバの事を聞くという事は、十中八九ダグバと戦った事になる。そしてこの場にいるという事はダグバとの戦いから生還した事になる。
それ故に、興味をもったからこその問いかけなのだ。
「いや、そのダグバと戦ったのはここにはいないもう1人の……バカだ」
そういえば例の弾に撃たれる直前、茂みから普通に出てきた男(黒岩)と転がる形で出てきた情けない男(暁)が見えた。
奴の口ぶりから考えて暁が何処かでダグバと戦ったのだろう。いつの間にか奴だけは撤退に成功したらしい。
「ほう、巫山戯たリントだと思ったがダグバとの戦いから生き延びたとはな……俺から逃げた事も含め、是非とも獲物として仕留めておきたいところだな」
この言葉からガドルは多少なりとも暁に興味を持ったのだろう。
「つまり、貴様が新たなシャンゼリオンのライバルというわけか……だが!」
ガウザーがガドルへを指を指し、
「知っているか!? シャンゼリオンにとっての宿命のライバルたる資格を持つ者など存在しない!
だが、それでもなお、宿命のライバル足る者がいるならばそれは俺だ、奴とのケリは俺が着ける!!」
「いいだろう」
かくしてそれを最後に問答は終わる。
この僅かな問答は体勢を整える時間稼ぎ、特にバイク形態での移動を強いられ続けたアクセルのそれを整えるためのものだ。
この時間によりアクセルも臨戦態勢を整える事が出来た。
戦いが始まる――その時だった。
突如、突風が巻き起こる――そして、緑色の怪人が舞い降りてきた。
「「「「!?!?!?!?」」」」
位置関係だけでいえば、3人と緑色の怪人の間にガドルが立っているという状況だ。
「副隊長……アレは?」
「味方とは限らないわ、警戒を怠らないで」
「最悪、両方を倒す事を視野に入れろという事だな」
無論、緑色の怪人が味方だとおめでたいことを言う3人ではない。
「ほう、新手のリントか……いいだろう」
ガドルとしても向かってくるならば望む所である。
最早お気づきだと思うが、緑色の怪人の正体はサイクロン・ドーパントである。
当然それは溝呂木が所持しているT2ガイアメモリのサイクロンのメモリを使って変身した姿だ。
ダークメフィストとバイオレンスのメモリを使って変身したバイオレンス・ドーパントの姿は凪に正体が割れている為、凪にとって未知の存在であるサイクロン・ドーパントの姿を使ったというわけだ。
溝呂木は遠くからずっと凪の戦いの様子を観察していた。
凪自身が自力で切り抜けられるならばまだよい、だが切り抜けられる様子も無く、そして今まさに勝ち目の無い戦いに挑もうとする状況を見て、遂に直接介入を決めたのである。
とはいえ、サイクロン号や9つもあるデイパック全てを持ったまま現れるのは流石に目立ちすぎる。その為、自身のデイパックと2つのメモリ、そして手袋とダークエボルバー以外の道具は全て纏めて少し離れた所に置いてきた。
最優先で果たすべき目的は凪をここで死なせない事、それは最低限果たさなければならない。
だが、それさえ果たせるならば後は何をやっても問題は無い。この状況を大いに楽しもうではないか。
かくして森に5人の参加者が集結した――
「(緑色の怪人……あの怪物の仲間では無い事は確実だけれど……この状況で現れた事が気に掛かる……まるで狙い澄ましたかの様に……まさか……)」
脳裏に宿敵の影が浮かび上がるスカルこと凪、
「(状況は非常に厳しい……凪の生存どころか俺すらも危ないな……何とかして切り抜けられるか?)」
従順な部下を演じきりながらも、己の目的の為に見えざる牙を静かに研ぎ澄ますアクセルこと石堀、
「(確かに目の前の奴を倒せる気がするわけではない……だが、俺が果たすべき野望の為に立ち止まるつもりはない……そして、シャンゼリオン、
涼村暁との決着を着けるのは俺だ!)」
野望の為、そしては宿敵との決着の為、強敵に挑もうとするガウザーこと黒岩、
「(ビガラダヂ ゼンギン ボソグ !!(貴様達、全員殺す!!))」
ゲゲルのクリアとその先に待つ強敵の為にゲゲルに挑もうとするガドル、
「(さぁ、始めるか……祭りを……死神のな!!)」
そして、全てを牛耳る神になったかの様に全てを弄ぼうとするサイクロン・ドーパントこと溝呂木、
丁度時刻は14時を過ぎた所、
それぞれの思惑が絡み合う戦いが今幕を開ける――
その運命を示すカードは、最初に溝呂木が引いた『死神』のカード、
但し
逆位置の――
タロットの知識に乏しい者もいるだろうから簡単に説明しておこう。
タロットの占いの時には引いたカードだけではなく、その向きも重要な意味を持っている。
上下が正しければ正位置、逆さまになっていれば逆位置という事だ。
とはいえ、ここで重要なのは逆位置になったカードは基本的に逆の意味を持つ、それだけ理解していただければ十分だ。
そう、溝呂木が望んで引いた死神のカードではあったが、それが逆位置だったという事は――
死神が持つ意味はおおよそ読者諸兄のイメージ通りだろう、その逆の意味も自ずと見えてくるだろう。
溝呂木は死神が引けた事のみを重視しその事に気付いていない。当然、その意味もだ。
それは溝呂木の行く末に大きな影響を及ぼすものなのだろうか?
無論、占いなどというのはどうとでも取れるものでもある。それがどういう意味なのかはそれこそ解釈次第で幾らでも変わる。
また、その占いが誰に対してのものかによってまた変わっている。
その『死神』は本当に溝呂木に対してのものなのか、他の4人の内の誰か、あるいはこの戦いそのものに対してかも知れない――
確実に言える事は只1つ、運命のルーレットは既に回り始めている。後はポケットに入る瞬間を待つだけである。
赤か、黒か、はたまた緑か――
【1日目/午後】
【G-5とH-5の境界/森】
※G-5の何処かに以下のものが放置されています。
支給品一式×8(スバル、ティアナ、井坂(食料残2/3)、アクマロ、流ノ介、なのは、本郷、まどか)、サイクロン号@仮面ライダーSPIRITS、スモークグレネード@現実×2、トライアクセラー@仮面ライダークウガ、
東せつなのタロットカード@フレッシュプリキュア!、ルビスの魔剣@牙狼、鷹麟の矢@牙狼、京水のムチ@仮面ライダーW、首輪×7(
シャンプー、ゴオマ、まどか、なのは、流ノ介、本郷、
ノーザ)
【
西条凪@ウルトラマンネクサス】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)、強い苛立ち、仮面ライダースカルに変身中
[装備]:コルトパイソン+執行実包(2/6) 、スカルメモリ&ロストドライバー@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式×3(凪、照井、フェイト)、ガイアメモリ説明書、.357マグナム弾(執行実包×18、神経断裂弾@仮面ライダークウガ×4)、
テッククリスタル(レイピア)@宇宙の騎士テッカマンブレード、イングラムM10@現実?、火炎杖@らんま1/2、ランダム支給品1~4(照井1~3、フェイト0~1)
[思考]
基本:人に害を成す人外の存在を全滅させる。
0:ガドル及び緑色の怪人(サイクロン・ドーパント)に対処。
1:
黒岩省吾をどうするべきか(その思いは更に強力に)、涼村暁の事は……。
2:状況に応じて、仮面ライダースカルに変身して戦う。
3:孤門と合流する。
4:相手が人間であろうと向かってくる相手には容赦しない。
5:黒岩省吾の事を危険な存在と判断したら殺す。
6:
溝呂木眞也、暗黒騎士キバ、
ゴ・ガドル・バもこの手でいつか殺す。
[備考]
※参戦時期はEpisode.31の後で、Episode.32の前。
※さやかは完全に死んでいて、助けることはできないと思っています。
※まどか、マミは溝呂木に殺害された可能性があると思っています。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※
第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。
※森林でのガドルの放送を聞きました。
【石堀光彦@ウルトラマンネクサス】
[状態]:疲労(小)、仮面ライダーアクセルに変身中
[装備]:Kar98k(korrosion弾7/8)@仮面ライダーSPIRITS、アクセルドライバー@仮面ライダーW、ガイアメモリ(アクセル、トライアル)@仮面ライダーW、エンジンブレード+エンジンメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式×3(石堀、ガドル、ユーノ)、メモレイサー@ウルトラマンネクサス、110のシャンプー@らんま1/2、不明支給品2~5(ガドル1~3(グリーフシードはない)、ユーノ1~2)
[思考]
基本:今は「
石堀光彦」として行動する。
0:この場を切り抜ける。何とかして凪の安全を確保したいが……。
1:周囲を利用し、加頭を倒し元の世界に戻る。
2:今、凪に死なれると計画が狂う……。
3:凪と黒岩と共に森を通って市街地に向かう(ただし爆発が起こったエリアや禁止エリアを避ける)。
4:孤門や、つぼみの仲間を捜す。
5:都合の悪い記憶はメモレイサーで消去する
6:加頭の「願いを叶える」という言葉が信用できるとわかった場合は……。
[備考]
※参戦時期は姫矢編の後半ごろ。
※今の彼にダークザギへの変身能力があるかは不明です(原作ではネクサスの光を変換する必要があります)。
※ハトプリ勢、およびフレプリ勢についてプリキュア関連の秘密も含めて聞きました。
※良牙が発した気柱を目撃しています。
※つぼみからプリキュア、砂漠の使徒、
サラマンダー男爵について聞きました。
※殺し合いの技術提供にTLTが関わっている可能性を考えています。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。
※森林でのガドルの放送を聞きました。
【黒岩省吾@超光戦士シャンゼリオン】
[状態]:健康、暗黒騎士ガウザーに変身中
[装備]:デリンジャー(2/2)
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考]
基本:周囲を利用して加頭を倒す。
0:現状への対処、シャンゼリオン(暁)のライバルは俺だ。
1:あくまで東京都知事として紳士的に行動する。
2:涼村暁との決着をつける ……つもり、なのだが……。
3:人間でもダークザイドでもない存在を警戒。
4:元の世界に帰って地盤を固めたら、ラビリンスやブラックホールの力を手に入れる。
5:
桃園ラブに関しては、再び自分の前に現れるのならまた利用する。
[備考]
※参戦時期は東京都知事になってから東京国皇帝となるまでのどこか。
※NEVER、砂漠の使徒、テッカマンはダークザイドと同等又はそれ以上の生命力の持主と推測しています。(ラブ達の戦いを見て確信を深めました)
※ラブからプリキュアやラビリンス、ブラックホール、魔法少女や魔女などについて話を聞きました 。
※暁は違う時間から連れて来られたことを知りました。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。
※森林でのガドルの放送を聞きました。
【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
[状態]:疲労(中)、全身にダメージ(中)(回復中)、右脇に斬傷(回復中) 、肩・胸・顔面に神経断裂弾を受けたダメージ(回復中)、格闘体に変身中
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:ダグバを倒し殺し合いに優勝する。
1:凪を殺す。ほかの三人(石堀、黒岩、溝呂木)もついでに殺す。
2:強者との戦いで自分の力を高める。
3:クウガを継ぐ者……?
※死亡後からの参戦です。
※フォトンランサーファランクスシフトにより大量の電撃を受けた事で身体がある程度強化されています。
※フォトンランサーファランクスシフトをもう一度受けたので、身体に何らかの変化が起こっている可能性があります。(実際にどうなっているかは、後続の書き手さんにお任せします)
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
【溝呂木眞也@ウルトラマンネクサス】
[状態]:健康、サイクロン・ドーパントに変身中。
[装備]:ダークエボルバー@ウルトラマンネクサス、T2ガイアメモリ(バイオレンス)@仮面ライダーW、T2ガイアメモリ(サイクロン)@仮面ライダーW、城茂の手袋(着用済)@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~2個(確認済)、拡声器、双眼鏡、
[思考]
基本:より高きもの、より強きもの、より完璧なるものに至り、世界を思うままに操る。
0:この状況に対し、凪を死なせない上で最大限に楽しむ。
1:ウルトラマンの力を奪う(姫矢が死んだので、まずは凪や孤門をあたる)。
2:その他にも利用できる力があれば何でも手に入れる。
3:弱い人間を操り人形にして正義の味方と戦わせる。
4:西条凪を仲間にする。
5:冴島鋼牙、
村雨良、
響良牙達は今は泳がせておく。こちらから接触するつもりはない。
[備考]
※参戦時期は姫矢編後半、Episode.23以前。
※さやかをファウストにできたのはあくまで、彼女が「魔法少女」であったためです。本来、死者の蘇生に該当するため、ロワ内で死亡した参加者をファウスト化させることはできません。
※また、複数の参加者にファウスト化を施すことはできません。少なくともさやかが生存している間は、別の参加者に対して闇化能力を発動することは不可能です。
※ファウストとなった人間をファウスト化及び洗脳状態にできるのは推定1~2エリア以内に対象がいる場合のみです。
※ダークファウストが一度に一体しか生み出せないことを、何となく把握しました。
※
スバル・ナカジマから全ての情報を聞き出しました。
※第二回放送のボーナスなぞなぞは、二番目の答えしか解いてません(興味が無いため)。
※森林でのガドルの放送を聞きました。
Paragraph.08 祝福─マギカ─
「はぁ……はぁ……」
ずぶ濡れになりながら森を進む男がいた。暁である。
川に落ちた暁ではあったが別段溺れる事も無く、大分流されたものの何とか岸に辿り着く事ができた。
「いやぁ、いい男は辛いね♪ うん♪」
とはいえ、落ちた側とは逆側なので結果的に凪達と離れた事になる。
「それにしても凪の奴大丈夫か……あのカブトムシ野郎や黒岩に何かされているんじゃ……石堀の奴はなんか頼りなさそうだしなぁ……」
色々キツイ事言われたものの、凪が綺麗でいい女である事に違いは無い。それゆえに彼女の身を案じる暁である。
とはいえ、無事ならば市街地に行けば合流出来る筈なので今は移動を優先すべきだろう。
先程までは性格のキツイ凪、どこかアテにしてよいのか微妙な石堀、何か企んでいそうな黒岩が近くにいた為、思うように調子が出なかったが、一人となった事で大分軽快に足が進む。
そして気が付けば森の出口に辿り着いた。地図で確認した所、I-3に辿り着いた模様。
「よーし、ようやく森を抜けた。さーて後は……」
と、市街地へ向かう道を捜すべく周囲を見回す。そんな中、
「ん? なんだ?」
ふと近くに不自然に土が盛られているのを見つけた。
この状況ならばある程度警戒するだろうが。
「お宝お宝~♪」
この男にそんな事を期待するだけ無駄だろう。
「金銀財宝パラダイス~♪」
そして盛られた土を掘り起こす。
そうしたら確かに金色のものが出てきた。
そう、金髪の少女の遺体が――
「この女の子は……」
何時も脳天気な暁も少女の遺体を掘り起こした事にある程度のショックを受ける。
流石にテンションの落ちた暁は地面に座り暫しぼんやりと身体を休ませる。
流石に死体を見つけた事が堪えているのだろう。見ず知らずの少女とは言え可愛い女の子の死体を見て良い気はしない。
恐らく後5年から10年ぐらいしたら自分とも釣り合っていただろう。その時がもう来ない事が寂しく思う。
そんな中、ふと懐からあるものを取り出す。
それは暁と共に行動をしていたほむらの残した首輪、正確にはソウルジェムに巻かれていた輪である。言うなればジェム輪とでも呼ぼうか。
先程川に落ちた原因、黒岩は八宝大華輪の爆発による衝撃でバランスを崩して落ちたと判断していた。
半分は正解、もう半分は不正解だ。
というのも、バランスを崩したもののそれが原因で川に落ちたわけではない。
実は、バランスを崩した際に少し開いていた暁のデイパックからあるものが飛び出したのだ。
そう、ジェム輪だ。それを見た暁の身体は思考よりも先に動いていた。そのまま川へと飛び出して行ったのだ。
幸いジェム輪自体はすぐに掴む事が出来たので紛失する事はなかった。しかし川の流れは強くそのまま流されていったという事だ。
以後の事は先程説明した通りである。
「なぁほむら……あの子……
巴マミだったか……あの子もキュウべぇに騙された魔法少女なのか……」
そう、暁は自分が掘り起こした遺体の少女がマミだという事に気付いたのだ。
気付いた理由は2つ。掘り起こしたマミの遺体に首輪が無かった事、
今更思い返した事だが、ほむらにも首輪が無かった様な気がする。ほむらのソウルジェムを暁自身が砕いた事で彼女にトドメを刺してしまった事から、ジェム輪が首輪の代わりをしていた事は推測できる。
つまり、首輪が無い=ジェム輪がある=魔法少女、その図式に暁は気が付いたのだ。
だからこそ首輪の無い少女が魔法少女である事を看破したのだ。
では、何故それがマミだとわかったのか?
これは黒岩の証言が関係している。黒岩によると、図書館での戦いでテッカマンランスと戦いマミは命を落としたとの事だった。
その近くで黒岩はマミと行動を共に為ていたラブと合流したという話なので、その場所の近くの場所にマミの遺体が埋葬されていても不思議は無い。そして丁度この場所は(それなりに距離は開いているが)大体合致する場所である。
更に言えばその後、暁が黒岩達と合流したF-2の教会の場所を踏まえると、I-3は図書館から教会に移動するルートの大体中間にある。
つまり、それだけの条件が揃った場所にマミの遺体が埋葬されていた可能性は高かったという事だ。加えて話に聞いていた外見の特徴も合致している。
「なぁ、ほむら……お前がマミちゃんに会わせてくれたのか……?」
今にして思えば、川を流される事になったのはジェム輪が川に落ちそうになったからだ。
そして川を流された先でマミの遺体を見つけたという事を踏まえれば、ジェム輪が川に落ちたからマミの遺体を見つけられた事になる。
只の偶然とは思え無い、暁はそう感じていた。
黒岩の話ではマミから見てほむらはキュウべぇを狙っていて何を考えているのかわからない信用の出来ない人という話だった(但し、これはラブからによるまた聞きによる情報で、マミはほむらと話をしてみるという事を言っていた)。
また、凪がさやかから聞いた話ではほむらの所為でマミが死んだという話らしい。
凪と黒岩は何故ほむらがそういった行動に出ていたのかわかっていない。そして当事者達が退場した今となっては部外者である2人がこれ以上推察する事もないだろう。
しかし、暁はそのことについて推測が出来ていた。
これは『バカ』と言われる暁にしては珍しい事だが、それでも腐り果てても探偵という職に就いているのだ。小学校の知識すらなくてもある程度感覚的には理解出来る。
暁視点でわかっている事は、『悪徳業者であるキュウべぇが魔法少女を増やしている』、『魔法少女は凄い力が使えるが最終的にダークザイドの様な怪物になる』、『ほむらはある少女を何とかして助けようとしている』、この3点だ。
ちなみに、凪や黒岩視点では『キュウべぇが魔法少女を増やしている』、『魔法少女は人間離れした力を使える』程度にしか把握していない。
それ故に、凪や黒岩視点ではほむらは魔法少女の力を悪用し、マミやさやかを妨害している相手だと判断したのだろう。
凪がさやかの言葉を殆ど鵜呑みにしているのは彼女の境遇に同情していたという理由からだ(彼女を抹殺する判断をしたのはこの地で早々に溝呂木に謀殺され操り人形にされたからなので彼女自身が原因というわけではない)。
暁は気付いたのだ、ほむらがさやか達と敵対しキュウべぇを狙い続けたのはキュウべぇの魔の手によってある少女を魔法少女にさせない為だと。
だが、狡猾なキュウべぇを盲信するさやかやマミ達はほむらの話を理解せずに敵対したと。
では、ほむらは一体誰を守ろうとしたのだろうか?
これも暁は看破していた。さやか達の知り合いで、唯一魔法少女では無い人物――
鹿目まどかの事だ。
そう、ほむらはまどかを魔法少女にさせない為に全てを敵に回してでも守ろうとしたのだろう。
誰も味方してくれるものもおらず、守る対象のまどかですらも信じてもらえない。
暁自身がぞんざいに扱われたのもきっとそれが原因で精神が荒んでしまったからだろう。
「まったく、本当に酷い悪徳業者だな、キュウべぇって奴は」
半分ぐらいはその通りだろうが、残り半分ぐらいは暁の馬鹿さ加減が原因ではないかと思われるがその事を指摘できる者はここにはいない。
何にせよ、ほむらの友達なんだから当然可愛い女の子なのは決まっている。
可能ならばほむらの代わりに守る――そこまでは言わないが捜してやりたいとは思っていた。
しかし、まどかの名前も最初の放送で呼ばれているのを暁は覚えている。だからもうそれは叶うことはない。
いつになくしんみりとしてしまう――
涼村暁は人格的には余りにもアレ過ぎる。だが、その一方、非常に寂しがり屋だ。
誰かと一緒にいるときは決してそれを感じさせずバカな言動を繰り返す。
しかし今の暁にはそんなバカな言動に反応してくれる奴はいない。
今、足を止めているのは疲労からだけじゃない。むしろ、孤独の寂しさから動けなかったのだろう。
だが――
『いつまでも、自分が今までいた世界のことに縛られては前に進めない。私は誰よりもそれを知ってるつもりよ。』
禁止エリアで眠り込んでしまった時に夢でほむらに起こされた時の言葉を思い出す。
『この先にある、もっと幸せな未来を目指して……』
その言葉で再び暁は立ち上がった。
そう、こんな所で燻っていたってほむらも誰も喜ばない。
それ以上に暁自身がそれを望んでいないのだ。
出会ったもしくは出会うはずだった女の子達が死んで寂しいのは変わらない。
しかし、いつまでもそれに縛られたって仕方ないのだ。
そう元の世界には大量のガールフレンドの数々がいる。
そしてこれから出会う筈の女の子達がいる。
そんな彼女達の為にも足を止めているわけにはいかない。
ふと何かを思い出し、名簿を確認する。
「確か、ほむら達の知り合いは5人……まだ1人無事な筈だよな……」
その人物は
佐倉杏子の事だ。
黒岩からの情報(マミから話を聞いているラブからの情報)では『魔法少女の後輩』という悪いものではない。
だが凪からの話では、情報提供元のさやか視点の情報なので『自分の為に人々を平然と犠牲にする悪の魔法少女』という悪い情報だった。
それ故、凪達からの心象は決して良い者では無い。
その時のやり取りを振り返ってみよう。
「ん? でもそれそんなに悪い事か?」
暁からみればそんなに悪い様には見えなかった。自分の目的の為に魔法を使う事が悪いとは思ってはいないからだ。
「確かに貴様と似たタイプだろうな」
そう黒岩が反応する中、凪が拳銃を暁に突きつける。
「副隊長!?」
「一応言っておくわ。確かに
美樹さやかだけの証言で全てを断ずる事は出来ない。但し、もし佐倉杏子が本当に自身の悦楽の為に人々に危害を加えているというならば、私は彼女を抹殺する。そして、それを肯定する貴方もね、涼村暁」
「わかったわかった、だからその銃降ろしてって」
「余計な問題を起こすな……」
「貴方もよ、黒岩省吾」
「あの、副隊長……」
「心配しないで石堀隊員、状況が状況だから今ここで無駄弾を撃つつもりはないわ。とはいえ、佐倉杏子が警戒すべき人物には違いないわ。そのことは決して忘れないで」
そう言って銃を下ろす、
「助かったぁ……」
「バカか、貴様は射殺する価値もないと言われたんだぞ」
「お前だってそうだろうが!」
再び銃を向けられる。
「撃つわよ?」
「副隊長、無駄弾無駄弾!!」
そんなやりとりがあったのだ。
だが、凪達がどう言おうと暁としては特別な力を自分の好きな風に使う事が悪いとは思っていない。
人々を平然と犠牲にする(by さやかによる穿った表現)という部分は流石にどうかと思うが(注.それを暁が偉そうに言える立場では無い)、手に入れた力をどう使おうがとやかく言われる筋合いは無い。
「……捜してみっか♪」
何となく、彼女を捜してみようかと思った。襲われるかどうかなんて全く考えていない。
カブトムシ野郎とかクワガタ野郎とかとの戦いなんてそれこそ石堀や黒岩に任せれば良い。
そんな事より女の子を捜して声かける方がよっぽど有意義だ。
そして最後には優勝してパラダイスを目指すのだ――
「そういえば……今何時だ……」
と、ふと時計を見たら既に15時を過ぎていた。
流石にカブトムシ野郎との戦いは終わっているだろうが、凪は無事なのだろうか? 黒岩は変な事していないだろうか? そして石堀の出番はあるのだろうか? そんな事を考えてしまう。
合流しながらも途中で
一文字隼人を助けに向かったラブの事も心配だ。名前が呼ばれていないという事は無事なのはわかるがやはり心配だ。
更に冴島邸で情報交換した
涼邑零にも正直死んで欲しくは無い、似た名字の人に死なれるのについては流石に思う所があるし何より生きて再会する約束もした。一文字の仲間らしい
結城丈二も大丈夫なのだろうか?
とはいえ、気にしていても仕方が無い。彼等の目的地は市街地だという事はわかっている。無事なら市街地に向かう道中、あるいは市街地で再会出来る筈だ。
休息はもう十分だ、先程掘り起こしたマミの遺体を再び埋めようではないか。
「向こうでほむら達と仲良くしてろよ、マミちゃん♪」
何気ない言葉と共に埋め終わる。
そして再び歩き出す、目的地は市街地だ。そこに向かえば別れた同行者達や女の子達に会える筈だ。そして何より――
「確か名前は……」
名簿で捜そうと思っている残る最後の魔法少女の名前は確認した。その名は、
「あんこちゃーん、待っててねー♪」
輝かしい笑顔で口にし走り出す。
もう既に暁の思考から抜け落ちているが、実は暁は凪がスカルに変身した時、ほむらが2度変身した時の事を思い返していた。
確か最初に変身させた時はSの字は無く、次に自分を助けるために変身した時はSの文字があった。
そして、Sの文字があった時のほうはそれが無かった時より強かったのを覚えている。
この違いは一体なんだったのだろうか? それが何となく気になったのだ。
だからこそ黒岩に自分が変身した時はどうだったか問いかけたのだ。
結局の所、その理由はほむら自身の心境の変化だろう。
いや、変化したと言うより変容してしまったものが元に戻ったというべきか――
そう、魔法少女になった時の想いを思い出せたのだ。
それが出来たのは暁の存在のお陰だ、出会いこそ最悪だったし、その後に起こった事も最悪、しまいには大事な思い出すら陵辱されそうになった。
だが――そんな暁との出会いと、そんな彼とのやり取りがあったからこそ、思い出せたのだろう。
それはきっと、普通ならばまず起こりえない事、そう――
奇跡、あるいは魔法がそこにはあった――
それはある意味祝福ともいえる。ほむらは暁に救われたのだろう――
そしてそのほむらの生き方はどのような形であれ暁の中に残っている――
そのお陰で救われた事もあった――
暁もまたほむらに祝福されているのだろう――
『がんばって……』
「ん? ほむらの声? ……気のせいか、さーって、待っててね、俺のパラダイスー♪」
【I-3/平原】
【涼村暁@超光戦士シャンゼリオン】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(中)
[装備]:シャンバイザー@超光戦士シャンゼリオン
[道具]:支給品一式×2(暁(ペットボトル一本消費)、ミユキ)、首輪(ほむら)、八宝大華輪×4@らんま1/2、ランダム支給品0~2(ミユキ0~2)、
[思考]
基本:願いを叶えるために優勝する…………………………(???)
0:市街地に向かう。
1:別れた人達(特に凪やラブといった女性陣)が心配、出来れば合流したい。黒岩? 変な事してないよな?
2:あんこちゃん(杏子)を捜してみる。
3:可愛い女の子を見つけたらまずはナンパ。
[備考]
※第2話「ノーテンキラキラ」途中(橘朱美と喧嘩になる前)からの参戦です。
つまりまだ黒岩省吾とは面識がありません(リクシンキ、ホウジンキ、クウレツキのことも知らない)。
※ほむら経由で魔法少女の事についてある程度聞きました。知り合いの名前は聞いていませんでしたが、凪(さやか情報)及び黒岩(マミ情報)との情報交換したことで概ね把握しました。その為、ほむらが助けたかったのがまどかだという事を把握しています。
※黒岩とは未来で出会う可能性があると石堀より聞きました。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。
※森林でのガドルの放送を聞きました。
【支給品紹介】
八宝大華輪@らんま1/2
相羽ミユキに支給、
元祖無差別格闘流究極の必殺奥義として
八宝斎が使用。
その正体は花火を炸裂させるというものである。
原作中では巨大な岩を粉砕する描写もある一方、普通に小さな花火を炸裂させる程度の時もありその威力にはばらつきがある。
作中では巨大サイズのものや、アニメでは八宝大カビンという火薬の代わりにカビを炸裂させるものが登場している。
ちなみに一応マッチで導火線に火を着けてから使用する描写が成されている。
今回は5個セット、マッチを付属した上で支給している。
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最終更新:2013年08月09日 23:05