自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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184 名前:始末記[sage] 投稿日:2016/06/07(火) 23:40:38.99 ID:PuTMvsIk

百済沖

孫元一級潜水艦『鄭地』から発射されたK731 533mm長魚雷「白鮫」二発が速度35kn(時速63㎞)の速度で、アガフィア海亀甲艦隊の最後尾の中型海亀に向かっていく。
「目標12に一発命中、二発目を目標11回避!!」
「魚雷を自爆させろ。」

直撃は無理でも生物なら爆発による衝撃波でダメージを与えられるはずだ。
だがソナー員の報告に艦内に衝撃が走る。

「目標12・・・健在、回頭しつつ・・・こちらに多数の物体を放ってきました!!」
「馬鹿な・・・、3番、5番連続発射!!
投射物体の先端で自爆させろ!!」

TNT爆薬370㎏の威力を目標12こと、『紅の夕月』号は魚雷の直撃を受けたわけではない。
甲羅に無数に張り付いた重甲羅海兵隊の亀人達の甲羅に直撃したのだ。
それでも爆圧は『紅の夕月』を無傷にさせない。
爆発で甲羅の一部が割れて流血している。
亀の甲羅は皮膚の一部であり、手足や首や尻尾など、甲羅の外に現れている柔らかい部分の皮膚とつながっている。
甲羅に直結した内蔵に衝撃を受けて激痛の中を我慢して回頭したのだ。
生き残った重甲羅海兵隊の兵士達が『紅の夕月』から飛び出して『鄭地』に接近戦を挑んでいく。
だが魚雷の自爆で重甲羅海兵隊の兵士達が蹴散らされていった。
だか『紅の夕月』が『鄭地』まで一キロを切る距離までに近づいている。

「下げ潜舵、速度、ダウントリム一杯!!
進度2-8―0へ。」

間一髪飛び掛かる『紅の夕月』の真下に潜り込み回避した。

「回避に成功、後部から雷跡音6・・・『みちしお』のです。
目標12に当たります・・・」

『みちしお』の89式魚雷が6本が群がる重甲羅海兵を爆発するまでもなく推進力のみで蹴散らし、『紅の夕月』号に一発が命中して爆発する。
残りの五本はアガフィア海亀甲艦隊に襲い掛かり炸裂する。
甲羅で覆われてない部分に命中した『紅の夕月』号は頭部と右前足を吹き飛ばされて海底に着底して絶命した。



おやしお型潜水艦『みちしお』

「目標12の沈黙を確認。
目標7から11に魚雷着弾・・・、健在!!
被弾した目標が多数の物体を放出しながら」
反転してこちらに向かってきます。」

『みちしお』をはじめとする自衛隊の艦船もモンスターと戦うことが任務に加わってしまった。
その為に各艦に超音波魚群探知機が搭載されることになってしまった。
これまでのソナーでも同じことは出来るのだが、人間サイズの生き物が海底を無呼吸で潜水艦を襲ってくることは想定されてなかったからだ。
新規開発するより民間の魚群探知機を搭載する方が手っ取り早かったのだ。
これでは旧韓国海軍を笑えない。
だが今はそれが役にたっているのだから皮肉なものである。
そして、戦況はまだ好転していない。

「数が多い、不味いな。」

最低でも二発はぶちこまないと倒せない大型生物。
数百単位で群れをなして襲ってくる人サイズの生物。
艦長の佐々木弘毅二等海佐は魚雷の残数14本を確認して眉をひそめる。
『鄭地』も残りが12本のはずだ。
敵はまるで軍隊のような隊列を敷いて、こちらに向かってきてくれいるので対処しやすい。
しかし、バラバラにこられたら対処は不可能だった。
だが大型の生物のうち被弾してない個体はこちらを無視して陸地に向かっている。

「地上に連絡しろ。
敵がそっちに向かったと。」

通信傍受による危険性は皆無だから問題は無かった。

「少しは陸の連中に獲物を残してやらないとな。
さあ、残った敵は我々で片付けるぞ。」




百済市
エレンハフト城

各都市の首脳が招かれたエレンハフト城には舞踏会にも使える広間が存在する。
その広間に絨毯が敷かれ、テーブルにクロスが掛けられて会談が始まっていた。

「では、正式にガンダーラの建設を承認します。」

議長である白泰英百済市市長の宣言のもと会場にいる来賓が拍手で迎え、中央の壇上に暫定ガンダーラ代表プチャランカ氏の挨拶が行われている。
ガンダーラの主軸となるネパール人は約五万六千人を数える。
その数は日本政府の予想を越えて単独で都市を任せられるほどである。
2010年に起きたネパールによる国王暗殺事件ならびにマオイストとの内戦の結果、日本国内では急速にネパール人人口が増大していた結果だった。
だが地球では内陸国であったネパール人達は独自の軍事力や船舶を持っていなかった。
地上部隊に関しては若者達を鍛え直してグルカ・ライフル大隊を創設した。
少数だが日本にもグルカ旅団やPMCで活躍したネパール料理料理人達がいたのが幸いした。
だが船舶に関してはどうにもならない。
船員の経験者もほとんどいなかった。
そこで彼等が目をつけたのは同じ仏教系であるミャンマー、ブータン、インドである。
インド人二万四千人、ミャンマー人一万三千人、ブータン人が百名程度。
彼等の配偶者となった日本人を加えれば人口は九万五千人の人口となる。
インド、ミャンマー人のもつ船舶も魅力である。

「上手く話がまとまって何よりですな。」
「そうですな、アイルランドの連中もブリタニカに合流を表明してくれたのは助かりました。」

白市長に声を掛けられて秋月総督も頷く。
秋月総督はマイクを受け取りプチャランカ氏に質問する。

「現在、大陸各地ではモンスターによるスタンピードが懸念されています。
日本を初めとして各都市ではモンスターの駆除が行われていますが、ガンダーラ建設予定地での進行状況をお聞きしたい。」

プチャランカ氏は水を一口飲んで発言する。

「現在増強したグルカ・ライフル2個大隊を用いてガンダーラの地の掃討作戦を実施しております。蜂人の集落を一つ、オークの集落を三つ駆除しました。
ジャングルや山岳での戦いなら我々に負けはありません。」

ライフルとグルカナイフで多大な成果をあげている彼等に列席者は賛辞を惜しまない。

「掃討作戦は貴都市の安全に繋がります。
我々も可能な範囲で協力は惜しまないつもりです。」

プチャランカ氏と秋月総督の握手に会場が拍手に包まれる。
ここまでは台本通りである。
プチャランカ氏とスタッフには専用の席が与えられる。
これでG10はG11となる。
ここからは各都市の問題が提示されて協力できる範囲を調整に入る。
調整の内容は前日までに決まっている。
日本からはスタンピード問題。
新香港からは不足するエネルギー問題が提示された。
これは昨夜のヒルダに言われるまでもなく林主席としても認識はしていたのだ。


ヒルダは知らないことだが、新香港は東シナ海に海底油田や天然ガス田を八ヶ所ばかり保有している。
新香港は供給する側なのだ。
確かに新香港のエネルギー需要に足りていないのは事実だが、日本に供給する分を減らせばいいだけの話である。
新香港にも足りてない事実が存在した方が日本に高値で売り安いのだ。
つまりヒルダの提案は迷惑でしかなかった。
おそらく北サハリンのヴェルフネウディンスク市長も話を持ち掛けられても同様な反応だろう。

「我が新香港としては新都市建設にあたり、必要となるエネルギーの増産の安定化に努めていきたいと思います。」

ヴェルフネウディンスク市の問題は単純だ。
東部、西部、南部と違って列車の途中駅がまったく無いのだ。
東部東端の新京から中央の王都ソフィアまで7つの駅がある。
王都から西部西端の新香港まで同じくらいの距離だがこちらは建設中のエジンバラ駅が存在する。
その東西線の距離は約四千キロに及ぶ。
南北線も似たような距離だ。
王都ソフィアから南部南端の終着駅百済の間にはアンフォニーとケンタウルス自治伯領最大の町ウォルロックの2つ駅が存在する。
百済-新香港間にも線路が敷かれる計画で現在も敷設工事中である。
海岸沿いにルソン、サイゴン、スコータイ、アルベルト、ドン・ペドロ、ブリタニカの都市が100キロごとに存在してすで鉄道の運行が始まっている。
ここにガンダーラが加わることになる。
ところがソフィアーヴェルフネウディンスク間の約二千キロの間に途中駅が存在しない。
この問題がヴェルフネウディンスクの悩みの種であった。
ヴェルフネウディンスク市長の問題提起の最中に白泰英百済市市長のもとに国防警備隊の幹部が耳打ちしに来た。

「沖合いでモンスターの大群が発見されました。
百済市に向かっているとの交戦中の潜水艦からの報告です。」

「そうかわかった。
早く始末してくれたまえ、サミットに泥を塗りたくない。」

白市長はあまり事態を深刻に捉えていない。
それは伝えに来た幹部も同様の態度だったから深刻さが伝わらなかったせいでもある。
だが会場を見渡すと秋月総督のもとに高橋陸将が耳打ちしていて、総督は困った顔を見せている。
日本側も事態を察したと国防警備隊幹部は捉えていた。
国防警備隊幹部は会場を離れると携帯電話で警備隊司令部に命令を伝える。

「『大祚栄』、『太平洋10号』を出港させろ。
敵を港湾に近づけるな。」




百済港
護衛艦『くらま』

港の桟橋を離れて、李舜臣級駆逐艦『大祚栄』、太平洋型警備救難艦『太平洋10号』が出港していく。
『太平洋10号』は大韓民国慶尚南道群山市の海洋警察暑所属の艦であった。
だがパトロール中に転移に巻き込まれ百済の国防警備隊に組み込まれた。
『大祚栄』は転移の年には日本への寄港や近海での活動が多く、転移に巻き込まれた艦である。
百済警備の一翼を担う2隻が一度に出港すれば、同じ港にいる他国、他都市の艦の耳目を集めてしまう。
『くらま』艦長佐野光一郎二等海佐もブリッジから双眼鏡で出港する2隻を眺めて舌打ちをする。

「事前通達は無しか。
我々は『もちしお』からの連絡を受けているからいいが他艦の連中は困惑しているだろうな。」

『くらま』は『もちしお』から連絡を受けて、半舷上陸させていた乗員を呼び戻している。
さらに搭載している3機のうち1機のSH-60K哨戒ヘリコプターを飛ばして湾内の警戒にあたらせている。
もう1機はいざというときに総督達をエレンハフト城から退避させる為に待機させてある。


日本と高麗の不穏な動きを察知して、各艦から問い合わせが相次いる。

「今、忙しい!!
百済の警備隊本部に聞け!!」

そう言いつつも事態の異常さをまとめた書類を他艦に渡す為に伝令を直接走らせて向かわせていた。
百済港内でこのような警戒態勢にあたるのも問題になるかもしれない。
だが百済市の対応の甘さの巻き添えになる気は毛頭無かった。



百済沖海中
アガフィア海亀甲艦隊
旗艦『瞬間の欠片』号

艦隊を指揮するザギモ・ザロ提督のもとに各艦からの伝令がひっきりなしに泳いでくる。

「くそ、計算違いもいいところだ。
完全なる奇襲の筈が先制攻撃まで受けてしまったぞ。
まさかこちらが海中で攻撃を受けるとわな。
戦況はどうなっている。」

参謀が卓上の地図の駒を杖で指して説明を始める。

「『紅の夕月』撃沈。
他5匹が負傷しつつ、敵の海中艦を迎え討っております。
まもなく泳いで敵都市に向かっていた先鋒の重甲羅海兵の千匹隊が3隊が沿岸部に到達する頃です。」

だがそこに新たな伝令が飛び込んでくる。

「大変です!!
沿岸部の海域に大量の罠が仕掛けてあります!!
重甲羅海兵が次々とその罠に・・・」

提督はその伝令の言葉に戦慄を覚えていた。

「まさか我々の行動が敵に漏れていたのか・・・
そんなはずは・・・」



無数の亀人海兵達が網に包まれ、自らの固い甲羅をぶつけあってもがいていた。
手足や頭を甲羅に引っ込めるのが遅かった者達は仲間の甲羅にその露出した体を砕かれて悲鳴をあげている。
強固な甲羅同士がぶつかり、互いに破損したり衝撃で絶命する者もいる。
彼等を虐殺に及んだ罠は、海底に杭で固定された袋状又は垣根状の複数の魚網、定置網の仕業だった。
この海域には大小様々な定置網が設置されていて、魚群探知機で獲物の大群がやってきたことを悟った漁師達により巻き上げ作業が始まっている。
巻き上げられる魚網にその体躯を捉えられた重甲羅海兵達は次々と犠牲となっていた。


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