超絶 ◆gry038wOvE
【D-6 屈辱の丘 08:00 p.m.】
ズ・ゴオマ・グ、ゴ・ガドル・バ、
ン・ダグバ・ゼバ──三人のグロンギが、この殺し合いには招かれていた。
そのグロンギたちは、この場では当人たちも知らぬ間に、あるゲゲルを行わされている。
バギンの「姿を変えるリントと、その周りの戦士」を葬る──そして、ちゃんと当人たちの手でその数のリントを殺し、封印が解かれた時、“成功”とみなされる。このゲゲルの対価は、成功者の昇格ではなく、王の復活だ。
ゲゲルが成功し、時計の小さい針が次の偶数を指した時、この闇の中から新たなる王が蘇る──。
遂に、グロンギの算法における10の数、即ち、我々リントにおける9のリントの命が、グロンギ族によって奪われた。
ここまで約20時間を要している。彼らにとっては、数に対してこれだけの時間を要したのは、予想外だろうか。
いわば、彼ら9人は生贄と言ったところだろうか。
──もう一人の王が、動き出す。
彼らなら、一体、この王に対して何をするだろう。
ゴオマなら、己の新たな力とその強さを過信して、無謀に挑むだろうか。
ダグバなら、もう一人の王の存在を認めず、しかし笑顔でもう一人の王に挑むだろうか。
彼らに仇なす者ならばどうだろう。
五代雄介なら、グロンギの王が誰かの笑顔を奪うのを許す事はないだろう。
一条薫なら、警察として人々を守るために彼を倒しに向かうだろう。
今、唯一この場に残るガドルなら──────いや、それは推測する必要はない。これからいずれ、実現する事になるかもしれないのだから。
「バセ ゴセ パ レザレタ?(なぜ俺は目覚めた?)」
──
ン・ガミオ・ゼダは、己が地上の空気を吸っている事に気づく。
丘の上には、封印の解かれた、見覚えのない棺。ガミオは、こんな棺に閉じ込められた記憶はないし、いつ封印されたのかさえ定かではなかった。
真っ赤な狼の異形は、グロンギでありながら人の姿を持たない怪物の──しかし、かつて人だったかもしれない男の──唯一の「自分」。
「俺は二度と目覚めぬはずだった」
ガミオは、リントの言葉でそう言う。彼がなぜ、長い眠りにありながら、リントの言葉を知っているのか──それは誰も知らない。
五代雄介の物語はン・ダグバ・ゼバを倒すところで終わり、再び物語が動く事は、なくなったはずだった。いつか世に出るはずのガミオも世界に現れぬ事となった。ガミオは永久にこの世に目覚めぬはずだったのだ。その存在は、姿は勿論、名前さえ世に出ず──ただ紋様だけが、その世界に存在した証として在り続けるだけだった。
もう一つのアークルや、この丘もそうだ。五代雄介の戦いの終わりとともに抹消され、永久に日の目を見る事がないはずの存在だったのである。
しかし、本来存在し得ぬイレギュラーがガミオの存在を見つけ出し、再び、世に送り出したのだ。──何年も培われた強い意思たちが、この屈辱の丘さえも探し出したらしい。
本来ならば、クウガの物語は、もう誰にも侵されず、誰が望んでも動き出す事はないはずだったのに。
「なぜ俺はここにいる。なぜ奴らが俺の世界にいる」
五代雄介と一条薫は、悲しい暴力の果てに、みんなの笑顔を獲得したのだ。
五代雄介が守った笑顔を無駄にされぬためならば、時空さえ歪められる。五代雄介がいる世界は、たった一人の男のために神の存在にさえ抗った。彼の戦いに続く神と人との戦いは、ただ五代の願いのお陰で、別の未来に──あるいは、その戦いの過去の方が「未確認生命体第4号が居た」というだけの全く別の過去に、分岐するほどの力を得た。
それが正しい歴史であり、五代とガミオが同じ世界に存在する事はないのである。しかし、ガミオの存在までこの世に再び姿を現すほどの意思がどこかに存在したのである。……そして、その意思がこの場でも、再び発動し、ガミオは蘇った。
「この丘もまた、別の遺跡であるはずだった……。新たな世界が生まれた事で、あの遺跡をこの丘に変えたのか。……ならば、この世界は一体、なんだ」
五代雄介が、一人の少女の手で死んだ。
一条薫が、仮面ライダークウガとして死んだ。
ズ・ゴオマ・グが、怪物の餌食となった。
ン・ダグバ・ゼバが、クウガではない戦士に殺された。
ラ・バルバ・デと
ラ・ドルド・グが、その戦いを操る存在になっていた。
ゴ・ガドル・バが、グロンギ最後の勝者となり、王となった。
そんな世界があって良いのだろうか。この殺し合いは、ガミオがいる世界や、もう一人のクウガの力が少女に宿る世界や、未確認生命体第4号の後に“アギト”が現れる世界以上に、存在してはならぬ世界ではないか。
本来の世界とは分岐したはずのガミオの世界。
ガミオがいるべきは、このクウガの世界で正しいのだろうか──。
いや、違う。ガミオが現れるべきは、この世界ではない。
五代雄介ではない。──彼のいる世界はガミオが現れる事なく終わるはずだ。
では──小野寺ユウスケか。それが本来ならば正しいはずだ。しかし、それも違う。
今、ここにその戦士はいないのだ。
「……だが、蘇ったからには仕方がない。俺は俺の目的を果たすとしよう」
何にせよ、究極の闇を齎す。──それがガミオの王としての存在意義であり、本来生まれた場合の役割だ。ガミオが復活したからには、誰かにそれが望まれているという事なのである。本来なら、黒い霧を放ち、世界をグロンギの物へと変えていくのがガミオの究極の力であるはずだ。
「闇の力が使えん……。では、なぜ俺は──」
……しかし、今は何故かその力は発動しない。
彼はそれを疑問に思いながらも、────すぐに理由を悟った。
「そうか、ガドル……奴がこの世界のもう一人の王となったか」
そう、ンの戦士は二人存在してはならない。その
ルールの矛盾がガミオの能力を封じているのだ。──不条理だらけのこの世界だが、己にまつわる矛盾だけは許すわけにはいかない。
ガドルの世界の「究極の闇」は、世界を雷雲に包み、圧倒的な力で死の絶望へと落とす。
ガミオの世界の「究極の闇」は、世界を黒霧に包み、人をグロンギに変える。
その二つの闇の違いが、矛盾を生み、「究極の闇」が現れるのを妨害している。──そうか、ダグバがその本領を出し切る事ができなかったのは、彼が封印されていたからなのだ。
「面白い。この歪んだ殺し合いには、まだまだ存在しえない者がまだいるようだ。奴らは抗い続けるか、俺とともに消えるか……見届けよう」
ガドルの猛攻とともに生まれた、「月影なのは」も。
本来とは別の経路を辿り、
佐倉杏子に受け継がれた「光」も。
仮面ライダーのない世界の者が変身した「仮面ライダー」も。
本来は、どんな世界にもない。世界に望まれているのか、望まれていないのか、それがわからない孤独な存在である。当人たちも気づいているかはわからないが。
ガミオはそこに裁きを下す存在ではない。しかし、己の存在を証明する過程で、そんな者たちにも会うかもしれない。
その時は、果たして何をすればいいのか、それはガミオにもわからない。
「そして、ガドルよ。お前はどれだけ、今のお前の存在を刻める……? 俺は──」
今のガドルが、本来生まれるはずのないガドルなら、その存在の力は、どれほどか。
ガドルは、世界に在ってはならない「IF」の存在。歴史上にあってはならない存在だ。
ガミオもまた同じだ。彼もまた、世界にいてはならない存在である。
この場にいられるだけで満足であるような、そんな安堵感と、この場にいていいのかわからに不安の二つがガミオの中に渦巻く。──しかし、そんな中でも、その存在を限界まで刻み付けたい本能が、ガミオを駆り立てる。
ガドルを倒し、究極の力を取り戻す。──そして、究極の闇を齎す事で、この場に己の存在を刻みたい。
しばらくはその本能に従おう。
ガドルはこの夜、獣のように吠えた。
【1日目 夜中】
【D-6/グロンギ遺跡】
【ン・ガミオ・ゼダ@仮面ライダークウガ?】
[状態]:健康
[装備]:?????????
[道具]:?????????
[思考]
基本:この世界に存在する。そして己を刻む。
1:ガドルを倒し、究極の闇を齎す者となる。そして己の力と存在を証明する。
2:この世界にいてはならない者を──。
[備考]
※この殺し合いやこの「クウガの世界」について知っているかのような発言をしています。
※黒い霧(究極の闇)は現在使用できません。もう一人のグロンギの王を倒して初めてその力を発現するようです。
※この世界にいてはならない者とは、ロワのオリ要素や、設定上可能であっても原作に登場しなかった存在の事です(小説版クウガも例外ではありません)。
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最終更新:2014年05月18日 14:44