94 :始末記:2015/12/05(土) 21:25:43.45 ID:VLOFaOw+
第5話『マディノ狂想曲』
第5話『マディノ狂想曲』
大陸東部
新京特別区
大陸総督府
新京特別区
大陸総督府
日本本土で第34普通科連隊が出発した頃、総督府では受け入れの為の局長会議が行われていた。
秋月総督は会議の結果の報告を受ける為に執務室で書類に判を押す仕事に追われていた。
内線が鳴り、受話器を手に取り秋山秘書官の入室を許可する。
秋月総督は会議の結果の報告を受ける為に執務室で書類に判を押す仕事に追われていた。
内線が鳴り、受話器を手に取り秋山秘書官の入室を許可する。
「失礼します。
局長会議の報告書と関連資料をお持ちしました。」
「御苦労だった。
連中また目を血走らせて会議してたろう?
そろそろまとめて健康ドックに送り込んだ方がいいかもしれん。」「精神科のカウンセラーか、保養地への出張も必要かもしれません。」
局長会議の報告書と関連資料をお持ちしました。」
「御苦労だった。
連中また目を血走らせて会議してたろう?
そろそろまとめて健康ドックに送り込んだ方がいいかもしれん。」「精神科のカウンセラーか、保養地への出張も必要かもしれません。」
雑談をかわしながら秋山は書類に目を通していく。
「最終的に第34普通科連隊戦闘団となりますので、人員約2000名。
家族も含めますと1万五千人の移民計画の前倒しになります。」
家族も含めますと1万五千人の移民計画の前倒しになります。」
転移後に自衛隊には食料配給が優先されていたこともあり、婚活に不自由しなくなった。
さらに隊員の両親や妻の実家も含めて同居が増加していたことがこの人数になってしまった原因だ。
「扶養家族が多いな。
どさくさにまぎれて親戚とかも捩じ込ませてるだろう。
よく本土の役人連中が認めたな?
まあ、それは我々も同じだからとやかくは言えないが、こちらでの新生児の増加も予想より多い。
来年2月からの新都市植民計画を半月ほど前倒しだな。」
「政府がこのような状況を認めたのはやはり、本土の食料事情の悪化にあるようです。
一時は60%にまで伸びた自給率も年々低下しているとデータにあります。」
「やはり化学肥料の枯渇が響いてきたか。
むしろ今までよく持ったものだ。」
「気候が天の恵みを得るのに最適な環境だったのは間違いありません。
ただし、リン鉱石、カリ鉱石などを利用した化学肥料の恩恵が無いと一億におよぶ国民を食わせるのは無理があります。」
さらに隊員の両親や妻の実家も含めて同居が増加していたことがこの人数になってしまった原因だ。
「扶養家族が多いな。
どさくさにまぎれて親戚とかも捩じ込ませてるだろう。
よく本土の役人連中が認めたな?
まあ、それは我々も同じだからとやかくは言えないが、こちらでの新生児の増加も予想より多い。
来年2月からの新都市植民計画を半月ほど前倒しだな。」
「政府がこのような状況を認めたのはやはり、本土の食料事情の悪化にあるようです。
一時は60%にまで伸びた自給率も年々低下しているとデータにあります。」
「やはり化学肥料の枯渇が響いてきたか。
むしろ今までよく持ったものだ。」
「気候が天の恵みを得るのに最適な環境だったのは間違いありません。
ただし、リン鉱石、カリ鉱石などを利用した化学肥料の恩恵が無いと一億におよぶ国民を食わせるのは無理があります。」
転移前は輸入に頼りきりであった。
カリ鉱石はフィノーラで見つかり採掘に成功したが、リン鉱山は発見できていない。
カリ鉱石はフィノーラで見つかり採掘に成功したが、リン鉱山は発見できていない。
「まあ、大陸に来れば飢えから救われるからな。
『新浜市』の創立と同時に『竜別宮』計画も進めるよう関係各位に通達してくれ。」
『新浜市』の創立と同時に『竜別宮』計画も進めるよう関係各位に通達してくれ。」
大陸東部地区
旧マディノ子爵領
旧マディノ子爵領
戦犯マディノ子爵の領地だったこの地は王都ソフィアに徒歩で3日ほどの距離にある。
子爵自体は有能な領主でたり、魔術を使った治水工事や農地開発、病気の治療などを行っていたせいで領民の支持は厚かった。
だが現在は王国から派遣された代官が統治している。
当主が戦犯として断罪されたので改易となり、一族は散り散りとなった。
戦犯の領土なので、年貢は総督府の基準を違反し七割という高いものになっていた。
街の近郊のアンクル村では近隣の農村の村長や豪農といった有力者が集会場に集まっていた。
子爵自体は有能な領主でたり、魔術を使った治水工事や農地開発、病気の治療などを行っていたせいで領民の支持は厚かった。
だが現在は王国から派遣された代官が統治している。
当主が戦犯として断罪されたので改易となり、一族は散り散りとなった。
戦犯の領土なので、年貢は総督府の基準を違反し七割という高いものになっていた。
街の近郊のアンクル村では近隣の農村の村長や豪農といった有力者が集会場に集まっていた。
「このままでは村人は女房や娘を売るしかなくなる。」
「もしくは一家揃って首を吊るかだな。」
「もしくは一家揃って首を吊るかだな。」
皆が頭を抱えている。
「他の領地では、年貢は四割で済んでいるそうだ。
やはり、前領主様のせいで・・・」
やはり、前領主様のせいで・・・」
「バカ、貴様!!
お館様の御恩を忘れたか!!」
お館様の御恩を忘れたか!!」
殴りあいになりそうな会合の代表者達をこの村の村長モンローは宥めて、今日は解散させることにした。
家に戻ると娘のジーンが心配そうに見ている。
家に戻ると娘のジーンが心配そうに見ている。
「お父さん・・・」
「大丈夫だ・・・この村は守って見せる。」
「大丈夫だ・・・この村は守って見せる。」
そう言って書斎に籠りだした。
「もうこの手しかないな。」
筆を取り書を書き始めた。
マディノ代官所
王国より派遣された代官エミリオは困窮する大貴族の3男である。
年貢による収入が半分以下に減ったが、人間生活レベルはなかなか落とせないので蓄えが激減している状態だった。
エミリオは三男ながら文官としてそれなりに才能を示したのでマディノ代官に任命された。
マディノの地は王国からの悪感情の強い。
この地から搾取することを王国は目溢しして、収益を伸ばしたエミリオの内政家として評価を与えていた。
そして、実家には過剰に搾取した年貢の一部を横流ししていた。
自己申告で四公六民が実質は七公三民である。
そんな我が世の春を謳歌していたエミリオはこの世の終わりのような顔をしていた。
年貢による収入が半分以下に減ったが、人間生活レベルはなかなか落とせないので蓄えが激減している状態だった。
エミリオは三男ながら文官としてそれなりに才能を示したのでマディノ代官に任命された。
マディノの地は王国からの悪感情の強い。
この地から搾取することを王国は目溢しして、収益を伸ばしたエミリオの内政家として評価を与えていた。
そして、実家には過剰に搾取した年貢の一部を横流ししていた。
自己申告で四公六民が実質は七公三民である。
そんな我が世の春を謳歌していたエミリオはこの世の終わりのような顔をしていた。
「検地ですか?」
エミリオの正面には大陸総督府検地局ソフィア支部第3測量課課長藤井八郎が名刺を渡してくる。
「はい、畑の面積と収量の調査に参りました。
課税台帳の整備に当たるものでして今月はこちらの領内で測量や戸籍の調査も合わせて行わせて頂きます。
あ、作業自体はこちらで行いますので軒先と過去の資料を提供して頂ければ結構です。
あ、ご心配なく
自己申告による1割程度の誤差は『修正』すれば済むことなので、そちらに責任が及ぶことではありません。」
課税台帳の整備に当たるものでして今月はこちらの領内で測量や戸籍の調査も合わせて行わせて頂きます。
あ、作業自体はこちらで行いますので軒先と過去の資料を提供して頂ければ結構です。
あ、ご心配なく
自己申告による1割程度の誤差は『修正』すれば済むことなので、そちらに責任が及ぶことではありません。」
藤井としても多少の水増しによる利権を大袈裟に騒ぎ立てるつもりは全く無く、常識の範囲と日本に納める分を確保してくれれば文句は無かった。
だがエミリオは首筋が冷える思いを感じていた。
水増しの範囲は1割どころか3割に達している。
すでに王国国務省からの命令書や委任状を見せられているので断るのは不可能だ。
だが今は藤井に気がつかれわけにはいない。
努めて冷静に振る舞う必要があった。
だがエミリオは首筋が冷える思いを感じていた。
水増しの範囲は1割どころか3割に達している。
すでに王国国務省からの命令書や委任状を見せられているので断るのは不可能だ。
だが今は藤井に気がつかれわけにはいない。
努めて冷静に振る舞う必要があった。
「いつ頃から始めるのですか? 」
「15日に調査団がやって来ます。
まあ、5、60人ほどですかね?
そのあたりは後日また通知しますので宜しくお願いします。
宿泊に関しましては閉門措置になっている前領主館が使えるそうなのでそちらを貸して頂きます。」
まあ、5、60人ほどですかね?
そのあたりは後日また通知しますので宜しくお願いします。
宿泊に関しましては閉門措置になっている前領主館が使えるそうなのでそちらを貸して頂きます。」
藤井が帰った後で執務室で頭を抱えている。
「1割だと・・・残り二割分どうすれば・・・、15日でどうしろと言うんだ・・・」
傀儡政府と化している王国は、日本との協定違反の責任を自分に押し付けて、ギロチンに掛けられてその首を総督に献上させられるかもしれない。
噂によると総督府にはマーマン王の首やケンタウルスの族長の剥製が飾られているという。
猟奇的な趣味を持った総督に愛でられる自分の剥製や首を想像して、胃が痛くなってきた。
とりあえず代官所の役人達を集める。
噂によると総督府にはマーマン王の首やケンタウルスの族長の剥製が飾られているという。
猟奇的な趣味を持った総督に愛でられる自分の剥製や首を想像して、胃が痛くなってきた。
とりあえず代官所の役人達を集める。
「どの村にも畑の開墾をさせて、それっぽく見せかけさせろ。
その間に恐らく年貢を免れる為の隠し畑がどの村にもあるに違いない。
それを探し出せ!!」
「見つけたらその村人の処置はどうしましょうか?」
「ギロチンに決まってるだろ!!
女子供は売り飛ばせ!!
忘れるな、この地は日本の都市を破壊し、3万の民を死なせた戦犯マディノ子爵の治めていた地だぞ。
どんな嫌がらせを受けるかわからんのだ。
調査団には賄賂や女をあてがい、機嫌を取らねばならない。
報復として皇都がどのような惨状になったのかを思い出せ!!」
その間に恐らく年貢を免れる為の隠し畑がどの村にもあるに違いない。
それを探し出せ!!」
「見つけたらその村人の処置はどうしましょうか?」
「ギロチンに決まってるだろ!!
女子供は売り飛ばせ!!
忘れるな、この地は日本の都市を破壊し、3万の民を死なせた戦犯マディノ子爵の治めていた地だぞ。
どんな嫌がらせを受けるかわからんのだ。
調査団には賄賂や女をあてがい、機嫌を取らねばならない。
報復として皇都がどのような惨状になったのかを思い出せ!!」
その言葉に役人達も震えあがる。
僅か数時間の攻撃で人口200万を誇った帝国皇都は、七割に及ぶ死者を出して千年皇都の歴史を灰塵のもとに晒して消滅したのだ。
僅か数時間の攻撃で人口200万を誇った帝国皇都は、七割に及ぶ死者を出して千年皇都の歴史を灰塵のもとに晒して消滅したのだ。
「エミリオ様の仰ることは最もですが、我々だけでは日本に対するおもてなしの方法がわかりません!!
ですが、最近この地の盗賊ギルドを壊滅させて吸収した新興ギルドのギルドマスターが日本人らしいのです。
彼の意見を聞いてみるのが良いのでは無いでしょうか?」
「それはいい。
我らが日本人を重用しているアピールにもなるな。
それで、そのギルドとマスターの名はなんといったかな?」
「『石和黒駒一家』の黒駒勝蔵というそうです。」
ですが、最近この地の盗賊ギルドを壊滅させて吸収した新興ギルドのギルドマスターが日本人らしいのです。
彼の意見を聞いてみるのが良いのでは無いでしょうか?」
「それはいい。
我らが日本人を重用しているアピールにもなるな。
それで、そのギルドとマスターの名はなんといったかな?」
「『石和黒駒一家』の黒駒勝蔵というそうです。」
王都ソフィア
検地局ソフィア支部
検地局ソフィア支部
マディノから戻った藤井は調査団に参加するメンバーを召集して、ミーティングを始める。
「今回の調査の第一の目的は畑の収穫量を正確に調べることです。
第二に現地で産出される金、銀、銅の鉱山の開発と徴用。
第三に現地住民の人口や生活実態の調査。
第四に陸上自衛隊が新たに建設する分屯地の視察と測量になります。
自衛隊からは浅井二等陸尉に御同行して頂きます。」
第二に現地で産出される金、銀、銅の鉱山の開発と徴用。
第三に現地住民の人口や生活実態の調査。
第四に陸上自衛隊が新たに建設する分屯地の視察と測量になります。
自衛隊からは浅井二等陸尉に御同行して頂きます。」
制服を着た浅井が規律し、敬礼する。
「御紹介に預かりました浅井です。
今回自衛隊から施設の人間を中心に10名ばかりと車両の提供をさせて頂きます。
自分が来年からマディノの分遣隊長に就任することになっていますので、全力で皆様のサポートをさせて頂きます。」
今回自衛隊から施設の人間を中心に10名ばかりと車両の提供をさせて頂きます。
自分が来年からマディノの分遣隊長に就任することになっていますので、全力で皆様のサポートをさせて頂きます。」
出席者から拍手を受けて席に座る。
今回は鉱山開発局や大陸鉄道の測量隊も同行する。
今回は鉱山開発局や大陸鉄道の測量隊も同行する。
「今回は検地局さんの幹事で助かりますなあ。
前回はうちでしたから。」
前回はうちでしたから。」
鉱山開発局の松本がそんなことを言い出すので浅井が首を傾げる。
「今回はですか?」
「ああ、浅井さんは初めてでしたな。
この調査団は毎月組織されてましてね。
今回で60回目なんです。
最終的大陸全土1500領邦全部を回ることが目標なんですけどね
で、複数の部署の人間が合同で行うので交代で仕切る部署を幹事として設定して進行するわけです。
自衛隊さんも何度か担当してますよ。」
「今回はですか?」
「ああ、浅井さんは初めてでしたな。
この調査団は毎月組織されてましてね。
今回で60回目なんです。
最終的大陸全土1500領邦全部を回ることが目標なんですけどね
で、複数の部署の人間が合同で行うので交代で仕切る部署を幹事として設定して進行するわけです。
自衛隊さんも何度か担当してますよ。」
松本の説明を浅井はなるほどと聞いている。
浅井は先月の事件に巻き込まれ本来の任務から外れていた。
そこにちょうど次の任地での調査団の計画があったので捩じ込まれたのだ。
松本の説明が終わったので、藤井が説明を始める。
浅井は先月の事件に巻き込まれ本来の任務から外れていた。
そこにちょうど次の任地での調査団の計画があったので捩じ込まれたのだ。
松本の説明が終わったので、藤井が説明を始める。
「我々、公務員からは40名ほど。
期間中の生活支援の為に10名のヘルパーさんが同行します。
あとは現地で何かを調査したいと言い出す他機関の人間か、商売を考える民間資本の調査隊員。
だいたい60名ほどになります。ね。
で、ヘルパーさんの代表さんがこちらの市原涼子さんです。」
期間中の生活支援の為に10名のヘルパーさんが同行します。
あとは現地で何かを調査したいと言い出す他機関の人間か、商売を考える民間資本の調査隊員。
だいたい60名ほどになります。ね。
で、ヘルパーさんの代表さんがこちらの市原涼子さんです。」
浅井は列車襲撃事件の時に弓矢を取って奮戦していた市原女史の姿を見て驚く。
「あら、自衛隊さんの代表は浅井さんだったのね、お久しぶり。
元気してた?」
「はい、前回はいろいろお世話になりました。」
「おや、お二人はお知り合いですか?」
「えぇ、私と浅井さんは戦友と言ってよい間がらでして・・・」
元気してた?」
「はい、前回はいろいろお世話になりました。」
「おや、お二人はお知り合いですか?」
「えぇ、私と浅井さんは戦友と言ってよい間がらでして・・・」
その後、列車襲撃事件の浅井や市原の武勇伝を誇張混じりに一時間喋りだした。
今回のミーティングはそれで解散となった。
貴重な教訓を残して
今回のミーティングはそれで解散となった。
貴重な教訓を残して
アンクル村
村に即席で造られた市場で人々が様々な物を売っている。
ジーンはこの光景がもう見られないくなるかもと胸が締め付けられる思いを感じていた。
ジーンはこの光景がもう見られないくなるかもと胸が締め付けられる思いを感じていた。
「勝蔵さん・・・」
ジーンはお目当ての人物を見つけて駆け寄っていった。
ほうとうという麺料理を屋台で作って、道行く人に売っていた角刈りにサングラスの男は眉をしかめる。
この男がマディノの地の盗賊ギルドを倒し、新たな顔役となった石和黒駒一家の組長黒駒勝蔵である。
ほうとうという麺料理を屋台で作って、道行く人に売っていた角刈りにサングラスの男は眉をしかめる。
この男がマディノの地の盗賊ギルドを倒し、新たな顔役となった石和黒駒一家の組長黒駒勝蔵である。
「あんまりあっしらに関わってはいけないと行ってあるでしょう。」
「でも他に頼れる人がいなくて・・・お願い勝蔵さん、お父さんを助けて・・・」
「村長に何が・・・」
「お父さんが日本の課長様に直訴をしようと・・・」
「でも他に頼れる人がいなくて・・・お願い勝蔵さん、お父さんを助けて・・・」
「村長に何が・・・」
「お父さんが日本の課長様に直訴をしようと・・・」
勝蔵はジーンが何を言っているのか理解出来なかった。
直訴や課長という言葉は理解できるが、『課長に直訴』がどんな一大事が理解できない。
だがジーンのような大陸の村人にとって、日本の課長という役職は貴族の伯爵様くらいの雲の上の人間のような絶対的権力者のような認識なのだ。
直訴や課長という言葉は理解できるが、『課長に直訴』がどんな一大事が理解できない。
だがジーンのような大陸の村人にとって、日本の課長という役職は貴族の伯爵様くらいの雲の上の人間のような絶対的権力者のような認識なのだ。
「もう少し、詳しく、落ち着いて話してくだせぇ。」
だがジーンから聞き出す前に兵士の一団が現れて勝蔵を取り囲む。
「石和黒駒一家のギルドマスター黒駒勝蔵氏ですね。
お代官様が貴公のお力を借りたいとお呼びになっています。
御同行して頂きたい。」
「石和黒駒一家のギルドマスター黒駒勝蔵氏ですね。
お代官様が貴公のお力を借りたいとお呼びになっています。
御同行して頂きたい。」
兵士達の隊長がそう語りかけてきた。
勝蔵としても土地の支配者と懇意にすることは悪い話ではない。
だがジーンが顔を青ざめさせている。
兵士達がジーンを見てひそひそ話合っている。
その話を隊長も聞いて頷いている。
勝蔵としても土地の支配者と懇意にすることは悪い話ではない。
だがジーンが顔を青ざめさせている。
兵士達がジーンを見てひそひそ話合っている。
その話を隊長も聞いて頷いている。
「娘、今度日本から来る要人の接待役を申し付ける。
今すぐ同行してもらおう。」
「お、お父さんに相談してから・・・」
「娘、逆らうか!!」
今すぐ同行してもらおう。」
「お、お父さんに相談してから・・・」
「娘、逆らうか!!」
殺気だった隊長の目前に突然刃が姿を現した。
「やめなせぇ
嫌がってるでしょう・・・」
嫌がってるでしょう・・・」
勝蔵が屋台に隠していた白鞘の日本刀を突き付けたのだ。
いつ抜いたのかわからなかったが、隊長は逆らわれたと激昂した。
「貴様も逆らうか!!
えぇい、斬ってしまえ!!」
「貴様も逆らうか!!
えぇい、斬ってしまえ!!」
10人ほどの兵士が槍や剣を向けてきた。
「やれやれ余計な殺生はしたくなかったんですがね。」
勝蔵は白鞘の柄と持つ手にサラシを巻いた。
剣と刀を突きつけあった二人は、共に同じことを考えていた。
『『誰か止めてくれないかな?』』
黒駒勝蔵としては、日本人として大陸で優遇される立場ではあるが、日本に対して些か後ろ暗い立場である。
せっかく基盤を築いた新天地で、現地の統治機関と揉め事を起こすのは得策では無いのは理解している。
村長の娘の危機に咄嗟に刀を抜いたが、もっと穏便な方法はなかったのかと後悔していた。
せっかく基盤を築いた新天地で、現地の統治機関と揉め事を起こすのは得策では無いのは理解している。
村長の娘の危機に咄嗟に刀を抜いたが、もっと穏便な方法はなかったのかと後悔していた。
『ま、そんな方法が考えられるようならヤクザなんかやってないか。』
覚悟を決めて刀に構える。
マディノ代官所アンクル村番所の兵士長リカードも日本人と事を構えると後々厄介そうなことに気がつき、どうしようかと悩んでいた。
冷静さを欠いて刃を抜いてしまったが後ろにいる五人の部下達の手前、引っ込みがつかなくなっていた。
冷静さを欠いて刃を抜いてしまったが後ろにいる五人の部下達の手前、引っ込みがつかなくなっていた。
「お辞めください、こんな往来で物騒な。」
間に村長のモンローが入り込んできた。
最初にリカードの側に近づくと、こっそりと銀貨七枚の入った袋を渡す。
最初にリカードの側に近づくと、こっそりと銀貨七枚の入った袋を渡す。
「娘がご迷惑をお掛けしたようで、今日のところはこれで御勘弁下さい。」
十分だった。
銀貨を見せれば部下達も納得する。
あとでこの金で酒でも奢れば問題は立ち消える。
銀貨を見せれば部下達も納得する。
あとでこの金で酒でも奢れば問題は立ち消える。
「ふん、今日は村長の顔を立てて引き下がってやろう。
だが、黒駒の勝蔵、お代官様がお呼びの件には応えてもらうぞ。」
リカードが剣を納めたので、勝蔵も刀を鞘に納める。
だが、黒駒の勝蔵、お代官様がお呼びの件には応えてもらうぞ。」
リカードが剣を納めたので、勝蔵も刀を鞘に納める。
「いいでしょう。
夕方になりますがよろしいてすかい?」
夕方になりますがよろしいてすかい?」
「お代官様にお伝えするが、なるべく早めにな。
あと、娘も同行するように、いいな!!」
あと、娘も同行するように、いいな!!」
再び刀を抜こうかと思った勝蔵をモンローが肩に手をあてて、首を横に振り抑えさせる。
リカード達がいなくなってから勝蔵はモンロー達に疑問を口にする。
リカード達がいなくなってから勝蔵はモンロー達に疑問を口にする。
「いいんですかい?
お嬢さんを日本の役人達に差し出すなんて・・・」
お嬢さんを日本の役人達に差し出すなんて・・・」
気の毒そうな顔をして言ってみたのだが反応がおかしい。
まるで勝蔵の言ったことが理解できないみたいだ。
まるで勝蔵の言ったことが理解できないみたいだ。
「ああ、マスター黒駒は娘が性的奉仕させられると憤っていられたのですか?」
「違うのかい?」
「いや、どうですかね。
でも日本の方々は村娘どころか、娼婦だって買わないじゃないですか・・・
たぶんリカード様もそこまで考えてなかったと思いますよ。」
「違うのかい?」
「いや、どうですかね。
でも日本の方々は村娘どころか、娼婦だって買わないじゃないですか・・・
たぶんリカード様もそこまで考えてなかったと思いますよ。」
事務所にしている酒場に戻る途中で、勝蔵は村長の言った意味を考えていた。
『日本の役人はそこまで堅物な連中だったか?
むしろこういう場所に出張してきたら羽目を外す連中ならいっぱい見てきたが・・・』
むしろこういう場所に出張してきたら羽目を外す連中ならいっぱい見てきたが・・・』
本土の石和温泉をシマにしていた黒駒一家は、そういった連中の要望に応える為に歓楽街に綺麗所を集めるのも商売にしてきた。
だから村長の言ったことがいまいち理解出来なかった。
マディノを新たなシマとしてからも現地の盗賊ギルドを倒し、酒場や娼館の経営に乗り出したが勝蔵自身は市場などのショバを守るのを好み、あまり関わっては来なかった。
だから村長の言ったことがいまいち理解出来なかった。
マディノを新たなシマとしてからも現地の盗賊ギルドを倒し、酒場や娼館の経営に乗り出したが勝蔵自身は市場などのショバを守るのを好み、あまり関わっては来なかった。
「あ、組長お帰りなさい。」
「おう今帰った。
そうだ、ちょっと荒木の奴を呼んできてくれ。」
「へい、わかりやした!!」
「おう今帰った。
そうだ、ちょっと荒木の奴を呼んできてくれ。」
「へい、わかりやした!!」
酒場の若いのに娼館を一手に任せている荒木を呼びに行かせる。
あまり使わない酒場の奥のオフィスで待っていると荒木がやってくる。
あまり使わない酒場の奥のオフィスで待っていると荒木がやってくる。
「組長、お呼びで?」
「おう、ちょっと聞きたいことがあってな。」
「おう、ちょっと聞きたいことがあってな。」
荒木は本土ではITヤクザとして荒稼ぎする遣り手だった。
詐欺や金融サイト関連のプログラム組んだり、書類作成、事務仕事の効率をあげるプログラム作成。
メイド喫茶やエロサイトの運営と架空請求など多岐に渡っていた。
しかし、日本がこの世界に転移すると第三次産業が壊滅状態となり、海外サーバーの消滅や通信の制限、金融の破綻、娯楽への出費の減少などですっかり組の末席に落ちぶれてしまっていた。
そんな荒木を勝蔵が新天地に招いて辣腕を奮って貰っていた。
詐欺や金融サイト関連のプログラム組んだり、書類作成、事務仕事の効率をあげるプログラム作成。
メイド喫茶やエロサイトの運営と架空請求など多岐に渡っていた。
しかし、日本がこの世界に転移すると第三次産業が壊滅状態となり、海外サーバーの消滅や通信の制限、金融の破綻、娯楽への出費の減少などですっかり組の末席に落ちぶれてしまっていた。
そんな荒木を勝蔵が新天地に招いて辣腕を奮って貰っていた。
「このマディノにもよ、鉱山開発やら自衛隊の分屯地建設やらでそれなりに日本人も住んでるだろ。
連中は客としてはどうなんだ?」
「うち以外はさっぱりですね。
たまに来てもリピーターが付きません。」
「原因は?」
「女の質です。
栄養の問題からか、貧相なスタイルの女が多いのはまあいいんですが・・・
こっちの人間、あんまり風呂とか入らないでしょ。
臭いとかきついんですわ。
化粧もケバいかな?
あと、衛生状態の問題から病気とか警戒されてます。
これが新京やリューベックだとまた事情が違うのですが。」
連中は客としてはどうなんだ?」
「うち以外はさっぱりですね。
たまに来てもリピーターが付きません。」
「原因は?」
「女の質です。
栄養の問題からか、貧相なスタイルの女が多いのはまあいいんですが・・・
こっちの人間、あんまり風呂とか入らないでしょ。
臭いとかきついんですわ。
化粧もケバいかな?
あと、衛生状態の問題から病気とか警戒されてます。
これが新京やリューベックだとまた事情が違うのですが。」
日本人向けのインフラが整備された新京特別区は当然として、大陸人て日本人の商業の最前線であるリューベックも衛生やインフラの設備の整備が進んでいるらしい。
もう一つの理由として、新京やリューベックに住んでいる、もしくは訪れる大陸人の大半は貴族や商人といった富裕層やその従者達で清潔に出来る余裕を持っている人間達だ。
もう一つの理由として、新京やリューベックに住んでいる、もしくは訪れる大陸人の大半は貴族や商人といった富裕層やその従者達で清潔に出来る余裕を持っている人間達だ。
「衛生管理や十分な栄養、講習によるテクニックや化粧の仕方なんかは日本で蓄積のあるうちの娼館は他を圧倒しています。
ただ、イメージの問題でやはり日本人客は少数に留まっています。
日本人あまりに女を襲わない、口説かない、買わないので、こちらの人間は日本人が性的なことに興味が無いと誤解されている現象が起きてるって話です。」
ただ、イメージの問題でやはり日本人客は少数に留まっています。
日本人あまりに女を襲わない、口説かない、買わないので、こちらの人間は日本人が性的なことに興味が無いと誤解されている現象が起きてるって話です。」
荒木の話に色々と合点がいった。
失礼と自覚しつつも先程一緒にいた村長の娘ジーンと比較しても思い当たるフシがいっぱいある。
失礼と自覚しつつも先程一緒にいた村長の娘ジーンと比較しても思い当たるフシがいっぱいある。
「どうも俺は話をややこしくしただけだったか?
いや、あの兵士達は随分余裕が無さそうで焦ってる様子だったが・・・」
いや、あの兵士達は随分余裕が無さそうで焦ってる様子だったが・・・」
話を聞かされた荒木は心当たりを勝蔵に話し出す。
「組長、それはこのマディノが今年最後の検地の対象になったからですよ。」
「ああ、団体さんが来るって話だったな。」
「ああ、団体さんが来るって話だったな。」
日本の異世界転移によって、全国にいた暴力団組織や任侠団体、或いは半グレといった連中は一度にそのシノギを失った。
社会に寄生虫のような生き方をしていた者達は宿主が病になると真っ先に切り捨てられる立場に変わったのだ。
戻るところのある者達は組織から離れ、残された者達は少ないシェアを奪い合い血が流された。
社会に寄生虫のような生き方をしていた者達は宿主が病になると真っ先に切り捨てられる立場に変わったのだ。
戻るところのある者達は組織から離れ、残された者達は少ないシェアを奪い合い血が流された。
それは、石和黒駒一家も例外では無く、困窮した先代の若頭だった勝蔵の兄は、組長だった父に黙って鬼畜に手を染めた。
当時、石和からほど近い青木ヶ原の樹海では、異世界転移により困窮や絶望を拗らせて自殺が激増していた。
それらの遺品を漁って売り飛ばすというものだった。
それだけなら良かったのだが、新鮮な死体から臓器摘出までやらかしていたらしい。
最初は鼻白んでいた組員達だが回を重ねるごとに参加者が増えていき、『青木ヶ原事件』に巻き込まれて大月市で盛大にやらかしてしまった。
若頭だった長男と主だった組員の大半を失い、残った組員達も逮捕されると他組織が次々と石和に乗り込んできた。
憤死した父に変わって、組から離れて自衛隊にいた次男が組長になる為に戻ってきた。
それが黒駒勝蔵である。
当時、石和からほど近い青木ヶ原の樹海では、異世界転移により困窮や絶望を拗らせて自殺が激増していた。
それらの遺品を漁って売り飛ばすというものだった。
それだけなら良かったのだが、新鮮な死体から臓器摘出までやらかしていたらしい。
最初は鼻白んでいた組員達だが回を重ねるごとに参加者が増えていき、『青木ヶ原事件』に巻き込まれて大月市で盛大にやらかしてしまった。
若頭だった長男と主だった組員の大半を失い、残った組員達も逮捕されると他組織が次々と石和に乗り込んできた。
憤死した父に変わって、組から離れて自衛隊にいた次男が組長になる為に戻ってきた。
それが黒駒勝蔵である。
「荒木、代官様に呼ばれてるからお前も着いてこい。
難しい話は苦手だからな。
任せるかもしれん。」
「わかりやした兄貴、任せて下さい!!」
難しい話は苦手だからな。
任せるかもしれん。」
「わかりやした兄貴、任せて下さい!!」
勝蔵に心酔している荒木は勝蔵に信頼されてることが判ると、つい昔のクセで『兄貴』と呼んでしまう。
組の片隅で燻っていた自分を拾い上げてくれた大恩があるのだ。
帰ったら嫁に報告して呆れられるのが日常となっていた。
組の片隅で燻っていた自分を拾い上げてくれた大恩があるのだ。
帰ったら嫁に報告して呆れられるのが日常となっていた。
マディノに向かう街道を4台の車両が走っていた。
例によって舗装が土のままの街道では余りスピードが出せない。
マイクロバスが2台に検地局が派遣した官僚達が分譲している。
先頭を走る自衛隊の高機動車には、浅野二等陸隊と施設科隊員5名が乗り込んでいる。
マイクロバスの後方には樺太から持ち出したロシア製戦闘工兵車IMR-3とそれを牽引する74式特大型トラックが走行している。
IMR-3は、T-72型戦車をベースとしており、全長9メートルのIMRには、ブルドーザーのブレードがアタッチメントのある収縮ブームが装備されている。
ほぼどんな場所でも道路の敷設が可能であり、地雷原でもガンマ線のある場所でも問題はない。
二名の乗員が車内で3日間暮らすことが可能で車内では水を沸騰させたり、食べ物を温めたりすることが可能でトイレも備え付けられてる優れものだ。
チェルノブイリ原発事故発生直後では原子炉近くで活動できる唯一の車だった。
あいにく低速しか出せないので、74式特大型トラックに牽引させることなったのだ。
74式特大型トラックには施設科の隊員9名が乗っている。
例によって舗装が土のままの街道では余りスピードが出せない。
マイクロバスが2台に検地局が派遣した官僚達が分譲している。
先頭を走る自衛隊の高機動車には、浅野二等陸隊と施設科隊員5名が乗り込んでいる。
マイクロバスの後方には樺太から持ち出したロシア製戦闘工兵車IMR-3とそれを牽引する74式特大型トラックが走行している。
IMR-3は、T-72型戦車をベースとしており、全長9メートルのIMRには、ブルドーザーのブレードがアタッチメントのある収縮ブームが装備されている。
ほぼどんな場所でも道路の敷設が可能であり、地雷原でもガンマ線のある場所でも問題はない。
二名の乗員が車内で3日間暮らすことが可能で車内では水を沸騰させたり、食べ物を温めたりすることが可能でトイレも備え付けられてる優れものだ。
チェルノブイリ原発事故発生直後では原子炉近くで活動できる唯一の車だった。
あいにく低速しか出せないので、74式特大型トラックに牽引させることなったのだ。
74式特大型トラックには施設科の隊員9名が乗っている。
「だが必要あったかな?」
大陸での自動車のスピードは、時速30キロに制限されている。
大陸の住民が車を避けてくれないのだ。
馬車は使用されているが、自動車はよりスピードが出るのを理解出来ないのだ。
車を見たことがある者が少ないのも大きい。
マディノの地は新京からは東に約400キロ、王都ソフィアからは西に約1600キロの位置に存在している。
本当は新京の総督府本部の連中が派遣されるのだが、連中は新浜市創設の式典の準備に追われて忙しい。
そこで王都ソフィア支部にお鉢がまわってきたのだ。
汽車で中央部東端の駅があるザクソンまで移動し、食事と休憩のあと、深夜0時発長距離列車に乗り込み18時間掛けてマディノに到着した。
マディノの駅は大陸鉄道で一番新しい駅で、この駅の完成とともに、マディノの鉱山開発や自衛隊の分屯地建設が始まった。
列車から車両を降ろし、宿泊先のマディノ子爵旧邸に一行は向かう。
大陸の住民が車を避けてくれないのだ。
馬車は使用されているが、自動車はよりスピードが出るのを理解出来ないのだ。
車を見たことがある者が少ないのも大きい。
マディノの地は新京からは東に約400キロ、王都ソフィアからは西に約1600キロの位置に存在している。
本当は新京の総督府本部の連中が派遣されるのだが、連中は新浜市創設の式典の準備に追われて忙しい。
そこで王都ソフィア支部にお鉢がまわってきたのだ。
汽車で中央部東端の駅があるザクソンまで移動し、食事と休憩のあと、深夜0時発長距離列車に乗り込み18時間掛けてマディノに到着した。
マディノの駅は大陸鉄道で一番新しい駅で、この駅の完成とともに、マディノの鉱山開発や自衛隊の分屯地建設が始まった。
列車から車両を降ろし、宿泊先のマディノ子爵旧邸に一行は向かう。
「仮眠時間は残業に当てはまらないらしいから、仮眠8時間、勤務時間8時間、休憩2時間といったとこかな?」
「ここからは残業ですか?
おっ藤井課長、出番ですよ!!」
「おっと、マイク、マイク!?」
マイクロバスから漏れ聞こえる演歌の曲と藤井課長の歌声に高機動車に乗り込んでいる浅井は苦笑する。
「ここからは残業ですか?
おっ藤井課長、出番ですよ!!」
「おっと、マイク、マイク!?」
マイクロバスから漏れ聞こえる演歌の曲と藤井課長の歌声に高機動車に乗り込んでいる浅井は苦笑する。
「まるで慰安旅行だな。」
付近の住民や通行人は、突然流れる曲と藤井課長の歌声に不思議な顔をして振り向いて来るのはちょっと恥ずかしい。
子爵旧邸では代官エミリオをはじめとして、兵士や近隣の町や村からかき集められた娘達が総出で出迎えてくれた。
娘達は何故かメイド服を着ているがデザインは統一されていない。
「いや、もう20時ですか?
こんな時間に申し訳ない。」
子爵旧邸では代官エミリオをはじめとして、兵士や近隣の町や村からかき集められた娘達が総出で出迎えてくれた。
娘達は何故かメイド服を着ているがデザインは統一されていない。
「いや、もう20時ですか?
こんな時間に申し訳ない。」
油が貴重な地方都市ならすでに寝静まっている時間帯なのだ。
現に兵士や娘達の中では船を漕いでる者が見受けられる。
現に兵士や娘達の中では船を漕いでる者が見受けられる。
本当に申し訳なさそうな顔をする藤井課長に対して、代官エミリオは揉み手をしながら調査団一行の前に進み出る。
「いえいえ、皆様長旅お疲れ様でした。
ささやかながら歓迎の食事を用意させて頂きましたので、今日のところはごゆっくりお休み下さい。」
ささやかながら歓迎の食事を用意させて頂きましたので、今日のところはごゆっくりお休み下さい。」
この揉み手という動作は日本では歓迎の意を現す作法らしい。
アドバイザーとして石和黒駒一家から派遣された荒木という男からの指南である。
荒木はギルドの評議員の一人であるらしい。
また、荒木は大量のメイド服まで用意してくれた。
娘達や兵士達は多少見栄えを良くする為に日本製石鹸やシャンプーをギルドから提供されて磨かれている。
これらは大陸の人間にはなかなか手に入らない高価な品だった。
調査団には女性もいるので兵士やエミリオ達にも清潔を心掛けさせないと進言もされた。
ギルドマスターの勝蔵と違い、気の利く荒木をエミリオは重宝していた。
調査団一行は割り当てられた部屋に案内されて館に入っていく。
その様子を館の離れから見ていた勝蔵は荒木に疑問を口にする。
アドバイザーとして石和黒駒一家から派遣された荒木という男からの指南である。
荒木はギルドの評議員の一人であるらしい。
また、荒木は大量のメイド服まで用意してくれた。
娘達や兵士達は多少見栄えを良くする為に日本製石鹸やシャンプーをギルドから提供されて磨かれている。
これらは大陸の人間にはなかなか手に入らない高価な品だった。
調査団には女性もいるので兵士やエミリオ達にも清潔を心掛けさせないと進言もされた。
ギルドマスターの勝蔵と違い、気の利く荒木をエミリオは重宝していた。
調査団一行は割り当てられた部屋に案内されて館に入っていく。
その様子を館の離れから見ていた勝蔵は荒木に疑問を口にする。
「なあ、あのメイド服をどうやって手に入れたんだ?
うちの組の在庫だけじゃ足りなかったろ?
あとなんでデザインがバラバラなんだ?」
「南部のアンフォニーで代官してる友人が大量に新京に発注してたんですよ。
自分のところ以外でも周辺貴族に大々的に売り出して行こうと画策しているらしいのです。
先にちょっとお借りしただけなのであまり汚さないで欲しいのですけどね。」
うちの組の在庫だけじゃ足りなかったろ?
あとなんでデザインがバラバラなんだ?」
「南部のアンフォニーで代官してる友人が大量に新京に発注してたんですよ。
自分のところ以外でも周辺貴族に大々的に売り出して行こうと画策しているらしいのです。
先にちょっとお借りしただけなのであまり汚さないで欲しいのですけどね。」
調査団の一行は疲労も有り、車両を警備する自衛隊の隊員とお手伝いの市原以外は早々に就寝してしまった。
一日目の夜はこうして何事もなく終わりを告げたのだった。
二日目
アンクル村
アンクル村
村長のモンローは山の裏手の巨像に祈りを捧げていた。
前マディノ子爵ベッセンが造り上げた神像で、管理はモンローに任されていた。
代官所の役人どころか、村の人間もほとんどその存在を知らない。
マディノの危機の際には動き出して救ってくれるゴーレムとの話である。
どのようにすれば動き出すのかモンローも知らない。
マディノの地が危機的状況になった時に動くとしか聞いていない。願わくばこの神像が動き出す時が来ないことを・・・
前マディノ子爵ベッセンが造り上げた神像で、管理はモンローに任されていた。
代官所の役人どころか、村の人間もほとんどその存在を知らない。
マディノの危機の際には動き出して救ってくれるゴーレムとの話である。
どのようにすれば動き出すのかモンローも知らない。
マディノの地が危機的状況になった時に動くとしか聞いていない。願わくばこの神像が動き出す時が来ないことを・・・
旧マディノ子爵邸
朝食を済ませた公務員達は車に持ち込んでいたタイムカードをレコーダーに挿入して勤務時間に突入する。
「さて、お仕事の時間ですよ。」
マディノの地には金、銀、銅の鉱山があり、大陸総督府が管理している。
日本の技術者や作業員が現場を取り仕切ったり、重機の使用を行う関係で家族も含めた300名前後の日本人がこの旧子爵領にいた。
単純なスコップやツルハシで鉱脈を掘り起こす作業は大陸の現地住民を雇用している。
日本の技術者や作業員が現場を取り仕切ったり、重機の使用を行う関係で家族も含めた300名前後の日本人がこの旧子爵領にいた。
単純なスコップやツルハシで鉱脈を掘り起こす作業は大陸の現地住民を雇用している。
この二日目に出来るのは簡単な事務作業だ。
普段は鉱山町にいる日本人がこの日は退去してマディノの町に押し掛けていた。
普段は鉱山町にいる日本人がこの日は退去してマディノの町に押し掛けていた。
「いや、盛況ですな。
検地局ソフィア支部第3測量課課長藤井八郎です。
今回の調査団の団長を兼任させて頂いております。」
検地局ソフィア支部第3測量課課長藤井八郎です。
今回の調査団の団長を兼任させて頂いております。」
藤井は宛がわれた子爵執務室で来客を出迎えている。
「マディノ地区出張所所長の榊原です。
今回はよろしくお願いします。
まあ、この機会に予防接種や書類の更新、本国や他地区との情報の取得、娯楽の補給などを済ませてしまおうといういい機会ですからね。
交代で来てますから明後日には落ち着いていますので。」
今回はよろしくお願いします。
まあ、この機会に予防接種や書類の更新、本国や他地区との情報の取得、娯楽の補給などを済ませてしまおうといういい機会ですからね。
交代で来てますから明後日には落ち着いていますので。」
百人規模で日本人が住んでいるからには総督府としても出張所を設置して対応していた。
パソコンやファックスがあるので書類などはどうとでもなる
医師や警察官も常駐しているが、人手不足なので対応は遅く、総督府の調査団はこれらをいっきに解決する為の応援の役割も求められている。
パソコンやファックスがあるので書類などはどうとでもなる
医師や警察官も常駐しているが、人手不足なので対応は遅く、総督府の調査団はこれらをいっきに解決する為の応援の役割も求められている。
「はっはは、お任せを。
で・・・、例の件は?」
「はい、こちらがこの地の検地報告書です。
しかし、代官所の連中が聞いたら怒りますな。
検地なんてとっくに終わってるんだと知ったら。」
で・・・、例の件は?」
「はい、こちらがこの地の検地報告書です。
しかし、代官所の連中が聞いたら怒りますな。
検地なんてとっくに終わってるんだと知ったら。」
藤井は渡されたDVD-ROMをノートパソコンに挿入して内容を目に通す。
大陸総督府の共有ファイルにコピーして、プリントアウトする。
大陸総督府の共有ファイルにコピーして、プリントアウトする。
「大陸の人間に見せる部分の整理が出来たら完成ですな。
ふむ、年貢率は71%ですが公的には42%、ぼってますな・・・
まあ、住民も住民ですな。
隠し畑の割合も含めると年貢率は59%にまで下がると。
我々が隠し畑を知っていることは代官所の連中には内緒です。
連中がどの程度探しだして申告してくるか見物ですな。」
ふむ、年貢率は71%ですが公的には42%、ぼってますな・・・
まあ、住民も住民ですな。
隠し畑の割合も含めると年貢率は59%にまで下がると。
我々が隠し畑を知っていることは代官所の連中には内緒です。
連中がどの程度探しだして申告してくるか見物ですな。」
報告書に目を通す藤井は苦笑するしかない。
「隠し畑の摘発や開墾の成功で今年から大量に我々に対して年貢の増加が出来るようになりましたとの言い訳の材料にするつもりでしょう。
すでに四公六民法の違反、税収の横領。
すでに詰んでいるのに御苦労なことです。」
すでに四公六民法の違反、税収の横領。
すでに詰んでいるのに御苦労なことです。」
この領邦に限らず大陸東部地域の大まかな検地は完了していた。
それは大陸の人間には預かり知らぬやり方で五年掛かりで行われていたのだ。
出張所の所員による修正も入っている。
検地局が現場に来ているのはアリバイ作りと新たに開墾された畑がないか調べる為だけなのだ。
出張所の所員による修正も入っている。
検地局が現場に来ているのはアリバイ作りと新たに開墾された畑がないか調べる為だけなのだ。
リボー村
調査団が書類仕事に追われている間にも代官所の役人や兵士達は各農村で隠し畑の捜索や即席の開墾を農民に課していた。
「そんな、賄賂は支払ってたじゃないですか・・・」
「やかましい、こっちの首も落ちそうなんだよ。
お前達もタダで済むと思うな!!」
「やかましい、こっちの首も落ちそうなんだよ。
お前達もタダで済むと思うな!!」
農民達も兵士や役人が血走った目に気圧されて隠し畑を白状する。
中には抵抗して暴行されている者もいるが、ギロチンに掛けられた者はいなかった。
労働力の低下を恐れた為である。
開墾作業は村の広場や空き地を次々と農地に代えていった。
何を植えるかはまったく考慮されていない。
村から連れて行かれた娘達は調査団に余計なことを言わないよう人質の意味合いもある。
彼女達は調査団が連れてきた市原女史の指揮のもと旧子爵邸が調査団が居住しやすいように掃除や料理の指導を受けている。
親元にいるより好待遇なので不満に思っている者はいない。
農作業より辛くなく、入浴を奨励され、綺麗な服を着せられて、三食食事つき。
しかも親元にいるよる健康的で美味しい食事が賄いとして与えられている。
調査団が帰還するのが怖くなるくらいである。
中には抵抗して暴行されている者もいるが、ギロチンに掛けられた者はいなかった。
労働力の低下を恐れた為である。
開墾作業は村の広場や空き地を次々と農地に代えていった。
何を植えるかはまったく考慮されていない。
村から連れて行かれた娘達は調査団に余計なことを言わないよう人質の意味合いもある。
彼女達は調査団が連れてきた市原女史の指揮のもと旧子爵邸が調査団が居住しやすいように掃除や料理の指導を受けている。
親元にいるより好待遇なので不満に思っている者はいない。
農作業より辛くなく、入浴を奨励され、綺麗な服を着せられて、三食食事つき。
しかも親元にいるよる健康的で美味しい食事が賄いとして与えられている。
調査団が帰還するのが怖くなるくらいである。
旧マディノ子爵邸
「本国の若い娘達より素直で扱いやすいわ。
でも素直なのは階級社会の鎖に縛られてるからと待遇のせいよ。
だから勘違いしちゃダメよ、浅井君。」
「階級そのものな組織の人間に何を言ってるんですか市原さん。」
そんな市原女史まで何故かメイド服を着ているので浅井は目を背けている。
ケンタウルスによる列車襲撃事件の後に知己となっていた二人は今回もマディノの地で同行することとなっていた。
浅井も今日のところは屋敷と周辺への警備機器の設置作業を監督している。
監督といっても本職の施設科隊員に口出し出来ることはない。
でも素直なのは階級社会の鎖に縛られてるからと待遇のせいよ。
だから勘違いしちゃダメよ、浅井君。」
「階級そのものな組織の人間に何を言ってるんですか市原さん。」
そんな市原女史まで何故かメイド服を着ているので浅井は目を背けている。
ケンタウルスによる列車襲撃事件の後に知己となっていた二人は今回もマディノの地で同行することとなっていた。
浅井も今日のところは屋敷と周辺への警備機器の設置作業を監督している。
監督といっても本職の施設科隊員に口出し出来ることはない。
「ソーラーパネル、通信機器の設置は今日中に終わりそうですな。
あとはドローンの発着場かな?」
「ドローンなんて何に使うの?」
「このマディノの地の航空写真を作るそうです。
地図を作る上で必要だとか。」
あとはドローンの発着場かな?」
「ドローンなんて何に使うの?」
「このマディノの地の航空写真を作るそうです。
地図を作る上で必要だとか。」
鉱山町から駅までの道路を造る作業も期待されている。
戦闘工兵車IMR-3はそちらに動員されて工事を始めている。
戦闘工兵車IMR-3はそちらに動員されて工事を始めている。
「そうだ浅井君、勤務時間が終わったら近くの酒場に行きたいんだけど隊員さんと一緒に飲みに行かない?」
「ボディガード代わりですか?」
「か弱い女性をボディガードするのは男の甲斐性でしょう?」
「ボディガード代わりですか?」
「か弱い女性をボディガードするのは男の甲斐性でしょう?」
浅井はケンタウルスの群れに矢を放ち、薙刀を振り回して奮戦していた市原女史の雄姿を思い出す。
「か弱い?」
「昔の冒険者仲間がやってる店なんだよね。
盗賊ギルドを倒して吸収し、冒険者ギルドをこの地に立ち上げた日本人なんだよね。
一応、マディノで仕事するなら挨拶くらいしとかないとね。」
「昔の冒険者仲間がやってる店なんだよね。
盗賊ギルドを倒して吸収し、冒険者ギルドをこの地に立ち上げた日本人なんだよね。
一応、マディノで仕事するなら挨拶くらいしとかないとね。」
『か弱い?』という疑問の言葉をスルーされた浅井はため息を吐いて了承する。
肉体労働に勤しむ部下達をアルコールで労う必要もあるからだ。
ギルドとは商工業者の間で結成された各種の職業別組合のことである。
肉体労働に勤しむ部下達をアルコールで労う必要もあるからだ。
ギルドとは商工業者の間で結成された各種の職業別組合のことである。
領主や代官などの認可のもとに商人ギルド・手工業ギルド(同職ギルド)などに区分される。
各領地内までが管轄であり、他領のギルドとの横の繋がりはない。
これが大陸の商業の発展を阻害しているのは間違いないが、商人の力や富の一極集中を恐れた帝国はギルドを保護する政策を行っており王国も引き継いでいた。
盗賊ギルドは各領地の闇経済を取り仕切る公的なマフィアである。
冒険者ギルドは冒険者の相互扶助や情報収集などを行うための拠点であり、依頼された仕事の斡旋を取り仕切っている。
各領地内までが管轄であり、他領のギルドとの横の繋がりはない。
これが大陸の商業の発展を阻害しているのは間違いないが、商人の力や富の一極集中を恐れた帝国はギルドを保護する政策を行っており王国も引き継いでいた。
盗賊ギルドは各領地の闇経済を取り仕切る公的なマフィアである。
冒険者ギルドは冒険者の相互扶助や情報収集などを行うための拠点であり、依頼された仕事の斡旋を取り仕切っている。
「ようするにハローワークですね。」
この大陸では身分制度が確立しているので、転職という行為はほとんど行われていない。
武装した自由人を統率、管理する為の組織が冒険者ギルドになる。
ところがこのマディノの冒険者ギルドに60人近くの日本人大規模パーティーが登録を行った。
冒険の地としてマディノは不向きである。
これまでの冒険者は多い時期で30名程度であり、ギルドは半年で乗っ取られてしまった。
酒場の扉を開けた市原とお供の一行は、冒険者達の注目を浴びていた。
武装した自由人を統率、管理する為の組織が冒険者ギルドになる。
ところがこのマディノの冒険者ギルドに60人近くの日本人大規模パーティーが登録を行った。
冒険の地としてマディノは不向きである。
これまでの冒険者は多い時期で30名程度であり、ギルドは半年で乗っ取られてしまった。
酒場の扉を開けた市原とお供の一行は、冒険者達の注目を浴びていた。
「聞いてたほど日本人はいませんね。」
「みんな冒険にでも出てるんじゃない?」
「みんな冒険にでも出てるんじゃない?」
4、5人の職員にいる程度だ。
冒険者の日本人は見当たらない。カウンターにいる職員に市原女史が話し掛ける。
冒険者の日本人は見当たらない。カウンターにいる職員に市原女史が話し掛ける。
「ギルドマスターの黒駒勝蔵君いる?
市原が来たって伝えてくれる?」
「黒駒勝蔵?」
市原が来たって伝えてくれる?」
「黒駒勝蔵?」
名前を聞いて浅井の方が戸惑っていた。
「お久しぶりですな、市原さんと・・・浅井二等陸尉。」
執務室に通された市原は意外な成り行きに浅井の方を見ている。
部下達は酒場のホールのテーブルでビールを飲ませている。
ちなみにこのビールは当然密造酒である。
部下達は酒場のホールのテーブルでビールを飲ませている。
ちなみにこのビールは当然密造酒である。
「お久しぶりです、黒駒陸曹長。
習志野以来でしたかね?」
習志野以来でしたかね?」
勝蔵は日本転移後に自衛隊を除隊した変わり種であり、浅井にととては習志野での空挺レンジャー課程の時に助教をやっていた先輩でもある。
自衛隊増強の為に元隊員の再雇用でも『実家の稼業の都合』で戻ってこなかった。
自衛隊増強の為に元隊員の再雇用でも『実家の稼業の都合』で戻ってこなかった。
「まあ、実家の稼業ってやつがこれでしてな?」
そういって、壁に立て掛けられた代紋を見せてくる。
「挨拶に来ただけだったのにびっくりよ。
大袈裟な部屋に通されて・・・」
市原は呑気にお茶菓子にかじりついているが、浅井は公務員がヤクザと交流を持つことが後々何か言われないか気になっていた。
大袈裟な部屋に通されて・・・」
市原は呑気にお茶菓子にかじりついているが、浅井は公務員がヤクザと交流を持つことが後々何か言われないか気になっていた。
「まあ、今回の調査団の接待はうちがアドバイザーとして絡んでるから今さらなんですだけどな。」
勝蔵の言葉に頭を抱えたくなった。
勝蔵の言葉に頭を抱えたくなった。
三日目
旧子爵邸から発進したドローンは、領邦の端から撮影を始めた。
空から見れば隠し畑や畑の大きさなどは一目瞭然なのだ。
そうとはわからない代官所では日本の役人達が検地の調査にいつ出掛けるのか首を捻っていた。
空から見れば隠し畑や畑の大きさなどは一目瞭然なのだ。
そうとはわからない代官所では日本の役人達が検地の調査にいつ出掛けるのか首を捻っていた。
「どこの村に行くのか予定は出てないのか?」
「はい、少数の視察の人間は出ていますが基本的に書類か、パソコンという魔導具を眺めてばかりです。
あとは・・・兵士達が何故か、道路工事をしています。」
「はい、少数の視察の人間は出ていますが基本的に書類か、パソコンという魔導具を眺めてばかりです。
あとは・・・兵士達が何故か、道路工事をしています。」
「まあ、あんまり出歩いて貰いたくないから好都合だが、連中は仕事する気はあるのか?」
代官のエミリオとしてはこのまま調査期間が過ぎ去って欲しかった。
そんなエミリオだが昨日突然恋をした。
今までにも何度か顔を合わせているが、身綺麗にして着飾った彼女は別人のようだった。
そんなエミリオだが昨日突然恋をした。
今までにも何度か顔を合わせているが、身綺麗にして着飾った彼女は別人のようだった。
「この想いを詩にして彼女に贈らなければならない!!」
どうも調査団にたいした動きは無いので創作に耽る時間が出来ていたアドバイザーの荒木は詩にも造詣があるらしく、日本で流行っていた歌を教えてくれた。
昨日まで普通と思っていた彼女が水着に着替えたら魅力的に見えて恋をしてしまったという歌である。
昨日まで普通と思っていた彼女が水着に着替えたら魅力的に見えて恋をしてしまったという歌である。
「水着というものが何かはわからぬが服飾の一種だろう。
正に今の私にぴったりの状況じゃないか。」
正に今の私にぴったりの状況じゃないか。」
同意を求められた部下達は困り顔で頷いて早々に退散した。
当然、邪魔をしちゃ悪いからである。
当然、邪魔をしちゃ悪いからである。
旧マディノ子爵邸
浅井は『石和黒駒一家』の件を藤井課長に相談することにした。
浅井は『石和黒駒一家』の件を藤井課長に相談することにした。
「問題ありません。
本国ならいざ知らず大陸で自主独立でこちらの意向に逆らわない組織が存在するならヤクザでも構わないというのが総督府の見解です。
まあ、健全な会社組織に代わってもらうのが一番ですけど、普通の民間人にいきなり武装化と実力行使は無理ですからね。
彼等に露払いと地均しをしてもらうのは悪くないと思うのですよ。」
本国ならいざ知らず大陸で自主独立でこちらの意向に逆らわない組織が存在するならヤクザでも構わないというのが総督府の見解です。
まあ、健全な会社組織に代わってもらうのが一番ですけど、普通の民間人にいきなり武装化と実力行使は無理ですからね。
彼等に露払いと地均しをしてもらうのは悪くないと思うのですよ。」
浅井としては公務員とヤクザの癒着として問題にされないかを聞きたかったのだが大袈裟な話になって帰ってきた。
「確かに来年から貴方も領地の管理する側になるのですから気を付けて下さいね?
今の段階では心配する必要はありません。
彼等は単なるオブザーバーで代官所が雇用しただけで、我々は単なる客ですから。」
今の段階では心配する必要はありません。
彼等は単なるオブザーバーで代官所が雇用しただけで、我々は単なる客ですから。」
気をとり直した浅井は自分が担当することになる分屯地の工事現場に来ていた。
今は民間の業者が重機を入れて作業に当たっている。
同行してきた施設科の隊員が調査終了後にこのマディノに残り、細部の工事に携わることになっている。
浅井も現場監督から工事状況の説明を受けていると、施設の隊員が駆け寄ってくる。
今は民間の業者が重機を入れて作業に当たっている。
同行してきた施設科の隊員が調査終了後にこのマディノに残り、細部の工事に携わることになっている。
浅井も現場監督から工事状況の説明を受けていると、施設の隊員が駆け寄ってくる。
「浅井二尉、街道から武装した一団が騎竜に乗ってマディノの関所を通過したのをドローンが確認しました。
旗は立ててるので、どこかの貴族の騎士団かと思われます。
数は40、馬車も多数。」
「騎竜のタイプは?」
「中型獣脚類型、デイノニクスです。」
旗は立ててるので、どこかの貴族の騎士団かと思われます。
数は40、馬車も多数。」
「騎竜のタイプは?」
「中型獣脚類型、デイノニクスです。」
竜にも大小様々な種類がいる。
ある程度は恐竜にそっくりなので、その分類法や名称が当て嵌められていた。
獣脚類は二足歩行をするティラノサウルスやヴェロキラプトルのような竜である。
デイノニクスは中型の獣脚類で、人が背中に乗れるサイズであり騎竜として運用されていた。
馬よりも繁殖力は低く、維持費も高価でありこれほどの数はなかなか揃えられない。
ある程度は恐竜にそっくりなので、その分類法や名称が当て嵌められていた。
獣脚類は二足歩行をするティラノサウルスやヴェロキラプトルのような竜である。
デイノニクスは中型の獣脚類で、人が背中に乗れるサイズであり騎竜として運用されていた。
馬よりも繁殖力は低く、維持費も高価でありこれほどの数はなかなか揃えられない。
「代官所に確認を取れ。
旗を立てて関所を通過したのなら賊の類いではないだろう。
調査団本部と出張所・・・連隊本部にも伝えておけ。」
旗を立てて関所を通過したのなら賊の類いではないだろう。
調査団本部と出張所・・・連隊本部にも伝えておけ。」
自衛隊の隊員達は拳銃だけで各所で任務に当たっている。
「貴族なら我々と揉める恐ろしさを理解してるだろが念の為だ、全員に小銃の携帯を命令する。
ドローンで監視を続けろ。
動きがあれば報告しろ。」
ドローンで監視を続けろ。
動きがあれば報告しろ。」
リボー村
見慣れない武装した一団が村の広場に集まっていた。
村の代表の村長が用向きを伺いに罷り出る。
村の代表の村長が用向きを伺いに罷り出る。
「村長か?
我はグルティア侯爵家の竜騎兵団団長マッシモである!!
所用でマディノの代官所に向かう途中であるが、今宵はこの村に逗留する予定である。
騎竜兵団40名、歩兵120名の糧食を提供せよ。」
我はグルティア侯爵家の竜騎兵団団長マッシモである!!
所用でマディノの代官所に向かう途中であるが、今宵はこの村に逗留する予定である。
騎竜兵団40名、歩兵120名の糧食を提供せよ。」
村長は騎竜に怯えながらマッシモに返答する。
「恐れ入りますがこの村は王室天領にして、日本国租借地にあたります。
お代官様に急ぎ早馬でご許可を頂きますので、しばしお待ちを・・・」
「手続きの問題か?
ならば心配することはない。
代官エミリオ・グルティアは我が甥に当たる。
否と言うはずがない。
なあに、食糧の運び出しなら兵達に手伝わせよう。
者共、食糧の運び出しを手伝ってやれ!!」
お代官様に急ぎ早馬でご許可を頂きますので、しばしお待ちを・・・」
「手続きの問題か?
ならば心配することはない。
代官エミリオ・グルティアは我が甥に当たる。
否と言うはずがない。
なあに、食糧の運び出しなら兵達に手伝わせよう。
者共、食糧の運び出しを手伝ってやれ!!」
その強引な運び出しは略奪と呼ばれた。
4日目
調査団の高機動車に乗って代官エミリオと調査団の藤井、浅井の三人がリボー村に到着したのは明け方のことだった。
無数の馬車や騎竜が村の広場を陣取っり、騎竜や馬たちが大量の餌を貪っている。
兵達は野営の準備をしている。
さすがに竜騎兵団団長のマッシモは村長の家に滞在していた。
無数の馬車や騎竜が村の広場を陣取っり、騎竜や馬たちが大量の餌を貪っている。
兵達は野営の準備をしている。
さすがに竜騎兵団団長のマッシモは村長の家に滞在していた。
「マッシモ様はまだお眠りになってますが・・・」
「お、起きたら教えてくれ・・・」
「お、起きたら教えてくれ・・・」
夜を徹してきたのにあんまりな話だったが、明け方に来れば当然と言える。
申し訳無さそうな顔の村長や脱力しているエミリオを見て、浅井と藤井は顔を見合わせる。
申し訳無さそうな顔の村長や脱力しているエミリオを見て、浅井と藤井は顔を見合わせる。
「私らは車で寝てましょうか?」
「そうですね、朝飯は缶詰とパンだけですが・・・」
「そうですね、朝飯は缶詰とパンだけですが・・・」
朝食の席でエミリオはようやくマッシモと会談が出来た。
「叔父上・・・先触れも無く、突然の来訪驚きました。
この村で食料を徴発したようですが、ここは天領にして租借地。
せめて、私に一声掛けてからにして欲しかった。」
「すまんな、兵達の食料も尽き掛けてたのもあるが、騎竜達は二日も食わせて無くてな。
暴走されても困るしな。
兵や村人達を喰わせるわけにもいかんからな。
まあ、些か強引だったことは認める。
代官所の方で補償しといてやってくれ。」
「あの叔父上、兵糧は如何したのですか?」
「食いきった・・・兄上が過剰に護衛の兵を着けたのでな・・・」
すなわちエミリオの父親のグルティア侯爵のことである。
確かに竜騎兵40騎は過剰な護衛戦力だ。
この村で食料を徴発したようですが、ここは天領にして租借地。
せめて、私に一声掛けてからにして欲しかった。」
「すまんな、兵達の食料も尽き掛けてたのもあるが、騎竜達は二日も食わせて無くてな。
暴走されても困るしな。
兵や村人達を喰わせるわけにもいかんからな。
まあ、些か強引だったことは認める。
代官所の方で補償しといてやってくれ。」
「あの叔父上、兵糧は如何したのですか?」
「食いきった・・・兄上が過剰に護衛の兵を着けたのでな・・・」
すなわちエミリオの父親のグルティア侯爵のことである。
確かに竜騎兵40騎は過剰な護衛戦力だ。
「なにゆえそのような戦力で?」
「最近、この近辺でケンタウルスの軍団による襲撃があったそうだ。
補給線は大事だとマイラが進言してそうなった。」
「ああ、マイラが帰ってたのですか。」
「最近、この近辺でケンタウルスの軍団による襲撃があったそうだ。
補給線は大事だとマイラが進言してそうなった。」
「ああ、マイラが帰ってたのですか。」
マイラとはグルティア侯爵の末姫であり、エミリオの妹にあたる。
最近まで新京の学園にいたはずだ。
何年も顔を合わせてない妹の話にエミリオは思いを馳せているが、マッシモが微妙な顔をしてるのに気がついた。
最近まで新京の学園にいたはずだ。
何年も顔を合わせてない妹の話にエミリオは思いを馳せているが、マッシモが微妙な顔をしてるのに気がついた。
「マイラが補給について口出しした?」
ようやく話の妙な点に気がついた。
政に関わることは十代の貴族の子女に出来ることではない。
政に関わることは十代の貴族の子女に出来ることではない。
「日本の教育を受けて帰ってきたマイラの知識に対抗できる一族や家臣がいなくてな。
内政を一手に担いだしたのだ。
なにより恐ろしいのが領内の衛生環境の改善だ。」
「衛生環境の改善?」
「新京の清潔な環境を覚えてきたら、領内での悪臭や汚れが我慢ならないらしくてな。
流行病や赤子の早死も大幅に防げると主張したのだ。」
「悪い話では無いように聞こえますが?」
「手近な改善としてお湯を使った消毒や毎日の入浴が奨励されたのだが、結果として薪の大量消費による禿げ山や荒れ地となった林が幾つも誕生してな。
薪の値段の高騰、川や井戸から水を汲み出す重労働の増加など負担が万民に平等に訪れた。
そして、禿げ山に対する植林事業に対する初期投資が莫大なものになっててな。
マイラ曰く、十年百年先を見据えた事業らしいが、先に我々の方が干上がりそうだ。」
「誰か止める者はいなかったのですか?
父上や兄上とか・・・」
内政を一手に担いだしたのだ。
なにより恐ろしいのが領内の衛生環境の改善だ。」
「衛生環境の改善?」
「新京の清潔な環境を覚えてきたら、領内での悪臭や汚れが我慢ならないらしくてな。
流行病や赤子の早死も大幅に防げると主張したのだ。」
「悪い話では無いように聞こえますが?」
「手近な改善としてお湯を使った消毒や毎日の入浴が奨励されたのだが、結果として薪の大量消費による禿げ山や荒れ地となった林が幾つも誕生してな。
薪の値段の高騰、川や井戸から水を汲み出す重労働の増加など負担が万民に平等に訪れた。
そして、禿げ山に対する植林事業に対する初期投資が莫大なものになっててな。
マイラ曰く、十年百年先を見据えた事業らしいが、先に我々の方が干上がりそうだ。」
「誰か止める者はいなかったのですか?
父上や兄上とか・・・」
「マイラが持ち込んだ髪を洗う液体や歯を磨くクリームに奥方等が真っ先に魅了されて陥落したな。
領民の女房達の間にうちの女房含めて流行になってて手が付けられん。
で、これがまた馬鹿高いんだ。」
「まさか、ここ最近までうちにタカってたのはそれが原因なんですか!!」
「日本の商人から購入するしかないからな。
最近ではヨガなる健康法まで流行り出して、スコータイから講師まで招いてる始末だ。
まあ、そんなわけで今回も頼むよエミリオ、一族のよしみじゃないか?」
領民の女房達の間にうちの女房含めて流行になってて手が付けられん。
で、これがまた馬鹿高いんだ。」
「まさか、ここ最近までうちにタカってたのはそれが原因なんですか!!」
「日本の商人から購入するしかないからな。
最近ではヨガなる健康法まで流行り出して、スコータイから講師まで招いてる始末だ。
まあ、そんなわけで今回も頼むよエミリオ、一族のよしみじゃないか?」
エミリオはそういえばアドバイザーの荒木から提供された『試供品』とやらに村娘達が喜んでいたのを思い出した。
「まさか・・・」
背筋が凍る思いを味わっていたが、マッシモの更なる言葉が追い討ちを掛けた。
「あ、いい忘れてたけど、糧食この村だけじゃ足りないから隣村にも接収の部隊向かわせてるからよろしくな。」
「叔父上!!」
「叔父上!!」
人口九百人程度のリボー村に兵員合わせて160名、馬80頭、騎竜40騎の糧食を用意できるわけがない。
エミリオの大声は扉の向こうまで聞こえてくる。
紹介されるのを待っていた藤井と浅井は顔を見合わせる。
エミリオの大声は扉の向こうまで聞こえてくる。
紹介されるのを待っていた藤井と浅井は顔を見合わせる。
「盛り上がってますが私らのこと忘れられて無いと良いのですが・・・」
藤井が懸念しているとリボー村の村長がやってくる。
「お待たせして申し訳ありません課長様。
ですが村の方でもマッシモ様の兵団に憤った若者が6人ばかり南側の村に向かったと・・・徒歩ですが、一番近くの村でも夕方には到着するかと・・・」
ですが村の方でもマッシモ様の兵団に憤った若者が6人ばかり南側の村に向かったと・・・徒歩ですが、一番近くの村でも夕方には到着するかと・・・」
浅井は近隣の地図をカバンから取り出す。
等高線まで書かれた詳細な地図に村長は驚いているが、故意に隠してるわけでは無いので気にはしない。
マディノの町を中心に北西、北東、南東、南西のほぼ同じくらいの距離に村が置かれている。
そこから街道が分岐し、東西南北にある外郭の村へと続いている。
この大陸の領地としては、随分正確に配置されている。
代々、高名な魔術師を輩出するマディノ子爵家の几帳面な性格と魔力による力押しで開拓した村々だった。
このリボー村は領地外郭の東に位置している。
等高線まで書かれた詳細な地図に村長は驚いているが、故意に隠してるわけでは無いので気にはしない。
マディノの町を中心に北西、北東、南東、南西のほぼ同じくらいの距離に村が置かれている。
そこから街道が分岐し、東西南北にある外郭の村へと続いている。
この大陸の領地としては、随分正確に配置されている。
代々、高名な魔術師を輩出するマディノ子爵家の几帳面な性格と魔力による力押しで開拓した村々だった。
このリボー村は領地外郭の東に位置している。
「マイクロバスが東のアンクル村と北のノーヴァ村。
74式特型トラックと高機動車が南のドゼー村。
出張所と駐在所から借りた車でこのリボー村に調査隊が昨夜から入ってます。
「各村は概ね百から二百戸」
明日の夜までには調査が終わるのでそのまま続行。
終了後はアンクルとノーヴァの隊は予定通り北東内郭のギース村に集結。
リボーの隊は北西のドルク村に移動。
ドゼーの隊は南東内郭のドーマ村に移動。
事態の変化を見守りつつ業務を遂行します。」
74式特型トラックと高機動車が南のドゼー村。
出張所と駐在所から借りた車でこのリボー村に調査隊が昨夜から入ってます。
「各村は概ね百から二百戸」
明日の夜までには調査が終わるのでそのまま続行。
終了後はアンクルとノーヴァの隊は予定通り北東内郭のギース村に集結。
リボーの隊は北西のドルク村に移動。
ドゼーの隊は南東内郭のドーマ村に移動。
事態の変化を見守りつつ業務を遂行します。」
藤井の指示を浅井が無線機で伝えていく。
予定は変わっていないが、進行を早めるように指示したのだ。
予定は変わっていないが、進行を早めるように指示したのだ。
「代官所のお手並み拝見と言ったところですかな?」
「我々はどうしますか?」
「この村の調査隊と合流して同行しましょう。
検地や測量も手伝いますよ。」
「我々はどうしますか?」
「この村の調査隊と合流して同行しましょう。
検地や測量も手伝いますよ。」
マディノ領
西南内郭の村リゲル
西南内郭の村リゲル
リボー村を発った若者がリゲル村に到着すると、やはり大量の食糧を馬や騎竜が食い漁っていた。
「くそう・・・ここもか・・・」
即座に村長の家に向かうと村の有力者達や血気盛んな若者達に決起を促す。
すでに強引に糧や種籾、家畜まで奪われた直後だけに村民も乗り気だ。
すでに強引に糧や種籾、家畜まで奪われた直後だけに村民も乗り気だ。
「せめて年頃の娘達がみんな日本の調査団のお世話に出払ってたのは幸いだったな。
連中なら無体なことはしまい。」
「だが竜騎兵なんぞ相手にしていたらあっという間に全滅だぞ。」
「その通りだ。
だが竜に乗ってないなら俺達でもなんとかなる。
この村にいるの竜騎兵と歩兵50名程度だ。
明日の夜にでも酒を飲ませて寝込みを襲ってふん縛っちまえ!!」
連中なら無体なことはしまい。」
「だが竜騎兵なんぞ相手にしていたらあっという間に全滅だぞ。」
「その通りだ。
だが竜に乗ってないなら俺達でもなんとかなる。
この村にいるの竜騎兵と歩兵50名程度だ。
明日の夜にでも酒を飲ませて寝込みを襲ってふん縛っちまえ!!」
若者達は血気盛んだが村の有力者達はもう少し冷静だ。
「他の村にも決起を促す檄文を送るべきだ。
数を揃えれば危険も少ないし、要求も通りやすいからな。」
数を揃えれば危険も少ないし、要求も通りやすいからな。」
5日目
マッシモの竜騎兵団本隊はマディノの街まで到着していた。
「明日にはリゲルとドルク村に送った別動隊が合流するが、本隊だけでも食糧の積込みを行いたい。」
マッシモとしては調達出来た食糧を早急にグルティアに持って帰りたかった。
マディノの民の自分達に対する反感を肌で感じ取っていた。
逆にグルティアの兵士達も帝国が滅んだ戦犯扱いのマディノ子爵の民達を侮蔑していた。
マディノの民の自分達に対する反感を肌で感じ取っていた。
逆にグルティアの兵士達も帝国が滅んだ戦犯扱いのマディノ子爵の民達を侮蔑していた。
「さっさと仕入れて、早急に退去する。
これが双方に取って一番良いと思うのだ。」
これが双方に取って一番良いと思うのだ。」
マッシモの申し出をエミリオは渋っていた。
グルティア側の要求を飲めばマディノの地から食糧の貯えが無くなるのだ。
当然、商人に売って民が生活を潤すことも出来なくなる。
日本の調査団が来ている今しかない。
グルティア側の要求を飲めばマディノの地から食糧の貯えが無くなるのだ。
当然、商人に売って民が生活を潤すことも出来なくなる。
日本の調査団が来ている今しかない。
「叔父上、申し訳無いが今回の件は無かったことにしていただきたい。
いや、今後もだ。
我々はもう限界なのだ。」
「すまんなエミリオ。
お前の言いたいことは理解しているがこちらも主命でな。
マディノ兵では我々を抑えることは出来ない、抵抗するな。」
いや、今後もだ。
我々はもう限界なのだ。」
「すまんなエミリオ。
お前の言いたいことは理解しているがこちらも主命でな。
マディノ兵では我々を抑えることは出来ない、抵抗するな。」
マディノの兵士達は各村に派遣されている者達を合わせても100名程度。
この代官所には50名もいない。
代官所はすでに内部に入り込んでいたグルティア兵によって制圧された。
この代官所には50名もいない。
代官所はすでに内部に入り込んでいたグルティア兵によって制圧された。
「準備が出来たら早々に引き揚げて拘束も解く。
エミリオの失点にもなるから王国や総督には訴えるなよ?
一族が処罰されるのはお前も見たくないだろ?」
エミリオの失点にもなるから王国や総督には訴えるなよ?
一族が処罰されるのはお前も見たくないだろ?」
牢に入れられたエミリオをはじめとする代官所の役人や兵士達の蔑みの目がエミリオに突き刺さる。
だがその視線はマッシモの一言で氷解した。
だがその視線はマッシモの一言で氷解した。
「お前が我々に逆らわずに食糧を差し出してれば牢に入れられずに済んだんだ。
民達が食えなくなると抵抗するから・・・」
民達が食えなくなると抵抗するから・・・」
役人や兵士達の目は一転してエミリオを尊敬、或いは憐れむ視線に代わっていた。
マッシモからのせめてもの餞別だった。
代官所の広場に出ると本隊の兵士達に命令する。
マッシモからのせめてもの餞別だった。
代官所の広場に出ると本隊の兵士達に命令する。
マディノの兵士や役人達はチョロいなと思ったが自分の部下達はあんなのでは騙されてくれない。
「さあ、食糧を根こそぎ徴用せよ。
別動隊が合流すればいっきにグルティアに帰還する。
もう二度と来ることは無いだろうから持ち逃げするぞ!!」
別動隊が合流すればいっきにグルティアに帰還する。
もう二度と来ることは無いだろうから持ち逃げするぞ!!」
貴族の私兵集団としては情けない宣言にマッシモ自身が脱力してやる気が見受けられなかった。
代官所の倉からは小麦や野菜の入った袋が持ち出されて馬車に積載されていく。
さらなる食糧を調達するべく兵士達が代官所から街に躍り出ていった。
兵士達は飲食物を扱う店や行商人や民達の倉からも持ち出される。
もちろん旧子爵邸の日本人達には手を出さないよう厳命されている。
だが中には羽目を外そうと考える者達もいた。
騎竜兵が歩兵4名を連れて裏通りを歩いていると、小綺麗な酒場兼娼館の姿が目に入った。
さらなる食糧を調達するべく兵士達が代官所から街に躍り出ていった。
兵士達は飲食物を扱う店や行商人や民達の倉からも持ち出される。
もちろん旧子爵邸の日本人達には手を出さないよう厳命されている。
だが中には羽目を外そうと考える者達もいた。
騎竜兵が歩兵4名を連れて裏通りを歩いていると、小綺麗な酒場兼娼館の姿が目に入った。
「ちょっと寄っていくか?」
「いいんですか?」
「うむ、酒場を兼ねてるなら食い物もある筈だからな。
これは客に扮して調査の必要があると思わないか?」
「そうですね、行きましょ、行きましょ。」
「いいんですか?」
「うむ、酒場を兼ねてるなら食い物もある筈だからな。
これは客に扮して調査の必要があると思わないか?」
「そうですね、行きましょ、行きましょ。」
騎竜兵と兵士達は店内に入って驚愕する。
最近はグルティアの女達も綺麗になっていい匂いをさせるようになっていたが、この娼館の女達は格が違った。
洗練された薄化粧の仕方、十分な栄養に基づいて育った豊満なボディ。
仕草の一つ一つが可愛らしくて、兵士達は舞い上がっていた。
自分の財布の中の状況も忘れて・・・
最近はグルティアの女達も綺麗になっていい匂いをさせるようになっていたが、この娼館の女達は格が違った。
洗練された薄化粧の仕方、十分な栄養に基づいて育った豊満なボディ。
仕草の一つ一つが可愛らしくて、兵士達は舞い上がっていた。
自分の財布の中の状況も忘れて・・・
「金が支払えないとはどういうことですかい?」
一時間ほどでヘロヘロになった兵士達を黒駒勝蔵が視線で威嚇する。
床に正座させられた兵士達の周囲には石和黒駒一家に所属する組員や冒険者達が部屋の四方から取り囲んでいる。
床に正座させられた兵士達の周囲には石和黒駒一家に所属する組員や冒険者達が部屋の四方から取り囲んでいる。
「我々はグルティア侯の・・・」
「関係ありませんな。
代金分の身ぐるみ剥がさせて頂きますね。」
「関係ありませんな。
代金分の身ぐるみ剥がさせて頂きますね。」
下着姿で放り出された兵士達は這う這うの体で逃げ出していた。
「あれは仕返しに来ますね。」
荒木が迷惑そうな顔で予測する。
「そうだな。
女達は子爵邸にお手伝いに行かせろ。」
「我々は?」
「自分等のシマを守れなくて何がヤクザだ。
もともとは一本独鈷でやってた俺達だ。
余所者にイモ引くわけにはいかんからな。
チャカとヤッパ、兵隊を集めろ。
出入りに備えてな。」
「そうだな。
女達は子爵邸にお手伝いに行かせろ。」
「我々は?」
「自分等のシマを守れなくて何がヤクザだ。
もともとは一本独鈷でやってた俺達だ。
余所者にイモ引くわけにはいかんからな。
チャカとヤッパ、兵隊を集めろ。
出入りに備えてな。」
嬉々として組員達が酒場を飛び出していくが、冒険者達は勝蔵の言葉がいまいち理解できなかったのか動きが鈍い。
「え~と、自分達の縄張りを守れなくて何がギルドメンバーか。
我々は独立勢力である。
余所者が怖いと退くわけにはいかない。
武器と戦える者を集めて迎え撃つぞ・・・です。」
我々は独立勢力である。
余所者が怖いと退くわけにはいかない。
武器と戦える者を集めて迎え撃つぞ・・・です。」
荒木の翻訳に納得して冒険者達も飛び出していく。
勝蔵は訳されて照れ臭そうだ。
勝蔵は訳されて照れ臭そうだ。
「まずはお代官さまのご意見でも伺って来るかな?」
「お供しやす兄貴!!」
「お供しやす兄貴!!」
武器も集まってくるお馴染みのトカレフ、日本刀、長ドス、ロングソード、棍棒、金属バット、フレイル、弓矢、ボウガン、コルト・ガバメント、ベレッタM92、M1ガーランド、U.S.M1カービン。
残念だがトカレフ以外の銃は一丁ずつしかない。
事務仕事や地回りに退屈を覚えていた勝蔵は久しぶりの喧嘩に高揚している自分に苦笑していた。
残念だがトカレフ以外の銃は一丁ずつしかない。
事務仕事や地回りに退屈を覚えていた勝蔵は久しぶりの喧嘩に高揚している自分に苦笑していた。
「スコータイの連中ももう弾丸の在庫が無いそうです。
今回の喧嘩が終わったら暫くお蔵入りですな。」
今回の喧嘩が終わったら暫くお蔵入りですな。」
荒木がトカレフとU.S.M1カービンを手に取り呟いていた。
スコータイは、日本に
スコータイは、日本に
調査団一行は7つの村の調査や測量をどうにか終えて、マディノの街に戻ってきていた。
鉱山局の松本が車両を入れた庭先で出迎えてくれる。
鉱山局の松本が車両を入れた庭先で出迎えてくれる。
「お帰りなさい、あなた方が最後でした。」
「状況は?」
「状況は?」
浅井は高機動車から降りて間髪入れずに問いただす。
「グルティア兵と石和黒駒一家が町の各所で睨み合ってます。
代官所はグルティア兵に制圧され、逃げ延びた兵士や役人がこちらに・・・
また、やはり石和黒駒一家が女性達の保護を求めるとこちらに押し付けてきました。
現在、市原女史に面倒みてもらってます。
鉱山街の日本人達は避難所に誘導しました。
駐在が数名と自警団が警戒に当たっています。
我々も含めて三勢力がこの町で睨み合ってる状態です。」
代官所はグルティア兵に制圧され、逃げ延びた兵士や役人がこちらに・・・
また、やはり石和黒駒一家が女性達の保護を求めるとこちらに押し付けてきました。
現在、市原女史に面倒みてもらってます。
鉱山街の日本人達は避難所に誘導しました。
駐在が数名と自警団が警戒に当たっています。
我々も含めて三勢力がこの町で睨み合ってる状態です。」
松本の言葉に浅井は首をふる。
「4勢力です。
各村で蜂起した一揆軍800がこちらに向かっています。
自分はこれより旧子爵邸防衛の指揮を執ります。」
各村で蜂起した一揆軍800がこちらに向かっています。
自分はこれより旧子爵邸防衛の指揮を執ります。」
駆け出して行ってしまった浅井を藤井は目で追ったが松本が話し掛来た。
「藤井課長、問い合わせのあった石和黒駒一家のことなんだが、総督府から連絡があった。
連中は移民じゃない密航者だ。」
連中は移民じゃない密航者だ。」
グルティア騎竜兵団と睨み合う石和黒駒一家は、日本人の組員40名、ギルドに加盟した傭兵や冒険者30名を戦力としていた。
ギルドホームである酒場や娼館や事務所としてのギルド本部、組員寮を街の一角に集めて守りやすいようにしている。
ギルドホームである酒場や娼館や事務所としてのギルド本部、組員寮を街の一角に集めて守りやすいようにしている。
「代官所の役人や兵士達にこちらとの合流を呼び掛けましょう。
代官が竜騎兵団に拘束されてるのならば連中を仲間に入れれば錦の御旗はこちらのものです。」
代官が竜騎兵団に拘束されてるのならば連中を仲間に入れれば錦の御旗はこちらのものです。」
荒木の提案に勝蔵は悪くないと思っていた。
武力はともかく大貴族の権力と戦うには石和黒駒一家の公的な力はあまり強くない。
だが代官所の残党の証言があれば十分に渡り合える可能性があった。
武力はともかく大貴族の権力と戦うには石和黒駒一家の公的な力はあまり強くない。
だが代官所の残党の証言があれば十分に渡り合える可能性があった。
「兵士は一緒に戦ってもらうとして、役人に死なれるわけにはいかないからな。
安全なアジトを提供しよう。
そのへんは荒木に任せる。」
「へい兄貴。」
安全なアジトを提供しよう。
そのへんは荒木に任せる。」
「へい兄貴。」
細かいことは荒木に任せて、区画の入り口に築いたバリケードを視察することにした。
十数人の組員や傭兵達がここを守っている。
十数人の組員や傭兵達がここを守っている。
「組長、グルティアの連中に動きは無いです。
竜騎兵が15人、兵士が50名がこちらと睨みあってますわ。」
竜騎兵が15人、兵士が50名がこちらと睨みあってますわ。」
若頭、もといサブギルドマスターの北村がここの指揮を取っている。
「誰かギルドマスターって、呼んでくれないかな・・・」
少々悩みつつも双眼鏡で敵陣を観察する。
「やっぱり連中も銃を持ってるか。
撃ち合いになったら不利かな?」
「マズルローダー(前装式)ってやつだから、一発撃ったら弾込めに時間掛かるんでしょう?
でも歩兵の二人に一人、竜騎兵は全員持ってますな。
はい、これが実物。
娼館で身ぐるみ剥いだ奴から代金代わりに貰ったもんです。」
撃ち合いになったら不利かな?」
「マズルローダー(前装式)ってやつだから、一発撃ったら弾込めに時間掛かるんでしょう?
でも歩兵の二人に一人、竜騎兵は全員持ってますな。
はい、これが実物。
娼館で身ぐるみ剥いだ奴から代金代わりに貰ったもんです。」
グルティアの紋章を付けた前装式弾込め銃を手渡されて観察する。
そして、銃を持ってない若い組員に渡す。
そして、銃を持ってない若い組員に渡す。
「一発しか撃てないから大事に使え。」
「は、はい!!」
「は、はい!!」
今から弾込めの仕方なんて教えても意味が無いだろうとそこは割り切ることにした。
屋根から双眼鏡から観察した組員が声を掛けてくる。
屋根から双眼鏡から観察した組員が声を掛けてくる。
「組長、何台かの馬車が街の外に出ようとして戻ってきました!!
なんか街の外にえらい人数が集まってます。
兵士じゃないですが、あれは農村の連中です!!
手に農具や棒きれもって馬車を威嚇してます。」
「なんだ一揆か?
連中も仲間に出来そうか?」
「いや、無理だと思います。
旗みたいのに打倒代官とか、こっちの言葉で書いてます!!」
なんか街の外にえらい人数が集まってます。
兵士じゃないですが、あれは農村の連中です!!
手に農具や棒きれもって馬車を威嚇してます。」
「なんだ一揆か?
連中も仲間に出来そうか?」
「いや、無理だと思います。
旗みたいのに打倒代官とか、こっちの言葉で書いてます!!」
「なんということだ、強硬突破しかないかな?」
竜騎兵団団長マッシモは追い返された馬車からの報告にうんざりした声をあげる。
マッシモの目的は戦闘ではなく、商品価値のある食料をグルティアまで送り届けることにある。
幸い一揆軍は代官所がこちらの一味と思い込んでるので、代官所残党と組む様子はない。
だが馬車の通れる街道に陣取られてるのは面白くなかった。
さらにさらに街中では街の権益を代表する自衛組織がこちらと対時している。
マッシモの目的は戦闘ではなく、商品価値のある食料をグルティアまで送り届けることにある。
幸い一揆軍は代官所がこちらの一味と思い込んでるので、代官所残党と組む様子はない。
だが馬車の通れる街道に陣取られてるのは面白くなかった。
さらにさらに街中では街の権益を代表する自衛組織がこちらと対時している。
「まったく難儀なことを・・・だが・・・その程度の戦力で我らを止めることが出来ると思っているのか?」
一揆軍は7つ村の若者を中心に約800人ほどに膨れ上がっていた。
街から4方向に伸びる街道に200名ずつ、馬車や土を掘り返し、木を倒壊させて進路を塞いでいる。
街から4方向に伸びる街道に200名ずつ、馬車や土を掘り返し、木を倒壊させて進路を塞いでいる。
「本当は今すぐにでも村に乗り込みたいのだが、竜騎兵とまともにやり合うわけにはいかないからな。
封じ込めて少しずつ削り取るつもりだ。」
封じ込めて少しずつ削り取るつもりだ。」
一揆に唯一参加してないアンクル村な村長モンローがここにいるのは、いざという時の仲介役になる為と一揆に参加した村が免罪を勝ち取れない時に遺された家族をアンクル村で保護してもらう為だ。
モンローは一揆の代表になっているリボー村の村長に蜂起を辞めて解散するように促していた。
モンローは一揆の代表になっているリボー村の村長に蜂起を辞めて解散するように促していた。
「甘いぞ、竜騎兵は馬の騎兵とはわけが違う。
この程度の障害はモノともしないぞ。」
この程度の障害はモノともしないぞ。」
何よりモンローはこの蜂起に反対なのだ。
「だが街にいる娘達が心配な親がいきり立っている。
これでも自制しているんだ。」
「日本人達は女に興味はないという噂ではないか。
それに彼等に保護されてるなら代官所やグルティア侯爵家も手出しは出来ない。
落ち着かせるんだ。」
「だからと言って、このままでは何も事態は解決しないじゃないか!!」
これでも自制しているんだ。」
「日本人達は女に興味はないという噂ではないか。
それに彼等に保護されてるなら代官所やグルティア侯爵家も手出しは出来ない。
落ち着かせるんだ。」
「だからと言って、このままでは何も事態は解決しないじゃないか!!」
そこに街を見張ってた若者が飛び込んでくる。
「大変です、竜騎兵団が街から出てこちらに向かって来ます。」
「弓で迎え撃て!!」
「弓で迎え撃て!!」
農民の集まりといえ、畑を狙う害獣や狩りをする為に弓くらいは持っている。
武芸者のように練習しているわけでは無いが、数十本もの矢が竜騎兵10騎ばかりに飛んでいく。
だか竜騎兵達が駆るデイノニクス達は軽々と矢を避け、鱗は弾きながら前進してくる。
盛った土や倒木も意に介さず飛び越えていく。
武芸者のように練習しているわけでは無いが、数十本もの矢が竜騎兵10騎ばかりに飛んでいく。
だか竜騎兵達が駆るデイノニクス達は軽々と矢を避け、鱗は弾きながら前進してくる。
盛った土や倒木も意に介さず飛び越えていく。
「蹴散らせ!!」
農民の一人が文字通りデイノニクスに蹴り飛ばされるとパニックで総崩れになっていく。
軽く噛まれた農民はそのまま放り投げられ仲間たちに当たって互いに動けなくなる。
鍬や鋤を持った農民数人が一匹のデイノニクスを狙うがその場で一回りされて尻尾で弾き飛ばされる。
これでもなるべく殺さないように剣や槍、銃の使用は控えているのだ。
倒木はデイノニクス二匹に食わえられて排除し、後から来た歩兵達が盛り土を破壊して街道を均していく。
竜騎兵達の前進は留まるところを知らなかった。
軽く噛まれた農民はそのまま放り投げられ仲間たちに当たって互いに動けなくなる。
鍬や鋤を持った農民数人が一匹のデイノニクスを狙うがその場で一回りされて尻尾で弾き飛ばされる。
これでもなるべく殺さないように剣や槍、銃の使用は控えているのだ。
倒木はデイノニクス二匹に食わえられて排除し、後から来た歩兵達が盛り土を破壊して街道を均していく。
竜騎兵達の前進は留まるところを知らなかった。
街から竜騎兵が数を減らしたことを双眼鏡で確認した石和黒駒一家は、代官所の奪還に乗り出そうとした。
案内役の代官所の兵士や役人もいる。
僅かばかりの竜騎兵など銃弾で黙らせればいい。
だが竜騎兵と石和黒駒一家の間に高機動車2両が立ち塞がり、RPK軽機関銃の銃口がこちらを向いていた。
高機動車から浅井二尉が降りてくる。
勝蔵も組員を抑えて前にでる。
案内役の代官所の兵士や役人もいる。
僅かばかりの竜騎兵など銃弾で黙らせればいい。
だが竜騎兵と石和黒駒一家の間に高機動車2両が立ち塞がり、RPK軽機関銃の銃口がこちらを向いていた。
高機動車から浅井二尉が降りてくる。
勝蔵も組員を抑えて前にでる。
「どういうことで?」
「我々は基本的に王国内の争いに関与しない。
我々に火の粉が振り掛からないか、公的な機関からの要請がない限りな。
まして相手は出ていこうとしているんだ。
大人しく出ていかせればいい。」
「ここは日本の管理区域じゃなかったので?」
「正確には来年からな。
租借してはいるが正式には王国の領地だ。」
我々に火の粉が振り掛からないか、公的な機関からの要請がない限りな。
まして相手は出ていこうとしているんだ。
大人しく出ていかせればいい。」
「ここは日本の管理区域じゃなかったので?」
「正確には来年からな。
租借してはいるが正式には王国の領地だ。」
統治機関の代官所も今年限りの予定なのだが今はまだ存在している。
「アレを行かせれば来年のここの領民は苦境に晒されますが、それでも我々を止めるので?」
「前者は答える権限はない。
だが、石和黒駒一家を停めるのは大陸密航の容疑者として拘束する為だ。」
「前者は答える権限はない。
だが、石和黒駒一家を停めるのは大陸密航の容疑者として拘束する為だ。」
駐在所のパトカー2両も封鎖線に加わっている。
「なるほど・・・なら日本人でないギルドメンバーや代官所の兵士達は関係ないと?」
手を振って大陸系のギルドメンバーや兵士を先に行かせ、自衛隊側も素通りさせる。
だが若頭の北村や荒木は納得が行かない顔をしている。
だが若頭の北村や荒木は納得が行かない顔をしている。
「あいつらじゃ勝てませんぜ。
敵は銃を持っているがあいつらには持たせてません。」
「かといって強引に押し通ればモロともに銃弾の餌食だ。」
敵は銃を持っているがあいつらには持たせてません。」
「かといって強引に押し通ればモロともに銃弾の餌食だ。」
浅井は日本人だけになったところで話を再会する。
「黒駒さん、あんたらは日本の移民局の許可を得ずに大陸に渡ってきたのはすでに判明している。
その経緯を説明してもらおう。」
「大した理由じゃない。
青木ヶ原事件で外道仕事がバレて地元に居場所を無くした。
大半の幹部組員が死ぬか、逮捕されて残されたこいつらを見捨てることも出来ずに組を継いだ。
だが・・・日本では大組織に狙われ、地元を追われた。
で、紹介状を貰ったので綺麗所を温泉街に斡旋する仕事で知り合ったタイ人マフィアの密輸船でタイ人の植民都市スコータイに渡ってこの地に来てみたのさ。」
「紹介状?」
「ベッセン、その名を総督府に照会してもらいな。
そうすれば俺らのことは不問になるから。
まあ、そんなわけで密航かも知れないが、密入国じゃないんだ。
ああ、なるべく上の人間に掛け合ってくれよ、訳ありな名前だから。
そうだな経済難民というのが一番近いかもしれない。
日本人ではあるが、すでに王国に国籍を移したのさ。
つまりあんたらは王国の民に銃口を向けていることになる。」
その経緯を説明してもらおう。」
「大した理由じゃない。
青木ヶ原事件で外道仕事がバレて地元に居場所を無くした。
大半の幹部組員が死ぬか、逮捕されて残されたこいつらを見捨てることも出来ずに組を継いだ。
だが・・・日本では大組織に狙われ、地元を追われた。
で、紹介状を貰ったので綺麗所を温泉街に斡旋する仕事で知り合ったタイ人マフィアの密輸船でタイ人の植民都市スコータイに渡ってこの地に来てみたのさ。」
「紹介状?」
「ベッセン、その名を総督府に照会してもらいな。
そうすれば俺らのことは不問になるから。
まあ、そんなわけで密航かも知れないが、密入国じゃないんだ。
ああ、なるべく上の人間に掛け合ってくれよ、訳ありな名前だから。
そうだな経済難民というのが一番近いかもしれない。
日本人ではあるが、すでに王国に国籍を移したのさ。
つまりあんたらは王国の民に銃口を向けていることになる。」
日本人が難民になる発想はほとんどの日本人には理解しずらい。
帝国は大陸に一つしかない国家だった為に国籍の概念はなかったが、王国は総督府からの提案を受けて採用した。
帝国に比べて半分以下となった財政を改善する為に税制の効率化をはかる意味があった為だ。
帝国は大陸に一つしかない国家だった為に国籍の概念はなかったが、王国は総督府からの提案を受けて採用した。
帝国に比べて半分以下となった財政を改善する為に税制の効率化をはかる意味があった為だ。
「だ、だが日本の施政権がこの街に及べばやはりあんたらは国を捨てた犯罪者として逮捕されるぞ。」
「だがそいつは来年からなんだろ?
まだ、年は明けてないですぜ。
さあ、そこをどいてもらおうか。」
「だいたいその銃器はどこから手にいれたんだ。」
「あんたら植民都市造る際に厳重に刀狩りみたいなことしたんだろ?
タイマフィアも移民するのに足手まといになるから買い叩いたのさ。
元はタイ王国陸軍の横流し品さ。」
「だがそいつは来年からなんだろ?
まだ、年は明けてないですぜ。
さあ、そこをどいてもらおうか。」
「だいたいその銃器はどこから手にいれたんだ。」
「あんたら植民都市造る際に厳重に刀狩りみたいなことしたんだろ?
タイマフィアも移民するのに足手まといになるから買い叩いたのさ。
元はタイ王国陸軍の横流し品さ。」
そう言いながら封鎖線を駆け抜けていく。
不問にならなかったらならなかったで、この街は大陸系組員に任せて隣の領地の事務所に拠点を移せばいいだけの話だ。
別に石和黒駒一家の縄張りはこの街だけではないのだ。
すでに竜騎兵団と大陸系組員の市街戦は始まっている。
不問にならなかったらならなかったで、この街は大陸系組員に任せて隣の領地の事務所に拠点を移せばいいだけの話だ。
別に石和黒駒一家の縄張りはこの街だけではないのだ。
すでに竜騎兵団と大陸系組員の市街戦は始まっている。
「代官を救出したら我々に救援要請を出させろ。
公的な機関からの要請なら我々も動ける。」
公的な機関からの要請なら我々も動ける。」
浅井が聞こえるように大声で伝える。
後ろ姿の勝蔵は片手を上げて応えていた。
方針を転換するようだが、せめて自衛隊としては介入の余地を残しておかないといけない。
このままでは石和黒駒一家の影響力だけがこの領地内で大きくなる。
後ろ姿の勝蔵は片手を上げて応えていた。
方針を転換するようだが、せめて自衛隊としては介入の余地を残しておかないといけない。
このままでは石和黒駒一家の影響力だけがこの領地内で大きくなる。
「連隊司令部の一番偉い奴を出すよう通信しろ。
総督府の偉いさんに紹介状の真偽を確かめないといかん。」
総督府の偉いさんに紹介状の真偽を確かめないといかん。」
浅井は高機動車の無線機を担当している隊員に告げた。
建物の屋根や窓から銃撃を始める石和黒駒一家に竜騎兵団も応戦する。
しかし、竜騎兵団は銃撃戦を市街地で行うという経験はない。
通常は突撃と同時に発砲して距離を詰めてから槍や剣で敵陣を蹂躙するのが役目だ。
激しき揺れる騎乗中は弾込めは不可能でもある。
障害物だらけの市街地では、歩兵の小銃の方が弾込めが出来る分有利だ。
たが歩兵達が一発撃って弾込めしている間にトカレフの銃弾が5発も6発も飛んでくる。
負傷してもがいていると盗賊ギルドや傭兵出身の大陸系組員に路地に引きずり込まれて武器を奪われていく。
しかし、竜騎兵団は銃撃戦を市街地で行うという経験はない。
通常は突撃と同時に発砲して距離を詰めてから槍や剣で敵陣を蹂躙するのが役目だ。
激しき揺れる騎乗中は弾込めは不可能でもある。
障害物だらけの市街地では、歩兵の小銃の方が弾込めが出来る分有利だ。
たが歩兵達が一発撃って弾込めしている間にトカレフの銃弾が5発も6発も飛んでくる。
負傷してもがいていると盗賊ギルドや傭兵出身の大陸系組員に路地に引きずり込まれて武器を奪われていく。
「一揆軍なんぞより余程手強いな。」
不利をを悟ったマッシモは、食料を積んだ馬車を先行させて街からとにかく脱出させる。
石和黒駒一家の強みは市街地でのゲリラ戦だ。
野外ならば形勢は逆転する。
野外ならば形勢は逆転する。
「深追いはするな。
街から出たなら門を閉じたり、馬車で封鎖しろ。」
街から出たなら門を閉じたり、馬車で封鎖しろ。」
自らもベレッタ自動式散弾銃を発砲しながら勝蔵は大声を張り上げなから指揮をとる。
「代官所にまだ竜騎兵一騎含む30名ばかり立て籠っています。」
荒木が息を切らせながら駆け寄ってくる。
「攻め落とせそうか?」
「駄目ッス、代官所はさすがに掘りと土壁が合って近寄れません。
正門と裏門に橋が掛かってますが・・・何より弾がもう有りません。」
「駄目ッス、代官所はさすがに掘りと土壁が合って近寄れません。
正門と裏門に橋が掛かってますが・・・何より弾がもう有りません。」
さすがに在庫が底を尽き始めていたのは以前から問題となっていたが、出入りでケチるわけにもいかなかった。
代官さえ抑えて、大義名分を掲げれば石和黒駒一家に取っては勝利なのだ。
ふと、勝蔵の目に入るものがあった。
代官さえ抑えて、大義名分を掲げれば石和黒駒一家に取っては勝利なのだ。
ふと、勝蔵の目に入るものがあった。
「なあ、俺にあれが乗りこなせると思うか?」
「兄貴、なら出来ます!!」
「ちょっと試してみるか、富士吉田では何度か慣らしたもんだが、要領が同じならいいんだが・・・」
「兄貴、なら出来ます!!」
「ちょっと試してみるか、富士吉田では何度か慣らしたもんだが、要領が同じならいいんだが・・・」
一揆軍が竜騎兵団に蹴散らされ追い散らされる乱戦の中、街道の先にから土煙を上げながら何かが接近してくる。
「何だ?」
一揆軍を突破した先頭の竜騎兵は土煙に人の形をした影を認めて、槍を突き立てるとそのまま持ち上げられで街道の外に放り投げられた。
土煙が晴れると神の像を象った4メートル前後の全高を持つ巨像が動いている。
土煙が晴れると神の像を象った4メートル前後の全高を持つ巨像が動いている。
「ゴーレムか?
だが一体だけだ、対ゴーレム戦用意!!」
だが一体だけだ、対ゴーレム戦用意!!」
一揆軍からもゴーレムの姿が確認出来る。
「おお、あれは・・・先代の子爵様が用意した神像、この領地が危機の時に動き出すと言われてたが・・・」
モンローの言葉に農民達が共に戦おうとゴーレムのまわりに集まっていく。
「行くぞ!!」
一揆軍の反撃の進撃と同時にゴーレムは前方を歩いていた農民を踏み潰した。
代官所の堀を渡る為の橋をデイノニクスを駆る勝蔵が疾走する。
富士吉田市の牧場で一通り馬には乗れるようにったが、騎竜はやはり勝手が違う。
富士吉田市の牧場で一通り馬には乗れるようにったが、騎竜はやはり勝手が違う。
「前進出来ればいい!!」
橋の上で時速40キロで走り抜けるデイノニクスに代官所の立て籠っていたグルティア兵の前装式弾込め銃が数発発砲される。
しかし、その快速で狙いを外され空を切り、強靭な鱗が運良く着弾した鉛弾によるダメージを減衰させてしまう。
デイノニクスはそのまま門扉にぶつかる直前に門扉の金具に足を掛けて、そのままスルスルと屋根まで駆け上がっていく。
屋根から代官所の庭先に降り立った。
群れを作る性質のあるデイノニクスはすぐに代官所内の別のデイノニクスのいる場所に向かう。
グルティア兵達は味方の騎竜かと思い、阻止行動をとってこない。
即ち立て籠っている敵将のいる場所だ。
手綱とデイノニクスの首にしがみついているのが精一杯だった勝蔵は、敵騎竜と騎竜兵の前で停止したデイノニクスから滑り落ちる。
しかし、その快速で狙いを外され空を切り、強靭な鱗が運良く着弾した鉛弾によるダメージを減衰させてしまう。
デイノニクスはそのまま門扉にぶつかる直前に門扉の金具に足を掛けて、そのままスルスルと屋根まで駆け上がっていく。
屋根から代官所の庭先に降り立った。
群れを作る性質のあるデイノニクスはすぐに代官所内の別のデイノニクスのいる場所に向かう。
グルティア兵達は味方の騎竜かと思い、阻止行動をとってこない。
即ち立て籠っている敵将のいる場所だ。
手綱とデイノニクスの首にしがみついているのが精一杯だった勝蔵は、敵騎竜と騎竜兵の前で停止したデイノニクスから滑り落ちる。
「こ・・・この気持ち悪いじゃないか・・・」
吐き気を堪えて、自棄っぱちっで背中に背負ったベレッタ 自動式散弾銃を適当に構えて撃ち放つ。
穴だらけになって倒れた騎竜兵を目撃し、代官所のグルティア兵は降伏した。
穴だらけになって倒れた騎竜兵を目撃し、代官所のグルティア兵は降伏した。
門扉が開き、荒木や北村が代官所に雪崩れ込むと真っ先に囚われていた代官所の役人や兵士達が解放された。
軟禁を解かれた代官エミリオも勝蔵に肩を貸して中庭に出てくると組員や代官所の役人や兵士達が歓声を上げる。
そこに浅井二等陸尉と調査団の団長である藤井が現れる。
軟禁を解かれた代官エミリオも勝蔵に肩を貸して中庭に出てくると組員や代官所の役人や兵士達が歓声を上げる。
そこに浅井二等陸尉と調査団の団長である藤井が現れる。
「さあ、あとはあんたの仕事だ、お代官様。」
「わかっている。
「わかっている。
- 王国代官として日本国自衛隊に、よ、要請する。
この領内を荒らして回ったマッシモ・グルティア率いるグルティア騎竜兵団の撃退と奪われた食料の奪還を!!」
マディノの町から高機動車2両が竜騎兵団の追跡を開始する。
だがすぐに目標を視認することが出来た。
さすがに40台もの馬車が固まって街道にいれば嫌でも目立つ。
だがすぐに目標を視認することが出来た。
さすがに40台もの馬車が固まって街道にいれば嫌でも目立つ。
「なんでこんな所で停まってるんだ?」
「二尉、街道の先で騎竜兵団が交戦中!!」
「二尉、街道の先で騎竜兵団が交戦中!!」
高機動車の後部でドローンから配信される映像を見張っていた隊員が浅井を呼び掛けてくる。
「一揆軍か?」
「いえ・・・これは・・・二足歩行ロボット?」
「いえ・・・これは・・・二足歩行ロボット?」
要領を得ない隊員の発言に浅井もモニターを確認すると、確かに二足歩行の巨大な像が動いていた。
「ゴーレムって奴か・・・」
グルティア兵達が一斉に銃撃した後に竜騎兵達が槍や剣で切りつけている。
デイノニクスも爪や牙を突き立てているが、まるで歯が立っていない。
尻尾を掴まれて振り回されている光景が目にはいる。
その周辺では一揆に参加した農民達が倒れていたり、逃げ回っている。
デイノニクスも爪や牙を突き立てているが、まるで歯が立っていない。
尻尾を掴まれて振り回されている光景が目にはいる。
その周辺では一揆に参加した農民達が倒れていたり、逃げ回っている。
「先にアレを片付けないとけないか、やるぞ!! 」
銃架にRPK軽機関銃を装着して高機動車から銃撃が開始させる。
車両から降りた施設科隊員もAK-74で射撃する。
無数の銃弾がゴーレムに撃ち込まれるが多少ヘコませる程度で前進が止まらない。
そのヘコみもすぐに修復していく。
後方からの突然の攻撃にグルティア兵達は慌てるものの、マッシモが号令を駆けて落ち着かせる。
すぐに高機動車の元に駆け寄って忠告してくる。
車両から降りた施設科隊員もAK-74で射撃する。
無数の銃弾がゴーレムに撃ち込まれるが多少ヘコませる程度で前進が止まらない。
そのヘコみもすぐに修復していく。
後方からの突然の攻撃にグルティア兵達は慌てるものの、マッシモが号令を駆けて落ち着かせる。
すぐに高機動車の元に駆け寄って忠告してくる。
「それじゃあ駄目だ。
ゴーレムは、魔力を込めた宝石を体のどこかに埋め込まれている。
それを破壊するんだ!!」
ゴーレムは、魔力を込めた宝石を体のどこかに埋め込まれている。
それを破壊するんだ!!」
さすがにマッシモは家臣団に組み込まれて士族に族籍変更が行われているとはいえ、貴族の子弟だったこともあり日本語を学習している。
討伐の第一対象に忠告されて浅井は舌打ちをする。
討伐の第一対象に忠告されて浅井は舌打ちをする。
「どこかってどこだよ!!」
「だいたい頭部、胸部、腹部がセオリーだ。」
「だいたい頭部、胸部、腹部がセオリーだ。」
銃撃は当然胴体を集中して狙っている。
弾込めを終えたグルティア兵達も攻撃に加わる。
弾込めを終えたグルティア兵達も攻撃に加わる。
「あそこまでヘコめば・・・、行け!!」
竜騎兵4騎がデイノニクスの腕に取っ手を持たせて持ち上げさせた巨大な金属製破城鎚を携えてゴーレムに火線に注意しながら突撃する。
巨大な杭のような穂先を持った重量400キロの金属製である。
巨大な杭のような穂先を持った重量400キロの金属製である。
「撃ち方やめ!!!」
銃撃が止まり、ヘコみが戻る前に破城鎚がゴーレムの腹部を貫く。
「外れか、いかん、退け!!」
貫通して背中まで穴が空いたゴーレムの傷が塞がっていく。
刺さったままの破城鎚がそのまま余分な部分が切り落とされる。
そのまま落とされた破城鎚を握られて振り回されて、まだデイノニクスに取っ手を握らせていた騎竜兵二人が騎竜ごと投げ飛ばされる。
そして、何事もなかったかのように前進を再会する。
刺さったままの破城鎚がそのまま余分な部分が切り落とされる。
そのまま落とされた破城鎚を握られて振り回されて、まだデイノニクスに取っ手を握らせていた騎竜兵二人が騎竜ごと投げ飛ばされる。
そして、何事もなかったかのように前進を再会する。
「兵を街道から外させろ。
さっきから見てると、奴は進路を妨害するものにしか攻撃しない。」
さっきから見てると、奴は進路を妨害するものにしか攻撃しない。」
浅井の指摘通りで蹴散らされた農民や竜騎兵、排除された倒木や盛り土も全て街道のゴーレムの進路上でだ。
しかし、後続の馬車を街道の外に出せるほど、街道の周辺の森は広くない。
しかし、後続の馬車を街道の外に出せるほど、街道の周辺の森は広くない。
「先頭の馬車から転回して、町に戻れ!!
負傷者は最後尾の馬車に乗せて満載になったら順次、その場で転回して発車しろ。
竜騎兵は足止めに徹しろ!!」
負傷者は最後尾の馬車に乗せて満載になったら順次、その場で転回して発車しろ。
竜騎兵は足止めに徹しろ!!」
町には石和黒駒一家と代官所の兵士達が待ち受けてる筈だが、馬車に積まれた食料を無視出来ないのは同様だった。
まだ竜騎兵は30騎ほど残っているが、ゴーレムを倒す決定打に欠けていた。
転回しようとする馬車を浅井が引き留めている。
馬車の兵士達に片言の大陸語で説明しているがなかなか理解してもらえない。
ようやく日本語がわかるマッシモが来て双方胸を撫で下ろしている。
まだ竜騎兵は30騎ほど残っているが、ゴーレムを倒す決定打に欠けていた。
転回しようとする馬車を浅井が引き留めている。
馬車の兵士達に片言の大陸語で説明しているがなかなか理解してもらえない。
ようやく日本語がわかるマッシモが来て双方胸を撫で下ろしている。
「何をしている?」
「命令しろ、馬車に一揆に参加した農民も乗せてやれ。
そうすれば町に入る通行手形の代わりになるぞ。」
「命令しろ、馬車に一揆に参加した農民も乗せてやれ。
そうすれば町に入る通行手形の代わりになるぞ。」
確かに先程まで戦闘を行っていた武装集団がいる町に入るには手土産が必要ではあった。
「積み荷を放棄せるわけにはいかない。
負傷してない農民は走らせろ。」
負傷してない農民は走らせろ。」
マディノの町では次々と引き返してくるグルティアの馬車に困惑していた。
「何があったので?」
「わからん・・・」
「わからん・・・」
勝蔵とエミリオも戦力を集めグルティア兵を町の広場に集めて、馬車を制圧して食料を奪還していたが、グルティア兵の抵抗の無さに戸惑っていた。
ようやく馬車に乗っていた農民に状況を説明してもらったが、町の外では爆発音がして全員が振り返る。
その後に銃声が鳴り響いている。
その後に銃声が鳴り響いている。
「手榴弾・・・でも倒せてないのか」
町の門を高機動車が後進しながら竜騎兵と退避してくる。
「門を閉じろ!!」
だが閉じられた門には一向にゴーレムがやってこない。
門の内側で待ち受けていた自衛隊、グルティア兵、石和黒駒一家、マディノ代官所の兵士達は拍子抜けする。
高い塔から見張りをしていた隊員が無線機で叫んでいる。
門の内側で待ち受けていた自衛隊、グルティア兵、石和黒駒一家、マディノ代官所の兵士達は拍子抜けする。
高い塔から見張りをしていた隊員が無線機で叫んでいる。
「ゴーレム、進路を変更!!
街道を外れて東の外壁に向かってます!!」
「なんだと!?」
街道を外れて東の外壁に向かってます!!」
「なんだと!?」
ゴーレムは街道から来ると信じすぎていた。
「東の外壁が破られたぞ!!」
「なんでそんなところから・・・あそこには・・・旧子爵邸がある?」
「なんでそんなところから・・・あそこには・・・旧子爵邸がある?」
エミリオの言葉に全員が顔を青ざめる。
「まだ、調査団が!!」
「村の娘達やうちの女の子達もそこにまだいやしたね。」
「そんな、ジーンにまだ詩を贈ってないのに・・・」
「え?
うちの娘達がいるところなんですか?」
「街道開いたみたいだし、我々は帰っていいかな?
いや、なんでもない・・・」
「村の娘達やうちの女の子達もそこにまだいやしたね。」
「そんな、ジーンにまだ詩を贈ってないのに・・・」
「え?
うちの娘達がいるところなんですか?」
「街道開いたみたいだし、我々は帰っていいかな?
いや、なんでもない・・・」
全員から睨み付けられてマッシモは黙る。
全会一致で迎撃に向かうことなったが根本的な問題が解決してない。
全会一致で迎撃に向かうことなったが根本的な問題が解決してない。
「どうやって倒すか?」
デイノニクスの爪や牙、銃弾や手榴弾、破城鎚でも効果は薄かったのだ。
移動を開始するが打開策は見つからない。
移動を開始するが打開策は見つからない。
「待てよ、あれがあったな。
打撃が効かないなら押し返すか?」
打撃が効かないなら押し返すか?」
浅井は旧子爵邸と連絡を取った。
ゴーレムは僅かな抵抗を排除して旧子爵邸の門を破壊せんと破城槌を構えると、邸内の庭先でロシア製戦闘工兵車IMR-3のエンジンが唸りをあげる。
「いいのかなあ?」
「いいんじゃないですか、二等陸尉の許可は出てますし。
今さら調査団や女の子を退避させる時間もないですから。」
「いいんじゃないですか、二等陸尉の許可は出てますし。
今さら調査団や女の子を退避させる時間もないですから。」
車長である松田曹長と宮本一曹が各種の装置の点検を行いながら会話をしている。
「よっしゃあ、800馬力の突撃を見せてやる。
速度最大、ブレードは奴の胴体を狙え!!」
速度最大、ブレードは奴の胴体を狙え!!」
何度も破城槌を叩きつけられた門が開門されると、IMR-3がゴーレムに対して突撃を敢行した。
最初の一撃でゴーレムは、ブルトーザブレードに破城鎚を叩き着けるが、そのまま数メートル後方まで弾き跳ばされていた。
最初の一撃でゴーレムは、ブルトーザブレードに破城鎚を叩き着けるが、そのまま数メートル後方まで弾き跳ばされていた。
「軽う!!」
「こっち40トンはありますしね。
もう一度行きます!!」
もう一度行きます!!」
浅井は勝蔵、エミリオにマッシモ、モンロー村長等がこの戦いを遠巻きに見守っていた。
弾き跳ばされていたゴーレムに巻き込まれると危ないからだ。
だが何度も弾き飛ばされてもゴーレムはヘコんだ部分を修復して邸内に入って行こうとする。
弾き跳ばされていたゴーレムに巻き込まれると危ないからだ。
だが何度も弾き飛ばされてもゴーレムはヘコんだ部分を修復して邸内に入って行こうとする。
「穴掘って落とすのはどうでしょう?」
モンロー村長の提案で全員で町中に穴を掘り始めた。
IMR-3の燃料だっていつまでも持つわけではないのだ。
戦闘工兵車が目の前にあるのにスコップによる人力で掘らねばならないのには浅井は些か納得がいかなかった。
幸い一揆軍の他の街道を塞いでいた農民600名も町に入って合流したので、人手だけは腐るほどあった。
彼等も一揆に参加した筈なのに何故か町中て穴を掘る作業に従事する羽目になったのか納得のいかない顔をしている。
IMR-3の燃料だっていつまでも持つわけではないのだ。
戦闘工兵車が目の前にあるのにスコップによる人力で掘らねばならないのには浅井は些か納得がいかなかった。
幸い一揆軍の他の街道を塞いでいた農民600名も町に入って合流したので、人手だけは腐るほどあった。
彼等も一揆に参加した筈なのに何故か町中て穴を掘る作業に従事する羽目になったのか納得のいかない顔をしている。
「深さは6メートルは必要か?」
「這い上がれないくらいだとそれくらいかな、半日は掛かるか?」
すでに作業開始から一時間は経っている。
穴は1メートルほどだ。
「這い上がれないくらいだとそれくらいかな、半日は掛かるか?」
すでに作業開始から一時間は経っている。
穴は1メートルほどだ。
『二尉殿、さすがに疲れました。
誰か代わってください・・・』
誰か代わってください・・・』
松田曹長からの悲鳴が無線機から伝わってくる。
何度もゴーレムを弾き飛ばす有利差は代わっていないが、3分に一回は激突を繰り返しているので、中の人間が参っているのだ。
何度もゴーレムを弾き飛ばす有利差は代わっていないが、3分に一回は激突を繰り返しているので、中の人間が参っているのだ。
「もう少し頑張れ、7時間くらい。」
対時中に交代要員等送れるわけがない。
無線機からは返答は返ってこないが、IMR-3は順調にゴーレムを弾き飛ばしているので了解されたと解釈することにした。
気の毒そうな皆の思いが一致するが、荒木が空気を読まずに発言する。
無線機からは返答は返ってこないが、IMR-3は順調にゴーレムを弾き飛ばしているので了解されたと解釈することにした。
気の毒そうな皆の思いが一致するが、荒木が空気を読まずに発言する。
「鉱山町の連中から重機と人手を借りて来ればよかったのでは?
鉱夫達も穴掘りのプロですし」
鉱夫達も穴掘りのプロですし」
全員が気まずい顔になるが鉱山町に伝令を出すこととなった。
作業開始5時間目、すでに日付まで代わっているがようやく作業が完了した。
作業開始5時間目、すでに日付まで代わっているがようやく作業が完了した。
「ご苦労だった松田曹長!!
あとはそのデカぶつを穴に落とすだけだ。」
『あの・・・浅井二尉、あいつ動かなくなったんですが?』
「いつから?」
『3分前くらいか・・・』
あとはそのデカぶつを穴に落とすだけだ。」
『あの・・・浅井二尉、あいつ動かなくなったんですが?』
「いつから?」
『3分前くらいか・・・』
竜騎兵数騎が近寄って槍で突ついて反応を伺っている。
「何が起きた?」
理解に苦しむ浅井にマッシモが推論を述べる。
「ゴーレムは内蔵した魔力で動いてるから、それが切れたんじゃないかな?」
「じゃあ、何で突然動き出したんだ?」
「じゃあ、何で突然動き出したんだ?」
「そんなことは知らん。
それよりどうするのだ?
共通の敵がいなくなってしまったが再戦するのか?」
それよりどうするのだ?
共通の敵がいなくなってしまったが再戦するのか?」
誰もが疲れきっていて地面で寝ている者も多い。
自衛隊も石和黒駒一家もグルティア兵も銃弾が枯渇している。
自衛隊も石和黒駒一家もグルティア兵も銃弾が枯渇している。
「食料の持ち出しは4分の1です。
それで矛を収めましょう。
叔父上も主家に顔を立てないといけないですからね。
ですが金輪際、グルティア侯爵家とは縁を切らせて頂きます。
残りの4分の3は農民に割り当てる。
年貢も他領と同じに引き下げる。」
それで矛を収めましょう。
叔父上も主家に顔を立てないといけないですからね。
ですが金輪際、グルティア侯爵家とは縁を切らせて頂きます。
残りの4分の3は農民に割り当てる。
年貢も他領と同じに引き下げる。」
代官エミリオの決定だった。
「よろしいので?」
「もう誰も戦えないし、私は解任らしいからな。」
「もう誰も戦えないし、私は解任らしいからな。」
旧子爵邸から調査団の藤井課長が2つの封書を見せていた。
一つはモンロー村長から渡された直訴状。
もう一つは代官エミリオの不正を理由に代官を解任、王都に召還する上意書であった。
一つはモンロー村長から渡された直訴状。
もう一つは代官エミリオの不正を理由に代官を解任、王都に召還する上意書であった。
「最初から決まっていたのだろ、そんな上意書が用意されてたなんて、とんだ茶番だったな。
だがそれを正式に見せられるまでは私が代官だ。
グルティア兵の持ち出しと帰還、一揆軍の免罪を承認する。」
だがそれを正式に見せられるまでは私が代官だ。
グルティア兵の持ち出しと帰還、一揆軍の免罪を承認する。」
20日目
この日をもって、マディノは正式に日本の管理区域となった。
代官所は閉鎖され、日本人による町役場が開設された。
同時に自衛隊の第9分屯地も誕生した。
初代分隊長は浅井治久一等陸尉が就任した。
代官所は閉鎖され、日本人による町役場が開設された。
同時に自衛隊の第9分屯地も誕生した。
初代分隊長は浅井治久一等陸尉が就任した。
「経験豊富な浅井一尉にこの町の防衛を任せられること頼もしく思っているよ。」
式典に参列した秋月総督のお言葉に恐縮してしまう。
「しかし、なんだかイチャイチャしている大陸人の多い町だね?」
町を視察している時にも思った疑問である。
町を視察している時にも思った疑問である。
「周辺の村娘が一斉に美容に目覚めまして、綺麗になった村娘達に若い男が次々と求婚する婚活ブームになっているのです。」
「ああ、石和黒駒一家が化粧品や洗浄剤の売買で利益をあげていると聞いていたがそんな副次的な効果が出てたか、ちょっと不味いな。」
「ああ、石和黒駒一家が化粧品や洗浄剤の売買で利益をあげていると聞いていたがそんな副次的な効果が出てたか、ちょっと不味いな。」
石和黒駒一家は正式に移民してから組に加わり、今回の騒動時も別の領地で活動していた日本人を責任者に大陸系組員にマディノの事務所を任せて隣接するイード男爵領に夜逃げしていた。
看板も石和黒駒商事と変えて経営を引き継いでいる。
看板も石和黒駒商事と変えて経営を引き継いでいる。
「ヤクザの企業舎弟大陸版かよ。」
と駐在が呟いていたのを覚えている。
グルティアの馬車に便乗して一夜のうちに逃げ去っていた。
越境されては手出しが出来ない。
まるで事前に用意していたような手際だった。
「まあ、それはいずれ手を考えましょう。
大陸技術流出法に抵触していますが、それは警察の仕事です。」
グルティアの馬車に便乗して一夜のうちに逃げ去っていた。
越境されては手出しが出来ない。
まるで事前に用意していたような手際だった。
「まあ、それはいずれ手を考えましょう。
大陸技術流出法に抵触していますが、それは警察の仕事です。」
大陸においては自衛隊にも司法警察職員としての権限は与えられているが、越境してまで行えるものではない。
あとは警察か、別の部署の人間が対処するのだろうと浅井も理解している。
あとは警察か、別の部署の人間が対処するのだろうと浅井も理解している。
「グルティア侯爵家については?」
「放置です。
今更ですが王国に対する内政干渉にあたりますし、カードとして取って置きます。
それにあれは良いテストケースでした。」
「テストケース?」
「性急な内政改革のもたらす混乱と弊害。
新京に留学生に対するよい実例として教科書に追加です。
「放置です。
今更ですが王国に対する内政干渉にあたりますし、カードとして取って置きます。
それにあれは良いテストケースでした。」
「テストケース?」
「性急な内政改革のもたらす混乱と弊害。
新京に留学生に対するよい実例として教科書に追加です。
我々も今後どうなるか見守ってますよ。
内乱でも起きたら介入して改易か、東部地域から国替。
日本の統治下になるまでが計画です。
前代官エミリオ殿は・・・横流しの罪状で一年の牢暮らしのあとに斬首刑が決まりました。
彼本人はほとんど着服してなかったのですが、各方面から蜥蜴の尻尾切りされたのでしょう。
嘆願書を出すなら総督府を通じて行いますか?」
「お願いします。」
「こちらからもお願いします。
なんか首斬ったら総督府に送るとか言ってるんですよね、勘弁してくれないかなあ。」
内乱でも起きたら介入して改易か、東部地域から国替。
日本の統治下になるまでが計画です。
前代官エミリオ殿は・・・横流しの罪状で一年の牢暮らしのあとに斬首刑が決まりました。
彼本人はほとんど着服してなかったのですが、各方面から蜥蜴の尻尾切りされたのでしょう。
嘆願書を出すなら総督府を通じて行いますか?」
「お願いします。」
「こちらからもお願いします。
なんか首斬ったら総督府に送るとか言ってるんですよね、勘弁してくれないかなあ。」
秋月総督は町中にモニュメントのように立ち尽くすゴーレムを目にする。
「あのゴーレムは領地を外敵から守るように配置されていたそうです。
ただ、五年も放置されていたので内蔵魔力が枯渇し、子爵館まで補充に動き出したのだそうです。
道中数々の妨害にあって魔力が尽きて動かなくなったとのことです。
邸内に補充の為の台座があるそうです。」
「戦う必要はなかったと・・・、まあ、グルティアの馬車を足止めできたからよしとしますが。」
「いやいや、話には続きがありましてね。
あのゴーレム、領内にあと七台あるそうです。
近いうちに動き出すそうですから対策を考えといて下さい。」
ただ、五年も放置されていたので内蔵魔力が枯渇し、子爵館まで補充に動き出したのだそうです。
道中数々の妨害にあって魔力が尽きて動かなくなったとのことです。
邸内に補充の為の台座があるそうです。」
「戦う必要はなかったと・・・、まあ、グルティアの馬車を足止めできたからよしとしますが。」
「いやいや、話には続きがありましてね。
あのゴーレム、領内にあと七台あるそうです。
近いうちに動き出すそうですから対策を考えといて下さい。」
秋山補佐官は秋月総督が後ろにいるのに気がついていたが、無視して自分の仕事を遂行していた。
公安調査官と大陸研究の博士と話し込んでいる。
公安調査官と大陸研究の博士と話し込んでいる。
「ゴーレムに使われている金属ですが地球には無い産物ですね。
大陸でも一般ではあまり使われてません。」
「一般で無いというと?」
「魔法のアイテムとかで使われてます。
この大陸でもあまり産出されない輸入品だそうです。
北部や西部の上流階級ではそれなりに出回っているそうですが。」
「調布の『協力者』の証言と一致します。
彼は学術都市の研究予算で輸入して開発したそうです。
そうでなければ政治的予算的に不可能だったと。
毎年魔力を補充にしてたそうですが、我々に拘束されてままならず放置していたとのことです。」
大陸でも一般ではあまり使われてません。」
「一般で無いというと?」
「魔法のアイテムとかで使われてます。
この大陸でもあまり産出されない輸入品だそうです。
北部や西部の上流階級ではそれなりに出回っているそうですが。」
「調布の『協力者』の証言と一致します。
彼は学術都市の研究予算で輸入して開発したそうです。
そうでなければ政治的予算的に不可能だったと。
毎年魔力を補充にしてたそうですが、我々に拘束されてままならず放置していたとのことです。」
実に迷惑な話であった。
「何者かに魔力を補充されて使われるのが心配です。
新浜に新設した研究所に持ち込みますよ。」
新浜に新設した研究所に持ち込みますよ。」