第2部
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homuhomu_tabetai
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元凶は数年前、ある突然変異体の出現でした。
『ほ食あんさや』……土の中に巣を掘り、きゅうべぇを食して暮らす平和を愛する生物にすぎないあんさや科の個体が、突然獰猛にほむまど達を襲い始めたのです。
ほむまど達にしてみれば青天の霹靂で、たちまち【ほむまどゾーン】中がパニックに陥りました。
そこで、急遽会計担当の私も注意喚起に借り出されたわけです。
注意喚起っていってもスピーカーを持って、ほむまどに直接呼びかけるだけですよ(笑)
【あんさやパーク】に近づくな!! ってね。
他の動物と違って人語を解しますからその点は楽ですよ。
でその時に――今にして思うとあれがいけなかったのかな――全個体に呼びかけるのは面倒だからって情報伝達をリレー式にしてしまったんです。
オカーサンに伝えてね! コドモに伝えてね! オトモダチにも伝えてね! ってね。
で、情報のリレーを続ける内、話がどんどん雪ダルマ式に大きくなっていってしまった(笑)
「生き血を啜る害獣だ」
「姿を見たものは生きて帰れないらしい」
「若ほむ8匹なら大丈夫だろうと思っていたら同じような体格の20匹に襲われた」
「餌場が襲撃され、ほむまども「仔ほむまども」全員レイプされた」
「「そんな危険なわけがない」といって出て行った仔ほむまどが5分後血まみれで戻ってきた。」
などなど。
最初はほむまど達も噂話程度にお喋りしていたようですが、事件の反省からエリア間を結ぶ唯一の吊橋が爆破され、交流が完全に途絶えると、あんさやを実際に見たものは世代を追うごとに減っていき、俄かに真実味を帯びた話として語られるようになったのです。
こうして、一つの信仰が生まれました。「あんさや=獰猛で残虐なほ虐種」という洗脳です。
人口に膾炙し、何度も何度も口にすることで、ほむまどのちっぽけな脳味噌の中では真実になってしまうようです。
噂に懐疑的なものも居たかもしれませんが、和を重んじるほむまどコロニーの中で言い出せずにそのまま洗脳されてしまったり、裏で制裁されたりして、表に出てくることはありませんでした。
こうしてわずか数年のうちに、平和を愛する小動物は恐ろしいほ食モンスターに変貌してしまったのです……
ほむほむ「キョーコ ミキサヤカ、ホムムゥ」アンサヤ、トッテモコワイ
まどまど「マドォ マドマドン」オソワレテ タベラレチャウ
仔ほむまど「「ホミャァァァ… ミャロォォォォッ…」」コワイヨォ… ガクブル
一方、『ほ食あんさや』討伐には保安官も駆り立てられました。
彼女たちは苦戦の末、『ほ食あんさや』を駆逐することに成功しましたが、その多くは愛する番や家族を失いました。
また自身も身体に重い障害を負い、保安官の任を後進に譲らざるを得なくなりました。
元・保安官は病床で何度も仔、孫たちに語りかけます。
「あんさやを許すな、大人しそうな見てくれに騙されるな、あんさやは獰猛な害獣だ、あんさやを駆逐しろ」と。
このセリフ自体は未亡人の怨嗟の声としてありふれたものです。
ですが、語り続けることで、これが暗示の形で洗脳効果を発揮するようになり――親仔代々伝えられていくことになります。
稀少種のみで構成される【稀少種の杜】には70~80世帯ほどの稀少種家族しか暮らしていません。
ですから、噂や洗脳は【ほむまどゾーン】に比べて異常なスピードで伝播したことでしょう。
しかも、稀少種ばかりを集めて群を構成したことがさらに悪い方向に働きました。
稀少ほむ種という生き物はしばしば理想を追求しすぎるあまり、群の仲間から疎まれたりするものですが……大抵、誰かがストップをかけてくれます。
ですが、稀少種のみで構成されたこの群には理想論を止めようとするものは今や誰もいません。
仲間うちで会合を繰り返すうち、理想論に歯止めが利かなくなり、しまいには、「あんさや根絶」という危険思想を抱くようになってしまったのです。
りぼほむ「ホムホムサヤカァ!!」サヤサヤコロセ!
白まど「キョーコチャマドマド!!」アンアンコロセ!
ツインテりぼ「ホミュホムトモエマミ!!」ネダヤシダ!!
稀少種s「「ホムー マドー ミャロミャロ ホミュゥ」」ソーダソーダ!!
ある稀少種の家庭では毎食前にあんさや根絶を先祖の霊前で宣誓する習慣がある――にわかには信じられない報告を受けたこともあります。
こうして、いつしか保安官にとってあんさや根絶は一族の悲願となり、その思想は親から仔へ、仔から孫へと継承されていったのです……
そんな生まれながらのアンチあんさやであるところの彼らが本来の無害で大人しいあんさやを見たところで、
「あぁ、彼らを襲った凶悪な突然変異体はもういないのだ」などと納得してくれるはずがありません。
彼らにとって、あんさやとはこの世の悪そのもの。あんさやが害獣ではなく、害獣があんさやなのです。
ですから、一家団欒の最中、突然の乱入者にビクビク怯える無実のあんさや家族を見たところで――
あんあん「アンニャァァァァァァァァッ…」イヤァ… ガクガク
さやさや「マモッチャイマスカラネ…」カクレテ… ブルブル
仔あんさや「「ニャーンニャーン… チャヤァァァ…」」オカアサン… ポロポロ
――やっぱり「ただの害獣」にしか見えないでしょうね。
≪りぼほむ's eye≫
害獣1「アン、アンコォwww」カカッテコイヤw
害獣2「ホントバカァwww」ミジメニシネw カトウセイブツww
仔害獣s「「バーカバーカww オシリペ~ンペンwww」」プゲラ
保安官りぼほむ「サクラキョウコォ!!! ミキサヤカァァァァァッ!!!」ユルサンッ!! ギロリッ!!
キリリ…ヒュヒュヒュンッ!!!
仔あん「アギャ!!?」パァンッ!!
さやさや「サビャッ!!?」パァンッ!! コドモカバウ
あんあん「サヤカァ…サビシィモンナァ…」シクシク
仔さや「チャビャァァァァ… オカーターン…」ビエーン!!
保安官りぼほむ「ホムンッ!!」ガブリッ!!
あんあん「ニャンギャァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
保安官りぼほむ「ミ゙ ギ ザ ヤ゙ ガ ァ゙ ァ゙ ァ゙ ァ゙ ァ゙ ッ゙ !!!」クチノマワリチマミレ
あんあん「ギャ…」ドサァ
仔さや「シャ、シャビャァァァァァァァァァッ!!!」ジョボボ~
保安官りぼほむ「ホ、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、
ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、
ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、
ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム…」シネ、シネ、シネ(ry ゲシゲシ
仔さや「シャ、シャビャァァッ!!」パァン
仔さや「シャビャッ!!」グシャァ
仔さや「ビャッ!!」ゴキッ
仔さや「ァ」ネチョッ
仔さや「…」ベチョォ
保安官りぼほむ「ホ、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、
ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、
ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、
ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム、ホム…」ゲシゲシ
仔さや「」ニクヘンスラノコラズ
このように、ほむまど科と稀少種はあんさや科に対して、歪んだ感情を抱きながら今日まで繁栄を続けてきたんです。
保安官は全ほむ種のトラブルを公平に調停するのが役目じゃないのかって?
名目上はね、そうですよ。実際はほむまど贔屓にも程があります。
保安官の内訳はりぼほむが30、白まどが20、あんさや科からの選出はゼロです。
羽さや、羽あんというあんさや科の稀少種が極稀に産まれることもありますが、ことごとくパトロールの保安官に発見されて、その場で一族丸ごと虐殺されています。保護団体に見つかるとうるさいですからね。
因子をもつあんさやは虐殺され尽くしたようで、現在では羽あん・羽さやの血統は完全に途絶えてしまいました。
えぇ。保安官職はすっかりほむまどサイドの天下です。
大嫌いなあんさやの面倒なんて見るわけがありません。
【あんさやパーク】でトラブルが起こってもダンマリですよ。
≪オフレコ≫
アイツらの仕事ときたら酷いもんさ(笑)
ほむまどばっかり贔屓して、あんさやは裏で絶滅しない程度に虐殺したりほむまど共の餌にしてるんだからさww
あくまでお偉方にバレないようにネチネチとねww
そう、三年に一度の個体数調査のときだけ産めや殖やせやで増産させるのwww
逆にほむまど共は山奥に散らばって数減らしたりしてなwwwwww
ま、毎日通ってる俺らにはバレバレだけどwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
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えぇ、はい。ほむまど達はあんさやを見たことがありませんからね。
あんさやの姿焼きを差し出して、「これは餌だ」と保安官が言い張れば簡単に信じてしまうんです(笑)
まさかあの「あんさや」だとは夢にも思わずにバクバク喰いはじめますよ(爆笑)
現状、市の予算で養えるキャパを遥かに超えたの数のほむまどが公園に溢れかえってるのも、【あんさやパーク】のあんさやを食い漁ってるからに他なりません。
毎日提供される「餌」の【肉】――あー、もう面倒なんで変に取り繕うのはやめましょう、ほむまど肉、はい。
加工工場から購入するほむまど肉だけじゃ、もうほむまど達を養いきれないんですよ。
最後の個体数調査はもう二年前ですが、今ではあんさやの数は例の事件前の一万分の一とも言われています。
逆にほむまどは指数関数的に増える一方です。何しろ繁殖力は全生物中最強クラスですからね…
毎分毎秒そこかしこから仔ほむまどの産声が聞こえますよ。ほら、あそこでも。あ、こっちでも。……え? こっちも??
全く、本当に愚かで浅ましい生き物ですよねぇ。
このままでは1年とたたずこの森のあんさやは絶滅し、「餌」で満足できないほむまど同士で共喰いを始め――生態系は完全に崩壊するでしょうね……
アンタの責任は、って? 勘弁してくださいよぉ。ボカァただの会計職員ですから。
ほむ種間のトラブルは保安官に全任してあるもので…人間の我々が手を出したところでどうにもできない問題ばかりですし…
まぁここの生態系が崩壊したらお役御免、公園ごと廃園でしょうな。
そのときは退職金で次の職でもゆっくり探すことにしますよ、ハハ…
≪オフレコ≫
まったくとんだお笑いだよなwww
なーにが、「ほむ種と触れあえる自然公園」だってのwwwwww
「ほむ種が殺しあう自然公園」に改名しろよなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
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第2部・蛇足、あるいはとある公園職員の独白 ■おわり■