異名同音
「異名同音」という概念がある。
読んで字の如く、名前こそ異なるが鍵盤上では同じ音のことである。C#とDbなどだ。
音楽理論に基づいて整理していくと、異名同音は物理的には全く同じでも、機能的には異なる音であると断言できる。
例を挙げよう。以下のようなコード進行があるとする。
読んで字の如く、名前こそ異なるが鍵盤上では同じ音のことである。C#とDbなどだ。
音楽理論に基づいて整理していくと、異名同音は物理的には全く同じでも、機能的には異なる音であると断言できる。
例を挙げよう。以下のようなコード進行があるとする。
C | E7 | Am | Fm | C | |
Ⅰ | Ⅲ7 | Ⅵm | Ⅳm | Ⅰ |
このコード進行には半音で移動する旋律が含まれる。G→G#→A→Ab→Gという動きだ。
勘の良い人なら気づくと思うが、ここで出てくるG#とAbは異名同音である。しかしあえ使い分けた。E7とFmは共にダイアトニックコードから変位したコードだが、元のコードに直すと
勘の良い人なら気づくと思うが、ここで出てくるG#とAbは異名同音である。しかしあえ使い分けた。E7とFmは共にダイアトニックコードから変位したコードだが、元のコードに直すと
C | Em7 | Am | F | C | |
Ⅰ | Ⅲm7 | Ⅵm | Ⅳ | Ⅰ |
となる。G→G→A→A→Gという動きであり、GがG#に、AがAbになることで半音の動きが生まれたのが最初のコード進行だ。
E7上のG#をAbとしては、半音上がったAの導音の響きが説明できない。Fm上のAbをG#としては、半音下がったSDmの響きを説明できない。
以上が、異名同音が別の音であるということの説明である。
E7上のG#をAbとしては、半音上がったAの導音の響きが説明できない。Fm上のAbをG#としては、半音下がったSDmの響きを説明できない。
以上が、異名同音が別の音であるということの説明である。
前置きが長くなったが、今回考えたいのは、最頻出の#Ⅳ@/bⅤ@をどちらで表記すべきか、ということだ。
なお、以降は後続のコードがⅣM7であるものとして考察を進める。
なお、以降は後続のコードがⅣM7であるものとして考察を進める。
bⅤ@の場合
おふとん氏のnote『Blackadder Chordの体系的な分析と用法』では、@の正体をこう結論づけている。
結論を言うと、この和音は既存の2つの和音、V度の「下方変位」と「上方変位」が組み合わさったような形で成り立っていると考えられる。
トニックのルート音へと「行きたがる」下方変位音と、トニックの第3音へと「行きたがる」上方変位音によって、和声の連結がより強固にされているのだ。
これに則ってⅣM7に対する@を分析すると、Ⅳに行きたがるbⅤと、Ⅵに行きたがる#Ⅴが組み合わさったものであり、ベース音はbⅤということになる。特にⅠ→bⅤ@→ⅣM7という進行なら、この解釈が妥当だろう。
問題点として、bⅤも#Ⅴも含むということで一般的なスケールが想定できない。(*1)
問題点として、bⅤも#Ⅴも含むということで一般的なスケールが想定できない。(*1)
#Ⅳ@の場合
#Ⅳ系のコードとして有名なのが#Ⅳm7-5(以下#Ⅳø)だ。#Ⅳø→Ⅳm7という進行はよく見る。
なぜこれはbⅤøではないのかというと、元がⅣM7だと考えられるからだ。ⅣM7→Ⅳm7があり、そこからルートを半音上げることで#Ⅳøを得ることができる。(*2)
øと@がよく似ていることはハーフディミニッシュ型が詳しい。øから@に変化したと考えられる場合は、#Ⅳ@と表記するのが適切だろう。以下に一例を挙げる。
なぜこれはbⅤøではないのかというと、元がⅣM7だと考えられるからだ。ⅣM7→Ⅳm7があり、そこからルートを半音上げることで#Ⅳøを得ることができる。(*2)
øと@がよく似ていることはハーフディミニッシュ型が詳しい。øから@に変化したと考えられる場合は、#Ⅳ@と表記するのが適切だろう。以下に一例を挙げる。
#Ⅳ@ | ⅣM7 | Ⅲm7 | bⅢaug | Ⅱm7 | bⅡM7 | ⅠM7 |
そもそもどっちでもいいんじゃねえか?論
dimやaugでは、異名同音を同一視する傾向にある。
以下のようなコード進行があった場合
以下のようなコード進行があった場合
Key=B
EM7 | Fdim | F#7 | BM7 |
FdimはF#7に対するⅤ7のC#7(b9)のルート省略が元になっていると考えられるが、であれば構成音はE# G# B DなのでE#dimと書くべきである。しかし演奏する上でE#dimと書かれるとなんとなく嫌なので、Fdimになっている。(*3)
これは「規則的に積んでいる」「転回しても同じ」というdimの特殊性によるもので、augも同様の特殊性を持つ。
@は転回しても同じ形にはならないが、augと同じくホールトーンスケールを感じさせる響きであり、パッシング的に使われることも多い。ならば、読みやすい方で書いちゃっていいんじゃね? というわけである。
そもそも[0,2,6,10]というピッチクラスさえ一致していればブラックアダーとみなしているので、異名同音の同一視の上に成り立っているのだ。
これは「規則的に積んでいる」「転回しても同じ」というdimの特殊性によるもので、augも同様の特殊性を持つ。
@は転回しても同じ形にはならないが、augと同じくホールトーンスケールを感じさせる響きであり、パッシング的に使われることも多い。ならば、読みやすい方で書いちゃっていいんじゃね? というわけである。
そもそも[0,2,6,10]というピッチクラスさえ一致していればブラックアダーとみなしているので、異名同音の同一視の上に成り立っているのだ。
まとめ
ディグリー表記であれば#ⅣなのかbⅤなのかは区別した方が良いだろう。
音名表記の際は、読みやすい方、臨時記号が少なくなる方で構わない。
音名表記の際は、読みやすい方、臨時記号が少なくなる方で構わない。
コメント
- ♭5より♯4のほうが良いといえる根拠は乏しいのでは、との意見: https://scrapbox.io/rubio/%E2%85%A0aug%2F%E2%99%AF%E2%85%A3%E3%81%8B%E2%85%A0aug%2F%E2%99%AD%E2%85%A4%E3%81%8B -- 名無しさん (2024-09-18 23:16:42)