その3

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homuhomu_tabetai

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ふむ。どうやらこのりぼほむには『アンアン』が見えてないようだ。面白くなってきたぞ…
先ほどの親仔の態度、来訪してきたりぼほむの発言を総合して考えると――僕の中で一つの仮説が生まれつつあった。

りぼほむ「ホッムゥゥゥゥッ!!! ホンガァァァァァァァァァァッ!!!」ジムショニコイ!!
怒り覚めやらず怒鳴り散らすりぼほむ保安官。
おっと、このままじゃ本当に愛護条例違反で前科者だ。申し開きをせねば。

「本当に『アンアン』なんだってば、その仔に直接聞いてごらん」

納得いかない様子のりぼほむだったが、この一家も事件の当事者である以上、氏名・生年月日・居住エリアを記録せねばならない。渋々事情聴取を始めるりぼほむ。

りぼほむ「…ホム、ホムゥ?」オナマエハ?

ほむほむ「ホム…ホムゥ」ホムホムデス
まどまど「マドマドォ!!」マドマドデス
仔まど「ミャロミャロ…」コマドデス

仔ほむ「ホミュ…ホミュゥ…アンニャン…」『アンアン』ダヨォ… ポロポロ

りぼほむ「ホマァ!? サクラキョウコォォォッ!!!」ギロリッ

仲間を気遣う優しげな表情は一転――戦闘種としての鋭い顔つきへと変わった。

りぼほむ「ホム? ホムホムキョウコォ?」ホントウニ…アンアンナノカ?

仔ほむ「ニャンニャァァァァァン…」『アンアン』ダッテバァ…

何度も親ほむと仔ほむの間を行ったり来たり、視点を往復させている。混乱している様子だ。

りぼほむ「ホムホマァ? サクラキョウコ?」

僕に聞かれてもね(苦笑) 一応答えるけど。

「確かにその仔は『アンアン』だよ」

そして、僕は満面の笑みでこう問うた。
「エリア外に脱出した野生ほむ種は発見次第ただちに捕獲――ですよね?」

りぼほむ「ホムホム」ソウダ

そう言うと、りぼほむは七つ道具の一つ・ワイヤーロープを取り出し、慣れた手つきで『アンアン』を拘束した。
本来の外骨格である弓矢を改造したものである。

仔ほむ「ホ? ホミャ!? ホミャギャァァァァァァァァァッ!!?」ウゴケナイヨォォッ!! モゾモゾ

りぼほむ「ホムンッ!!キョウコッ!!」オトナシクシロ!! アンアン!! テッケンセイサイ!!
仔ほむ「ホンビャァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」ドウチテェェェェェェェッ!!!




やはり仮説は正しかった! ハレルヤ!!

――コイツらは名前……否、言葉に支配される生き物なのだ!!

自分の仔供が凶暴な「あんあん」に見えてしまったほむまど親仔――
一度は仔ほむに見えていたはずのモノが「あんあん」に見えてしまうりぼほむ――

さぞかし、イメージ通りの獰猛な生き物が目に映っていたことだろうね。

伝聞だけの情報で「あんあん」を極度に恐れていた仔ほむにしたってそうだ。

    、、、、、、、、、、、、、
僕は、あんな気弱で臆病な生き物の名前を付けられるのは嫌だろうというつもりで名付けのイタズラを試みたのだ。
だからこそ、仔ほむの「あんあん」に対する恐怖は伝聞によって生み出されたものだと気づけたわけだしね。
全ては、ほむ種の異常なまでの被暗示性の高さが見せた幻影にすぎない。






、、、
本物のあんあんは土中のきゅうべぇを食して暮らす、平和的で大人しい種だというのに――







…………
………
……


エリア間の交流を完全に遮断してしまったのが全ての元凶なのだろう。
このエリア…【ほむまどゾーン】では、今や「あんあん」はすっかり幻の生き物になってしまっていたのだ。
本来の温厚な姿を見たことある者は誰もおらず、どういう訳か広がってしまった恐ろしいほ食の伝説だけが一人歩きする謎の生物…
ほむまど達が己の恐怖を投影する鏡――それが「あんあん」の正体である。

暗示の効果は絶大だ。   、、、、、、、、、、、、、
何しろ――――コイツらは「自分と全く同じ姿をした動物」を何の躊躇もなく食べてしまう。

【ほむまどゾーン】で提供される「餌」(献立表には【肉】とだけ記されている)――あれどう見たってほむまどの姿焼きだよね。
ジェニファーたちと散歩してたらうっかり餌場に迷い込んでしまって、思わず嘔吐しちゃったよ。
笑顔で家族団欒しながら、自分そっくりの姿焼きを我先にと頬張る姿……これはもうちょっとしたホラーだ。
    、、
これは「餌」だと、そう教え込まれたから、笑顔で食べられるんだろうね。
それが自分の仲間なんじゃないか、なんて疑問は微塵も浮かばない。
あの仔ほむに『エサ』って名前をつけてたらどうなっていたことやら……

全ての点と点が繋がっていき、ほむ種研究に対する一つの方向性が固まりつつあった。
まったく、中途半端に言語能力なんて持つもんじゃないよね――


こうして、僕は非常にスッキリした晴れやかな気持ちで『アンアン』の逮捕劇を見守ることができた。


まどまど「マグゥ…マドマドォ…」アリガトウ…ホントニアリガトウ… ポロポロ
りぼほむ「ホムンッ」トウゼンノコトヲシタマデ ファサッ

仔まど「ミャロォミャロォ…」コワカッタヨ… ダキツキ
ほむほむ「ホムゥ…///」モウダイジョウブダヨ ペロペロ

                             、、、、、、
「まったくどっから入り込んできたのやら。早くみんなみたいにお淑やかな「あんあん」になれるといいね」

りぼほむ「ホムゥ」マッタクダ

りぼほむの聡明な判断により、迷い『アンアン』は、【あんさやパーク】へと護送されることになった。
お仕事お疲れ様です!


りぼほむ「ホムッフゥ!!」イクゾ!! クビツカミ
仔ほむ「オネェチャ… オカァサ…」イヤァ… ポロポロ

りぼほむ「ホムンッ!!」トビタチ

バサバサバサ…
ワタチノセンジョウハココジャニャイィィィィィィィィィィィ…
ココジャニャイィィィィィィ……
ニャイィィィ………
ャイィィ…
ィィィ…
ィ…






「貴重な実証が得られたことだし、これでほむ種の研究が捗るよ!
  それじゃ帰ろうか、ジョン・ジェニファー」

ジェニファージョン「「ホムッフゥ♪ マッフゥ♪」」ホムフード ムシャムシャ


野生ほむまど親仔『『『ムシャムシャ♪ ムシャムシャ♪ ムシャムシャ♪ ムシャムシャ♪ ムシャムシャ♪』』』
餌「「「「「「ァ… ホミィ… ダレカ… マドカ… クヤシィ… コドモォ…」」」」」」




              第1部・『アンアン』と呼ばれた仔   ■おわり■


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