小国の苦悩 第九話
ゴンザレス王国の建国は帝国勢力下に組み込まれた時点で110年という、この辺りの国家では最も古い歴史を誇る。
大陸統一暦1233年(西暦1820年頃、大陸統一暦は戦乱で年号の管理が怪しい為不確定)、アムドゥア第二帝国崩壊後の継承戦争で本国を失ったこの地方の当時の領主達は次々に独立した。
ゴンザレス1世もこの当時独立した地方領主の一人だった。
ゴンザレス1世、元の名をエルウィン・ブランツ・グラン・ゴンザレスは元々アムドゥア第二帝国で辣腕を振るった大将軍であった。
地方における蛮族討伐戦で戦功をあげ、王位継承権争いに伴う武力衝突で国王派の最高司令官として王弟派を打ち破り、名実共にアムドゥア第二帝国総大将軍となった。
しかし戦闘において類稀なる能力を持っていた一方で、彼の政治能力は『犬以下』だった。
統一後の政治抗争で中央を追い出された彼は、中心部から遠く離れたこの地の領主として都落ちする。
失脚したとは言え、大きな勲功のあった彼にはそれなりの領地が与えられた。現在のゴンザレス領の原型である。
大陸統一暦1230年、国政すら放置し政治闘争に明け暮れたアムドゥア第二帝国は、国王が若くして亡くなると、その後継をめぐって再び内部分裂した。最初は政治闘争であったものが、王女暗殺事件を経て武力衝突に発展する。
各勢力の思惑を孕み衝突は遂に諸侯が争う大戦争へと発展。
継承戦争の始まりであった。
王女を擁立していたガルム枢機卿を中心とする正統王権派は、王女を暗殺した(といわれる)ヴィンス侯爵率いる貴族派を次々に打ち破る。一方でヴィンス侯爵も諸国に援軍を要請し・・・
ゴンザレス王国の建国は帝国勢力下に組み込まれた時点で110年という、この辺りの国家では最も古い歴史を誇る。
大陸統一暦1233年(西暦1820年頃、大陸統一暦は戦乱で年号の管理が怪しい為不確定)、アムドゥア第二帝国崩壊後の継承戦争で本国を失ったこの地方の当時の領主達は次々に独立した。
ゴンザレス1世もこの当時独立した地方領主の一人だった。
ゴンザレス1世、元の名をエルウィン・ブランツ・グラン・ゴンザレスは元々アムドゥア第二帝国で辣腕を振るった大将軍であった。
地方における蛮族討伐戦で戦功をあげ、王位継承権争いに伴う武力衝突で国王派の最高司令官として王弟派を打ち破り、名実共にアムドゥア第二帝国総大将軍となった。
しかし戦闘において類稀なる能力を持っていた一方で、彼の政治能力は『犬以下』だった。
統一後の政治抗争で中央を追い出された彼は、中心部から遠く離れたこの地の領主として都落ちする。
失脚したとは言え、大きな勲功のあった彼にはそれなりの領地が与えられた。現在のゴンザレス領の原型である。
大陸統一暦1230年、国政すら放置し政治闘争に明け暮れたアムドゥア第二帝国は、国王が若くして亡くなると、その後継をめぐって再び内部分裂した。最初は政治闘争であったものが、王女暗殺事件を経て武力衝突に発展する。
各勢力の思惑を孕み衝突は遂に諸侯が争う大戦争へと発展。
継承戦争の始まりであった。
王女を擁立していたガルム枢機卿を中心とする正統王権派は、王女を暗殺した(といわれる)ヴィンス侯爵率いる貴族派を次々に打ち破る。一方でヴィンス侯爵も諸国に援軍を要請し・・・
- 等という事は関係なく、中央の権力闘争にかかわりの無いこの地方は平和だった。
大陸統一暦1233年、次々の諸侯の離脱したアムドゥア第二帝国の崩壊が誰の目にも明らかになると、エルウィン・ゴンザレスはゴンザレス1世を僭称し、ゴンザレス王国を建国する。
この際に、多額の布施を教会に行って王位を授けられた辺り、多少は政治と言う物を学んだらしい。
同時期にボンジュール王国などの周辺諸国も次々に独立しているが、この地方でもっとも早く独立したのがゴンザレス王国だった。
その後、地域紛争や大国の圧力に耐えかねた国々が近隣の地域大国に次々に吸収されていったが、ゴンザレス王国は旧アムドゥア近衛騎士団の流れを汲む精鋭ゴンザレス騎士団を持ってそれら脅威に対抗した。
所詮地方領主の手勢と、都落ちしたとは言え超大国の近衛騎士団の流れを汲むゴンザレス騎士団では比べ物にならず、ゴンザレス王国は版図を拡大していった。
しかし1271年、ゴンザレス3世の治世になると、近隣のボンジュール王国が地域大国ローデリア王国に組み入れられる。
ボンジュール国王改めボンジュール伯爵はローデリア本国に援軍を依頼、一挙に劣勢に立たされたゴンザレス王国は殆どの領地を切り取られ、かろうじてローデリア王国の属国として存続を許される。
この際に、多額の布施を教会に行って王位を授けられた辺り、多少は政治と言う物を学んだらしい。
同時期にボンジュール王国などの周辺諸国も次々に独立しているが、この地方でもっとも早く独立したのがゴンザレス王国だった。
その後、地域紛争や大国の圧力に耐えかねた国々が近隣の地域大国に次々に吸収されていったが、ゴンザレス王国は旧アムドゥア近衛騎士団の流れを汲む精鋭ゴンザレス騎士団を持ってそれら脅威に対抗した。
所詮地方領主の手勢と、都落ちしたとは言え超大国の近衛騎士団の流れを汲むゴンザレス騎士団では比べ物にならず、ゴンザレス王国は版図を拡大していった。
しかし1271年、ゴンザレス3世の治世になると、近隣のボンジュール王国が地域大国ローデリア王国に組み入れられる。
ボンジュール国王改めボンジュール伯爵はローデリア本国に援軍を依頼、一挙に劣勢に立たされたゴンザレス王国は殆どの領地を切り取られ、かろうじてローデリア王国の属国として存続を許される。
そして大陸統一暦1342年(西暦1939年)・・・
「ローデリア王国東方騎士団は壊滅、すでに王都ローデムも陥落した模様です。西方騎士団は急遽取って返した様ですが・・・既に王都も王も帝國の手に落ちており、恭順も時間の問題だとの噂です」
ヴァエッサ伯爵が、沈痛な面持ちで報告する。
「ローデリアも時間の問題だな」
アルフォンス伯爵が目を閉じる。
「既に帝國の偵察隊と思しき部隊がわが国周辺に出没しています」
騎士団長ピエール男爵の代理として出席していたモルボルン副騎士団長補佐が報告する。
「現在の所、発見した場合でもこちらは後退しているため交戦には到っておりません」
「いい判断だ」
ロドニー男爵がため息をついた。
この御前会議には、20人もの貴族が参加している。
弱小国であるゴンザレス王国は常識では考えられないほど多くの貴族を抱えているが、
これは元々初代ゴンザレス時代には大領主であった事、ゴンザレス王国初期には領地を次々に拡大していた名残である。
全人口が500名(貴族含まず)程度で貴族が20人というのはどう考えても異常であるが、
弱小国に落ちぶれても貴族の整理案を誰も出せずに居た結果、人数が維持されてしまったのである。
幸か不幸か、ゴンザレス王国は比較的肥沃な土地である事もあり
500人で家族も含めた50名程度を十分に養えてしまったのである。
・・・ただし、10人も領民が居ればいい方で、自分で畑を耕している人間も多い。
この国に置いては、貴族=大地主または、役場の役人、駐在さん・・・と考えていいだろう。
「帝國軍は総兵力500万を号しており・・・」
モルボルンが紙を読み上げる。
「500万・・・」
エリック子爵が絶句する。
「さすがに・・・500万は、はったりだろう」
「実兵力は50万位じゃないかね?」
彼方此方から野次の様な声が上がる。
「この地方に展開している兵力だけで50万だそうです」
「50・・・万・・・」
野次をあげた貴族が絶句した。
ヴァエッサ伯爵が、沈痛な面持ちで報告する。
「ローデリアも時間の問題だな」
アルフォンス伯爵が目を閉じる。
「既に帝國の偵察隊と思しき部隊がわが国周辺に出没しています」
騎士団長ピエール男爵の代理として出席していたモルボルン副騎士団長補佐が報告する。
「現在の所、発見した場合でもこちらは後退しているため交戦には到っておりません」
「いい判断だ」
ロドニー男爵がため息をついた。
この御前会議には、20人もの貴族が参加している。
弱小国であるゴンザレス王国は常識では考えられないほど多くの貴族を抱えているが、
これは元々初代ゴンザレス時代には大領主であった事、ゴンザレス王国初期には領地を次々に拡大していた名残である。
全人口が500名(貴族含まず)程度で貴族が20人というのはどう考えても異常であるが、
弱小国に落ちぶれても貴族の整理案を誰も出せずに居た結果、人数が維持されてしまったのである。
幸か不幸か、ゴンザレス王国は比較的肥沃な土地である事もあり
500人で家族も含めた50名程度を十分に養えてしまったのである。
・・・ただし、10人も領民が居ればいい方で、自分で畑を耕している人間も多い。
この国に置いては、貴族=大地主または、役場の役人、駐在さん・・・と考えていいだろう。
「帝國軍は総兵力500万を号しており・・・」
モルボルンが紙を読み上げる。
「500万・・・」
エリック子爵が絶句する。
「さすがに・・・500万は、はったりだろう」
「実兵力は50万位じゃないかね?」
彼方此方から野次の様な声が上がる。
「この地方に展開している兵力だけで50万だそうです」
「50・・・万・・・」
野次をあげた貴族が絶句した。
ここで今まで黙っていた国王ゴンザレス5世が重々しく口を開いた。
「・・・・いっその事、帝國に降伏申し込もうか? 楽だし」
国王ゴンザレス5世がボソっと言った一言に全員が固まる。
「それでは110年の歴史を誇るわが国の誇りはどうなるのですか!」
「大体国王陛下は主君としての誇りがかけている!」
「やはり甥のトンザレス公爵を国王にしたほうが良かったのでは?」
「だが、このままでは外交的に遅れをとることに・・・」
「誇りを失って何が貴族か!」
「現実を無視しては・・・」
議場は大騒ぎになる。
国王ゴンザレス5世がボソっと言った一言に全員が固まる。
「それでは110年の歴史を誇るわが国の誇りはどうなるのですか!」
「大体国王陛下は主君としての誇りがかけている!」
「やはり甥のトンザレス公爵を国王にしたほうが良かったのでは?」
「だが、このままでは外交的に遅れをとることに・・・」
「誇りを失って何が貴族か!」
「現実を無視しては・・・」
議場は大騒ぎになる。
(・・・勝てないのに降伏以外何をしろというのだ?)
ゴンザレス5世は眉をひそめながら、そんな事を考える。
ゴンザレス5世は眉をひそめながら、そんな事を考える。
ふと、扉の方を見ると召集に遅れてきた騎士団長ピエール男爵が扉を押し開けたまま、中に入りもせず固まっている。
「・・・・なにあれ?」
ゴンザレス5世は首を捻った。
「さぁ・・・・? ギックリ腰では?」
側近も首を捻った。
「結構な歳だからな。訓練で張り切りすぎたのか」
「・・・・なにあれ?」
ゴンザレス5世は首を捻った。
「さぁ・・・・? ギックリ腰では?」
側近も首を捻った。
「結構な歳だからな。訓練で張り切りすぎたのか」
御前会議で帝國への降伏が決定したのはそれから1日後の事だった。