△月ж日
大まかな構造は理解したので、しぐの模造品を創る。
設計以前にいきなり躓いた。“銃”を使うには弾丸が必要である。
銃とは秘薬を衝撃で発破させ吹き飛ばしたものの破片を飛ばす兵器である。
設計以前にいきなり躓いた。“銃”を使うには弾丸が必要である。
銃とは秘薬を衝撃で発破させ吹き飛ばしたものの破片を飛ばす兵器である。
製作にあたって、魔方陣による魔力回路や伝導効率の良い素材の選定などを考えなくていい。
要は秘薬さえあれば我々でも同じものを造れる可能性が高い。
しかし、秘薬は我々には造れない。無論エルフにもだ。
ニホンの学者に聞いてもニヤニヤして答えてくれない。
予め技術を見せつけ、小出しにしようとの魂胆なのだろう。
要は秘薬さえあれば我々でも同じものを造れる可能性が高い。
しかし、秘薬は我々には造れない。無論エルフにもだ。
ニホンの学者に聞いてもニヤニヤして答えてくれない。
予め技術を見せつけ、小出しにしようとの魂胆なのだろう。
ドワーフたるもの 部品を見れば
その機械がどのように造られたか おおよその察しはつく
ましてこれは武器・・・
だが部品を削っている者 整えている者の姿が全く見えん
(出来ておる喃 しぐとやらは・・・)
その機械がどのように造られたか おおよその察しはつく
ましてこれは武器・・・
だが部品を削っている者 整えている者の姿が全く見えん
(出来ておる喃 しぐとやらは・・・)
そのため我々は二つの決断に迫られた。
一つは武器と弾をニホンから直接輸入する。
一つは独自開発である。
ちなみに買わぬ選択はありえない。
銃は画期的な武器で“訓練も積んでいない”“女子供に”“魔道師並の火力”を“手軽に”持たせられる。
一つは武器と弾をニホンから直接輸入する。
一つは独自開発である。
ちなみに買わぬ選択はありえない。
銃は画期的な武器で“訓練も積んでいない”“女子供に”“魔道師並の火力”を“手軽に”持たせられる。
近年バッサンからの圧力が強まり、呼応してライバーからの圧力も強まってきた。
間にあるエルブとしては力、軍事力を持ちたい。
素早く確実に数に出来る戦力が欲しい。
間にあるエルブとしては力、軍事力を持ちたい。
素早く確実に数に出来る戦力が欲しい。
平和こそ我々ドワーフ、エルフや国内に住む多種族も含めた悲願であろう。
バッサンからの独立戦争以降、エルブは戦力の強化に努めてきた。
だが満足な軍備を整えるのは並大抵の苦労ではなく、
ライバーとバッサンからの政治干渉や物資統制を受けて戦力強化もままならない。
戦力の中核たる魔道師の入国数や訓練すら規制され、対魔物の戦力すら不安である。
両大国はエルブの独立も軍事力強化も望んでいない。
現在の平和は剣の上でシーソーをしているのと同じで、
簡単に崩れ去ってしまうとエルブ国民は理解している。
だが満足な軍備を整えるのは並大抵の苦労ではなく、
ライバーとバッサンからの政治干渉や物資統制を受けて戦力強化もままならない。
戦力の中核たる魔道師の入国数や訓練すら規制され、対魔物の戦力すら不安である。
両大国はエルブの独立も軍事力強化も望んでいない。
現在の平和は剣の上でシーソーをしているのと同じで、
簡単に崩れ去ってしまうとエルブ国民は理解している。
エルブ王国。海に面し、大国ライバーとバッサンを繋ぐ交通の要衝。
人口は100万人を超える大陸有数の大都市。
黒エルフが金を産み出し、ドワーフ族の住む金融と工業が発達した地域でもある。
近隣の海域には群島や主要な海路があり軍事的な意味も大きい。
緩衝国としての役割もある。エルブが力を持つと両国も同様に力を付けなくてはいけない。
軍備拡張で財政が厳しいライバー連合にとって頭の痛い話となるだろう。
押さえただけで十分な見返りがある場所。
人口は100万人を超える大陸有数の大都市。
黒エルフが金を産み出し、ドワーフ族の住む金融と工業が発達した地域でもある。
近隣の海域には群島や主要な海路があり軍事的な意味も大きい。
緩衝国としての役割もある。エルブが力を持つと両国も同様に力を付けなくてはいけない。
軍備拡張で財政が厳しいライバー連合にとって頭の痛い話となるだろう。
押さえただけで十分な見返りがある場所。
無視できるほど小さな国ではなく、かといって緩衝国なので軍も送れない。
結果、両国の代理戦争の場となり国は荒廃した。
結果、両国の代理戦争の場となり国は荒廃した。
各国の工作員が入り乱れての暗闘。
大国の傀儡執政官達の着任。
両国に武器を給与された組織の内戦。国粋派の成立。
ルーデル教使節団の魔道力兵器査察と不法所持の濡れ衣。
英雄、デ・キッコ・ナイサの反乱、バッサン軍の再侵攻。
追放されていた赤井・マル・ポーロの帰還と反抗作戦。再度の独立。
大国の傀儡執政官達の着任。
両国に武器を給与された組織の内戦。国粋派の成立。
ルーデル教使節団の魔道力兵器査察と不法所持の濡れ衣。
英雄、デ・キッコ・ナイサの反乱、バッサン軍の再侵攻。
追放されていた赤井・マル・ポーロの帰還と反抗作戦。再度の独立。
平和から遠い国。それがエルブである。
◎月Θ日
最終的にニホンから独占で銃を購入し、技術指導を受けつつ量産体制を整え、
独自開発を平行に進めていくことになった。
銃の製作は現在の我々の技術では生産するのは無理だからだ。
独自開発を平行に進めていくことになった。
銃の製作は現在の我々の技術では生産するのは無理だからだ。
ゴラムが「くやしぃ…でも…」
と部屋の隅で背中を丸めて指をちゅぱちゅぱしていた。
独身の内弟子であるゴラムが時折このような妄想にふけるのを
見て見ぬふりをする情けが私たちにも存在した。
と部屋の隅で背中を丸めて指をちゅぱちゅぱしていた。
独身の内弟子であるゴラムが時折このような妄想にふけるのを
見て見ぬふりをする情けが私たちにも存在した。
予定されていた案の両方を採用した結果。
食料輸出や鉱石輸出は既に行い、見返りの技術も相応する適当な交換がなかったため
国際関係に信用のないニホンに対する他国への仲介。口利きを図ったと黒エルフが話していた。
土地譲渡、食料市場の二級品優先販売権、大規模な資源輸出、他国との仲介、
魔法技術支援、魔法軍事技術指導、対魔法犯罪の指導・・・・などなど。
現時点で我々はかなりの譲歩を迫られ、議会では危ぶむ声もある。
食料輸出や鉱石輸出は既に行い、見返りの技術も相応する適当な交換がなかったため
国際関係に信用のないニホンに対する他国への仲介。口利きを図ったと黒エルフが話していた。
土地譲渡、食料市場の二級品優先販売権、大規模な資源輸出、他国との仲介、
魔法技術支援、魔法軍事技術指導、対魔法犯罪の指導・・・・などなど。
現時点で我々はかなりの譲歩を迫られ、議会では危ぶむ声もある。
とはいえニホンとに支払った代償は、見返りを十分に満たすのも真実である。
悲願であった精強な自衛力の確保。
海上貿易路の保護と魔物の排除。
バッサン、ライバーを除く強力な第三国との防衛協定。
世界魔法条約に抵触しない兵器の入手と量産
(銃は魔法を使わない兵器である、魔道師を増やさない条件も満たす)
農業、工業、衛生面に渡る技術支援。
高品質の金属。周辺国を圧倒する量と品質の塩。
悲願であった精強な自衛力の確保。
海上貿易路の保護と魔物の排除。
バッサン、ライバーを除く強力な第三国との防衛協定。
世界魔法条約に抵触しない兵器の入手と量産
(銃は魔法を使わない兵器である、魔道師を増やさない条件も満たす)
農業、工業、衛生面に渡る技術支援。
高品質の金属。周辺国を圧倒する量と品質の塩。
そして・・・
“世界魔法条約を今だ批准していない強力な国家との技術協力”。
これがとても大きい。銃の利益や技術力、工業生産力も並外れた利益である。
それより、パルクール体制の抜け穴を突ける協力的な大国があるのが素晴らしい。
“世界魔法条約を今だ批准していない強力な国家との技術協力”。
これがとても大きい。銃の利益や技術力、工業生産力も並外れた利益である。
それより、パルクール体制の抜け穴を突ける協力的な大国があるのが素晴らしい。
世界魔法条約とは大量破壊魔法兵器の所持を禁止する条約で、
ゾンビや超長距離儀式魔法、B級以上のキメラ製造等を監視するものだ。
大量破壊魔法兵器を持っている大国以外の所持を禁止する不平等条約だ。
加えて査察の際、大量破壊兵器を持っていないことを証明するため、
軍の構成や魔道師数、武器の数や種類を完全に公開しなければならない。
武器の数や種類を把握されるのは大国の操り人形になるのと同意である。
ゾンビや超長距離儀式魔法、B級以上のキメラ製造等を監視するものだ。
大量破壊魔法兵器を持っている大国以外の所持を禁止する不平等条約だ。
加えて査察の際、大量破壊兵器を持っていないことを証明するため、
軍の構成や魔道師数、武器の数や種類を完全に公開しなければならない。
武器の数や種類を把握されるのは大国の操り人形になるのと同意である。
「世界魔法処諸法度が定まった…」
「あれは辛い」
「剣をもたせてもらえぬ…」
「あれは辛い」
「剣をもたせてもらえぬ…」
査察を拒否すれば経済制裁や軍事力による鎮圧が待っている。
前はルーデル教査察団をエルブ国は拒否しただけでバッサン帝国の侵攻を受けた。
前はルーデル教査察団をエルブ国は拒否しただけでバッサン帝国の侵攻を受けた。
バッサン軍に占領された際、無理矢理押し付けられたのがパルクール体制。
あらゆる兵器の所持を制限する条約である。
締め付けは厳しく、領国内の魔物討伐さえままならない。
あらゆる兵器の所持を制限する条約である。
締め付けは厳しく、領国内の魔物討伐さえままならない。
条約を守らずに破ることができるのか。
常に査察を受ける国はごまかすことができるのか。
出来る。
出来るのだ。
常に査察を受ける国はごまかすことができるのか。
出来る。
出来るのだ。
そこにニホンがやってきた。彼らは異世界の住人でまだ日が浅く、条約も批准していない。
バッサン帝国の侵攻を跳ね返す力を持ち、圧倒的な武器。銃を持っている。
ニホンならバッサンやライバーの邪魔はされない。
魔法技術を開発するに、とても都合の良い環境なのだ。
バッサン帝国の侵攻を跳ね返す力を持ち、圧倒的な武器。銃を持っている。
ニホンならバッサンやライバーの邪魔はされない。
魔法技術を開発するに、とても都合の良い環境なのだ。
しかも魔法の知識も乏しく、軍事魔法の技術を欲しがり、既にバッサンとは戦争状態である。
つまり我々が技術を持っていて、彼らは場所を持っている。
つまり我々が技術を持っていて、彼らは場所を持っている。
ならば手を取り合おうじゃないか。
ニホンの自治都市で武器の生産や研究を行う。
条約を上回る武器は治外法権の自治都市に保管。
我々は此方の世界に来て日が浅いジェダイ達に対魔物や対魔法を指導し、自らも訓練する。
条約を超える数の魔道師はニホンに送り国籍を変更し“いなくなる”。
“これ”を知っているのは一握りの黒エルフと会議に直接参加していた技術屋ドワーフだけだ。
ニホンの自治都市で武器の生産や研究を行う。
条約を上回る武器は治外法権の自治都市に保管。
我々は此方の世界に来て日が浅いジェダイ達に対魔物や対魔法を指導し、自らも訓練する。
条約を超える数の魔道師はニホンに送り国籍を変更し“いなくなる”。
“これ”を知っているのは一握りの黒エルフと会議に直接参加していた技術屋ドワーフだけだ。
奴らに一泡吹かせてやれると思うと心が躍る。
世乱れることから全ては始まる
正気にては覇業ならず
国家運営はシグルイなり