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  • 虎は伏す、そして──

児童文庫ロワ

虎は伏す、そして──

最終更新:2025年05月12日 01:59

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だれでも歓迎! 編集
「──でもできることはやったと思うぜ? マメちゃんは立派だよなあ、隼人?」
「…………え、ああ、そうだな。」
「おいおいお前まで気にしすぎだって。あんだけ燃えたら消防士だって逃げ出すだろ。だよなレナ?」
「…………あっ、うん、そうかな? かな?」
「そうだよ、そうに決まってる! いやそれにしても鱗滝さんどこまで行ってんだぜんぜん追いつかねえな。ていうか、足めちゃくちゃ速くない? なあ猛士?」
「ああ……」

 柿沼直樹は1人で話し続けていた。
 火災現場で出会った双葉マメと利根猛士と共に歩き出してからずっと、チームには重たい空気が流れている。デスゲームなので当然と言えば当然なのだが、1人2人ならともかく3人4人と増えられると、さすがの直樹もしょげてくる。まだ全員同世代だからマシだが、これが大人にまで伝播されたら溜まったものではない。
 もとより直樹は能天気に片足突っ込んでいる明るさである。楽観的な陽気さはここでも変わらず、たとえガタイのいい怪物と遭遇しても、そんな存在と殺し合うことよりも、そんな存在から助けてくれた人と助かった人がいることに喜びを感じる人間だ。
 まあ、さすがに病院が燃えているのを見たときは言葉を失くしたのだが。しかし怪我人がいると聞かされた時のマメの絶望的な表情に比べれば、この5人の子供の中では一番動揺は小さかった。それは怪我をしている日向冬樹ともそれを看ている有星アキノリとも知り合いでないから、というだけではない。それなら他の4人も同様だし、それぞれに気がかりなことを抱えている彼らよりもショックは大きかったはずだ。
 その理由は彼の育った環境にある。直樹の家は医者だ。産婦人科の開業医だ。だから町医者の息子にしては、死というものが身近だった。
 どうあっても助けられない命があることを直樹は知っている。産まれてくることを望まれない命も、望まれていても別の誰かのために犠牲にせざるをえない命も、時にはある。他ならない直樹も、妊娠した先輩を助けるために、自分が妊娠させたと嘘をついて堕胎させようとしたことがある。
 命は平等だが公平ではない。死ぬときは死ぬし生きるときは生きるのだ。それは元の東京でもこのデスゲームのステージでも変わらない。いや、なおのことあからさまだ。こんな場所に医者がいるとは思えないのだ。鱗滝は必死に病院を探していたが、たとえ見つかったとして、たとえ鱗滝に救急救命の知識があったとして、助からない可能性が高いだろうとずっと思っていた。
 だが彼が燃える病院から離れて怪我人の元へ向かうと言い出したときは少し驚いた。たしかに助からないだろうとは思う。だが、それでもという気持ちがある。自分でもバカでガキ臭いとは思うが、そう言ったバカさとガキ臭さは決して嫌いではない、はっきりいえば好きなものだ。だから鱗滝も同じタイプの人間だと思っていたが、しかし直樹が思うよりも大人だったのだろうか。
 このチームは鱗滝の方針に従って動いてきた。どこに何があって誰がいるかもわからないので、人を助けるというわかりやすい目標を持つ彼に着いてきていた。それに責任を感じたのだろうか、そんなこと気にせずわがままになってもいいのに、そんなふうに思う。

(どうせならかわい子ちゃんのわがままに振り回されたいけどな。にしても足速いな、天狗の面着けてるからか? なんかスピード上がる効果とかあんのそれ?)
「左之。ここを頼む。」
「ああ。行ってこい。」

 鱗滝と別れてからどれくらい歩いただろうか。突然最後尾を歩いていた緋村剣心がそう言うと直樹を追い抜いて小走りで、しかしマラソンランナーのような軽やかさで駆け出した。先頭を歩いていた相楽左之助も以心伝心といった感じで送り出している。いったいなんだ?そう思った矢先、横を歩いていた竜宮レナがボソリと呟いた。

「血の臭いがする。」
「血ぃ? マジで?」
「本当だ……」

 レナに続いて鑑隼人も言う。マジかよこいつらすっげー鼻効くなと、血の臭いうんぬんより先にそっちが気になった。
 しかしそんな軽口とは裏腹に、鉛を飲み込んだような重さを感じた。本当に鉛を飲んだ試しなんか無いし、そもそも鉛がどんな物かよくピンときてはいないが、この胃の重さはヤバいなと感じざるをえない。
 そもそもの話、今こうして直樹たちが怪我をした冬樹の元へ向かっているのに、当の鱗滝本人がいないのは、彼が数分前に「銃声がした」と言い出して駆け出したからだ。

「やはり今のは銃声か。かなり遠かったようだが。」
「霧で音の通りが悪いのだろう。ここから冬樹のいる家まで程近い。剣心、追ってこれるな。」
「……ああ。ここは拙者たちに任せるでござる。」
「有り難い。」

 それだけ言うと鱗滝は駆け出していった。「物音はしたけどよくわかったな」と左之助がこぼしたが、そもそも直樹には全く聞こえなかった。強い男は耳まで強いのだろうか。そんなことを考えつつ、沈みがちな空気をなんとかしようと喋り続けていたが、それまで付き合ってくれていた左之助まで緊張した空気をまといだし、結局直樹1人で話し続けてここまで来た。
 そして歩くこと数分、鱗滝に続いて今度は剣心まで走って行った。となるとすることは1つ。追うのだ。

「な! お前待ちやがれ!」
「やっぱバレっか。」
「あったりまえだろ!」

 急に黙って最後尾まで行き、道を一本入って追おうとしたが即バレた。だがこれで2人きりだ。

「死んだか?」

 小声で問いかける直樹に、胸ぐらを掴んで説教しようとしていた左之助の口が止まる。「チっ」と舌打ちすると乱暴に離された。

「俺たちを気づかってんだろうけど、それ、逆効果だと思うぜ。ここがマジにデスゲームなら、いつかは死体と出くわすだろ。今見えなくしたって、いつか必ずな。」
「わかったような口ききやがって。」

 呆れたように、しかし勢い無く言う左之助からは先程までの覇気はない。代わりに鉄の冷たさを感じさせる怜悧な雰囲気がある。

「あいつだってわかってるさ。それでも見せらんねえかもしんねえから、こうしたんだ。」
「そんなにひどいのか?」
「さあな、血の臭いはかなり遠くまでするが、この霧なのにそんだけするってことは……」

 足音が聞こえてきて、左之助はまた胸ぐらを掴むと直樹を立ち上がらせる。

「とにかく勝手に動くな!」
「いってえ!」

 最大限加減した、それでいて的確に脳天をつく拳骨に直樹が悶えたタイミングで、心配そうな顔で手榴弾を構えている隼人が、家の角から顔を出す。「コイツがフラフラしないように見張ってろ」と左之助に振られた彼は、困惑した様子ながらも頷いた。

『いつかは死体と出くわすだろ。今見えなくしたって、いつか必ずな。』
(わかってるっての。)

 子供に見せられない死体も、この先見ることがあるかもしれない。今こうしていることも、単なる剣心の自己満足かもしれない。それでも止める気は無いと思い直して、左之助はもと来た道を行くと剣心を待った。
 剣心が帰ってきたのはそれからすぐのことだった。
 そして直樹たちが冬樹とアキノリの死体と、新たな参加者と出会うのも、またすぐのことだった。



 戦々恐々。
 それが、鈴鬼の心境だ。
 禍福は糾える縄の如しと言うが、今の自分は幸運と不運のどちらにいるのだろうか。
 殺し合いを強制された不運、天照和子という協力者を得られた幸運、謎の白髪の殺人鬼の少女を目撃した不運、その少女から逃げ延びて彼女を撃退する正義の味方と出会えた幸運、その正義の味方たちの奮戦虚しく命を落とした子供たちという不運、そして彼らの仲間と合流できたという幸運。
 上がったと思えば下げられ、下がったと思えば上げられる。激しいアップダウンはジェットコースターのようで、1人ではろくに動けない鈴鬼は翻弄されるしかない。

『強くなれる理由を知った――』
「6時か。」

 首輪から、スマホから、カーステレオから流れ出す紅蓮花に、鈴鬼をポケットに入れる和子はよく通る声で呟くと、スマホの画面を鈴鬼にも見えるように持った。
 目下の問題は、2つあった。
 1つは鱗滝と彼が助けた近藤勇の2名が重傷を負っていたことだ。特に近藤は左目を失明しただけでなく左脇腹、左肩、左太腿の4ヶ所の銃創と、臀部を中心とする背面の10数ヶ所に手榴弾の破片を受けていた。幸い神経や大きな血管は無事なようだが、背骨に金属片が突き刺さっているのを放っておけるわけがない。鱗滝も同様で、こちらは数え切れない程の破片が同じように背中に刺さっている。なぜこれでなんの傷も受けていないかの如く動けるのかとんとわからない。鬼の鈴鬼が言うのもなんだが人間離れしている。しかしそんな彼らでも出血がこのまま続けば死に至るだろう。
 もう1つの問題は、先程の少女が再度襲撃をかけてくるかもしれないことだ。和子が近藤たちと話しているところに現れた時代錯誤な侍、剣心。そして彼が少しして連れてきた左之助と子供たち。和子を入れて6人もの子供が、戦えない人間がここにいる。たいして万全に動けて戦える大人は剣心と左之助の2人、近藤と鱗滝も戦えるだろうが、あの怪我で戦うということは先が長くないことを意味する。なにより、超人的な侍が4人いようが40人いようが、回転式機関砲1つあれば守るべき存在を守り切るのは困難なのだ。それより連射が早くてしかも手軽に撃てるものがそこらじゅうに落ちているこのバトルフィールドでは、剣で守れるものなどたかが知れている。
 ゆえに、急いで離れる必要性があった。徒歩で移動するか車で移動するかで一悶着あったが、車ごと撃たれる可能性を考えても徒歩よりはマシという話になって、近くの民家にあったワンボックスカーを使うこととなる。和子含めて歩き疲れて小休止がほしい人間も多く、また歩いていいわけのない怪我を負っている人間もいる。いざという時に一番動ける剣心と左之助がワンボックスの上へと登ったのを最後に、アキノリと冬樹の遺体を残して直樹はアクセルを踏み込んだ。
 さて、次はどこに行くかだったが、病院を目指すのは当然として、これは1つの目安があった。即ち、火災地帯を突っ切る。この近辺に使える病院が無いことは他ならぬ鱗滝本人が知っている。それならまだ行っていない火事が拡大しているエリアの向こう側へ向かうしかない。また、火災によって鬼たちの動きが制限されるとも鱗滝は読んでいた。鬼には火など効きはしないが、あの鬼は人間と手を組んでいた。それならば、煙に巻かれるあの場所を生身で征くのは無理だ、と。
 そうして直樹がおっかなびっくり運転し、比較的火の手が回っていない、それでいて煙で燻されている道路を突っ切った先で、また別の煙が登るのを見たところで、行き先が決まった。
 他の場所でも火事が起きている。つまり負傷した人間がいる可能性がある。自身も怪我をしている近藤たちはそう主張し、車は炎を背後に黒ぐろとした煙の火元へと向かう。
 そうして火元の学校が見えたこの時、時間は6時ちょうど。はじめにあの家から離れて他の民家で改めて小休止と手当をしたことと、直樹が何度も壁や電信柱に擦ったこと、見つけた歯医者で応急手当をしたのもあって、随分とかかったところでやっと見つけたその場所に突入する寸前に、放送が始まった。


──秋野真月

(──)

 まず息を呑んだのは鈴鬼だ。呼ばれ始めて3人目、『あ』だけでそんなに呼ばれないだろうと一瞬安心しかけて、直ぐにあのピンクのフリフリドレスがトレードマークの少女の死を告げられた。五十音順ならばそうだろうが、それにしても、こんなに簡単に、こうもあっさり呼ばれるなど、鈴鬼は慟哭すべきか怒りの声を上げるべきかもわからず、ただ行き先のない感情をポケットの中で抱えた。

──明智光秀

(やっぱり、あの方は本物の……)

 次に顔が曇ったのは和子だ。件の鬼と組んでいる少女が蹴り殺したおじさん、それが彼女の敬愛する戦国武将となれば、歴女として嘆かずにはいられない。せっかく本物の生きている武将に出会えたのに、殺し合いに巻き込まれたことすら一時忘れるほどの興奮だったのに、口惜しくてたまらない。

──天野司郎

「は? 天野? おい嘘だろ。」

 今までなんとかムードを変えようとしていた直樹は、それまで出したことの無い低い声が出た。なんだかんだ戦国武将の名前が呼ばれたりしたためいまいちリアリティを感じずにいれたのに、突然自分の胸によくわからない衝動を覚えた。天野が死んだ、たしかに、あいつも危なっかしいところはある、仲間の中ならまあ死ぬかもしれない1人ではある。だが実際に死者として名前を呼ばれることなんてないと、直樹は当たり前に思っていた。それが否定されれば、どんな風に振る舞えばいいのかわからない。

──有星アキノリ

(すまぬ……)

 天狗の面の下で、鱗滝の顔が曇る。隣の近藤も同様だ。彼の判断が違えば、少なくともアキノリが死ぬことはなかった。もっと思慮深ければ、多少戦う力があろうとも怪我人を任せるようなことはしなかった。そう悔いても失われた命が戻ってくるはずもなく。ただ己の無様さを責めることしかできない。だが果たして、それは近藤よりもマシかもしれない。任されておきながら、せっかく無事に合流しておきながら、目を離した隙にむざむざ殺されていたのだから。ほんの数メートル、壁を1枚か2枚挟んだだけのところで、無残にもアキノリは殺された。それだけでなく、治療した冬樹まで撃ち殺された。近藤が守ろうとした子供は僅かな間に近藤のすぐ側で命を落とした。己の傷の痛みも飛ぶほどに、やり場のない感情が体を埋める。

──小黒健二

(しかも小黒、小黒お前も──)

 更に仲間の名前が呼ばれ、直樹は麻痺しかけていた頭を無理やり覚醒させられる。小黒は割と慎重というか仲間内では常識がある。普通に比べれば型破りなんだろうが、そうそうドジを踏む奴ではない。その小黒まで呼ばれて、直樹はなんの意味もなく車の中をキョロキョロと見回した。

──織田信長

(……え? 信長様……?)

 光秀に続いて呼ばれた名前に、和子は固まる。この間信長の霊に出会い言葉を交わした、あの信長のことだろうか? にわかには信じられない。彼は死んでいたのだ、死者として名前が呼ばれるわけがない、それとも光秀の如くタイムスリップしてきたのか? それとも、単に同姓同名か?

──菊地英治

「菊地までかよ!?」

 ついに直樹から言葉が出た。これで3人目。3人目だ。たった6時間で仲間が3人死んだ。しかもたちの悪いことに、菊地の行動力なら危ない橋を渡るのが簡単に想像できる。だがそれでも菊地なら、あの菊地なら悪運強く切り抜けているだろうという謎の信頼がある。もしかして首輪を今頃外してたりしてるんじゃないかと思っていたために、名前が呼ばれた事実をどう受け止めればいいかわからない。

──蜘蛛の鬼(兄)
──蜘蛛の鬼(父)

 鬼という呼び方に鈴鬼と鱗滝が反応する。この呼称では判断材料が乏しくなんとも考察しようがないが、鬼が複数参加者としていることはそれぞれ肝に銘じた。

──定春

 万事屋の犬の名前と同じだと近藤は気づいた。別人かもしれないが、下の名前だというのが印象に残る。犬まで参加者にしているとは思わないが、もしそうならアイツらは悲しむだろうなと思った。

──仙川文子

 五十音順だからそろそろだと思っていたが、いざ本当に呼ばれると猛士は身を硬くした。自分が殺した人間の名前を改めて呼ばれると冷静さを装うのは難しい。しかしそれでもやることは生き残ること、そのためなら殺してやるという気概は持ち続けなければならない。

──大富豪のカラ松氏

 ようやくタ行かと剣心は渋い顔になる。名前も気になるが、あまりに死者が多い。6時間という短さを考えると尋常ではない。この事実から相当数の人斬りが参加者とさせられていると読む。

──チョロ松
──チョロ松警部

 同じ名前が2回呼ばれた。メモをとっていたマメが聞き間違いか言い間違いかと思ったが、訂正もないのでそのまま書く。人数も呼ばれている名前もおかしいが、犯人からようやく得られた情報だ、マメ本人は推理とかは苦手だが自分より賢い人を助けられるようにメモを続ける。

──手鬼
──富竹ジロウ
──なごみ探偵のおそ松

(富竹さん。)

 放送内容そのものを疑っているレナは、知った名前に驚いた。先からやたら鬼の名前が呼ばれているし、松の名前が呼ばれている。何かの暗号かと思うほどにリアリティのなさを感じるが、そこに突然知り合いの名前を呼ばれると考察も困るものだ。

──日向冬樹

 ついに呼ばれたその名前に、近藤の、そして鱗滝の心がざわつく。彼の頭を撃ち抜かれた死体の顔が、自然と2人のま豚の裏にこびりつく。後悔は先に立たず、今更できることなど全く無いというのに。

──松野一松
──松野十四松
──松野チョロ松
──水沢光矢

 同じ苗字の名前がまた続き、隼人は手を固く握りしめる。頼む、呼ばれないでくれ。そう願いながら聞こえてきた名前に、手のひらに爪が食い込んだ。ついにここに来て知っている名前が呼ばれたこと、そしてそれが、パセリではなかったことに、安堵と絶望が同時に襲う。呼ばれてしまった、光矢でも呼ばれてしまうのか、この戦場では。呼ばれなかった、パセリはついに呼ばれなかった、彼女はまだ生きている、あるいは、そもそもここにはいない。

 あまりに、あまりに多くの名前が呼ばれた。その数81名。その中に知り合いの名前がいないのは剣心と左之助のみである。
 車の中、アイドリングの音だけが響く。放送が始まって一時停止したが、再び動き出す気配は欠片もない。
 ギっと音を立てて直樹はキーを回したエンジンが止まり一定の間隔で体を揺らす振動も無くなり、沈黙と静寂が車内を占める。それを嫌うように直樹は頭を振ると、トントンと人差し指をハンドルに叩きながら一言言った。「どう思う?」と。

「俺バカだからわかんねえんだけどさ……チョロマツって、人の名前なのかな。」
「……犬とかの名前じゃないかな。ヒグマも呼ばれてたし。」
「いや動物と殺し合わせるっておかしくないか?」
「いや、そうとも言えねえ。定春ってのは、俺の知り合いの飼い犬の名前と同じなんだ。それに人と動物を殺し合わせる見世物も昔はあったっていうじゃねえか。」
「いやでもさ……松野チョロマツって呼ばれてたし、同じ苗字の人何人も死んでるし、なんか今の放送おかしくないか。」

 直樹の言葉に、マメも近藤も何も言えなくなる。見かねたのか鱗滝が「わざわざ殺し合わせている者が、嘘を言って信用を落とすようなことはしまい」と言うが。

「でもさ……チョロマツだぜ?」

 そう直樹が再度言うと、車内には再び重苦しい空気が満ちた。車体が揺れて左之助がドアを開けるまで誰も喋らない。

「おい、こんな道っぱたでいつまでちんたらしてんだ。とっとと学校入ろうぜ。」
「ああ……でもさ左之助さん。」
「でももクソもねえ。あんなん確かめようがねえんだし考えてもきりがねえだろ。後にしろ後にしろ。」
「ここで考えるよりは目的地に着いてから考えたほうが落ち着いてできるでござろう。」

 続けて剣心にまでそう言われると、直樹もしぶしぶ頷いた。たしかに考えようと思えば時間はいくらでも掛かりそうで、だったら数分もなく着くであろう学校で腰を据えて考えたほうがいい。だがそれでも引っかかるものを感じざるをえない。
 剣心は左之助と視線を交わすと、屋根には戻らず徒歩で車の前を先行した。本音を言えば、剣心は直ぐに学校に向かうべきではなく、可能ならここで直樹たちには待ってもらいその間に単独で伺ってくるのが望ましいと思う。鱗滝と合流した時のようにそうしないのは、左之助1人に車を守らせるのが不安が残るというだけでなく、このまま彼らが移動しないことを選んでしまいかねないからだ。
 幸運にも剣心も左之助も、親しい者の名前は呼ばれなかった。アキノリたちにしても顔を死体になってから知った間柄で、それで感傷に浸るようなことはない。このチームの中で最もドライにことを受け止めている左之助から見ると、車内の空気は最悪だった。彼らはこのままじゃ動けなくなる。知り合いが死ぬはその情報が信用できないはでは、どうしても頭はそれに向かう。攻撃されれば逃げ場の無い車の中で。
 足を止めた騎兵は良い的である。騎馬武者など廃れて久しい幕末とはいえ、馬というのは補給や兵站にも重宝されていたことに変わりはない。その時代に生きていた剣心などからすると、こんな大きなものが止まっているなど炸裂弾の1つでも投げれば大勢殺せる絶好の機会であり危機だ。というより、剣心ならば忍び寄って車の外壁ごと斬鉄して内部の人間を殺傷できる。彼と同レベルの猛者ならば走る馬車に走って追いつき中の人間を斬り殺せさえするのだ、止まっていて身動きできないほど大勢乗っている車など、戦場ではありえないものだ。
 早足で進む剣心を追い、ノロノロと直樹は車を進ませる。それでもだんだんと距離が開いてしまい、剣心は期せずして先行する形になった。ペースを落とすか?そう考えたが、ますます直樹が遅くなりそうな上に、偵察できるのもそれはそれで良しとそのまま駆ける。
 そして校門に差し掛かって、剣心はより一層足を早めた。遠くから見えてはいたが、その正体がようやくわかった。熊だ、熊の死体だ。ヒグマが放送で呼ばれていたが、もしやこれは本当にヒグマそのものかもしれない。いくらなんでも渾名でもなんでもなくヒグマが参加者とはさすがに思わなかったがこうして死んでいるのだから信じざるをえない。そしてもう1つ気になったことがある。その死体に刀傷のようなものが刻まれているのだ。

「止まれ! 拙者は殺し合いに乗っていない!」

 突如として感じた殺気に、剣心は足を止め叫んだ。これまで誰かに見られている感覚は無かった。視線を感じた瞬間に、武器を向けられた気配を覚えた。相手は殺気だっていて、そして手練では無いことがわかった。
 素早く電信柱の陰に隠れ、振り返る。同じように左之助も隠れ、後ろの車に止まるよう合図を送っていた。剣心よりも車のほうが目立つだろうに、現れた子供たちは銃口を剣心へ向け、次に左之助に車にと慌ただしく動かした。明らかに戦い慣れていない。
 だがこれは厄介だと思った。数が多い。銃を向けてきたのが5名ほど、そこに10名ほど校門近くから現れ、更にその後ろから軽く20名近くの銃を持った子供たちが出てくる。彼らは明らかに興奮していて、前の人間に当たりかねない位置から剣心たちに向けて銃を構えている者すらいた。

(まずいな、落ち着かせなければ、俺はともかく同士討ちが起こる。)
「こらお前はまた!」

 表情は崩さず、しかし冷や汗をかく思いで悩む剣心の後ろから左之助の声と足音が聞こえる。何事かと振り返ると、直樹が車から降りてこちらへと駆けていた。そして止める間もなく叫んだ。

「安永! 安永か!?」

 誰何する声に、子どもたちの中から1人の少年が出てくる。年は操と同じぐらいかと剣心がのんきに思ったのは、彼が銃を構えていなかったからだ。

「柿沼! 本物か!」
「俺は世界に一つだけのカッキーだよ!」
「たぶん本物だけど聞くぞ! お前廃工場でなにしてた!」
「誘拐されてた!」
「みんな! アイツは本物の柿沼だ! 俺の知り合いだ!」
「お前俺のことネタにしてただろ!」

 距離をとって会話していた2人が駆け寄る。ハイタッチすると、それぞれ後ろに向かって手招きした。
 共通の知り合いというものは、この場では得難いものだ。少なくとも全く知らない人間よりかは知り合いの知り合いなら信用しやすいのが人の心である。一斉に安堵の雰囲気になった子どもたちを見て、剣心もため息をつく。一触即発だったが、どうやら穏便に済みそうだ。その考えが甘いことを剣心はすぐに思い知ることになる。

「どうしたんだよ本物かって。ドッペルゲンガーでも見たか?」
「放送聞いてなかったのかよ、同じ名前呼ばれてたじゃねえか。お前が俺の知ってる柿沼か確かめねえとな。」
「お前どうした? スベってんぞ?」
「ギャグで言ってんじゃねえ、そう思ってる奴も俺らのグループにはいるんだ。」
「だからさっきのか? そんなことまで考えなきゃなんねえって何が起きたんだよ。」
「2人殺された。放送の後にな。」
「……え?」

 苦々しい顔で言った安永と、言葉を失くした直樹。それを傍から見ている剣心は、鋭い目を学校へと向けた。
 放送が終わってから今まで10分もない。その間に2人。銃声などは聞こえてこなかったので、刀や素手で殺している。放送について考えるよりも、そうしている他の参加者を殺すことを選ぶ、危険な思考回路をした人間がいる。よりによって怪我人を直せる場所を探して目的地についたと思ったらこれか。

「待て待て、俺らじゃないからな。」
「わかってる、でもタイミングが悪かった。まだみんな疑ってる。」
「どうすれば信じてもらえる?」
「今はやめとけ、みんな放送でパニックだ。落ち着くまでどっか近くにいろ。」
「いやそれじゃだめだ、大怪我してる人が2人もいるんだよ。なあ、そっちに医者とかいないか?」
「看護師ならいるけど、こっちも何人も怪我してて手が足りてないらしい。病院とか知らないよな。」
「火事で燃えちまったよ。ほら、あっちの。」
「何だあれメチャクチャ煙出てんぞ。」
「うわマジだ何だあれさっきはもっと小さかったぞ。」

 結局その後、鱗滝と近藤の2名が徒歩で安永と柿沼と共に学校へ向かうこととなった。殺人事件が起こっているところに避難するなどありえないからだが、鱗滝たちはむしろだからこそ率先して向かった。怪我人ならば子どもたちを刺激せずに加われて見守れるからだ。剣心たちはすぐ近くの雑居ビルを拠点とすることにしたのだが、このとき彼は知らなかった。彼に復讐を誓う者たちが、その1つ隣のビルをつい先程まで拠点にしていたことを。



『強くなれる理由を知った――』

 自分の首から突如として歌声が流れ出して、雪代縁はうたた寝から飛び起きた。そのまま闇雲に何度か刀を振り回し、それが原理はわからないが首輪からしていると知り、ようやく落ち着いた。
 ヘリの墜落を耐え、離脱して安全そうなビルに転がり込んでからしばらくたった。縁は少しでも傷を治そうと適当な床に腰を下ろして仮眠をとっていたが、その状態でも当然近づくものがいれば勘づく。故に全く人の気配も無く鳴り出した怪音には大いに驚いたが、それが人ならざるものからだとわかると一転して落ち着いた。
 首輪や縁にはわからないがパソコンなどからは謎の曲をバックに2人の人物の声が聞こえてくる。日本語と少々丁寧すぎる中国語が同時に流れてくるが、既に縁の関心は無かった。よくわからない機械が今更増えようと、そもそも天候からしてよくわからないので思うものもない。だが死者の名前が読み上げられるとなると、さすがの縁もメモをとることとした。緋村抜刀斎の縁者の名前が呼ばれていればそれで奴を煽るためである。
 聞いているうちにやけに古風な中国語も聞こえるようになったが、早い話、縁が期待した名前は呼ばれなかった。妙な名前も人数も関係なく縁は直ぐに放送への興味を失うと、窓辺へと向かう。傷も多少は癒えた。血は止まり打ち身も強ばりが減じている。超人的な感覚を持つ縁は痛みも猛烈に感じるが、それが彼の憎悪を呼び起こし、憎悪が痛みを飛ばさせる。それはそれとして負傷の具合も多少はマシになったとも分析した。放送で動揺する人間もいるかもしれないので良い機会だ、先の学校を襲おうと考えつつ校舎を睨むと、彼の鋭敏な感覚が人の気配を捉えた。
 相当な使い手だ、すぐ近くにまで来ている。これほどまでに間合いを詰められるなど、相手はよほど陰行に慣れた者だ。そして縁はそんな手練を知っている。

「乙和サンか?」
「──やっぱり君か。」

 現れたのは、派手な格好の男だった。半端に落ちた白塗りにザンバラの髪という出で立ちのその男の名は、乙和瓢湖。縁と共に抜刀斎抹殺のために動く同志が1人である。

「歩いていたら聞こえてくる言葉が変わってね、もしかしてと思ったが……」

 そう言いながら乙和は縁の頭から爪先まで視線を巡らす。

「訛が出てるよ……そっちもかなりの手練と戦ったみたいだね。」
「……抜刀斎を知る者は?」
「いや。」

 互いの負傷を見ても縁に感慨は無い。実は乙和は大した相手と戦っていない上一番彼にダメージを与えたのは一般人の女子小学生なのだが、格好悪いので強者感を醸し出す。縁は全くそんなことには関心無く、また学校へと目を向けた。それに続いて乙和も誘蛾灯の役割をする火元へと目をやる。数時間経とうが景気良く燃える墜落したヘリコプターは、縁の憎悪を現しているようだ。

「かなりの人数がいる。襲おうカ。」
「……今なら隙もあるか。殺していいんだろ?」
「何人か残そう。抜刀斎に伝わるように。」

 ぶっちゃけた話、乙和は結構疲れているので休みたいし、銃を持っているかもしれない相手に突っ込むのは愚策だと思うが、プライドがあるので賛同する。それに縁がいる。この男ならば軍隊相手とも正面から渡り合えることは知っている。コイツを囮にすればどうとでもなるだろう。

「見張りがいるようだな。裏から回って引きつけよう。」
「好きに動いていいですヨ。」

 全く眼中にない、おざなりな敬語だが、元からこんな男だしその方が好都合なので肩をすくめるだけにする。そういえば途中から聞こえてくる中国語が2つになった、と言おうとした頃には既に窓から縁は飛び降りていた。まあ気にすることでもないかと、乙和は階段で降りる。彼が道路に出る頃には、縁はとっとと学校に向かって歩いていた。あの調子ではろくに連携など考えていない。

「まあ、やりやすいからいいがな。」

 乙和は別のルートで走り、学校へと近づいた。素人の、しかも子供の見張りなどかい潜るのは容易い。ものの数秒でフェンスを乗り越えると、素早く壁面のパイプを登った。
 乙和の目的はまずは首輪の解除だ。毒薬付きの首輪など誰がいつまでも着けていたいか。大勢殺せば外せるというのなら、彼にとっては好都合。
 闇乃武としての経験を活かして学校に潜り込み、内側から1人1人気づかれないように殺していく。そう思った彼の計画は。

「大変だぁ! 星乃さんが、星乃さんが死んだぁ!」

 いきなり崩れた。

(バカな早すぎる!)

 縁が殺ったのか? そう考えるが、いやしかし自分はそうさせないようにわざわざ走って先回りしたのだ。それに銃声も聞こえなかった。縁が刀で殺したとして、それがこの程度の見張りに伝わるまで早すぎる。

「待った、沖田。その、星乃さんって誰だ?」
「戦車で乗ってきた高校生だ。」
「どの?」
「怪我人じゃないほう。」
「あああのガタイのいい。」
「違う、女子高生の方だ!」
「いたっけそんな人……?」

 しかも会話が意味不明である。沖田と呼ばれた少年ともう1人、小林というらしい少年が話しているが、本人たちも要領を得ないのだ、今来て屋上のへりに張り付いている乙和にわかることなど何もない。

「マジかよ……ど、どうしよう?」
「とにかくみんなに知らせないと。交代にはまだ早いけど、呼んでくるよ。」

 そう言い沖田がドアを開け屋内に入った瞬間、乙和は飛び出した。
 状況は不明だが、自分以外にも殺しに動いている人間がいる。おおかた乙和と同じように、放送で告げられた大量殺人による首輪解除を狙ってのことだろう。自分がやろうとしているがゆえにすぐに察しがついた。

「──かっ?」

 痛めつけたいが効率を優先して割り切り、一瞬で首を搔き切る。赤い血飛沫がコンクリートに広がる。乙和は小林が持っていた銃を奪うと素早く校内に突入した。これを使う気はない。ないが、殺した相手から武器を奪わないのは不自然だし、あって困っても捨てれば良いだけだ。
 乙和が狙うのはステルスキル。50名近い人間が蠢く校舎に殺戮者がエントリーした。


「え……な?」

 引き抜いたゴルフクラブで星乃美紅を殴打して、芦川ミツルは思った。失敗した、と。
 女装しているために女子トイレに入ったミツルだが、そこで彼女に言われたのだ、「ふしぎな雰囲気がする」と。
 思えばそれは、女装への違和感から出た言葉だったのかもしれない。だがミツルは感じ取ったのだ。彼女の中に自分とは毛色の違う魔力を。
 殺さなくては。彼女は旅人の可能性がある。もしそうならミツルの悪評を知っている可能性もある。魔法は使えない。だが音を立てずに殺せる物は、変装のために用意した物の中にある。
 ズガン!
 個室から出てきた彼女を、隣の個室で待ち構えていたミツルは殴打した。鈍い音と美紅の声が思いの外大きくて、何度も何度も振り下ろした。手の感覚がなくなるまで後頭部を殴りつけた。床との間に挟まれ頭蓋骨が折れ、脳みそが飛び散って、血が辺り一面に広がるまで殺して、そこでようやく気づいた。殺ってしまったと。
 計画とは違った、予想外だった、まさか、まさか魔力の持ち主がいるとは。想定外だった、こんなはずではなかった、こんな衝動的で無計画な殺しをするはずではなかったのに。せっかく見つけた集団なのだなら、もっと穏便に、いやでも首輪解除のためだから殺して回ったほうが──

「美紅ちゃん、いるー?」

 その時聞こえてきた女の声、ミツルは名前を知らないがサネルの声に、とっさにトイレの個室に隠れた。魔法を使おうかとも考えたが、杖を取り出す時間が無い。息を潜めて待つこと3秒、4秒──

「美紅ちゃ……きゃあああ!!」

 絶叫が響いた。こうなったら殺るしかない。そう思い杖を取り出すか迷っていると、走る音が聞こえた。気配が遠ざかる。今だ、今やるしかない。
 ミツルは素早く魔法で浮き上がると、杖で窓ガラスを叩き割った。一度外に出かけて、慌てて得物にしたゴルフクラブをとって戻る。そのまま屋上に上がろうとして、そういえば見張りがいたなと思い出した。上へは逃げられない。下には多くの人間がいる。必然、横へと逃げる。適当に窓ガラスを割って入ると、大急ぎでドアに鍵をかけた。

「こ、小林ーー!!」

 しばらくして聞こえてきたのは、知らない人間の名前だった。あの女は小林美紅なのだろう。目立たないようにするため没交流のため名前をほとんど知らないミツルはそんなふうに思った。そして少し冷静になれている気も。
 教室の中の鏡の前に立つ。ものの見事に返り血を浴びていた。せっかくの変装もこれでは意味が無い。すぐに着替えようとして、ゴルフバッグに伸ばした手が血に濡れていることに気づいた。服だけでなく顔や脚まで血塗れだ。着替えたところでとても出ないが誤魔化しようがない。

(シャワーを浴びないとどうしょうもない、しかたないな、一度学校から抜け出して──)
「クソッ、2人も死んだたと?」
(2人? どういうことだ? ああ、そうか。)

 廊下から聞こえてきた声は、たしか見張りの安永だったか。ということは今なら屋上は手薄かと思ったが、続いて聞こえてきた声で、どうやらそちらにもまだ見張りがいるらしい。これは学校から出にくいなと思ったが、それよりも良い情報が手に入った。
 ミツル以外にも殺した人間がいる。おおかたさっきの放送の首輪解除の新ルールを狙ってのことだろう。そう察すると一転して光明が見えた。
 自分以外にも殺し合いに乗っていることがわかっているのは、ミツル自身ともう1人の殺人者しかわからないことだ。そのもう1人に殺人を押し付けるもよし更なる殺人でキルスコアを伸ばす助けにするもよし、とれる手が広がっている。ミツルはこれまでに5名ほど殺しているが、全体では81名ということは、急げば次の放送での首輪解除も狙えるかもしれない。
 血に染まった顔でミツルは密やかに策を練る。その姿は、彼が魔法を手に入れたキッカケになる、無理心中を図った父親によく似ていた。



 そして学校近くではもう2人の参加者が、喧騒とは無関係な公園にいた。だが2人、というのは外見上は語弊があるだろう。女子中学生の額を慎重に肉球で押すその参加者は、どこから見ても虎だったのだから。

「ううん……イッタァ……ぐっ、なにこれ……」

 やがて少女の瞼がピクピクと動き、頭を抑えて上体を起こした。眉間にシワを寄せ、目をギュッとつむる。そうして数分すると、ようやく少女は目を開けた。

「どこ? ここ?」

 キョロキョロと辺りを見ながらなんとか立とうとする。そこで初めて、自分がいつの間にか何かにもたれていることに気づいた。生暖かく、ゴワゴワとしていて、獣臭い。痛む頭を抑えて後ろを向くと虎柄の毛皮が見えた。

「虎……虎!?」

 驚きの声を上げて飛びのこうとするが、全く足がもつれて転ぶ。彼女がいるのが公園の砂場ということもあって怪我は無い。それでも痛みよりも驚きで少女は声を上げそうになるが、脳を直接破壊するような強烈な頭痛がそうさせなかった。やがてそれが収まると、虎が大人しく見つめているのを見て、少女はひとまず冷静さを取り戻した。

「なにこれ……なんで……これ、夢だよね。」
「夢ではない。」

 虎が喋った。そのことでまた少女は腰を抜かしたが、またも強烈な頭痛でそれどころではなくなる。あまりの痛みに、空や霧が赤いことも、虎が喋ることもなんてことのないように感じるほどだ。

「自分は……李徴。故あって虎に変じた者だ。」
「あ、どうも、私は……」

 朗々と、しかし唸り超え交じりに名乗った虎こと李徴に名乗り返そうとして、その少女は口をパクつかせた。少女は信じられないという表情で、何度も視線を上下に、そして李徴に向ける。その異様な姿と、頭部の骨折と出血を見て李徴は気づいた。

「少女よ、あのウサギの言ったことを覚えているか?」
「ウサギ……な、なんのこと? ていうか、ここどこ?」

 そう言う少女、園崎魅音は、次から次へとわけのわからないことに直面して、年相応の反応しか示せなかった。
 李徴が縁によって担がれビルに安置されていた魅音を連れてきたのは、ちょうど放送中の時だった。彼は感じていた。初めての感覚だった。自分よりも虎に近い人間と出会うのは。
 李徴は感じていた。己の獣性が増している。この6時間人としての意識を保てたのが奇跡だったのだろう。聞こえてくる銃声も火事も無視して、なるべく外に出にくそうな建物を見つけてそこに潜んでいた。だがヘリコプターの墜落からの顛末を屋内から見ていて、縁を目にした時、彼は水鏡に写った己を見たような感覚を覚えた。あり得ざることだった。自分以外に、否、もしかして自分以上に獣に身をやつした存在など。
 それは恐怖だった。あの男の目的はわからない。だが、あの少女が側にいるには危険すぎる。
 そうして、李徴は待った。縁の隙を。薄れゆく理性の中で、恐らくこれが最期の人との出会いだと感じる。そして放送の瞬間、彼は動いた。音によって己の足音を消して近づく。自分の首輪以外からも音がしているということは、あの男の首輪からもしているのだろう。その可能性にかけて、寝かされていた魅音を攫った。
 実際は人間以外には人誅の意味も無いと縁が無視したからなのだが、彼はともかく魅音を攫うと近場の公園まで連れて来ていた。彼女の傷が縁によってつけられたかもしれないのだ、せめて理性があるうちは彼女の側にいようと。だが。

(なんで、ここ、どこなの? 私は……魅音、だよね。それとも、詩音? 今の私は、ううっ、頭が──)
(──もう己は、ここまでか。)
「さらばだ、少女よ。もし袁参という名の者に会えれば隴西の李徴は虎となったと話してくれ。それと、三谷亘という少年がいれば、李徴はもはや虎と化したと告げてくれ。」
「ま、待って!」

 李徴は己が魅音に向けて欲望が抑えられなくなっていくのを感じ駆け出した。虎が自分から逃げていくというその状況に、しかし魅音は恐怖を抱いた。思い出せない。自分がなぜここにいるのかも、自分がなぜこんなにも頭痛を感じているのかも、なぜ異様に身体が動かないのかも。彼女はわからない。神経に問題を抱えたがゆえに自分の肋にヒビが入っていることも、それ以外にも大小の怪我が彼女から動くことをできなくさせている。
 ついに火の放たれた火薬庫、そしてそこから離れて1人記憶を喪失した魅音、会場北部はついに等活地獄へと化す。



【0612 『北部』学校とその周辺】


【柿沼直樹@ぼくらのデスゲーム(ぼくらシリーズ)@角川つばさ文庫】
●大目標
 殺し合いから脱出する。
●中目標
 仲間を探す。
●小目標
 菊地たちは死んだし今度は別の奴が殺された……? どうなってんだ……

【鑑隼人@パセリ伝説 水の国の少女 memory(3)(パセリ伝説シリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【目標】
●大目標
 復讐完遂のためにはパセリを生き残らせる。
●小目標
 光矢……パセリは守るよ。

【竜宮レナ@双葉社ジュニア文庫 ひぐらしのなく頃に 第一話 鬼隠し編 上(ひぐらしのなく頃にシリーズ)@双葉社ジュニア文庫】
●大目標
 覚せい剤の幻覚をどうにかしたい。
●中目標
 単独行動して部活の仲間を探したい。
●小目標
 学校からは離れたい。

【利根猛士@絶体絶命ゲーム 1億円争奪サバイバル(絶体絶命シリーズ)@角川つばさ文庫】
【目標】
●大目標
 生き残り人生をやり直す。
●中目標
 殺し合いに乗る。
●小目標
 ???

【緋村剣心@るろうに剣心 最終章 The Final映画ノベライズ みらい文庫版@集英社みらい文庫】
●大目標
 一つでも多くの命を救う。
●中目標
 鱗滝と近藤の治療の術を探す。
●小目標
 学校で殺しか……

【相楽左之助@るろうに剣心 最終章 The Final映画ノベライズ みらい文庫版@集英社みらい文庫】
●大目標
 殺し合いをぶっ壊す。
●中目標
 とにかく鱗滝のオッサンと近藤をどうにかしねえとな。
●小目標
 さっきの声はうさんくせえしあっちじゃ殺しだぁ?

【鱗滝左近次@鬼滅の刃~炭治郎と禰豆子、運命の始まり編~(鬼滅の刃シリーズ)@集英社みらい文庫】
【目標】
●大目標
 殺し合いを止める。
●中目標
 鬼を斬る。
●小目標
 学校内にいる殺人者を止める。

【天照和子@歴史ゴーストバスターズ 最強×最凶コンビ結成!?(歴史ゴーストバスターズシリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【目標】
●大目標
 殺し合いから脱出する方法を探す。
●中目標
 鱗滝さんと近藤さんを助けられる人を探す。
●小目標
 緋村さんたちと一緒に動く。

【鈴鬼@若おかみは小学生! 映画ノベライズ(若おかみシリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【目標】
●大目標
 脱出を図る。
●中目標
 自分の知る魔界の知識や集めた情報を残す。
●小目標
 ピンフリさん……

【双葉マメ@サバイバー!!(1) いじわるエースと初ミッション!(サバイバー!!シリーズ)@角川つばさ文庫】
【目標】
●大目標
 生き残り、生きて帰る。
●中目標
 火事を止める。
●小目標
 鱗滝さんと近藤さんを助けられる人を探す。

【近藤勲@銀魂 映画ノベライズ みらい文庫版(銀魂シリーズ)@集英社みらい文庫】
●大目標
 殺し合いに乗った連中を取り締まる。
●中目標
 白尽くめの女たちを殺す。
●小目標
 鱗滝と協力して学校の中のゲームに乗った奴を捕らえる。

【安永宏@ぼくらのデスゲーム(ぼくらシリーズ)@角川つばさ文庫】
【目標】
●大目標
 このクソッタレなゲームをブッ壊す。
●中目標
 仲間と合流する。
●小目標
 菊地は死ぬし、小林も殺された? 学校の中に殺し合いに乗ってる奴がいんのか?

【雪代縁@るろうに剣心 最終章 The Final映画ノベライズ みらい文庫版@集英社みらい文庫】
●大目標
 人誅をなし緋村剣心を絶望させ生地獄を味合わせる。
●中目標
 緋村剣心と首輪を解除できる人間を探す。
●小目標
 学校を襲い内部の人間を半殺しにし緋村剣心を探させる。

【乙和瓢湖@るろうに剣心 最終章 The Final映画ノベライズ みらい文庫版@集英社みらい文庫】
●大目標
 殺しを楽しむ。
●中目標
 赤鼻の男(バギー)や角の生えた男(キリヲ)を殺せる手段を考える。
●小目標
 殺しまくって首輪を外す。

【沖田悠翔@無限×悪夢 午後3時33分のタイムループ地獄@集英社みらい文庫】
【目標】
●大目標
 今回のバトル・ロワイアルを生き残って家族の元に帰る。
●中目標
 みんなと一緒に脱出の方法を探す。
●小目標
 そんな……さっきまで話してたのに……

【芦川美鶴@ブレイブ・ストーリー (4)運命の塔(ブレイブ・ストーリーシリーズ)@角川つばさ文庫】
【目標】
●大目標
 ゲームに優勝し、家族を取り戻す。
●中目標
 もう1人のマーダーを利用して学校の人間を殺していき首輪を解除する。。
●小目標
 まずは返り血をどうにかする。

【サネル@新妖界ナビ・ルナ(5)刻まれた記憶(妖界ナビ・ルナシリーズ)@講談社青い鳥文庫】
【目標】
●大目標
 ルナや姉のように自分も戦い、殺し合いを止める。
●中目標
 灯子の家族を探す。
●小目標
 そんな、美紅ちゃん……

【園崎魅音@双葉社ジュニア文庫 ひぐらしのなく頃に 第二話 綿流し編 上(ひぐらしのなく頃にシリーズ)@双葉社ジュニア文庫】
【目標】
●大目標
 ???

【李徴@山月記(4)山月記・李陵 中島敦 名作選 @角川つばさ文庫】
【目標】
●大目標(人間の心の場合/獣の心の場合)
 誰も殺さぬように隠れる/己の飢えを満たすために、食い続ける
●小目標(人間の心の場合)
 危険人物がいた時だけ、食い殺す



【脱落】

【小林旋風@ギルティゲーム(ギルティゲームシリーズ)@小学館ジュニア文庫】
【星乃美紅@小説 魔女怪盗LIP☆S(1) 六代目夜の魔女!?@講談社青い鳥文庫】

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