自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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匿名ユーザー

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5月8日 マーシャル諸島メジュロ環礁 午前8時
メジュロ環礁のカラライン水道から4隻の艦船が、泊地に入ってきた。4隻は
単縦陣で水道を抜けた。その内の3隻目は異様に小さく、この時代ではあまり
見かけなくなった大きな帆を、2本のマストに広げている。
この船こそ、警戒部隊が拿捕してきたこの世界の船である。

昨日の夜、不審船を臨検中との報告を受けた第5艦隊幕僚は、急いで作戦室に移動し、
海図をにらみ合いながら互いに話し合っていた。そこに新たな報告が入った。
「何だと。船の乗員の中に私達をこの世界に連れてきた奴がいると言うのか?」
最初、不審船の臨検を行ったキャンベラの電文が読まれたときに、スプルーアンスは読んだ主、
通信参謀のアームストロング中佐にそう聞いた。
「はい。キャンベラからの報告ではそうなります。」
そこへ参謀長のデイビス少将が提案を持ちかけた。
「長官、思いついたのですが、その臨検した船を一度拿捕し、このマーシャルに連れてきたら
どうですか?」
「ここにかね?」
「はい。先に通信参謀がお伝えしたようにその船には、私達をこの世界に連れてきた張本人が
乗っているのです。その人物達に直接、私達が会って色々と聞いたほうがいいと思うのですが。」
「なるほど。」
スプルーアンスは腕を組んで考え込んだ。作戦室内に不気味なほど静けさ伝わった。
彼が考えること5分。スプルーアンスは口を開いた。
「この世界が何が分からん以上、情報が必要だからな。よし、その船を拿捕し、このマーシャルに
連れて来たまえ。もし、途中で敵対行動に移るようであればその時は警告を発し、警告に従わぬ
場合は即座に撃沈しろ。私が言うのは以上だ。」
重巡のキャンベラに拿捕せよとの命令を送ったその10分後、返信が来た。
「長官、問題の船は我々の指示に従うと、キャンベラから返信がありました。」
マコーミック中佐がそう言うと、スプルーアンスは表情を変えることなく頷いた。

そして今に至るのである。

「参謀長、あの船の名前は確かヴァイアン号とか言ってたな?」
双眼鏡で入泊してきた木造船を見ながらスプルーアンス大将は、右にいる参謀長
デイビス少将に聞いた。
「はい。」
「ふむ。なかなかいい名前だな。見たところ船の整備も結構出来てる。あの船の乗組員
は相当なベテランだろう。」
彼は、ヴァイアン号をそう評価した。そこへマコーミック中佐が入ってきた。
「長官、木造船に搭乗している魔道師と将軍を名乗る人物たちが、艦隊の責任者に会いたいと
申していると、キャンベラから報告がありました。」
「いいだろう。では1時間後にこのインディアナポリスに呼びたまえ。詳しい話を聞きたい。」

ヴァイアン号の乗員たちは、メジュロ環礁に広がる光景を見て圧倒された。
「な・・・・・なんだぁ、こいつは!?」
船首で環礁内を見渡したプラットンも驚きの声を上げた。船首甲板には彼の他にも「積荷」である
4人もいた。彼らもまた驚きの表情を表していた。常に平静を努めていたフランクス将軍や
リーソン魔道師も例外ではない。
「でかい船が、1・2・3・・・・・・ありすぎて数え切れん。」
彼が数えていたのは、泊地に横一列に並ぶエセックス級空母や戦艦郡である。普段見たことも無い巨大
船がうじゃうじゃいる状況に、プラットン船長は目が回りそうな気分だった。

「フランクス将軍。召喚は大成功ですね。」
魔道師チームのリーダーであるレイム・リーソンは笑みを浮かべて彼に語りかけた。
「これほどの強大な戦力があれば、あのバーマント公国に大出血を強要出来るかもしれません。」
「そうだろうな。」
彼は頷いた。しかしやや渋めな表情でレイム言い返した。
「しかし、私が思うには、どうも歓迎されているとは思えんのだよ。」
「どうしてですか?」
彼女が首をひねった。
「船の乗員を見たまえ。」
彼の言うとおり、彼女は1隻の巨大砲塔を付けた、61と描かれた船を見てみた。ヴァイアン号は
この61の船の前をゆっくりと通りすぎようとしていた。
その巨大さに圧倒されつつも、彼女はこちらを見てる何人かの乗員を見つけた。互いに顔の表情が
分かる距離である。
その乗員たちの視線は、どこか刺々しいものである。相手の心の中を見れば、貴様らここに何しに来た?
ここは貴様らの来るとこではない。と言いたげな殺伐とした雰囲気をかもし出している。
「将軍の言うとおりです。乗員はこちらをあまり好意的思っていないようです。視線はこちらを明らかに
憎んでいるような感じです。」
「君も分かったか。どうやら私たちは、彼らの寝込みを襲うような形で、この世界に強引に引っ張り出して
しまったのかもしれん。相手の気持ちを考えないで召喚するのは、少し迂闊だったかもしれん。」
彼がそう言うと、会話を聞いていた4人は失望したような表情になった。
「まあ、いずれにせよ。相手ともっと話し合えば、あちらもこっちを理解できるかもしれん。そう気を落とすな
、相手も同じ人だ。野蛮な連中ではないだろう。」
彼はそう言って皆を励ました。それが功を奏したのか、4人の表情も少しは和らいだ。

午前9時20分、インディアナポリスから左舷400メートルの沖合いに投錨
したヴァイアン号から、迎えの内火艇がインディアナポリスに戻ってきた。
内火艇には4人の変わった服に身を包んだ人物が乗っていた。内火艇がインディアナ
ポリスの左舷に接舷すると、水兵に先導された4人の人物が、慣れない足取りで
乗艦してきた。
スプルーアンス大将は、参謀長のデビソン少将と作戦参謀のフォレステル大佐と共に
4人を出迎えた。
4人のうち1人は中年男性で、騎士風な衣装をつけており顔の下半分が黒い髭で覆われ
ており、体つきはごつい。体全体が、歴戦の戦士であることを強調しているように思えた。
残る3人は似たような衣装をつけている。黒い上着に白いズボンと共通している。
2人は女性で1人が青色の長髪、2人目が栗色のショートに眼鏡をつけている。
残る1人は男性で、中肉中背といったごく普通な感じである。

「私はアメリカ太平洋艦隊所属、第5艦隊司令長官、レイモンド・スプルーアンス大将です。」
スプルーアンスは、敬礼しながら自己紹介を行った。
「私はヴァルレキュア王国第5騎士団長、グイン・フランクス将軍です。」
フランクスも自己紹介を行った。
「魔道師のレイム・リーソンです。」
「同じく、リリア・フレンド、じゃなくて・・・フレイドです。」
「同じくマイント・ターナーです。」
彼らが自己紹介を終えると、スプルーアンスは彼らを食堂に案内した。

インディアナポリスの食堂には、第58任務部隊司令官のマーク・ミッチャー中将
と第7郡司令官ウイリス・リー中将、上陸部隊指揮官のリッチモンド・ターナー中将、
軍団司令官のホーランド・スミス中将が招かれていた。この他にも第5艦隊の司令部
幕僚がおり、合計で9人が待っていた。
インディアナポリスの作戦室では、狭いために10名しか入らないため、急遽食堂で
話し合いが行われることになった。
「どうぞ、こちらへ。」
スプルーアンスの副官であるチャック・バーバー大尉が、用意されている4つの椅子
に彼らを座らせた。
4人の反対側に米軍の将星、つまりマリアナ侵攻部隊の首脳が座り、対面する形とな
った。
4人の側には、スプルーアンスと作戦参謀、参謀長が座った。
「さて、わざわざご足労痛み入るが、早速話を始めたい。」
ホーランド・スミス中将が葉巻を加えながら4人に語りかけた。目には微かながら憤り
が浮かんでいる。
「まず、私が聞きたいのは、なぜこんな世界に連れてきたのか、である。これについて
お答え願いたい。」
「分かりました。」
フランクス将軍は頷くと、話を始めた。
「私たちヴァルレキュア王国は、2年前、大国であるバーマント公国という国の軍隊の
一方的な侵攻を受けました。現在、国土の40パーセントがそのバーマント公国に占領され、
敵軍は今にも首都に向けて攻勢を開始しかねない状況です。それに対し、我が軍は精鋭部隊
を主力とする防衛軍を編成して敵と戦っておりますが、それも減りつつあります。先日も
我が軍屈指の精鋭部隊が敵に壊滅させられました。我々は最後の手段として、強大な戦力を
保有する島を召喚魔法で呼び寄せることにしました。」

フランクスは一旦言葉を切り、周りを眺めた。どの人物も痛々しい視線を送っている。
彼に代わってレイムが話し始めた。
「召喚魔法は3ヶ月前から作成し始めました。作成には王国屈指の魔道師、いわゆる魔法使い
6人が担当しました。私や彼女、彼もその内のメンバーです。召喚2日前に術が完成し、私たちは
嵐の夜に召喚魔法を発動しました。結果、3人が意識を失って倒れてしまいましたが、召喚はこの通り
成功しました。本当は6人でこの島、あなた方言うマーシャル諸島に来たかったのですが、残り3人は
来られず、私たち3人と、フランクス将軍の4人だけで、船を調達し、ここに来ました。」
ミッチャー中将が聞いてきた。
「リーソン魔道師に聞くが、倒れた3人はどうなったのだね?亡くなられたのか?」
「いえ、3人は意識を失っただけで、まだ生きています。その内1人はいまだに生死
の境をさまよっています。」
「そうか・・・・・・大いに結構。」
スミス中将が大きく頷いた。彼は葉巻を灰皿に置くと、彼らの方に顔を向けた。
「君達は、このメジュロ環礁に入るときに夥しい数の船を見なかったかね?」
4人は頷いた。
「実は、君たちがここに我々を引っ張り出す前は、我が軍は日本という国と戦っていた。
我々は準備を終えつつあり、1ヵ月後には日本軍の重要拠点を占領する作戦を発動し、
我々はここから打って出て行くつもりだったのだ。だが、」
次の瞬間、スミスは声音を変えた。
「それは必要なくなった!」
いきなりの怒声に4人はビクッとなった。
「君たちのせいで、14万を超える将兵が孤立したのだ!!本来行うはずだった日本軍
との決戦。それを迎えるあたって将兵の士気は上がっていた。しかし、君たちがこの世界に
無理やりに引っ張り出してきたばかりに、祖国にも帰ることが出来なくなった将兵は元気
をなくした!!士気を落とすと、どうなるか分かるか!?軍隊としての機能するのが難しくなる
のだぞ!何が最後の手段としての召喚魔法か!?ふざけるな!強引に異様な世界に引っ張り出された
我々の気持ちを考えんで何が最後の手段か!!馬鹿野郎!!!!」
彼はバン!!と手でテーブルを叩いた。あまりの怒りに、4人はただオロオロするばかりだった。
リリアにいたっては瞳から涙が滲んでいた。それほど、スミスの剣幕は凄まじいものだった。
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