「――なので、一緒にここから逃げる方法を探してほしいんですけど……」
「はい喜んで!」
(え、即答?)
(またロリか……ついてねえなあ。)
「はい喜んで!」
(え、即答?)
(またロリか……ついてねえなあ。)
ひきつった笑みを浮かべる少女と、いかにも侍ですという格好の中年男性と、銀髪のリーゼントにサングラスというカタギさのかけらもない男という三人は、寺へと続く石段の下で話し合っていた。
少女の名前は木本麻耶。この殺し合いに巻き込まれる直前に別のデスゲームに巻き込まれ、死に、かと思ったら生き返り、その時と同じ毒薬入りの首輪を付けられてデスゲームさせられてる前世でなにしたらそんな目に合うんだという感じの小学生である。ちなみにあと一時間後に死ぬ。
その少女を無表情ながらどこか鼻の下を伸ばして見ている侍は、武市変兵太。宇宙人により開国させられた江戸にて攘夷志士としてテロ活動に勤しむ鬼兵隊の参謀役だ。ちなみにロリコンである。
そしてそんな二人を呆れた顔で見ているパっと見ヤクザが、岡田似蔵。同じく鬼兵隊にして盲目ながら幕末の人斬りだ。ちなみにこのあと子供の腕を切断する。
いたいけな少女をテロリスト二人が囲んでいるという事案を通り越してもはやテロとも言える状況だが、そんな彼らは皆少し先にある寺を目指していた。
少女の名前は木本麻耶。この殺し合いに巻き込まれる直前に別のデスゲームに巻き込まれ、死に、かと思ったら生き返り、その時と同じ毒薬入りの首輪を付けられてデスゲームさせられてる前世でなにしたらそんな目に合うんだという感じの小学生である。ちなみにあと一時間後に死ぬ。
その少女を無表情ながらどこか鼻の下を伸ばして見ている侍は、武市変兵太。宇宙人により開国させられた江戸にて攘夷志士としてテロ活動に勤しむ鬼兵隊の参謀役だ。ちなみにロリコンである。
そしてそんな二人を呆れた顔で見ているパっと見ヤクザが、岡田似蔵。同じく鬼兵隊にして盲目ながら幕末の人斬りだ。ちなみにこのあと子供の腕を切断する。
いたいけな少女をテロリスト二人が囲んでいるという事案を通り越してもはやテロとも言える状況だが、そんな彼らは皆少し先にある寺を目指していた。
「麻耶さんもさっきの音は聞きましたか?」
「はい、あの、顔、近いです……このオジサン怖っ!」
「うん、口に出てる。心の声が口に出てる。」
「武市さん、ノータッチつってもアンタが子供の100メートル以内に入るのはセクハラだ。」
「え、接近禁止命令?」
「はい、あの、顔、近いです……このオジサン怖っ!」
「うん、口に出てる。心の声が口に出てる。」
「武市さん、ノータッチつってもアンタが子供の100メートル以内に入るのはセクハラだ。」
「え、接近禁止命令?」
彼らは皆、少し前に神楽が壊した寺の鐘の音を頼りに寺へと向かっていた。三人とも、これまでの一時間でこれまでほとんど人にあっていない。そこで積極的に動くようになったのだが、似蔵の鋭敏な感覚が麻耶を捉えて彼女を捕獲……もとい保護して今に至る。
ぶっちゃけ似蔵としては一応上役が児童に対して性的な嫌がらせをしかねないことになるためできれば小学生ほどの女子だけは避けたいと思っていたのだが、なぜかピンポイントでその避けたい女子小学生を引き当ててしまった。
ぶっちゃけ似蔵としては一応上役が児童に対して性的な嫌がらせをしかねないことになるためできれば小学生ほどの女子だけは避けたいと思っていたのだが、なぜかピンポイントでその避けたい女子小学生を引き当ててしまった。
(最初のお嬢ちゃんに、今度のお嬢ちゃん。まさかオジサンは俺と武市さん(ロリコン)だけであとはみんなお嬢ちゃんばっかってことはないよな……?)
だとしたら最悪である。斬りごたえのある相手はいないのに変態を暴走させる餌だけは豊富とくれば、興ざめどころかどっ白けだ。
そしてある意味もっと嫌な予想が頭に浮かんだ。変兵太のような変態が他にも多数いる可能性である。
倫理観の欠片もない無法地帯に、好き者が好みそうな年頃の女子とロリータ・コンプレックスのオッサンを投げ込む。どうなるかは火を見るより明らかだ。
そしてある意味もっと嫌な予想が頭に浮かんだ。変兵太のような変態が他にも多数いる可能性である。
倫理観の欠片もない無法地帯に、好き者が好みそうな年頃の女子とロリータ・コンプレックスのオッサンを投げ込む。どうなるかは火を見るより明らかだ。
(それだと俺もロリコン側にカウントされてることになるのか? 嫌だねぇ……)
「無駄話はそこら辺にして、さっさとお寺さんに行きましょうや。」
「むぅ……そうですね。麻耶さんもいいですか?」
「はい、もともと一人でも行く気だったし。」
「わかりました。では、岡田さん、さっきの約束の範囲で消毒をお願いします。」
「わかってますって、ちゃあんと選びますよ、わかる範囲でね。」
「無駄話はそこら辺にして、さっさとお寺さんに行きましょうや。」
「むぅ……そうですね。麻耶さんもいいですか?」
「はい、もともと一人でも行く気だったし。」
「わかりました。では、岡田さん、さっきの約束の範囲で消毒をお願いします。」
「わかってますって、ちゃあんと選びますよ、わかる範囲でね。」
変兵太と麻耶の間に割り込み話を変えると、似蔵は嫌な考えを頭に残しつつ石段を登り始めた。
最後尾で麻耶の尻でも凝視しているであろう変兵太と、それを感じてぎこちなく歩く麻耶の気配を感じながら登っていく。
彼女の息から、それなりに体は動くと判断をつけると、似蔵は歩くペースを少し早めた。
日に焼けた健康的な肌と変兵太が言っていたのを聞く見るに、近頃の子供にしてはちゃんと外に出て運動しているのだろう。そのほうが斬りごたえがあるし、多少変兵太にセクハラされても自分でなんとかするだろう。というか、そこまで面倒を見てやる義理が無い。
少し似蔵は二人から先行する。だからだろうか、気配が変わったのに気づいた。
石段の下にいた時から木に殴打でも浴びせているような音がしたが、今度はそこに加えて木が倒れる音が混じった。戦いの気配はない。それが逆に怪しい。
最後尾で麻耶の尻でも凝視しているであろう変兵太と、それを感じてぎこちなく歩く麻耶の気配を感じながら登っていく。
彼女の息から、それなりに体は動くと判断をつけると、似蔵は歩くペースを少し早めた。
日に焼けた健康的な肌と変兵太が言っていたのを聞く見るに、近頃の子供にしてはちゃんと外に出て運動しているのだろう。そのほうが斬りごたえがあるし、多少変兵太にセクハラされても自分でなんとかするだろう。というか、そこまで面倒を見てやる義理が無い。
少し似蔵は二人から先行する。だからだろうか、気配が変わったのに気づいた。
石段の下にいた時から木に殴打でも浴びせているような音がしたが、今度はそこに加えて木が倒れる音が混じった。戦いの気配はない。それが逆に怪しい。
「先行きますよ。」
言い置くと、似蔵は石段を駆け上がった。少女の声。一人は先ほど取り逃がした少女――ナツメの声だ。
(チっ、ハズレか。)
内心で舌打ちをする。変兵太との妥協点として、似蔵は少女をなるべく斬らないように約束していた。ただの口約束にすぎないが、それでも後を考えると一応気を使わなければならない。殺すことになるかもしれない相手とはいえ、あんな変質者であるとはいえ、鬼兵隊の頭脳を早々に失うのは面白くない。
だがそれでも残念な気持ちは変わらない。少しテンションが下がる。が、更に二つ、気配を感じた。
一つは間違い無く強者。地面を踏み込む音がジャンプキャラのそれだ。ブロリーみたいな足音がした。
もう一人はこれも強者。殺意と何かよくわからない危険な気配を感じる。身体能力もそうだが、こんな気配を出せる人間はそうはいない。
だがそれでも残念な気持ちは変わらない。少しテンションが下がる。が、更に二つ、気配を感じた。
一つは間違い無く強者。地面を踏み込む音がジャンプキャラのそれだ。ブロリーみたいな足音がした。
もう一人はこれも強者。殺意と何かよくわからない危険な気配を感じる。身体能力もそうだが、こんな気配を出せる人間はそうはいない。
「なんだよ、いるじゃねえかい。」
似蔵は一気に駆ける。
銃声が聞こえた。
少女の悲鳴が聞こえた。
似蔵の中でギアが上がる。
駆け上がった石段の先では、恐るべき勢いの踏み込みをする音と、拳銃を二丁ほぼ同時に撃つ音が響いた。
銃声が聞こえた。
少女の悲鳴が聞こえた。
似蔵の中でギアが上がる。
駆け上がった石段の先では、恐るべき勢いの踏み込みをする音と、拳銃を二丁ほぼ同時に撃つ音が響いた。
「ほう。」
弾丸は、何かにぶち当たっている音がした。おそらくは防弾チョッキか何かだろう。人間の肉を撃った音では無い。そしてもう一つ銃声、子供の驚く声。どうやら先の踏み込みは子供がやったようだ。男か? 女か?
(どっちでもいいか、斬ってから顔と股間を潰せばバレねえだろ。)
「なっ! もう一人!?」
「俺も混ぜろよ。」
「なっ! もう一人!?」
「俺も混ぜろよ。」
岡田似蔵の居合い斬り。
手応え、あり。
手応え、あり。
笑みを浮かべる似蔵の耳に、子供の悲鳴が聞こえた。
「捕まるネ!」
神楽は自分の上空から拳銃を向けるタイを見ると、叫びながら横っ飛びに飛んだ。
ナツメを抱きかかえて寺の境内をゴロゴロと転がる。石畳に体を打つ痛みと別に、足に焼けるような痛みが走った。
乱射されたうちの一発の銃弾が神楽の足を撃ち抜いていた。
ナツメを抱きかかえて寺の境内をゴロゴロと転がる。石畳に体を打つ痛みと別に、足に焼けるような痛みが走った。
乱射されたうちの一発の銃弾が神楽の足を撃ち抜いていた。
「後、ろ……」
「舌噛むヨ!」
「舌噛むヨ!」
胸の中でナツメがそう言って、落ちる。戦闘民族・夜兎の身体能力からくる急加速によるGは、ナツメを失神させるには十分なものだった。しかし神楽にそれを気遣う余裕は無い。足の痛みと目の前に現れ猛スピードで距離を詰めてくる子供、タイ。
なんとか片足で飛び寺の縁側へと飛ぶ。目指すのは神楽の傘だ。夜兎の膂力に耐えうるそれは単なる日傘ではなく充分な凶器である。
だが、それをわざわざ見逃すタイではない。弾切れした銃を投げつけながら新たな銃を出し、更に加速して距離を詰めながら両手で構えた引き金を引く。
なんとか片足で飛び寺の縁側へと飛ぶ。目指すのは神楽の傘だ。夜兎の膂力に耐えうるそれは単なる日傘ではなく充分な凶器である。
だが、それをわざわざ見逃すタイではない。弾切れした銃を投げつけながら新たな銃を出し、更に加速して距離を詰めながら両手で構えた引き金を引く。
(間に合わない――)
片足だけのステップよりも両足での踏み込みが速いのは道理、タイの接近の方が神楽が傘を手にするよりもなお早い。
だがそれでも神楽は目を銃口から背けない。タイが発砲する。銃口はブレている。拳銃の撃ち方も素人だ。近距離で撃たれたが弾丸は神楽を掠めるだけ。それを見て神楽はステップを踏もうとした。
間に合う。そう思った神楽の足から力が抜ける。胸のあたりを狙っていた銃口は下へとぶれていた。足をまた撃たれた、と痛みと共に理解する。
だがそれでも神楽は目を銃口から背けない。タイが発砲する。銃口はブレている。拳銃の撃ち方も素人だ。近距離で撃たれたが弾丸は神楽を掠めるだけ。それを見て神楽はステップを踏もうとした。
間に合う。そう思った神楽の足から力が抜ける。胸のあたりを狙っていた銃口は下へとぶれていた。足をまた撃たれた、と痛みと共に理解する。
「こん、のおおおおっ!」
「まだ動くっ!?」
「まだ動くっ!?」
神楽は倒れた体を腕一本で支えてハンドスプリングの要領で飛んだ。夜兎の腕力で強引に姿勢を制御して境内へと転がり込む。片手で減速しつつその手で傘を掴み、その手で畳に手をつこうとして、それはできずにふすまをぶち破り滑る。
ミシっと首から嫌な音がした。その意味を知るより早く、神楽は両手で傘を広げる。目の前にはまた拳銃を取り出したタイがいた。
ミシっと首から嫌な音がした。その意味を知るより早く、神楽は両手で傘を広げる。目の前にはまた拳銃を取り出したタイがいた。
「死ねっ。」
「お前がなっ!」
「お前がなっ!」
同時に、発砲した。
夜兎の傘は仕込みマシンガンになっている。傘の布も防弾性が高く、ただの拳銃程度ならば近距離からでも撃ち抜かれることなどない。
神楽はそれを知っていたから傘に執着し、タイはそれを知らなかったから無警戒に距離を詰めた。自分のスピードと不慣れから銃をゼロ距離で撃とうとして、突如傘から飛び出た銃弾に対応しきれなかった。
夜兎の傘は仕込みマシンガンになっている。傘の布も防弾性が高く、ただの拳銃程度ならば近距離からでも撃ち抜かれることなどない。
神楽はそれを知っていたから傘に執着し、タイはそれを知らなかったから無警戒に距離を詰めた。自分のスピードと不慣れから銃をゼロ距離で撃とうとして、突如傘から飛び出た銃弾に対応しきれなかった。
「な、にぃっ!」
奇跡的な反応だった。マシンガンが単発でしか発射されなかったこと、神楽が普段銃を撃たないこと、神楽が撃つ寸前にタイを目視できなかったこと、タイが高速で移動していたこと、幾つもの要因がタイに幸運に働いた。
弾丸はタイへと迫るが、それは腕を撃ち抜くにとどまった。驚愕によりタイのステップが乱れ、神楽を飛び越して寺の中へと飛んでいく。仏像にぶつかり、砕き、咄嗟に丸めた背中を強かに打ちつけてようやく止まった。同時に立ち上がりもと来た軌道で寺の外へと出る。再び神楽の上を取らんと、構え直された傘を足蹴にして飛んだ。傘のガードが下がりがら空きになった神楽の顔面にたまたま膝が突き刺さる。神楽にとっては予想外の一撃は、タイにとっても予想外のものだった。姿勢が空中でブレる、失速する。それでも無理やり空中で神楽の背中を向き、直後に後ろを振り返った。空中で飛ぶ際に一瞬見えた人影を二度見した。まさか、と思う。目の前には怪しげな風体の男――似蔵がいつの間にかいた。
弾丸はタイへと迫るが、それは腕を撃ち抜くにとどまった。驚愕によりタイのステップが乱れ、神楽を飛び越して寺の中へと飛んでいく。仏像にぶつかり、砕き、咄嗟に丸めた背中を強かに打ちつけてようやく止まった。同時に立ち上がりもと来た軌道で寺の外へと出る。再び神楽の上を取らんと、構え直された傘を足蹴にして飛んだ。傘のガードが下がりがら空きになった神楽の顔面にたまたま膝が突き刺さる。神楽にとっては予想外の一撃は、タイにとっても予想外のものだった。姿勢が空中でブレる、失速する。それでも無理やり空中で神楽の背中を向き、直後に後ろを振り返った。空中で飛ぶ際に一瞬見えた人影を二度見した。まさか、と思う。目の前には怪しげな風体の男――似蔵がいつの間にかいた。
「なっ! もう一人!?」
「俺も混ぜろよ。」
「俺も混ぜろよ。」
似蔵の神速の居合いが迫り、タイは自分の腕が宙を舞うのを呆然と見送った。
速い。かわせない。首だけ後ろに向けてるのにそんなすぐには動けない。うず目の超動体視力と超運動能力でも、わかっているのに避けられないものはどうにもならない。反射的に腕を顔の前に掲げのけ反ろうして、腕が斬られた。
速い。かわせない。首だけ後ろに向けてるのにそんなすぐには動けない。うず目の超動体視力と超運動能力でも、わかっているのに避けられないものはどうにもならない。反射的に腕を顔の前に掲げのけ反ろうして、腕が斬られた。
(う、腕が、腕が飛んでいく、拾わないと。)
反射で舞う腕を掴むと、自分の傷へとくっつけた。理由はない。元々そこにあるからそうしただけだ。ただタイは呆気にとられてしまい、そして見た。
にぃ。
似蔵の口が獰猛に笑うのを。
「わああああああああっ!」
再び放たれた居合いをかわせたのは全くの偶然だ。
タイは神楽もナツメも無視して、というか考えることなどできずに駆け出した。
その心にあるのは目の前の男、似蔵への危機感と恐怖心だけだ。
第三の目に目覚める前に味わった孤独や暴力を最悪の形で思い出させる、圧倒的な殺戮の空気。それは記憶の中のものよりなお鮮明に、今までのものより最も恐ろしくタイの心を凍らせた。
タイは自分の斬られた腕がすでにくっついていることも、それを付けた腕から血が流れていることも気づかずに、境内を駆け抜けた。あまりの切断面の美しさと伝説の子としての高い妖力は刀傷を即座に再生した。握力こそまだ戻らないが、直ぐにでも完全に力を震えるだろう。撃たれた腕は妖力任せの再生では厳しいものがあり、これも力は入らないはずだが、タイは気にせずどちらの腕も大きく振って駆けた。
タイは神楽もナツメも無視して、というか考えることなどできずに駆け出した。
その心にあるのは目の前の男、似蔵への危機感と恐怖心だけだ。
第三の目に目覚める前に味わった孤独や暴力を最悪の形で思い出させる、圧倒的な殺戮の空気。それは記憶の中のものよりなお鮮明に、今までのものより最も恐ろしくタイの心を凍らせた。
タイは自分の斬られた腕がすでにくっついていることも、それを付けた腕から血が流れていることも気づかずに、境内を駆け抜けた。あまりの切断面の美しさと伝説の子としての高い妖力は刀傷を即座に再生した。握力こそまだ戻らないが、直ぐにでも完全に力を震えるだろう。撃たれた腕は妖力任せの再生では厳しいものがあり、これも力は入らないはずだが、タイは気にせずどちらの腕も大きく振って駆けた。
「ぐはあっ!」「へぶっ!」
「ああっ!?」
「ああっ!?」
境内を出て石段を駆ける。と何かにぶちあたった。バランスを崩して石段をゴロゴロと転がる。頭を打ち、脳が揺れ、転がり落ちるのを止められない。いくら見えて動けてもそれを処理する頭が潰れればどうしようもない。
それでも転がり落ち終わると即座に立ち上がり駆け出したのはさすがの生命力か。ひたすらまっすぐ走り、アスファルトを家の屋根を、建物の屋上を駆けていく。
自分がどこに向かっているのかもわからないまま、タイは住宅地へと消えた。
それでも転がり落ち終わると即座に立ち上がり駆け出したのはさすがの生命力か。ひたすらまっすぐ走り、アスファルトを家の屋根を、建物の屋上を駆けていく。
自分がどこに向かっているのかもわからないまま、タイは住宅地へと消えた。
安土流星は目の前で起こった一瞬の出来事に構えた銃を下ろしていた。
時間にすれば、ほんの数秒だった。
空中で何かが発砲し、チャイナ服の少女と黒い影が寺に転がり込んできて、黒い影が走り去ったと思えば境内には血の付いた日本刀を持った男がいた。
なにが起きたのか、わからない。
辛うじて目で追え、脳で処理できた情報から得られた答えがそれだった。
時間にすれば、ほんの数秒だった。
空中で何かが発砲し、チャイナ服の少女と黒い影が寺に転がり込んできて、黒い影が走り去ったと思えば境内には血の付いた日本刀を持った男がいた。
なにが起きたのか、わからない。
辛うじて目で追え、脳で処理できた情報から得られた答えがそれだった。
今までも魔女怪盗絡みの事件では様々な超常的な事態が起きてきた。それらはある程度は科学技術によるものだとの推察が立っている。しかし、これは違う。自分が見たものが正しければ、明らかに人間が超スピードで動いていた。しかも数人。
(幻覚とはもはや思えない。なら、なんだ? 一度病院で診てもらったほうがいいかもな……)
「速えなぁ。夜兎より速いんじゃあないかい。なあ、お嬢ちゃん?」
「動くなっ!」
(――体が勝手に。)
「速えなぁ。夜兎より速いんじゃあないかい。なあ、お嬢ちゃん?」
「動くなっ!」
(――体が勝手に。)
自分の正気をいよいよ疑う流星だったが、男が少女へと話しかけながら刀を向けたのを見て、気がつけば飛び出していた。
取り落とした銃を構えて、少女たち――神楽とナツメの前に立ちはだかる。
それを瞳を閉じて面白そうに見る似蔵に、流星は戦慄した。
取り落とした銃を構えて、少女たち――神楽とナツメの前に立ちはだかる。
それを瞳を閉じて面白そうに見る似蔵に、流星は戦慄した。
「目を閉じている。盲目だと……」
「おや、なんでそう思った? ただ目を閉じてるだけかもしれねぇよ?」
「……お前は先から、一度も目を開けていない。俺の目が正しければな。」
「驚いたねぇ。目がいいんだな兄ちゃん。でもよぉ、タマはもっとどっしりしてなきゃ宝の持ち腐れだぜぇ。」
「動くなっ!」
「おや、なんでそう思った? ただ目を閉じてるだけかもしれねぇよ?」
「……お前は先から、一度も目を開けていない。俺の目が正しければな。」
「驚いたねぇ。目がいいんだな兄ちゃん。でもよぉ、タマはもっとどっしりしてなきゃ宝の持ち腐れだぜぇ。」
「動くなっ!」
楽しそうに歩み寄る似蔵に、流星は上ずった声で警告する。それにまた、動揺する。ここまで間近に迫った死というのは、今までの捜査でも数えるほどしかない。
自然と似蔵の一挙手一投足に気が行く。男がゆっくりと納刀したのに安心よりも恐怖が増し、銃口の震えが一際大きくなった。
自然と似蔵の一挙手一投足に気が行く。男がゆっくりと納刀したのに安心よりも恐怖が増し、銃口の震えが一際大きくなった。
「……やめだ。ちょいとたんま。」
「なにっ?」
「たんまだって。なんか嫌な予感がする。」
「なにっ?」
「たんまだって。なんか嫌な予感がする。」
銃口を額に触れるほど間近に近づいて、似蔵はそう言うと背中を向けた。
そして石段へと走る。それを見送る流星の頭には困惑しかない。先から自分の警察としての、人間としての常識を覆すことが起こりすぎている。
だがそれでも、義務感として男の背中を追って駆けた。自分では確実に殺されるだけだが野放しにはできない。そう感じながら石段の上で立ち止まった男に追いつくと、流星の目が見開かれた。
そして石段へと走る。それを見送る流星の頭には困惑しかない。先から自分の警察としての、人間としての常識を覆すことが起こりすぎている。
だがそれでも、義務感として男の背中を追って駆けた。自分では確実に殺されるだけだが野放しにはできない。そう感じながら石段の上で立ち止まった男に追いつくと、流星の目が見開かれた。
「やられた。行き掛けの駄賃か、単なる交通事故か……こどもの飛び出し注意ってね。」
「大丈夫かっ!」
「大丈夫かっ!」
似蔵のことなど放っておいて流星は走った。石段の途中で侍のような男性が頭から血を流して倒れている。血の帯が伸びる石段を駆け下りると、侍が少女を抱えているのが見えた。少女の胸からは折れた肋骨が服まで突き破っている。口からは血を吐き、男女ともに意識はない。
救急車と言おうとして、流星の口が止まった。救急車、あるのか、ここに?
救急車と言おうとして、流星の口が止まった。救急車、あるのか、ここに?
「武市さん……まさかこんなお別れになるとはねぇ……まあ、残念っちゃ残念です。」
「まだ死んでいない、知り合いなら手伝え。」
「知り合いっちゃ知り合いですけど、大方石段転げ落ちたんでしょう。意識もねえならお手上げだ。それとも兄ちゃん医者かい?」
「まだ死んでいない、知り合いなら手伝え。」
「知り合いっちゃ知り合いですけど、大方石段転げ落ちたんでしょう。意識もねえならお手上げだ。それとも兄ちゃん医者かい?」
殺気はなくなったが似蔵の言い方はドライなものだった。流星は歯噛みする。男が言外に言うように、自分ではどうしようもできない。
(どこまで役立たずなんだ俺は――)
無力感に苛まれる。
それでも止血を試みる流星の気配に、似蔵は見えない目を向けた。
それでも止血を試みる流星の気配に、似蔵は見えない目を向けた。
【0120ぐらい 住宅地と森の境の寺近辺】
【武市変平太@銀魂映画ノベライズ みらい文庫版(集英社みらい文庫)】
●大目標
???
●大目標
???
【木本麻耶@ギルティゲーム(ギルティゲームシリーズ)@小学館ジュニア文庫】
【目標】
●大目標
???
【目標】
●大目標
???
【岡田似蔵@銀魂映画ノベライズ みらい文庫版(集英社みらい文庫)】
【目標】
●大目標
殺し合いをさっさと終わらせる
●小目標
なぁんか、白けちまったな……
【目標】
●大目標
殺し合いをさっさと終わらせる
●小目標
なぁんか、白けちまったな……
【神楽@銀魂 映画ノベライズ みらい文庫版(銀魂シリーズ)@集英社みらい文庫】
【目標】
●大目標
バトルロワイヤルとその主催者を潰す
●中目標
首輪を外せる人間を探す
●小目標
助けた女の子(ナツメ)と出てきた男たち(似蔵・流星)と話す
【目標】
●大目標
バトルロワイヤルとその主催者を潰す
●中目標
首輪を外せる人間を探す
●小目標
助けた女の子(ナツメ)と出てきた男たち(似蔵・流星)と話す
【タイ@妖界ナビ・ルナ(5) 光と影の戦い(妖界ナビ・ルナシリーズ)@フォア文庫】
【目標】
●大目標
優勝する
●小目標
???
【目標】
●大目標
優勝する
●小目標
???
【安土流星@小説 魔女怪盗LIP☆S(1) 六代目夜の魔女!?@講談社青い鳥文庫】
【目標】
●大目標
殺し合いを止める
●小目標
侍(変兵太)と少女(麻耶)の救命処置を行う
【目標】
●大目標
殺し合いを止める
●小目標
侍(変兵太)と少女(麻耶)の救命処置を行う