キルミーベイベー!
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homuhomu_tabetai
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作者:QRH9CF7Io
748 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] 投稿日:2012/01/30(月) 21:53:14.92 ID:QRH9CF7Io
「佐倉杏子とー」
「暁美ほむらのー」
「ほむほむとの付き合い方ー」
二人がやる気なさげに言う。
二人共美樹さやかに連れられてこの企画に参加しているものだったはずだし、心の底からほ虐が好きという訳でもないのだろう。
「なんであんたと一緒なんだよ」
「美樹さやかがインフルエンザで出られなくなったのよ」
「…ま、マミはほ虐嫌いだって言うしな…仕方ないか。
ただし、あたしの邪魔だけはするなよ?」
「代弁お疲れ様」
「あんだとド」
「やめなさい」
見たところ、二人は非常に仲が悪そうだ。
確認した限りでは二人に関係はなかった筈だが…袖振り合うも多生の縁という。一々考えるだけ時間の無駄だろう。
「えー、それではー、今日はこの『ホムリンガル』を使いますー」
「これはほむほむの言葉を翻訳する機械。ただし、>>520の翻訳コンニャク程高性能ではないわ」
「だったらそっち使えばいいだろーはい終了」
「勝手に終わらせないで。デジタル化したらアナログが恋しくなるのと同じよ」
「訳が分からねーよ」
ホムリンガル。美樹工房の作った玩具である。
最初は「ホムー!ホムー!」とうるさいほむほむとの意思疎通に使われたものであったが、ほむほむの貪欲さを証明するだけのものに成り下がり、
最近はその点に目をつけたほ虐家が専ら使用している。
「んで、それ、どういう物なんだ?」
「ただのおもちゃよ」
「はぁ!?」
「ほむほむを喋らせると、この画面に『お腹が空いたよ』とか『眠いよ』とか表示されるようになってるそうよ」
「バリエーション少ないな」
「これはただの一例よ。でもまあ、翻訳こんにゃく程ではないわね」
「もう引っ張るなよそれ」
ほむほむとは意思疎通がまともに出来ない方が良い。それが、最近のほ虐業界の結論であった。
相手を「It」と思った方が冷酷非情な所業も平気で出来る。一応理屈は通っていると思う。ほ虐界に良心があるかどうかは非常に疑問だが。
「じゃあ、これをこいつに取り付けて何か喋らせればいいんだな?」
「ええ」
「ホムー!ホムホムゥ///」クスグッタイヨ
「なあほむら」
「何かしら」
「これ虐待するんだろ?」
「当然でしょう」
杏子の顔にはありありと嫌悪が浮かんでいる。しかし、報酬の1万を思い出したのか、しゃんと背を伸ばしてホムリンガルの電源を入れる。
「ホム?」 ……
「おい何も映らないぞ」
「意味のない呟きなのよ。ほむほむ、何か喋りなさい」
「ホム?ホーム、ホムホムー」 おなかがすいたよ
「お、『おながかすいたよ』だとさ」
「見てるから分かるわ。ほむほむ、○か×で答えて。貴方はまどまどが好き?」
「ホムホムー」 おなかがすいたよ
「いや…おい」
「…じゃあ、ほむほむ。○か×で答えて。これはカミソリだけど、怖い?」
「ホムゥ!ホム・・・」 おなかがすいたよ
「……」
そう、ホムリンガルがほ虐専用になったのは正にこれが理由である。
ホムリンガルはほむほむの発する微細な電波(人体には無害)をキャッチし言葉を出すのだが、
ほむほむには「いつものとき」と「瀕死のとき」の2パターンしかその波長の種類がない。
前者は、本当にいつでも…まどまどが側にいる時の求愛も、餌を探している時の独り言も、気の狂った空笑も…。全て含まれる。
瀕死のとき波長が変わるのは、仲間を呼び寄せる為だとも言われている。
しかし、そんな事は重要な問題ではない。
人間は当然、もう一つの表示を見たがる…「いたいよ!」という文である。
美樹工房は、実際にはこの2つしか表示されないようにこのホムリンガルを設計していたのだ。
それが発覚する前に確信犯的にこの商品をリコールしたのだが、まだ残っていたらしい。
美樹工房はほ虐を勧めるためこのような賭けに踏み切ったそうだが…その目論見は、少なくとも世間一般には成功せず、今に至る。
杏子とほむらは、疑いの眼差しでほむほむとホムリンガルを相互に見比べる。
「おい、これ欠陥商品なんじゃないのか?」
「商品説明によると、ほむほむが瀕死のときには『いたいよ!」』と表示されるようだけど」
「いたいよ…か。 おい、ほむら」
「やるの?」
「当たり前だろ。折角の魔法の力じゃないか」
「何もかも間違ってる気がするけれど突っ込まないでおくわ」
この二人も、根本は同じだ。何一つ違わない。何一つ、変わっていない。
二人は急に強い殺気を放ちだす。これが中学生女子かと疑う程の、だ。
「ホッ・・・ホムゥ!」 おなかがすいたよ
「お前に食わせる林檎はない」
「あなたにあげるまどまどはいないわ」
「ホ・・・ホム・・・ホム・・・」 おなかがすいたよ
「凄いな、これ。人をイライラさせる道具としては天才的な発明だ」
「流石美樹工房ね。ほ虐のエキスパートだわ」
美樹工房の企みは二人にはお見通しだったようだ。
杏子はソウルジェムからほむほむサイズの槍を取り出し、ほむらはわざとりぼほむのものに似せた弓を見せる。
「ホム!ホムー!」 おなかがすいたよ
「いいか、ほむら。あたしが手足を潰すからあんたは致命傷を与えないように攻撃しろ」
「貴方に指図される覚えはないけれど…概ね賛成よ。いいわ、やりましょう」
小さな丸テーブルを囲うように移動し、ほむほむをハンターの目で見つめる。
「ホ・・・ホム・・・ホム・・・」 おなかがすいたよ
「いい加減、電池がもったいないだろ。もう何も喋るな」
「そうね、工場から出荷されたものとはいえまだまだ使えるわ。電池を外しなさい」
「ホ!ホ、ホム!」アセアセ おなかがすいたよ
「何電気を使ってんだよ」ヒュッ ドシュッ
「ホギャアアアア!ホビィ!ホミャ・・・」ミギテツブレ おなかがすいたよ
「まだ瀕死じゃないようね。次は私」ヒュンッ シュッ
「ホビィィィイイイ!ホォォォォォ!」ミギアシツブレ おなかがすいたよ
「なんだ、案外生きてるもんなんだな。生命の神秘ってやつか」ザシュッ
「ホ・・・?ホ?」カミノケキザミ
「あら、何も表示されないわね。貴方のじゃ虐待にもならないそうよ」ヒュバッ ゴキュッ
「ホビィィィィィ!ホギイイイイイイイイ!」ヒダリアシダッキュウ おなかがすいたよ
何を取り付けられたのかすら分かっていないほむほむは、当然、二人が突然自分を痛めつけた理由も知らない。
ただ、生物の本能として泣き叫び、二人を更に興奮させているだけだ。
確かにこの機械は冷徹且つ残虐で、生物を嬲る凶悪なものである。
しかし構造は至ってシンプル。一行の文章の証明が非常に難しいことがままあるが、それと全く同じである。
両手両足を潰され、試食という目的で食われ、大切な髪の毛も切られたほむほむの命は、今や風前の灯であった。
「ホミィィィィィ!ホムギャアアアアアア!ホアァ・・・ホ・・・ホガ・・・」 いたいよ!
「お、ようやく出た」
「長かったわね…殺さないのって逆に難しいのね」
「あんたがその台詞言うと洒落にならないな」
「何かしら。さて、もう表示も見たことだし…」
「…そうだな。食うかい?」
「いいえ、結構よ。貴方どうぞ」
「いや、あたしは…腹一杯だしさ。食い物を粗末にするなよ」
「貴方の目にはこれが食べ物に見えるの?」
「……」
「……」
「ホッ・・・ホッ・・・ホォ・・・」イキモタエダエ いたいよ!
「…んじゃ、やるか」ヒュンッ ザッシュゥ
「ホ!・・・―――」
「…終わりです。ご覧頂きありがとうございました」
「ん、あたしも?…終了。また来週ー」
何となく尻切れとんぼに終わってしまった感じはあるが、まあ、中学生女子としては上出来だろう。
そもそもこの番組だってほ虐と『中学生』が好きな物好きしか見ていないし…その分収入は多いが…。
「おーい、報酬の一万くれよ」
「え?あ、はい。お疲れ様でした」
「えっへへー。このバイト中々気前いいなー。また誘ってくれよ」
「ええ、今回の視聴率が良いようならば」
「そうか。んじゃな」
もういつもの笑顔に戻っている。一応現在の状況などは撮影前に確認しているが、ゆまという少女と一緒に暮らしているらしい。
まあ終わったことは終わったことである。最近はプライバシーもうるさいし、こんな事を書いておいてはいけない。
来週は、奇跡の回復を体感した上條恭介という少年とこの番組の常連の美樹さやかが出演する。
美樹さやかのほ虐は素晴らしい。若き才能と恐れを知らない多様性に恵まれた、この番組の華と言って差し支えない手腕である。
それでは、また来週。 ほむほむとの付き合い方制作日記 著者 I・K