11 名前:S・F (7jLusqrY) 投稿日: 2004/04/17(土) 12:07 [ LgjpIS.M ]
教師が行っている事は、一種の布教活動であった。子供たちの好奇心に大きな
肉付けを行うことで、自分と同じ趣味者を増やそうと言うのだった。
その事を周囲の者達は、悪意無く受け入れるか、もしくは懐かしんだ。自らもまた
少年期に同じような経緯で、「この世界」に足を踏み入れた人間だったからだ。
ほんの少しだけ懐かしさを覚えると、男はまた空に視線を戻した。
彼の周りは全員が同志であると同時に、ライバルであった。
先を越されてなるものかと、男はまた空に目を向けた。
12 名前:S・F (7jLusqrY) 投稿日: 2004/04/17(土) 12:15 [ LgjpIS.M ]
最初の異変は、ひどく緩慢であった。最初は緩慢すぎて、異変であると
誰も気付かなかった程だった。
星を見に来た人々は、思い思いの道具でそれを目撃した。
空の一角が、黒く抜け落ちて行ったのだった。
それを見た誰もが違和感を感じていた。子供達はただ漠然とだったが、
大人たちは何となく理屈を考えていた。
航空機が低空飛行しているのだとか、雲が懸かったのだと考えた。
最初はそれで勝手に納得していた。
だがしかし、彼らはそれが大きな間違いであることに気付いた。抜け落ちた
空は範囲をどんどん広げていったし、その形は雲でも飛行機でも無かったのだ。
13 名前:S・F (7jLusqrY) 投稿日: 2004/04/24(土) 19:44 [ LgjpIS.M ]
抜け落ちていったその空は、まるで大きなドームの様な形をしていた。
ドームはその占領範囲を広げていき、どんどん山の方へと迫ってくる。
余りのことに子どもは泣き出し、大人は呆然となって立ちすくんでいた。
その内、星々が何かに飲み込まれるようにして、線を描いて
抜け落ちた空に吸い込まれるのが肉眼でも確認できた。
そして山の頂上まで巨大なドームの端が到達した。
14 名前:S・F (7jLusqrY) 投稿日: 2004/04/24(土) 19:52 [ LgjpIS.M ]
空の全てが闇に覆われた瞬間、奇妙なことが起こった。
突然、そこに光が戻ってきたのだ。
今度は子供も大人も呆然となったが、大人の方はすぐに動き出した。
といっても、彼らは正気を取り戻した訳では無かったが。
大人達は子供の状態を確認する事もなく(教職にある者も)、全員が
携帯電話を取りだし、短縮ボタンを押しまくっていた。
大人達が掛けた先は、全て同じだった。そこは国立天文台であった。
彼らの目の前には、見たことも無いような星空が、一面に広がっていた。
教師が行っている事は、一種の布教活動であった。子供たちの好奇心に大きな
肉付けを行うことで、自分と同じ趣味者を増やそうと言うのだった。
その事を周囲の者達は、悪意無く受け入れるか、もしくは懐かしんだ。自らもまた
少年期に同じような経緯で、「この世界」に足を踏み入れた人間だったからだ。
ほんの少しだけ懐かしさを覚えると、男はまた空に視線を戻した。
彼の周りは全員が同志であると同時に、ライバルであった。
先を越されてなるものかと、男はまた空に目を向けた。
12 名前:S・F (7jLusqrY) 投稿日: 2004/04/17(土) 12:15 [ LgjpIS.M ]
最初の異変は、ひどく緩慢であった。最初は緩慢すぎて、異変であると
誰も気付かなかった程だった。
星を見に来た人々は、思い思いの道具でそれを目撃した。
空の一角が、黒く抜け落ちて行ったのだった。
それを見た誰もが違和感を感じていた。子供達はただ漠然とだったが、
大人たちは何となく理屈を考えていた。
航空機が低空飛行しているのだとか、雲が懸かったのだと考えた。
最初はそれで勝手に納得していた。
だがしかし、彼らはそれが大きな間違いであることに気付いた。抜け落ちた
空は範囲をどんどん広げていったし、その形は雲でも飛行機でも無かったのだ。
13 名前:S・F (7jLusqrY) 投稿日: 2004/04/24(土) 19:44 [ LgjpIS.M ]
抜け落ちていったその空は、まるで大きなドームの様な形をしていた。
ドームはその占領範囲を広げていき、どんどん山の方へと迫ってくる。
余りのことに子どもは泣き出し、大人は呆然となって立ちすくんでいた。
その内、星々が何かに飲み込まれるようにして、線を描いて
抜け落ちた空に吸い込まれるのが肉眼でも確認できた。
そして山の頂上まで巨大なドームの端が到達した。
14 名前:S・F (7jLusqrY) 投稿日: 2004/04/24(土) 19:52 [ LgjpIS.M ]
空の全てが闇に覆われた瞬間、奇妙なことが起こった。
突然、そこに光が戻ってきたのだ。
今度は子供も大人も呆然となったが、大人の方はすぐに動き出した。
といっても、彼らは正気を取り戻した訳では無かったが。
大人達は子供の状態を確認する事もなく(教職にある者も)、全員が
携帯電話を取りだし、短縮ボタンを押しまくっていた。
大人達が掛けた先は、全て同じだった。そこは国立天文台であった。
彼らの目の前には、見たことも無いような星空が、一面に広がっていた。