土曜日、夜の六時。
今日、泉家にはこなた一人しかいなかった。
そうじろうは締め切り目の前という理由で、編集とホテルに泊り込みで仕事中。
ゆたかは、みなみの家でいつもの四人とお泊り会をしている。
この状況は、今のこなたにとって最悪の状態だった。
今日、泉家にはこなた一人しかいなかった。
そうじろうは締め切り目の前という理由で、編集とホテルに泊り込みで仕事中。
ゆたかは、みなみの家でいつもの四人とお泊り会をしている。
この状況は、今のこなたにとって最悪の状態だった。
「…何でこんな時に限って、二人ともいないんだろう…
悪い事って、何故か重なることが多いんだよね…」
悪い事って、何故か重なることが多いんだよね…」
先程から、家の電話が鳴り続けている。
発信者を知らせるディスプレイには、こなたの友人の名前が出ていた。
発信者を知らせるディスプレイには、こなたの友人の名前が出ていた。
『カガミ ケイタイ』
先程から、こなたはこの電話をどうしようか迷っていた。
こなたは考えた末に、受話器を一旦持ち上げた後、すぐに元の場所に置いて通話を切った。
しかし、それは所詮無駄な行動である事。
単なる一時凌ぎにしかならない事だとわかっていた。
その理由は…
こなたは考えた末に、受話器を一旦持ち上げた後、すぐに元の場所に置いて通話を切った。
しかし、それは所詮無駄な行動である事。
単なる一時凌ぎにしかならない事だとわかっていた。
その理由は…
―――トゥルルルル…
「…ほら、やっぱりすぐにかかってきた」
こなたは、発信者を確認する事なく溜息をついた。
電話の子機の情報ウィンドウには、先程と同じ『カガミ ケイタイ』の文字が表示されている。
こなたが電話を切ることを無駄だと思っているのは、これが一番の理由。
先程から、七回もかがみからの電話が繰り返されているのだ。
何度通話を切っても、その度にかがみは電話をかけなおしてくる。
その執拗とも言える電話に、こなたは精神的に追い詰められていた。
電話の子機の情報ウィンドウには、先程と同じ『カガミ ケイタイ』の文字が表示されている。
こなたが電話を切ることを無駄だと思っているのは、これが一番の理由。
先程から、七回もかがみからの電話が繰り返されているのだ。
何度通話を切っても、その度にかがみは電話をかけなおしてくる。
その執拗とも言える電話に、こなたは精神的に追い詰められていた。
「あの時にしっかりと気付いていれば…こんな事にはならなかったのかもしれないのに…」
遅すぎる後悔をしながら、顔を伏せるこなた。
…かがみは、一ヶ月以上前から少しずつ変わっていった。
その微妙な変化に気付けなかった自分に、情けなさと憤りを感じていた…
…かがみは、一ヶ月以上前から少しずつ変わっていった。
その微妙な変化に気付けなかった自分に、情けなさと憤りを感じていた…
◆
それは約一ヶ月半前。
いつもと全く変わらない、昼休み。
いつもと全く変わらない、昼休み。
「かがみってさ、最近殆ど毎日こっちでお昼ご飯食べるよね。
もしかして、こっちのクラスに誰かお目当ての男子がいるとか?」
「なっ…なぁっ!?何言ってるのよこなた!別にそんなのいないわよ!
別に、つかさと一緒にご飯を食べたいから来ているだけで、その…」
「えー?だって、たまーにだけど落ち着かない様子をしてるじゃない。
あれは絶対男絡みだと踏んだんだけどなー」
「こなちゃん、お姉ちゃんを妙なイジり方するのはやめなよ~」
もしかして、こっちのクラスに誰かお目当ての男子がいるとか?」
「なっ…なぁっ!?何言ってるのよこなた!別にそんなのいないわよ!
別に、つかさと一緒にご飯を食べたいから来ているだけで、その…」
「えー?だって、たまーにだけど落ち着かない様子をしてるじゃない。
あれは絶対男絡みだと踏んだんだけどなー」
「こなちゃん、お姉ちゃんを妙なイジり方するのはやめなよ~」
いつものように皆でお昼ご飯を食べている四人。
こなたはいつものように、かがみをからかったりして楽しんでいた。
この日も、かがみが慌ててつかさが微妙なフォローを入れ、みゆきが場を収めるという形で終わる筈だったのだが…
この時、かがみの反応に微々たるものではあるが、変化が生じていた。
こなたはいつものように、かがみをからかったりして楽しんでいた。
この日も、かがみが慌ててつかさが微妙なフォローを入れ、みゆきが場を収めるという形で終わる筈だったのだが…
この時、かがみの反応に微々たるものではあるが、変化が生じていた。
「いい加減にしなさいよ。妙な想像するな!」
「いかんねぇ、かがみ。そんなんじゃいつまで経っても良い相手ができないよ?」
「あんたに言われたくはないわ!…むしろ、私が……るのは…」
「いかんねぇ、かがみ。そんなんじゃいつまで経っても良い相手ができないよ?」
「あんたに言われたくはないわ!…むしろ、私が……るのは…」
普通だったら『どうでもいい』等の一言で終わらせるはずだが、この日は珍しく口ごもった。
こなたは気付いていなかったが、この時かがみの目線は微妙にこなたの顔に向いていた。
つかさやみゆきはそれに気付いていたが、いつも通りの照れだろうと思って気にしてはいなかった。
こなたは気付いていなかったが、この時かがみの目線は微妙にこなたの顔に向いていた。
つかさやみゆきはそれに気付いていたが、いつも通りの照れだろうと思って気にしてはいなかった。
「え、かがみ、今最後に何て言ったの?」
「…えっ、何でもない何でもない、あはは。
そ、それよりほら、そろそろお昼休みが終わるわよ」
「あ、本当だ、いつの間に…」
「やはり皆で喋っていると、時間が経つのが早いですね」
「そうだね~」
「…えっ、何でもない何でもない、あはは。
そ、それよりほら、そろそろお昼休みが終わるわよ」
「あ、本当だ、いつの間に…」
「やはり皆で喋っていると、時間が経つのが早いですね」
「そうだね~」
気が付かないほどの、いつもとの小さな違い。
この日を境に、少しずつこなたに対するかがみの態度が変わってきた。
この日を境に、少しずつこなたに対するかがみの態度が変わってきた。
「こなた、一緒に帰ろう」
「こなた、今日遊びに行ってもいい?」
「こなた、あんたこれ欲しがってたでしょ?
知り合いから貰ったんだけど、私使わないからあげるわよ」
「こなた、昨日バイトで変な客に絡まれたんだって?
今度そんなことがあったら連絡してよ、私が何としてでも守るから」
「こなた、今日遊びに行ってもいい?」
「こなた、あんたこれ欲しがってたでしょ?
知り合いから貰ったんだけど、私使わないからあげるわよ」
「こなた、昨日バイトで変な客に絡まれたんだって?
今度そんなことがあったら連絡してよ、私が何としてでも守るから」
いつもと同じようで、いつもと違う態度。
普段のかがみだったら、まずやらないような行動も影でするようになった。
少しずつ、本当に少しずつ…かがみは何かが変わっていった。
しかし、こなた自身の鈍感さの悲しさ…『それ』に気付くまで、一ヶ月以上の時間を要した。
『いつもとの違い』が段々大きくなっていった事に、まるで気が付かなかったのだ。
それをこなたがはっきりと認識したのは、つかさからかがみについての忠告を受けた時。
だが、その時にはもう手遅れに近い状況になっていた…
普段のかがみだったら、まずやらないような行動も影でするようになった。
少しずつ、本当に少しずつ…かがみは何かが変わっていった。
しかし、こなた自身の鈍感さの悲しさ…『それ』に気付くまで、一ヶ月以上の時間を要した。
『いつもとの違い』が段々大きくなっていった事に、まるで気が付かなかったのだ。
それをこなたがはっきりと認識したのは、つかさからかがみについての忠告を受けた時。
だが、その時にはもう手遅れに近い状況になっていた…
◆
「…こなちゃん、ちょっといい?」
「ん、なーに、つかさ?」
「ここじゃ何だから…ちょっと一階の階段のところへ来て」
「ん、なーに、つかさ?」
「ここじゃ何だから…ちょっと一階の階段のところへ来て」
「今、丁度お姉ちゃんがいないから言うけど…
お姉ちゃんね、こなちゃんの事が好き…みたい」
「…へ?好きって…」
「友達として…じゃなくて、どうやら恋愛対象として見ているみたいなの」
「…!?」
お姉ちゃんね、こなちゃんの事が好き…みたい」
「…へ?好きって…」
「友達として…じゃなくて、どうやら恋愛対象として見ているみたいなの」
「…!?」
この言葉を言われた時、こなたは色々な意味でショックを受けた。
親友とも言える仲であるかがみが、自分の事を恋愛対象として見ている。
しかも、かがみはこなたと同じ女性なのだ。
同性から『恋愛対象として好きだ』と言われれば、大体の人はショックを受けるだろう。
…しかし、何故それをつかさが知っているのだろうか。
そして、何故それを自分に教えるのか、こなたにはわからなかった。
親友とも言える仲であるかがみが、自分の事を恋愛対象として見ている。
しかも、かがみはこなたと同じ女性なのだ。
同性から『恋愛対象として好きだ』と言われれば、大体の人はショックを受けるだろう。
…しかし、何故それをつかさが知っているのだろうか。
そして、何故それを自分に教えるのか、こなたにはわからなかった。
「こなちゃんにこれを教えるのはね…気をつけてほしいからなんだ」
「…気をつける…って…どういう事…なの…?」
「…気をつける…って…どういう事…なの…?」
こなたは、先程のつかさの言葉で気が動転していた。
しかし、この後の言葉で更に追い討ちをかけられる。
それは、こなたがかがみの狂気を初めて認識した瞬間でもあった。
しかし、この後の言葉で更に追い討ちをかけられる。
それは、こなたがかがみの狂気を初めて認識した瞬間でもあった。
「お姉ちゃんね…最近、何だか変なんだ。
こなちゃんに関係するあらゆる事柄や物を調べたり集めたりしているみたい。
この前お姉ちゃんの部屋に入った時…びっくりしちゃって。
部屋の壁一杯に…こなちゃんの写真が張ってあったんだ…」
「…え…!?」
こなちゃんに関係するあらゆる事柄や物を調べたり集めたりしているみたい。
この前お姉ちゃんの部屋に入った時…びっくりしちゃって。
部屋の壁一杯に…こなちゃんの写真が張ってあったんだ…」
「…え…!?」
こなたは、その言葉の意味を理解することができなかった。
しかし、つかさはそのまま言葉を続けていく。
しかし、つかさはそのまま言葉を続けていく。
「最近こなちゃん、お姉ちゃんに色々プレゼント貰ってるでしょ?
…それ、こなちゃんが最近欲しいと思っていたものばかりじゃなかった?」
「う…うん、手に入らなかったグッズとか、PCのパーツとか…
かがみにしては、妙にピンポイントな物をくれるなーとは思っていたんだけど…」
「…お姉ちゃんね、こなちゃんが『何々が欲しい』って呟いたものを全部メモしてるんだよ。
家に帰った後、まるで何かに取りつかれたみたいにメモをした物をネットとかで探してくるんだ。
そうやって手に入れたものを、こなちゃんに渡しているんだよ。
私もこの前、探すのを手伝わされたから…」
…それ、こなちゃんが最近欲しいと思っていたものばかりじゃなかった?」
「う…うん、手に入らなかったグッズとか、PCのパーツとか…
かがみにしては、妙にピンポイントな物をくれるなーとは思っていたんだけど…」
「…お姉ちゃんね、こなちゃんが『何々が欲しい』って呟いたものを全部メモしてるんだよ。
家に帰った後、まるで何かに取りつかれたみたいにメモをした物をネットとかで探してくるんだ。
そうやって手に入れたものを、こなちゃんに渡しているんだよ。
私もこの前、探すのを手伝わされたから…」
こなたの体中に悪寒が走る。
今まで感じたことがない、何とも嫌な寒気…
得体の知れない恐怖感というものを、こなたは初めて感じていた。
そして同時に、こなたの頭にはある考えが浮かんでいた。
それは、なるべくなら外れていてほしい考え。
しかし…
今まで感じたことがない、何とも嫌な寒気…
得体の知れない恐怖感というものを、こなたは初めて感じていた。
そして同時に、こなたの頭にはある考えが浮かんでいた。
それは、なるべくなら外れていてほしい考え。
しかし…
「お姉ちゃん…もしかしたら、道を踏み外す一歩手前にいるのかもしれない。
お姉ちゃんが完全にそうならないよう、私も努力するけど…
こなちゃんも十分気をつけて」
お姉ちゃんが完全にそうならないよう、私も努力するけど…
こなちゃんも十分気をつけて」
その後につかさが発した言葉は、その希望をいとも簡単に打ち砕いた。
この事実を改めて聞かされたこなたの頭は、もはや入ってくる言葉の意味を処理するだけで精一杯だった。
この事実を改めて聞かされたこなたの頭は、もはや入ってくる言葉の意味を処理するだけで精一杯だった。
「…わかった…教えてくれてありがとう、つかさ」
全ての事をつかさが一通り話し終えた後、少しだけだがこなたの頭は冷静さを取り戻せた。
かがみは、少し危ない方向へ歩き出そうとしている。
できるならば、こなたはそれを踏み留めさせたいと思っていた。
しかし、その踏み留めさせる方法が見つからない。
かがみの裏の気持ちを汲んで、こちらから先手を打つべきなのか。
それとも別の方法を取るべきなのだろうか…
様々な方法を考えるも、一向にまとまらない。
こなたはひとまず、その場を離れようとした。
…しかしその直後に、こなたにとって聞きたくなかった会話が聞こえてきた…
かがみは、少し危ない方向へ歩き出そうとしている。
できるならば、こなたはそれを踏み留めさせたいと思っていた。
しかし、その踏み留めさせる方法が見つからない。
かがみの裏の気持ちを汲んで、こちらから先手を打つべきなのか。
それとも別の方法を取るべきなのだろうか…
様々な方法を考えるも、一向にまとまらない。
こなたはひとまず、その場を離れようとした。
…しかしその直後に、こなたにとって聞きたくなかった会話が聞こえてきた…
『…つかさ、今こなたと一緒にいたわよね?何をしてたの!』
『ちょっと話してただけだよ、何もしてないって』
『嘘、嘘でしょ。こんな人気の無い場所でこなたと二人きりでいるとか…
何をしてたのよ、キス?それとも…』
『本当だって、何もしてないって!』
『ちょっと話してただけだよ、何もしてないって』
『嘘、嘘でしょ。こんな人気の無い場所でこなたと二人きりでいるとか…
何をしてたのよ、キス?それとも…』
『本当だって、何もしてないって!』
どこから出てきたのか、かがみがつかさに詰め寄っているような声が聞こえてきた。
この時、こなたは聞こえないふりをして教室に戻ろうとした。
先程のつかさの言葉がよみがえり、その会話を聞くことが怖かったのだ。
しかし…それができなかった。
こなたの足はその場で止まり、その会話の一部始終を全て聞いてしまった。
この時、こなたは聞こえないふりをして教室に戻ろうとした。
先程のつかさの言葉がよみがえり、その会話を聞くことが怖かったのだ。
しかし…それができなかった。
こなたの足はその場で止まり、その会話の一部始終を全て聞いてしまった。
『許さないわよ、こなたに触るなんて、こなたと交わるなんて絶対に許さない。
こなたは私と一緒にいるのが一番幸せなんだから、私と、私と…』
『落ち着いてよお姉ちゃん!本当に私はこなちゃんと会話してただけで…』
『こなちゃん、こなちゃん、こなちゃん…何よ、そんないかにも私はこなたと親密です、みたいな呼び方して!
…そうか、つかさもこなたを狙っているのね?だからこんな場所に呼び出したりしたんでしょ!』
『違うんだって!お願い…信じてよ…お姉…ちゃん…!』
『嘘よ、嘘、嘘、嘘…嘘に決まってる…!つかさがそのつもりなら…私も容赦しないわよ…!』
『あ…う…うぁ……お…姉……ちゃ……っ…!』
こなたは私と一緒にいるのが一番幸せなんだから、私と、私と…』
『落ち着いてよお姉ちゃん!本当に私はこなちゃんと会話してただけで…』
『こなちゃん、こなちゃん、こなちゃん…何よ、そんないかにも私はこなたと親密です、みたいな呼び方して!
…そうか、つかさもこなたを狙っているのね?だからこんな場所に呼び出したりしたんでしょ!』
『違うんだって!お願い…信じてよ…お姉…ちゃん…!』
『嘘よ、嘘、嘘、嘘…嘘に決まってる…!つかさがそのつもりなら…私も容赦しないわよ…!』
『あ…う…うぁ……お…姉……ちゃ……っ…!』
つかさがかがみの言葉に押されて、遂に泣き出した。
それでもかがみは、つかさを疑い続けた。
この時点で、もうこなたの知っているかがみはいなくなっていた。
容赦なくつかさに浴びせる厳しい言葉。
狂気に染まったかがみは、もう止められない状態になっていた…
それでもかがみは、つかさを疑い続けた。
この時点で、もうこなたの知っているかがみはいなくなっていた。
容赦なくつかさに浴びせる厳しい言葉。
狂気に染まったかがみは、もう止められない状態になっていた…
◆
翌日、こなたはいつも通り駅前でかがみとつかさの二人を待っていた。
昨日の事もあり、本当なら一人で登校しようと思っていた。
だが、いきなりいつもと違う行動を取ったりすれば、かがみに怪しまれる。
そのリスクを避ける意味もあるが、あれからのつかさの事も気になっていた。
昨日の事もあり、本当なら一人で登校しようと思っていた。
だが、いきなりいつもと違う行動を取ったりすれば、かがみに怪しまれる。
そのリスクを避ける意味もあるが、あれからのつかさの事も気になっていた。
(かがみ、かなりつかさにきつく当たっていたけど…つかさ、大丈夫かな…)
…そんな事を色々と考えていると、こなたを呼ぶ声が駅から聞こえてきた。
しかし、その声は一人だけ。
やってきたのは、かがみだけだった。
こなたはかがみに怪しまれないように、なるべく今までと同じように話しかける。
しかし、その声は一人だけ。
やってきたのは、かがみだけだった。
こなたはかがみに怪しまれないように、なるべく今までと同じように話しかける。
「おはよー、こなたっ!」
「や、やあ、おはようかがみ…って、あれ…つかさはどうしたの?
もしかして、また寝坊でもして遅れてるの?」
「や、やあ、おはようかがみ…って、あれ…つかさはどうしたの?
もしかして、また寝坊でもして遅れてるの?」
こなたが投げかけた質問に、かがみが一瞬顔を歪める。
だが、すぐに何事も無かったように表情を元に戻した。
だが、すぐに何事も無かったように表情を元に戻した。
「つかさね、急に風邪をひいちゃったみたいなのよー
だから、今日からしばらく休むことになると思うわ」
「そ、そうなんだ。
じゃあ、つかさにお大事にって言っておいてね」
「…わかったわ、伝えとく」
だから、今日からしばらく休むことになると思うわ」
「そ、そうなんだ。
じゃあ、つかさにお大事にって言っておいてね」
「…わかったわ、伝えとく」
かがみはつかさの休んだ理由を確かに話した。
…が、こなたはその言葉を完全に信用できなかった。
それは、つかさの事を話題に出したら怪訝(けげん)な顔をしたせいもある。
何より昨日のやりとりから、つかさに何らかの変化があった可能性も否めない。
本当につかさは風邪をひいているのだろうか…
しかし、それを今かがみに問い質すのは危険。
そこで、こなたはかがみがそばにいない『授業中に』確かめることにした。
…が、こなたはその言葉を完全に信用できなかった。
それは、つかさの事を話題に出したら怪訝(けげん)な顔をしたせいもある。
何より昨日のやりとりから、つかさに何らかの変化があった可能性も否めない。
本当につかさは風邪をひいているのだろうか…
しかし、それを今かがみに問い質すのは危険。
そこで、こなたはかがみがそばにいない『授業中に』確かめることにした。
そして授業中、こなたはつかさにこっそりとメールを送った。
かがみは『急に風邪をひいた』と説明したが、どこか信用ができない。
そこで、つかさ本人に休んだ理由を聞くことにしたのだった。
送ってから数分後、こなたの携帯電話につかさからメールが届く。
そこには、こんな文が書かれていた。
かがみは『急に風邪をひいた』と説明したが、どこか信用ができない。
そこで、つかさ本人に休んだ理由を聞くことにしたのだった。
送ってから数分後、こなたの携帯電話につかさからメールが届く。
そこには、こんな文が書かれていた。
『ちょっと怪我しちゃったから、しばらく休む事になりそう』
それは、かがみがこなたに教えた内容と食い違っていた。
風邪と怪我、間違えるには少し無理がある。
それに何より家族なのだから、かがみが妹の状況をそう大幅に間違えることは無い筈。
しかし、メールの内容とかがみの言葉は明らかに違っている。
…どちらが正しいことを言っているのか、この時のこなたには判断する術が無かった。
しかしこの時、昨日のつかさとかがみの会話がこなたの頭に蘇る。
風邪と怪我、間違えるには少し無理がある。
それに何より家族なのだから、かがみが妹の状況をそう大幅に間違えることは無い筈。
しかし、メールの内容とかがみの言葉は明らかに違っている。
…どちらが正しいことを言っているのか、この時のこなたには判断する術が無かった。
しかしこの時、昨日のつかさとかがみの会話がこなたの頭に蘇る。
「まさか…そんな事ないよね…」
嫌な方向にしか想像が働かない。
もし仮につかさの言うことが正しいのなら…何故怪我をしたのか、その理由の予想がつく。
しかし、確証は無い。
こなたは念の為、つかさに『私からのメールを消しておいた方がいい』と送信した。
こなた自身も、つかさに送信したメール履歴を消去した。
もし仮につかさの言うことが正しいのなら…何故怪我をしたのか、その理由の予想がつく。
しかし、確証は無い。
こなたは念の為、つかさに『私からのメールを消しておいた方がいい』と送信した。
こなた自身も、つかさに送信したメール履歴を消去した。
丁度この日、かがみは先生の手伝いの仕事で帰りがいつもより遅い日だった。
…確かめるチャンスは、今しかなかった。
真相を確かめるために、こなたは一目散につかさの様子を見に行った。
…確かめるチャンスは、今しかなかった。
真相を確かめるために、こなたは一目散につかさの様子を見に行った。
電車に素早く乗り、駅に降りてから目一杯走って、柊家に到着。
「こんにちは、泉ですけど…つかさ、いますか?」
「あら、いらっしゃい泉さん。
まだかがみは帰っていないけど、つかさならいるわよ?」
「いえ、いいんです。
ちょっとした事を考えてまして、かがみには内緒で来てるもので…」
「あら、何かのサプライズでも企んでいるの?
つかさなら部屋で風邪をひいて寝ているけど、それでもよければ」
「あら、いらっしゃい泉さん。
まだかがみは帰っていないけど、つかさならいるわよ?」
「いえ、いいんです。
ちょっとした事を考えてまして、かがみには内緒で来てるもので…」
「あら、何かのサプライズでも企んでいるの?
つかさなら部屋で風邪をひいて寝ているけど、それでもよければ」
どうやら、家族間でもつかさは風邪をひいたという事になっているようだ。
親でさえも風邪だと言っているならば、本当に風邪をひいたのかもしれない。
…しかし、こなたはどうしても自分の目で確認したかった。
親でさえも風邪だと言っているならば、本当に風邪をひいたのかもしれない。
…しかし、こなたはどうしても自分の目で確認したかった。
「ええ、元々お見舞いに来たので…サプライズをそのついでに仕込みにきたってところですかね」
「ふふ、わかったわ。
今は丁度つかさと私しか家にいないから、のんびりしていっていいわよ」
「ありがとうございます、ではお邪魔しますー」
「ふふ、わかったわ。
今は丁度つかさと私しか家にいないから、のんびりしていっていいわよ」
「ありがとうございます、ではお邪魔しますー」
丁度都合の良いことに、家にはつかさと母のみきしかいなかった。
こなたは足早につかさの部屋へと向かい、中に入った。
そこでつかさの姿を見た瞬間…こなたはその場で固まった。
見える部分だけでも顔半分・首の付近・そして両腕。
それぞれの場所に青いアザができ、昨日とはまるで別人になったつかさが寝ていたのだ。
こなたは足早につかさの部屋へと向かい、中に入った。
そこでつかさの姿を見た瞬間…こなたはその場で固まった。
見える部分だけでも顔半分・首の付近・そして両腕。
それぞれの場所に青いアザができ、昨日とはまるで別人になったつかさが寝ていたのだ。
「つ…つかさ!?どうしたの……何があったの、一体…!」
「…あ、こなちゃん…来ちゃ駄目だよ…お姉ちゃんが見たら…また…」
「お姉ちゃんが見たらって…つかさ、もしかして…かがみに…?」
「あ…」
「…あ、こなちゃん…来ちゃ駄目だよ…お姉ちゃんが見たら…また…」
「お姉ちゃんが見たらって…つかさ、もしかして…かがみに…?」
「あ…」
つかさは口を滑らせてしまった、という顔をした。
その表情と言葉から、こなたは全てを悟った。
…つかさは、かがみにこのような姿にされたという事。
昨日の事から、かがみはつかさに対して一方的に嫉妬心を起こしたのだろう。
そして家に帰った後、恐らくかがみはつかさに手を出した。
…邪魔な者は排除する、という考えのもとに。
その表情と言葉から、こなたは全てを悟った。
…つかさは、かがみにこのような姿にされたという事。
昨日の事から、かがみはつかさに対して一方的に嫉妬心を起こしたのだろう。
そして家に帰った後、恐らくかがみはつかさに手を出した。
…邪魔な者は排除する、という考えのもとに。
(…何なのこれ、何かのゲームの話?
冗談じゃないよ…こんな…こんな事が…現実に起こるなんて…!)
冗談じゃないよ…こんな…こんな事が…現実に起こるなんて…!)
こなたは、ヒロインが急に性格が変わるゲームを何本かプレーした事があった。
その内容は、大体おとなしかったり性格が優しかった子が、何かのきっかけで性格が急変するものだった。
それと似た出来事が、今目の前で起こっている。
しかし、これはゲームではない。
その生々しい光景は、こなたの目にはっきりと映っている。
こなたは『その事』をはっきりと認識した時、体に震えが自然と起こった。
それと同時に、両の眼からは涙が流れていた。
かがみへの恐怖心、かがみの変化に気が付くことができなかった自分への情けなさ。
そして、つかさを巻き込んでしまった事のやりきれない気持ちが一気に襲ってきたからだ。
その内容は、大体おとなしかったり性格が優しかった子が、何かのきっかけで性格が急変するものだった。
それと似た出来事が、今目の前で起こっている。
しかし、これはゲームではない。
その生々しい光景は、こなたの目にはっきりと映っている。
こなたは『その事』をはっきりと認識した時、体に震えが自然と起こった。
それと同時に、両の眼からは涙が流れていた。
かがみへの恐怖心、かがみの変化に気が付くことができなかった自分への情けなさ。
そして、つかさを巻き込んでしまった事のやりきれない気持ちが一気に襲ってきたからだ。
「つか…さ……っ!」
「…わかっちゃったんだね、こなちゃん…」
「…ごめん…つかさ……ごめんね……!」
「…わかっちゃったんだね、こなちゃん…」
「…ごめん…つかさ……ごめんね……!」
こなたは、涙が止まらなかった。
心の中に、後悔とつかさへの申し訳ない気持ちが止め処なく湧いてくる。
心の中に、後悔とつかさへの申し訳ない気持ちが止め処なく湧いてくる。
(私がもっと早くかがみの心の変化に気がついていれば…こんな事にはならなかったのに…
そうすれば、私とかがみの問題という事で片がついたのに…!)
そうすれば、私とかがみの問題という事で片がついたのに…!)
自分へのやりきれない気持ち。
大切な友達である、つかさを巻き込んでしまった事。
抑えようとしても抑えられない感情が、どんどんとこなたを包んでいく。
そんなこなたを見て、つかさが優しく声をかけた。
大切な友達である、つかさを巻き込んでしまった事。
抑えようとしても抑えられない感情が、どんどんとこなたを包んでいく。
そんなこなたを見て、つかさが優しく声をかけた。
「こなちゃんが謝る必要は無いよ。
これはお姉ちゃんに誤解を受けるような事をした、私のせいなんだから…」
これはお姉ちゃんに誤解を受けるような事をした、私のせいなんだから…」
つかさの優しい言葉が、こなたの心に痛みとなって突き刺さる。
こんな事になったのは、自分にも責任がある。
…今のこなたには、そう考えることしかできなかった。
しかし、そういつまでも泣いていることはできなかった。
気が付けば、ここに来てから三十分程経っていた。
早くしないと、かがみが帰ってくる可能性がある。
もしこの状況を見たら、またかがみが何かの行動に出るかもしれない…
そう考えたこなたは、柊家から急いで去ることにした。
こんな事になったのは、自分にも責任がある。
…今のこなたには、そう考えることしかできなかった。
しかし、そういつまでも泣いていることはできなかった。
気が付けば、ここに来てから三十分程経っていた。
早くしないと、かがみが帰ってくる可能性がある。
もしこの状況を見たら、またかがみが何かの行動に出るかもしれない…
そう考えたこなたは、柊家から急いで去ることにした。
「…私がここにいたら、またかがみが誤解すると思うから…そろそろ帰るね。
怪我が治ったら、また遊ぼうよ…『皆』で、ね…」
「うん…そうだね。
またいつもみたいに…こなちゃんにゆきちゃん、それにお姉ちゃんと…一緒に楽しく遊びたいね…」
怪我が治ったら、また遊ぼうよ…『皆』で、ね…」
「うん…そうだね。
またいつもみたいに…こなちゃんにゆきちゃん、それにお姉ちゃんと…一緒に楽しく遊びたいね…」
そう、できる事なら、また以前のような関係に戻りたい。
しかし、こんな事実を目の当たりにしてしまうと…
こなたはどう表現していいかわからない気持ちのまま、柊家を後にした。
しかし、こんな事実を目の当たりにしてしまうと…
こなたはどう表現していいかわからない気持ちのまま、柊家を後にした。
それからこなたは、かがみといつも通りに接することができなくなった。
どこかかがみに対してよそよそしい態度を取るようになり、一緒に登校したり帰る事も少なくなった。
いつしかこなたは、かがみに対して『恐怖心』を抱くようになっていた。
…そしてとある土曜日の放課後、こなたはかがみからこんな言葉をかけられた。
どこかかがみに対してよそよそしい態度を取るようになり、一緒に登校したり帰る事も少なくなった。
いつしかこなたは、かがみに対して『恐怖心』を抱くようになっていた。
…そしてとある土曜日の放課後、こなたはかがみからこんな言葉をかけられた。
「ねえこなた、今日こなたの家に遊びに行ってもいい?」
この言葉を聞いた瞬間、こなたの体は強張った。
来てほしくない…真っ先に浮かんだ答えがそれだった。
以前のままのかがみだったら、こなたはこの申し出を喜んで受けただろう。
しかし…今は違う。
今のかがみは、もはや数ヶ月前のかがみとは別人だった。
その恐怖心に負けたこなたは…かがみから逃げるという選択肢を選んでしまった。
来てほしくない…真っ先に浮かんだ答えがそれだった。
以前のままのかがみだったら、こなたはこの申し出を喜んで受けただろう。
しかし…今は違う。
今のかがみは、もはや数ヶ月前のかがみとは別人だった。
その恐怖心に負けたこなたは…かがみから逃げるという選択肢を選んでしまった。
「…ごめんかがみ、今日はちょっと遊べないんだ。
個人的な用事があってね…」
「あれ、そうなの?今日はアルバイト、お店が臨時休業で休みじゃなかったっけ?」
個人的な用事があってね…」
「あれ、そうなの?今日はアルバイト、お店が臨時休業で休みじゃなかったっけ?」
…本当に、こなたの事について何でも調べているらしい。
今日が臨時休業になるという事も、つい一週間前に決まった事だった。
その事でまた恐怖心を覚えたこなただったが、ここで負けてはいけないと自分に言い聞かせる。
そして、あくまで用事があるという嘘を突き通した。
今日が臨時休業になるという事も、つい一週間前に決まった事だった。
その事でまた恐怖心を覚えたこなただったが、ここで負けてはいけないと自分に言い聞かせる。
そして、あくまで用事があるという嘘を突き通した。
「アルバイトは無いんだけど、別の用事が入っちゃってね。
だから今回はごめん」
「…そう、残念ね…わかったわ」
だから今回はごめん」
「…そう、残念ね…わかったわ」
こなたはその返事を聞いて、すぐに鞄を持って足早に教室を出た。
そしてこなたが教室から出た瞬間…かがみがぼそりと一言呟いた。
そしてこなたが教室から出た瞬間…かがみがぼそりと一言呟いた。
『嘘は駄目だよ、こなた…』
◆
かがみから逃げるように、急いで家へと戻ったこなた。
家に帰れば、お父さんもゆーちゃんもいる…
こなたは安心できる場所を求めるように、大急ぎで家へと入った。
…しかし、家に戻ったこなたを出迎えたのは、一枚のメモ用紙だった。
そこには見慣れた、そうじろうとゆたかの字があった。
家に帰れば、お父さんもゆーちゃんもいる…
こなたは安心できる場所を求めるように、大急ぎで家へと入った。
…しかし、家に戻ったこなたを出迎えたのは、一枚のメモ用紙だった。
そこには見慣れた、そうじろうとゆたかの字があった。
『今日は編集さんとホテルでカンヅメになるから、留守番よろしく頼む』
『みなみちゃん達とお泊り会があるので、明日帰ります』
『みなみちゃん達とお泊り会があるので、明日帰ります』
…タイミング悪く、二人とも家を留守にしていた。
あえて安心できる事と言えば、この状況がかがみに知られていないこと。
そして、かがみの誘いを断れた事位だろう。
あえて安心できる事と言えば、この状況がかがみに知られていないこと。
そして、かがみの誘いを断れた事位だろう。
(…この事が、かがみに知られないで良かった…)
もしこの状態でかがみを迎え入れていたら、どうなっていたかわかるものではない。
不幸の中の幸いに、こなたは安堵の息を出した。
不幸の中の幸いに、こなたは安堵の息を出した。
と、その時、家の電話が急に鳴りだした。
こなたがナンバーディスプレイで確認すると…そこには『カガミ ケイタイ』の文字が。
気が緩んでいたのだろう、こなたはそのまま受話器を取ってしまった。
それが、最悪な状況への片道切符だとも知らずに…
こなたがナンバーディスプレイで確認すると…そこには『カガミ ケイタイ』の文字が。
気が緩んでいたのだろう、こなたはそのまま受話器を取ってしまった。
それが、最悪な状況への片道切符だとも知らずに…
「もしもし?」
『…こなた、嘘をついちゃ駄目だよ?本当は今日、何も用事無いんでしょ?』
『…こなた、嘘をついちゃ駄目だよ?本当は今日、何も用事無いんでしょ?』
核心をつかれたこなたの顔に、一瞬焦りの表情が浮かぶ。
しかし、ここで焦って本当の事を言ってしまっては学校での取り繕いが水の泡。
こなたは何とかして嘘を突き通そうとする。
しかし、ここで焦って本当の事を言ってしまっては学校での取り繕いが水の泡。
こなたは何とかして嘘を突き通そうとする。
「…そんな事無いよー、現に今色々とやっていて…」
『昨日ゆたかちゃんに聞いのよ。明日はこなた、何か用事ある?って。
そしたら、特に無いはずですよって教えてくれたわよ』
「え……あ……」
『それに、今日はゆたかちゃんもおじさんも泊まりなのよね?』
「…!」
『昨日ゆたかちゃんに聞いのよ。明日はこなた、何か用事ある?って。
そしたら、特に無いはずですよって教えてくれたわよ』
「え……あ……」
『それに、今日はゆたかちゃんもおじさんも泊まりなのよね?』
「…!」
それは、こなたにとって全くの盲点だった。
まさか一年生であるゆたかから情報を取っていたとは思わなかった。
だが、それ以上に驚いたのは、そうじろうが今日仕事で泊まりという事まで知っていたことだった。
まさか一年生であるゆたかから情報を取っていたとは思わなかった。
だが、それ以上に驚いたのは、そうじろうが今日仕事で泊まりという事まで知っていたことだった。
(…何で…何で……?
どうして…お父さんが今日いないって事まで知ってるの……どうして…?)
どうして…お父さんが今日いないって事まで知ってるの……どうして…?)
自分がついさっき知った事さえも把握していたかがみ。
怖くなったこなたは、そのまま通話を切ってしまった。
怖くなったこなたは、そのまま通話を切ってしまった。
ところが、切った直後にまた電話がかかってくる。
発信者は…同じくかがみ。
気を落ち着かせて、こなたはもう一度受話器を取る。
気が動転していたとはいえ、先程無言で電話を切ってしまった事は失礼な行為。
なので、その事については謝っておこうと思っての行動だったのだが…
直後のかがみの言葉を聞いて、こなたは二回目の受話器を取ったことを後悔する事になった。
発信者は…同じくかがみ。
気を落ち着かせて、こなたはもう一度受話器を取る。
気が動転していたとはいえ、先程無言で電話を切ってしまった事は失礼な行為。
なので、その事については謝っておこうと思っての行動だったのだが…
直後のかがみの言葉を聞いて、こなたは二回目の受話器を取ったことを後悔する事になった。
『どうしたのよ、いきなり切るなんてひどいじゃない…
何も用事が無いのなら、行ってもいいでしょ?
来てもいいって返事してよ。
私はこなたとお話がしたいの。こなたと遊びたいの。こなたと一緒にいたいの。こなたと…』
何も用事が無いのなら、行ってもいいでしょ?
来てもいいって返事してよ。
私はこなたとお話がしたいの。こなたと遊びたいの。こなたと一緒にいたいの。こなたと…』
ここで、こなたはまた通話を切った。
正直、受話器は取るべきではなかった。
何故受話器を取ってしまったのだろうと、こなたは酷く後悔した。
…しかし、そんな後悔をしている時間は与えられなかった。
また電話が鳴り、ディスプレイにはかがみの名前が出ている。
こなたは二度の失敗を振り返り、電話を放置しようと決めたが…
正直、受話器は取るべきではなかった。
何故受話器を取ってしまったのだろうと、こなたは酷く後悔した。
…しかし、そんな後悔をしている時間は与えられなかった。
また電話が鳴り、ディスプレイにはかがみの名前が出ている。
こなたは二度の失敗を振り返り、電話を放置しようと決めたが…
三十秒…一分…いつまで経っても鳴り止まない。
かがみは、明らかにこなたが出るまで粘り続けている。
かがみは、明らかにこなたが出るまで粘り続けている。
(どうしよう…私は…どうすれば……!?)
何とかこの状況を打開しようと考えるこなた。
だが、焦った頭ではいくら考えても良い考えは出てこない。
散々迷った挙句、結局こなたは着信を無理やり切るという方法しか思い浮かばなかった。
だが、焦った頭ではいくら考えても良い考えは出てこない。
散々迷った挙句、結局こなたは着信を無理やり切るという方法しか思い浮かばなかった。
◆
…そして、現在に至る。
家の電話は、まだ鳴り続けていた。
こなたはあれから何度も即切りを繰り返していたが、かがみもすぐに電話をかけなおしてくる。
それはまさに、いたちごっこのような風景だった。
家の電話は、まだ鳴り続けていた。
こなたはあれから何度も即切りを繰り返していたが、かがみもすぐに電話をかけなおしてくる。
それはまさに、いたちごっこのような風景だった。
「…もう、最終手段を取るしかないのかな…」
こなたは電話機に近付き、後ろにある電話線を掴んで引き抜いた。
これでもう、電話はかかってこない。
かがみが電話をかけようとしても、泉家に繋がる事は絶対にない。
…これでひとまずは安心。
そう思ったこなたに、新たな矢が飛んできた。
これでもう、電話はかかってこない。
かがみが電話をかけようとしても、泉家に繋がる事は絶対にない。
…これでひとまずは安心。
そう思ったこなたに、新たな矢が飛んできた。
――――ピンポーン
「…あれ、こんな時間に誰だろう…宅配便でも来たかな?」
こなたは玄関のインターフォンを取り、話しかけた。
だがそこには、予想外の人物が立っていた…
だがそこには、予想外の人物が立っていた…
「はい、どちらさまですか?」
『こなた、来たわよ。
電話に全然出てくれないなんて酷いじゃない…さあ、入れてよ』
「…!」
『こなた、来たわよ。
電話に全然出てくれないなんて酷いじゃない…さあ、入れてよ』
「…!」
玄関の前に立っていたのは、かがみだった。
かがみが家に来るのは、こなたにとって全くの予想外。
遊ぶ事は断ったはずだったのに、何故ここに来たのだろうか…?
かがみが家に来るのは、こなたにとって全くの予想外。
遊ぶ事は断ったはずだったのに、何故ここに来たのだろうか…?
『ねえ、入れてよこなた。
遊ぼうよ、一緒にお話しようよ、一緒にゲームしようよ、一緒に…』
「…あ、あの…?か・が・み…?」
『もう私の気持ちには気付いてくれている筈でしょう?
私はこなたが好きなのよ、一緒にいたいのよ。
いつも一緒に、いつまでも一緒に、ずーっと、一緒に、ふたりで…』
遊ぼうよ、一緒にお話しようよ、一緒にゲームしようよ、一緒に…』
「…あ、あの…?か・が・み…?」
『もう私の気持ちには気付いてくれている筈でしょう?
私はこなたが好きなのよ、一緒にいたいのよ。
いつも一緒に、いつまでも一緒に、ずーっと、一緒に、ふたりで…』
…そこでこなたはインターフォンの受話器を切った。
この時点で、こなたははっきりと認識する。
かがみが、一途すぎる想いから狂ってしまったという事を。
何故、こんな事になってしまったのだろうか。
数ヶ月前までは大事な親友という間柄だったのに…
この状況からどうすればいいのか、全く考えがまとまらない。
この時点で、こなたははっきりと認識する。
かがみが、一途すぎる想いから狂ってしまったという事を。
何故、こんな事になってしまったのだろうか。
数ヶ月前までは大事な親友という間柄だったのに…
この状況からどうすればいいのか、全く考えがまとまらない。
(誰か…助けて……お父さん、ゆーちゃん…お母さん…っ!)
―――ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン…
こなたが悩み続けている間にも、玄関のチャイムは鳴り続けている。
かがみは、まだ家の前で粘っている。
自分が出て行かなければ、永遠に鳴らし続けるのではないだろうか…
そんな考えが、こなたの頭に浮かんだ。
かがみは、まだ家の前で粘っている。
自分が出て行かなければ、永遠に鳴らし続けるのではないだろうか…
そんな考えが、こなたの頭に浮かんだ。
(…もう嫌、こんなのは嫌だよ…
逃げたい、こんな状況からは逃げ出したい……でも…逃げられない…!)
逃げたい、こんな状況からは逃げ出したい……でも…逃げられない…!)
こなたの精神が崩れそうになった、その時だった。
部屋に、玄関のチャイム以外の音が複数鳴り響いた。
部屋に、玄関のチャイム以外の音が複数鳴り響いた。
『~♪』
『メールが届きましたよ、ご主人様~』
『ヴヴヴヴヴヴヴ、ガー』
『メールが届きましたよ、ご主人様~』
『ヴヴヴヴヴヴヴ、ガー』
…こなたの携帯とPC、そしてそうじろうが使っているFAXが一斉に動いた。
こなたは鳴り続けているチャイムを無視して、まず携帯を見てみる。
ウィンドウには、新着メールがあることを示すマークが表示されていた。
もしかしたらゆーちゃんやお父さんからのメールかもしれない。
そんな淡い期待を持ちながら、こなたはメール画面を開いた。
…しかし、そこに表示されていた送信者は、そんなこなたの淡い希望を打ち砕いた。
送信者は、『柊かがみ』と表示されていた。
こなたは鳴り続けているチャイムを無視して、まず携帯を見てみる。
ウィンドウには、新着メールがあることを示すマークが表示されていた。
もしかしたらゆーちゃんやお父さんからのメールかもしれない。
そんな淡い期待を持ちながら、こなたはメール画面を開いた。
…しかし、そこに表示されていた送信者は、そんなこなたの淡い希望を打ち砕いた。
送信者は、『柊かがみ』と表示されていた。
見るやいなや、こなたは恐怖感からか携帯電話をその場に落とした。
それと同時に、PCとFAXの送信者を急いで確認しに行くこなた。
…嫌な予感がしたからだった。
PCのメールソフトを開き、送信者を確認する。
そこには携帯と同じ、『柊かがみ』の文字が表示されていた。
そして、本文は…
それと同時に、PCとFAXの送信者を急いで確認しに行くこなた。
…嫌な予感がしたからだった。
PCのメールソフトを開き、送信者を確認する。
そこには携帯と同じ、『柊かがみ』の文字が表示されていた。
そして、本文は…
『私はこなただけを愛しているわ。
だから、一緒にいよう。ずっと一緒に。』
だから、一緒にいよう。ずっと一緒に。』
これも携帯メールと同じ文章だった。
どちらも送信元が携帯電話のアドレスだったので、恐らくこなたのPCと携帯へ同時送信しているのだろう。
しかし、今のかがみができる事はそこまでの筈。
現に今、かがみは泉家の前にいるのだ。
FAXまで送信することは、分身でもしない限り不可能。
一時の気休めにはなるだろうと思いながら、こなたは送信されてきたFAXを確認する。
…だが…
どちらも送信元が携帯電話のアドレスだったので、恐らくこなたのPCと携帯へ同時送信しているのだろう。
しかし、今のかがみができる事はそこまでの筈。
現に今、かがみは泉家の前にいるのだ。
FAXまで送信することは、分身でもしない限り不可能。
一時の気休めにはなるだろうと思いながら、こなたは送信されてきたFAXを確認する。
…だが…
『私はこなただけを愛しているわ。
だから、一緒にいよう。ずっと一緒に。』
だから、一緒にいよう。ずっと一緒に。』
送られてきたのは、メールと全く同じ文章。
かがみが今送ることは不可能な筈なのに、現にこうして送られてきた。
…どうやって送ったのか、こなたにはさっぱり見当がつかなかった。
その不透明な理由が、さらにこなたの不安を煽る。
かがみが今送ることは不可能な筈なのに、現にこうして送られてきた。
…どうやって送ったのか、こなたにはさっぱり見当がつかなかった。
その不透明な理由が、さらにこなたの不安を煽る。
「何なの…これ…おかしいよ……かがみ…一体…どうして…?」
実はこのFAXの端に、あるメッセージが書かれていた。
それは、つかさからのメッセージ。
同時にそれは、つかさがかがみに脅されて送信したものだという事を示していた。
メッセージの内容は『こなちゃん、早くそこから逃げて』というものだったが…
完全に混乱していたこなたが、そのメッセージに気が付くことはなかった。
それは、つかさからのメッセージ。
同時にそれは、つかさがかがみに脅されて送信したものだという事を示していた。
メッセージの内容は『こなちゃん、早くそこから逃げて』というものだったが…
完全に混乱していたこなたが、そのメッセージに気が付くことはなかった。
『~♪』
『メールが届きましたよ、ご主人様~』
―――ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン…
『メールが届きましたよ、ご主人様~』
―――ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン…
携帯とPCへのメール、そして家のチャイムが止まる気配が全く無い。
こなたは遂に耐え切れなくなり、部屋の隅で隠れるようにうずくまった。
こなたは遂に耐え切れなくなり、部屋の隅で隠れるようにうずくまった。
(…もうやめて、かがみ。
これ以上やったら、私の方が持たないよ…っ!)
これ以上やったら、私の方が持たないよ…っ!)
頭を抱え、止まない音から逃げようとするこなた。
しかし家の中にいる以上、それらの音から逃れることはできない。
容赦なく耳に入ってくる音は、さらにこなたを追い詰める。
もはや、こなたの精神は崩れ去る寸前だった。
しかし家の中にいる以上、それらの音から逃れることはできない。
容赦なく耳に入ってくる音は、さらにこなたを追い詰める。
もはや、こなたの精神は崩れ去る寸前だった。
(お願い…誰か…助けて…
怖い。
怖い。
怖い。
怖い…!)
怖い。
怖い。
怖い。
怖い…!)
その直後だった。
全ての音が一斉に止んだ。
…チャイムも鳴っていない。
携帯とPCのメール着信音も鳴っていない。
全く動かないこなたに、かがみは諦めて帰ったのだろうか。
精神を圧迫する音から開放され、こなたは安堵の息をついた。
全ての音が一斉に止んだ。
…チャイムも鳴っていない。
携帯とPCのメール着信音も鳴っていない。
全く動かないこなたに、かがみは諦めて帰ったのだろうか。
精神を圧迫する音から開放され、こなたは安堵の息をついた。
「…よかっ…」
その瞬間…こなたの肩が誰かに掴まれた。
…玄関の鍵は閉めてあり、この家にはこなたの他に誰もいない。
なら、この手は一体誰のものなのか…
…玄関の鍵は閉めてあり、この家にはこなたの他に誰もいない。
なら、この手は一体誰のものなのか…
『…来たよ、こなた…』
その声の主は…かがみだった。
何故自分の後ろにかがみがいるのか…?
その前に、完全に閉め切っておいたはずの家にどうやって入ってきたのだろうか…
いきなりの事に、こなたの頭はまた混乱し始める。
何故自分の後ろにかがみがいるのか…?
その前に、完全に閉め切っておいたはずの家にどうやって入ってきたのだろうか…
いきなりの事に、こなたの頭はまた混乱し始める。
『やっと…二人きりになれたね…
私達は…ずーっと…一緒だよ…?』
私達は…ずーっと…一緒だよ…?』
こなたは、恐る恐る後ろを見た。
そこには…今までこなたが見たことがない、正気を失ったかがみがいた。
そして、その手には妙な道具が握られていた。
部屋のドアは開きっぱなしの状態で、外から冷たい風が流れてくる。
どうやら、かがみは手に持っている道具で無理やり玄関のドアをこじ開けたらしい。
…しかしよく見ると、かがみが手に持っている道具には、明らかに工具以外の物も混じっていた。
そして、それを使う対象は…
そこには…今までこなたが見たことがない、正気を失ったかがみがいた。
そして、その手には妙な道具が握られていた。
部屋のドアは開きっぱなしの状態で、外から冷たい風が流れてくる。
どうやら、かがみは手に持っている道具で無理やり玄関のドアをこじ開けたらしい。
…しかしよく見ると、かがみが手に持っている道具には、明らかに工具以外の物も混じっていた。
そして、それを使う対象は…
『こなた…ダ・イ・ス・キ…』
知らない間に、手を固定されたこなた。
…もう、逃げられない。
それは、こなたにとって本当の悪夢の始まりだった…
…もう、逃げられない。
それは、こなたにとって本当の悪夢の始まりだった…
(お願い…誰か……誰か助けて……)
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- 怖いけどヤンデレ系は読んでくと途端に惹かれますね。
さて、これと似た話を作ってみますか -- 名無しさん (2023-06-04 23:03:12) - これ読んだ後みwikiさん読んだら笑い話になったw -- 名無しさん (2014-12-28 14:26:30)
- ヤンデレかがみパネェ・・・・。大好物だけど。
つづき・・・は、無いよな。 -- 名無しさん (2013-01-07 23:15:19) - 怖い話ですが、やはりかがみ
は大好きです!でも怖い〜 -- チャムチロ (2012-08-29 21:43:17) - ツンデレがヤンデレになった時が1番怖いと言うが…… -- 名無しさん (2012-02-16 10:33:10)
- かがみん怖えええええ
でもこの手が好きな自分がいる……
取敢えずは、作者GJ
続きを滅茶苦茶見たいです -- (2010-03-24 23:33:10) - ほ・・・ホラーだこれは・・・ -- 名無しさん (2010-03-11 22:20:10)
- やべぇなこりゃ・・・ -- 空我 (2010-03-04 23:10:29)
- これはこわひ・・・
でもこの手の話が結構好きだと言うことに気が付いた -- 名無しさん (2009-11-27 22:26:50) - かがみんにここまで病まれたら、こなたもかがみを受け入れるしかないな -- 名無しさん (2009-11-25 04:30:28)
- 狂気系の話では、この作品が一番ストレートに響いてくる感じだ。 -- 名無しさん (2009-10-09 07:28:14)
- 久々にみたけど 胸がなんかモヤモヤして 気持ち悪い
誤解を招くようないいかたでスマソ どっちも好きな作品です GJです
-- 名無しさん (2009-10-08 22:36:52) - かがみんかっけぇww -- 名無しさん (2009-10-08 16:17:38)
- かがみがヤンデレになっちまったーー∑(゜□゜) -- 名無しさん (2009-08-23 10:02:36)
- はっはっはっ……笑えないぐらい怖い……。 -- 名無しさん (2009-08-07 03:04:18)
- 私はこなただけを愛しているわ。
だから、一緒にいよう。ずっと一緒に。 -- 柊かがみ (2009-08-06 20:05:21) - あぁ・・・これが狂ちゃんか・・・ -- 名無しさん (2008-08-10 18:30:21)
- うわあああぁあぁぁ・・・ -- 名無しさん (2008-08-10 18:14:29)
- 鬱になりそうだわw -- TDN (2008-08-10 15:48:11)
- かがみとこなたのどちらか片方を、続編の「狂愛その2」から交換すると
ある意味幸せになりそうだw -- 名無しさん (2008-08-10 11:14:47) - ヤンデレこええええええええええええええ
これ読んでる時に自分の家電が鳴ってマジでビビったわ
自営業とかやってるとTELとFAXが別というのはよくある -- 名無しさん (2008-07-12 15:14:49) - 怖い!
続編に期待。
失礼ではありますが、電話線を抜いたらFAXはこないと思いますが… -- 名無し (2008-07-12 09:41:48) - 怖ぇぇっ(゚Д゚|||)!!!!!!
この後どうなっちゃったの、ねえちょっと!!? -- まじかる☆あんばー (2008-07-11 20:29:38) - 続き読みたいです -- 名無しさん (2008-06-27 15:43:14)
- ヤンデレかがみは恐ろしいです -- 九重龍太 (2008-06-15 09:43:51)
- これは、こっっっわぁぁぁ~!!
めちゃ怖い!!!!!!
でも続きが気になる!! -- 名無しさん (2008-06-02 23:13:32) - ヤンデレかがみ怖ぇぇぇ -- 名無しさん (2008-05-07 20:25:22)
- いつ読んでも怖いけど・・続きが読みたい・・。
-- フェイト (2008-04-29 01:48:59) - 少しトラウマに・・・ -- 名無しさん (2008-03-07 20:17:32)
- これは怖いーめちゃめちゃ怖い!!!!!!!!!!!!!11111
続編を希望して良いのか悪いのか・・・・ -- 名無しさん (2008-03-07 19:30:31) - かがみがめちゃめちゃ怖いーーwwwwwwこの@のこなたは・・・ -- 名無しさん (2008-01-31 23:39:42)
- いつ読んでも(;゚д゚)KOEEEEEEEEEEE!!!!
ヤンデレかがみんにどうこうされてしまう、こなたを見てみたくもあるなぁ… -- 名無しさん (2008-01-29 06:45:24) - 怖すぎるー でも続きが読みたいw -- 名無しさん (2008-01-29 00:53:42)
- もはやホラーww
-- 名無しさん (2008-01-29 00:46:36)