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おす☆かが

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だれでも歓迎! 編集
 4月。朝。

 真新しい制服のしっくり来ない着心地はなんとかならないもんかね。ごわごわして仕方ない。
 顔を洗って、台所へ。
「おはよー」
「おはよう、かがみ。──悪いんだけど、つかさ起こして来てくれない?」
 うへぇ、早速か。


「つかさー、起きろー」
「……んー……」
「春休みは終わりだ、初日から遅刻する気かー?」
「ごめーん……あと5分だけぇ……むにゃむにゃ」

 ったく、この妹は。今日から高校生だってのに……
 休み気分が抜けてないのか?先が思いやられるぞ、まったく……
 こうなりゃ最終手段だ、こちらとしても心が痛まなくもないが──時計は既に一刻を争う時刻を指している。

「すまん、つかさっ」
 がばっ!!
 必死・布団剥ぎ!!

「…………」

 やはり……つかさの妙な寝相のおかげで、パジャマの裾がかなり際どい位置までずり上がり、お腹……と、これは
もう──胸、と呼んでいい部分までまる見えになっている。

 はしたない……。

 さすがにこれは効いたのか、つかさは布団の上でもぞもぞと動き回り、眠そう且つ怨めしそうな目で 俺 を一瞥
した後、欠伸をひとつしてから言った。

「おはよう、お兄ちゃん」

 うん、まず、その乱れた服を直そうな?


─ おす☆かが ─


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



「柊ぃ、まーた同じクラスだな」

 入学式とHRを無難にこなして一息ついていると、いきなり背中を叩かれた。

「日下部に、峰岸か。まー今年からもよろしくな」
「うん、よろしくね」
 詰め襟を弛めながら答えてやる。こいつらとは中学からの腐れ縁、ってヤツだ。

「しっかし……峰岸はともかく、日下部も一緒とは意外だな」
「おー、そりゃどーいうイミなん?」
 どういう意味もなにも……日下部がここに受かるなんて思ってなかった、というよりこうやって話してる今も半分
信じられない訳だが。

 まあ、それを言うならつかさも、か。

「ふふ、みさちゃん頑張ってたからね。絶対受かるんだーって」
「ちょ、ばっ、あやの、それ言うなってっ」

 なに盛り上がってんだか……。はぁ、と溜め息をついたとき、
「よぉ」
と、前の席から声をかけられた。振り返ると、見慣れない男子生徒。

「柊、つったよな。よろしく」
「ああ、よろしく……えーっと」
「谷口だ。お前自己紹介くらいちゃんと聞け」
 悪いな、さすがにクラスメイト全員は把握しきれてないもんでね。それよりなんだ?

「あの二人、どっちがお前の女なんだ?」
 谷口の視線の先には、日下部と峰岸。
「勘違いだ、中学が同じってだけでそんなんじゃねぇよ」
 なぜか日下部が泣き出し、峰岸が慰め始めた。なんなんだ?


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 季節は春。今年から高校生。
 新品の制服。新しい環境。

 ……とくれば、新しい出会い。

 こうやって文章にしてみりゃ非常に輝かしいもんなのだが、まあ普通に生きてきた皆さんはもうわかっていらっ
しゃるであろう。

 特別な出会いなんぞそんなにありゃしない、と。

「今日ね、新しい友達ができたんだー」とつかさが笑顔で報告してきたときも、俺は内心そう思っていた。
 人見知りする妹に、ひとりでも友達ができて喜ばしい、その程度の認識だった。

 ──そのときまでは。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「あ、お兄ちゃん」

 昼休み。
 なにか飲み物でも買ってくるか、と教室を出たところで、つかさが声をかけてきた。

 隣に小柄で髪の長い女子生徒を連れて。

「こなちゃん、紹介するね。私の双子の兄の、かがみお兄ちゃん」
 その『こなちゃん』に、どうも、と会釈しておく。
 小学生と見間違うような小さい身体と、頭のてっぺんのアホ毛が特徴的だ。

「それから、お兄ちゃん、この子が昨日話した──」
と言いかけたつかさを制して、
「東中出身、泉こなた。ただの人間には興味ありません──」
 どこだ東中って。いやそんなことより
「どこぞの団長か?──っていうかすげぇな、声全く一緒じゃねえか」

 言ってから、しまった、と思った。勢いでツッコんじまったじゃねーか。目の前の泉こなたを見ると──

嗚呼。「同志」を見る目をしてやがる。

「わかるんだ?」
「……ラノベ好きでな。アニメのほうも見てた」
「じゃあさ、もしかして」
そう言ってつかさの袖を掴むと、
「これはお兄さんの趣味?」
と、つかさのリボンを指差した。
 それは団長のカチューシャだと言いたいのか?
「生憎、俺は宇宙人派だからな。妹のそれに口出ししたことはない」

 当のつかさはなんの話だかイマイチわかってないみたいだ。目が泳いでいる。
 まあ無理も無いか。兄に友達を紹介しようと思ったらその友達がいきなり頓狂な自己紹介を始め、あげく兄はそれ
に普通についていけてるとなりゃ。

「そぉっかぁ。ところで柊兄や」
「かがみ、でいいぞ」
「かがみんや、一緒にお昼ごはん食べない?」

 おっとこいつは予想してませんでしたよ、入学後僅か数日にして女子からお昼ごはんの誘いがあるとは。──とい
うかその呼び方はなんだ。

「かがみんとは旨い酒が呑めそうだ」
 昼間から煽る気か。




 そして、つかさのクラスにて、机をくっつけあい弁当を食っている次第である。
 メンバーは、というと、
 妹のつかさ、先程紹介された泉こなた、それから──

これは海老で天然カジキマグロを釣り上げた気分であるのだが──
 B組クラス委員長、高良みゆき。さん。

 これは本気でびっくりした。
 一度弁当箱を取りに戻り、つかさと泉こなたに着いて行き、机を移動させていると、
「ご一緒させていただいてもよろしいでしょうか?」
という声が降ってきたのである。

 思わず目を疑ったね。視神経に棲み付いた蟲が幻覚でも見せてんのかと思った。誰か蟲専門の外科医を呼んできて
くれ。

 入学式直後から既に高嶺の花と呼ばれ、大人っぽく気品を感じさせながらもどこかあどけない、それでいて全ての
男子が目を奪われずにはいられないナイスバディのその人が、弁当箱を携えて目の前に立っていた。

 まさかつかさ達、つまり俺達とですか?それはマジですか高良みゆきさん!?
「おーみゆきさん、もっちろんおっけーだよー」

 泉こなたにありったけのGJを送りたい。ありがとう。俺を誘ってくれてありがとう。



 そうしてつかさ特製弁当を切り崩しながら、俺はある違和感を感じていた。
 なんだか落ち着かない。いやいつもと違うクラスでしかも隣には高良さんが座っているのだから当たり前といえば
当たり前なのだけれど、なにか落ち着かない。

 これは……視線?

 だし巻き卵を箸で切り分けつつ周囲をそっと窺うと、なにやらクラス中から不穏な目線が我々四人を──男子から
は、主に俺だ──貫いているのがわかる。

「かーがみん」
 泉こなたがチョココロネを囓りつつ、俺に言う。
「リアルsnegだネ」
あっぶねぇ、ブロッコリーの散弾をみゆきさんに浴びせるところだった。
「えすえぬ……?」
つかさはわからなくてよろしい。
「いきなり何言ってんだ?!」
「だぁってさ、考えてみなって。ヒロインに囲まれてお昼ごはんだよー?」

 ああ、これでやっと視線の意味がわかったぞ、B組の男子達よ。羨ましいのであろう、この俺が。

 わりと可愛らしい女子3人(肉親一名含む)に囲まれてお昼ごはんなんてシチュ、滅多に味わえるものではない。
 それこそリアル「それなんてエロゲ?」ではないか。まあ表面的には認めないけど。

 目線は痛いが優越感に浸れるのでそれは良いとして、女子からの視線は良くわからん。なんでそんなにこっちを見
るんだ?そんなに珍しいか、別のクラスの人間は?

 まあ、あまり気にしないことにする。環境が違う故の自意識過剰ってことで。

 その後は泉こなたがチョココロネはどう食すべきかと聞いてきたり、みゆきさんが千切って食えとアドバイスした
り、つかさの弁当の出来についてこなたが褒めちぎったり──つかさからミニハンバーグをゲットしていた、絶対あ
れが目的だ──で、昼食会は滞りなく終了した。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「あれ、柊、今日は隣じゃねーのか」
 箸を止めて、声のしたほうを見る。……誰だっけ?
「谷口だ。いい加減覚えろ、前の席の人間くらい」
 ちょっとしたボケじゃねぇか。……谷口、うん、谷口な。

 あれから、昼はなんとなく隣のクラスで食べるようになった。
 その日も弁当箱を出し、席を立とうとしたのだが、日下部に「たまには一緒に食おうぜ」と呼び止められた。
 まあそれも悪くないか。そう思い、日下部、峰岸と一緒に昼飯を食っていたところ。

「一緒にいいか?」
 気は進まんが良しとしよう。峰岸も「いいよー」と言っていることだし。

 谷口は椅子を寄せ、弁当の包みを開けながら、
「ところで、柊。あの3人の中で誰がお前の女なんだ?」
 あっぶねぇ。ミニトマトの散弾を日下部に浴びせるところだった。

「俺はあのちっちゃい子が怪しいと踏んでんだがな。対抗馬はショートカットの子かな」
「落ち着け、ショートカットは妹だ。残り2人共、そんなんじゃない……って、高良さんの名が出ないのは何故だ?」
谷口はハン、と鼻で笑い、
「高良さん?まずないね、あのお方はお前なんぞとは釣り合わん」
 失礼な野郎だ。こいつの中の天秤はどんな斜面に設置されてんだ?

「でもさ、柊君なら引く手数多って感じだし、気にしなくてもいいと思うよ」
 微妙なフォローをありがとう、峰岸。そんな自覚は無いんだがな。
「柊、鈍いかんなー。意外とモテてんだぜ?」
 日下部が口をとがらせる。いつもより覇気が無いのはなぜだ?

「まーこいつがモテんのは仕方ない。黙ってりゃ女みてぇな顔してんだもんな」
「谷口君もそう思う?髪も綺麗だしね、昔からモテたんだよ、柊君」
 なんだお前ら、煽ててもつかさ特製プチオムレツくらいしか出ねえぞ?

「でも彼女ができたって噂は聞かねーんだよな、不思議なことに」

 日下部が独り言みたいに痛いところを突く。
「なんで彼女作んねーの?柊ならその気んなりゃすぐだろ」
 なんで、と言われてもね。──日下部、顔が近いぞ。なんだその目は。

「あの、さ……。もし、その──柊、の、彼女、さ」
 歯切れが悪いな、なんだよ?

「その……、あ、あた……」
 日下部は口をぱくぱくさせて、何か言おうとしていたが、
「……ごめん、やっぱなんでもない」
 そう言って、パンを囓る作業に戻ってしまった。




「まあ、あのちっちゃい子とお前は結構お似合いだと思うぜ」
 何故か一言も喋らなくなった日下部の変わりに、谷口が妙なことを言い出した。
「泉か。なぜだ?」
「泉っていうのか。……だってさ、あいつと喋ってるとき妙にテンション高いぜ、お前」

 どっから見てんだか……。峰岸がうんうん、と頷き、
「泉さんも楽しそうだし。あんまり見ないよ、あんなに幸せそうな顔の泉さんって」
 泉こなたのネコ口が浮かぶ。……あれ、だよな?幸せそうな顔って?

 俺は昨日の泉こなたとの会話を思い出していた。えーっと確か……
『ホワイトベースの左舷はなぜあんなにもやる気が無いのか』か。不毛だ。
 その前は……『翠と蒼、どちらを嫁にしたいか』だな。泉こなたは蒼だと譲らなかった、理解できん。

 とにかく……泉こなたは、変わったヤツだ。
 数日の付き合いでわかったことは、アニメとマンガとネトゲの大好きな……いわゆる「オタク」だということ。
 俺も多少そっち方面は詳しかったりするので、まあ話は合う。
 ただどうやら活字がダメらしく、ラノベを勧めてみたが断られてしまった。チクショウ。話し相手ができたと思っ
たのに。

「…──。──ぃらぎくん?」

「ん?ああ、ごめん、なんだ、峰岸?」
「大丈夫?ぼーっとしてたみたいだけど」
 そんなに惚けてたかね?

「大方、あっちのクラスのことでも考えてたんじゃねーの?」
 谷口に核心を突かれるとは思わなかった。言葉に詰まる。
 ──って峰岸、なんだその顔は。谷口なんだその目は?


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 で、その日の放課後。
 なぜか俺は久しく来ていなかったアニメショップなんぞにいる。
 そしてこれまたなぜか、隣には泉こなたがいる。

 授業終了のチャイムと同時に教室に飛び込んできた泉こなたに、多少やんわりとではあるが拉致されて、連れてこ
られた場所がここなのである。

 まあ来てしまったものは仕方ない。ラノベコーナーでもうろつくとするか。
 あとで落ち合う手筈をつけて、俺達は一旦別れた。


 新刊はこないだ買ったばかりなので特に欲しいものも無く、立ち読みに勤しんでいると、会計を終わらせたらしい
泉こなたが寄ってきた。……って、これまたすげえ買い込んだもんだな泉さん?
「いやー買った買った」と言いながらはふーと一息ついているが、そんなに買いたいものがあったのか。なんとなく
欲しいものは即ゲットなイメージがあったんだが。

「いやね?こーいうところ来るとさ、あれも欲しいこれも欲しいってなんない?」
 あー……。じゃあそれは?
「まるで予定外の出費だヨ」

変わったヤツだ、ほんとに。






 泉こなたの目的は既に達成したようだが、そのまんま帰るってのもなんとなく味気無いので、近くの公園で一服す
ることになった。

「ほれ」
 自販機で買ったミルクティーを手渡しながら、ベンチに座る。
「おー、悪いねかがみん」
 にへら、という感じで泉こなたがネコ口で笑う。……どんな構造をしてるんだろうね、この唇は?

 ……あ、今なんかちょっと恥ずかしいこと考えたかもしれない。

「というか泉、その呼び方はなんとかならないか」
「んへ?『かがみん』?」
 そう、それ。
「……嫌、なの?」
 泉こなたがちょっと寂しそうな声で言う。……なんか俺が悪いこと言ったみたいじゃないか?
「いや、そうじゃないんだけどさ。──なんというか」
 馴々しい?……違うな。なんというか──ムズムズする、あの感じ……、そう、

「ちょっと……気恥ずかしい」

 ──なんかのボタンを押したみたいだ。泉こなたの顔が徐々にニマニマに変わる。

「かがみん……萌え」

 そう言ってビシッとGJポーズ。やめて、萌えないで。

「あれあれかがみん、顔赤いヨ?」

 そりゃあ面と向かって「お前、萌えます」なんて言われたことはないので。
 チクショウ、意外に効くぞこれ。

「かがみんがもし女の子だったら、間違いなくツンデレ担当だね」
「もしそうだったら、毎日泉にイジられんだろーな」
「むふ、間違いないネ」

 突拍子も無い話だが、なぜかすんなり聞き入れることができたのはなぜだろうね?前世は女だったのかね、俺は?

 隣で、俺を勝手に女に仕立ててツンデレだのツイテだの言ってた泉が、いきなり口を閉ざした。

「泉?」

 横顔が、なんだか昼間の日下部とかぶって見えるのはなぜだろう。
「ねぇ、かがみん……」
 うぉ、いきなり口調がマジになってやがる。

「かがみんは、今、付き合ってる子とかいるの?」

「いや?生憎、年齢=彼女いない歴、ってやつでね」
 我ながら少々古いな。というか、
「なんでいきなりそんなこと聞くんだ?」

「……昼休みに、かがみんと一緒にご飯食べてた子がいたから」

 ああ、日下部と峰岸か。ってこいつも見てたのか。

「ああ、あいつらは中学の同級生でさ。……なんだ?彼女がいるなら昼休みに誘わないほうがいいとか思ったのか?」

 そう言うと泉は顔を上げて、
「うん、そうそう。妬かれちゃったらヤだからさー」
と、笑って見せた。

「あ、それとあとひとつ」
 泉こなたは立ち上がり、前へ歩きながら、
「私のことは、こなた、でいいヨ」
 と、呟くように言った。
 顔が見えないのが残念だ、と思ってしまった。頬を赤くしながらちょっと俯いて言って欲しかったぜ今のセリフ。
……まあ、及第点ってことにしておこう。


「わかったよ。……こなた」

 季節は春。今年から高校生。
 新品の制服。新しい環境。

 そしてこれが、俺とこなたの、出会いだった。

















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コメント:
  • 面白いです! -- チャムチロ (2012-09-03 22:06:51)
  • 俺は蒼www -- 名無しさん (2008-09-19 20:08:39)
  • 俺は絶対に翆だwww -- 名無しさん (2008-09-19 01:23:26)
  • なんか語りとか妙にキョンっぽい感じがwww谷口もいるし
    みさおかわいすぎワロタ -- 名無しさん (2008-08-16 19:35:19)
  • 男性化なんて許せん!‥と思っていましたが、これはイイッ! 柊かがみが素敵です! -- 名無し (2007-12-27 17:10:53)
  • これはすばらすぃ!!
    激しく続き期待! -- 名無しさん (2007-11-17 14:11:20)
  • 君が続きを書くまで僕は乙を止めない! -- 名無しさん (2007-11-09 00:06:11)
  • とりあえずつかさの「お兄ちゃん」に萌え死にました
    続きに期待! -- 名無しさん (2007-10-14 06:20:18)

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