自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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9月8日 午前10時 サイフェルバン西12キロ地点
サイフェルバンから西10キロは広大な草原が続いている。
その光景はとても良く、所々に小高い丘が聳え立っている。
古くから旅で疲れた旅人や、行商人は広大な草原を見ながら、体を休めていた。
そこから西には、広大な森林があり、どんな季節にもかかわらず森林の中はひんやりとした空気に包まれている。
夜中はかなり冷え込むが、昼間は気温も上がるため、それほど寒くは無い。
しかし、森林の外から入ってくると、やはり少々肌寒く感じた。
その森の中にある、とある村。この村には、合計で数百は下らないバーマント軍の軍勢が集結していた。
この森林はエイレーンの森と呼ばれ、古くからエルフが住んでいた森として知られている。
エイレーンの森は、北はサイフェルバンから600キロ離れたフレンスボルクから、
南は300キロ離れたアルイーゼと呼ばれた地域まで繋がっている、とても広大な森林である。
その広大な森の主であったエルフ、ダークエルフはバーマント軍によって叩き出され、今ではヴァルレキュアに逃れている有様である。
このエルフの住んでいた森の中の村や町は、今ではバーマント軍にとっての格好の軍事施設に改造されている。
そのバーマント軍が居座っている村を、ひっそりと見守るいくつかの人影があった。
「こちらブラックウィード、数時間前からバーマント軍が集結しつつある。数は2個大隊以上。」
「こちらマリーンリーダー了解。ブラックウィードは引き続き、敵の監視にあたれ。無理と判断した場合にはすぐさま撤退せよ。」
「こちらブラックウィード、了解。」
偵察チーム、ブラックウィードのリーダーであるウィリアム・ワシントン大尉は受話器を戻した。

「オブザーバーさん、これを見てどう思う?」
オブザーバーである、ダークエルフのフランチェスカ・ラークソンはしぶい表情で言った。
「これは、恐らく侵攻準備ですね。先ほどから敵兵の数が徐々に増えてきています。」
「俺も同感だ。」
「それに、バーマント軍の武器は、見た限り、銃器ばかりです。腰には長剣を吊っていますが、あれは白兵戦用です。」
「となると、バーマント軍はいよいよサイフェルバンに侵攻してくるな。」
ワシントン大尉はそう言うと、軽く舌打ちをする。

ワシントン大尉は、第4海兵師団の第25海兵連隊に所属していたが、
2週間前にワシントン大尉は、連隊長に呼ばれて、西側の森の偵察を命じられた。
バーマント軍は、米軍の空襲を恐れているのか、森林とサイフェルバンの間、
12キロ地帯には全く部隊を置かなくなった。
また、米軍もこの地帯には軍をおかず、この12キロの草原地帯が一種の境界線の役割を果たしていた。
1ヶ月ほどの静寂が続いた9月1日、米軍が放ったスパイからバーマント軍の不審な動きを掴んだと、
報告が入った。
米軍は直ちに偵察隊を増やし、第4海兵師団だけで70名もの兵員を偵察隊として派遣した。
偵察隊は9人の将兵と、1人のエルフ、又はダークエルフを伴って出動し、
9月6日からバーマント軍の基地と化した村落の偵察を開始した。
エルフ、ダークエルフは森の生活に長けており、長年狩猟や、戦などを経験しているものがかなり多かった。
そこで米軍側は、戦場オブザーバーの中からエルフ、ダークエルフを探し出し、彼らの許可を得た後に偵察チームとして組んだ。
偵察チームとオブザーバーは、これまでの戦場でよく顔をあわせていたため、混乱などは起こらなかった。
今のところ、どのチームも無事で、刻々と司令部に情報を伝えつつある。
これにより、米軍側はバーマント軍の一大反撃作戦が近いと確信していた。

「大尉、そろそろ下がったほうがいいですぜ。」
毛むくじゃらの軍曹、ホットニー軍曹が注意を促した。敵の兵も馬鹿ではない。
空襲を恐れて、森林地帯に集結するぐらいである。
敵としてもなるべく、部隊の位置を探られまいと、何らかの対応を行うはずだ。
「そうだな。他のチームも、敵の情報を充分に送った頃だ。引き揚げるとするか。」
これまで2日間、彼らは危険な偵察任務を行ってきた。
昨日は敵の巡回兵に危うく見つかりかけ、なんとか難を逃れたことがあった。
その時ばかりは、全員が肝を冷やしている。
だが、この2日間に報告した情報は、確かに有意義なものだった。
バーマント側の反攻作戦は、開始直前になって米側に察知されることになる。

引き揚げ始めて7時間半あまり、時刻は午後の5時を過ぎていた。
ワシントン大尉のチームは一列になって、周囲を警戒しながら森を進んでいた。
ふと、フランチェスカがワシントン大尉の袖を引っ張った。
「どうした?」
フランチェスカは真剣な表情で、彼に伝えた。
「何かに見られている感じがします。」
「本当か?」
「はい。10分前から異様な気配が、後ろからします。」
「どうする?」
「これからいいますから、よく」
フランチェスカは最後まで言おうとしたその時、後ろと右側方から強烈な殺気を感じた。
「全員伏せて!!」
すかさず彼女はそう叫んだ。彼女の声に反応した海兵隊員はすかさずその場に伏せた。
その瞬間、バシィッ!という電撃が走る音が聞こえ、その直後にパーン!という何かの破裂音が聞こえた。

木屑が辺りに飛び散った。
弾けとんだ太い枝が、海兵隊員のすぐ側に落ち、その海兵を仰天させる。
「一体なんだ!?」
ワシントン大尉は思わず喚いた。この偵察作戦が始まって初めての襲撃である。
「敵のようです!」
フランチェスカは即答した。その時、後ろから猛然と走りよってくる人影があった。
その人影は、黒い服装に身を包んだ男だった。
それも速いスピードだ。
海兵達がすかさず銃を向けようとするが、
(間に合わない!)
フランチェスカは、後ろの敵のスピードのほうが速いと確信した。
そうと決まったときには体が動いていた。
すぐに起き上がった彼女は、敵に近付きながら腰に吊ってある刃渡り24センチのナイフを抜いた。
黒服の敵が横薙ぎに剣を振るう。
胴体を一気に両断しかねない凄まじい剣撃だが、彼女はさっと屈伸の要領で下がり、剣撃を交わす。
その後、すぐにナイフで右わき腹を切りつけようとする。
敵も去るもので、開いた左手を使って、向かってくるナイフを持つ手を押さえた。
次の瞬間、腕を押さえられた彼女が跳躍した、と思った直後に下から繰り出された横蹴りが敵兵の肩にぶち当たる。
物凄い勢いで繰り出された蹴りに、敵はよろけた。
油断したのか、一瞬フランチェスカは敵に後ろをみせる格好になった。
経験を積んでいると見られる敵兵は、それを見逃さなかった。
すかさず右手の長剣で彼女を串刺しにしようと、肩の痛みに耐えながら長剣を突き出した。
しかし、その敵兵の顔面に何かがよぎる、と思わせられた時、彼女の後ろ回し蹴りが顔に叩き込まれていた。

この時、攻撃を諦めていなかった彼女は、わざと背を見せた後にいきなり姿勢を前にかがめて腰を振り、
強烈な左回し蹴りをお見舞いした。その時の彼女の姿勢は、傍目から見ても綺麗に斜め一直線に伸びていた。
ガシ!という音と共に、敵兵は大きく後ろに仰け反った。
敵兵の闘志は見事なもので、先の強烈な回し蹴りを受けてもまだ倒れない。
逆に話していない長剣を振りかざして切り付けてくる。
だが、先とは違って敵の動きは鈍かった。
フランチェスカは敵の剣撃を避けると、右の頬に左の拳を叩きつけ、よろけた隙に足払いを食らわせて、
敵兵をうつ伏せに倒した。
それでも起き上がろうとする敵兵に、持っていたナイフを心臓の位置に突き刺した。
黒ずくめの敵兵は、うっ、と唸るとそのままうずくまり、次第に力が抜けていった。
時間にしてわずか1分ほどである。
もう1人の敵兵は、パートナーがやられる様を見て、15メートルまで迫っていたのに途中で引き返し、逃げ始めた。
だが、その姿を確認した海兵隊員によって背後から銃撃を浴びて戦死した。
「こいつらは一体なんなんだ?」
起き上がったワシントン大尉は、うつ伏せの死体を見つめながら彼女に問うた。
「この敵兵は、バーマント軍の特殊部隊の兵です。暗殺術、諜報術にすぐれ、私達のような偵察チームを追跡する任務も行っています。
普通のヴァルレキュア兵では、彼らの熟達した体術についてこられずにやられる場合が多いです。」
「だが、君はあっさりと倒したじゃないか。それほど強そうには見えんな」
「いえ、今日はまぐれです。こういう敵に対しては、常に先手先手を取ることが必要です。でも、今日のようにうまく言ったのは初めてですね。」
フランチェスカは、荒れた息遣いを抑えながらそう言った。
彼女は布で、愛用のナイフについた血を拭き取っている。
ふと、彼女の左頬に切り傷があり、うっすらと血が流れていた。しかし、フランチェスカは気に留めていない。
「それでも、君の行動は見事だったよ。」
ワシントン大尉は、彼女の方をポンッと叩いた。

9月9日 午後8時 サイフェルバン
第5水陸両用軍団司令官であるホーランド・スミス中将は、渋い表情を浮かべながら作戦地図を睨んでいた。
作戦地図にはサイフェルバンの東の端と草原地帯、そして森林地帯が描かれている。
この地図は、オブザーバーの協力のもと、1週間ほどをかけて作られたものである。
その地図上に赤い駒と青い駒が置かれている。
青い駒には、サイフェルバン西端に配置されている第3海兵師団と、第4海兵師団、陸軍第27歩兵師団の駒が置かれている。
それに対峙するように、森林地帯にはバーマント軍の赤い駒が置かれている。
ちなみに大きな駒は1個師団を表している。米軍側は3個。
バーマント側は、なんと9個がそれぞれ距離を置いた場所に置かれている。
バーマント軍の駒は、ここ数日間の偵察で確認したその地域の敵戦力を統合した数を表したものだが、それでも米軍の数を上回っている。
参謀長であるハリー・シュミット少将がスミスに向けて言い始めていた。
「軍団長、偵察隊がこれまでに確認した敵勢力は、少なめに見積もっても8万~9万はいます。
それに、その位置は、3つの地域に固まっています。サイフェルバンより南西側、西側、北西側、
それぞれが距離3~6キロの間隔で布陣しています。この部隊は1週間前まではいませんでした。」
「それが、ここ1週間で敵兵力が爆発的に増えた、か。」
スミスは腕を組んで唸った。
「提案します。このサイフェルバンには陸軍航空隊、海兵隊航空隊の航空機がおります。
その航空機で、森の中の敵兵を一気に叩くのです。」
「いや、それは難しいと思います。」

この時、他の声がシュミットの意見に待ったをかけた。
それは、数日前に第5水陸両用軍団のオブザーバーに赴任した、ローグ・リンデルの声だった。
「確かに、航空機の爆弾で被害を与えることは可能です。しかし、エイレーンの森林は、
木々が暑く生い茂っており、また木自体も燃えにくい材質になっています。
5年前にエルフ族の狩り出しをバーマント軍が行った際、ワイバーン・ロード、
今では完全に退役した飛竜ですが、それを使った爆撃がありました。
その際、20発ほどの焼夷弾が森に投下されましたが、火は大して燃え広がらず、
5時間ほどで鎮火したようです。」
「と、言うことは、敵を草原地帯に引っ張り出してから叩くしかないのか。」
思わず、スミスは唸る。
「いくらなんでも、正気ではない。草原地帯に出張っていけば、多大な被害を出すのは分かると
思うのだが、バーマント軍の指揮官には冷静な判断能力が欠けているのか?」
スミスは、攻撃軍である東方軍集団が、皇帝に急かされていることを知らない。
もしも知っていたら、スミスはその場で罵詈雑言を撒き散らしていただろう。
しばらく考え抜いた末に、スミスはあることを考えた。
「こうしてはどうかな。まず、前線配備の第3、第4海兵師団、陸軍第27歩兵師団を
2キロほど草原地帯に前進させる。敵は我々が会戦を企図していると思って、
この3方向から一気に出てくるだろう。そして、大方の数が草原地帯に出張ったところで、
一斉に航空攻撃をかけ、雌雄を決する。」
スミスは指揮棒で3つの丸を描きながら、皆にそう説明した。
「この作戦はリスクが大きい。もし間違えれば、こちらが敵に包囲される恐れがある。
だが、敵は大軍だ。頭を使えば、勝てない相手ではない。私の考えとしては以上だ。」
スミスは、他に考えは無いか?と言って周りを見回した。幕僚達は誰もが黙っている。
実際、スミスのやり方のほうが、リスクはあるが見返りは大きい。
それに、こっちが一向に引っ込んだままであれば、相手も森林地帯から出てこない、という事も考えられる。
彼我の実力差をハッキリさせるためには、なるべく、大きな損害を今一度、敵に与える必要がある。
「では、防衛作戦に関しては、このやり方でやって行きたいと思う。それでいいかね?」
スミスがそう言うと、皆は納得したように頷いた。

9月9日 午前7時 
サイフェルバン北部にあるバーネガット飛行場。この飛行場が、にわかに喧騒さを増してきた。
エンジンの始動音が響き、轟音が飛行場に響き渡った。
海兵隊第121航空隊のF4Uコルセア戦闘機60機は、
緊急出動の命令を受けて、今しも飛行場から飛び立とうとしていた。
この20分前の午前6時40分、森林地帯から東3キロ方面を、進軍する大軍団を発見したとの報告が入った。
その報告を受けた各航空隊はすぐさま、航空機を発進させることにした。
その先駆けとなるのが、海兵隊のコルセア戦闘機隊であった。
アメリカ軍3個師団は、予定通り2キロ先に、ゆっくりと進軍中で、まもなく目標地点に到達する見込みである。
作戦の内容はこうである。まず、各航空隊ごとに大規模な航空攻撃を加えた後、
3個師団の後方で待機していたロングトム重砲や榴弾砲の一斉砲撃で敵をさらに弱める。
そして、敵に大損害を与えた後に3個師団がこのバーマント軍を包囲、殲滅する。というものである。
飛行場から次々に飛び立っていったコルセアの編隊は、中隊ごとに西に向かっていった。
第121航空隊の第1中隊は、午前7時15分に草原地帯に到達した。
米軍3個師団の西の向こうには、地を埋め尽くさんばかりのバーマント地上軍の大軍があった。

「こちらマックリー1、バーマント地上軍を確認した。現在高度1500、これより攻撃に移る。」
第1中隊の隊長であるスティーブン・クラーク少佐は無線機に向けてそう言った。
コルセア12機は、しばらく進んだ後、翼を翻してバーマント軍の大部隊めがけて突っ込んでいった。
この時、バーマント軍の前衛部隊から、何か巨大な人形のようなものが、速いスピードで米軍陣地に向かっているのが見えた。
「マックリーリーダーより、敵は何か人形のようなものを走らせている。第1中隊はこの不審なものを攻撃する!」
彼は知らなかったが、その人形はバーマント軍が保有する、陣地突破用のストーンゴーレムであった。
コルセアは2機ずつに分かれると、大量に放たれたストーンゴーレムに向かっていった。
体格は3メートルはあろうという巨大な石の人形が、時速20キロはあろうかというスピードで草原を疾走している。
数はざっと見ても60以上はいる。
「バーマント軍の奴らは、あの巨大な人形を陣地に突っ込ませ、味方を混乱させるつもりだな。」
クラーク少佐はそう呟いた。コルセアは670キロの猛スピードで、ストーンゴーレムの背後上空に迫っていた。
照準機に、そのごつごつした体が、徐々に大きくなってきた。
「だが、俺たちがそうはさせん!!」
距離が800メートルまで迫ったとき、少佐は発射ボタンを押した。
ダダダダダダダダ!というリズミカルな音と共に、両翼の12.7ミリ機銃6丁が吼えた。
無数の機銃弾が、ミシンを縫うように草原を駆け抜け、ストーンゴーレムに突き刺さった。
最初の命中弾は、頑丈なゴーレムの体に当たって砕け散るだけであった。
だが、銃弾の嵐は止まない。2連射、3連射と、6丁の12.7ミリ高速弾を無数に浴びては、
さしもの屈強なゴーレムといえど、耐え切れぬはずが無い。
次第に背中の窪みが深くなり、そこに新たな12.7ミリ機銃弾が容赦なく突っ込んでくる。

1発1発の威力ではどうしようもないが、無数に束ねられて発射された機銃弾の前には、
さしものゴーレムもついに屈した。
300発もの機銃弾を一箇所に手中して受けたゴーレムは、そこから次第にひびが広がり、
次の瞬間、自分の自重に耐え切れずに胴体上部から崩落した。
第1中隊の中には、ゴーレムめがけて、搭載してきた500ポンド爆弾を叩きつけるコルセアもいる。
ゴレームに向けて投下された500ポンド爆弾は、惜しくも外れて後ろで着弾、炸裂した。
猛烈な轟音と爆風に煽られ、ゴーレムは前のめりに倒された。
起き上がろうとするゴーレムに、2機1組のコルセアが容赦なく、12.7ミリ機銃弾を叩きつける。
頭、胴、足と、万遍無く機銃弾が突き刺さる。
頭部に集中した機銃弾が炸裂し、頭が吹き飛んでしまった。
魔道師の魔法通信を、頭から受けて動いていたゴーレムは、その役目を果たすことなくただの石の塊に成り下がった。
コルセア群は、歩兵部隊などには目もくれずに、ひたすらゴーレムを襲撃した。
1体、また1体と、次々にゴーレムは倒れつつある。
気がつく頃には、60対以上はあったゴーレムは、今では30体しかいなかった。
コルセア群は機銃弾が無くなるまで、執拗にゴーレムを攻撃し続けた。
第1中隊が弾切れで引き返していく頃には、第2、第3中隊のコルセアがゴーレムに襲い掛かった。
24機のコルセアは、10分ほどで搭載した爆弾と、機銃弾を浴びせてゴーレムの第1波攻撃を完全に撃滅した。
機銃弾に余裕のあるコルセアと、戦場に到着した第4、第5中隊はバーマント軍に襲い掛かった。

バーマント軍第8軍に属する前衛部隊の第89師団は、コルセアの編隊に襲われた。
第89師団は対空機関銃大隊を保有しており、3個中隊で編成されている。
1個中隊14丁、3個中隊42丁の機関銃がコルセアを迎え撃った。
第1中隊の3番機銃の11.2ミリ機銃を操作するレイックル騎士軍曹は、
味方に機銃弾を撃ち込みながら遠ざかろうとするコルセアめがけて引き金を引いた。
ガガガガガガガガ!という音を立てて機銃が振動し、銃弾がコルセアに飛んでいく。
曳光弾が何発か吸い込まれたが、コルセアは平気そうな態度で飛びぬけていく。
そして反転してまた向かってきた。
「なんて頑丈な奴なんだ!」
レイックル軍曹は忌々しげに喚いた。ドーン!という爆発音が背後から聞こえた。
コルセアが投下した爆弾が味方の中に落下、炸裂して、何人かのバーマント兵が吹き飛ばされた。
グオオオーー!というエンジンの唸り声を上げて、反転したコルセアがレックル軍曹めがけて飛んでくる。
その飛空挺は特徴のある姿をしていた。その極端に湾曲した主翼は、どこかまがまがしさを感じる。
まるで悪魔の化身のようだ。レイックルはそう思いながらも、引き金を引いた。
振動と共に曳光弾が、コルセアに注がれる。
コルセアもまた、両翼からマズルフラッシュを焚いて無数の弾丸を叩きつけてきた。
「負けるか畜生!貴様と刺し違えてでも落としてやる!!」
彼は自分を鼓舞するようにそう喚くと、さらに引き金を引いた。一瞬、コルセアの翼とエンジンに曳光弾が吸い込まれたと思った。
その直後、ミシンを縫うようにして進んできた機銃弾の弾着が彼の体を薙ぎ払おうとした。
レイックルは、機銃弾の弾着に間があることを瞬時にみつけ、その間に入った。
か細い機銃弾が両方に3列ずつ突き刺さり、草と土を跳ね上げる。生きた心地がしなかった。
轟音が過ぎ去った後、レイックルは後ろを振り返った。彼と相対したコルセアは、機首部分から黒煙を吹き上げ、急激に高度を下げている。
そして右500メートルほどの草原に墜落した。ドカーン!という轟音と共に猛烈な爆炎が沸き起こった。

第89師団がコルセアにたかられている頃、第2波のストーンゴーレム、100体が米軍陣地に向かっていた。
この時、グリンスウォルド飛行場を発進したP-47サンダーボルトの編隊と、
A-20ハボックの編隊が上空に現れた。
A-20ハボックと、サンダーボルトは、低空に降り立つとストーンゴーレムの集団に襲い掛かった。
2機1組で、ゴーレム1体を銃撃する。
たちまち数百発以上の高速弾を叩きつけられ、頭部が吹き飛び、胴体に大きな亀裂が走り、足が叩き壊されて転倒する。
中には500ポンド爆弾の直撃を受けて、上半身が木っ端微塵に吹き飛ばされたゴーレムもいた。
米軍陣地から5キロまで迫ったゴーレムは30体以上を数えた。
5キロ圏内に入った瞬間、後方の野砲陣地がついに火を噴いた。
M1ロングトム155ミリ榴弾砲、105ミリ榴弾砲、計100門以上が一斉に射撃を開始した。
数秒後、米軍陣地まで5キロを切ったストーンゴーレムの集団に、ドカドカと砲弾が落下してきた。
盛大な爆炎と土煙を吹き上げる。
無数の爆炎が吹き上がり、ストーンゴーレムの集団は完全に覆い隠されてしまった。
そこに新たな砲弾が叩きつけられ、一層その場の視界を悪くした。
3斉射ほど放ったところで榴弾砲群は砲撃を止めた。
300発以上の砲弾の集中砲撃を受けたストーンゴーレムの集団は、わずか12体のみが前進してくる。
残りのゴーレムは、猛烈な砲弾幕に絡め取られて破壊された。
その生き残りの12体にも、榴弾砲陣地から新たな斉射が加えられた。
一旦、煙が晴れかけた草原に、またもや猛烈な爆炎と土煙が立ち上がった。

「どうする?わが第58任務部隊も艦載機を出したほうがいいと思うかね?」
第5艦隊旗艦、インディアナポリスの作戦室で、スプルーアンス大将は幕僚らに質問した。
偵察部隊の報告では、敵バーマント軍は、約10万以上の大兵力でサイフェルバンに向かっているという。
既に戦闘は始まっている。情報によれば、バーマント軍は巨大な石造りの人形、
レイムから聞いたところによれば、ストーンゴーレムと呼ばれるものだ。
それをバーマント軍はフル投入してきているという。
このストーンゴーレムは陣地突破用の兵器で、バーマント軍のほとんどの師団に装備されているという。
前回のサイフェルバン戦では、ゴーレムは全く現れなかったが、前回バーマント軍がゴーレムを投入できなかった理由は、
事前に破壊されたためである。
サイフェルバン侵攻前に、第58任務部隊は述べ1000機にも渡る執拗な航空攻撃を行っている。
その侵攻前の空襲時に、偶然巨大な格納庫らしき建物をエンタープライズの攻撃隊が発見し、爆弾と機銃掃射を仕掛けて破壊した。
この建物には、サイフェルバン方面軍のゴーレム180体が保管されていたが、
この建物に1000ポンド爆弾18発、500ポンド爆弾28発がぶち込まれた上に徹底した機銃掃射を受けて、完膚なきまで叩き潰された。
そのことから、サイフェルバンのバーマント軍はゴーレムを使った作戦が出来なかったのである。

今回の防衛戦で、米軍は初めて生のゴーレムと相対しているのである。
現在、第58任務部隊は、全艦が沖に遊弋している。これは万が一の自体を避けるためである。
スプルーアンスの言葉に、兵站参謀のバートン・ビックス大佐が反論した。
「長官、現在我が第58任務部隊に用意されている爆弾はあと7会戦分しか残っておりません。
もし、この防衛戦で爆弾を消費したら、以降の作戦に大きな支障を来たします。」
あと7会戦分、という意味は、機動部隊の全母艦に爆弾を積んで、作戦行動を行える回数があと7回しかないという意味である。
この7回を過ぎれば、機動部隊は空襲作戦が出来なくなってしまう。
「爆弾が底をつけば、あとはろくに使っていない魚雷だけとなり、母艦群はただの浮かべる鉄の箱に成り下がります。」
「兵站参謀、私は何も反復攻撃を行うとは言っていない。私が言うには、まず、機動部隊の全艦爆、艦功に爆装を施し、
敵地上部隊の本陣を一気に叩き潰したいのだ。確かに敵軍は強大だ。だが、機動部隊の攻撃隊を、一度だけでも良いから、
海兵隊、陸軍の支援に当て、敵軍に大損害を与えたいのだ。」
「長官、攻撃は1度だけ、でよろしいのですか?」
ビッグス大佐は心配そうな顔つきで彼の顔を眺める。
「いや、1度では流石に効果は薄いだろう、念のために2度出す。」
スプルーアンスは意を決した表情で頷く。
「参謀長、レキシントンのミッチャー中将に電文を送れ。第58任務部隊はこれより地上部隊の支援を行われたし。
ただし、今回は弾薬の節約のため、艦載機1機につき出撃は2度のみ、以上だ」
デイビス少将は命令を復唱し、通信仕官に電文の内容を伝えて送らせた。

サイフェルバン方面の地図のAA

  ミ   ミ           │                 ヽ 、
ミ  ミ ミ 森林地帯      │ バーネガット飛行場         ヾ
ミ  ミ ミ/           │    。                ヽ
ミ  ミ ミ             │                      ヽ
ミ  ミ ミ             │                   精油所丶
ミ  ミ              │9月始めまでの            。 ヽ
ミ ミ  ミ            │米軍進出線                ヽ
ミ ミ ミ             │                       ヽ
  ミ  ミ            │                         ヽ
  ミ  ミ            │         サイフェルバン       ノ
  ミ  ミ            │                        イ
  ミ  ミ            │                       丿
  ミ ミ             │                      ノ
 ミ   ミ           │       グリンスウォルド飛行場     )
  ミ  ミ            ヽ丶丶      。             ヽ
 ミ   ミ           ヽ    丶(                  イ
 ミ   ミ          ゝ      (                。 ソ
 ミ   ミ         ヾ        ゝヽ^丶         ヽヽ \
 ミ   ミ        ヽ             丶        ヾ    サイフェルバン港
 ミ           ゝ              丶丶丶丶ヽ  丶
                                 丶γ


サイフェルバン防衛戦 戦況図                                        第3海兵師団○


  • →バーマント軍第4軍     

             ストーンゴーレム突入部隊第1波 ーーーーーーー×(全滅) 
             ---------------------→ <―海兵隊航空隊戦爆連合48機        第27歩兵師団○

  • →バーマント軍第8軍<-----海兵隊航空隊戦爆連合12機




              ストーンゴーレム突入部隊第2波
              ---------------------------→ <陸軍航空隊戦爆連合70機   
                                                   ←
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