145 名前:創る名無しに見る名無し[sage] 投稿日:2015/10/10(土) 23:16:14.24 ID:WLgHKXml [1/4]
第2話『装甲列車とサークル』
第2話『装甲列車とサークル』
大陸南部
ハイライン侯爵家が南部に港町を建設する計画は周辺地域に降って湧いた好景気をもたらしていた。
旧ノディオンの商人リュードは侯爵家の要請もあり、王都で開いていた店を畳んでハイライン侯爵領に向かっていた。
資産と家族の人数はそれなりにあるので馬車を七台仕立ててることとなった。
同様にハイライン侯爵領に向かう旧ノディオン住民達と合流し、馬車15台の大規模なキャラバンのようだ。
いずれも商人ばかりだから間違いでもない。
安全の為に傭兵も20人ばかりを雇っている。
いずれも十代から二十代の傭兵達なので、3人いる娘や妻や3人の妾に手を出さないか心配である。
だが三十代、四十代の傭兵など信用ならないから仕方がない。
この年代の傭兵は腕も悪いし、度胸も無い連中ばかりなのだ。
最近は街道もだいぶ整備された。
日本の連中が年貢や鉱物資源を輸送する為に整備したのだ。
街道の横には煙を立てて動く列車の線路が敷かれている。
この線路に沿えば日本の軍隊のいる治安のよい町や村に通じているわけだ。
だからといって完全に安全というわけではない。
南部地域は元々亜人の諸部族が多く住んでおり、帝国は彼等の族長に辺境貴族の称号を与えて支配領域の保障を与えていたのだが帝国は滅び王国にその力はない。
亜人達は各部族内部でも分裂や権力闘争が起こっているらしい。
王国の後ろ楯である日本も介入する様子は全くみせずに放置している。
そんなことを考えていると、リュードの近くで後方を警戒していた傭兵が胸を矢で貫かれて馬車から転がり落ちていく。
リュードは指揮を執る傭兵隊長にかわり大声を張り上げる。
ハイライン侯爵家が南部に港町を建設する計画は周辺地域に降って湧いた好景気をもたらしていた。
旧ノディオンの商人リュードは侯爵家の要請もあり、王都で開いていた店を畳んでハイライン侯爵領に向かっていた。
資産と家族の人数はそれなりにあるので馬車を七台仕立ててることとなった。
同様にハイライン侯爵領に向かう旧ノディオン住民達と合流し、馬車15台の大規模なキャラバンのようだ。
いずれも商人ばかりだから間違いでもない。
安全の為に傭兵も20人ばかりを雇っている。
いずれも十代から二十代の傭兵達なので、3人いる娘や妻や3人の妾に手を出さないか心配である。
だが三十代、四十代の傭兵など信用ならないから仕方がない。
この年代の傭兵は腕も悪いし、度胸も無い連中ばかりなのだ。
最近は街道もだいぶ整備された。
日本の連中が年貢や鉱物資源を輸送する為に整備したのだ。
街道の横には煙を立てて動く列車の線路が敷かれている。
この線路に沿えば日本の軍隊のいる治安のよい町や村に通じているわけだ。
だからといって完全に安全というわけではない。
南部地域は元々亜人の諸部族が多く住んでおり、帝国は彼等の族長に辺境貴族の称号を与えて支配領域の保障を与えていたのだが帝国は滅び王国にその力はない。
亜人達は各部族内部でも分裂や権力闘争が起こっているらしい。
王国の後ろ楯である日本も介入する様子は全くみせずに放置している。
そんなことを考えていると、リュードの近くで後方を警戒していた傭兵が胸を矢で貫かれて馬車から転がり落ちていく。
リュードは指揮を執る傭兵隊長にかわり大声を張り上げる。
「敵襲!!」
馬車のスピードを上げ、傭兵達は各々持ち場で警戒をして武器を抜き放つ。
だが森の中から放たれた数本の野矢が傭兵二人の命を奪う。
だが森の中から放たれた数本の野矢が傭兵二人の命を奪う。
「山賊か?」
森の木々の間から馬車に並走して矢を射ってくるのは・・・
「ケンタウルスか!!」
森から街道に30騎ばかりが唸り声を上げながら躍り出てくる。
「まずい、女達を守れ!!」
傭兵隊長が叫んだ瞬間に体に矢を数本生やして馬車から転がり落ちる。
ケンタウルスの目的は女と酒だ。
なぜか人間の若い娘に目が無い彼等は、発情した顔を剥き出しにして襲い掛かってくる。
傭兵達も弓矢で応戦するが、その数をまた一人一人と減らしていく。
ケンタウルスの目的は女と酒だ。
なぜか人間の若い娘に目が無い彼等は、発情した顔を剥き出しにして襲い掛かってくる。
傭兵達も弓矢で応戦するが、その数をまた一人一人と減らしていく。
「冗談じゃ無い。後払いの料金は少なく済むが、全滅されちゃ意味はない。急げ、馬車のスピードを上げろ!!」
馬車の壁に貼られた『時刻表』によればそろそろ遭遇するはずだ。
馬車が1台横転し、亭主が刺され女房がケンタウルスに抱えられている。
助ける余裕はない。
馬車が1台横転し、亭主が刺され女房がケンタウルスに抱えられている。
助ける余裕はない。
「もうすぐ・・・もうすぐだ!!」
また、1台の馬車が車輪に槍を差し込まれて横転する。
あの馬車には年頃の姉妹を乗せていたはずだ。
後ろで怯える娘達を同じ目に合わすわけにはいかない。
その時、リュードが求めていた汽笛の音が聞こえてくる。
あの馬車には年頃の姉妹を乗せていたはずだ。
後ろで怯える娘達を同じ目に合わすわけにはいかない。
その時、リュードが求めていた汽笛の音が聞こえてくる。
「来たぞ、日本の装甲列車だ!!おいお前!!馬で先導して救援を求めろ。」
予めこちらの状況を知らせる為に馬に乗っていた傭兵の一人に命じる。
馬に鞭を入れて煙を上げる汽車に向かって走らせる。
ただ汽車は線路の上以外は動くことが出来ない。
だが装甲列車の機関車から、筒状の何かを口に着けた車掌がこのまま街道を走り抜けろという声が伝わってきた。
なんと大きな声だと驚くが、馬を操る手を止めるわけにはいかない。
キャラバンと機関車が対抗車線側にすれ違い、ケンタウルスの群れがそれに続く。
馬に鞭を入れて煙を上げる汽車に向かって走らせる。
ただ汽車は線路の上以外は動くことが出来ない。
だが装甲列車の機関車から、筒状の何かを口に着けた車掌がこのまま街道を走り抜けろという声が伝わってきた。
なんと大きな声だと驚くが、馬を操る手を止めるわけにはいかない。
キャラバンと機関車が対抗車線側にすれ違い、ケンタウルスの群れがそれに続く。
大陸東部
新京特別区
西区
新京特別区
西区
許忠信は転移前は中華人民共和国国家安全部第十局(対外保防偵察局)に所属し、日本国内で外国駐在組織人員及び留学生監視・告発、域外反動組織活動の偵察などの任務に携わっていた。
転移後、新香港に移住したが日本後に堪能なことと、転移前の経歴を買われて新香港武装警察公安部の一員として、新京で中華料理店の皿洗いとして情報収集の活動を行っている。
先日、新京で林修光主席が遭遇した日本人の尾行を7人の同僚と行っていた。
転移後、新香港に移住したが日本後に堪能なことと、転移前の経歴を買われて新香港武装警察公安部の一員として、新京で中華料理店の皿洗いとして情報収集の活動を行っている。
先日、新京で林修光主席が遭遇した日本人の尾行を7人の同僚と行っていた。
「主任、李と田のチームが撒かれました。」
「くそ、またか・・・」
「くそ、またか・・・」
尾行対象は明らかに尾行を意識した行動を取っている。
唐突に建物の中に入り別の入り口から出ていったり、階段を登ったかと思えばそのまま降りてきたりを繰り返したりしてこちらの尾行チームが二組も撒かれたのだ。
尾行対象はハイライン侯爵家令嬢ヒルデガルドの従者斉藤光夫。
まだ、新京大学の四年生である。
今も学生街の一角の複雑な路地を歩いて、許と新人の王成明の尾行を受けている。
唐突に建物の中に入り別の入り口から出ていったり、階段を登ったかと思えばそのまま降りてきたりを繰り返したりしてこちらの尾行チームが二組も撒かれたのだ。
尾行対象はハイライン侯爵家令嬢ヒルデガルドの従者斉藤光夫。
まだ、新京大学の四年生である。
今も学生街の一角の複雑な路地を歩いて、許と新人の王成明の尾行を受けている。
「他の連中との合流は無理だな。まったく、どこまで行く気だ。」
ぼやいていると斉藤はビルの地下に入っていく。
何やら地下街になっているようだが、この時間はほとんどの店が閉まっているのは看板から伺える。
何やら地下街になっているようだが、この時間はほとんどの店が閉まっているのは看板から伺える。
「一人ずつ入るぞ、先に行け。」
情報機関の人間として、些か不安を感じさせる王成明は転移前は日本に留学していた学生だった。
相当な日本被れだったが日本通だったこともあり、公安部にスカウトされたが情報部員としては三流もいいところだった。
王がビルの入って数分後、許も地下街に入る階段を降りていく。
たがその行く手を塞ぐ男がいる。
左目に眼帯、十字架を首から掛け、黒いパーカーにはドクロと羽がプリントしてあり、指には一つずつ指輪が嵌めている。
ズボンも黒いジーンズで靴は黒い安全靴だ。
情報機関の人間として、些か不安を感じさせる王成明は転移前は日本に留学していた学生だった。
相当な日本被れだったが日本通だったこともあり、公安部にスカウトされたが情報部員としては三流もいいところだった。
王がビルの入って数分後、許も地下街に入る階段を降りていく。
たがその行く手を塞ぐ男がいる。
左目に眼帯、十字架を首から掛け、黒いパーカーにはドクロと羽がプリントしてあり、指には一つずつ指輪が嵌めている。
ズボンも黒いジーンズで靴は黒い安全靴だ。
「待ちな・・・あんたは同胞じゃない・・・ここから先を行く招待状は持ってないだろう?」
許は警戒して、背中のホルダーに隠した拳銃を使うか迷う。
しかし、黒い男は左腕を前へ伸ばし、鼻筋へ左手人差し指を合わせる、右肩をあげ右手をピーンと伸ばすという奇妙なポーズを取っている。
あまりに奇妙な動きに対応を躊躇してしまう。
許は中国人だ。
黒目黒髪で基本的に日本人とは見分けはつきにくい。
しかし、黒い男は左腕を前へ伸ばし、鼻筋へ左手人差し指を合わせる、右肩をあげ右手をピーンと伸ばすという奇妙なポーズを取っている。
あまりに奇妙な動きに対応を躊躇してしまう。
許は中国人だ。
黒目黒髪で基本的に日本人とは見分けはつきにくい。
『だが一瞬で同胞では無いと見破られた。こいつはただ者ではない。王は通れたのか?あいつどうしたんだろう・・・』
「我が左手に刻印されし、暗黒の炎に抱かれて灰となるか。封印されし、左目に封印されし魔眼の魔力に魅入られるか・・・選ぶがいい・・・」
許は一目散に階段を掛け上がって逃げ出していった。
『奴は何を言った?魔力だと、そんな馬鹿な・・・ついに日本人も魔力を手にいれたというのか?』
現在までに転移してきた人間で、魔法が使えるようになった事例は1例しか確認できていない。
在日米軍のパイロットで、皇都空爆を行ったB-52の編隊長だった男だ。
現在は行方不明で暗黒神の大神官となっているらしい。
まずはこの場を退き、本部に連絡してこの男を観測する準備を整えねばならない。
在日米軍のパイロットで、皇都空爆を行ったB-52の編隊長だった男だ。
現在は行方不明で暗黒神の大神官となっているらしい。
まずはこの場を退き、本部に連絡してこの男を観測する準備を整えねばならない。
「行ったか・・・何者だ?」
黒い服の男の後ろから二人の男が現れる。
斉藤とこの場の取り仕切っている後藤だ。
斉藤とこの場の取り仕切っている後藤だ。
「いや、それより黒川さん何してるんですか?」
後藤が床に目をやると、黒ずくめの男が苦悶の表情で転がりまわっている。
「中学時代の多感な自分を再現して身悶えして転がってるだけだ。ほっといてやれ。」
「中学時代の多感な自分を再現して身悶えして転がってるだけだ。ほっといてやれ。」
「・・・まあ、それはいいとして・・・斉藤さんつけられましたね?当局の奴等でしょうか・・・」
「それはそこの彼に聞けばいいさ。」
「それはそこの彼に聞けばいいさ。」
二人が振り返ると数人の男達に拘束された王成明がパイプ椅子に座らされている。
「き、貴様らはいったい何者だ!!」
斉藤が苦笑いしながら答える。
「何者?おかしなことを聞くね。我々は君の同胞だよ。」
怯える王に後藤が扉を開けて部屋の中に招待する。
「ようこそ、我々の世界へ・・・」
「き、貴様らはいったい何者だ!!」
斉藤が苦笑いしながら答える。
「何者?おかしなことを聞くね。我々は君の同胞だよ。」
怯える王に後藤が扉を開けて部屋の中に招待する。
「ようこそ、我々の世界へ・・・」
数日後、行方不明だった王成明から郵送辞表が届けられた。
『僕は自分が行くべき世界を見つけました。』
と、書かれていたので新たな異世界転移かと物議を醸しだした。
『僕は自分が行くべき世界を見つけました。』
と、書かれていたので新たな異世界転移かと物議を醸しだした。
大陸南部
ケンタウルス自治伯領
ケイトレン氏族トルイの町
ケンタウルス族は大陸において、大族長が自治伯爵として帝国に任命され、その武力を背景にそれぞれの氏族の縄張りを統合して自治伯領として存在していた。
大族長は世襲ではなく族長選挙によって選ばれる。
帝国が滅び王国にその統治機構が変わってもその盟約は存在したが、問題は王国がケンタウルス族を武力を背景に抑えることが出来なくなりつつあることになった。
このトルイの町のケンタウルス人口は五千人、人間は主に奴隷が千人ほど。
町は当然ケンタウルスに優しいバリアフリー完備だ。
族長の名前は町の名前そのままのトルイ。
後継者が跡を継げば町の名前は代わる。
その族長トルイは怒り心頭で客人を待っていた。
ケンタウルス自治伯領
ケイトレン氏族トルイの町
ケンタウルス族は大陸において、大族長が自治伯爵として帝国に任命され、その武力を背景にそれぞれの氏族の縄張りを統合して自治伯領として存在していた。
大族長は世襲ではなく族長選挙によって選ばれる。
帝国が滅び王国にその統治機構が変わってもその盟約は存在したが、問題は王国がケンタウルス族を武力を背景に抑えることが出来なくなりつつあることになった。
このトルイの町のケンタウルス人口は五千人、人間は主に奴隷が千人ほど。
町は当然ケンタウルスに優しいバリアフリー完備だ。
族長の名前は町の名前そのままのトルイ。
後継者が跡を継げば町の名前は代わる。
その族長トルイは怒り心頭で客人を待っていた。
「遅い、エリクソンはまだか!?」
召し使いの人間の女達は投げ飛ばされる杯に怯えきっている。
トルイはケンタウルス族の中ではこれでも理知的な方だ。
人間の商人と組み獣の革や工作物に使える骨。
この地域の特産物である病気によくキノコやニンジンを各氏族から集め、商人に高値で売り付けて利益を得る。
周辺の鉱山で奴隷に採掘させている鉱物資源。
狩猟部族であるケンタウルスが町を築いていることからもその辣腕ぶりが伺えるだろう。
そして各氏族の族長には安値で卸した酒や奴隷女をあてがい機嫌を取ることにも長けている。
そんなトルイが怒っているのは館の庭に並べられていた町の若衆の遺体30体ばかりが原因である。
遺体のほとんどは体に穴を開けられ、原形を留めていない者も多い。
若衆の遺族代表は館の中に。
他の遺族も館を取り囲んで騒ぎ立てていた。
そこに商人エリクソンがやってくる。
場所が場所だけに馬車が使えない。
うっかり使ったらケンタウルス族の中には襲ってきたり、嫁に欲しいとか言い出すものがいる。
少し高価だが地龍に車を曳かせた龍車で館の門を潜り、トルイのもとに参上する。
ケンタウルス自治伯領との折衝や交易の独占権を持つ帝国貴族シルベール伯爵は商場(あきないば)を割り当てて、そこで交易を行う権利を商人に与えて運上金を得ていた。
エリクソンはその一人でこのトルイの町の交易の独占権を持つ商人だった。
トルイはケンタウルス族の中ではこれでも理知的な方だ。
人間の商人と組み獣の革や工作物に使える骨。
この地域の特産物である病気によくキノコやニンジンを各氏族から集め、商人に高値で売り付けて利益を得る。
周辺の鉱山で奴隷に採掘させている鉱物資源。
狩猟部族であるケンタウルスが町を築いていることからもその辣腕ぶりが伺えるだろう。
そして各氏族の族長には安値で卸した酒や奴隷女をあてがい機嫌を取ることにも長けている。
そんなトルイが怒っているのは館の庭に並べられていた町の若衆の遺体30体ばかりが原因である。
遺体のほとんどは体に穴を開けられ、原形を留めていない者も多い。
若衆の遺族代表は館の中に。
他の遺族も館を取り囲んで騒ぎ立てていた。
そこに商人エリクソンがやってくる。
場所が場所だけに馬車が使えない。
うっかり使ったらケンタウルス族の中には襲ってきたり、嫁に欲しいとか言い出すものがいる。
少し高価だが地龍に車を曳かせた龍車で館の門を潜り、トルイのもとに参上する。
ケンタウルス自治伯領との折衝や交易の独占権を持つ帝国貴族シルベール伯爵は商場(あきないば)を割り当てて、そこで交易を行う権利を商人に与えて運上金を得ていた。
エリクソンはその一人でこのトルイの町の交易の独占権を持つ商人だった。
「これはまた・・・派手にやられましたなあ・・・」
事前に聞いてはいたが、勇猛なケンタウルス族がここまで一方的にやられるとは思ってもいなかった。
「貴様のいう通りにキャラバンを襲ったらこの様だ。まさか貴様、我々を嵌めたのではないか?」
エリクソンは首を振って否定する。
確かに長年の商売敵のリュードに対する恨みからケンタウルス族を煽ったの間違いないが、失敗は望んでいない。
確かに長年の商売敵のリュードに対する恨みからケンタウルス族を煽ったの間違いないが、失敗は望んでいない。
「冗談じゃない。あのへんはあんたらが詳しいというから、襲撃を一任したんじゃないか。日本の装甲列車が通る時に襲うとは思ってなかったしな。」
確かに若衆達が襲撃したのは予定より早い時間だった。
襲撃は夕暮れの予定だったが、昼日中に襲っている。
若い女の姿に興奮して暴走する若衆の姿がトルイにも目が浮かぶようだった。
襲撃は夕暮れの予定だったが、昼日中に襲っている。
若い女の姿に興奮して暴走する若衆の姿がトルイにも目が浮かぶようだった。
「判った信じよう。」
トルイか手を挙げると、遺族達が退室していく。
エリクソンは安心してない。
トルイがこの程度でことを納める筈が無いからだ。
エリクソンは安心してない。
トルイがこの程度でことを納める筈が無いからだ。
「貴様のことは信じるが、今回の件で族長会議での面目は丸潰れだ。次の大族長を選ぶ会議での不利になる。失った倍の日本人の首か、女を手に入れねばこの町での立場まで弱くなる。
貴様もそれでは不味かろう。」
「何をお考えで?」
「また列車を襲う。ただし今回は装甲列車じゃなくて襲いやすいのだ。一週間やるから考えろ。」
貴様もそれでは不味かろう。」
「何をお考えで?」
「また列車を襲う。ただし今回は装甲列車じゃなくて襲いやすいのだ。一週間やるから考えろ。」
さても厄介なことになったとエリクソンは苦虫を潰していた。
大陸東部
新京特別区から海岸に沿って南に50キロ。
車両が通れるように舗装された道路の終点に大陸総督秋月春種が、秘書官の秋山や護衛のSPを引き連れて視察に訪れていた。
一行は先に完成していた市役所庁舎ビルの会議室に入る。
窓から見える光景はほとんど原野の土地でブルドーザやショベルカーが、整地作業を行っている。
会議室ではレーザーポインターでプロジェクターに映し出された画像や動画を解説する責任者の朝比奈順一部長の話を聞いている。
車両が通れるように舗装された道路の終点に大陸総督秋月春種が、秘書官の秋山や護衛のSPを引き連れて視察に訪れていた。
一行は先に完成していた市役所庁舎ビルの会議室に入る。
窓から見える光景はほとんど原野の土地でブルドーザやショベルカーが、整地作業を行っている。
会議室ではレーザーポインターでプロジェクターに映し出された画像や動画を解説する責任者の朝比奈順一部長の話を聞いている。
「市役所や駐屯地、港湾、電気、ガス、水道、通信、病院のインフラ設備も完成しております。
第一期の団地も現在は内装工事中。
病院、駅、学校に関しては、来年着工になります。」
「まあ、上出来だろう。
最初の住民は新京からの異動組に単身赴任で来てもらうから家族はいない。
インフラ設備の職員や自衛官、警察官、役所の職員。
2月いっぱいはそれで済むはずだ。」
第一期の団地も現在は内装工事中。
病院、駅、学校に関しては、来年着工になります。」
「まあ、上出来だろう。
最初の住民は新京からの異動組に単身赴任で来てもらうから家族はいない。
インフラ設備の職員や自衛官、警察官、役所の職員。
2月いっぱいはそれで済むはずだ。」
秋月の言葉に全員が頷く。
新京特別区の住民は来年の1月をもって、人口が二百万人を越える。
大半が団地や寮住まいだが、こちらの大陸で財を成した者が一軒家を建築する光景も珍しくもなくなった。
中には新京を飛び出して大陸の他の町に住民に混じって生活の居を移した者もいる。
だが日本本土からの移民希望者は新京の住民の20倍はいる。
そこで新京の開発も一段落した頃から新都市開発を進めていたのだ。
官民合わせて異動組が2月から3月に生活を始める。
その後は家族を呼び寄せて、彼等の穴を新着の移民で埋めていく。
新京特別区の住民は来年の1月をもって、人口が二百万人を越える。
大半が団地や寮住まいだが、こちらの大陸で財を成した者が一軒家を建築する光景も珍しくもなくなった。
中には新京を飛び出して大陸の他の町に住民に混じって生活の居を移した者もいる。
だが日本本土からの移民希望者は新京の住民の20倍はいる。
そこで新京の開発も一段落した頃から新都市開発を進めていたのだ。
官民合わせて異動組が2月から3月に生活を始める。
その後は家族を呼び寄せて、彼等の穴を新着の移民で埋めていく。
「民間からの工場やスーパーの建築、一軒家の購入の要望も殺到しています。
新京からの引越し組も考慮して、移民組第一期の居住は6月あたりになります。」
新京からの引越し組も考慮して、移民組第一期の居住は6月あたりになります。」
秋山は新京からの要望も合わせた話を語る。
移民の問題は現時点で問題はない。
秋月は次の問題を提起する。
移民の問題は現時点で問題はない。
秋月は次の問題を提起する。
「次の案件は・・・これは大事だな。
この市の名前は何にするか一般公募か・・・」
「名称、由来、構想・・・まあ、新市民に夢と希望を抱かせる誤魔化しですな。」
この市の名前は何にするか一般公募か・・・」
「名称、由来、構想・・・まあ、新市民に夢と希望を抱かせる誤魔化しですな。」
秋山は容赦がない。
秋月はスルーして話を進める。
秋月はスルーして話を進める。
「大々的に募集してくれ。
締め切りは今月中だ。」
「手配致します。
ところでこの新都市開発計画とは関係無いのですがもう一件よろしいでしょうか?
例のアンフォニーの代官が決まりました。」
締め切りは今月中だ。」
「手配致します。
ところでこの新都市開発計画とは関係無いのですがもう一件よろしいでしょうか?
例のアンフォニーの代官が決まりました。」
秋月は総督府執務室に飾られたマーマン王のホルマリン漬けを思いだしてうんざりした声で話を続けるよう促す。
わざわざ代官の任命に総督府が関与することは少ない。
わざわざこの場で議題にあげるのは、代官当人に大きな問題を抱えているからだ。
わざわざ代官の任命に総督府が関与することは少ない。
わざわざこの場で議題にあげるのは、代官当人に大きな問題を抱えているからだ。
「どうも日本人のようなんです。」
秋月秘書官も困惑したように説明をはじめた。
大陸中央部
旧皇室領現子爵領
マッキリー
第四分遣隊分屯地
旧皇室領現子爵領
マッキリー
第四分遣隊分屯地
マッキリー子爵は帝国解体時は、男爵に過ぎなかったが日本との和平に尽力して昇爵と加増を勝ち得た人物である。
その子爵領では金、銀、銅、石炭、ニッケル、ボーキサイトが採掘されて大陸総督府が管理している。
ニッケル、ボーキサイトについては現在は唯一の鉱脈であり、重要視されている。
その為に混成部隊である第四分遣隊は300名と各分遣隊の中でも最大規模であり、1機ではあるが唯一汎用ヘリコプターMi-8、ヒップが配備されている。
石炭が採掘出来ることから、新京と王都を繋ぐ東西線東部方面の中間地点としての賑わいも見せている。
その子爵領では金、銀、銅、石炭、ニッケル、ボーキサイトが採掘されて大陸総督府が管理している。
ニッケル、ボーキサイトについては現在は唯一の鉱脈であり、重要視されている。
その為に混成部隊である第四分遣隊は300名と各分遣隊の中でも最大規模であり、1機ではあるが唯一汎用ヘリコプターMi-8、ヒップが配備されている。
石炭が採掘出来ることから、新京と王都を繋ぐ東西線東部方面の中間地点としての賑わいも見せている。
「浅井治久二尉、入ります。」
入室して敬礼すると、分屯地司令の朝倉三等陸佐の答礼を受ける。
「浅井二尉、二年間のお勤めご苦労だった。君が補佐官だったおかげで任務は楽をさせてもらえた。昇進は来年になるが先に一つ派遣任務を司令部から命令された。」
浅井二尉は一等陸尉に昇進後、
来年創設される第七分遣隊90名の指揮官となる。
この分屯地には研修の一環として赴任していた。
来年創設される第七分遣隊90名の指揮官となる。
この分屯地には研修の一環として赴任していた。
「現在、建設中の第六分屯地のアンフォニーに新たな代官が任命され赴任する。新領地ということもあり、現在新京で留学中のハイライン侯爵令嬢も視察として同行することになり、このマッキリーを列車で通過する。貴官もこれに同行し一連の行動を視察せよ。また、これは第六分遣隊の進捗状況を貴官の参考にする為でもある。」
「はっ、浅井二尉命令謹んで拝命致します。また、この度のご配慮感謝致します。第四分屯地での毎日は大変勉強になりました。マディノの地でも精励していきたいと思います。」
二人は握手をかわし、朝倉は浅井に椅子に座るよう促す。
「しかし、代官の視察ですか。たぶん監視せよと総督府あたりからの指示なのは判りますが、問題のある人物なのですか?」
「詳細はこちらにも伝えられていない。総督府はよほど知られたくないらしいが、機密にも指定されていない。民間絡みじゃないのかな?とにかく明後日の1000時にマッキリー駅、王都行き『よさこい3号』で、令嬢を伴って乗車している。これに同行せよ。」
明後日
昨晩の送別会で散々に酒を飲まされた浅井二尉であったが、習慣から朝6時に起床して身なりを整え分屯地を後にすることにした。
分屯地の受付では、カラシニコフ小銃を持った歩哨や警衛、受付の隊員達から
昨晩の送別会で散々に酒を飲まされた浅井二尉であったが、習慣から朝6時に起床して身なりを整え分屯地を後にすることにした。
分屯地の受付では、カラシニコフ小銃を持った歩哨や警衛、受付の隊員達から
「浅井二等陸対し・・・捧げ銃!!」
の敬礼を受けて、少し涙目になってしまった。
駅には一時間早く到着して汽車を待っていた。
汽車は定刻通りに停車する。
鉄道公安官にAK-74を初めとする護身用の武器をほとんど預け、自身はマカロフ PM拳銃と予備の弾装1個を携帯して列車に乗り込む。
座席は指定席だ。
令嬢と新任代官は同じ車両に乗るよう手配されているのだ。
駅には一時間早く到着して汽車を待っていた。
汽車は定刻通りに停車する。
鉄道公安官にAK-74を初めとする護身用の武器をほとんど預け、自身はマカロフ PM拳銃と予備の弾装1個を携帯して列車に乗り込む。
座席は指定席だ。
令嬢と新任代官は同じ車両に乗るよう手配されているのだ。
青と黒を基調とした騎乗服に身を包み、ポニーに結んだブロンドドの髪を靡かせている美少女だった。
歳は十代半ば。
透けるような白い肌を持ち、ぴっちりとした軍服が彼女の均整の取れたスタイルを強調している。
歳は十代半ば。
透けるような白い肌を持ち、ぴっちりとした軍服が彼女の均整の取れたスタイルを強調している。
「レディ・ヒルデガルドさんですね。お初に御目にかかります。自分は陸上自衛隊二等陸尉、浅井治久と申します。アンフォニーまで同行を命じられました。よろしくお願いします。」
貴族令嬢への敬称『レディ』と日本人風に『さん』付けしている完全に失敗な挨拶だが、浅井は気が付かずに握手を求める。
だがその手は若いリクルートスーツを着た男に握られる。
だがその手は若いリクルートスーツを着た男に握られる。
「お初に御目にかかります。この度、アンフォニー領の代官として着任することとなった斉藤光夫と申します。道中、短い間ですが宜しくお願いします。」
丁寧な挨拶だが目が笑ってない。
同時に周囲から敵意が一斉に向けられるのを感じた。
周辺の座席の若い男達が一斉にこちらを見てるのだ。
同時に周囲から敵意が一斉に向けられるのを感じた。
周辺の座席の若い男達が一斉にこちらを見てるのだ。
「ああ、お気になさらずに。彼等は代官所のスタッフと研修生です。」
「研修生?」
「お気になさらずに。」
「研修生?」
「お気になさらずに。」
強調されて困惑する浅井にヒルデガルドは、クスクスと笑っている。
「ヒルダでいいですわ。楽になさって下さい。」
「・・・、お言葉に甘えて・・・」
「・・・、お言葉に甘えて・・・」
ようやく座席に座ることが出来た。
ギスギスした車両はたいへん居心地が悪かった。
ヒルダとの会話には支障はなかった。
大貴族ほど日本語を学んでいるし、ヒルダは新京に留学出来るくらい優秀なようだ。
日本人の方が大陸での言語を学ぶのに苦労している。
大陸の統治に旧帝国の貴族や役人を排除出来なかった一因でもある。
会話は進み、旅程について話が進むとヒルダが浅井の赴任地について訪ねてくる。
ギスギスした車両はたいへん居心地が悪かった。
ヒルダとの会話には支障はなかった。
大貴族ほど日本語を学んでいるし、ヒルダは新京に留学出来るくらい優秀なようだ。
日本人の方が大陸での言語を学ぶのに苦労している。
大陸の統治に旧帝国の貴族や役人を排除出来なかった一因でもある。
会話は進み、旅程について話が進むとヒルダが浅井の赴任地について訪ねてくる。
「浅井様が赴任するマディノというと、旧マディノ子爵領の?」
「はい、『横浜広域魔法爆撃』で改易となったマディノ子爵の領地だった場所です。」
「確か金、銀、銅の鉱山があったかしら?日本の鉱物資源の欠乏は切実のようね。」
「まあ、そんなところです。」
「はい、『横浜広域魔法爆撃』で改易となったマディノ子爵の領地だった場所です。」
「確か金、銀、銅の鉱山があったかしら?日本の鉱物資源の欠乏は切実のようね。」
「まあ、そんなところです。」
今度は浅井が斉藤達を睨み付けるが、斉藤は意にも介さない。
「姫様は新京の留学生ですからその辺りは授業で習いますよ。我々が教えるまでなくね。二尉殿は我々が大陸技術流出法に違反してないか心配のようですが、あの法律は木材を使った技術は規制してないし、農業に関しては奨励しているくらいですからご心配なく。」
確かに木材技術は日本としては眼中に無いし、食料生産の向上は望むところなのだ。
「単刀直入に言おう。大陸総督府は今回の代官就任に注目している。君たちが危険かそうじゃないかだ。だいたい君らは一体何者なのだ?」
斉藤は自信満々に答える。
たぶん、用意してあったような発言だった。
「ただの就活中の大学生ですよ。」
そのどや顔をおもいっきり殴りたかった。
睨み付ける浅井をヒルダが話掛けてきて会話が変えさせられる。
睨み付ける浅井をヒルダが話掛けてきて会話が変えさせられる。
「浅井様、前々から疑問だったのだけど、日本は、鉱山を発見したり開発するの早すぎないかしら?どうやって見つけてるの?あと、やたらと金、銀、銅に片寄ってるのは何故なのかしら?」
答えていいものなのか浅井は迷ってしまっていた。
金、銀、銅、それに加えて鉄が多いのは最初から帝国や貴族たちが発掘したのを接収したからだ。
それ以外、石炭、亜鉛、鉛、ボーキサイト、ダイヤモンド、ニッケル、カリウム、リチウムに関しては、帝国が設立した学術都市での調査記録に基づいている。
他にも色々発見はしているのだが転移当時の鉱山労働者の数が少なかった日本には手がつけられなかったのだ。
現在は鉱山労働者を教育、経験を積ませて順次鉱山に割り振っているのが現状だ。
同時に冒険者を雇って、未開発鉱山からサンプルを持ち帰らせたりしている。
金、銀、銅、それに加えて鉄が多いのは最初から帝国や貴族たちが発掘したのを接収したからだ。
それ以外、石炭、亜鉛、鉛、ボーキサイト、ダイヤモンド、ニッケル、カリウム、リチウムに関しては、帝国が設立した学術都市での調査記録に基づいている。
他にも色々発見はしているのだが転移当時の鉱山労働者の数が少なかった日本には手がつけられなかったのだ。
現在は鉱山労働者を教育、経験を積ませて順次鉱山に割り振っているのが現状だ。
同時に冒険者を雇って、未開発鉱山からサンプルを持ち帰らせたりしている。
「私は自衛官なので専門外のことはわかりませんな。」
お茶を濁すことにした。
「自分も聞いていいですか?」
斉藤からの質問である。
身構えるが内容はたいした質問でじゃなかった。
身構えるが内容はたいした質問でじゃなかった。
「なんで分遣隊の隊員さん達は東側の装備なんですか?」
転移6年目
南樺太道
大泊郡深海村(旧サハリン州ダーチェ)
南樺太道
大泊郡深海村(旧サハリン州ダーチェ)
日本に返還された南樺太は食料増産を目論む日本政府によって、幾つもの開拓団が組織された。
中心となるのは転移前に廃業した農家や漁師達で、第三次産業に従事していた者達である。
もちろん一朝一夕に畑は出来ないし、漁船だって足りてるわけじゃない。
それでも南樺太に駐屯する陸上自衛隊第2師団の隊員達が手伝いに来ることもあって、ようやく東京への出荷が出来る規模の生産が可能となっていた。
そんなある日、人口四千人ほどの豊原市に隣接する深海村に三千人ほどの第二師団の隊員が展開していた。
動員されているのは豊原の第2普通科連隊、第2後方支援連隊。
住民達は普段は地引き網や開墾を手伝ってくれる隊員達が怖い顔をしてある倉庫のような建物を包囲しているのに驚愕していた。
隊員の中には村の娘と恋人関係或いは結婚した者も多いが誰もが家族にも理由を明かさない。
不安がる住民を代表して、村長と駐在が村の代表数人を引き連れ自衛隊の仮設司令部を訪れていた。
中心となるのは転移前に廃業した農家や漁師達で、第三次産業に従事していた者達である。
もちろん一朝一夕に畑は出来ないし、漁船だって足りてるわけじゃない。
それでも南樺太に駐屯する陸上自衛隊第2師団の隊員達が手伝いに来ることもあって、ようやく東京への出荷が出来る規模の生産が可能となっていた。
そんなある日、人口四千人ほどの豊原市に隣接する深海村に三千人ほどの第二師団の隊員が展開していた。
動員されているのは豊原の第2普通科連隊、第2後方支援連隊。
住民達は普段は地引き網や開墾を手伝ってくれる隊員達が怖い顔をしてある倉庫のような建物を包囲しているのに驚愕していた。
隊員の中には村の娘と恋人関係或いは結婚した者も多いが誰もが家族にも理由を明かさない。
不安がる住民を代表して、村長と駐在が村の代表数人を引き連れ自衛隊の仮設司令部を訪れていた。
「お騒がせして申し訳ない。」
開口一番、第二師団団長穴山友信三等陸将が頭を下げてくる。
三等陸将は自衛隊の大幅な増員を受けて、予てより計画されていた将・将補の2階級制度を4階級制度にした為に出来た階級だ。
だが呼びにくいので部下達すらいまだに陸将としか呼称してくれない。
三等陸将は自衛隊の大幅な増員を受けて、予てより計画されていた将・将補の2階級制度を4階級制度にした為に出来た階級だ。
だが呼びにくいので部下達すらいまだに陸将としか呼称してくれない。
「穴山団長、我々としても朝っぱら自衛隊さんが大挙して押し掛けてきた困惑している。村の中じゃ、ここにもモンスターが出たのかと怖がっている者も多い。機密とかに縛られてるあんたらの事情も理解は出来るが、村の者を安心させる発表を欲している。そこらを説明してくれないだろうか?」
村長は元は大阪の住民だ。
樺太開拓は様々な地方から集まった住民がいるため、極力標準語で喋っている。
北海道ではいまだに存在する『隣の町の人間が何を喋ってるか判らない』問題を南樺太にまで持ち込まない為だ。
故郷への郷愁を断ち切る為でもある。
樺太開拓は様々な地方から集まった住民がいるため、極力標準語で喋っている。
北海道ではいまだに存在する『隣の町の人間が何を喋ってるか判らない』問題を南樺太にまで持ち込まない為だ。
故郷への郷愁を断ち切る為でもある。
「そうですな・・・、皆さんはニコラス・ケイジが昔主演した武器商人の映画を観たことがありますか?」
唐突に始まる映画鑑賞会。
ソ連崩壊によりウクライナで将軍の叔父を訪れた主人公は、叔父が管理する基地で膨大に保管されている兵器を売却して富を築いていく。
ソ連崩壊によりウクライナで将軍の叔父を訪れた主人公は、叔父が管理する基地で膨大に保管されている兵器を売却して富を築いていく。
「この保管基地がですね。実はこの村にもあったんです。」
名称は第230保管基地。
2008年、ドミートリー・メドヴェージェフ大統領が承認した「ロシア連邦軍の将来の姿」に従い、ロシアの各師団は一度全て旅団に改編された。
さらにもう一歩進めて、第230保管基地は平時には基幹部隊と装備のみ維持し、戦時に完全編成の第88独立自動車化狙撃旅団として展開する予備旅団の基地となった。
そして日本転移に巻き込まれ、日本政府の支援の代償に千島列島と南樺太を返還すると、各地に点在していたロシア軍北サハリンに集まり統合された。
2008年、ドミートリー・メドヴェージェフ大統領が承認した「ロシア連邦軍の将来の姿」に従い、ロシアの各師団は一度全て旅団に改編された。
さらにもう一歩進めて、第230保管基地は平時には基幹部隊と装備のみ維持し、戦時に完全編成の第88独立自動車化狙撃旅団として展開する予備旅団の基地となった。
そして日本転移に巻き込まれ、日本政府の支援の代償に千島列島と南樺太を返還すると、各地に点在していたロシア軍北サハリンに集まり統合された。
「ところがですな問題はもう1つありまして、樺太にも千島にもロシア製、いや東側の武器弾薬を造る工場なんてこの世界にはどこにも無いわけです。さらに新設の部隊を創設出来るほど、ロシア人人口に余裕があるわけでもない。ならばいっそ我々に造らせてしまえと。この保管基地はそのサンプルとして譲渡されたわけです。これには同系統の装備をしている新香港の意向でもあるわけですな。まあ、我々も武器弾薬の消耗は悩みの種でしたからな。」
安全が確認され、保管基地の地下倉庫の扉が開けられる。
そこには無数のロシア製兵器がところ狭しと鎮座している。
そこには無数のロシア製兵器がところ狭しと鎮座している。
その規模には同行した村長や駐在はともかく穴山団長や隊員達も驚いている。
「とても旅団用の数じゃないな。」
自分達第二師団はずっとこんな連中と対時していたのだと冷や汗が流れた。
転移から九年目
大陸中央部
東西線『よさこい3号』
大陸中央部
東西線『よさこい3号』
「その後、山口の第17普通科連隊にロシア製兵器の転換訓練が行われた。大陸派遣を命令させて6っの分遣隊が同連隊から組織されて今に至るわけだ。」
あれだけ敵意を向けていた斉藤やスタッフ達が、浅井の話を聞き入っていた。
久し振りの本国の話も聞けたからというのもあるだろう。
次はこちらが彼等に聞く番と考えていると、全員の携帯から一斉に着信音が鳴り響く。
浅井や斉藤達だけでなく、車両に乗り合わせた日本人乗客からもだ。
久し振りの本国の話も聞けたからというのもあるだろう。
次はこちらが彼等に聞く番と考えていると、全員の携帯から一斉に着信音が鳴り響く。
浅井や斉藤達だけでなく、車両に乗り合わせた日本人乗客からもだ。
「安否メールか。」
浅井が携帯から確認したのは、新京から出た日本人に配布された総督府からの安否確認を行うサイトに繋がるメールだ。
災害やテロが発生した時に一斉に送信される。
もとは警備会社が顧客サービスに使用していたシステムだ。
そして、内容も書き込まれている。
災害やテロが発生した時に一斉に送信される。
もとは警備会社が顧客サービスに使用していたシステムだ。
そして、内容も書き込まれている。
「テロ警戒か・・・君らは護身用の武器を持ってきたか?」
大陸中央部
旧皇室領現子爵領
マッキリー
旧皇室領現子爵領
マッキリー
町の片隅で一頭のケンタウルスが弓を構えていた。
傍らには商人エリクソンから派遣された男が目標を指差して頷いている。
傍らには商人エリクソンから派遣された男が目標を指差して頷いている。
「あいつを殺ったら俺は一族に復帰できるとトルイの叔父貴は行ってたんだな?」
ケンタウルスはトルイの甥でセルロイ。
素行の悪さから一族を追放され、マッキリーの鉱山で荷車を運ぶ日雇い人夫をして過ごしていたが、ようやくチャンスが巡ってきた。
セルロイは一撃離脱の騎射の名手である。
ビルの路地から飛び出し、一騎駆けで目標の陸上自衛隊第四分遣隊隊長朝倉三等陸佐が軽機動車の後部座席に乗り込もうとするところを騎射する。
素行の悪さから一族を追放され、マッキリーの鉱山で荷車を運ぶ日雇い人夫をして過ごしていたが、ようやくチャンスが巡ってきた。
セルロイは一撃離脱の騎射の名手である。
ビルの路地から飛び出し、一騎駆けで目標の陸上自衛隊第四分遣隊隊長朝倉三等陸佐が軽機動車の後部座席に乗り込もうとするところを騎射する。
「往生せいや!!」
肩を射抜かれた朝倉三佐の部下達が離脱しようとするセルロイを銃撃で蜂の巣に変える。
「隊長!?」
「大丈夫だ。肩に刺さったがこれくらいなら・・・」
「大丈夫だ。肩に刺さったがこれくらいなら・・・」
だが朝倉三佐は青い顔をして口から泡を吹いて倒れる。
「これは・・・毒か!?救急車だ、救急車を呼べ!!」
慌てる隊員達を尻目に見届け役の男は人ゴミの雑踏に紛れ込んで消えた。
大陸中央部
旧天領トーヴェ
第5分遣隊分屯地
旧天領トーヴェ
第5分遣隊分屯地
第5分遣隊は各分屯地の中でも最小で僅かに50名しかいない。
分屯地も小規模であるがT-72戦車、2К22ツングースカ自走式対空砲、2S19ムスタ-S 152mm自走榴弾砲などが1つずつ格納庫に鎮座している。
専門の隊員も足りないので普通科から人数を借りて教育して運用したりしている。
現在、この分屯地には10名の隊員しかいない。
鉱山、居住区の警備、市街地の巡回、訓練中などで4個分隊が留守にしているのだ。
分屯地も小規模であるがT-72戦車、2К22ツングースカ自走式対空砲、2S19ムスタ-S 152mm自走榴弾砲などが1つずつ格納庫に鎮座している。
専門の隊員も足りないので普通科から人数を借りて教育して運用したりしている。
現在、この分屯地には10名の隊員しかいない。
鉱山、居住区の警備、市街地の巡回、訓練中などで4個分隊が留守にしているのだ。
「先生、よろしくお願いします。」
「オウ、マカセロ」
「オウ、マカセロ」
分屯地の営門で警衛任務にあたっていた加藤二等陸士は信じられない者が街中からこちらに歩いてくるのを目撃する。
身長210センチほど、角の生えた兜からはタテガミを靡かせている。
肩鎧には一角馬の頭部を模した金属で造形されている。
鎧は蹄を模したデザインで全身鎧だ。
ベルトも蹄の形の紋章のバックルとなっている。
腰鎧も装着して、分厚い金属の盾と巨大なバスターソード。
それなりに強そうな騎士に見える。
問題は顔が馬だったことだ。
身長210センチほど、角の生えた兜からはタテガミを靡かせている。
肩鎧には一角馬の頭部を模した金属で造形されている。
鎧は蹄を模したデザインで全身鎧だ。
ベルトも蹄の形の紋章のバックルとなっている。
腰鎧も装着して、分厚い金属の盾と巨大なバスターソード。
それなりに強そうな騎士に見える。
問題は顔が馬だったことだ。
「獣人?」
疑問を口にしたところで、巨大な剣で脇から凪ぎ払われた。
馬の騎士は剣を見て不思議そうな顔をしている。
剣で斬り裂くつもりがケプラー繊維の防弾・防刃ベストがそれを防いだのだ。
馬の騎士は大して力は込めていなかったのだが、衝撃で五メートルは飛ばされた加藤はあばら骨が折れて気を失っている。
防刃ベストも穴だらけでもはや使い物にならない。
飛ばされていく加藤を警衛所から目撃した宮崎陸士長は即座に分屯地に鳴り響く警報のボタンを押す。
これで現在分屯地にいない部隊にも連絡がいく。
同時に受付業務にあたっていた前川一等陸曹が机の引き出しから、拳銃を取り出して受付ブースから発砲する。
馬の騎士よろめきこそしたが、盾や鎧に拳銃弾の穴を開けただけだ。
宮崎陸士長も壁に立て掛けているAK-74を窓口から発砲する。
馬の騎士は剣を見て不思議そうな顔をしている。
剣で斬り裂くつもりがケプラー繊維の防弾・防刃ベストがそれを防いだのだ。
馬の騎士は大して力は込めていなかったのだが、衝撃で五メートルは飛ばされた加藤はあばら骨が折れて気を失っている。
防刃ベストも穴だらけでもはや使い物にならない。
飛ばされていく加藤を警衛所から目撃した宮崎陸士長は即座に分屯地に鳴り響く警報のボタンを押す。
これで現在分屯地にいない部隊にも連絡がいく。
同時に受付業務にあたっていた前川一等陸曹が机の引き出しから、拳銃を取り出して受付ブースから発砲する。
馬の騎士よろめきこそしたが、盾や鎧に拳銃弾の穴を開けただけだ。
宮崎陸士長も壁に立て掛けているAK-74を窓口から発砲する。
「馬鹿な効いてない?」
今は亡き帝国の重装甲騎士団のプレートメイルすら穴だらけに出来る拳銃で相手にダメージを与えられていない。
だが警報を聞いて隊舎から出てきた隊員が撃ったAK-74も加わると、衝撃で仰け反っていたが盾を構えられると途端に防がれてしまう。
そして、その太い足からの瞬発力で銃口を定めさせない。
さらに三人の隊員が建物から出て来る。
一人が銃撃しながら牽制し、二人が加藤を担架に積んで建物に引き返しながら後退する。
警衛所から出てきた前川一等陸曹は今更ながら相手を誰何する。
だが警報を聞いて隊舎から出てきた隊員が撃ったAK-74も加わると、衝撃で仰け反っていたが盾を構えられると途端に防がれてしまう。
そして、その太い足からの瞬発力で銃口を定めさせない。
さらに三人の隊員が建物から出て来る。
一人が銃撃しながら牽制し、二人が加藤を担架に積んで建物に引き返しながら後退する。
警衛所から出てきた前川一等陸曹は今更ながら相手を誰何する。
「貴様、何者だ!!何が目的だ!!」
「ダダノルロウノダバデアル。ベツニオヌシラニウラミハナイガ、イッショクヒトバンノオンギ二アズカリオヌシラノクビヲショモウスル。」
人間の言葉に慣れて無いのだろう。
聞き取りずらいがなんとなく意味は理解できた。
問題は相手の目的だ。
現在、戦えるのは残っているのは普通科の5名。
残りは通信科1名、医官2名、飛行科1名、負傷者1名。
重火器のほとんどが持ち出されて分屯地には残っていない。
だが簡単に首を獲らせるわけにはいかない。
新たに駆けつけた二人も警衛所の反対側から銃撃を浴びせる。
隊舎の1人も玄関から発砲して、3方向から防御を崩そうと攻め立てる。
だが自衛隊側の誤算は彼らの考える鎧甲冑はあくまで人間の騎士のものを想定していたことだ。
馬の騎士の鎧兜盾一式の重量は、人間の騎士の物の四倍の重量があり、その分装甲も分厚くなっている。
それらを着こなしてなお軽いフットワークでこちらに接近してくる。
聞き取りずらいがなんとなく意味は理解できた。
問題は相手の目的だ。
現在、戦えるのは残っているのは普通科の5名。
残りは通信科1名、医官2名、飛行科1名、負傷者1名。
重火器のほとんどが持ち出されて分屯地には残っていない。
だが簡単に首を獲らせるわけにはいかない。
新たに駆けつけた二人も警衛所の反対側から銃撃を浴びせる。
隊舎の1人も玄関から発砲して、3方向から防御を崩そうと攻め立てる。
だが自衛隊側の誤算は彼らの考える鎧甲冑はあくまで人間の騎士のものを想定していたことだ。
馬の騎士の鎧兜盾一式の重量は、人間の騎士の物の四倍の重量があり、その分装甲も分厚くなっている。
それらを着こなしてなお軽いフットワークでこちらに接近してくる。
遮蔽物も利用してきてこちらとの戦い方も理解している。
そして獣人特有の痛覚の鈍さが
多少のダメージを無視した戦いを繰り広げてくる。
銃撃を避けながら、隊舎の普通科隊員が壁に追い詰められていく。
隊員の持っていたAK-74が剣で破壊される。
そして獣人特有の痛覚の鈍さが
多少のダメージを無視した戦いを繰り広げてくる。
銃撃を避けながら、隊舎の普通科隊員が壁に追い詰められていく。
隊員の持っていたAK-74が剣で破壊される。
「マズヒトリメ。」
「舐めるな。」
「舐めるな。」
普通科隊員の首が斬り落とされる。
だが斬り落とされる寸前、防弾・防刃ベストのアタッチメントに装着していた手榴弾のピンを引き抜いていた。
だが斬り落とされる寸前、防弾・防刃ベストのアタッチメントに装着していた手榴弾のピンを引き抜いていた。
「サテツギハ・・・グホッ!?」
手榴弾の爆発に巻き込まれて、馬の騎士は爆風で転がってくる。
前川も宮崎もマカロフ PMの銃弾を浴びせまくる。
だが数発命中しただけで飛び退かれて
前川も宮崎もマカロフ PMの銃弾を浴びせまくる。
だが数発命中しただけで飛び退かれて
「ハッハハサスガニイマノハシヌカトオモッタゾ。ケッコウイタカッタナ。」
血塗れの馬の騎士が起き上がってくる。
鎧がかなり破壊されたのを見て剣を鞘に納める。
鎧がかなり破壊されたのを見て剣を鞘に納める。
「マアヒトリハヤッタシギリハハタシタ。」
天に向かって嘶くと、営門のゲートを潜って巨大な白馬が現れる。
この白馬も馬用の鎧が着せられている。
その白馬に颯爽と馬の騎士が乗り込む。
宮崎は後ろから銃弾を撃ち込もうとしたが、前川に止められる。
このまま戦えば死人が増えるだけである。
この白馬も馬用の鎧が着せられている。
その白馬に颯爽と馬の騎士が乗り込む。
宮崎は後ろから銃弾を撃ち込もうとしたが、前川に止められる。
このまま戦えば死人が増えるだけである。
「アアマダナノッテナカッタナ。ワガナハアウグストス。ソシテワガアイサイセレーヌデアル。ソレデハサラバダイカイノヘイシタチ。!!」
去っていく白馬の馬の騎士に隊員達は戦う気力も無くして立ち尽くして見送るしかなかった。
「な、なんだっだんだアイツは・・・」
大陸中央部
東西線沿線
70騎のケンタウルスが線路に石や斬り倒した木を積んでバリケードを築いている。
エリクソンの金の力と日本への反発を利用して、各領地の貴族達にケンタウルスの通過を黙認させた。
そして、『よさこい3号』は間もなくここを通過して停車を余儀無くされる。
トルイはここに一族の戦士全てをここに集めた。
東西線沿線
70騎のケンタウルスが線路に石や斬り倒した木を積んでバリケードを築いている。
エリクソンの金の力と日本への反発を利用して、各領地の貴族達にケンタウルスの通過を黙認させた。
そして、『よさこい3号』は間もなくここを通過して停車を余儀無くされる。
トルイはここに一族の戦士全てをここに集めた。
「男は首を斬れ、女は全部連れ帰る。マッキリーとトーヴェの日本軍は動けん。この機を逃すな!!」
『『『おおぉぉ!!!』』』
『『『おおぉぉ!!!』』』
機関車の汽笛の音が聞こえる。
バリケードに気がついてブレーキを架けている。
バリケードに気がついてブレーキを架けている。
「車両の両側から矢を射る。
連中はまだ何が起きてるか知らないはずだ。
女は殺すなよ、突撃!!」
連中はまだ何が起きてるか知らないはずだ。
女は殺すなよ、突撃!!」
半数に別れたケンタウルスは弓に矢をつがえながら駆け出した。
『よさこい3号』車内
浅井は斉藤達が持ち込んだ物を並べて呆れ返っていた。
鉄道公安官の二人もこれが何のか理解できなかったらしい。
浅井は斉藤達が持ち込んだ物を並べて呆れ返っていた。
鉄道公安官の二人もこれが何のか理解できなかったらしい。
「てっきりおもちゃかと・・・」
女性公安官の建川は困惑している。
実際の物を見て浅井が思ったのは模型か夏休みの自由研究である。
実際の物を見て浅井が思ったのは模型か夏休みの自由研究である。
「間違いなく使えるんだな?」
「使い捨てだがね。まあ、4発が限界だが。」
「使い捨てだがね。まあ、4発が限界だが。」
斉藤は自信満々だ。
サークルのメンバーが組み立ている。
手順の確認を取っていると、前方車両から公安主任の久田がやってくる。
サークルのメンバーが組み立ている。
手順の確認を取っていると、前方車両から公安主任の久田がやってくる。
「来ましたよ、ケンタウルスがいっぱい。マッキリーとトーヴェのテロと同様です。」
「安否メール通りだな。」
「安否メール通りだな。」
列車の乗員、乗客達はすでにテロの情報は伝わっていた。
各々が身を守る準備を始めている。
ヒルダが護身用のレイピアを抜いて宣言する。
各々が身を守る準備を始めている。
ヒルダが護身用のレイピアを抜いて宣言する。
「こちらも歓迎の準備は整いましてよ。」
「よし、戦える奴等を配置に付けろ。」
「よし、戦える奴等を配置に付けろ。」
王都ソフィア
第17普通科連隊戦闘団司令部
王都にて各分遣隊を派遣する基幹部隊である。
すでに半数もの隊員を分遣隊に派遣したが、戦力の半分は集中してこのソフィアに駐屯して、近隣の盗賊や帝国残党、モンスター退治を一手に引き受けている部隊でもある。
その司令部に次々と訃報が届けられる。
所用で留守にしていた連隊長碓井一等陸佐は幕僚達からの報告の数々にこめかみに青筋を立てている。
王都にて各分遣隊を派遣する基幹部隊である。
すでに半数もの隊員を分遣隊に派遣したが、戦力の半分は集中してこのソフィアに駐屯して、近隣の盗賊や帝国残党、モンスター退治を一手に引き受けている部隊でもある。
その司令部に次々と訃報が届けられる。
所用で留守にしていた連隊長碓井一等陸佐は幕僚達からの報告の数々にこめかみに青筋を立てている。
「マッキリーで朝倉三佐が殉職されたとの報告がありました。」
「トーヴェで大林陸曹長の戦死に続き、加藤二等陸士が内臓破裂で死亡したとの報告がありました。」
「トーヴェで大林陸曹長の戦死に続き、加藤二等陸士が内臓破裂で死亡したとの報告がありました。」
机の上に被害などの報告書が山と積まれている。
「どこもかしこも馬、馬か・・・鉄砲玉に出入り、列車強盗とは恐れ入る。最近、馬にケンカ売られるような事態はあったか?」
「南部で装甲列車がケンタウルスの略奪集団を攻撃した事例が二週間ほど前にありました。その報復ではないかと思います。」
「その件は総督府が役人送って、シルベール伯爵と交渉中だろ?交渉中に手を出して来やがったのか?あと鉄道公安本部から要請の件はどうなった。」
「マッキリーの連中が朝倉三佐の敵討ちだと、Mi-8に普通科1個小隊が乗り込み現地に向かっています。」
「南部で装甲列車がケンタウルスの略奪集団を攻撃した事例が二週間ほど前にありました。その報復ではないかと思います。」
「その件は総督府が役人送って、シルベール伯爵と交渉中だろ?交渉中に手を出して来やがったのか?あと鉄道公安本部から要請の件はどうなった。」
「マッキリーの連中が朝倉三佐の敵討ちだと、Mi-8に普通科1個小隊が乗り込み現地に向かっています。」
自分の留守中でも対応していた幕僚達に満足する。
「だかこの出入りの馬頭はなんだ?こんなのが今までノーマークだったのか?」
「その件に付きましては、王国外務省が総督府に取り次いで欲しいとの連絡がありました。あちらが何やら情報を持っているようです。」
「その件に付きましては、王国外務省が総督府に取り次いで欲しいとの連絡がありました。あちらが何やら情報を持っているようです。」
大陸東部
東西線沿線
東西線沿線
東西線、『よさこい3号』先頭車両は当然機関車である。
運転台には機関士と助手が交代要員も含めて四名が乗り込んでいた。
昔は三名で運用していたが失業者対策と労災の問題がそれを許さなかった。
機関士大沢は最初にバリケードを発見すると列車にブレーキを掛けて停車し、助手を車掌に知らせに行かせた。
運転台には機関士と助手が交代要員も含めて四名が乗り込んでいた。
昔は三名で運用していたが失業者対策と労災の問題がそれを許さなかった。
機関士大沢は最初にバリケードを発見すると列車にブレーキを掛けて停車し、助手を車掌に知らせに行かせた。
「まずいな司令車から銃を持って来い。」
二両目の炭水車の梯子を登って、三両目の司令車に向かう。
司令車には列車乗務員の待機室や通信室、食料や水の保管庫、武器庫、発電機が置かれている。
話を聞いた車掌の岡島は
司令車には列車乗務員の待機室や通信室、食料や水の保管庫、武器庫、発電機が置かれている。
話を聞いた車掌の岡島は
「鉄道公安本部に電話だ。」
もう1人の車掌平田が受話器を手に取る。
「こちら『よさこい3号』、大規模な襲撃を受ける可能性有り、線路上に石を積まれ進路を防がれた、救援を求む。襲撃者はケンタウルスが数十頭・・・頭だよな?数十人か・・・数十匹かな?」
「どっちだっていいさ。」
「どっちだっていいさ。」
平田は武器庫から猟銃を取り出している。
何れも散弾銃でシトリ525だ。
何れも散弾銃でシトリ525だ。
「四丁を機関車に2丁は我々が使う。森山くん達の2丁と後尾車両の建川さん、久田さんの分。」
銃を渡された車内販売員の女性、森山と川田にも銃が渡される。
「あの・・・やはり私達も?」
「訓練は受けてるだろ?お客様と自分の身の安全は守るんだ。」
「訓練は受けてるだろ?お客様と自分の身の安全は守るんだ。」
国鉄職員としての公務員の義務でもある。
機関車の運転台では機関助手達が炭水車の中や運転台の壁に身を潜めて手渡された銃に弾込めをしている。
機関車の運転台では機関助手達が炭水車の中や運転台の壁に身を潜めて手渡された銃に弾込めをしている。
「おやっさん・・・」
「情けない声を出すな。一時間もしないうちに鉄道公安本部や自衛隊から援軍が来る。それまで持ちこたえればいいだけだ。開通当初は山賊だの帝国残党だのゴブリンだのが襲ってきて蹴散らしてやったもんだ。」
「情けない声を出すな。一時間もしないうちに鉄道公安本部や自衛隊から援軍が来る。それまで持ちこたえればいいだけだ。開通当初は山賊だの帝国残党だのゴブリンだのが襲ってきて蹴散らしてやったもんだ。」
大沢の言葉に機関助手達が勇気付けられる。
「おやっさん来ました!!左右に別れて、弓をこちらに向けてる!!」
「奴等は密集している。狙いなんぞいらんから、通過する音が聞こえたら銃口だけ隙間から出して、とにかく外にぶっぱなせ!!体を壁から出すなよ?」
「奴等は密集している。狙いなんぞいらんから、通過する音が聞こえたら銃口だけ隙間から出して、とにかく外にぶっぱなせ!!体を壁から出すなよ?」
大量の蹄の音が接近を告げている。
左右に2丁ずつ散弾銃。
ケンタウルスの集団が最初の一頭が炭水車に到達すると一斉に発砲された。
至近距離から互いに効果範囲がカバーしあうように放たれたため、ケンタウルス四頭が転倒、3頭が死亡し、1頭が後続のケンタウルス達に踏まれ死亡した。
攻撃されたことを悟ったケンタウルス達は一斉に上半身を後ろに捻り、前進しながら騎射を敢行してくる。
左右に2丁ずつ散弾銃。
ケンタウルスの集団が最初の一頭が炭水車に到達すると一斉に発砲された。
至近距離から互いに効果範囲がカバーしあうように放たれたため、ケンタウルス四頭が転倒、3頭が死亡し、1頭が後続のケンタウルス達に踏まれ死亡した。
攻撃されたことを悟ったケンタウルス達は一斉に上半身を後ろに捻り、前進しながら騎射を敢行してくる。
「おやっさあ~ん!?」
「馬鹿、頭あげんじゃねえ。」
「馬鹿、頭あげんじゃねえ。」
立ち上がろうとした助手の服をつかみ引きずり倒す。
トルイは倒された戦士達が起き上がらないことを憂慮を覚える。
だがまずは前進を優先させた。
トルイは倒された戦士達が起き上がらないことを憂慮を覚える。
だがまずは前進を優先させた。
「四騎ずつ残して前進だ!!」
司令車両では平田と岡島が銃眼から銃を射っていた。
司令車両はモンスターや武装勢力の襲撃に備えて窓はなく、壁は鉄板を貼り付けてある。
外の状況は外部カメラで確認できる。
狙いは外部カメラから確かめたので、機関車で不意打ちを受けたトルイ達は少し距離を取っていたが、右側で3頭、左側で2頭が撃ち殺される。
司令車両はモンスターや武装勢力の襲撃に備えて窓はなく、壁は鉄板を貼り付けてある。
外の状況は外部カメラで確認できる。
狙いは外部カメラから確かめたので、機関車で不意打ちを受けたトルイ達は少し距離を取っていたが、右側で3頭、左側で2頭が撃ち殺される。
「あの穴に向けて一斉射!!」
ケンタウルスは何れも弓の名人である。
鉄張りしてある司令車両とはいえ、一ヶ所に20本もの矢がほぼ同時にに命中すれば、2、3本は壁に刺さって車掌達を驚かす。
平田は驚いて銃から手を離して後ろに転がっている。
鉄張りしてある司令車両とはいえ、一ヶ所に20本もの矢がほぼ同時にに命中すれば、2、3本は壁に刺さって車掌達を驚かす。
平田は驚いて銃から手を離して後ろに転がっている。
「だ、大丈夫か。」
「ああ、当たってはいない・・・すまない。」
「ああ、当たってはいない・・・すまない。」
だがケンタウルス達の武器は弓矢だけではない。
「やれ。」
左右から3頭ずつが紐に球形の物体をくくりつけて投擲してくる。
車両に当たると同時に爆発する。
「爆弾!?」
車両に当たると同時に爆発する。
「爆弾!?」
「馬鹿な、そんな物が使えるのか?」
たが司令車両には穴は空いてない。
外側に幾つか燃えてる部分はあるが極僅かな損害だ。
だが銃眼や矢で開けられた穴から幾つかの物体が侵入し、壁や床を破壊した。
迂闊に壁際に近付けなくなった。
外側に幾つか燃えてる部分はあるが極僅かな損害だ。
だが銃眼や矢で開けられた穴から幾つかの物体が侵入し、壁や床を破壊した。
迂闊に壁際に近付けなくなった。
「外部カメラも破壊されたか・・・」
傷ついた穴にはケンタウルス達の馬力とスピードで威力を増した破城槌が両側から叩きつけら穴が拡大されていく。
最後尾車両
望遠鏡で前方車両の戦闘を覗き見てた斉藤は眉を潜める。
望遠鏡で前方車両の戦闘を覗き見てた斉藤は眉を潜める。
「まずいですな。」
「そうですの?」
「そうですの?」
望遠鏡をヒルダに渡すとサークルのメンバーを集める。
「諸君、あれはてつはうだ。」
「てつはう?」
「てつはう?」
ヒルダも混じって聞いてくる。
「「てつはう」は鉄や陶器の容器に火薬を詰め込み、導火線で火をつけて相手に投げつける擲弾です。巨大な爆裂音をたてて爆発するので、人馬がその音に驚いたと記録されていますがそれほどの破壊力はありません。」
「何が不味いの?」
「ネタが被りました。」
「何が不味いの?」
「ネタが被りました。」
斉藤とヒルダのまわりでもサークルのメンバーが座席を車両から取り外して即席の砲座を作っていた。
座席を2つ重ね合わせて紐で縛る。
問題は砲身だ。
だがそこに和紙を塗り作り上げた紙の筒を重ねた座席の真ん中にセットする。
すでに内部に火薬と導火線は仕込んでいる。
座席を2つ重ね合わせて紐で縛る。
問題は砲身だ。
だがそこに和紙を塗り作り上げた紙の筒を重ねた座席の真ん中にセットする。
すでに内部に火薬と導火線は仕込んでいる。
「ネタは被ってるからもう一工夫。やれ!!」
「座席、後で弁償が必要かしら?」
「座席、後で弁償が必要かしら?」
左右に2門ずつ。
座席の砲台は、紙砲の発射の衝撃を可能な限り固定して狙いをぶれさせないためだ。
紙砲の中に装填された日本版てつはうが四発発射される。
てつはうはこちらに向かってくるケンタウルスの集団内部の足元にそれぞれ着弾する。
座席の砲台は、紙砲の発射の衝撃を可能な限り固定して狙いをぶれさせないためだ。
紙砲の中に装填された日本版てつはうが四発発射される。
てつはうはこちらに向かってくるケンタウルスの集団内部の足元にそれぞれ着弾する。
「鎌倉武士なら馬がケガした程度かも知れないが、連中は人馬一体。さて、どれほど効果があるか・・・」
斉藤が望遠鏡で確認すると、負傷して倒れたケンタウルスが八頭。
反対側も六頭が負傷して倒れている。
反対側も六頭が負傷して倒れている。
「死んでないみたいね。」
「動けなくなれば上等です。」
「動けなくなれば上等です。」
だが爆煙の中から10頭ずつのケンタウルスがそれぞれから飛び出してくる。
機関車や司令室への攻撃していたケンタウルスは留まっている。
機関車や司令室への攻撃していたケンタウルスは留まっている。
「怒らせたみたいですから客車に立て籠りますよ。」
「紙砲はいいの?」
「どうせ試作品で一発しか撃てません。さっさと逃げますよ!!」
「紙砲はいいの?」
「どうせ試作品で一発しか撃てません。さっさと逃げますよ!!」
紙砲を補強していた座席はボロボロになっている。
紙砲がどうなったかは見るまでも無いだろう。
大急ぎで斉藤やヒルダ、サークルのメンバーは客車に乗り込んでくる。
紙砲がどうなったかは見るまでも無いだろう。
大急ぎで斉藤やヒルダ、サークルのメンバーは客車に乗り込んでくる。
「予定通りこっちに引き付けたから、浅井様は辿り着けたかしら?」
四号車
浅井二尉は車両内部を姿勢を低くして移動し、司令車まで後一両のところまで来ていた。
持っている武器はマカロフ拳銃一丁と途中で取り外した座席。
四号車の屋根に連結部からよじ登る。
司令車は先程から爆発にさらされていたが意外に破損は少ない。
だが破城槌やてつはうが交互に叩きつけられて、穴が空くのは時間の問題だろう。
屋根の上から先ず右側のケンタウルスを始末することに決めた。
ケンタウルスの腰に紐で括りつけられたてつはうに、9mmマカロフ弾を三発命中させてあたり爆発させる。
そのまま破城槌を持っていた四頭に銃口を向けて発砲する。
重量物を持っていたケンタウルス達は回避行動も取れずに3頭を射殺、1頭が地面に倒れ伏す。
予備のマガジンに交換して、てつはうを持っていた2頭も始末した。
持っている武器はマカロフ拳銃一丁と途中で取り外した座席。
四号車の屋根に連結部からよじ登る。
司令車は先程から爆発にさらされていたが意外に破損は少ない。
だが破城槌やてつはうが交互に叩きつけられて、穴が空くのは時間の問題だろう。
屋根の上から先ず右側のケンタウルスを始末することに決めた。
ケンタウルスの腰に紐で括りつけられたてつはうに、9mmマカロフ弾を三発命中させてあたり爆発させる。
そのまま破城槌を持っていた四頭に銃口を向けて発砲する。
重量物を持っていたケンタウルス達は回避行動も取れずに3頭を射殺、1頭が地面に倒れ伏す。
予備のマガジンに交換して、てつはうを持っていた2頭も始末した。
「残り6発・・・」
浅井の存在に気がついた左側のケンタウルス達が矢やてつはうを放ってくるが、屋根まで持ち込んだ座席を盾に移動し、司令車両の屋根に飛び付く。
だが幾つかのてつはうに仕込まれていた土器の破片が、座席の隙間から背中や足に当たる。
だが幾つかのてつはうに仕込まれていた土器の破片が、座席の隙間から背中や足に当たる。
「痛・・・」
幸い刺さりはしなかったようだ。
叫びたいのを我慢して、手近にいた破城槌を持ったケンタウルス2頭に残りの弾丸を全部叩き込んで射殺する。
半分は八つ当たりだ。
槍に持ち変えたケンタウルスが屋根の上で転がる浅井を狙うが、屋根の扉を開いた平田が散弾銃で槍持ちを射殺し、岡島が浅井を車内に引き摺って中に入れる。
叫びたいのを我慢して、手近にいた破城槌を持ったケンタウルス2頭に残りの弾丸を全部叩き込んで射殺する。
半分は八つ当たりだ。
槍に持ち変えたケンタウルスが屋根の上で転がる浅井を狙うが、屋根の扉を開いた平田が散弾銃で槍持ちを射殺し、岡島が浅井を車内に引き摺って中に入れる。
「状況は?」
ようやく一息付けるが休む暇はない。
「機関車両に8頭にこちらは四頭、最後尾車両に25頭までは確認できてます。」
司令車両には各車両からの内線から報告が来ている。
「こちらは悪い知らせだ。拳銃の弾がもう無い。」
岡島と平田は顔を見合せて苦笑する。
「ご安心をこちらも弾切れです。でも預かってたものがありましたよね?」
「ああ、そいつを取り来た。」
「ああ、そいつを取り来た。」
機関車両
「おやっさん弾切れです」
「俺も・・・」
「自分もです・・・」
「おやっさん弾切れです」
「俺も・・・」
「自分もです・・・」
機関助手達は猟銃を置いて、スコップを持つ。
「馬鹿野郎、撃ちすぎだ。」
だが大沢ももう二発しか持ち合わせていない。
まだ、この機関車両を攻撃してくるケンタウルスは7頭もいる。
まだ、この機関車両を攻撃してくるケンタウルスは7頭もいる。
だが司令車両の屋根から再び飛び出した浅井の手には、出発前に鉄道公安官に渡して預けていたAK-74が握られていた。
司令車から炭水車に移り、一頭ずつ撃ち殺していく。
司令車から炭水車に移り、一頭ずつ撃ち殺していく。
「大丈夫ですか?」
「若ぇのを一人、死なせちまったよ・・・」
「若ぇのを一人、死なせちまったよ・・・」
大沢が矢が数本刺さった機関助手の一人を床に寝かせて、他の二人は泣きはらした目をしている。
「おまえさん自衛隊だな、援軍かい?」
「自衛隊だが乗客です。」
「そうか、まだ続くんだな。」
「自衛隊だが乗客です。」
「そうか、まだ続くんだな。」
車掌の二人もこちらに合流してくる。
「お前ら全員、シャベルとツルハシを持て!!」
「おやっさん、さすがにそれは無茶だ!!」
「おやっさん、さすがにそれは無茶だ!!」
平田が大沢を止めにはいる。
銃弾が残っているのは浅井だけだ。
ケンタウルスにシャベルやツルハシで勝てるとは思えなかった。
銃弾が残っているのは浅井だけだ。
ケンタウルスにシャベルやツルハシで勝てるとは思えなかった。
「勘違いするな、俺達の相手はあれだ!!」
大沢が指を指した方向は線路の先、石や木が積まれたバリケードがそこにあった。
「機関車さえ動けば馬なんざ引き離せる。援軍の到着なんか待ってられねぇ!!」
途端にシャベルを持って駆け出し、助手達もそれに続く。
「浅井さん、我々も行きます。乗客を前の車両に誘導して下さい。」
「わかりました。なるべく連中から見えないバリケードの向こう側から崩してください。ああ、そうだ。救援の連絡から何分たちました?」
「25分。」
「わかりました。なるべく連中から見えないバリケードの向こう側から崩してください。ああ、そうだ。救援の連絡から何分たちました?」
「25分。」
車掌達と浅井も反対方向に走り出す。
ケンタウルス達は途中の車両のドアや窓を一つ一つ破壊していたが中には侵入出来ないでいた。
「狭ぇ・・・」
外部の扉を破壊して内部に入ろうとしたが、下半身の馬の巨体では壁に体を擦りながら進むことになる。
天井も低く、弓を縦にも横にも構えられない。
客室に通じる内部扉はさらに小さく、大柄なケンタウルスでは嵌まって動けなくなる者が続出した。
窓ガラスも強化ガラスで、頑丈でどうにか割っても破片で手を切る者がやはり続出した。
全ての車両がブラインドを締めていた為にどの車両に乗客がいるのかを確かめる必要があったのだ。最後尾車両に一度は到達したが、もう一度分散して探索に当たっている。
天井も低く、弓を縦にも横にも構えられない。
客室に通じる内部扉はさらに小さく、大柄なケンタウルスでは嵌まって動けなくなる者が続出した。
窓ガラスも強化ガラスで、頑丈でどうにか割っても破片で手を切る者がやはり続出した。
全ての車両がブラインドを締めていた為にどの車両に乗客がいるのかを確かめる必要があったのだ。最後尾車両に一度は到達したが、もう一度分散して探索に当たっている。
「くそ、ラチが明かないな。」
族長トルイは予想以上の被害と時間のかかりように苛立ちを見せていた。
「族長!!一番後ろの扉からなら直接中に入れるし、破城槌が使えるぞ。」
「でかした!!さっさと破壊して、矢を叩き込め!!」
「でかした!!さっさと破壊して、矢を叩き込め!!」
乗客達は最後尾にある10号車両を放棄して、九号車両に移動していた。
ケンタウルス達に見付からないように身を屈めてである。
10号車両の後尾連結部入り口は外部に剥き出しになっていたので破城槌で破壊された。
ケンタウルス達は麻痺毒を塗った矢を入り口から放つ。
応戦が無いのを確認すると、客室に侵入に成功する。
だがボックスシート、4人掛けの向かい合わせ式の座席の通路はやはりケンタウルス達には狭かった。
それでも一頭ずつ中に入り、通路を進むが、反対側のドアが開いた瞬間、鉄道公安官の建川と久田が猟銃で撃ってきた。
逃げ場の無い先頭のケンタウルスは体に穴を開けて絶命し、後続のケンタウルスの進路を塞ぐ。
逃げようとしたケンタウルスは座席に阻まれて方向転換が出来ない。
ケンタウルス達に見付からないように身を屈めてである。
10号車両の後尾連結部入り口は外部に剥き出しになっていたので破城槌で破壊された。
ケンタウルス達は麻痺毒を塗った矢を入り口から放つ。
応戦が無いのを確認すると、客室に侵入に成功する。
だがボックスシート、4人掛けの向かい合わせ式の座席の通路はやはりケンタウルス達には狭かった。
それでも一頭ずつ中に入り、通路を進むが、反対側のドアが開いた瞬間、鉄道公安官の建川と久田が猟銃で撃ってきた。
逃げ場の無い先頭のケンタウルスは体に穴を開けて絶命し、後続のケンタウルスの進路を塞ぐ。
逃げようとしたケンタウルスは座席に阻まれて方向転換が出来ない。
「だめだ族長、狭すぎて狙い撃ちされてる。こっちは不利だ。」
「ふん、ならばこの車両には乗客はいないのだな。応戦してる連中を引き付けておけ。」
「如何なさるので?」
「まどろっこしいことは止めだ。壁を直接ぶっ壊す。まずはてつはうを1個ずつ車両に放り込んで連中の位置を確認しろ。その車両にロープを窓枠にくくりつけて引っ張る。端を破城槌をぶつけて剥がしやすくしろ。」
「ふん、ならばこの車両には乗客はいないのだな。応戦してる連中を引き付けておけ。」
「如何なさるので?」
「まどろっこしいことは止めだ。壁を直接ぶっ壊す。まずはてつはうを1個ずつ車両に放り込んで連中の位置を確認しろ。その車両にロープを窓枠にくくりつけて引っ張る。端を破城槌をぶつけて剥がしやすくしろ。」
大陸南部
シルベール伯爵領
迎賓館
シルベール伯爵領
迎賓館
シルベール伯爵家は長年の間、ケンタウルス自治伯領と帝国の仲介役としての役割を担ってきた。
帝国が滅びた後も、王国と日本国大陸総督府の代理人として彼等との仲介を任せられている。
その為に領内に迎賓館を設け、日本の大陸総督府の外務局長杉村をはじめとする代表団とケンタウルスの長老会議代表団との会談の場を設けていた。
帝国が滅びた後も、王国と日本国大陸総督府の代理人として彼等との仲介を任せられている。
その為に領内に迎賓館を設け、日本の大陸総督府の外務局長杉村をはじめとする代表団とケンタウルスの長老会議代表団との会談の場を設けていた。
「日本国が我が種族の若衆30名を一方的に虐殺したのは甚だ遺憾です。謝罪と賠償を要求したい。」
「ケンタウルス若衆は日本国管理地域である鉄道線路沿線で略奪行為を働いていた。これは明らかに犯罪である。当方は犯罪行為に対し、実力を行使したに過ぎない。要求を拒否する!!」
「帝国並びにそれを継承した王国では、ケンタウルス自治伯領内での人族に対する治外法権が認められている。線路はともかく事件の起きた地域の沿線の街道は自治伯領の境界線に接している。そして、確実に十数頭は自治伯領内で殺害されている。これは法に反する行為ではないかね?」
南北線沿線の『ケンタウルス若衆によるキャラバン襲撃並びに装甲列車による撃滅』事件は、地域の名前を取って、ジェノア事件と呼称されることとなった。
当初は脳筋のケンタウルスなど力を背景にすれば容易く主導権を握れると思っていた。
総督府外務局は法を背景に弁護士の如く抵抗してくるケンタウルス長老会議代表団に意外な苦戦を味わうことになる。
なぜこんな会談が行われているのか?
傭兵やケンタウルスに多数の死者が出ていることからうやむやにするのは良くないと王国側から責任の所在を求める要請があったからだ。
総督府側は拒否もできたのたが、会談を受けたのはケンタウルス族に対する自治に対する介入が出来る機会と侮っていたことが大きい。
休憩を挟むこととなり、外務局員達は用意された迎賓館の部屋で予想外の苦戦に憤る。
当初は脳筋のケンタウルスなど力を背景にすれば容易く主導権を握れると思っていた。
総督府外務局は法を背景に弁護士の如く抵抗してくるケンタウルス長老会議代表団に意外な苦戦を味わうことになる。
なぜこんな会談が行われているのか?
傭兵やケンタウルスに多数の死者が出ていることからうやむやにするのは良くないと王国側から責任の所在を求める要請があったからだ。
総督府側は拒否もできたのたが、会談を受けたのはケンタウルス族に対する自治に対する介入が出来る機会と侮っていたことが大きい。
休憩を挟むこととなり、外務局員達は用意された迎賓館の部屋で予想外の苦戦に憤る。
「なんなんだあいつらは?我々が想定していたイメージとはだいぶ違うぞ。」
「ケンタウルス族は粗野で野蛮、そう考えてましたな?だが考えてもみて下さい。彼等は帝国から自治権を勝ち取った種族ですぞ。武力だけなら帝国は彼等の自治権など認めなかったでしょう。」
「ケンタウルス族は粗野で野蛮、そう考えてましたな?だが考えてもみて下さい。彼等は帝国から自治権を勝ち取った種族ですぞ。武力だけなら帝国は彼等の自治権など認めなかったでしょう。」
シルベール伯爵は仲介を担うが別に中立というわけではない。
伯爵の領地は年貢の他にケンタウルスと商人による交易に対する権利を認める運上金によって莫大な利益を上げて成り立っている。
伯爵の領地は年貢の他にケンタウルスと商人による交易に対する権利を認める運上金によって莫大な利益を上げて成り立っている。
「主な商品は傭兵、狩猟により得られる肉や毛皮、自治領特有の果実といった物です。
他にも医薬品や音楽を初めとする美術品、工芸品。
つまり野蛮な風俗とは別の文化的な側面があります。」
他にも医薬品や音楽を初めとする美術品、工芸品。
つまり野蛮な風俗とは別の文化的な側面があります。」
官僚達はシルベール伯爵の話に聞き入っている。
「ケンタウルスは性欲の強い種族ですが、腹上死は彼等の死因の上位にあたります。」
全員複雑な顔となった。
女性の官僚もこの場にいるのだから勘弁して欲しい話題である。
女性の官僚もこの場にいるのだから勘弁して欲しい話題である。
「ですが老齢に達すると性欲が霧散し、突然美術や医術、哲学に魔術、政治といったこと学問的なことに対する欲求が起こり極めようとします。長老と呼ばれる彼等がそうです。彼等は大族長や族長の諮問を担当する賢者達であり相談役なのです。」
「先にそれを話して欲しかった。」
「勘違いなされては困りますが、私は別に貴殿等の味方というわけでわないのですよ?寧ろ貴殿等が私の権益を犯さないか憂慮している。」
「先にそれを話して欲しかった。」
「勘違いなされては困りますが、私は別に貴殿等の味方というわけでわないのですよ?寧ろ貴殿等が私の権益を犯さないか憂慮している。」
シルベール伯爵は自分の知識や経験が交渉には不可欠だと、自分達に売り込んでいるのだと杉村は悟る。
外務局員達は深刻な顔で対策を考えている。
外務局員達は深刻な顔で対策を考えている。
その中若手の局員が思い詰めたように呟く。
「性欲が抜けて賢者に?・・・賢者モードか・・・」
杉村はその若手に書類を叩きつけた。
「つまらんことを言うな。」
「賢者モードとは何ですか?」
「賢者モードとは何ですか?」
シルベール伯爵も真面目な顔で聞いてくる。
だが総督府と連絡を取っていた局員がパソコンを通じてプリントアウトしてきた書類を杉村に見せると彼の顔は豹変し、まわりの局員達も書類を見せられ雰囲気が変わっていく。
シルベール伯爵も場の空気が変わったことを悟る。
まるで示しあわせたかのように沈黙する外務局員達を不気味に思いつつ会議が再開される。
だが総督府と連絡を取っていた局員がパソコンを通じてプリントアウトしてきた書類を杉村に見せると彼の顔は豹変し、まわりの局員達も書類を見せられ雰囲気が変わっていく。
シルベール伯爵も場の空気が変わったことを悟る。
まるで示しあわせたかのように沈黙する外務局員達を不気味に思いつつ会議が再開される。
「話の続きの前に現在起こっている事態を説明しましょう。まず我々は今回の会談を打ち切る準備があります。」
突然の総督府外務局の豹変ぶりに長老達も緊張を新たにしていた。
大陸東部
東西線『よさこい3号』
東西線『よさこい3号』
機関車から少し離れた場所、ケンタウルス達が築いたバリケードを、機関士大沢達が必死に突き崩していた。
「壁の外側は最後だ。連中に気がついたら台無しだからな。」
「おやっさん、外側だけなら機関車で強引に突破できないかな?」
「おやっさん、外側だけなら機関車で強引に突破できないかな?」
車掌の平田の提案に大沢は考え込む。
だがシャベルを持つ手は休めていない。
列車を傷付けない為と前方が確認出来ないから今回は停車させた。
しかし、バリケードをある程度排除し、状況が確認出来た今なら出来ると言える。
だがシャベルを持つ手は休めていない。
列車を傷付けない為と前方が確認出来ないから今回は停車させた。
しかし、バリケードをある程度排除し、状況が確認出来た今なら出来ると言える。
「やれるな・・・よし、お前らは機関車を動かす為に戻れ。俺らはもう少しバリケードを薄くする。準備が出来たら俺らも戻る。」
機関助手達を機関車に戻らせ、車掌達とバリケードの撤去作業を続ける。
九号車両の壁が破壊され、鉄道公安官の二人と浅井は八号車両に移動したが、ここの壁も破壊され始めた。
浅井のAKも久田と建川の猟銃もすでに弾はない。
浅井のAKも久田と建川の猟銃もすでに弾はない。
「さて、白兵戦か。二人は下がっててくれ。」
「いえ、もう少しお付き合いしますよ。」
「いえ、もう少しお付き合いしますよ。」
浅井はナイフを鉄道公安官二人は鉈を構える。
刃渡りはどう見ても浅井のナイフよりでかい。
刃渡りはどう見ても浅井のナイフよりでかい。
「なんでそんな物が列車にあるんだ?ナイフと交換してくれ。」
「倒木が線路にあった時の為です。後は・・・刺又が二本有ります。」
「倒木が線路にあった時の為です。後は・・・刺又が二本有ります。」
そこにヒルダと斉藤達もやってくる。
「連中の弓矢を三セットばかり奪いました。扱ったことのあるのが姫様だけなので・・・」
「あら、私も使えるわよ。」
「あら、私も使えるわよ。」
乗客の中から恰幅のよい主婦が名乗りを上げる。
「多少、ブランクがあるけどJK時代は弓道部だったから。和弓だから勝手が違うかもだけど、心得がない人よりはマシでしょ?」
JKと言われて浅井、斉藤、久田が顔を見合わせるがヒルダが弓を主婦の市原に渡す。
狭い通路で使うのだから期待は出来る。
狭い通路で使うのだから期待は出来る。
「てつはうもまだ2個あります。直接、投擲する必要がありますが。」
色々とツッコミたいところがあったが、てつはうは土器で出来ているし火薬自体はすでに大陸でも流通しているので大陸技術流出法には違反していない。
「乗客の中に七人ばかり冒険者をしている日本人もいます。今は貨物車から彼等の武器を持ち出させています。日本刀や薙刀とか持ってきてましたね。」
転移から九年、大陸進出してくると六年も経過すると色んな日本人が出てくる。
「前方車両のドアを守らせてくれ。乗客の移動は勘づかれないように頼む。」
「浅井さん壁が破られた!!連中が入ってくる。」
「八号車両客室を放棄!!鍵を掛けて、七号車両で抵抗線を作るぞ。」
「浅井さん壁が破られた!!連中が入ってくる。」
「八号車両客室を放棄!!鍵を掛けて、七号車両で抵抗線を作るぞ。」
通路ならケンタウルスも自由に動けずこちらが有利だ。
腕時計で時間を確認する。
腕時計で時間を確認する。
「通報から45分・・・」
族長トルイは些か焦っていた。
連れてきた兵は自分も含めて70騎ばかり、既に戦死が18騎、負傷して戦えないのが16騎。
戦でもないのに半数がやられたことになる。
連れてきた兵は自分も含めて70騎ばかり、既に戦死が18騎、負傷して戦えないのが16騎。
戦でもないのに半数がやられたことになる。
「大損害だ。割には合わん・・・」
「族長、もう退くべきではないか?今なら近くの村でも襲って首をとって日本人ということにしておけば面目は立つ。」
「族長、もう退くべきではないか?今なら近くの村でも襲って首をとって日本人ということにしておけば面目は立つ。」
顔は焼いとけば問題はない。
女はその場限りになるが、事が済めば口を封じればいい。
日本人どもにも一矢を報いた。
女はその場限りになるが、事が済めば口を封じればいい。
日本人どもにも一矢を報いた。
「よし、退くか。角笛を」
言い掛けたところで先頭の機関車が煙突から煙を吹き出し、下方からは水蒸気を噴出させ始めた。
バリケードからは数人の人間が機関車に駆け出している。
事態が理解できないトルイだが、列車がゆっくりとだが動き出すと失敗を悟る。
バリケードからは数人の人間が機関車に駆け出している。
事態が理解できないトルイだが、列車がゆっくりとだが動き出すと失敗を悟る。
「連中逃げ出す気だ。いかん、早く角笛を吹け!!」
このままでは兵達が列車に追撃したまま付いて行ってしまう。
だが撤収の角笛は警笛にかき消される。
25騎ものケンタウルスが動き出す列車を追撃のために駆け出す。
列車の内部には5頭のケンタウルスが乗り込んだままだ。
だが撤収の角笛は警笛にかき消される。
25騎ものケンタウルスが動き出す列車を追撃のために駆け出す。
列車の内部には5頭のケンタウルスが乗り込んだままだ。
「つ、連れ戻せ!!」
7号車両では突撃してくるケンタウルスを、久田と斉藤が刺又二本で押し止める。
狭い通路で走れないケンタウルスなら何とか押さえ込める。
座席の陰から浅井が鉈を振り回してるので勢いを殺したのも大きい。
市原とヒルダが弓でケンタウルスを射ると、後続のケンタウルスが前進できなくなる。
たがそこからケンタウルス達が矢を放ち久田に二本が刺さる。
狭い通路で走れないケンタウルスなら何とか押さえ込める。
座席の陰から浅井が鉈を振り回してるので勢いを殺したのも大きい。
市原とヒルダが弓でケンタウルスを射ると、後続のケンタウルスが前進できなくなる。
たがそこからケンタウルス達が矢を放ち久田に二本が刺さる。
「久田さん!!」
建川が久田を引きずりながら七号車両に移動しようとする。
だが久田が口から血と泡を吹き出している。
痺れる体で手だけ動かして、全員に六号車両に移動するよう指差す。
次にてつはうを指差した。
浅井達が六号車両に移動すると、サークルのメンバーがてつはうの導火線に火を着けて、七号車両に放り込んで七号車両のドアと六号車両のドアを閉める。
爆発音とともにドアが揺れる。
だがすぐにケンタウルスの姿がドアの窓から見える。
顔は血まみれだ。
だが久田が口から血と泡を吹き出している。
痺れる体で手だけ動かして、全員に六号車両に移動するよう指差す。
次にてつはうを指差した。
浅井達が六号車両に移動すると、サークルのメンバーがてつはうの導火線に火を着けて、七号車両に放り込んで七号車両のドアと六号車両のドアを閉める。
爆発音とともにドアが揺れる。
だがすぐにケンタウルスの姿がドアの窓から見える。
顔は血まみれだ。
「久田さんが・・・」
泣き顔の建川が敬礼しているので、浅井もそれに倣う。
「五号車両からは乗客が避難しているのでここらで食い止めたい。」
車掌の平田がシャベルを持ってやってくる。
「車両を切り離しましょう。」
「走行中に出来るんですか?」
「本来は配線やブレーキ管を外さないといけないのですが時間が無いから強引に切り離します。まずは連結機を切り離してから一つ一つ鉈で斬ります。」
「走行中に出来るんですか?」
「本来は配線やブレーキ管を外さないといけないのですが時間が無いから強引に切り離します。まずは連結機を切り離してから一つ一つ鉈で斬ります。」
平田が作業に入るが、岡島の声が車内放送で鳴り響く。
「バリケードに突っ込みます。何かに掴まりながら頭を守ってください!!」
全員が座席に捕まると何かに衝突したような衝撃が車内を揺るがしといく。
機関車
大沢達を乗せた機関車はゆっくりと加速を続け走り始める。
可能な限りに勢いを付けて、バリケードを吹っ飛ばして突破しないといけない。
機関助手達は必死に石炭を竈にくべている。
大沢達を乗せた機関車はゆっくりと加速を続け走り始める。
可能な限りに勢いを付けて、バリケードを吹っ飛ばして突破しないといけない。
機関助手達は必死に石炭を竈にくべている。
「いけ、いけ、いけぇ~い!!」
手を振り回しながら声援する大沢の声に応えるように機関車の先頭部分がバリケードにぶつかり、粉砕しながら土砂を撒き散らす。
機関車周辺を駆けていたケンタウルス達が土砂を浴びて転倒していく。
機関車は震動しながらバリケードを突破してさらに加速を続ける。
「やったあ!!」
手を振り回しながら声援する大沢の声に応えるように機関車の先頭部分がバリケードにぶつかり、粉砕しながら土砂を撒き散らす。
機関車周辺を駆けていたケンタウルス達が土砂を浴びて転倒していく。
機関車は震動しながらバリケードを突破してさらに加速を続ける。
「やったあ!!」
大沢は歓声を挙げるが肩に矢を受けていた。
そのまま崩れ落ちる。
そのまま崩れ落ちる。
「おやっさん!!」
「退け、退くんだ!!」
トルイは追い付いた兵達を一人一人に声を掛けて列車の追撃を止めさせる。
合流した29騎のケンタウルスは負傷した16騎を回収して、撤退しようとする。
死体も18騎。
合流した29騎のケンタウルスは負傷した16騎を回収して、撤退しようとする。
死体も18騎。
「数が合わないな、列車の中か・・・」
証拠は残したくないが長居は危険だった。
どうせ東部地域にケンタウルスの集落は無い。
列車の中のケンタウルスの素性を洗っても自治伯との繋がりを思わせる物は持たせていない。
流れのケンタウルスが勝手にやったと言い逃れが出来る。
遠ざかる列車を尻目に引き換えそうとすると、奇怪な羽音が上空から聞こえてきた。
どうせ東部地域にケンタウルスの集落は無い。
列車の中のケンタウルスの素性を洗っても自治伯との繋がりを思わせる物は持たせていない。
流れのケンタウルスが勝手にやったと言い逃れが出来る。
遠ざかる列車を尻目に引き換えそうとすると、奇怪な羽音が上空から聞こえてきた。
「なんだ、この音は?」
同時に森の中からこちらを囲むように斑模様の緑の服を着た集団が現れる。
木々の間から銃を構えているのが判る。
木々の間から銃を構えているのが判る。
「バカな日本兵だと、どっから現れたのだ。」
日本軍が駐屯する主要な町には見張りを置いてあったはずだ。
例え日本の車がどんなに早くてもケンタウルスの伝令に勝てるはずがない。
たが現実に目の前にいるのは・・・
例え日本の車がどんなに早くてもケンタウルスの伝令に勝てるはずがない。
たが現実に目の前にいるのは・・・
困惑するトルイ達の前に低空をホバリングするMi-8TB、ヒップEの機首の備え付けられた12.7mm機銃が火を噴いた。
族長トルイは一瞬にして、真っ先に肉塊となった。
同時に列車から七号車両以降が切り離された。
ケンタウルス達は車両に向かって逃げ出す。
そこなら攻撃を受けないと考えたからだ。
だが半包囲していた陸上自衛隊の第4分遣隊の隊員達が前進しながら銃撃を開始する。
族長トルイは一瞬にして、真っ先に肉塊となった。
同時に列車から七号車両以降が切り離された。
ケンタウルス達は車両に向かって逃げ出す。
そこなら攻撃を受けないと考えたからだ。
だが半包囲していた陸上自衛隊の第4分遣隊の隊員達が前進しながら銃撃を開始する。
「ケンタウルスの指揮官以外の生死を問わない。まあ、無理に捕まえる必要も無いがな。」
隊長の進藤一等陸尉の命令のもと、ケンタウルス達は一騎、また一騎と駆られていく。
そこに切り離された車両が線路で止まっているが乗客はとうにいない。
そのことは『よさこい3号』から連絡を受けている。
ケンタウルス達はそんなことは知らないので車両に集まっていく。
そこに切り離された車両が線路で止まっているが乗客はとうにいない。
そのことは『よさこい3号』から連絡を受けている。
ケンタウルス達はそんなことは知らないので車両に集まっていく。
「いいカモだな、馬か?撃滅しろ。」
切り離された列車の中にいたケンタウルス達は先頭車両から飛び出し、遠ざかっていた列車に追い付いていく。
一匹が手摺を掴もうとしたところで、ヒルダのレイピアがドアの隙間からケンタウルスの手の甲を貫く。
一匹が手摺を掴もうとしたところで、ヒルダのレイピアがドアの隙間からケンタウルスの手の甲を貫く。
「しつこいですわよ。」
反対側の手摺に掴もうとした一匹も浅井が鉈で手首ごと切り落とす。
残りの3頭は斉藤が転がしたてつはうの餌食となった。
ケンタウルス達が掃討され、再び汽車が停車する。
隊員達によって、乗客が外に出てきて治療や事情聴取を受けている。
隊員達によって、乗客が外に出てきて治療や事情聴取を受けている。
「おやっさんしっかり!!」
「いやだよお、おやっさん、いかないでよう!!」
「いやだよお、おやっさん、いかないでよう!!」
泣き叫ぶ機関助手達を尻目に、浅井と斉藤達はケンタウルスの荷物を漁る。
大半はケンタウルスの肉体ごとミンチに混じっていたが、車両近くのケンタウルス達は背後から銃弾を受けただけだ。
大半はケンタウルスの肉体ごとミンチに混じっていたが、車両近くのケンタウルス達は背後から銃弾を受けただけだ。
「あった!!」
ケンタウルスの腰ベルトに毒、毒消し、麻痺の薬が入った小瓶を手にいれた。
「これを機関士に」
斉藤の助言、毒を使うものは解毒薬も持ち歩いているはずという言葉に従い、賭けには勝ったようだ。
ケンタウルスの薬を人間に使ってよいかは迷ったが、このままではどうせ死ぬ。
投薬後、顔色や呼吸が正常に戻ったことから薬が効果は確かめられた。
大沢機関士はヘリで一足早く新京大学病院に運ばれることになる。
やはり人間には人間の為の医療の方が安心出来る。
精神的に
ケンタウルスの薬を人間に使ってよいかは迷ったが、このままではどうせ死ぬ。
投薬後、顔色や呼吸が正常に戻ったことから薬が効果は確かめられた。
大沢機関士はヘリで一足早く新京大学病院に運ばれることになる。
やはり人間には人間の為の医療の方が安心出来る。
精神的に
「浅井二等陸尉、よく持ちこたえたものだな?」
仮設テントの指揮所で、進藤一尉がその労を労う。
「二人も死なせてしまいました。そして、乗務員や乗客の奮戦の賜物です。」
「二人とも公務員として、国民に殉じた。御冥福を祈る。国鉄と鉄道公安本部は激怒してたよ。我々もだよ。大陸総督府は自衛隊に報復を許可した。」