自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

第十一話

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Turo428

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「では、北領の反乱は誠であったか?」

「はい、陛下。帰還した役人からの報告では反乱軍らが突入し、北領を追い出されたと」

「命だけは助けてやったと言うのに痴れ者どもが!」

怒気を隠そうともせずに列強が一つメガラニカ王国国王、エセル・メガラニカ4世は言い放った。

「陛下、このまま放置すれば各諸侯への不信を煽ります。北伐の為に軍を編成するべきかと」

「そうだな。カラナス将軍!そなたに北伐の総指揮を―」

「お待ちください、陛下」

王の言葉を遮るように外務卿が発言した。

「役人の報告には続きが有り、この反乱の陰に帝國がいる可能性が示されております」

「帝國?帝國とは『あの』?」

「はい、『あの』です」

謁見の間にいる者全てが思い浮かべた帝國―ここ2年で勢力を伸ばしてきた新興国家―は一言でいえば『神に弓引く者達』だ。

辺境での戦闘は風に流れ尾鰭が付いているだろうと思うほどの苛烈ぶりで、滅びかけた国家もあると言われている。

何よりも驚くべきは亜人や獣人の保護まで行っている事だ。

さらには、彼らは帝國の後ろ盾を得て国家まで持ったというのだ。

―亜人共が国家だと!?―

辺境に出来ただけとは言え纏まりが無かった亜人達が纏まったのだ、亜人に嫌悪を抱いている者は帝國に対し敵意を持って見ている。

「帝國がいるやも知れんというのが何だ!ならば帝國諸共征伐してくれる!」

それはメガラニカ王にとっても当て嵌まる事だった。

「陛下、帝國の兵は新兵までもが高度な魔術の使い手だと聞きます」

「負けた者共の自己弁護に過ぎん!我が兵らは列強でも精強だ!」

「しかしながら…」

「もう良い!軍務卿、将軍!戦の準備を!」

列強メガラニカ王国の北伐軍の派遣が決まった瞬間だった。


メガラニカ王国の言う北領は元は独立した国家群であった。

三つの王国が隣り合い、珍しくもお互いに事を構える事無く平穏な土地だったのだがメガラニカ王国の領土拡張政策により侵略され併合された歴史がある。

独立を求める声は今まで多々あったものの、力の差により今まで反乱が起きなかったのに何故突然に?

それはやはり帝國の存在だった。

この大陸文明圏から離れた三流国とは言え、多数の国家を相手に圧勝したその力。

上手く利用できればメガラニカ王国に打撃を与え、過去の独立国家に戻れるやも知れん!

そう考えた彼らは王国の目を掻い潜り、帝國と接触する事になんとか成功した。

帝國もまたここ2年での時間を使い、なんとか新竜島とアルタート王国内の油田から石油を少量採掘し、また少しずつだが施設を建設していたものの他の資源については少量しか獲得できていなかった。

メガラニカ王国のあるエルドニア大陸には、天然ゴムや鉄・希少金属類のいまだに帝國が求めていながら確保が難しい資源が大量にあるとダークエルフから報告が上がり、そこに独立派からの接触がかさなりまさに渡りに船だった。

帝國もまた軍の派遣を決定し、戦車・砲兵師団含む山下中将揮下メガラニカ派遣軍10万が組織され、旧メガラニカ北領ウィザール王国へと上陸した。

先行した海軍による航空機偵察による写真と現地の大雑把な地図―主要都市とそれらを結ぶ道路と山の場所が示された位―の照合といった作業と同時に、陣地構築を帝國は行った。

後方に砲兵、前線に歩兵・戦車を展開し進軍してくるであろうメガラニカ軍を迎え撃つ形となる。

帝國が陣地を構成し終わってから十日後、メガラニカ北伐軍が到着した。


「諸君。間もなく我々は、陛下の温情を愚かしくも捨て去った裏切り者共とそれに力を貸す蛮族と矛を交える」

戦いの前の演説が北伐軍指揮官カラナス将軍の口から厳かに語られ始めた。

「奴らの戦力は我らと比べ少ない、しかしそれに油断していると思わぬ傷を負うだろう。獅子は子兎を仕留める時も全力を尽くすという。それは己の為でもあり又、戦う相手への礼儀だと私は考えている」

将軍の言葉は静かな戦場に響き兵士達は聞き入っていた。

その状況は将軍の最後の演説と共に兵士達の精神と共に盛り上がっていく。

「諸君、我らは獅子だ!ゆえに常に全力を尽くし勝者となる!それはこの戦も変わらぬ!行くぞ!」

カラナス将軍が馬の腹を蹴り、走らせるとそれに続き軍は移動を開始した。

後に各国の士官学校にて剣の時代の終わりが始まったとされる『メガラニカ戦争』の序章、『北領の屈辱』であった。


移動を開始して直ぐに敵からの攻撃が始まった、通常有りえない距離からの攻撃が。

最初の一撃でまず後方の歩兵部隊が吹き飛び、次に騎馬部隊が同様に散った。

「敵の魔術師か!?」

いやそんな筈が無い、少なくとも自分の常識からはここは『安全地帯』と呼べる距離だった。

しかし現実には明らかに敵陣の方向から攻撃されている。

こちらからは絶対に攻撃は届かない。それならば―

「全軍速度を上げよ!これ程の威力の攻撃、懐に入れば使えんはず!」

ひたすらに走り抜く、しかしそれでも空から降ってくる攻撃により兵士の数が減っていく。

行けるのか?このまま此処で皆打ち取られるのでは?カラナス将軍の胸に一抹の不安が走る。

だが突然攻撃が止んだ。

―抜けたか!

数はまだこちらの方が上、後はこのまま雪崩れ込み接近戦を仕掛け制圧するだけだ。

その考えと共に馬の腹を蹴りさらに速度を上げる。

だが彼らを迎え入れたのは帝國軍による弾幕の嵐だった。

人に馬にと当たり、地に沈んでいく。

「馬鹿な!?何なのだこれは!」

常識外の連続に思考が停止しかける。しかし、兵士達は先の砲撃と合わせたこの状況に遂に恐慌を起こした。

我先にと背を向け逃げようとするもその背中に銃弾が命中し絶命した。

―私は一体何と戦っているのだ?

将軍の疑問は頭部に当たった弾丸により強制的に消え去られた。


「敵は完全に撤退しました」

メガラニカ軍の突撃から一時間程経ち、司令官を失った兵士達はそれぞれの部隊指揮官の指示の元森に逃げ込み、あるいは全力で平原を駆け抜けた。

帝國軍は陣地から動かず、その為追撃戦は行われなかった。

理由としては未だ物資が足りないという物だ。

先程の砲撃にしても、断腸の思いでの砲撃だ。

「砲撃だけで撤退すると思ったが…」

意外に精強なのやも知れんな。

山下奉文中将はそう思案すると地図を手に取った。

「街道を通って移動しても向こうに着くのは十日前後か…」

「物資の荷揚げもまだ終わっておりませんのでもう暫くかかるかと」

「急がせろ、時間を掛けては向こうが有利になる」

結局荷揚げがひと段落し帝國軍が進軍するのは一週間後となり、周囲を散策しても、兎や狐ばかりでメガラニカ軍の兵士は見つからなかった。




この一週間の間に、北伐軍壊滅の報が王都へと届き城下は混乱の中にあった。

「北伐軍が壊滅というのは真か?」

「は、はい。陛下。ほぼ皆討ち死にし、生き残った者も僅か。消息の分からぬ者も多数…」

ガシャンと大きな音を立てて、杯が割れた。

怒りのあまりに投げ捨てた王の顔は炎のように赤く染まっている。

「カラナスはどうした!7万の兵を預けながら何をしておった!」

「い、未だ戻りません…」

「ええい、何たる事だ!軍務卿、西部・南部の兵と王都の近衛を除く兵を再編して軍を作成せよ!東部から王都にかけての防衛線を築くのだ!」

「はっ、承知致しました。陛下」

ドカリと腰を打ち付けるように玉座に座りなおすとメガラニカ王は深く息をついた。

「それと内務卿、戦死したと思われる士官下士官らの目録を作成し遺族へ見舞金を支給せよ」

「は、しかしまだ帰って来ていないだけやも知れませぬ。少々早計では…」

「それならそれで良い。作るだけ作れ」

それだけ指示すると王は深く眉根を顰めながら眼を瞑った。

閣僚達は頭を下げると各々の仕事をこなす為に、謁見の間から去った。

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