自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

003

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1月2日

スケルグとミスト、スルーズの3人は私が修道会に来てすぐに出会って、初めて打ち解けた「姉妹」だった。
それ以来友達として、こうして部屋に集まって話したり、くつろいだり、お茶を飲んだりしている。
本当は、こういうのはいけないのだそうだ。 司祭さまに見つかれば、叱られる。
姉妹たちは全員が魔法使いで、自分が使える魔法ごとに6つの派閥に分かれている。
当然、寮の部屋の割り当ても分かれていて、念動系「青」の姉妹、感応系「黄」の姉妹、生体系「白」の姉妹、量子系「黒」の姉妹、時空系「赤」の姉妹、そして特質系「緑」の姉妹という様にそれぞれ色が与えられている。
スルーズはさっきの通り感応系。 スケルグは量子系、ミストは時空系で、私は念動系。
来ている修士服もそれぞれの派閥の色で統一されているのだ。 これは、同じ派閥の姉妹同士の結束を高める理由があるという。

そしてやっぱり、派閥の姉妹ごとに対抗心というか競争心みたいなものがあって、普通は違う派閥の姉妹同士仲良くなったり部屋に集まったりはしないそうだ。
私は、そういうのはよくわからない。 どうして、わざわざ派閥だとか、色だとか、分けて考えて敵対心を持たなければならないんだろう。
結束を高めるなら、どうせ私たち「魔法使い」は人間社会の中ではごく少数派なのだから、魔法使い同士差別なく結束しあえばいいのに。

「修 道会は私たち魔法使いを集めて、『魔法士』に育て上げている。 私たちは、魔法の力を神様から与えられた力だと教えられ、みだりに使ったり不用意に人を傷 つけたりするべきではないから、力を制御し自由に使えるようにと訓練を受けてきたわ。 でも、その一方で私たちの力は戦争で使われる。
私たちは敵を傷つけ、味方を癒し、敵の目から味方の姿を隠したり、敵の後方に兵を送り込むのに使われる。 …私たちが訓練を受けたのは、紛れもなく戦争で使われるため。 なのに、どうして今度の戦争では、修道会は私たちを戦争に使わせようとしないのだろう」

私はつぶやくように胸のうちに抱えていた疑問を彼女たちに打ち明けた。
今度の戦争は何かおかしい。 これまでのアルヘイムの歴史の中にも、何度も王位をめぐった争いは起きていたし、修道会は外国との戦いでも国内の内乱でも、何らかの形で戦争に介入してきた。
司祭様の歴史の講義で何度も聴かされたはずだった。 修道会は、必ず神の教えと正しい勢力の側を助ける、と。

スケルグは少し考えるようなそぶりを見せた後、口を開いた。

「修 道会が戦争に介入せず中立の立場でい続けるのは…どちらも正しくないと判断したからじゃない? ニューラーズ公は、貴族の支持の強い王族が王になるという しきたりを無視して戦を起こしたし、貴族たちは幼い女王を即位させて、傀儡にしようと…王権を侵そうとした。どちらにも正統性がないから、どちらの味方も しない。 だから、中立なんじゃない?」

「でもそれなら、両者の間に入って戦争を仲裁し止めさせることも出来る。 修道会には、それだけの発言力があるはずよ?」

そう、今の修道会の行動はどこかおかしい。 何か、陰謀めいたものを感じるのだ。
スルーズもスケルグも内心ではそれに気づいているので、何か薄ら寒いものを感じて口を閉じてしまった。
ミストだけが、きょとんとした顔をしてみんなを見比べている。

「…ねえスケルグ。 ニューラーズ公が呼んだという異世界の軍隊のことだけど」

私は固くなった雰囲気を払拭するためわざと話題を変えた。

「量子論における多元宇宙の解釈は私にもわかる。 でも、所詮個人に過ぎない魔法使いの力でそんな事が可能になるの? 平行宇宙から別の世界の人間をこちらの世界に持ってくる、なんて事が」

スケルグは再びちょっと考え込むような仕草をしてから、テーブルの上のカップをひとつとって、ポットの中のハーブティーを注いだ。

「量子系の魔法において、ある場所から別の離れた場所に物体を移動させることは普通に出来る。 物体を構成する分子や、原子、さらにそれを構成する素粒子などを一旦『情報』として分解してから、別の場所にその『情報』どおりに分子を組み立てて物体を構成させる。
確立論的に言えば、物体がある場所に存在する確立を強制的に0にして、別の場所で100にする、と解釈できる。 平行世界に存在する何かの物体や生物を、何らかの方法で『それを構成する情報』を手に入れれば、こちらの世界で再構成させることも出来なくはないけど」

スケルグがお茶を注いだカップがテーブルの上から唐突に消えて、私の手元に現れる。 量子系魔法によるテレポート現象だ。
スケルグは残り3人分のお茶をカップに注ぎながら続ける。

「ミストのような時空系なら、ある場所と別の場所の空間を任意につなげて、物体を移動させることも出来る。 もしかしたら、平行宇宙の何処かとこの世界をつなげる扉を作ることも可能かもしれない。 でも、どちらの方法を使うにしても…」

スケルグがお茶の用意をはじめたのを見たミストは顔を輝かせて棚の小さな扉を開く。
いつもはそこは裁縫道具などが入っている小物入れになっているはずなのだが、ミストは冷機の流れ込んでくる棚の奥から皿に乗ったケーキを人数分取り出し始めた。
何処かの氷室か倉庫と、棚を繋げたらしい。

…これって泥棒になるんじゃないだろうか。

「…魔法使い個人の力で出来る範囲を大きく逸脱している。 もしどちらかの方法で異世界から軍隊を呼び出したとするならば、複数の魔法使いで召喚を行ったか、異世界との扉を開いたか。 さもなければ…神様の奇跡にでも頼ったのでしょ」

スケルグはそう言って、ミストから苺のタルトの乗ったケーキを受け取る。
私も、剥き身の甘栗の乗ったケーキを受け取った。
どうでもいいけど、ケーキについている薄い銀色の紙…包装? のようなものは何だろう?

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