自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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66 名前:始末記[sage] 投稿日:2016/05/19(木) 19:45:21.79 ID:x8sT1PY9

シュヴァルノヴナ海海底
海底宮殿

『荒波を丸く納めて日々豊漁』号船長イケバセ・グレは自らの種族が治める海底に建設された宮殿に他の船長達と共に集められていた。
同種族の船長は他に二人。
いずれも勇猛で知られた船長達だ。
もう一人の船長は他種族の女船長で、細長い体を水中に漂わせている。

「ウキドブレ提督が御入室します。」

宮殿内とはいえ、水中の中なので一同は漂っているのだが、彼等の種族的に居住まいを正して提督を最敬礼で迎える。

「遠路ご苦労だった。
諸兄等に集まってもらったのは他でもない。
諸君等の長年の苦労が実って、あの忌まわしき日本の幾つかの島への上陸が可能となったことが判明した。
ハーヴグーヴァ殿下は日本の本島攻撃の為の橋頭堡として、これらの島々を攻略することを決定した。
激しい抵抗が予想される為に各々の島に一万を越える兵士を各船長に与える。
万難を排して、作戦を成功させて欲しい。」

3人の船長は手を両肩と両腰に当ててひざまづく。
この作戦は海棲亜人連合の主導権争いにも影響される。
そんな作戦に他種族の者がいるのは解せなかった。
彼等の視線は唯一の他種族の女船長に向けられる。
ウキドブレ提督は彼等の視線の意味を察して、彼女の紹介を始める。

「彼女はザボム・エグ。
北方のフセヴォロドヴナ海から派遣された『革命の音階』号の船長である。
北方でも見つかった上陸出来る島には彼女の兵団一万が上陸する。
こちら来て貰ったのは4島同時攻撃の調整の為だ。
よく話し合って欲しい。」

さすがに北方まではシュヴァルノヴナの手は届かない。
日本の戦力を分散させる必要もある為の共同作戦になったのだろう。

「皆様と協力して忌まわしき日本に一鞭くれてやれるのを光栄に思いますわ。
麗しき死を日本に」

足に装飾品代わりに装着された鞭がザボム・エグの武器なのだろう。
その鞭を水中で振るって、勝利の誓いを立てている。
彼女の挨拶とともに総勢4万を越える大軍による遠征の会議が始まった。



エジンバラ領
リゲル砦

「大陸総督府補佐官秋山と申します。
さて、丸山一尉。
なぜ、私がサミットの準備で忙しい時にここに派遣されたか御理解して頂けてますか?」

ひ弱そうな(自衛隊基準)文官の視線に堪えかねて丸山一尉の体は小さくなっているように見えた。

「はい、自治領主に選出されてしまったからです。」
「貴官自身は立候補もしていないし、選挙活動も行っていないのに何故当選したのか困惑している。
そんなところですか・・・」
「はい、そんなところです・・・」

肯定する丸山に秋山が資料の山を突き付ける。

「これは青塚事務長が調査した住民の声です。
代表的なのを読み上げてみましょう。」

一枚の書類を手に取り、読み上げてみる。

「これは某山中で木こりを営む一家の夫人の証言です。
『隊員さんに字を教えてもらいました。
その際に貰った紙に書かれてた文字をもとに練習してたのですよ。
丸山さんの名前が書かれてたのでそれも練習してたら家族以外に書ける名前が他になかったの。』」

渡された紙とはクレーム対応や要望があった時の為に配布した大陸語で書かれた名刺である。
確かに人物名は責任者である丸山の名前以外に書かれていない。

「アンケートに答えてくれた4割の回答者がこんな感じでした。
何枚配布したのですか?」
「さ、三百枚ほど」

人口が一万人程度の領内で三百枚は結構な枚数である。
また、識字率の低い地域では文字の書かれたものを無駄にありがたがって残していく傾向がある。
学校などは無いので、集めた文字から必要に応じて生涯を通して少しずつ文字を学んでいたのだ。
ましてや今回は読んで貰わないと困るので自衛隊や委員会のメンバーが読み方を教えている。

「他には『支配者は強くなければならない。
今、この領地で最も強いのは誰かを考えれば自明の理である。
先日のゴブリン討伐の圧倒的武力がその証明である。』
『橋を建ててくれあり、小屋を修復してくれて助かりました。』
『日本人が統治してくれた方がハクが付いてまわりの町にでかい顔が出来る。』
まあ、貴官に落ち度は無いですね。」
「そ、そうですよね?」
「あれば、更迭の名目で本国送りに出来たのですが・・・チッ」

舌打ちされたことにもツッコメない。
いっそ本国送りにしてくれた方が気楽だった。

「総督府からの『判断』を伝えます。
丸山一等陸尉には自治領主の座を拝命してもらいます。
法的な問題ですが、各管理区域で似たようなことは既に行っていますのでクリアしています。
自治領主という名称は問題ですが、我々が大陸で民意を得ているプロパガンダに利用させてもらいます。
自衛隊も駐屯させて第9管理区に指定します。
この第9分遣隊の隊長も兼任してもらい、エジンバラを西部地区の拠点にします。
チャールズ殿を補佐官として雇用し、総督府からも文官を送り込みます。
無難に五年間統治して下さいよ。
ああ、例の女性とは適切な交際をお願いしますよ。」

現在、進行中の中央部の天領ゾルーダの管理区域化と同時進行となる。
第8管理区となるゾルーダは金、銀、亜鉛が産出される。
そして、今回大陸で初めて見つかったマンガン、ウランの鉱脈の開発は急務となっている。
後回しにすることは出来なかった。
ならば同時進行となる。
女性問題に関しては丸山一尉の努力に期待するしかない。



丸山を退出させた秋山補佐官の部屋に青塚事務長が訪れる。
別に呼んではいないが、面会を求められたので会談に応じた。

「貴方ですね、今回の絵を描いた御人は?
予定になかった西部の拠点構築は周辺の貴族や帝国軍残党の活動の火種を付ける可能性があります。
どういうつもりかお聞かせ下さいますか?」
「本国における我々の派閥はですな、大陸総督府の悠長な活動に憤りを感じています。
大陸人の人口の減少させる計画。
我々は少しお手伝いしてるだけですよ。
今回はあなた方の圧倒的武力が背景にあったから誰も暴発しませんでしたがね。
まあ、今回の結果は予想外ながら我が国の権益に繋がるから結果オーライですかね。」


大陸総督府は緩やかな計画を立てているのに反して、青塚達は流血を伴う事態を引き起こさせている。
第1回から第3回の選挙は何れも紛争を巻き起こして多数の死者を発生させている。
第4回の奴隷特区も東部や中央部から多数の奴隷を移動させて、同地域の人口を減らしているのだ。
委員会のメンバーのほとんどはその思惑に気がついていない。
ほとんどの者は善意のつもりで利用されているのだ。

「北村先生が次期大陸総督の座を狙っているとは聞いてましたが、野党から指名されることは無いのですよ。
現状、あなた方は野党第3党です。
もう少し大人しくしてて欲しいのですがね。」

大陸総督は内閣総理大臣によって任命される副総理格の国務大臣である。
よって野党の議員から指名されることはありえない。

「国民は今の政府の弱腰に不満を抱いています。
確かに今の総理は立派です。
戦争に勝利した圧倒的支持率を背景に身を切る思いで様々な改革を断行した。
年金の停止、未成年以外の未就労者の健康保険の停止。
大陸進出を企てる財界への抑制。
国内では年々老人の死亡が増加して人口が減少している。
4月だけで墨田区と港区の解体がそれを物語っている。
大陸の既得権益を持つ勢力に気を使うのは結構ですが、我々にも既得権益に固執する勢力は存在するのですよ。」

現内閣の支持率は当初の85%から45%に落ち込んでいるのは事実だ。
再来年の選挙では大幅な議席の減少も予測されている。
より過激な方針を主張する野党第3党との連立の可能性も永田町では囁かれている。

「それでもあなた方はまだ政権与党でも無ければ、大陸総督府に席を置く役人でもない。
その活動を見逃してきたのは、大筋ではこちらの方針と違わないからだ。
だが邦人の犠牲者が出たなら・・・わかっていますね?」
「それはこちらも理解しています。
これでも私は穏便な方なのですよ?
委員会の監視と金庫番を任せられるくらいなのですから。
ですが、我々の支持者には時間が無い方が多数いることもお忘れなく。」

会見を終わらせて秋月補佐官はため息を吐いていた。
青塚事務長の言っていることも日本の一面を現した真実であることは間違いないからだ。

「我々も一枚岩ではないか・・・」

青塚は体調を崩した近藤女史の代理を委員会の長に据えて、新たな地に騒動の種を蒔く為の準備に入っている。
公的な組織では圧力にならないかもしれなかった。




エジンバラ男爵邸

エジンバラ男爵邸は、エジンバラ男爵家の財産として認められた。
今後、エジンバラ自治領主府は新たな公邸や政庁の建設を行わなければならない。
新たに自治領主補佐官となるチャールズは、一族の者をこの男爵邸に集めていた。

「今後は自治領主を通じて、日本から供与される予算や技術力を持って、領内のインフラ整備や治安維持、経済の発展を推し進める。
そして、それを積極的に領主に進言して功績を領民にアピールする。」
「日本側にも面子がありますからな。
自治領主に恥を欠かせるような真似はしないでしょう。
そして、一歩引いたところから領内の発展に寄与するチャールズ殿を領民は目撃する。
さすれば領民はチャールズ殿を称賛し、次回の選挙では有利になると。
我々も慈善活動への出資をさせて頂きますよ。」

前男爵の第三夫人の父親であるこのエジンバラ最大の商人のオリバーが賛同する。

「さすがですわ、お兄様。」

妹のクララは無条件に兄を称賛している。

「うむ、領地の発展を優先し、正統なる権利を四年も我慢するなどなかなか出来ることでわない。」

叔父で私兵軍の兵権を握っているアレク団長はこの場では最も自らの地位が保てるか怪しかった。
この場でチャールズに取り入る必要があったので同調している。
領主一族は今回の選挙に複数立候補して、既得勢力の票をわざと割ったのだ。
次回は領主一族が一丸となってチャールズを支持する。
日本側も領主一族に遠慮しているのか、様々な点で優遇を約束しているので勢力の維持は難しくない。
勝算は大いに高かった。
一度勝ってさえしまえば領主一族内で自治領主の座をまわしていけばいい。
状況によっては、自治領から再び男爵領に戻してもいい。
その頃には周辺領地とは隔絶した発展を遂げているはずである。

「もしくはその先・・・大陸中で選挙が行われるならばいずれは統一選挙が行われるかもしれない。
その時は我々一族は先駆者として中央の政界に討って出る。
この雌伏の時を皆で支えあっていこうぞ。」

誰もが遠い将来について自分達に都合よく語っていた。
大陸も日本も人ではない者達も。
そんな先のことは誰にもわからないのに



大陸南部
百済市沖
『瞬間の欠片』号

旧大韓民国・北朝鮮からの転移移民者が住む百済市の沖に、楕円形の物体が密かに浮上していた。

その背中に乗っていた数人の者達が水平線の向こうの百済市を見据えていた。

「数日のうちにあの街に地球からの諸王が一同に介する。
その時を狙い我等アガフィア海の民がその尽くを討ち取る。」

すでに数千を越える兵達が近海に潜んでいる。
決行の日までには万を越える軍勢になろう。
海底でも活動、生存できる海の民の利点だった。
百済サミットまで一週間を切っていた。


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