その2

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homuhomu_tabetai

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翌日。日曜日。私はほむほむを連れてペットショップに来ていた。
番になるまどまどを探すためである。

発情期が来ないように去勢させる場合が多いと聞いてはいたが、幼かったころの私は、ほむほむが痛がるのはだめなんて言って、結局そのまましないでおいて、その子が今でもうちにいる。
ほむほむの発情期について正確に理解したのは、3、4年前だ。
それまでは、時々様子がおかしいことがあるけど、風邪というわけでもなく、一週間ほどで治ってしまうと分かると、特に気にすることもなかった。
今では悪いことをしちゃったと思う。
それからは、まあ、その、ほむほむにマッサージしてあげるなどして、発散させてあげてきていた。

でも、ずっとそうするわけにもいかないだろうなとは思っていた。
ほむほむも、同じほむ種の家族が作りたいだろうなって。

だから、悩んでいてもしょうがない、今回の事がいい機会だと思って、ここに来たのだった。



「マドー」

「マドマドー」

「マドー」


「ホムゥ……マドカァ……」



ほむ種のコーナーの一角。まどまどのコーナー。
たくさんのまどまどがいたけど、ほむほむはお気に召さないみたいだった。


「この子なんてどうかしら?元気があってかわいいわよ」

「ホムラチャン!! ホムラチャン!」 ピョンピョン

「ホム……マドカァ……」



試しに薦めてみたりしても、反応は変わらない。
ほむほむにも好みはあるだろうから、仕方ないことなのかもしれない。
そうなると、後ほむほむの番になりやすいのは……


「せっかくだから、白まどを見ていきましょうか」

「ホム」


白まど。希少種の一つで、主にりぼほむと番になるらしいが、ほむほむと番になることがないこともないらしい。
期待は薄いが、見ていく価値はあるだろう。
私たちは、希少種のコーナーへと歩いて行った。



希少種のコーナーには、先客がいた。まどまどを連れた、長い黒髪の少女。


「ホムッ」 フアサァ

「りぼほむともなれば、かっこよさも際立つと思わない?」

「マドォ……ホムラチャン……」


暁美さんだった。


「…………………」


しばらく絶句していると、向こうがこちらの存在に気づいたらしく、振り向いた。
そして絶句した。


「…………………」

「…………………」


「マドカァ!!! マドカァ!!!」

「ホムラチャン!!! ホムラチャン!!!」


ほむほむ達の方はというと、思いがけない再会を喜んでいるようだ。


「…………………」

「…………………」

「…………ここじゃなんだし、いったん喫茶店にでも行かない?」

「…………そうね」


そんなわけで、私たちは喫茶店に向かった。




最近は、ほむ種OKの喫茶店も増えてきた。喜ばしいことだ。
などと全く的外れなことを考えてごまかしていたら、暁美さんから声をかけてきた。



「で、どうしてあなたはペットショップにいたのかしら」

「ほむほむに偶然発情期が来たみたいだったから、いい機会と思って番を探しに来てたのよ。
 残念ながら見つからなかったけど。あなたはどうなの?」

「私も偶然まどまどに発情期が来たみたいだったから、お嫁さんを迎えようと思って。
 あいにくふさわしい相手がいなかったけどね」



そう言って暁美さんはコーヒーに口に運んだ。私も紅茶を一口すする。
当のほむほむ達はというと、席の脇に設置された専用スペースで、仲良く遊んでいた。

この喫茶店はほむ種のためにわざわざスペースを作り、そこに小さなブランコやすべり台などを置きほむ種が退屈しないようになっている。
マスターが大のまどまど好きであることから、一部ではまどカフェと呼ばれているとかなんとか…………。

それはさておき、小さな彼女たちはすべり台に夢中なようだった。
二人で列を作って並んで、交互にすべっている姿は、ほほえましかった。



今の会話から、分かったこと。

おたがいに、分かっているんだ。

昨日会ったときに、お互いのほむ種がお互いのほむ種を、好きになってしまったこと。
それで、どうしようもなくなって、別の相手を探そうとしてペットショップまで来たということ。

私はさっきまで発情期云々と言ってきたが、実際のところはそうだった。

明らかに相手を意識して、マドカァマドカァと、言っていたから。


分かっていたんだ。



もし私達が対立していなくて、もしくは魔法少女じゃなくて、普通に友達だったなら。

お互いに喜び合って、今後の話をできただろうに。

目の前にあるのは、魔法少女としての意見対立。

しかし同時に、飼っているほむ種への思いもある。
お互いに、ほむ種の幸せを望んでいる。

だから、争いになるとは言わずとも、口げんかもせず、ここ、喫茶店まで来られた。

ほむほむ達には、魔法少女のことなんて関係ないんだ。
だったら、彼女たちの幸せを思うなら、私たちが折り合いをつけないと………。



「あなたのほむほむのことだけれど」



先に口を開いたのは、暁美さんの方だった。


「どうやら、うちのまどまどが気に入ったようね」

「あなたのまどまども、私のほむほむが好きみたいだけど?」

「そう。なら両想いなのかしらね」

「そうみたいね」

「変な偶然もあったものね」

「全くね」

「私たち当人の方は、どうなのかしらね………」

「………………」


私はいったん黙った。そして頭の中を整理して、また言葉を紡いだ。




「私は、あなたが何を考えているのか分からない。だから、あなたを信用するのは難しいわ」

「魔法少女の勧誘をやめてほしいと、前に言わなかったかしら」

「その目的の話よ。いったい何のためなの」

「それも、あなたは、自分より強い魔法少女が邪魔になるからだと言わなかった?」

「あくまで一つの可能性でしかないわ。あなたの目的はグリーフシードではないのでしょう?」

「もしそうだったとして、いったいなんだというの?」

「質問に答えて。あなたの目的はグリーフシードなの?どうなの?」

「…………違うわ」

「だったら、ますます分からないわ。どうしてキュウべえを襲ってまで、勧誘を妨げようとするの?」

「…………一般人を危険に巻き込みたくないから。これでいいでしょう?」

「嘘。目をそらさないで。本当の目的を教えて。そうすれば、私たちも分かり合えると思うの」

「……………………」

「質問を変えるわ。あなたはどうしてまどまどを飼っているの?」

「どうしてそんなことを?」

「私がほむほむを飼い始めたのは、寂しかったからなの。私には両親もいなくて、ずっとひとりで戦ってきて。

 それでも、ほむほむがいるからって、頑張って続けて来られたの」

「……………………」

「だから、あなたも何か理由があって、まどまどを飼っているんじゃないかって、そう思ったのよ」

「…………まどまどは、たった一つの道しるべなのよ」

「え? なんですって?」

「…………あなたは、私の本当の目的を聞いて、信じてくれるのかしら」

「信じられないような話なの?」

「ええ。今まで、信じてくれた人はいなかった」

「………………」

「だけど、今のあなたなら、信じてくれそうな気がするわ」

「そう思ってくれるなら、嬉しいわ」

「それでも、あなたにとって辛い話がたくさんあって、すぐ話すのには躊躇してしまうの」

「どうして? 話してみなければ分からないでしょう?」

「…………いいえ、分かっているわ」

「……………」



私が何も言えなくなると、暁美さんは突然話を変えた。


「私のまどまどの話だけれど」

「ええ」

「しばらくあなたに預けようと思うわ」

「え? それでいいの?」


私がどう切り出そうか迷っていた話だった。
暁美さんはこくりとうなずいて、そして言葉を続ける。


「お見合い、という形にしましょう。そして一週間後、またここに来て、今後のことを話し合いましょう。」


そして、暁美さんはペンを取り出して、お店の紙ナプキンに何やら書いたあと、それを私に渡した。


「私の連絡先よ。後で都合のいい時間を教えてちょうだい」


そこには、暁美さんの電話番号とメールアドレスが書かれていた。
そして暁美さんは、今度はまどまどに話しかけた。


「まどまど、このほむほむと一緒に生活したいかしら?」

「マドッ!! マドマドッ!! ホムラチャン!! ホムラチャン!!」

「そう。それなら、そこのお姉さんのおうちで、一緒に一週間ほど生活してみなさい」

「マド?」

「実際に生活してみないと、分からないこともあるわ。一週間して、それでも気が変わらないようなら、番になりなさい」

「マド……」

「私の事はいいのよ。一週間後に、また会いましょう」

「マドー」 ペコリ


まどまどが、私の方を向いてお辞儀をしてきている。話がついたようだが、私はいまいちよく分からなかった。


「別に構わないけれど、いったいどうしてこんなことを?」

「構わないのならいいわね。まどまどをよろしくお願いするわ」


そうして暁美さんは財布から千円札を取り出してテーブルの上に置き、席を去ろうとする。


「待って! まだ聞きたいことがあるわ!」

「今度ここに来たとき、ちゃんと話すわ」


そういって、暁美さんはまどまどを置いて喫茶店を出て行ってしまった。

私はまた取り残された。





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