運命の鳥(後編) ◆7pf62HiyTE
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『……なあ、あのベルトは、今まで人を傷つけたことしかないだろ。本当にそのために生まれて来たものだと思うのか?』
『……思いません! 仮面ライダーは、プリキュアと同じ……誰かを守る戦士なんです』
『ああ、俺もそう思う。……あいつらを見てたらな……エターナルを、本当の意味での仮面ライダーにしてやらないか?』
▼ ▽
川が静かに波打つ――
先程辿り着いたあかねは既にこの場にはいない――
川沿いを高速で移動しているのだ――
それが人間の姿なのか――
あるいはナスカ・ドーパントの姿なのか――
それは、今は語らない――
さて――ここで1つ触れて置きたい事がある――
何故、ナスカのメモリは勝手に動き出しあかねをナスカ・ドーパントへと変身させようとしていたのだろうか?
人とメモリは惹かれ合う――そういう仮説がある。
その仮説通り、あかねとナスカのメモリが惹かれ合っていたと考えられる。極端な事を言えばあかねの想いにメモリが応えた――そういう可能性は考えられなくも無い――
が、一方でこうは考えられないだろうか――
そう、あかねがナスカのメモリと引き合うのは――運命によるものではなかろうか?
あかねが所持しているナスカのメモリは元々ダグバに支給されていたものだ。
さて、そのダグバがこの地で最初に出会ったのは霧彦とヴィヴィオの両名だ。
霧彦は語るまでも無く本来のナスカのメモリの使用者だ、奇しくもダグバは早々に自身に支給されていたメモリと同じメモリを所持している男と出会えたのだ。
そして紆余曲折を経てダグバは再び霧彦のいた所に辿り着いた、その前にガドルによって倒されてはいたがタイミングが違えば再び出逢えていた可能性は否定できない。
これらは全て偶然なのだろうか? 偶然と片付ける事も出来るがもしかするとその時点ではナスカのメモリは霧彦を求めていたのではなかろうか?
そして紆余曲折を経てダグバの所持していたメモリは乱馬の手に渡りその後、あかね自身が手にした。
これは一見すると偶然の様に思える――だが、霧彦の遺志を託された乱馬の手に渡り、その想いの矛先であるあかねの手へと巡り巡ったのは本当に偶然なのだろうか?
極論なのかも知れないが――ナスカのメモリは最初からあかねの元に来る事を願っていたのではなかろうか?
つまり、あかねがナスカの力を手にしたのは偶然では無く必然、そうだったのかも知れないのだ。
思い返して欲しい――伝説の道着を身につけた事で一度はメモリはあかねから離れた。
結局、再びあかねの手に戻ったが、その状況は仮面ライダーWの片割れのハーフボイルド探偵
左翔太郎の渾身の一撃で吹っ飛ばされた場所に偶然落ちていたというものだ。
無論、あかねにしても翔太郎にしてもそこにメモリがあった事を計算しているわけがない。
これと似た事例が存在する――
風都にばらまかれたエターナルを除く25本のT2ガイアメモリ、その内の24本は
大道克己率いるNEVERの手に渡ったが最後の1本だけは発見されないでいた。
だが、最後の1本、それは風都を守る探偵である左翔太郎のすぐ側にあった――ジョーカーの名が示す通り、最後の切り札となったのだ。
ジョーカーのメモリは翔太郎がWに変身する際に一番使うメモリでもある、それが翔太郎の側に落ちたのは偶然なのだろうか?
余談だが、
フィリップがWに変身する際に一番使うサイクロンのメモリ――実はそれもフィリップのすぐ近くに落ちていた。だが、フィリップがそれを確保する前に別の人物が回収していたという話があった。
何にせよ、これら全てを偶然で片付けるのは出来すぎている――陳腐な言葉だが運命というのは的を射たものかも知れない。
そう、あかねが吹っ飛ばされた場所にナスカのメモリが落ちていたのも――それと同じ原理だったのかもしれないという事だ。
実の所、これと似た事例がこの地での克己にも言えるのだ。
克己の手に合ったエターナルのメモリだが実は2度ほど克己の手を離れている。
1度目は
月影ゆりに奪取されたとき、2度目は
ダークプリキュア(なびきと声と髪型が似ている)の手に渡った時だ。
細かい状況説明は省くが両名ともメモリを使い仮面ライダーエターナルへの変身を行っている。極端な事を言えばエターナルの絶大な力を手に入れたと言っても良い。
だがそのどちらであっても、最終的には克己の元に戻ってきた。勿論、それぞれに事情、あるいは思惑はあったのだろう。
しかし、それだけの事があってもエターナルは克己に元に戻ってきている。偶然にしては出来すぎているのではなかろうか?
克己なりに言わせれば、克己とエターナルは惹かれ合っていた。だからこその結果なのだろう。
さて、話も長くなった――そろそろ核心に触れよう。
一言で言おう、この運命はメモリと人だけが惹かれ合っているだけに留まらない。
思い返して欲しい、あかねがエターナルに襲撃された事を、何故エターナルはあかねを襲ったのか?
実はエターナルが最初に交戦した人物は
村雨良、そして良牙だ。
その際に良牙は呪泉郷の事を口にしていた。それを耳に為たエターナルは呪泉郷へと先行、既に触れた通り呪泉郷はあかねのスタート地点、遭遇する事に不思議は全く無い。
話はそれだけではない、その後紆余曲折を経てエターナルは約12時間の時を経て再び良牙と良(他3名)と交戦した――
それを偶然で――いやまだ話は終わらない。
その戦いの結果、エターナルこと克己は良と相打ちになる形で敗れた――そして最後にはエターナルのメモリとロストドライバーが遺された――が、
『……良牙さん、これを使うのは……良牙さんが相応しいと思います。
戦える変身能力がない良牙さんには何より必要なものだと思いますし、……それに、良牙さんなら、仮面ライダーというものをよく理解していると思います』
『おいおい、俺はそれに頼る気はほとんどないぜ……』
『……でも、いざっていうときに、仮面ライダーに変身できたら役に立つと思います。とにかく、良牙さんが受け取ってください』
『……まあいいか。使うことがあるかはわからないが……とりあえず、受け取っておくぜ』
そう、エターナルのメモリ――ある意味ではガイアメモリの頂点に立つともいえるそれが――良牙の手へと巡り渡ったのだ。
この時生き残った4人の内、一番戦闘力に乏しいのは実は良牙(無論、並の相手よりもずっと強いがそれでもプリキュアやクウガ、そして魔戒騎士と比べると弱いと言わざるを得ない)なのでそれ自体は自然な流れだ。だが――
ここまで来れば、読者諸兄も何が言いたいのか気付いただろう。
あかねの手にナスカのメモリが渡った事、そして(良牙自身の思惑は別にして)大事な大事な友人である良牙の手にエターナルのメモリが渡った事――
それどころか、良牙の今現在の同行者はある意味ではダグバと対となる力を持つクウガ、その力を
五代雄介(彼もまた一時期良牙と同行していた)から受け継いだ
一条薫だ。
当然、一条薫は未確認生命体の元締とも言えるダグバをそのままにするわけもない。
ダグバとの因縁まで含めて考えると複雑に絡み合っている事になる。
これは本当に偶然なのだろうか? 何か途方も知れない運命の力を感じずにはいられない――
無論、これらが本当に只の偶然で、次の瞬間にはどう転んでいるかは誰にもわからない――
だが、それならそれで良いのだ。肩すかしではあるが別に取り立てて騒ぐ事でも無い。
それでも――これだけは言える――
良牙とあかねにとって――この偶然、あるいは運命はとても哀しいものだと――
願わくば、彼等に救いがあらん事を――
「そういえば……Pちゃん大丈夫かしら……」
あかねが考えるのは元の世界にいる黒い子豚Pちゃんの事である。
もし自分が戻ってこなければPちゃんは一匹寂しがる事になる――
いや、きっと大丈夫だろう――元の世界には良牙の彼女にしてブタが大好きな雲竜あかりがいる。彼女がいる限りPちゃんの事は何の心配もする事は無い。
だが、そう考えればあかりの為にも出来れば良牙は無事に帰還させたい所だ――
そうだろう、あかね自身にとって乱馬が大事である様に――あかりにとって良牙が大事なのだから――
同じ悲しみを彼女に負わせられるわけもないのだ――
今一度言おう、
この哀しい物語を紡ぐ彼等に――救いがあらん事を――
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『ごめんなさい、ユーノ……私はあなた達の事を騙してた。母さんの為に、この殺し合いに乗った……でも、今だけはあなたの願いを叶える為に……杏子と翔太郎さんの二人を守る為に戦うよ。償いになんて、なるわけないけど
(母さん、リニス、アルフ、杏子、翔太郎さん、ユーノ……みんな、お願いだから力を貸して!)』
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思い返して貰いたい。
ゴ・ガドル・バとの戦いによりユーノとフェイトは散った。
その際にフェイトは渾身の力を以て、自身の相棒とも言えるバルディッシュをガドルへとぶつけた――
が、その渾身の一撃はガドルには届かず――限界を超えた負荷により、バルディッシュの刀身は砕け散った――
わかりやすく言えばバルディッシュはこの戦いで破壊されたという事だ、勿論その表現自体は間違ってはいない。
真面目な話バルディッシュの武器としての機能は完全に破壊されたと言って良い。
但し、それはバルディッシュが只の武器であればの話だ。
そう、バルディッシュは只の武器では無い、魔術師が使う、意志を持ったインテリジェンスデバイスなのだ。
その本来の機能は魔術師が使う魔法の補助、同時に状況判断のサポートだ。
状況によってはデバイス自身の判断で魔法を発動させる事もある。
そう、バルディッシュは健在だったのだ。武器としては使用不可能であり、魔法発動のサポートがどれだけ出来るかは不明瞭、一応自己修復機能は働いてはいるが魔力によるブーストが無ければ戦闘で使用出来るほど回復はしないだろう。
それでもだ、
プレシア・テスタロッサの使い魔にしてフェイトの為に全てを捧げたリニスがフェイトの為に作り上げたインテリジェンスデバイスであるバルディッシュだ、並のデバイスと一緒にしてもらっては困る。
そこに宿りし意志は決して消えやしない。
とはいえ、最低限の機能を維持するのが精一杯である事に違いは無い。それ故出来た事は周辺の様子を伺う事、そしてフェイトとユーノの亡骸が身につけている首輪から発せられた放送を記録する事ぐらいだ。
だが――バルディッシュは何をすべきなのか?
バルディッシュの目的は主人であるフェイトに尽くすことだ。しかしその彼女が散った以上それは果たせない。
彼女の願いを代わりに果たす――といっても、フェイトの願いはプレシアの元に戻り彼女の願いを叶える事でしか無い。
フェイト無しの状態で戻った所でそれが果たせるとは思えない――
ならば――せめて、フェイトが最後に守ろうとした仲間、左翔太郎と
佐倉杏子の力になる事が彼女の望みではなかろうか?
だが、その為には誰かが自身を拾ってくれるのを待たねばならない――
一体どれだけ待った事だろう、7~8時間経過したのだろうか? やっと1人の少女が通りかかってくれたのだ。
願わくば彼女が殺し合いに乗っておらず、出来れば杏子か翔太郎の味方であって欲しいと考えた。
何にせよ、バルディッシュは問題の少女が来た時点で待機状態に戻り彼女の注意を惹いて拾わせるよう仕向けたのだ。
だが、実の所彼女に拾われた事は失策だったかも知れない。
どうも彼女の言動を聞いた限り殺し合いを打破する為に戦っているとは思えなかった。それはすなわち間違いなく翔太郎と敵対している。
勿論、杏子も乗っていたわけだしフェイトも乗っていた以上偉そうな事は言えない。だからそれだけで敵と断ずる事は出来なかった。
が、ある言葉がバルディッシュに彼女が敵だと判断させた。
パンスト太郎、何故そんな名前なのか引っかかるがそれはこの際どうでも良い。
パンスト――それは言うまでも無くパンティーストッキングの事だ。大人の女性が身につける下着の一種である。
わかりやすく言えばフェイトにはまだ早く、リニスやプレシアが身につけている方が自然な下着である。
そう――思い当たる人物がいたのだ。
フェイトはその時気絶していたがバルディッシュは認識していた――杏子とフェイトを突然襲撃した謎の怪物がパンストらしきものを身につけていた事を――
常識的に考えてああいう風にパンストを身につける奴はまずいない。つまりその怪物こそがパンスト太郎という事になる。
つまり、パンスト太郎はフェイトを襲撃する敵対人物という事になる、その知り合いという事はその少女もその仲間である可能性は高い。
少々安直すぎるが味方として信用は出来ない、現状では敵として警戒すべきだろう。
それ故に、バルディッシュは只のアクセサリーのふりを為て少女――
天道あかねと行動を共にしていた。
だが、ここで1つ問題があった。あかねが放送を聞き逃し禁止エリアを把握していなかった事だ。
これはバルディッシュにとっても良い状況とはいえない。
何しろ動いてくれなければ他の参加者とは出会えず、下手に動かれて禁止エリアに入って自滅されても困る。
そこでバルディッシュは一計を案じた――
壊れたテープレコーダーの様に突然禁止エリアを延々と繰り返し呟くだけ呟いてあかねに聞き逃した禁止エリアを伝えたのだ。
戦闘で破損していた事がある意味幸運だった。あかねは自身が壊れていると思いそれ以上の干渉はしなかったのだ。
正直、察しが良い参加者ならば致命的だったが、あかねはどうやら思ったよりも察しが悪く鈍いらしい。
とはいえ今後どうなるかは全く予測できない――突然吐血した所を見ると深刻なダメージを受けているのは見て取れる。
だからといって表だって彼女を助ける気にはならないのも本音だ――もっとも、破損している今の状態では口出しぐらいしか出来ず、このまま胸を守る盾となって無残に破壊されるぐらいの役目しかなかろう。
それでもバルディッシュは構わないとは思う。本来ならばあの時フェイトがガドルに破れた時点で自身の運命も尽きていたのだ。このまま何も出来ず散っても悔いは無い。
だが――
『What ?』
突如として――あかねの周囲に鳥が纏わり付いているのが見えた気がした。
見えたのはほんの一瞬――きっと故障による誤認だったのだろう。
何気なくバルディッシュは思ったのだ――
その鳥は彼女に不吉な運命を暗示しているのでは無いのかと――
バルディッシュが見たあかねに纏わり付く謎の鳥――それが現実のものか幻だったかは誰にもわからない。
それは本当に彼女の不幸を暗示したものであったのかもしれないし故障による誤認だったのかもしれない。
消えたのも只の幻、あるいは誤認だからだったのかも知れない――
だが、不幸を暗示した鳥が消えたということは、もしかすると『そういう意味』を示しているのかも知れない――
真相がいかなるものであっても――運命の名を持つ少女の相棒は、新たに出会った少女の運命を静かに見守り続けている――
『Do-chan , N-chan ... Possibly, is she called my Bar-chan in my case?(道ちゃん、Nちゃん……もしかして、私の場合バルちゃんって呼ばれるのでしょうか……?)』
【1日目/日中】
【I-4/川沿】
【天道あかね@らんま1/2】
[状態]:肉体内部に吐血する程のダメージ、ダメージ(大)、疲労(大)、精神的疲労(大)、とても強い後悔、とても強い悲しみ、毒素は一時浄化、伝説の道着装着中
[装備]:伝説の道着@らんま1/2、T2ナスカメモリ@仮面ライダーW、バルディッシュ(待機状態、破損中)@魔法少女リリカルなのは
[道具]:支給品一式、女嫌香アップリケ@らんま1/2、斎田リコの絵(グシャグシャに丸められてます)@ウルトラマンネクサス
[思考]
基本:”乱馬たちを守る”ためにゲームに優勝する
0:川沿いを進む。
1:ダグバと遭遇した時は倒す。
2:良牙君………………出来れば会いたくはない。
[備考]
※参戦時期は37巻で呪泉郷へ訪れるよりは前、少なくとも伝説の道着絡みの話終了後(32巻終了後)以降です。
※伝説の道着を着た上でドーパントに変身した場合、潜在能力を引き出された状態となっています。また、伝説の道着を解除した場合、全裸になります。
また同時にドーパント変身による肉体にかかる負担は最小限に抑える事が出来ます。但し、レベル3(Rナスカ)並のパワーによってかかる負荷は抑えきれません。
※Rナスカへの変身により肉体内部に致命的なダメージを受けています。伝説の道着無しでのドーパントへの変身、また道着ありであっても長時間のRナスカへの変身は命に関わります。
※ガイアメモリでの変身によって自我を失う事にも気づきました。
※
第二回放送を聞き逃しています。 但し、バルディッシュのお陰で禁止エリアは把握できました。
※バルディッシュが明確に機能している事に気付いていません。
※今現在、ナスカ・ドーパントに変身しているか、変身していた場合どのレベルかは不明です。
【バルディッシュについて】
※ガドルとの戦いで破壊されたのは刀身部分です。その為、武器としての使用は不可能です。具体的にはスタンバイフォーム(待機状態)以外はほぼ使用不可能という解釈で構いません。
※現段階で魔法のサポートがどれだけ出来るかは不明です。勿論、リンカーコア所持者でなければ使用はまず不可能です。但し対話によるサポートは可能です。
※周囲の状況をずっと把握しています。その為、放送の内容も把握しています。
※自己修復機能により自己修復は一応進行中ですが魔力によるブーストが無ければ使用出来るレベルまでへの回復はまず厳しいでしょう。
※バルディッシュはフェイトの最期の願いを叶える為、翔太郎及び杏子の力になる事を目的としています。
但し、マスターであるフェイトが死亡している為、現状このまま何も出来ずに破壊されても構わないと考えています。
※(殺し合いに乗っている可能性が高い、フェイトを襲撃したパンスト太郎の知り合いである)あかねを信用しているわけではありません。その為、現状彼女とコミュニケーションを取るつもりはありません。
禁止エリアは自身の為に伝えただけでしかなく、現状それ以上の情報(パンスト太郎が既に死亡している事等)を提示するつもりはありません。
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最終更新:2013年10月24日 18:31