9月25日 午後1時 カルリア沖100マイル地点
米第5艦隊旗艦である重巡洋艦インディアナポリスの作戦室は、やや重い空気に包まれていた。
「その話は本当なのだな?」
第5艦隊司令長官レイモンド・スプルーアンス大将は、1人の男にそう問いただす。
「は、はい。先ほど受け取った魔法通信では、西北部の継戦派が蜂起し、革命側と対峙しているようです。」
男、捕虜になったバーマント人であるアルラルト・ベルーク大佐は、布で冷や汗を拭きながらそう言った。
インディアナポリスには、2名のバーマント人が乗り組んで、革命派との連絡役を任されている。
もう1人のバーマント人である魔道師の男性は、午前2時に革命成功の第一報を第5艦隊の幕僚に伝えた。
7時にはスプルーアンスも話し合いに加わり、革命の模様を刻々と伝えられた。
革命は大部分の地域で成功を収めていた。
まず、カルリア地方では、監獄に収監されていたグリフィン第3皇子の救出作戦が成功を収めた。
第5艦隊は、第58任務部隊から分離させたウイリス・リー中将指揮下の戦艦部隊を一部割いてカルリア地方の沿岸に派遣。
駐屯地で決起軍と戦おうとしていた公国側の1個歩兵旅団を艦砲射撃で威圧し、その行動を封殺した。
次に首都ファルグリンで革命軍が住民と共に決起し、首都を制圧。
宮殿のグルアロス現皇帝は決起軍に寝返った宮殿警備軍に逮捕された。
この報は魔法通信によって各地へ転送され、住民の蜂起を促した。
エルヴィントでは午前6時に避難中の住民が公国側を離反すると宣言を発した。
米第5艦隊旗艦である重巡洋艦インディアナポリスの作戦室は、やや重い空気に包まれていた。
「その話は本当なのだな?」
第5艦隊司令長官レイモンド・スプルーアンス大将は、1人の男にそう問いただす。
「は、はい。先ほど受け取った魔法通信では、西北部の継戦派が蜂起し、革命側と対峙しているようです。」
男、捕虜になったバーマント人であるアルラルト・ベルーク大佐は、布で冷や汗を拭きながらそう言った。
インディアナポリスには、2名のバーマント人が乗り組んで、革命派との連絡役を任されている。
もう1人のバーマント人である魔道師の男性は、午前2時に革命成功の第一報を第5艦隊の幕僚に伝えた。
7時にはスプルーアンスも話し合いに加わり、革命の模様を刻々と伝えられた。
革命は大部分の地域で成功を収めていた。
まず、カルリア地方では、監獄に収監されていたグリフィン第3皇子の救出作戦が成功を収めた。
第5艦隊は、第58任務部隊から分離させたウイリス・リー中将指揮下の戦艦部隊を一部割いてカルリア地方の沿岸に派遣。
駐屯地で決起軍と戦おうとしていた公国側の1個歩兵旅団を艦砲射撃で威圧し、その行動を封殺した。
次に首都ファルグリンで革命軍が住民と共に決起し、首都を制圧。
宮殿のグルアロス現皇帝は決起軍に寝返った宮殿警備軍に逮捕された。
この報は魔法通信によって各地へ転送され、住民の蜂起を促した。
エルヴィントでは午前6時に避難中の住民が公国側を離反すると宣言を発した。
バーマント側はこの決起した住民を抑えようと、兵力を送ろうとしたが、
沖には米輸送船団が接近しつつあり、米側の上陸を恐れていたため、身動きが取れなくなっていた。
結局、エルヴィントのバーマント軍も、形勢我にあらずと判断し、皇帝側から離反した。
バーマント側は知らなかったが、この輸送船団はいずれも空船で、その3分の1は、
米機動部隊への弾薬、給油艦などの補給船団であった。
しかし、午前9時には信じられない報告が入ってきた。
首都80キロ西のエリオンドルフで、駐留していた革命側の第4艦隊が、突如第5、第6艦隊の
襲撃を受け、主力艦を含めた14隻全てが撃沈破され、陸の第4艦隊司令部では司令官、
幕僚全てが殺害されるという惨事が起きた。
このエリオンドルフに到着したのは、革命側の軍で、到着時は午前7時を過ぎていた。
現場一帯は襲撃軍の姿は無く、基地には死者と負傷者が横たわっているのみだった。
西北部の決起軍は、各所で継戦派に包囲され、殲滅されてしまった。
そして1時間前には西北部のグランスボルク地方が公国から独立するという事態が起きた。
グランスボルク地方には58000の地上軍、それに訓練部隊も含めた6個空中騎士団、
そして第4艦隊を叩きのめした第5、第6艦隊がおり、さらには2つの魔法都市が存在している。
つまり継戦側は一地方を支配下に収めたのである。
そして、継戦派の代表は、信じられないことに逮捕者リストに乗っているはずの、エリラ・バーマントであった。
「魔法都市マリアナとギルアルグが継戦派に乗っ取られた、となると・・・・・・スプルーアンス長官。
これは厄介な自体かもしれません。」
ヴァルレキュア側オブザーバーとして参加しているマイント・ターナーが顔を青ざめて言ってくる。
「この2つの都市には、何か忌まわしいものでもあるのか?」
この魔法都市に対して知らないスプルーアンスらは、オブザーバー達が顔を青ざめるのが不思議でならない。
第5艦隊の幕僚達は、たかが都市2つごときで、恐れる必要があるのか?と言いたげだ。
「革命側のほうが戦力は上だし、別にそれほど恐れるものではないと思うが。」
参謀長のデイビス少将が訝しげにそう言ってくる。だが、
「いいえ、とんでもありません。」
沖には米輸送船団が接近しつつあり、米側の上陸を恐れていたため、身動きが取れなくなっていた。
結局、エルヴィントのバーマント軍も、形勢我にあらずと判断し、皇帝側から離反した。
バーマント側は知らなかったが、この輸送船団はいずれも空船で、その3分の1は、
米機動部隊への弾薬、給油艦などの補給船団であった。
しかし、午前9時には信じられない報告が入ってきた。
首都80キロ西のエリオンドルフで、駐留していた革命側の第4艦隊が、突如第5、第6艦隊の
襲撃を受け、主力艦を含めた14隻全てが撃沈破され、陸の第4艦隊司令部では司令官、
幕僚全てが殺害されるという惨事が起きた。
このエリオンドルフに到着したのは、革命側の軍で、到着時は午前7時を過ぎていた。
現場一帯は襲撃軍の姿は無く、基地には死者と負傷者が横たわっているのみだった。
西北部の決起軍は、各所で継戦派に包囲され、殲滅されてしまった。
そして1時間前には西北部のグランスボルク地方が公国から独立するという事態が起きた。
グランスボルク地方には58000の地上軍、それに訓練部隊も含めた6個空中騎士団、
そして第4艦隊を叩きのめした第5、第6艦隊がおり、さらには2つの魔法都市が存在している。
つまり継戦側は一地方を支配下に収めたのである。
そして、継戦派の代表は、信じられないことに逮捕者リストに乗っているはずの、エリラ・バーマントであった。
「魔法都市マリアナとギルアルグが継戦派に乗っ取られた、となると・・・・・・スプルーアンス長官。
これは厄介な自体かもしれません。」
ヴァルレキュア側オブザーバーとして参加しているマイント・ターナーが顔を青ざめて言ってくる。
「この2つの都市には、何か忌まわしいものでもあるのか?」
この魔法都市に対して知らないスプルーアンスらは、オブザーバー達が顔を青ざめるのが不思議でならない。
第5艦隊の幕僚達は、たかが都市2つごときで、恐れる必要があるのか?と言いたげだ。
「革命側のほうが戦力は上だし、別にそれほど恐れるものではないと思うが。」
参謀長のデイビス少将が訝しげにそう言ってくる。だが、
「いいえ、とんでもありません。」
レイムは首を横に振った。
「あなた方はこの都市がただの市街地であると思っているようですが、それは違います。
この大陸では過去に1度、とある災厄によって大陸中の生き物が抹殺されかけた事があります。」
彼女は、第5艦隊の幕僚達に説明を始める。誰もが、ただならぬ様子に動揺している。
「遥か1000年の昔。この大陸にはエルボストという大国がありました。
エルボストは他の国相手に次々と侵略戦争を起こしました。しかし、エルボストの
残忍なやり方は反感を買い、ついには別の国が連合を組んでエルボストに挑みました。
結果、エルボストは大陸西北部の首都、ギルアルグ付近までに後退しました。
エルボストは起死回生の案として、ここ、マリアナである儀式を行いました。」
レイムが床に広げられた大陸の地図の、ある一転を指し示す。そこはマリアナと呼ばれる地点である。
首都ファルグリンから西に800キロの所にあり、海から30キロ内陸にある。
「その儀式が、ワイバーンロードの血と屍を使った・・・・・エンシェントドラゴンの召喚でした。」
「エンシェントドラゴンとは一体どのようなものなのかね?」
作戦参謀のフォレステル大佐が質問した。
「エンシェントドラゴンは、普通のドラゴン、絵のワイバーンロードがありますね?それの100倍
もの大きさを持つ大型の竜です。現実には存在しませんが、私達魔法使いの間では、物と、優秀な人員が揃えば、
このドラゴンは召喚出来るといわれています。召喚の際、このエンシェントドラゴンは召喚主の願いを
1度だけ実行できます。つまり、この世界の生き物全てを滅ぼせと言われれば、滅ぼすまで止まりません。」
会議室が驚きともつかない声でざわめいた。第5艦隊の誰もが、継戦派は自爆覚悟の作戦に出たかと思った。
普通のドラゴン、通称ワイバーンロードの大きさは全長が7メートル、
全翼が8メートルとなっている。
米機動部隊の主力艦載機のF6Fヘルキャットや陸軍航空隊の新鋭機P-51マスタングに比べると速力は低く、
体形も小さいが、その俊敏な機動性は計り知れない。
しかし、それが100倍の大きさだとすると全長が700メートル、全翼が800メートルというとんでもない大きさになる。
「そして、その恐るべきエンシェントドラゴンは、1000年前のある日、1ヵ月半の召喚儀式を終えてついに地上に現しました。
「あなた方はこの都市がただの市街地であると思っているようですが、それは違います。
この大陸では過去に1度、とある災厄によって大陸中の生き物が抹殺されかけた事があります。」
彼女は、第5艦隊の幕僚達に説明を始める。誰もが、ただならぬ様子に動揺している。
「遥か1000年の昔。この大陸にはエルボストという大国がありました。
エルボストは他の国相手に次々と侵略戦争を起こしました。しかし、エルボストの
残忍なやり方は反感を買い、ついには別の国が連合を組んでエルボストに挑みました。
結果、エルボストは大陸西北部の首都、ギルアルグ付近までに後退しました。
エルボストは起死回生の案として、ここ、マリアナである儀式を行いました。」
レイムが床に広げられた大陸の地図の、ある一転を指し示す。そこはマリアナと呼ばれる地点である。
首都ファルグリンから西に800キロの所にあり、海から30キロ内陸にある。
「その儀式が、ワイバーンロードの血と屍を使った・・・・・エンシェントドラゴンの召喚でした。」
「エンシェントドラゴンとは一体どのようなものなのかね?」
作戦参謀のフォレステル大佐が質問した。
「エンシェントドラゴンは、普通のドラゴン、絵のワイバーンロードがありますね?それの100倍
もの大きさを持つ大型の竜です。現実には存在しませんが、私達魔法使いの間では、物と、優秀な人員が揃えば、
このドラゴンは召喚出来るといわれています。召喚の際、このエンシェントドラゴンは召喚主の願いを
1度だけ実行できます。つまり、この世界の生き物全てを滅ぼせと言われれば、滅ぼすまで止まりません。」
会議室が驚きともつかない声でざわめいた。第5艦隊の誰もが、継戦派は自爆覚悟の作戦に出たかと思った。
普通のドラゴン、通称ワイバーンロードの大きさは全長が7メートル、
全翼が8メートルとなっている。
米機動部隊の主力艦載機のF6Fヘルキャットや陸軍航空隊の新鋭機P-51マスタングに比べると速力は低く、
体形も小さいが、その俊敏な機動性は計り知れない。
しかし、それが100倍の大きさだとすると全長が700メートル、全翼が800メートルというとんでもない大きさになる。
「そして、その恐るべきエンシェントドラゴンは、1000年前のある日、1ヵ月半の召喚儀式を終えてついに地上に現しました。
エルボストの王は自分達以外の国を滅ぼせと願い、エンシェントドラゴンはその願いを忠実に実行しました。
たった1匹のこの巨大竜は、わずか1日半で2つの国を焼き滅ぼし、1つを全滅寸前までに追い込みました。
亡くなった人数は2000万とも、3000万とも言われています。」
ざわめいていた室内は、一気に静まり返った。
誰もが、エンシェントドラゴンのもたらした惨禍に息を呑んだ。
つまり、そのエンシェントドラゴンとやらが召喚されれば、最強の打撃力を持つ高速空母部隊も、
そして精兵揃いの第5水陸両用軍団も、ひとまとめに潰されてしまうのである。
しかし、別の事も分かった。話によれば、エンシェントドラゴンは自爆用の生物ではないと言う事だ。
簡単に言うと、滅ぼす相手を事細かに言い伝え、その目標だけを滅ぼす事が出来るのである。
(前に、何かの科学雑誌で、将来は原子力を使用した強力な爆弾が登場するだろうと書いてあったな。
1発で町が消し飛ぶとか書いてあったが・・・・・)
スプルーアンスは、いつか読んだ雑誌の内容を思い出した。
(仮に原子力の爆弾を装備していても、召喚されたエンシェントドラゴンはそれを遥かに上回る攻撃力を持つ。
そんなのが出てきたら、もはや戦争どころではないな)
スプルーアンスは内心でそう呟く。伝説級のドラゴンに出てこられたら、戦争もあったものじゃない。
「エンシェントドラゴンは・・・・その後どうなったのだね?」
スプルーアンスはレイムに質問する。
「自爆しました。」
「「自爆?」」
この時、幕僚達の素っ頓狂な声が重なって響いた。派手に暴れまわったのだろうと誰もが思っていた。
その続きが、自爆である。驚くのも無理は無い。
「召喚されたエンシェントドラゴンは確かに最強でした。ですが、召喚時に欠陥の入った呪文が混じっていたため、
エンシェントドラゴンは突如、爆裂したそうです。恐らく、敵の侵攻に焦った魔法使いが、欠陥の入った一文を
誤って交えてしまったため、自爆に繋がったと、最近の研究ではそう言われています。」
「ヴァルレキュアの世界史の研究はすばらしいものだな。」
たった1匹のこの巨大竜は、わずか1日半で2つの国を焼き滅ぼし、1つを全滅寸前までに追い込みました。
亡くなった人数は2000万とも、3000万とも言われています。」
ざわめいていた室内は、一気に静まり返った。
誰もが、エンシェントドラゴンのもたらした惨禍に息を呑んだ。
つまり、そのエンシェントドラゴンとやらが召喚されれば、最強の打撃力を持つ高速空母部隊も、
そして精兵揃いの第5水陸両用軍団も、ひとまとめに潰されてしまうのである。
しかし、別の事も分かった。話によれば、エンシェントドラゴンは自爆用の生物ではないと言う事だ。
簡単に言うと、滅ぼす相手を事細かに言い伝え、その目標だけを滅ぼす事が出来るのである。
(前に、何かの科学雑誌で、将来は原子力を使用した強力な爆弾が登場するだろうと書いてあったな。
1発で町が消し飛ぶとか書いてあったが・・・・・)
スプルーアンスは、いつか読んだ雑誌の内容を思い出した。
(仮に原子力の爆弾を装備していても、召喚されたエンシェントドラゴンはそれを遥かに上回る攻撃力を持つ。
そんなのが出てきたら、もはや戦争どころではないな)
スプルーアンスは内心でそう呟く。伝説級のドラゴンに出てこられたら、戦争もあったものじゃない。
「エンシェントドラゴンは・・・・その後どうなったのだね?」
スプルーアンスはレイムに質問する。
「自爆しました。」
「「自爆?」」
この時、幕僚達の素っ頓狂な声が重なって響いた。派手に暴れまわったのだろうと誰もが思っていた。
その続きが、自爆である。驚くのも無理は無い。
「召喚されたエンシェントドラゴンは確かに最強でした。ですが、召喚時に欠陥の入った呪文が混じっていたため、
エンシェントドラゴンは突如、爆裂したそうです。恐らく、敵の侵攻に焦った魔法使いが、欠陥の入った一文を
誤って交えてしまったため、自爆に繋がったと、最近の研究ではそう言われています。」
「ヴァルレキュアの世界史の研究はすばらしいものだな。」
バーマント側の魔道師であるオスルが感心したように言う。
「世界史の研究ではわがバーマントが一番と思っていたのだが、いやはや、ヴァルレキュアも
素晴らしいものだ。」
「ヴァルレキュア人は元々勤勉だからな。頭がいいのがごろごろいる。それだから、
統一派が行った侵攻にも2年間も耐えて見せたのだろう。」
ベルーク大佐も感心したような表情でそう言う。
「大体の内容は掴めて来た。オスル魔道師、ベルーク大佐。今現在、マリアナとギルアルグ、
2つの魔法都市が、エリラ率いる継戦派に占領されているわけだが、エリラはこのエンシェントドラゴン
を召喚しようと思っているのかね?」
スプルーアンスは怜悧な表情で2人に問う。
「エリラ皇女は元来、目標のためには手段を問わぬ人物です。これが、エリラ皇女の肖像です。」
ベルーク大佐は内ポケットから一枚の紙を取り出し、スプルーアンスに渡した。紙にはエリラ皇女の姿が写っている。
皇族にもかかわらず、戦闘服のようなものを来ている。
容姿は端麗で、特徴を挙げれば、その鷹のように鋭い眼であろう。
華奢にも思えるが、女の割には体つきがしっかりしている感じだ。
「1年前に描かれた肖像です。」
「自己中心的な面構えだな。」
印象からして、スプルーアンスは肖像を見てそう呟いた。
「おっしゃる通りです。エリラ皇女は本当に自己中心的で、人泣かせの性格ですが、
やるべきことは素早くこなそうとする努力家でもあります。このため、エリラ皇女を
崇拝する軍人や国民が相当数おります。その大部分が西北部の者達です。
今回の継戦派の蜂起は、このエリラ皇女が、自らを慕う一派をそそのかして行ったと思われます。」
「やるべきことは素早く・・・・か。なら、」
スプルーアンスの眼が鋭く光った。
「エンシェントドラゴンがこの間にも呼び出されようとしている可能性は充分にある。
いや、そのマリアナと呼ばれる魔法都市で、既に儀式を行っている事も考えられる。」
「世界史の研究ではわがバーマントが一番と思っていたのだが、いやはや、ヴァルレキュアも
素晴らしいものだ。」
「ヴァルレキュア人は元々勤勉だからな。頭がいいのがごろごろいる。それだから、
統一派が行った侵攻にも2年間も耐えて見せたのだろう。」
ベルーク大佐も感心したような表情でそう言う。
「大体の内容は掴めて来た。オスル魔道師、ベルーク大佐。今現在、マリアナとギルアルグ、
2つの魔法都市が、エリラ率いる継戦派に占領されているわけだが、エリラはこのエンシェントドラゴン
を召喚しようと思っているのかね?」
スプルーアンスは怜悧な表情で2人に問う。
「エリラ皇女は元来、目標のためには手段を問わぬ人物です。これが、エリラ皇女の肖像です。」
ベルーク大佐は内ポケットから一枚の紙を取り出し、スプルーアンスに渡した。紙にはエリラ皇女の姿が写っている。
皇族にもかかわらず、戦闘服のようなものを来ている。
容姿は端麗で、特徴を挙げれば、その鷹のように鋭い眼であろう。
華奢にも思えるが、女の割には体つきがしっかりしている感じだ。
「1年前に描かれた肖像です。」
「自己中心的な面構えだな。」
印象からして、スプルーアンスは肖像を見てそう呟いた。
「おっしゃる通りです。エリラ皇女は本当に自己中心的で、人泣かせの性格ですが、
やるべきことは素早くこなそうとする努力家でもあります。このため、エリラ皇女を
崇拝する軍人や国民が相当数おります。その大部分が西北部の者達です。
今回の継戦派の蜂起は、このエリラ皇女が、自らを慕う一派をそそのかして行ったと思われます。」
「やるべきことは素早く・・・・か。なら、」
スプルーアンスの眼が鋭く光った。
「エンシェントドラゴンがこの間にも呼び出されようとしている可能性は充分にある。
いや、そのマリアナと呼ばれる魔法都市で、既に儀式を行っている事も考えられる。」
スプルーアンスの表情は、相変わらず無表情に近いままだ。
だが、彼が海軍で培ってきた勘は、既に危険信号を捉えている。
「これまでの話を聞いてきたが、私の結論はこうだ。一見、このエリラ皇女の行動は無謀にも思える。」
スプルーアンスは肖像をヒラヒラさせながら言う。
「だが、よく考えてみると、その行動にはある自信が裏付けられる。
そう、今マリアナで行われているかもしれないエンシェントドラゴンの召喚儀式だ
。魔法をよく知っているレイム君らが言うように、エンシェントドラゴンは自滅の兵器ではない。
一方的に相手を滅する事が出来る、れっきとした戦略兵器だ。そう、このエリラ皇女は、
その戦略兵器を使って、思うように自分の国が作れるのだ。召喚儀式には1ヶ月かかったと言うが、
今と昔では魔法技術も進歩しているだろう。そうなれば、儀式の期間は短くなるはずだ。」
スプルーアンスはバーマント人の魔道師、オスアルスに視線を向けた。
「オスアルス魔道師、もし今からエンシェントドラゴンの召喚儀式が始まるとして、終わるのは何日かかる?」
「長くて2週間ですが・・・・・急いでやれば・・・・・・1週間半ぐらいでしょう。」
またもがや会議室がざわめいた。今からB-24で爆撃しようにも、航続距離が足りない。
それに革命側の手に落ちた飛行場を使うにしても、滑走路が短いなど、各種問題が立ちふさがる。
「君達の軍で、マリアナの都市を攻撃できないものかね?」
デイビス少将が聞いてきた。
「それは・・・・無理でしょう。」
ベルーク大佐が陰鬱そうな表情で言う。
「グランスボルク地方には58000の地上軍に6個空中騎士団が駐留しています。
これらの部隊はエリラ皇女に忠誠を誓い、革命軍と対峙しています。革命側が全面侵攻しても、
制圧には最低でも2ヶ月はかかるでしょう。」
だが、彼が海軍で培ってきた勘は、既に危険信号を捉えている。
「これまでの話を聞いてきたが、私の結論はこうだ。一見、このエリラ皇女の行動は無謀にも思える。」
スプルーアンスは肖像をヒラヒラさせながら言う。
「だが、よく考えてみると、その行動にはある自信が裏付けられる。
そう、今マリアナで行われているかもしれないエンシェントドラゴンの召喚儀式だ
。魔法をよく知っているレイム君らが言うように、エンシェントドラゴンは自滅の兵器ではない。
一方的に相手を滅する事が出来る、れっきとした戦略兵器だ。そう、このエリラ皇女は、
その戦略兵器を使って、思うように自分の国が作れるのだ。召喚儀式には1ヶ月かかったと言うが、
今と昔では魔法技術も進歩しているだろう。そうなれば、儀式の期間は短くなるはずだ。」
スプルーアンスはバーマント人の魔道師、オスアルスに視線を向けた。
「オスアルス魔道師、もし今からエンシェントドラゴンの召喚儀式が始まるとして、終わるのは何日かかる?」
「長くて2週間ですが・・・・・急いでやれば・・・・・・1週間半ぐらいでしょう。」
またもがや会議室がざわめいた。今からB-24で爆撃しようにも、航続距離が足りない。
それに革命側の手に落ちた飛行場を使うにしても、滑走路が短いなど、各種問題が立ちふさがる。
「君達の軍で、マリアナの都市を攻撃できないものかね?」
デイビス少将が聞いてきた。
「それは・・・・無理でしょう。」
ベルーク大佐が陰鬱そうな表情で言う。
「グランスボルク地方には58000の地上軍に6個空中騎士団が駐留しています。
これらの部隊はエリラ皇女に忠誠を誓い、革命軍と対峙しています。革命側が全面侵攻しても、
制圧には最低でも2ヶ月はかかるでしょう。」
「とても間に合わないのね・・・・・・」
レイムも不安そうな表情で言う。会議室は、重苦しい沈黙に包まれ始めた。
が、
「意見具申よろしいでしょうか?」
突然、ある人物の声が響いた。それは、作戦参謀のフォレステル大佐だった。
「なんだ?案があるのか?私もこれから言おうとしていたのだが・・・・まずは言ってみたまえ。」
スプルーアンスが顔を上げる。
「では申します。問題のエンシェントドラゴンの召喚儀式が完了するまで長くて2週間、
短くて1週間半と、先の話で出ていますが、確かにこの期間は非常に短いでしょう。
陸軍航空隊のB-24を進出させても、航続距離、基地施設の問題などで間に合いません。
しかし、我々にしかない武器があります。」
「高速空母部隊・・・・・そうだな?」
デイビス少将が尋ねる。
「そうです。マリアナまでの距離は、この地図から見て、北に500マイル北上した後、
西に700マイル進んだ真下にファルグリン、そこから500マイル進めばマリアナの沖に到達します。
距離にして1700マイルほどです。これを18ノットのスピードで行くとすれば、4日もしくは
1週間でマリアナに到達いたします。」
「つまり、わが機動部隊の持つ航空打撃力で、魔法都市を潰す・・・・と言う訳だな?」
「そうであります。」
アメリカ海軍は、太平洋戦争が始まって以来、常に空母を先頭に数々の激戦を戦い抜いてきた。
1942年中は強敵日本海軍の空母機動部隊相手に5分の戦いを繰り広げている。
1943年になると、新鋭空母のエセックス級、インディペンデンス級が次々と就役し、
壊滅しかけた米機動部隊の戦力は、徐々に潤ってきた。
レイムも不安そうな表情で言う。会議室は、重苦しい沈黙に包まれ始めた。
が、
「意見具申よろしいでしょうか?」
突然、ある人物の声が響いた。それは、作戦参謀のフォレステル大佐だった。
「なんだ?案があるのか?私もこれから言おうとしていたのだが・・・・まずは言ってみたまえ。」
スプルーアンスが顔を上げる。
「では申します。問題のエンシェントドラゴンの召喚儀式が完了するまで長くて2週間、
短くて1週間半と、先の話で出ていますが、確かにこの期間は非常に短いでしょう。
陸軍航空隊のB-24を進出させても、航続距離、基地施設の問題などで間に合いません。
しかし、我々にしかない武器があります。」
「高速空母部隊・・・・・そうだな?」
デイビス少将が尋ねる。
「そうです。マリアナまでの距離は、この地図から見て、北に500マイル北上した後、
西に700マイル進んだ真下にファルグリン、そこから500マイル進めばマリアナの沖に到達します。
距離にして1700マイルほどです。これを18ノットのスピードで行くとすれば、4日もしくは
1週間でマリアナに到達いたします。」
「つまり、わが機動部隊の持つ航空打撃力で、魔法都市を潰す・・・・と言う訳だな?」
「そうであります。」
アメリカ海軍は、太平洋戦争が始まって以来、常に空母を先頭に数々の激戦を戦い抜いてきた。
1942年中は強敵日本海軍の空母機動部隊相手に5分の戦いを繰り広げている。
1943年になると、新鋭空母のエセックス級、インディペンデンス級が次々と就役し、
壊滅しかけた米機動部隊の戦力は、徐々に潤ってきた。
そして召喚前の4月末時点で、太平洋艦隊全体で正規空母10隻、軽空母9隻を有する
大機動部隊を編成するまでに至った。
召喚時には、機動部隊は太平洋艦隊の全空母を有していない。
数々の戦闘で軽空母サンジャシントを失うと言う手痛い喪失を被ったものの、戦力的にはまだまだ健在である。
依然として、第58任務部隊は正規空母8隻、軽空母7隻を有する大機動部隊である。
全体の航空兵力は戦闘機、艦爆、艦功合わせて1115機というとてつもない航空兵力を保有している。
これは、マリアナの継戦派が保有する6個空中騎士団を凌駕する戦力で、
その航空打撃力は計り知れないものがある。
この異世界のみならず、現世界でも、第58任務部隊に匹敵する機動部隊は無い。
それに加え、第52任務部隊の護衛空母10隻も加われば、航空兵力はさらに増大する。
フォレステルとスプルーアンスは、この大規模な航空部隊を、マリアナの魔法都市に
一気に叩きつけようと考えているのである。
「手は無い、と言うわけではないのですね。」
ベルーク大佐は、やや安堵したような表情でそう呟いた。
「ああ、その通りだ。燃料も弾薬もまだある。この通り、手段があるのだ。
まあ、私と、フォレステルの考えはこの通りである。他の意見は何か無いか?」
誰も反対意見を問わない。彼らの作戦案に誰もが納得している。
「では、継戦派に対する召喚儀式阻止作戦は機動部隊を以って行う。」
「分かりました。ですが司令長官、問題があります。」
「何だ?」
「継戦派には6個空中騎士団と2個艦隊がおります。仮に1週間で到達できるにしても、
これらに阻止されれば、召喚儀式の阻止は難しいと思われます。」
「6個空中騎士団と2個艦隊は、機動部隊の艦載機で片付ける。
それに敵艦隊と夜戦になっても、我々には新鋭戦艦が7隻いる。恐らく、
継戦派は手ぐすね引いて待ち構えているだろうが、最後に勝つのは、我々だ。」
スプルーアンスは相変わらず、無表情に近い顔つきで、淡々と述べる。
大機動部隊を編成するまでに至った。
召喚時には、機動部隊は太平洋艦隊の全空母を有していない。
数々の戦闘で軽空母サンジャシントを失うと言う手痛い喪失を被ったものの、戦力的にはまだまだ健在である。
依然として、第58任務部隊は正規空母8隻、軽空母7隻を有する大機動部隊である。
全体の航空兵力は戦闘機、艦爆、艦功合わせて1115機というとてつもない航空兵力を保有している。
これは、マリアナの継戦派が保有する6個空中騎士団を凌駕する戦力で、
その航空打撃力は計り知れないものがある。
この異世界のみならず、現世界でも、第58任務部隊に匹敵する機動部隊は無い。
それに加え、第52任務部隊の護衛空母10隻も加われば、航空兵力はさらに増大する。
フォレステルとスプルーアンスは、この大規模な航空部隊を、マリアナの魔法都市に
一気に叩きつけようと考えているのである。
「手は無い、と言うわけではないのですね。」
ベルーク大佐は、やや安堵したような表情でそう呟いた。
「ああ、その通りだ。燃料も弾薬もまだある。この通り、手段があるのだ。
まあ、私と、フォレステルの考えはこの通りである。他の意見は何か無いか?」
誰も反対意見を問わない。彼らの作戦案に誰もが納得している。
「では、継戦派に対する召喚儀式阻止作戦は機動部隊を以って行う。」
「分かりました。ですが司令長官、問題があります。」
「何だ?」
「継戦派には6個空中騎士団と2個艦隊がおります。仮に1週間で到達できるにしても、
これらに阻止されれば、召喚儀式の阻止は難しいと思われます。」
「6個空中騎士団と2個艦隊は、機動部隊の艦載機で片付ける。
それに敵艦隊と夜戦になっても、我々には新鋭戦艦が7隻いる。恐らく、
継戦派は手ぐすね引いて待ち構えているだろうが、最後に勝つのは、我々だ。」
スプルーアンスは相変わらず、無表情に近い顔つきで、淡々と述べる。
しかし、その瞳の奥では闘志が燃え盛っている。
もし夜戦になれば、このインディアナポリスを動員してでも全力で叩き潰す。
そう思っているかのようだった。
「分かりました。あと、問題がもう1つあります。」
「補給の事だろう?」
「はい。機動部隊はここ連日の攻撃で、弾薬の残量が4分の1ほどに減っております。
それと、艦艇の燃料給油なども含めますと、補給には2日かかると思われます。」
第58任務部隊は、大陸東海岸空襲を行ったため、各種の弾薬を消耗しているし、
駆逐艦の燃料補給も行わなければならない。
燃料補給のみならば1日で済むが、空母の弾薬補給となると、2日はかかってしまう。
「こればかりは仕方ないな。」
デイビス少将が腕を組みながら言う。
「時間は確かにないが、燃料、弾薬補給は難仕事です。2日近くは見込まなければなりませんね。」
情報参謀のアームストロング中佐も同意見である。その時、
もし夜戦になれば、このインディアナポリスを動員してでも全力で叩き潰す。
そう思っているかのようだった。
「分かりました。あと、問題がもう1つあります。」
「補給の事だろう?」
「はい。機動部隊はここ連日の攻撃で、弾薬の残量が4分の1ほどに減っております。
それと、艦艇の燃料給油なども含めますと、補給には2日かかると思われます。」
第58任務部隊は、大陸東海岸空襲を行ったため、各種の弾薬を消耗しているし、
駆逐艦の燃料補給も行わなければならない。
燃料補給のみならば1日で済むが、空母の弾薬補給となると、2日はかかってしまう。
「こればかりは仕方ないな。」
デイビス少将が腕を組みながら言う。
「時間は確かにないが、燃料、弾薬補給は難仕事です。2日近くは見込まなければなりませんね。」
情報参謀のアームストロング中佐も同意見である。その時、
「1日だ。」
スプルーアンスはおもむろに口を開いた。
「1日でやれ。」
「長官・・・・それは少し・・・・」
「敵は既に召喚儀式を始めているかもしれないのだ。いや、始めていると言った方がいい。
継戦派は急いでいるのだ。それならば、我々も急ぐべきだ。ひょんな事から、召喚儀式が
さらに縮まる事も考えられん事もないのだからな。」
スプルーアンスは席から立ち上がると、壁に掲げられている地図を眺めた。
「1日でやれ。」
「長官・・・・それは少し・・・・」
「敵は既に召喚儀式を始めているかもしれないのだ。いや、始めていると言った方がいい。
継戦派は急いでいるのだ。それならば、我々も急ぐべきだ。ひょんな事から、召喚儀式が
さらに縮まる事も考えられん事もないのだからな。」
スプルーアンスは席から立ち上がると、壁に掲げられている地図を眺めた。
マリアナ・・・・・
かつて、召喚される前にスプルーアンス率いる第5艦隊が、向かおうとしていた名の諸島と同じ名前だ。
(これで、名実共にマリアナ侵攻部隊となったわけか)
彼はそう思った。
「我々には時間がない。」
そう言って彼は後ろを振り返り、皆を見渡す。
「1日でやれないことは無い筈だ。それぞれの無駄を省き、皆が的確に動けば出来るはずだ。
いや、必ず出来ると、私は確信する。」
スプルーアンスは語調を強くしてそう言い放った。誰もが納得している。
「そこでだが、1つ特例をやろう。この補給作業で、1番短い時間で補給作業を終えた、
戦艦、正規空母、軽空母、巡洋艦、駆逐艦各1隻ずつに、アイスクリームを普段の2倍与えよう。」
かつて、召喚される前にスプルーアンス率いる第5艦隊が、向かおうとしていた名の諸島と同じ名前だ。
(これで、名実共にマリアナ侵攻部隊となったわけか)
彼はそう思った。
「我々には時間がない。」
そう言って彼は後ろを振り返り、皆を見渡す。
「1日でやれないことは無い筈だ。それぞれの無駄を省き、皆が的確に動けば出来るはずだ。
いや、必ず出来ると、私は確信する。」
スプルーアンスは語調を強くしてそう言い放った。誰もが納得している。
「そこでだが、1つ特例をやろう。この補給作業で、1番短い時間で補給作業を終えた、
戦艦、正規空母、軽空母、巡洋艦、駆逐艦各1隻ずつに、アイスクリームを普段の2倍与えよう。」