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194 第150話 古兵勇戦

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第150話 古兵勇戦

1484年(1944年) 6月26日 午後10時 モンメロ沖南南東83マイル地点

モンメロ沖海戦の後半戦は、久方ぶりの水上砲戦という形で幕を開けることになった。
この水上砲戦は、アメリカ大西洋艦隊とマオンド海軍の主力艦部隊が互いの力を全力で出し合った海戦でもあった。
海戦の規模では、史上最大とされていた第2次バゼット海海戦を上回っており、また、その激しさも並々ならぬ物があった。
また、この海戦の特徴は、それぞれの戦艦部隊が、互いにほぼ同格の相手と共に戦ったことにある。
現場に急行したTG73.5の4隻の旧式戦艦は、マオンド側の旧式戦艦と相対し、TF72の新鋭戦艦群は、敵機動部隊から
分派された新鋭戦艦と戦った。
この後半戦では、互いの旧式戦艦と新鋭戦艦が、同格の相手と図らずして力を競い合う事になったのである。

TG73.5司令官であるフランツ・ウェイラー少将は、旗艦である戦艦ニューメキシコのCICで敵艦隊の動静を見守っていた。

「敵艦隊との距離、20マイルを切りました。」

CICのレーダー員が、敵艦隊との距離を逐一報告してくる。水上レーダーが敵艦らしきエコーを捉えたのは、10分ほど前である。

「敵の艦列は4つに別れています。反応からして、一番右と左側が駆逐艦群、右側から2番目の艦列が巡洋艦群、最後の一列が
戦艦群かと思われます。」

ニューメキシコの砲術長が、PPIスコープを見つめながらウェイラー少将に言う。

「ということは、敵艦隊は戦艦3隻、巡洋艦9隻、駆逐艦20隻を有する事になるな。」

「対して、我々は戦艦4隻、巡洋艦5隻、駆逐艦18隻。補助艦艇の数では負けますが、主力艦の数では勝っています。
それに加え、敵戦艦の最大火力は13インチ。それに対し、我が方は14インチ砲搭載艦ばかり。敵戦艦との対決では、
明らかに我々が有利です。」

参謀長が自信ありげな口調で言った。
もし、敵戦艦が全て、ジャンガルーダ級戦艦だとしても、搭載砲は13インチ相当であり、主砲の門数は合計で24門となる。
それに対し、TG73.5は、ニューメキシコ級戦艦3隻に、テキサス級戦艦1隻の4隻で、主砲は13インチよりも一際強力な
14インチ砲であり、門数は計44門と、敵戦艦群より勝る。
しかし、ウェイラー少将は参謀長ほどは楽観的ではなかった。

「艦の隻数や砲門数では優位だが、敵はこちらと違って足が速い。」

ウェイラー少将はそう言いながら、PPIスコープに向けて顎をしゃくった。

「レーダーに移っている敵艦隊は、最低でも24ノットほどの速力でこちらに近付きつつある。それに対して、我々は
21ノット程度しか出せん。僅か3ノットの差と思うかも知れんが、戦場では、こんな細かい数字でも勝利の明暗が
別れる事もある。敵戦艦群が速度の優位性を生かした戦術を取るとなれば、俺達が思わぬ苦戦を強いられる、という事もあり得る。」
「では司令官。敵戦艦群に対しては、どのような戦いをされるおつもりですか?」
「私としては、反航戦で勝負を決めたいと思っている。」

ウェイラー少将はきっぱりと言い放った。

「反航戦は、互いにすれ違い合いながらの射撃となるから砲弾は当たりにくくなる。だが、敵艦1隻に対して、4隻が
集中して統制射撃を行えば、少ない命中率もある程度補える。おまけに、旧式戦艦とはいえ、ニューメキシコは14インチ砲に
対応した防御と、長砲身の50口径砲を装備し、おまけに、今では優秀なレーダーも揃っている。これなら、敵艦の打撃にも
ある程度耐えつつ、敵に対しては有効弾を浴びせ続ける事が可能だ。最も、」

ウェイラーはそこで言葉を句切ってから、PPIスコープに移っている敵の艦影に指を向ける。

「こういった作戦で行けるか否かは、敵さん次第だ。敵がこっちの意図に乗らず、同航戦を挑んでくれば、こっちもそれに
答えるしかないがね。」
「そういえば、TF72も、敵機動部隊から分派された打撃部隊と戦闘を交える事になったようですが。」

「TF72か。」

ウェイラーは、どこか羨ましげな口調でその名を呼んだ。

「・・・・アイオワ級戦艦の活躍ぶりも見たかった物だが、今はTF72よりも、我々のやるべき事を考えよう。
距離はさほど離れていない。こうしている今も、敵は主砲を撃ってくるかもしれんのだからな。」

ウェイラーの言葉が終わるのを待っていたかのように、レーダー員が新たな報告を知らせてきた。

「敵駆逐艦列2、増速しました!こちらに向かってきます!」
「ふむ、どうやら、試合開始のようだな。」

ウェイラー少将は、冗談めいた言葉を言い放った後、命令を下した。

「駆逐艦部隊は、敵駆逐艦群の突進を阻止せよ!」

この時、TG73.5は、マオンド艦隊と同様に艦種別の単縦陣を形成していた。
艦列は4つあり、一番左側と右側は駆逐艦群が、左から2番目には巡洋艦群が布陣していた。
戦艦群は、マオンド艦隊と違って、3つの列のやや後ろ側の位置に占位しており、各艦は、戦艦群が出し得る
20ノットのスピードに合わせて航行を行っていた。
20ノットの縛りから最初に解放されたのは、駆逐艦部隊であった。
第62駆逐隊は、旗艦を始めとする5隻の駆逐艦を率いながら、艦隊に向かって居るであろう敵駆逐艦群を目指して海上を驀進していた。
旗艦マクダーマットの艦橋上では、駆逐隊司令であるイーサン・ランバート大佐が隊内無線で各艦に最後の指示を送っていた。

「以上、通信終わり。」

ランバート大佐は無線のマイクを置くと、艦長に顔を向けた。

「司令、いつもの奴ですな。」
「そうだ。バークさんが考案したあの戦法で行く。」

ランバート大佐はそう言ってから、ニヤリと笑みを浮かべる。
5隻のフレッチャー級駆逐艦は、後方に第61駆逐隊の4隻を従えながら、37ノットの高速で突っ走る。

「CICより報告!敵駆逐艦群との距離、約13000メートル!」

彼我の距離は、みるみるうちに縮まってきた。
アメリカ艦隊に向かいつつあるマオンド艦隊もまた、全速力で駆逐艦部隊に接近しつつあった。

「11000です!」

ランバート大佐は、その言葉を聞いた瞬間、再び隊内無線のマイクを握りしめた。

「ジョンソン!分離だ!」
「OK!ポエニ戦法発動!」

電話口の向こうにいた第61駆逐隊は、陽気な口調で答えてきた。
それから間もなくして、後方に付き従っていた4隻の駆逐艦が面舵を切る。

「取り舵!針路290度!」

ランバートの口から命令が発せられた。艦長はその命令を航海科員に伝える。
マクダーマットの艦首が回頭を始めた。旗艦に習って、他の4隻も次々と回頭を始める。
しばしの間、針路290度方向に向かって航行した後、5隻の駆逐艦は再び現針路に戻った。
マクダーマットが回頭を終え、直進に移った瞬間、上空に照明弾が炸裂した。
アメリカ海軍の照明弾とは違って、赤紫色のバイオレンスな光が上空に煌めく。
光源魔法を仕込んでいたのだろう、その光量はDS62の姿を闇夜からくっきりとさらけ出していた。

「敵艦、照明弾発射!次いで発砲を開始!」

見張りが艦橋に伝えてくる。

「敵艦との距離は?」
「現在、敵艦は本艦の右舷前方7000メートルを航行しています。」

ランバートの質問に艦長が答えるが、それを遮るかのように砲弾の飛翔音が響いてきた。
飛翔音が大きくなった、と思いきや、音は真上を通り過ぎていった。

「敵弾、左舷側海面に着弾!」
「ふむ、照準が甘いな。最初だからこんな物だろうな。」

ランバートは呟きながら、艦長に次の指示を下した。

「砲戦始め!右、魚雷戦用意!」

彼は、同時に2つの指示を伝えた。マクダーマットの5インチ砲が火を噴いた。
マクダーマットの砲弾が落下する前に、敵の第2射が降ってきた。
敵の砲弾は、またしてもマクダーマットを飛び越える。
その一方で、マクダーマットの砲弾は、早くも第2射で敵1番艦を捉えた。

「敵1番艦に命中弾!」

その様子を、見張りが弾んだ声で伝えてきた。
一列縦隊で突き進む敵駆逐艦群は、左右から米駆逐艦部隊に撃ちまくられていた。
この時、マオンド駆逐艦部隊の指揮官は、偶数番艦は右、奇数番艦は左の敵を砲撃せよと命じ、
各艦がアメリカ駆逐艦に対して反撃を行っていた。

砲火の応酬が始まってから1分も経たぬうちに、戦況は大きく流れつつあった。

「各艦、魚雷発射準備完了!」
「DS61より入電!我、魚雷発射準備完了!」

それを聞いたランバートは、砲声に負けず劣らずの大音声で命令を発した。

「魚雷発射始め!」

命令が下るや、各艦の魚雷発射管から、21インチの魚雷が一斉に撃ち出された。
フレッチャー級駆逐艦は、5連装の魚雷発射管を2基装備している。
ランバートは、この2基のうち、1基を使用して敵の駆逐艦群をある程度減らそうと考え、各艦に使用する魚雷は5本のみと伝えていた。
この時、海に放たれた魚雷の数は、DS62だけで25本。DS61も含めれば、55本の魚雷が、投網のように放たれたことになる。
しかも、魚雷は最新鋭のMk-17魚雷であり、雷速は50ノットに近い。
Mk-17魚雷は、46ノットならば15000メートルの長射程を誇る。
だが、最高速度の49ノットの時は、射程距離は9000~10000メートルまで落ちる。
しかし、敵駆逐艦群はその射程内に収まっているため、最低でも、2、3隻は食えるだろうとランバートは確信していた。

「敵駆逐艦群、各個に回頭を始めました!」

魚雷発射から3分後に、CICから敵の新たな動静が伝えられてきた。だが、ランバートはそれに何ら反応を見せなかった。
唐突に、右舷側の海面に閃光が走った。その閃光は、敵艦が発していた発砲炎ではない。
それとは明らかに異なる物であった。
閃光がぱっ、ぱっと煌めいてはすぐに消える。最終的には、6つの閃光が煌めいた。
6つのうち、2つの閃光は取り分け明るく、真っ暗であった艦橋が電気が灯ったように明るくなったほどである。
閃光が煌めいた後、腹に応えるような音が洋上から響き渡ってきた。

「敵駆逐艦1隻、レーダーから消失!4隻が急速に速度を落としつつあります!」

CICから戦果報告が届いてきた。
DS62とDS61が放った魚雷は、マオンド駆逐艦5隻の艦腹に深々と突き刺さっていた。
最初に被雷したのは、敵3番艦であった。
3番艦の見張り員は、艦の右舷側海面1000メートルの所を突き進んでくる魚雷を発見するや、すぐに艦長に伝えた。
艦長は緊急操舵を行って回頭しようとした。
この時、3番艦には3本のMk-17魚雷が迫っていた。
3番艦は慌てて右に舵を取り、対向面積の少ない艦尾を向けようとしたが、完全に回頭仕切るまでに魚雷は3番艦の右舷後部に食らいついた。
魚雷は薄い艦腹を叩き割って後部魔動機関室に侵入。そこで炸裂した。
爆発の瞬間、3番艦の右舷後部部分には真っ白な水柱と火炎が吹き上がった。
機関の2分の1と、推進器を破壊された敵3番艦は、被雷から僅か1分後に停止し、艦の傾斜を深めていった。
次に被雷したのは4番艦と6番艦で、この2隻は右舷前部に魚雷を食らった。
被雷の瞬間、艦体は巨大な壁にぶつかったかのようにつんのめり、乗員の大半が床に転倒するか、壁などに打ち付けられた。
30ノット以上の速力で航行していたため、被雷箇所からは大量の海水が雪崩込み、前部の主要区画はあっという間に浸水し、艦長が応急班に
指示を与えようとしているときには、もはや手遅れの状態となっていた。
7番艦と8番艦には、左右から魚雷が迫ってきた。
両艦は回避運動中にまず、左舷側から1本ずつ魚雷を受け、足が鈍ったところに右舷側からやって来た魚雷をこれまた1本ずつ受けてしまった。
8番艦は左舷側に突き刺さった魚雷が弾薬庫付近で炸裂したため、たちまちのうちに誘爆、轟沈した。
7番艦は被雷後も動いていたが、両舷に大穴を開けられてはどうしようもなく、2分後に停止し、沈没し始めた。
最後の10番艦は、左舷側から接近してきた魚雷に真正面からぶつかった。魚雷は艦首に突き刺さるや、錨鎖庫の付近で炸裂した。
その次の瞬間、艦首からは高々と水柱が吹き上がり、10番艦の前部が炸裂によって、第1砲塔のあたりまで縦真っ二つに切り裂かれた。
それから1秒後には第1砲塔の弾薬庫が誘爆し、艦の前部は火の海となった。
艦長は急いで機関停止を命じたが、被雷箇所からは海水が轟々と音を立てて艦内に雪崩れ込んでいるほか、艦橋から前の部分は紅蓮の炎に
包まれているため、沈没はもはや免れぬ状況であった。

「よし、5隻は食ったか!」

ランバートはそう言ってから、やや満足した表情を浮かべた。

「敵艦隊の隊形、大幅に乱れています!」
「残りの敵艦は、砲撃で仕留めるぞ!」

ランバートはけしかけるような口ぶりで叫んだ。各艦は、ばらばらに航行する敵駆逐艦に対して砲撃を再開した。
10隻いた駆逐艦は、今や5隻に減っている。その5隻もまた、隊形が大幅に乱れた状態で航行を続けている。
DS62と61は、その5隻に対して容赦なく砲撃を行った。
敵駆逐艦は、1隻、また1隻と、集中打を浴びて炎上していく。
しかし、アメリカ側の優勢も、そう長くは続かなかった。
唐突に、右舷側海面。DS61がいる方角に照明弾と思しき光が灯った。

「DS61より緊急信!我が隊の後方に別の駆逐艦群接近!」
「チッ、もう1隊の駆逐艦群が応援にやってきたな。DS65と66はどうした!?」
「目下、敵駆逐艦を追尾中との報告が入っています。」

一瞬、ランバートは目眩を起こしかけた。
(なんてこった。DS65と66は、敵を挟めなかったのか!)
ランバートは、内心でDS65と66の失態を呪った。

「DS61より更に緊急信!我、敵艦より砲撃を受ける!」
「DS61に通達!敵の残存駆逐艦はDS62が片付ける。DS61は新手の駆逐艦群を叩かれたし!」

ランバートは矢継ぎ早に電文を送らせた。
30秒ほどたって、DS61から了解との報告が入った。

「よし・・・・これで、敵の新手にも対応できるな。」

ランバートは、少しばかり安堵した表情を見せたが、その刹那。
右舷側の海面で強烈な閃光が沸き起こった。

駆逐艦ドノンスク艦長であるラナウグ・ルロンギ中佐は、アメリカ駆逐艦が火柱を吹き上げて轟沈する光景を、
驚きの混じった表情で見つめていた。

「砲弾が、魚雷を保管している場所に命中したのかもしれないな。」

ルロンギ中佐の傍らで立っていた駆逐隊司令のルスード・レトンホ大佐がつぶやいた。
レトンホ大佐は、ルロンギ中佐の所属する駆逐艦群の司令であったが、旗艦が米潜水艦に撃沈されたため、急遽ルロンギ中佐の
ドノンスクに移乗し、指揮を取っていた。
ルロンギ中佐は、レトンホ大佐の指示通り、距離5000グレルで照明弾を発射し、4000グレルに迫った所で砲弾を放った。
ドノンスクの後方には、9隻の僚艦が続いていた。
10隻の駆逐艦は、左舷前方を行くアメリカ駆逐艦の後ろ姿目掛けて砲撃を続けた。
砲弾は、最初のうちは見当外れの位置に落下していたが、次第に精度が上がり、第6射目でついに命中弾が出た。
そして、ドノンスクが第10射目を撃ち込んでからやや間が開いた時、米駆逐艦は突然、大爆発を起こした。
レトンホ大佐の言うとおり、砲弾は米駆逐艦の魚雷発射管に命中していた。
その駆逐艦は、後部発射管の魚雷をまだ使っておらず、装填されたままの状態だった。
そこにドスノンクの砲弾が命中してしまった。
その瞬間、5本の魚雷は誘爆を起こし、基準排水量2000トンのフレッチャー級駆逐艦は瞬時に轟沈した。
アメリカ駆逐艦の撃沈に喜ぶ暇もなく、主砲を新たな目標に向ける。
この時、残りのアメリカ駆逐艦が転舵を開始した。

「敵艦群、面舵に変針!」

見張りの声に、ルロンギ中佐は小さく頷いた。

「ふむ、やはり、ずっと優位な位置で砲撃を続けられる訳にはいかないか。ここからが、本当の勝負だな。」
「艦長!艦隊の右舷後方より新たな生命反応!」

その報告を聞いたルロンギは、レトンホ大佐に顔を向けた。

「司令!」
「ああ、分かっている。俺達が先ほど振り切った奴らだろう。艦長の言うとおり、ここからが本当の勝負所だな。」

レトンホ大佐は、不敵な笑みを浮かべながらルロンギに言った。
それから間もなくして、両軍の駆逐艦は再び、激しい戦闘を繰り広げる事になる。

戦艦ニューメキシコのCICでは、新たに巡洋艦部隊が、敵の巡洋艦群と戦闘に入る様子が写し出されていた。

「敵戦艦部隊、尚も接近!距離は18000メートル!」

ウェイラー少将は、内心緊張しながら、レーダー員が発したその言葉を聞いていた。

「敵戦艦は、未だに発砲を行いません。」
「ふむ。照明弾すら撃って来ないな。それはともかく、17000までもう少しだな。」

ウェイラーは、4隻の戦艦に距離17000で砲撃を開始させようと考えていた。
距離17000は、ニューメキシコ級、テキサス級戦艦が搭載する14インチ砲の射程内に充分収まっている。
とある幕僚は、最大射程で砲戦を開始してはどうか?と意見具申をしてきたが、ウェイラーはそれを拒んだ。

「いくらレーダーがあるとはいえ、及び腰で砲を撃っても、弾は当たりにくい。それよりは、ある程度近付いてから砲撃を
行った方が良い。近距離ならば命中弾出やすく、敵を早く沈黙させる事が出来る。それまでは、ひたすら我慢あるのみだ。」
ウェイラー少将はそう言ってから、幕僚達を説得した。
それからしばらくが経ち、決戦の時は近付いていた。
(あと1000・・・・・あと1000メートル進めば、戦いが始まる。どちらの旧式戦艦が強いかを決める戦いが。)
ウェイラーは、高鳴る鼓動を抑えながら、胸中で呟いた。

「・・・ん?」

PPIスコープを見つめていたレーダー員が、顔をより近付けた。

「敵戦艦群、転舵を開始した模様!」

急な報告に、ウェイラーは眉をひそめた。

「転舵だと?面舵か?取り舵か?」

ウェイラーはすかさず、レーダー員に聞いた。

「・・・・取り舵です!敵戦艦群は左回頭を行っています!」
「左回頭だと?右回頭の間違いじゃないのか?」

ウェイラーはレーダー員が間違えたかも知れないと思い、もう1度聞き返した。

「いえ、左回頭です!」

レーダー員は間違っていなかった。それから数分後、敵戦艦群は針路を南に取りながら航行し始めた。
ウェイラーは、頭がやや混乱しかけた。
敵戦艦群の狙いは輸送船団であったはず。なのに、何故反対方向に向かう?

「司令、直ちに回頭を行うべきです!」

幕僚の1人がウェイラーに言ってきた。

「このまま行くと、我々は敵戦艦群の背後を通り過ぎる格好になります。その間、我々は敵艦を砲撃できますが、敵の速力が
早いことや、距離の関係上、砲撃を行える時間はさほど長くはありません。恐らく、敵は我々が通り過ぎた頃合いを見計らって
一斉に転舵を行い、背後から襲い掛る積もりでしょう。」
「なるほど、追い縋って叩く、と言う訳か。25ノットの速力を有する敵艦隊ならではの戦術だな。」

ウェイラーは、幕僚の言うことを理解出来た。
要するに、敵は米戦艦群の弱点につけ込んで攻撃してくるという事だ。

「ならば、我々も回頭するべきだな。むざむざ敵の算段に乗ってやる義理はない。」

ウェイラーは忌々しげに呟いた後、4隻の戦艦に転舵を命じた。
4戦艦は、ニューメキシコを先頭に1隻ずつ回頭を行っていく。
最後尾のテキサスが回頭を終えた直後、敵戦艦部隊から発砲炎らしき光が放たれた。
やや間を置いて、4戦艦の上空に6つの毒々しい赤紫色の照明が灯った。

「敵戦艦、照明弾を発射した模様。」
「敵艦との距離は?」

ウェイラーはレーダー員に彼我の距離を問いただす。

「17600メートルです。」
「よし、こうなればもう戦うしかあるまい。各艦に令達。左砲戦、射撃準備用意。ニューメキシコ目標、敵1番艦。
ミシシッピー目標、敵2番艦。アイダホ、テキサス目標、敵3番艦。」

米戦艦群の最後尾に位置していた戦艦テキサスの艦上では、5基の45口径14インチ連装砲が左舷側に指向されようとしていた。
戦艦テキサス艦長であるチャールズ・ベーカー大佐は、テキサスの前部甲板に目を向けていた。
2基の14インチ連装砲は、左舷側に向けられつつある。
前方1000メートルを行くアイダホもまた、12門の14インチ砲を敵艦に向けている。
テキサスは、敵戦艦群の3番艦を狙う事になっている。前方のアイダホも、テキサスと同じ目標に砲撃を加えようとしている。

「しかし敵3番艦も運がないな。このテキサスと、アイダホから集中砲火を受ける事になるとは。」

ベーカー大佐は、哀れむような口ぶりで呟いた。
敵戦艦の主砲は、良くても13インチ。それに対して、テキサスとアイダホは14インチだ。
13インチ砲に相応した防御力しか持たぬ敵戦艦が、長時間14インチ砲弾の打撃に耐えられるはずが無く、ごく短時間で戦闘不能に陥ることは明らかだ。

「早く敵3番艦を片付けて、ニューメキシコとミシシッピーの応援に回りたい物ですな。」

副長の言葉に、ベーカー艦長は頷いた。
この時、CICから意外な報告が飛び込んできた。

「艦長!後方より巡洋艦と思しき艦影が接近中!距離は19000メートル!」
「・・・何?」

ベーカー艦長はぴくりと眉を動かした。

「数は何隻だ?」
ベーカーはすぐに聞き返した。

「3隻です。3隻が我が戦艦群に向けて急速に接近しつつあります!」
「3隻だと!?」

ベーカーは驚いた。敵の巡洋艦部隊は、全てが味方の巡洋艦と戦っているだろうと思っていた。
ところが、9隻居た敵巡洋艦のうち3隻が、いきなりこちらに向かってきたのだ。

「味方巡洋艦部隊はどうなっている?」
「今は、敵巡洋艦部隊と戦闘中です。」
「くそ、巡洋艦の数が敵に比べて少なすぎたな。」

ベーカーは顔をしかめながら呻く。

「旗艦より通信!各個に砲撃を開始せよ!」

通信室から別の命令が飛び込んできた。それから2秒後、旗艦ニューメキシコが発砲を開始した。

「ええい、雑魚にはかまうな!目標、敵3番艦。撃ち方始め!」

ベーカーは迷いを打ち切って、まずは目の前の敵戦艦を砲撃する事に決めた。
前を行くアイダホと、テキサスの発砲はほぼ同時であった。10門の14インチ砲のうち、半数にあたる5門が火を噴いた。
その一方で、敵戦艦部隊も砲火を放った。敵3番艦が居ると思しき海面から閃光が煌めく。
味方戦艦部隊の上空には、相変わらず毒々しい色をした照明弾が光っているが、敵戦艦部隊の上空には、照明弾は光っていない。
レーダー射撃が可能な米艦艇は、照明弾を撃ち上げなくてもレーダーで敵の位置が分かる。
そのため、事前の照明弾による目標の照射は、今ではあまり行われない作業と化していた。
(これは対艦攻撃における話であり、対地射撃に置いては別で、照明弾による目標の照射は頻繁に行われている。)

「第1射、弾着!」

CICから弾着観測が伝えられる。

「射弾は敵3番艦を通過し、左舷側海面に落下した模様。アイダホも同様です。」

「レーダー射撃とはいえ、初弾命中という訳にはいかんか。」

ベーカー大佐は、無表情でそう言いはなった。その直後、敵3番艦の射弾がアイダホに降り注いだ。
いきなり、アイダホの周囲に複数の水柱が立ち上がった、と思いきや、その後部甲板に命中弾と思しき閃光が光った。

「アイダホに敵弾命中!」
「なっ!いきなり初弾命中か!?」

ベーカー大佐は、突然の出来事に唖然となった。
20秒後に、通信班がアイダホから発せられた通信を傍受した。

「アイダホより通信。我、命中弾1を被るも、被害軽微。敵3番艦の砲弾は13インチにあらず、13インチ以下の模様なり。」
「13インチ以下・・・・と言うことは、敵3番艦は旧式のマウニソラ級戦艦か。」

ベーカーが小声で呟いた直後、テキサスが第2射を放った。
テキサスの巨体が、14インチ砲の咆哮に揺れる。
そのまま第3射、第4射、第5射と放たれるが、どれも空振りであった。

「意外と当たらん物だな。」

ベーカーは苛立ちを露わにした口調で呟く。

「艦長!敵巡洋艦3隻、尚も接近します!距離は16000メートル!」
「敵巡洋艦群、発砲を開始しました!」

CICと、見張りからの報告が同時に伝わってきた。敵巡洋艦はいつの間にか、テキサスの右舷後方に近寄っていた。
砲弾の飛翔音が聞こえた、と思うと、テキサスの右舷側海面や前方に多数の水柱が吹き上がった。

20秒後には、再び多数の砲弾が落下して、テキサスの左舷側海面が砲弾の弾着で泡立った。
水柱のうち、1つはテキサスの艦首から20メートルも離れていない位置に落下していた。

「敵巡洋艦の主砲は6インチクラスだな。」

ベーカーは、水柱の大きさを見て、敵艦の砲の口径を特定した。

「両用砲!敵巡洋艦を迎撃しろ!」

それまで沈黙していた、右舷側の両用砲座が、敵巡洋艦群に向けてくるりと回転した。
テキサス級戦艦も、改装によって両舷に6基の5インチ連装砲を搭載している。
6基のうち、3基が敵巡洋艦に向けられた。5インチ砲が発砲を開始する前に、敵の斉射弾が降ってきた。
テキサスの周囲に小さな水柱が立ち上がる。唐突に、ガキン!という何かがぶつかるような音と振動が伝わった。

「敵弾1!後部砲塔に命中!損害なし!」

後部艦橋に詰めていたダメコン班から連絡が入る。

「老いたりとは言え、流石は戦艦だ。巡洋艦程度の主砲なぞ、屁でもないか。」

ベーカーは、頬を緩ませながらそう呟いた。
前方を行くアイダホにまたもや砲弾が命中する。アイダホは、敵の斉射を4回も受けており、その都度命中弾を受けている。
命中弾の数は6発で、今の命中弾で中央部に火災が発生した。
だが、被害はまだ軽微であり、アイダホは砲を放ち続けている。
しかし、良好な射撃を続ける敵戦艦に対して、テキサスとアイダホは空振りばかりを繰り返している。

「まだ挟叉は得られんのか!?」

ベーカー大佐は苛立ちの混じった口調で、CICの砲術長を呼び出した。

「もう少し、もう少しお待ち下さい。あと3射もすれば、必ず命中弾が出ます。」
「こっちは待っても、敵は待ってくれんぞ。それに、このテキサスにはうざったい連中が噛み付いてきている。
早めに、敵戦艦を沈黙させてくれ。」

ベーカーはぶっきらぼうな口調で砲術長に言った。
この時、テキサスの5インチ砲が敵巡洋艦に向けて応戦を開始した。
それに対して、敵巡洋艦も第4斉射を放ってくる。

「敵巡洋艦群、距離14000まで接近!敵艦は我が艦の真横にいます!」

CICからの報告を聞くまでもなかった。
ベーカー大佐は、右舷側にいる敵巡洋艦が、全ての主砲を放ったのをこの目で見ていた。

「敵さんは、最大火力でテキサスを撃ってきたか・・・・!」

敵弾がテキサスに落下してきた。大半の砲弾はテキサスを外れるが、3発が艦体を叩いた。
3発中、2発は主砲の天蓋に命中してその場で爆発し、かすり傷程度しか付けなかったが、1発は艦尾の非装甲部に命中して、艦内で炸裂した。
5インチ砲が負けじと撃ち返す。5秒から4秒おきに放たれる砲弾は、全てが敵1番艦に降り注いでいた。
最初は、全ての射弾が敵1番艦を外れていたが、一度弾が命中すると、後は面白いように次々と命中弾が出る。
とある5インチ砲弾は、連装式の両用砲に命中するや、これを粉砕してただの鉄屑に変えた。
別の1発は、魔導銃がある艦尾部分に突き刺さるや、3丁の魔導銃を一斉に吹き飛ばして甲板部分を元の真っ平らな状態に戻してしまった。
敵巡洋艦も砲撃を続行する。テキサスの艦体にも、次々と命中弾が出る。
それまで激しく撃ちまくっていた両用砲の1基が、敵弾の命中を受けて叩き潰された。
前部甲板がピカッと光ったかと思うと、そこから爆炎が吹き出し、次に黒煙と破片が空高く舞い上がった。
傷自体は小さかったが、その命中箇所からはちろちろとオレンジ色の炎が見え隠れしている。

「前部甲板に命中弾!火災発生!」

「ダメコン班!直ちに消火活動に移れ!」

ベーカー艦長は、待機していたダメコン班にすかさず指示を下す。

「敵1番艦、火災発生!」

それまで、5インチ砲弾を撃ち込まれ続けていた敵1番艦から火災らしきものが起こった。
5インチ砲弾は、その小口径さゆえに、巡洋艦といった中型艦を一撃で屠る事は出来ないが、命中弾を与え続ければ目に見えない
被害も蓄積させる事が出来る。
敵巡洋艦群が8度目の斉射を放ったときには、敵1番艦は35発の5インチ砲弾を受けていた。
35発中、21発は前部部分に落下していた。
この被弾によって、敵1番艦は4基ある6ネルリ連装砲のうち、2基までもを使用不能にされた。
敵1番艦は、前部と中央部から火災を起こしており、乗員が消火活動を行っていた。
しかし、その乗員も、次々に飛来してくる5インチ砲弾にあらかた吹き飛ばされ、最後には消火班が全滅するという惨事に見舞われた。
それでも、敵1番艦は諦めずに、後部の主砲でテキサスを撃ち続けた。
新たな命中弾が、テキサスを揺さぶる。ベーカー艦長は、何かが壊れるような音を聞いた。

「第3砲塔付近に命中弾!カタパルト損傷!」
「カタパルトが吹き飛んだか。」

ベーカー艦長は悔しげに顔を歪めるが、その反面、まだ致命弾は受けていないと思い、やや安堵していた。
テキサスは、アメリカ海軍の現用戦艦の中でも最古参の艦だ。防御力はあるが、艦体はあちこちが劣化しており、巡洋艦が放つ程度の
砲弾でも、命中弾を浴び続けるのはあまり好ましくなく、金属疲労で痛んだ装甲板が敵弾の貫通を許す可能性も出て来る。
そうなっては、非常にまずい。
(畜生、こんな奴らさえ居なければ、今頃は敵戦艦との砲戦に集中できていたんだが)
ベーカーの胸中に、焦りの色が見え始めていた。
その時、見張りが弾んだ声で艦橋に報告を送ってきた。

「敵1番艦沈黙!あっ、面舵に変針しました!」

ベーカーは、その言葉が正しいことを目の当たりにしていた。

右舷側海面に浮かんでいたオレンジ色の炎は、急に向きを変えると、そのまま戦場から遠ざかり始めた。

「敵1番艦撃破!」

砲術長の誇らしげな報告が艦橋に伝わってきた。しかし、喜びも束の間であった。
お返しだとばかりに放たれた2番艦、3番艦の砲弾がテキサスに落下してきた。この砲弾は、5発がテキサスに命中した。
そのうちの3発は中央部に命中し、残っていた2基の両用砲をまとめて粉砕した。
脱落した敵1番艦の仇討ちとも言える一撃である。

「右舷2番、3番両用砲損傷!」

その報告に、ベーカーは立ちくらみを起こしかけた。

「なんてこった・・・・・・」

テキサスは、現時点で使用可能な両用砲を全て失ったのである。
いや、左舷側の両用砲が残っているが、艦を回頭させなければ使えない。
(どうする?敵戦艦との撃ち合いはアイダホに任せるべきか?)
ベーカー艦長はそう呟きながら、前方のアイダホに視線を移した。
アイダホは、敵戦艦に押され気味であった。アイダホは斉射に移行しているようだが、どういう訳か第4砲塔は沈黙し、
後部艦橋が無残にも破壊されていた。
アイダホに相対する敵戦艦もまた命中弾を受けている。
こちらは、テキサスとアイダホから8発の14インチ砲弾を受けているが、これまた不思議な事に、火災炎を起こしながらも
全力で反撃を行っている。

「マウニソラ級戦艦は、11インチ程度の砲しか搭載していないはずなのに・・・・まさか、艦体の防御だけはそれ以上の砲
にも耐えられるように設計されているのか?」

ベーカーの心中に、ふと、そんな疑問が沸き起こった。

「艦長、旗艦より通信です!テキサスは、敵巡洋艦との砲撃戦に集中されたし!」
「敵巡洋艦との砲撃戦に集中しろ・・・・か。」

ベーカーは、最後の言葉を反芻する。
(ここはアイダホが気になるところだが、こっちも敵巡洋艦2隻に襲われている。今はこの2隻を片付けた方がいいかもしれんな)
ベーカーはそう思うなり、砲術科に指示を下した。

「砲術!右砲戦だ!」
「え?右砲戦ですか!?」
「そうだ。敵戦艦はアイダホに任せる。それよりも、俺達は右の鬱陶しい奴を片付けろと言われた。調子に乗っている連中に、
戦艦の砲撃がどれほど恐ろしいか教育してやろう!」
「わっかりました!」

電話口の相手はそう言ってから、受話器を置いた。
テキサスの主砲が、左舷から右舷に向けられる。主砲が旋回を続ける間にも、敵巡洋艦2隻からの砲撃は続く。
新たな命中弾がテキサスの艦体を震わせる。
前部甲板や中央部では火災が発生しており、ダメコン班が懸命の消火活動に当たっているのだが、相次いで落下してくる敵弾のせいで
思うように消火が捗らない。

「敵巡洋艦との距離、更に縮まります!距離は13000!」

CICからの報告が伝えられた瞬間、また新たな命中弾がテキサスを叩いた。
既に、テキサスは48発の命中弾を受けている。右舷側の両用砲は全てが粉砕され、対空火器も大半が鉄屑に変換されている。
5基の主砲塔と艦橋は無事であるが、このまま行けば、遅かれ早かれ、艦橋などの上部構造物にも致命弾が襲ってくるであろう。
敵弾を更に6発ほど受けたところで、テキサスの狙いは定まった。

「測的完了!発射準備良し!」
「撃ち方始めぇ!」

ベーカーは溜まった鬱憤を晴らすかのような大音声で命じた。
テキサスの14インチ砲が唸った。
定石通り、まずは1門ずつの交互撃ち方からだ。第2射に入る前に、敵巡洋艦が第18斉射を放つ。
敵弾が落下する前に、敵2番艦の左舷側海面に5本の水柱が吹き上がった。
その大きさたるや、敵巡洋艦の砲撃がまるで小石の投擲にしか見えぬほどである。

「第1射、弾着!」
「ううむ、全て近弾か。」

ベーカーは不満げな口ぶりで呟く。その直後、敵巡洋艦の砲弾が降ってきた。
艦橋が敵の命中弾炸裂の衝撃で、ひとしきり激しく揺れた。
14インチ砲が第2射を放つ。この第2射は、敵2番艦を飛び越えた位置に着弾して海水を吹き上げたのみに留まった。
敵巡洋艦が更に斉射を繰り返すが、テキサスの装甲は打ち抜けない。
第3射が放たれ、砲弾が緩やかな放物線を描いて、敵2番艦に殺到していった。
砲弾は2発が右舷側、3発が左舷側海面に落下した。

「敵2番艦を挟叉しました!」
「ようし、一斉撃ち方!」

ようやく挟叉を得られたことに満足したベーカーは、次の射撃ステップに進ませた。
斉射を行うまでの間、30秒は砲が撃てない。
その間、敵艦から放たれた斉射弾がテキサス目掛けて落下してきた。唐突に、これまでよりも大きな衝撃が艦齢34年を過ぎた老戦艦を打ち振るった。
ベーカーは、中央部から伝わったその衝撃に、両用砲弾庫が爆発したなと確信した。

「ダメコン班より報告!敵弾命中により両用砲弾庫が誘爆!火災が発生しています!」

「すぐに被害箇所の消火を行え!砲術、主砲は撃てるか!?」

ベーカーは新たな被害発生に対して指示を飛ばしながら、砲術科に一番気掛かりだった点をすかさず問いただした。

「はい、主砲は健在です!射撃準備完了、これより斉射を行います!」
「よし、ぶちかませ!」

2秒後に、テキサスは10門の14インチ砲弾を放った。その衝撃たるや、交互撃ち方の時とは比べものにならない。
お返しだとばかりに放たれた10発の大口径砲弾は、マオンド巡洋艦目掛けて殺到していった。
マオンド巡洋艦の周囲に大きな水柱が立ち上がる。ベーカーは、その水柱の中に命中弾の閃光が光るのを見た。
水柱が崩れ落ちると、敵2番艦は艦体後部からオレンジ色の火災炎を背負っていた。
後部艦橋があったと思しき位置は猛火に包まれ、後部の主砲塔は沈黙している。
特に第3砲塔は爆発によって破壊されたのか、砲身が見当違いの所に向いている。
しかし、敵2番艦は依然として速力を落とさず、残った前部2基の主砲塔で反撃を行った。

「あれだけになっても、まだ刃向かってくるとは。タフな野郎だ。」

ベーカーはそう言いながらも、敵2番艦の勇敢さに感心した。
敵弾の砲弾がテキサスに落下する。
テキサスの周辺が敵弾の弾着で泡立ち、命中弾が老戦艦の艦体を一寸刻みに削り取る。
1発の砲弾は、後部艦橋の天辺に当たって炸裂し、上部取り付けられていた20ミリ機銃座をごっそりともぎ取った。
もう1発は煙突からやや後ろ側に離れたクレーンの基部に命中して、クレーンを根本から叩き折り、本体が金属的な叫喚を上げて燃えさかる舷側に倒れた。
別の1発は砲塔の側面に命中し、緊急時のために取り付けられていたゴムボート(既に、破片でボロボロになっていたが)を吹き飛ばした。
第3斉射を放つ直前に、敵巡洋艦2隻が更に斉射弾を放つ。その4秒後にテキサスは砲を放った。
第3斉射弾が弾着する前に、敵巡洋艦の放った砲弾がテキサスを叩く。
1発はテキサスの第3砲塔の天蓋に命中するが、分厚い装甲を破ることは出来ず、あらぬ方向に弾き飛ばされた。

もう1発は、テキサスの艦首側面に命中した。砲弾は錨鎖庫内で炸裂し、艦首に取り付けられていた錨を吹き飛ばした。
第3斉射弾が落下し、敵2番艦の周囲に水柱が吹き上がる。その間に、爆炎が躍り上がるのを、ベーカーはしかと目にしていた。
水柱が崩れ落ちた後、敵2番艦は艦容を一変させていた。
前部にあった2基の砲塔や、その後ろにあったやや背の低い艦橋は、後部と同様に炎に包まれている。
2基の砲塔は、命中弾のためかごっそりと無くなっている。
心なしか、艦体が前部の辺りで沈み込んでいるようにも見え、速力は急激に低下しつつあった。
敵2番艦はもはや、戦闘能力を喪失していた。

「敵2番艦撃破!沈没確実の被害を与えた模様!」

砲術長が弾んだ声で報告してきた。

「次は敵3番艦だ。」

ベーカーは別段喜ぶまでもなく、新たな指示を飛ばす。主砲の砲身が敵3番艦に指向される。
敵3番艦は、2番艦の火災炎によってその姿をさらけ出されている。
前部と後部に2基ずつ配置された砲塔に、クリーブランド級やブルックリン級に類似する背の低い艦橋を持つ巡洋艦。
艦の全長は、アメリカ海軍の大型軽巡と比べてやや小さい。
(敵はブリムゼル級巡洋艦か。)
ベーカーは、敵の艦種を言い当てた。
ブリムゼル級巡洋艦は、6インチ相当の主砲を8門ほど積んでおり、実質的に軽巡洋艦に分類される艦だ。
テキサスによって撃沈破された1番艦と2番艦も同じ艦種だった。

「1隻じゃあまり強くない相手でも、複数集まるとなかなかに侮れない物だな。」

ベーカーは、背筋に冷たい物を感じながらそう呟いた。
テキサスが第1射を放つ前に、敵巡洋艦が斉射を放つ。
敵巡洋艦は、僚艦が相次いでやられたにも関わらず、決して逃げようとはしない。
テキサスは、最初から斉射を放った。テキサスの第1斉射が落下する前に、敵巡洋艦の射弾がテキサスに降ってきた。
これまでの命中弾で散々痛めつけられた老戦艦の艦体が、更なる打撃に打ち震える。
テキサスが第2斉射を放つ前に、敵巡洋艦は2度から3度の間隔で射弾を放ってくる。
既に砲撃精度が良好になっている敵3番艦の砲撃は、確実にテキサスを捉え続けた。

「後部甲板に新たな火災が発生!」
「中央部に被弾!ダメコン班に死傷者が出ています!」
「後部艦橋付近に火災が延焼中!応援を寄越して下さい!」

相次ぐ被害報告に、ベーカーはこのテキサスが容易ならぬ状況に陥っている事が分かった。
(もう少し、もう少しだけ耐えくれ!)
彼は心中で、痛みに悶えているであろう老戦艦に対して励ましの言葉を送る。
テキサスが第2斉射を放った。砲弾は、敵巡洋艦目掛けて飛来する。
だが、第2斉射弾は敵巡洋艦を飛び越えた海面で着弾し、空しく水柱を上げただけに終わった。
第3斉射を放つ間に、7発の敵弾がテキサスを痛めつける。
うち、1発が後部艦橋に着弾し、後部艦橋に詰めていた要員を1人残らずなぎ倒した。
もう1発は、あろうことか、前部艦橋の基部に命中した。
命中の瞬間、ドーン!という凄まじい轟音がなり、誰もがその衝撃に足を取られ、転倒した。

「これじゃまるで、サンドバックだな。」

ベーカーは憎らしげな口調で呟いた。実際、テキサスはサンドバックよろしく、敵巡洋艦に撃ちまくられていた。
第3斉射が轟然と放たれた。乗員の怒りと共に放たれた10発の14インチ砲弾は、敵巡洋艦目掛けて殺到する。
敵巡洋艦もまた、新たな斉射弾を撃ち放った。

双方の射弾が上空ですれ違い、双方の目標に向かって行く。先に命中したのは、テキサスから放たれた14インチ砲弾であった。
10発のうち、2発が敵3番艦の中央部に命中していた。
2発の14インチ砲弾は、敵巡洋艦の装甲を紙同然に貫き、艦底部に達した所で炸裂した。
これが1発のみであれば、敵3番艦もまた、なんとか大破の状態で損害を抑えられたであろう。
しかし、命中弾が2発であった事が、敵3番艦の命運を決定づけた。最初に着弾した砲弾は艦底部やそれより上の区画を惜しげも
なく破壊し、火炎を周囲の区画に流し込んだ。
この一撃で身の毛のよだつような損害を受けた敵3番艦であったが、これだけならば、まだ助かる見込みはあった。
だが、もう1発の14インチ砲弾は、艦の大事な部分である竜骨を炸裂によってへし折ってしまった。
爆発エネルギーは竜骨を叩き割っただけでは飽きたらず、艦底部や艦腹にも大穴を開けてしまった。
これにより、敵3番艦の艦体は、真ん中の辺りで断裂する事になった。
テキサスもまた、敵3番艦に対する命中弾を確認する暇もなく、新たな命中弾に見舞われていた。
命中弾は計2発。
1発は第2砲塔の基部に命中し、甲板の板材を派手に吹き散らした物の、砲塔にはかすり傷程度しか着かなかった。
しかし、もう1発が問題であった。
命中の瞬間、ベーカーは艦橋が巨大なハンマーで真上から叩き潰されたような衝撃を感じていた。
(いかん、命中した!)
彼は、自分がいる艦橋に砲弾が命中したと思った。それほど、衝撃は凄まじかった。
だが、不思議なことに、彼は生きていた。
恐る恐る目を開けてみる。彼が居る中部艦橋は、スリットガラスが砕け散っているだけでどこも破壊されていなかった。

「艦長!大変です!」

副長が、血相を変えて艦長に歩み寄ってきた。

「艦橋トップの射撃指揮所が破壊されています!これより、統制射撃が不可能になります。」
「・・・・・なんてこったい!」

ベーカーは、余りのショックに卒倒しそうになった。敵弾は、上部艦橋に着弾していた。

改装によって、伝統の籠マストから三脚マストに変わっていたテキサスは、中部艦橋と上部艦橋に別れており、射撃指揮所や
レーダー類のほとんどは、上部艦橋に配備されていた。
しかし、敵巡洋艦の射撃は、そこを見事に射貫いており、テキサスはレーダー射撃、光学照準射撃が共に出来なくなっていた。
人間で言えば、まさに目を失ったに等しい打撃を受けたのである。

「敵3番艦はどうなっている?」

彼はふと、敵3番艦の事が気になり、右舷側海面に視線を向けた。
先ほどまで航行していた敵3番艦は、もはやテキサスに対して砲撃を行える状況ではなかった。
双眼鏡越しに、中央部から炎上しながら停止している3番艦が見える。
テキサスに向けられた主砲は沈黙しており、艦の前部と後部がややそり上がっている。
どうやら、先の第3斉射弾は、敵3番艦にとって上手い具合に致命弾となったようだ。

「あの様子じゃ、敵3番艦は助かりませんな。」
「しかし、こっちも手酷い損害を受けたよ。」

ベーカーはため息を吐きながら言う。

「5基の主砲は健在だが、それを全力で発揮させる射撃装置が壊された。それに、艦体のダメージも思ったよりも酷い。
特に、右舷中央部の火災は早く消さないとまずいことになる。実質的に、テキサスは大破同然の損害を受けてしまった。
今年1月のトアレ岬沖海戦で、2隻のクリーブランド級軽巡が、敵の戦艦に対して砲弾の嵐を浴びせた。その結果、
敵戦艦は射撃不能となり、撤退を始めた。それと同じ損害を、テキサスは被ってしまった。」

ベーカーは、より一層、深いため息を吐きながら言った。

「速射性能のある巡洋艦が集まれば、戦艦も制圧できるという事が、ここで改めて証明されたわけだ。俺はつくづく、
巡洋艦の群れと戦う事がどれほど恐ろしいか思い知らされたような気がする。奴らは、雑魚ではなかったな。」

戦艦ニューメキシコは、敵戦艦との激しい撃ち合いを繰り広げていた。
ニューメキシコが第12斉射を放つと同時に、敵戦艦の砲弾が落下してくる。
艦体に激しい振動が伝わり、基準排水量33000トンの巨体がガクガクと震えた。

「今のは近かったな。」

ウェイラー少将は、声を震わせながら呟く。
CICの中からは、外の様子は見渡すことが出来ないが、それでも、次々ともたらされる情報によって状況が把握できる。
ニューメキシコは、敵1番艦からの射弾を17発も浴びており、左舷側の両用砲ならびに機銃座は全滅し、第2砲塔が使用不能となっている。
その一方で、敵1番艦に対しては13発を命中させ、主砲塔2基を使用不能にしたが、敵1番艦は残る主砲でもってニューメキシコを叩いている。

「弾着!敵戦艦に2発命中!」

CICに詰めているニューメキシコの砲術長が、艦橋に向けて砲撃の結果を知らせている。

「敵艦には、確実にダメージを与えているんだが、敵は妙にしぶといな。」
「テキサスが敵巡洋艦との砲戦に忙殺されていなければ、勝負はもっと早めに付いたのですが。」

テキサスは、何故か後方からやってきた敵巡洋艦と戦闘を行っている。
状況はテキサスにいささか不利であると伝えられているが、支援をしようにも、戦艦群との砲戦で手一杯の3戦艦ではどうすることもできない。
ここは、テキサスの奮戦に賭けるしかなかった。
第13斉射、第14斉射と、残り9門に減じたニューメキシコの主砲が唸る。
敵戦艦は、斉射弾が落下する度に艦体に穴を穿たれ、戦闘力を喪失していく。だが、それでも戦意は衰えず、依然、健在な4門の主砲で反撃してくる。
またニューメキシコに敵弾が命中した。ガガァンという砲弾が命中する音と振動が、CICに伝わった。

「後部甲板で更に火災発生!」
「第2煙突付近に命中弾!火災発生の模様!」

ニューメキシコの被害も徐々に蓄積されている。
現在、ニューメキシコは中央部と後部甲板に火災を発生させられており、損害のレベルは、現時点で中破と判定をされるほどだ。
この時、朗報と悲報が同時に入ってきた。

「テキサスより入電、我、敵巡洋艦3隻と交戦し、2隻を撃沈、1隻を大破せり。我、射撃指揮所損傷により統一射撃不能。
他にも、艦の各所で火災発生、現在消火作業中なり。」
「アイダホより入電、我、敵戦艦撃沈。我の損害、被弾24発、主砲塔2基使用不能。これよりミシシッピーの支援を行う。」

この2つの報告を聞いたウェイラーは、複雑な表情を浮かべた。

「テキサスが統一射撃不能という事は、戦艦としての役割は絶たれたも同然か。よりにもよって、第8艦隊から譲って貰った2隻の
戦艦がことごとく戦闘不能になるとは・・・・・敵の巡洋艦部隊は、上手い具合にテキサスを痛め付けたものだ。」
「アイダホも、マウニソラ級戦艦に思いも寄らぬ苦戦を強いられたようですな。しかし、ミシシッピーの支援に移るとなれば、敵2番艦は
より短時間で片付けられる事になるでしょう。」
「とにかく、今は、目の前の相手を倒さねばな。」

戦艦ニューメキシコ艦長であるロイド・ブロンソン大佐は、左舷側に見えるオレンジ色の炎を見つめていた。
そのオレンジ色の炎から発砲炎が煌めく。

「畜生!マイリーの野郎はどこまでしぶといんだ。」

ブロンソン艦長は、マオンド戦艦のしぶとさに舌を巻いた。
敵戦艦は、自艦よりも強力な砲弾を受けながらも、尚も戦闘力を維持し続けている。
並みの戦艦ならば、とうに沈んでいるか、戦闘不能に陥っても不思議ではない損害を受けているはずなのだが、マオンド艦は
なかなか沈黙しなかった。
(きっと、連中の艦にも優秀なダメコン班がいるに違いない、そうでなければ、あんなに戦えるはずがない)
ブロンソン艦長は内心で確信する。

ニューメキシコが第15斉射を放った直後、敵戦艦の斉射弾が落下した。
4発中、1発は後部艦橋に命中して、その上部部分を爆砕した。
もう1発はクリッパー方式の艦首先端に命中し、鋭角的な角度で前方に伸びていた艦首は、この一撃で長さが短縮された。
残る2弾はニューメキシコの左舷側海面に落下した。
1つはちょうど、艦橋のすぐ側に立ち上がり、艦長はしばしの間、敵戦艦の姿を見る事が出来なくなった。
水柱が晴れると、そこにはより火災を拡大させた敵1番艦の姿があった。
敵1番艦は、中央部から後ろが火災炎に包まれ、黒煙が濛々とたな引いている。
先ほどまでは見えていた後部艦橋と思しき影は、今では小さくなっている。
ニューメキシコが放った第15斉射弾のうち、1発が後部艦橋を爆砕したのであろう。

「あの状態では、もはや戦闘は不可能だろうな。」

ブロンソン大佐はそう呟いた。だが、敵戦艦は戦闘能力を失っては居なかった。
敵戦艦の前部と、猛火に包まれていた後部分から新たに発砲炎が煌めいた。

「なっ!?」

ブロンソンは仰天した。前部はともかく、後部は完全に破壊したと思っていた。
しかし、その炎熱地獄と化して居るであろう後部の主砲塔から砲撃を行った。
ブロンソンの思いは間違ってはいたが、敵戦艦の後部部分は文字通り火炎地獄であった。
だが、そんな状況にも関わらず、砲塔内にいた砲手達は砲を撃ち放った。
ニューメキシコは第16斉射を放った。その直後に、敵戦艦の砲弾が着弾した。
いきなり、第1砲塔の辺りに閃光が煌めいた後、強烈な炸裂音が洋上を木霊した。

「なんて奴らだ!」

ブロンソンは敵1番艦の乗員の持つ戦意に、半ば恐怖にも似た感情を抱き始めていた。

ニューメキシコの射弾は、その10秒後に命中した。
敵1番艦の艦体に、4発が満遍なく命中した。
2発目は、健在であった前部の砲塔を吹き飛ばした。砲塔が破壊される際、砲身らしき物が宙に舞い上がるのが見えた。
それを機に、敵1番艦は力尽きたかのように速度を落とし始めた。
急激に速度を低下させる敵1番艦に、ニューメキシコを砲撃する余力は残されていなかった。

「艦長、先の命中弾で、第1砲塔が使用不能になりました。」
「・・・・・それは本当か?」

ブロンソン艦長は、無表情で副長に問い返す。副長の答えは、先と同じであった。
敵1番艦が放った最後の斉射は、1発だけがニューメキシコに命中した。
この命中弾は、ニューメキシコの第1砲塔を正面から叩き据えた。
砲弾が命中した瞬間、3本ある砲身は全てが爆圧でねじ曲げられ、それぞれがでたらめな方向に向けられた。
また、爆発エネルギーは主砲正面の装甲部にもダメージを与えた。
爆炎は砲塔内部まで及ばなかったが、衝撃は砲塔内部に及び、砲塔内で勤務していた砲手達は、内部に飛び散った鉄片によって負傷してしまった。

「これで、ニューメキシコは砲戦力の50%を失った事になるのか。敵もかなり手強いな。」

ブロンソン艦長は、敵1番艦に対してそのような感想を抱いた。
敵1番艦が沈黙した後、状況は大きく動いた。
唯一残った敵2番艦は、1隻で3隻のニューメキシコ級戦艦を相手取り、最終的には戦艦ミシシッピーを大破させたが、
自らも多数の砲弾を浴びせられ、最後には爆沈してしまった。
敵2番艦が爆沈すると、残りの敵艦隊は撤退を開始した。

「敵艦隊は撤退を開始しました。司令官、追撃に移りますか?」

幕僚の1人がウェイラーに尋ねてきた。だが、ウェイラーは首を縦に振らなかった。

「やめておこう。我々は、敵の旧式戦艦全てを撃沈し、他にも損害を与えたが、我々も少なからぬ手傷を負った。戦艦だけでも、
ミシシッピーとテキサスは大破し、ニューメキシコとアイダホは中破している。巡洋艦部隊も駆逐艦部隊も、損害は思ったよりも
多いようだ。ここはひとまず、ばらばらになった各艦を集めよう。」

ウェイラーは追撃を諦める事にした。
TG73.5は、ひとまず敵艦隊の撃退には成功したが、自身も少なくない損害を受けている。
こんな状態で追撃をかけても、満足な戦果は挙げられるはずもなく、かえって損害を増やすだけである。
(敵がベグゲギュスを待ち伏せている可能性もある)

ウェイラーが新たなる指示を下そうとした時、とある通信士官が血相を変えながら立ち上がった。
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