自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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匿名ユーザー

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△月×日

 しぐをバラし、部品の組み合わせと加工の意味を考えているだけで、いつの間にか昼になってしまっていた。
昼食は鮭の塩焼きと味噌汁、醤油で煮たジャガイモの煮付けと葉物を使ったサラダにチーズ。
塩と醤油をたっぷり使ったニホン風料理。
此処の工匠はニホン軍の基地内なので出てくる食べ物は皆ニホン流になっている。
料理は魚が中心で、味噌や醤油を使うなど西側料理に近い。
朝から晩まで醤油醤油塩塩塩。
塩が主要な輸出品のニホンであるが、限度を知ってほしい。
幾ら、国の一つや二つ余裕で支えるだけの塩があるからといって使いすぎは良くないと思う。
たまには肉を食いたい。

 ニホン人は一度に沢山の食品を買い付ける割りに食生活は意外と質素である。
彼らの料理を食べて驚いたのが、畑に撒く雑魚を食べるということだ。
エルブは貿易港の他に優秀な漁港があり、毎日多くの魚が水揚げされる。
通常、マグロやカシオ、アキアジなどは食用。
イワツなどの腐りやすい魚や小さな魚は纏めて肥料にされている。
肥料に出来る魚は大量に取れる代わりに腐りやすい。
ニホンが来る前までは集めて天日干しにして砕き、高級肥料として畑に撒いていた。
彼らはそれを買い取った。大量の塩にものをいわせて店ごと市場ごと。
沢山買い取って腐りやしないだろうか?
焼いたものを出してくれているがイワツを食べるのは心配だな。


△月◎日

 今日は休日だ。
久々に工匠から出て外の空気を吸おう。
頭が詰まった時は気分転換に限る。
外にはニホンの面白いものが沢山転がっているだろうし、新たな発見を得られるかもしれない。

 基地の中はニホン人だらけである。
黒エルフやドワーフの姿は要所に少し見えるだけで、
殆どが茶や緑のモザイク服と白衣を着た人種で占められている。

 この基地はニホンの自治する街であり、
ギルドが許可した一部の商人と軍人、研究者以外は出入りが制限されている。
特に魔道関係の検査は厳しく、手形の提示とニホン人が使うアーティファクトの検査を抜けた後、
黒エルフの身体検査とドワーフ族の物品検査を通らなくてはならず、人と物の出入りは別だ。
大抵の魔道道具の持込は許可されるが、予め申請していない道具を持って入ろうとすると酷い目にあう。
前に同行していた黒エルフが飼っていた使い魔が不申請なだけで
ゲート前に許可が出るまで待たされた。丸半日もだ!
まったく!ロイの奴、面倒掛けてくれる。

 研究棟の集まった食堂街を抜けると
白い四角い建物の群れの向こうに、四六時中頂上から火を噴く銀色のパイプが絡まりあった塔が見える。
呪われた地から毒を吸い出すそうで、黒エルフやドワーフ達も二つ返事で許可したニホン主導の大事業だ。
読売板(よみうりいた)によると黒エルフ派閥であるアカマル派とドワーフ族のユーミル派が
主導で行っていて、新たな利権が絡んでいるそうな。

 なんでも、ニホン製の高品質な金属をどちらが手に入れるかで揉めているらしく、
黒エルフはニホンと強力なパイプを持っていて鉄の利権を言い張り、
ドワーフ族は古来からの慣例通り鉄やアーティファクトは我らが仕切ると主張し対立している。
今回の発端は大幹部であったアカマルがバッサン軍から無事脱出し凱旋帰国、
大国ニホンとの友好条約を締結した件で黒エルフ族の発言力が増し、ドワーフ利権に手を出したようだ。
それにしたって、エルフもドワーフも景気がいいものだと空高く伸びる塔を見て思った。


△月◎Ш日

 今日も休みだ。ジェダイの桑井雁路(くわいがんじ、以下雁路)に聞いたら、太陽の日だから休みだとか。
ドワーフ職人に休みはない。エルフや人間とは違うのだ。
仕事が出来ないと思った日には仕事は進まないし、仕事を進んでしないと良い作品は出来ない。
思ったときには休日で仕事日だ。
職人は期日までに依頼を仕上げればいい。
だから明確な休日を決められるとドワーフは暇を持て余す。
そうだ。市場へ行こう。ニホン族の市場が開いているはずだ。

 研究者や職人が集まる長屋から十数メール歩くと小さな広場に出る。
屋根といくつかの椅子が置かれた待合室の横にはレールと動力付きトロッコ、
“鉄道”が置いてあり、これで街の各所へ向かえるようになっている。

 歩いて行っても良いのだが付くまで片道1時間以上は掛かる。
市場で商品を買い込んで、長屋へ帰るには少し遠い。
たった1時間歩くのを長いと感じるのはニホンの感覚に慣れたからだろうか。
いや、鉄道が便利すぎるせいだな。
鉄道を使うと歩くのが馬鹿らしくなる。
鉄道は乗合馬車に似た行き先が決まっている交通機関で、馬並の速度が出る。
しかも荷物は積み放題、途中で通行人に邪魔されないし目的地まで最短距離で行ける。
人込みの中を走るゴーレム力車より遥かに速く、私は街の住民であるため金も掛からない。

 それにしても、トロッコ一台一台に動力を付けるのは無駄ではなかろうか。
ゴーレム一体に荷運びや列車引きを任せれば楽であろうに。
ゴーレム力車やゴーレム飛脚はちょっとした街ならどこでもあるのに。
ニホン人は妙なところで面倒だ。

 ガタンゴトンと揺れるトロッコに乗って舗装された外を眺めた。
ジェダイの住む草木の色をしたテントに混ざって、
薄い茶色の金属板で覆われた金属の箱や、白い滑らかな表面をした壁の店が立ち並ぶ。
大小様々な色の家が建ち、雑多な印象を受ける。

 ニホン街には変わったものが数ある。
金属で出来た箱型の建物も名物の一つだ。
しかし特色は何と言っても、道が綺麗で清潔なことであろう。
道路は白い家と同じく漆喰に似た黒い素材で塗り固められており、滑らかで石一つ雑草一本生えてない。
どの道も大きく、最も大きい道などは幅の広さで有名なバッサン帝都のゲンサク通り、その倍以上はある。
面白いのは、それほど大きな通りに関わらず糞や塵が一個も落ちていないことである。
なぜなら馬や牛が一匹も歩いていないからだ。
では代わりに何が走っているか?
“鋼の馬”油で走るオートマタ、自動車が走る。油とは明かりに使うアレだ。
当然、機械は竜や魔物と違って糞をしない。だから道は綺麗なのだ。
自動車とはゴーレムの一種で、人型ではない。形は牛や馬が引く台車に似ている。
これも鉄道と同じく個別に動力が付いていて魔力がなくても使える。
このようにニホンのものは殆どが魔力なしで動いていて、
物造りに携わるドワーフとしてはとても興味深い。

 いくつかの小さな駅を過ぎると広場に出る。ジオダイクン城前にある青の広場ぐらい大きい。
昼になるといつも人でごったがえしていて、気をつけないと人込みで迷子になる。
背丈が低いドワーフにとって人間の人込みに混ざるのは大変だ。
買い物袋を持って歩くのは面倒なので背負い袋を持っていくのをオススメしたい。
箱型の自動車や鉄道、飛竜の乗り換えが出来る竜屋が集まっている。

 広場から少し奥に行くとオオサカ名物オルドロス焼き(小麦粉で出来た丸い焼き物、足が入っている)や
トンカツ(豚に小麦を付け揚げた物)などの食べ物屋が軒を連ね、
カイナッツオ鍋の店は連日、非番のジェダイや研究者達が行列を作っている。

 商店街を通るとやっと市場だ。
手前が街人向けの市場で最奥が商人用市場と港。
エルブの市場から直接、鉄道を通して運ばれた荷物を降ろすクレーン。
山と積まれた木箱や積み下ろし作業に従事するゴーレム、上も見えないほど積まれた金属の箱。
道にニホンの不可思議な自動車が忙しく行き交う。

 ふらふらと歩いている内に商人用の市場まで来てしまった。

 市場では妙な光景が繰り広げられている。
黒エルフ達とニホン人が激しく競り合っている、と思いきや
黒エルフがニ、三言話しただけでニホン人は頷き取引が終わってしまう。
同じ光景は他の場所でも起こっていて、市場の競り場にしては静か過ぎた。

 チェス板状に区切られた道と吊るされた看板、水の満たされた箱に入ったカイナッツオや
ルビカンテ製の魔法具、バルバシリアから取れた鉱石、所々に置かれた見本用の品々。
目立つ場所にはガラスケースが置かれ、スーツ姿のニホン人や
露出が多い礼服を着た黒エルフ達が互いの商品を売り込みあっている。
彼らは皆仕立ての良い服を着ていて、私服で来た私はどうにも居心地が悪い。

 そろそろ帰ろうかと思ったら帰り道が判らない。
ああ困った。広すぎなんだよここの市場は!

 さて、どうしたものか。
道を聞こうにも壁際に立つジェダイに話しかけるのはちょっと怖い。
彼らは見た目こそただの人間と変わりないが、一人で飛竜を屠る猛者達なのだ。

「はい。買取は以上で?二級品でも三級品でもあるだけ欲しいと?はは、判ってますよ。今後ともごひいきに」
聞き覚えのある声。ロイだった。
今日の取引が終わったらしく、書類を秘書に渡して帰ろうとしていた。
「おおおっ。ロイ!ちょうど良いところに!案内板がなくて困ってたんだ!」

無事に帰れた。
彼曰く、案内板は頭上にあって背の低い私は気づかなかったらしい。
とんだ恥をかいた。
目安箱にドワーフ用の低い案内板も設置して欲しいと書いた手紙を入れた。

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