自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

<Opening of war>編6

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99 名前:<平成日本召還> ◆OZummJyEIo 投稿日:2006/10/09(月) 11:01:02 [ Nz0LbtT6 ]
    ○<Opening of war>編6 1/2
    ――1

     “帝國”復活の一報は、<大協約>に参加する諸国にとって凶報の名こそ相応しいものであった。
     世界は乱れ、貧困が蔓延していようとも、兎も角、そこに平和があったのだから。
     60年の太平。
     それが喪われようとしているのだから。

     <大協約>の中枢はチューリッヒ。
     そこでは多くの大使達が深刻な顔で話し合っていた。
     多くの人間が、様々な外交を経験してきた老獪な人間が多かったが、それでも半世紀も前の亡霊が
    蘇ってきた事への不安が、その思考力や判断力を鈍らせていたのだ。

     だが、なかでも一際表情の悪い集団があった。
     ガルム大陸東部域やロディニア大陸西部域の国家の大使たちだ。
     その共通点は1つ。
     平成日本が出した外交使節団を追い払い、威圧して追放し、そして虐殺した国家の大使であったのだ。


    「真坂、この様な事になるとは」

     真っ青な顔で、酒を呷る大使。

    「“帝國”の出現、それも、伝説どおりに圧倒的な軍事力を持っている連中だ」

    「わが国も、詐欺師の類かと思っておったのですがな………」

     彼らが、平成日本の使節団に対して乱暴狼藉に及んだのは理由があった。
     過去に何度もあったのだ。
     “帝國”からの使者を自称した者たちが。

    曰く――
     “帝國”が復活しました。同盟国を求めています。
     “帝國”を消滅から呼び戻す方法を発見しました。協力してもらえれば“帝國”はどの様な対価すらも
    貴方がたへと支払うでしょう。
     “帝國”は消滅しておりません。只、<大協約>と協定を結んだだけです。そしてもう直ぐ、協定は
    期限切れとなります。今が、同盟の時です。

     どの言葉も、その最後は同じだった。
     ソレを成すには手間が掛かり、最初には少しばかり投資が居る、と。
     そして騙された人間が投資をしたら、その後、見事に遁走するのだ。
     “帝國”詐欺。
     或いは<“帝國”からの使者>騒動とも呼ばれる事件が、幾度もあったのだ。
     それ故に、平成日本からの使者も、その類と判断したのだ。

    「考えるだに恐ろしい。“帝國”は呆れる程のプライドが高かったと言う。我らの祖国の無礼に………」

    「海沿い故に、あの伝説のYamatoに国を焼き払われるかもしれませぬな」

     1隻で1国を焼き払う事の出来るフネ、焔の王を僕とする戦列艦、それが戦艦。
     その中でも最も恐ろしい力を持っていたとされる魔のフネ、Yamato。
     どの国も、海に面していたが故に、恐ろしさを痛感していた。

     だが、その中でも一際暗い顔をした大使が居た。

    「貴方がたはまだ良い。追い払っただけだ。わが国は………」

     悄然と肩を落とし、呟く。
     彼の祖国であるカチン王国では、大使と称した面々を捕殺したのだ。
     止める、諌める声もあったそうだが、気の短く若い当主は、それらを受け入れず、殺害を命じた。
     詐欺師どもへの一罰百戒である、として。


     捉えられ、そしてフネの見える場所で殺された平成日本の外交使節団。
     悲鳴を上げ、小便を撒き散らして命乞いをして、首を刎ねられた人が居た。
     毅然として、カチン王国の判断の誤りを指摘して首を刎ねられた人が居た。
     震えて、何も出来ぬままに首を刎ねられた人が居た。

     外交使節団を乗せた船に武装は無かった。
     護衛すらも居なかった。
     洋上では、海賊対策の面から海上保安庁の大型巡視船が付き添っていたが、港の傍へとは近づかせ
    ていなかった。
     威圧を与えては宜しく無いと判断してである。

100 名前:<平成日本召還> ◆OZummJyEIo 投稿日:2006/10/09(月) 11:01:37 [ Nz0LbtT6 ]
    ○<Opening of war>編6 2/2
     外務省は甘く見ていたのだ、この世界の事を。
     そして同時に、外交と云う自らの権限に、自衛隊や海上保安庁、そして警察と云った外部の人間を
    携わらせたく無かったのだ。
     その結果が、12名の職員の捕殺であった。
     外務省にとって、余りにも大きな授業料だったと言えるだろう。


    「戦争ですかな」

    「その可能性は高いですな」

     ここまでの非礼を働かれて、素直に引くような国家を彼らは知らない。
     だからこそ、蒼い顔を付き合わせたいたのだ。

    「何とかせねば、このままでは国を失いますぞ」

    「ですが………何を対価と赦しを請えば」

    「そもそも、<大協約>は、“帝國”との個別交渉を禁じている。簡単ではないですぞ」

     個別交渉の禁止は当然だろう。
     そもそもが対“帝國”用なのだ。
     結束を固める為、或いは抜け駆けを禁じて一蓮托生の状態へとなる為にも、そんな事が許される
    筈も無かった。

    「軍団を呼ぶしかありませんか………」

     軍団、<大協約>の正規軍に動いて貰えば、国は護れるかもしれない。
     が、その代償として軍団から、下手な戦争をするよりも遥かに巨額、法外と言える資金協力を要請
    されるのだ。
     その巨額さは、いっそ開戦して、即座に降伏して、賠償金を払った方がマシでは無いかと思う程であった。
     何とも悩ましく、そして簡単に選べる選択肢では無かった。


     彼らの悩みは尽きる事が無かった。

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