――光の秤は西に傾き、永遠の都に宿る。
かの地を踏む者よ、汝は二千年の祈りの上に立つ。
◆ イタリア/バチカン概観
地中海に面した南ヨーロッパの国家。豊かな歴史・文化・食文化を持ちながら、異能世界においては「光秤教会の西方聖地」として世界中の信徒から仰ぎ見られる特別な土地である。
教会の正式な本部・最大の聖堂は中東に置かれているが、バチカンには世界で二番目に大きな聖堂「聖カイン大聖堂」が鎮座しており、規模・荘厳さともに中東本部に次ぐ格を誇る。教会の最高指導者である教皇がここに居を構えることから、バチカンはいわば「教会の顔」「西方の聖地」という立場を担っている。人によっては、ここを光秤の総本山とすることも少なくない。
中東本部が霊的権威・神学研究・聖地の総本山であるとすれば、バチカンはその外交・布教・武力展開の中核であり、世界各地の支部を束ねる実務的な司令塔でもある。
国としては光秤教会の活動を公式に認め、エネミー討伐における教会への事実上の治外法権的権限を黙認している(通称「テヴェレ協定」)。
1984年に光秤がイタリアの国教でなくなって以来、イタリア自体の歴史を大切にする政策が動き出しており、その中でも古代ローマ文化を表に出すようになった。――されど、光秤とイタリアの間に確執があるわけではない。両者の関係は今日も穏やかに保たれている。
◆ 永遠の都、ローマ
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「永遠の都」の名は、この世界においても伊達ではない。
二千年以上の歴史が地層のように積み重なったこの都市は、それだけの年月をかけて異能粒子が土地そのものに深く染み込んでいる。ローマの石畳を踏めば、感度の高い異能者は足の裏から微かな振動を感じ取るという。それほどまでに、この都市は「生きている」。日本でいう龍穴に、ローマは位置しているのだ。
この龍穴より溢れ出た龍気は、ローマ内部に貼られた特殊条件結界によって各教会支部へと貯蔵される。エネミー狩りの水準を底上げするための施策の一つであり、中でも大聖堂には龍気が重点的に蓄えられている。大聖堂に居を置く狩人たちの平均能力が異常なまでに高いのは、これが大きな一因である。
観光都市としての顔を保ちながら、ローマは教会・政府・異能者・エネミーの四つ巴が静かに渦巻く、この世界で最も複雑な都市のひとつでもある。表通りを歩く観光客の一メートル下には、無数の遺構・水路・カタコンベが広がっており――「ローマには昼の顔と夜の顔がある」という言葉は、この世界では比喩ではない。
◇ ◇ ◇
コロッセオ
ローマ観光の象徴にして、この世界においてもっとも熱い決闘の舞台。
元々は世界遺産として保護・公開されていたが、光秤からの独立以来、現役の決闘場として復活を遂げた。剣闘士は今や立派な職業として成立しており、コロッセオの内部では日々、命を賭けた戦いが繰り広げられている。
もっとも、これが人死にに直結するわけではない。コロッセオの四隅の柱には特殊な印と呪文が刻まれており、その印が展開する結界が、戦闘によって消耗した異能粒子を当の対象へと還元・治癒する仕組みが施されている。日本でいう特殊条件結界の応用である。
かつて剣闘士が血を流したその場所で、今また刃が交わる。都市の記憶は、かくも根深い。
テルマエ
古代ローマより脈々と受け継がれてきた温泉文化の、生きた名残。サトゥルニア温泉をはじめとした霊験あらたかな湯処が各地に点在しており、浸かるだけで傷が癒えるとの言い伝えは今も絶えない。
近年の調査により、火山深部に眠るとされる霊石の欠片が湯脈に溶け込んでいることが確認されており、古来の伝承には確かな根拠があったことが裏付けられている。
詠唱
結界
主に日本(アジア圏)で発展してきた、戦闘・聖域管理・地域防護のための結界術。イタリアへは、十六〜十七世紀に日本から法王へ謁見するために渡欧した使節団によって伝来し、以後は教会の技術体系に組み込まれる形で独自の発展を遂げた。
現在では一部の教会関係者やエネミー狩りの間に流通している程度だが、聖堂・礼拝堂の類には特殊条件結界を範とした大結界が例外なく敷かれている。
◆ バチカン市国
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――光秤教会の西方聖地。教皇の座す、不可侵の小国。
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イタリア・ローマ市内に存在する独立国家にして、光秤教会の西方における最重要拠点。教皇の居城であるバチカン宮殿と白光大聖堂を中心に構成されており、世界中から年間数百万人の巡礼者・観光客が訪れる。
バチカン市国の地下には、地上構造物の数倍に及ぶ規模の「地下聖域群」が広がっている。異産保管庫・神学研究施設・大規模訓練場を擁し、教会関係者であれば誰でも使用が許可されている。
聖カイン大聖堂
「地に根ざした聖域」
世界で二番目に大きな光秤教会の聖堂。中東本部の大聖堂が「天に近い場所」と称されるのに対し、この大聖堂は「地に根ざした聖域」と呼ばれる。
天井は空の青をそのまま封じ込めたかのような白と金のモザイクで覆われており、祭壇に差し込む朝の光は「聖なる奇跡の再現」として世界中の信徒に知れ渡っている。
大聖堂の敷地はその外界と結界によって厳密に区切られており、いかなる魔の存在も足を踏み入れることができない。その有り様を、人は古来より「聖域」と呼んできた。そしてその呼び名は今も変わらない。
神聖礼装
◆ 名産・特産品
| 品名 | 解説 |
| テヴェレワイン | ローマ近郊産。土地の「龍脈」が発酵過程に作用するためか、年によって微弱な感覚強化効果が生じる。異能者には過度の摂取に注意が必要とされており、教会の聖職者にも根強い愛好家が多い。 |
| バチカン金糸 (アウルム・サクルム) |
教会工房で生産される特殊な金糸。聖別された製法によって紡がれており、縫い込まれた衣服・装備品には微弱な結界効果が宿る。 |
| 神のプロテイン (バチカン産) |
バチカン工房製のものは世界流通品の中でも別格とされる。詠唱技法の長時間行使で消耗した戦士たちの間で広く重宝されており、「詠唱の後のプロテイン」はイタリアの教会戦士に定着しつつある文化である。地下猟兵の間では任務明けに飲むのが慣例となっており、コロッセオの地下から生きて帰ってきた証として、仲間と共に飲み交わすという風習も生まれている。 |
◇ ◇ ◇
この地を訪れる者すべてに、光秤の加護があらんことを。
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最終更新:2026年06月15日 (月) 00時57分10秒