自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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西暦2021年4月14日 10:23 ゴルソン大陸 グレザール帝国 城塞都市ダルコニア 上空

「地上部隊は敵の攻撃を受けて壊滅!生存者は不明!」

 ハッチから地上を監視していた隊員が叫ぶ。
 信じがたい報告に思わずパイロットは眼下を見た。
 立ち込める土煙。
 さっき見た時には、確かにそこに包囲された地上部隊がいたはずである。

「こちらヘリオス74、地上部隊は敵の攻撃を受けて生死不明。上空からは視認できない、以上」
<<こちら本部、状況を詳しく報告せよ>>

 市街地の外に設けられた野戦指揮所からは冷静な声が返ってくる。

「地上部隊は包囲された後に倒壊させた建造物で押しつぶされたらしい。まるで対戦車戦闘だ。信じられん」
<<なんだと!?そんなことが『FiFi!ミサイルFiFi!ミサイルFiFi!ミサイル』回避しろ!」

 本部からの応答、ミサイル警報、パイロットの絶叫。
 それが一瞬の間も置かずに続けられた。
 フレアを展開し、エンジン出力を最大へ。
 機体が転倒する限界まで操縦桿を倒す。

「どうしてミサイルが!?」
「センサーが移動熱源を探知しただけだ!周辺警戒!」

 パイロットとコパイロットが短く会話を行い、急旋回する視界に広がったそれを視認した。
 地上から大量に打ち上げられている火の玉。
 明らかにこちらへ向けて発射されているが、その軌道はあくまでも真っ直ぐである。
 高出力での急旋回で暴れる機体を相手に、彼は必死に操縦を継続した。
 誘導兵器以外で回避行動を取るヘリコプターを撃墜する事は大変に難しい。
 それはベトナムでもソマリアでもそうだった。
 どうしても落としたい時には、地上掃射や降下中、着陸など急旋回が不可能な場面を狙うしかない。

「本部!ヘリオス74攻撃を受けている!ファイヤーボールと思われる!退避中!」
<<落ち着け、それは誘導は出来ないはずだ>>
「地上から花火大会みたいに打ち上げてきてるんだよ!これより都市上空を離脱する!」

 彼がそこまで報告した時、機体の直ぐ横を燃え盛る火炎が通過した。
 衝撃。何かが燃える臭い。

「エンジンが吸い込みやがった!出力落ちます!」

 恐怖で引きつった声でコパイロットが報告する。
 混乱した思考を機体の制御という難題でねじ伏せつつ彼は思った。
 多数の計器が異常値を示している。
 あと五分も飛べないだろう。

「こちらヘリオス74、エンジン被弾。
 敵は偏差射撃まで使ってやがる!無数に打ち込んできている!ヘリじゃ駄目だ!畜生!落ちる!」
<<不時着するんだ!広場を探せ!直ぐ左、D2エリアへ降りろ!>>

 無線機の向こうからは狼狽した声で指示が飛んでくる。

「ヘリオス74ダウン!糞ったれ!畜生!落ちる!」

 映画のようにスマートに墜落宣言は出来ないものだな。
 古今東西の戦争映画を好む彼は、人生の最後にそう内心で呟いた。

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