自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

220 外伝42

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189 :外伝:2009/06/03(水) 19:59:23 ID:p7nj.31.0
Dデイマイナス二日 カレアント公国エスピリットゥ・サント
町外れの倉庫を改装した北大陸進攻軍合同作戦本部では、大テーブルの上に広げられた作戦図の周りで大勢
のスタッフが忙しく働いていた。
壁際にずらりと並んだ大型ラジオセットからは各情報機関からの連絡が休み無く送られてきており、カーキ
色のシャツとタイトなスカートに身を包んだ婦人補助部隊のプロッターが、刻々と伝えられる最新情報に基
づいて国籍と部隊名、兵力が表記された駒をボードゲームのように南北両大陸の形をした盤上に配置してい
く。
ミスリアル海軍のブルーグレイの制服に大佐の肩章を着け、腕を組んで作戦図を睨む男のもとに、通信文を
手にした情報部の少尉が歩み寄った。
「アメリカ海軍からです、自由ジャスオ軍第一レイダー大隊が作戦を開始しました」
「いよいよだな」
優美な立ち姿の狐耳のプロッターが、雅な手つきで海上の一点に「FJ1,stRaider」と記された
駒を置いた。

タワバ島はジャスオ領南西部から高速船で一日半の距離にある小島である。
シホールアンル軍の魔法通信中継基地が置かれたこの島に、海中から接近する二つの影があった。
合衆国海軍潜水艦SS-166アーゴノートとSS-168ノーチラスである。
どちらも排水量2,700トンを越す大型艦で、艦内スペースに余裕があるため、敵占領下の沿岸部に隠密
裏に物資や人員を揚陸するミッションを何度も行ってきた。
今回の積荷はシホールアンル軍の注意を本命の上陸地点から逸らすため、タワバ島に奇襲攻撃を敢行する自
由ジャスオ軍第一レイダー大隊選抜隊である。
自由ジャスオ軍第一レイダー大隊は合衆国海兵隊の同名部隊に習った奇襲作戦専門の精鋭部隊であり、戦前
の高名な冒険家で、「北大陸いち命知らずな男」の異名を持つサー・パーシー・モーダメッポ卿が指揮を執
っている。
部隊は四個歩兵中隊と一個火器中隊から成り総兵力は900名だが、潜水艦で運べる人員には限りがあるた
め、島に上陸するのは選りすぐりの隊員220名である。
午前二時、浮上した潜水艦からゴムボートに乗り移ったレイダー隊員は密かに島の西側の砂浜に上陸した。
もちろん島を守るシホールアンル軍も警戒はしていたのだが、レーダーと張り合える探知魔法の使い手は、
海軍の主力艦か最前線の重要拠点に配置されており、島の魔導士は潜水艦が目と鼻の先に浮上するまでその
存在を探知できなかった。
そして守備隊が繰り出したパトロール部隊が上陸地点に到着すると同時に、顔に靴墨を塗り、黒く染めた戦
闘服に身を包んだうえ足音を立てないようゴム底のワークシューズを履いたレイダー隊員が、闇の中から踊
り出た。

190 :外伝:2009/06/03(水) 20:01:11 ID:p7nj.31.0
「て、敵襲―――――っ!」
引き攣った叫び声をあげた兵士を横殴りの銃弾の雨が襲う。
それはアメリカ軍の歩兵部隊と比較しても、尋常ならざる弾量だった。
自由ジャスオ軍第一レイダー大隊は近接戦闘での弾幕密度を重視した部隊編成をしており、通常の米軍歩兵
分隊の編成がM1ライフルを装備した小銃手11名と、分隊支援火器であるBAR(ブローニングオートマ
チックライフル)を装備した自動小銃手1名から成るのに対し、レイダー大隊では分隊でM1ライフルを装
備するのは1名のみで、ほかにジョンソンM1941軽機関銃を装備した機関銃手が2名、残りの兵士は全
員がレイジングM50短機関銃を装備していた。
レイジングSMGとジョンソンLMGはどちらも陸軍では正式採用されず、海兵隊とレンジャー部隊の一部
でしか使われなかった兵器であり、アメリカ軍用銃の歴史では日陰者である。
それが何故第一レイダー大隊の主力兵器になったかというと、北大陸進攻に先立ち南大陸連合国軍に米式装
備の部隊が続々と創設されたため、流石のアメリカも歩兵用小火器の供給が需要に追いつかなくなり、員数
外扱いであったが故に比較的在庫に余裕のあったレイジングとジョンソンに白羽の矢が立ったのである。
45口径弾を毎分550発でバラ撒くレイジングSMGと、30-06弾を毎分600発で撃ち出すジョン
ソンLMGによる一片の容赦も無い集中射撃を受け、パトロール隊は瞬く間に一掃されてしまった。
自動火器の威力にものを言わせて中継基地へと突き進むレイダー隊員の前に、銃火の壁が立ち塞がる。
波止場に据えられた銃座から、対空用の魔導銃が水平撃ちをかけてきたのだ。
あわてて這い蹲るレイダー達。
モーダメッポは気色悪いほど滑らかな匍匐後進で道路脇の窪地に這い込むと、そこに固まっていたレイダー
の一人に呼びかけた。
「マラッカム君、君の出番だ」
今回の作戦では自前の重火器部隊を持ってきていないため、M1ライフルを装備した兵士がライフルグレネ
ードを用いたインスタント砲兵の役割を果たす。
マラッカム上等兵はM1ライフルの銃口に装着されたM7グレネードランチャーに、MkⅡ手榴弾をセット
したM1グレネードアダプターを取り付け、狙いを定めて引き金を引く。
空砲によって打ち出された手榴弾は弧を描いて飛翔し、銃座の周囲に円形に積まれた土嚢の内側で炸裂した。
魔道銃本体は破壊できなかったものの、防弾板の無い剥き出しの銃座で配置に就いていた兵士は爆風と破片
で一掃される。
モーダメッポはすっくと立ち上がると、腰だめに構えたレイジングガンを連射しながら声を張り上げた。
「諸君、突撃だ!」
再び始まるレイダー無双。
順調にシホールアンル兵を駆逐していくレイダー達は、上陸から57分で全島を制圧、118分で撤収を完了
した。
翌日おっとり刀で駆けつけたシホールアンル海軍陸戦隊が見つけたのは、半壊した中継基地の屋根に翻るジャ
スオ国旗と壁に書かれた「帰ってきたぜ!」の文字だった。
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